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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089189
(43)【公開日】2022-06-15
(54)【発明の名称】クレーンの運転方法及びクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/82 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
B66C23/82 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196543
(22)【出願日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】10 2020 215 260.8
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513152551
【氏名又は名称】タダノ ファウン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト カイルハウアー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス エービンガー
(72)【発明者】
【氏名】デニス スクドラレク
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205DA01
(57)【要約】
【課題】クレーンの運転方法及びクレーンを提供する。
【解決手段】クレーン、特に移動式クレーン1の運転のために、そのクレーン1は、ほぼ水平に位置しているラフィング軸14を中心に位置調整可能なクレーンブーム12と、クレーンブーム12のためのガイ装置30とを備えており、そのガイ装置30は、クレーンブーム12のブーム先端部からブーム基部36まで伸びる2本のテンションロープ32と、テンションロープ32をクレーンブーム12に対して三角形状に支えるそれぞれのガイロッド34とを有するものであり、ラフィング軸14を中心にしたクレーンブーム12のラフィング角度Wを検出し、両ガイロッド34間の開き角度Vを、クレーンブーム12の使用中において、ラフィング角度Wに依存して変化させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン、特に移動式クレーン(1)の運転方法であって、
ここで前記クレーンは、ほぼ水平に位置しているラフィング軸(14)を中心に位置調整可能なクレーンブーム(12)と、前記クレーンブーム(12)のためのガイ装置(30)とを備えており、前記ガイ装置(30)は、前記クレーンブーム(12)のブーム先端部からブーム基部(36)まで伸びる2本のテンションロープ(32)と、前記テンションロープ(32)を前記クレーンブーム(12)に対して三角形状に支えるそれぞれのガイロッド(34)とを有しており、
本方法において、
前記ラフィング軸(14)を中心とした前記クレーンブーム(12)のラフィング角度(W)を検出し、
両前記ガイロッド(34)間の開き角度(V)を、前記クレーンブーム(12)の使用中において、前記ラフィング角度(W)に依存して変化させる、方法。
【請求項2】
前記開き角度(V)を連続的に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラフィング角度(W)が大きくなるにつれて、前記開き角度(V)を大きくする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記クレーンブーム(12)の長さ、又はブーム延長部を含む前記クレーンブーム(12)の長さを検出し、
前記開き角度(V)を、さらに前記クレーンブーム(12)の長さに依存して変化させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記クレーンブーム(12)によって持ち上げられた有効負荷(28)の重量を検出し、
前記開き角度(V)を、さらに前記重量に依存して変化させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
テンションウインチ(38)を用いて、前記テンションロープ(32)のロープ張力を、前記開き角度(V)、前記ラフィング角度(W)、前記クレーンブーム(12)の長さ、及び/又は、有効負荷(28)の重量に依存して変化させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
クレーン、特に移動式クレーン(1)であって、
ほぼ水平に位置しているラフィング軸(14)を中心に位置調整可能なクレーンブーム(12)と、
前記クレーンブーム(12)のためのガイ装置(30)であって、前記クレーンブーム(12)のブーム先端部からブーム基部まで伸びる2本のテンションロープ(32)と、前記テンションロープ(32)を前記クレーンブーム(12)に対して三角形状に支えるそれぞれのガイロッド(