(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089135
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】展示用額縁及び展示設備
(51)【国際特許分類】
A47G 1/06 20060101AFI20220608BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220608BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20220608BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20220608BHJP
A61L 9/18 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
A47G1/06 J
B01J35/02 J
A61L9/00 C
A61L9/14
A61L9/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077912
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2020201240
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513317518
【氏名又は名称】株式会社 アルステクネ
(71)【出願人】
【識別番号】520050934
【氏名又は名称】久保田 巌
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 巌
【テーマコード(参考)】
3B111
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
3B111BB06
4C180AA07
4C180CB01
4C180CC03
4C180DD03
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180EA58X
4C180EB06X
4C180HH05
4C180HH15
4C180HH19
4C180KK04
4C180LL06
4C180MM04
4G169AA02
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BB04B
4G169BC60B
4G169CA07
4G169CA08
4G169DA05
4G169EA08
4G169HB01
4G169HB06
4G169HE03
4G169HE06
4G169HE07
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】額縁における空気清浄作用を改善する。
【解決手段】一実施形態に係る額縁1は、額縁のフレーム11と、パネル12と、光触媒パネルに光触媒効果を発揮させる光を照射する光源15と、フレーム11の内側かつパネル12の表面を通る経路に沿って空気を流すための送風機16と、フレーム11を含む外装部材の内外で空気を循環させるための開口17とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
額縁のフレームと、
前記フレームを含む外装部材の内外で空気を循環させるための開口であって、使用状態において前記額縁を正面から見たときに隠れる位置に形成された吸気口及び排気口を含む開口と、
前記フレーム内において、視覚コンテンツが形成されたシート状の作品、又はフラットパネルディスプレイを取り外し可能に支持する支持体と、
前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの正面側において支持される光触媒パネルと、
前記光触媒パネルに光触媒効果を発揮させる光を照射する光源と、
前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの背面に相当する位置に配置された送風機であって、前記吸気口から前記排気口まで前記フレームの内側かつ前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの背面側から当該作品又は当該フラットパネルディスプレイの正面側を循環させる経路に沿って空気を流すための送風機と
を有する展示用額縁。
【請求項2】
前記吸気口及び前記排気口がいずれも、前記フレームにおいて前記光触媒パネルよりも正面側に形成される
請求項1に記載の展示用額縁。
【請求項3】
前記吸気口及び前記排気口が、前記フレームと前記支持体との空隙により形成される
請求項2に記載の展示用額縁。
【請求項4】
前記吸気口が前記送風機の近傍に形成され、前記排気口が前記フレームにおいて前記光触媒パネルよりも背面側に形成される
請求項1に記載の展示用額縁。
【請求項5】
前記排気口が前記フレームの上面、下面、又は側面に形成される
請求項4に記載の展示用額縁。
【請求項6】
前記フレーム内において前記支持体により支持される前記作品と、
前記作品の背面に形成される光触媒層と
を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の展示用額縁。
【請求項7】
前記作品が、炭酸カルシウムベースの材料で形成されたシート上に形成される
を有する請求項6に記載の展示用額縁。
【請求項8】
前記支持体が前記フラットパネルディスプレイを支持し、
前記フレームの内周面のうち、前記フラットパネルディスプレイの表示面と対向する位置に形成された光触媒層を有する
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の展示用額縁。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の展示用額縁と、
前記展示用額縁を収容する筐体と
を有する展示設備。
【請求項10】
前記筐体に設けられた、消毒液噴霧装置を有する
請求項9に記載の展示設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、額縁及び展示設備に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄作用を有する額縁が知られている。例えば特許文献1は、空気浄化装置1を用いた額縁5を開示している(特に
図1参照)。例えば特許文献2は、光触媒層2を有する額縁構造1を開示している(特に
図1参照)。例えば特許文献3は、光触媒効果を有する触媒膜4、触媒膜4の表面を通る経路に沿って空気を流すための送風機5、画框1を含む外装部材の内外で空気を循環させるための開口を有する額縁を開示している。例えば特許文献4は、筐体7の内側かつ光触媒1の表面を通る経路に沿って空気を流すための送風機と、筐体7の内外で空気を循環させるための吸気口14及び排気口11とを有する、液晶パネル6を筐体7内部に設置した液晶表示装置23を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-171314号公報
【特許文献2】特開2015-116210号公報
【特許文献3】中国特許出願公開第108129963号明細書
【特許文献4】特開2008-272032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の額縁においては、空気清浄作用に改善の余地があった。特許文献3に記載の額縁及び液晶表示装置においては、作品を展示する用に供するための外観を保ちつつ空気の循環経路をより長くする点に課題があった。
【0005】
これに対し本発明は、作品を展示する用に供するための外観を保ちつつ空気の循環経路をより長くすることができる額縁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、額縁のフレームと、前記フレームを含む外装部材の内外で空気を循環させるための開口であって、使用状態において前記額縁を正面から見たときに隠れる位置に形成された吸気口及び排気口を含む開口と、前記フレーム内において、視覚コンテンツが形成されたシート状の作品、又はフラットパネルディスプレイを取り外し可能に支持する支持体と、前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの正面側において支持される光触媒パネルと、前記光触媒パネルに光触媒効果を発揮させる光を照射する光源と、前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの背面に相当する位置に配置された送風機であって、前記吸気口から前記排気口まで前記フレームの内側かつ前記作品又は前記フラットパネルディスプレイの背面側から当該作品又は当該フラットパネルディスプレイの正面側を循環させる経路に沿って空気を流すための送風機とを有する展示用額縁を提供する。
【0007】
前記吸気口及び前記排気口がいずれも、前記フレームにおいて前記光触媒パネルよりも正面側に形成されてもよい。
【0008】
前記吸気口及び前記排気口が、前記フレームと前記支持体との空隙により形成されてもよい。
【0009】
前記吸気口が前記送風機の近傍に形成され、前記排気口が前記フレームにおいて前記光触媒パネルよりも背面側に形成されてもよい。
【0010】
前記排気口が前記フレームの上面、下面、又は側面に形成されてもよい。
【0011】
この展示用額縁は、前記フレーム内において前記支持体により支持される前記作品と、前記作品の背面に形成される光触媒層とを有してもよい。
【0012】
前記作品が、炭酸カルシウムベースの材料で形成されたシート上に形成されてもよい。
【0013】
前記支持体が前記フラットパネルディスプレイを支持し、前記フレームの内周面のうち、前記フラットパネルディスプレイの表示面と対向する位置に形成された光触媒層を有してもよい。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかに記載の展示用額縁と、前記展示用額縁を収容する筐体とを有する展示設備を提供する。
【0015】
この展示設備は、前記筐体に設けられた、消毒液噴霧装置を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、額縁における空気清浄作用を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る額縁1の外観を例示する図。
【
図3】開口17及び開口18の配置を例示する模式図。
【
図4】第2実施形態に係る額縁2の断面構造を例示する図。
【
図6】第3実施形態に係る展示設備3の外観を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
近年、除菌又は殺菌への関心が高まっている。除菌又は殺菌のため、例えば建物の天井、床、又は内壁に光触媒層をコーティングする技術が知られている。しかし、建物の構造に直接コーティングをするのでは部屋ごとに施工が必要なため気軽に導入できないという問題がある。本発明は、このような問題に対し、除菌又は殺菌機能を有する構造物をより気軽に導入するための技術を提供する。
【0019】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る額縁1の外観を例示する図である。額縁1は、作品9(
図1では略)を展示目的で収容するための構造体、すなわち展示用額縁である。作品9は、絵画(西洋絵画、浮世絵等)等の視覚コンテンツが形成されたシート状の物体である。額縁1は、フレーム11及びパネル12を有する。フレーム11は、パネル12及び作品9を取り外し可能に支持する構造体である。フレーム11は、金属、樹脂、木材、又はこれらの複合材料により形成される。パネル12は、作品9を視認できる状態で保護する構造体である。パネル12は光を透過する材料、例えばガラス又は樹脂で形成される。この例においてパネル12は光触媒ガラスである(光触媒パネルの一例)。光触媒ガラスとは表面に光触媒層が形成されたパネルをいう。光触媒層とは、光触媒活性物質を含む層をいう。光触媒活性物質とは光を照射することにより触媒作用を示す物質をいい、一例としては酸化チタン(TiO2)又は酸化タングステンである。例えば酸化チタンは、紫外線を吸収することにより、酸化還元作用及び超親水作用を示す。酸化還元作用は、有害物質の処理、例えば殺菌処理という結果をもたらす。また、超親水作用は、パネル表面への水滴の付着及び油性の汚れの定着を防止するという作用、いわゆるセルフクリーニング作用をもたらす。なお後述するように額縁1はその内部を空気が循環する構造を有するが、「パネル」とはその循環する空気によって形状が変化しない程度の剛性を有する構造体をいい、フィルムのように循環する空気にはためいたりなびいたりするような剛性の低い構造体は含まない。
【0020】
図2は、額縁1の断面構造を例示する図である。なおここでは、シート上の部材を厚く図示するなど、複数の要素の相対的なサイズは実物とは異なっている。
図2は、パネル12の表面の法線に平行でありかつ額縁1の使用状態における横方向の中央を通る面で切った断面を示す。作品9自体は額縁1の構成要素ではないが、ここでは説明のため作品9も併せて図示する。なお額縁1において作品9を鑑賞する者が位置する側(
図2の左側)を正面といい、設置面側(
図2の右側)を背面という。
【0021】
額縁1は、フレーム11及びパネル12に加え、裏板13、支持体14、光源15、送風機16、開口17、及び開口18を有する。パネル12は、ガラス層121及び光触媒層122を有する。ガラス層121はパネル12の本体部分である。光触媒層122はガラス層121の表面に形成される。この例において、光触媒層122は、ガラス層121の正面側に形成される。裏板13は、フレーム11の背面においてフレーム11及び他の構造体を支持する。裏板13は、金属、樹脂、木材、又はこれらの複合材料により形成される。裏板13は、ネジ又はラッチ等の固定具を用いてフレーム11に固定される。フレーム11と裏板13とを総称して外装部材という。支持体14は、パネル12及び作品9を支持する。一例において、支持体14は溝141及び溝142を有する。支持体14は、溝141にパネル12を、溝142に作品9を、それぞれ挟むことによりパネル12及び作品9を支持する。
【0022】
光源15は、光触媒効果(又は光触媒機能)を発揮させるための光、例えば紫外線を照射する装置である。光源15は、光源151、光源152、及び光源153を有する。光源151は、作品9の背面に光を照射するための装置である。この例において、作品9の背面には光触媒層92が形成されている(すなわち作品9は光触媒層を有する)。光源151は、
図2の断面において支持体14よりも背面側、かつ裏板13よりも表面側に設置される。光源151の光軸は作品9の背面を向く。光源152及び光源153は、パネル12の表面に光を照射するための装置である。光源152及び光源153は、支持体14よりも表面側に設置される。この例において、光源152及び光源153はフレーム11の裏に設置される。光源152は開口17の近傍に、光源153は開口18の近傍に、それぞれ設置される。光源151、光源152、及び光源153は、それぞれ、紫外線LED又は紫外線ランプである。
【0023】
送風機16は、フレーム11の内側かつパネル12の表面を通る経路C1(循環経路の一例)に沿って空気を流すための装置である。この例において、経路C1は、開口17においてフレーム11の外から吸入した空気を、作品9の背面を通って開口18に導く経路である。すなわち、経路C1は、開口17(吸気口の一例)から開口18(排気口の一例)までフレーム11の内側かつ作品9(又はフラットパネルディスプレイ)の背面側から作品9(又はフラットパネルディスプレイ)の正面側に向かって循環させる経路の一例である。こうして、フレーム11の外から吸入した空気はフレーム11内を循環した後、フレーム11の外に排気される。送風機16は外部電源からの電力供給を受けて動作するものであってもよいし、内蔵電池から電力供給を受けて動作するものであってもよい。なお経路C1の向きを設計するため、フレーム11の内周面に溝等の表面形状を形成したり、送風機16を開口18側に傾けて設置したりしてもよい。
【0024】
開口17及び18は、経路C1を形成するため(すなわちフレーム11の内外で空気を循環させるため)にフレーム11に設けられた開口、より詳細には、フレーム11と支持体14との間の空隙である。開口17は吸気口に相当し、開口18は排気口に相当する。この例において、開口17及び開口18はいずれも、使用状態において作品9よりも正面側に(すなわち鑑賞者側に)位置する。
【0025】
図3は、開口17及び開口18の配置を例示する模式図である。
図3は、
図2のIII-III断面、すなわち額縁1をパネル12に対して平行であり、パネル12よりも正面側であり、かつ支持体14と交わる断面で切断した図である。この例において、フレーム11を使用状態において正面から見たときに作品9の下部に相当する位置に開口17が、上部に相当する位置に開口18が、それぞれ設けられている。作品9の側部に相当する位置には開口は設けられておらず、支持体14がフレーム11の裏面まで達している。支持体14はフレーム11に固定される。なおこの例において、開口17及び開口18は、開口以外の部分と比較してその面積が小さい。なお
図3で示す開口17及び開口18は広義の開口であり、フレーム11と支持体14との空隙を意味する。狭義の開口はフレーム11の端部と支持体14の端部との空隙を意味する。この例において額縁1は、例えば壁にかけて用いられる。
【0026】
この例において、開口17及び開口18はいずれも、使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れる位置に形成されている。「使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れる」とは、額縁1を正面から見たときにフレーム11自体の開口(フレーム11本来の開口、すなわち作品9を観賞するための開口)以外の開口が見えないことをいう。より好ましくは、額縁1を正面から見たときに支持体14がフレーム11に隠れて見えない(したがって、狭義の開口であるフレーム11の端部と支持体14の端部との空隙も見えない)ことをいう。なお額縁1を正面から見たときに支持体14が一部見えている場合であっても、フレーム11本来の、作品9を観賞するための開口以外の開口は見えないので、開口17及び開口18はいずれも使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れる位置に形成されていると言える。このように、開口17及び開口18がいずれも使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れる位置に形成されていることにより、作品を展示する用に供するための外観を保ちつつ(すなわち額縁1の見栄えが良い状態を保ちつつ)空気の循環経路をより長くすることができる。
【0027】
使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れない位置(すなわち額縁1を正面から見たときに見える位置)とは、フレーム11本来の、作品9を観賞するための開口から分離された位置であって、正面から見える位置をいう。例えば、フレーム11の正面に独立して形成された吸気用又は排気用の開口は、使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れない位置に形成されていると言える。
【0028】
再び
図2を参照する。この例において、作品9は、シート91及び光触媒層92を有する。シート91は、光触媒層92の塗布に耐えられる材料、例えば炭酸カルシウムベースの材料(一例としては、LIMEX(登録商標))で形成されたシートを有する。なおシート91の材料は炭酸カルシウムベースのものに限定されない。一般的な紙又は樹脂であってもよい。シート91の表面には絵画又は文字等の視覚コンテンツが形成される。光触媒層92はシート91の裏面に形成される。なお、シート91の表面に視覚コンテンツが形成された後で、シート91の表面にも光触媒層が形成されてもよい。
【0029】
このシートに形成される視覚コンテンツは、例えば、本願の出願人らが開発したDTIP(例えば、特許第6708862号参照)を用いてデジタルデータ化された絵画であってもよい。DTIPによれば、絵画表面の質感(又は立体感)を、平面上にプリンターで形成した画像において再現することができる。
【0030】
なお、作品9に代えて、又は加えて、フラットパネルディスプレイ(例えばLCD)を額縁1に収容してもよい。上述のDTIPによれば、シート上の媒体(例えば紙)にインク又は顔料で形成された画像だけでなく、コンピュータディスプレイに表示される画像においても絵画の質感を再現することができる。
【0031】
経路C1に沿って空気の流れを説明する。額縁1近傍の空気は、開口17からフレーム11内に吸い込まれる。開口17の近傍には光源152が設けられている。光源152から光照射を受けたパネル12(詳細には光触媒層122)は、光触媒機能を発揮し、吸入した空気を浄化する。開口17から吸入された空気は、作品9の裏面に沿ってフレーム11内の下部から上部に向かって流れていく。このとき、作品9の裏面は光源151からの光照射により光触媒機能を発揮し、流れていく空気を浄化する。作品9の裏面に沿って流れる空気はフレーム11の上部で折り返し、パネル12の表面に沿って下に流れる。フレーム11の上部から流れる空気は開口18からフレーム11の外に排気される。開口18の近傍には光源152が設けられている。光源152から光照射を受けたパネル12は、光触媒機能を発揮し、排気される空気を浄化する。
【0032】
このように本実施形態によれば、フレーム11内を流れる空気を、作品9の裏面を含む長い経路C1において繰り返し光触媒機能により浄化しながら流すことができる。
【0033】
2.第2実施形態
図4は、第2実施形態に係る額縁2の断面構造を例示する図である。額縁2は、フレーム21、パネル22(光触媒パネルの別の一例)、および裏板23を有する。額縁2において、フレーム21、パネル22、および裏板23を総称して外装部材という。
図4は、パネル22の表面の法線に平行でありかつ額縁2の使用状態における横方向の中央を通る面で切った断面を示す。作品9自体は額縁2の構成要素ではないが、ここでは説明のため作品9も併せて図示する。額縁2は、さらに、裏板23、支持体24、光源25、送風機26、開口27、及び開口28を有する。この例において額縁2は、壁にかけて用いられるのではなく、床又は台の上に立てて用いられる、自立型の額縁である。
【0034】
この例においてフレーム21は正面側に溝211を有する。フレーム21は、溝211にパネル22を挟み込むことによりパネル22を支持する。裏板23は、フレーム21の背面においてフレーム21及び他の構造体を支持する。支持体24は、作品9を支持する。一例において、支持体24は溝241を有する。支持体24は、溝241に作品9を挟み込むことにより作品9を支持する。
【0035】
光源25は、光触媒機能を発揮させるための光を照射する装置である。光源25は、光源251及び光源252を有する。光源251は、作品9の背面に紫外線を照射するための装置である。この例において、作品9の背面には光触媒層が形成されている。光源251は、
図4の断面において支持体24よりも背面側、かつ裏板23よりも表面側に設置される。光源251の光軸は作品9の背面を向く。光源252は、作品9に可視光を照射するための装置である。光源252は、支持体24よりも表面側に設置される。この例において、光源252はフレーム21の裏に設置される。光源251及び光源252は、それぞれ、LED又はランプである。
【0036】
送風機26は、フレーム21の内側かつパネル22の表面を通る経路C2(循環経路の一例)に沿って空気を流すための装置である。この例において、経路C2は、開口27においてフレーム21の外から吸入した空気を、作品9の背面を通って開口28に導く経路である。すなわち、経路C2は、開口27(吸気口の一例)から開口28(排気口の一例)までフレーム21の内側かつ作品9(又はフラットパネルディスプレイ)の背面側から作品9(又はフラットパネルディスプレイ)の正面側に向かって循環させる経路の一例である。こうして、フレーム21の外から吸入した空気はフレーム21内を循環した後、フレーム21の外に排気される。なお経路C2の向きを設計するため、フレーム21の内周面に溝等の表面形状を形成したり、送風機26を開口28側に傾けて設置したりしてもよい。
【0037】
開口27及び28は、経路C2を形成するためフレーム21に設けられた開口である。開口27は吸気口に相当し、開口28は排気口に相当する。この例において、開口27は裏板23に設けられ、開口28はフレーム21において作品9よりも前に位置する。額縁1において開口17及び開口18がパネル12よりも正面側に形成されるのに対し、額縁2において開口27及び開口28はいずれもパネル22よりも背面側に形成される。
【0038】
図5は、開口28の配置を例示する模式図である。
図5は、
図4のV-V断面、すなわち額縁2をパネル22に対して平行であり、パネル12よりも背面側かつ作品9よりも正面側であり、かつ開口28を通る断面で切断した図である。この例において、フレーム21を使用状態において正面から見たときに、送風機26と重なる位置に開口27が設けられている。また、作品9の下部に相当する位置に開口28が設けられている。なおこの例において、開口27及び開口28は、開口以外の部分と比較してその面積が小さい。作品9の側部に相当する位置には開口は設けられておらず、支持体24がフレーム21の裏面まで達している。支持体24はフレーム21に固定される。
【0039】
経路C2に沿って空気の流れを説明する。額縁2近傍の空気は、裏板23において開口27からフレーム21内に吸い込まれる。開口27から吸入された空気は、作品9の裏面に沿ってフレーム21内の中央から上部に向かって流れていく。このとき、作品9の裏面は光源251からの光照射により光触媒機能を発揮し、流れていく空気を浄化する。作品9の裏面に沿って流れる空気はフレーム21の上部で折り返し、パネル22の表面に沿って下に流れる。光源252及び外光による光照射を受けたパネル12は、光触媒機能を発揮し、流れていく空気を浄化する。なおこの例ではガラス層121の背面側(すなわち作品9側)に光触媒層122が形成されるが、ガラス層121の両側(すなわち正面側及び背面側)に光触媒層122が形成されてもよいし、ガラス層121の正面側のみに光触媒層122が形成されてもよい。フレーム21の上部から流れる空気は開口28からフレーム21の外に排気される。
【0040】
このように本実施形態によれば、フレーム11内を流れる空気を、作品9の裏面を含む長い経路C2において繰り返し光触媒機能により浄化しながら流すことができる。この例においては、額縁2の裏面から吸入した空気を額縁2の正面から排気することができる。
【0041】
なお、額縁1を正面から見たときに、開口27は作品9の陰に隠れ、開口28はフレーム11の下面に形成される。すなわち、第2実施形態においても、開口27及び開口28は使用状態において額縁1を正面から見たときに隠れる位置に形成されていると言える。
【0042】
3.第3実施形態
図6は、第3実施形態に係る展示設備3の外観を例示する図である。展示設備3は、視覚コンテンツを展示する設備である。展示設備3は、例えば、美術館、博物館、水族館、展示ホール、又は学校において視覚コンテンツを展示するために用いられる。展示設備3は、額縁1又は額縁2、及びこれらの額縁を収容する筐体31を有する。筐体31は内部が空洞になっており、開口32、開口33、及び開口34を有する。筐体31の内部には3つの額縁1又は額縁2が、作品9の視覚コンテンツが展示設備3の正面を向くように設置される。筐体31において、開口32、開口33、及び開口34は、額縁1の作品9又はフラットパネルディスプレイに相当する部分に形成される。
【0043】
展示設備3は、開口32の上部及び開口34の上部にそれぞれ噴霧装置35(消毒液噴霧装置の一例)を有する。噴霧装置35は液体を噴霧する装置であり、この例においては消毒液を噴霧する。消毒液は、例えば次亜塩素酸水又はアルコール消毒液である。消毒液の噴霧装置を併用することにより、より除菌効果を高めることができる。この場合において、噴霧装置35は、額縁1又は額縁2の(吸気口よりも)排気口の近傍に設置されてもよい。
【0044】
この例において、噴霧装置35は、観覧者の挙動に応じて動作状態を変更してもよい。例えば、展示設備3と観覧者との距離がしきい値を超えている場合、噴霧装置35は、液体を噴霧する。展示設備3と観覧者との距離がしきい値以下である場合、噴霧装置35は、液体の噴霧を停止するか、又は噴霧する量を減らしてもよい。あるいは、噴霧装置35は、観覧者と展示設備3との距離がしきい値以下である状態からしきい値を超えた状態に切り替わったことを契機として所定の時間、液体を噴霧する。それ以外の場合、噴霧装置35は液体を噴霧しない。これらの場合においては、展示設備3は、人感センサー及び人感センサーの出力に応じて噴霧装置35を制御する制御装置を有する。
【0045】
展示設備3は、操作パネル36を有する。操作パネル36は、特に額縁1にフラットパネルディスプレイが収容される場合において、そのフラットパネルディスプレイに映像信号を出力するコンピュータ装置(図示略。このコンピュータ装置は例えば筐体31内に設置される。)に対し指示を入力する装置である。視覚コンテンツの観覧者は、操作パネル36を介して、例えば表示される絵画を別の絵画に切り替えたり、絵画の一部を拡大したり、拡大した部分を移動したりすることができる。
【0046】
4.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
額縁1及び額縁2において、各構成要素の形状、サイズ、及び配置はあくまで一例であり、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、額縁1において、開口17及び開口18の少なくとも一方は、フレーム11の背面側又は裏板13に形成されてもよい。あるいは、開口17及び開口18は、パネル12の上下方向に代えて、又は加えて、左右方向に形成されてもよい。例えば、額縁1においてフレーム11が2つの開口17及び1つの開口18を有し、開口17は、フレーム11においてパネル12の左右に相当する位置に1つずつ、開口18はパネル12の上部に相当する位置に1つ、形成されてもよい。また額縁1において、開口17及び開口18はフレーム11と支持体14との間の空隙により形成されるものに限定されない。フレーム11本来の、作品9を観賞するための開口とは独立した開口をフレーム11の上面、下面、又は側面に形成し、これを吸気口又は排気口として用いてもよい。また、吸気口及び排気口の数も実施形態において例示したものに限定されない。例えば、額縁1において開口18がフレーム11においてパネル12の左右に相当する位置に1つずつ(合計2つ)形成されてもよい。額縁2においても同様である。例えば、額縁2において開口28がフレーム21においてパネル22の上下左右に相当する位置に1つずつ(合計4つ)形成されてもよい。
【0048】
額縁1において、開口17及び開口18はいずれもパネル12よりも正面側に形成されたが、開口17及び開口18の少なくとも一方、又はこれら以外の第3の開口がパネル12よりも背面側に形成されてもよい。
【0049】
額縁2において、開口27及び開口28はいずれもパネル12よりも背面側に形成されたが、開口27及び開口28の少なくとも一方、又はこれら以外の第3の開口がパネル22よりも正面側に形成されてもよい。あるいは、開口27及び開口28の少なくとも一方、又はこれら以外の第3の開口が、パネル22に形成されてもよい。また、空気の流れは使用状態において上から下に流れるものに限定されず、下から上、横から上、上から横、横から下、下から横、右から左、又は左から右など、どのような向きであってもよい。
【0050】
実施形態において作品9が光触媒層92を有する例を説明したが、作品9は光触媒層92を有さず、作品9をフレームに収容する際、作品9の裏に光触媒層を有するシートを挟んでもよい。シート91が炭酸カルシウムベースの材料で形成される場合にはシート91に絵画が形成され(すなわち絵画が描かれ)、絵画が形成された面にさらに光触媒層92が形成されてもよい。シート91が紙で形成される場合にはシート91に絵画が形成され(すなわち絵画が描かれ)、絵画が形成された面には光触媒層92が形成されず、作品9とは別体の、光触媒層を有するシートが絵画が形成された面側に挟まれてもよい。
【0051】
光触媒層が形成される領域は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、フレーム11(又はフレーム21)及び裏板13(又は裏板23)の少なくとも一方の内周面に光触媒層を形成してもよい。この場合において特に、フレーム11(又はフレーム21)のうち、作品9又はフラットパネルディスプレイの表示面と対向する面又は領域に光触媒層が形成されてもよい。
【0052】
送風機16及び送風機26の数及び取り付け位置はあくまで例示である。設計された経路に沿って空気を流すためのものであれば、送風機16及び送風機26の数及び取り付け位置はどのように設計されてもよい。
【0053】
第3実施形態において額縁1又は額縁2を取り付けた展示設備3において噴霧装置35を設ける例を説明したが、額縁1又は額縁2自身が噴霧装置を有してもよい。この場合において、噴霧装置35はフレーム11又はフレーム21に内蔵されてもよい。
【0054】
パネル12はガラスベースの材料で形成されるものに限定されず、樹脂ベースの材料で形成されるものであってもよい。
【0055】
各装置を構成する要素の数は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、額縁1は4台以上又は2台以下の光源15を有してもよい。額縁2についても同様である。また、光源15及び光源25は紫外線を照射するものに限定されず、可視光を照射するものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…額縁、2…額縁、3…展示設備、5…額縁、9…作品、11…フレーム、12…パネル、13…裏板、14…支持体、15…光源、16…送風機、17…開口、18…開口、21…フレーム、22…パネル、23…裏板、24…支持体、25…光源、26…送風機、27…開口、28…開口、31…筐体、32…開口、33…開口、34…開口、35…噴霧装置、36…操作パネル、91…シート、92…光触媒層、141…溝、142…溝、151…光源、152…光源、153…光源、211…溝、241…溝、251…光源、252…光源、C1…経路、C2…経路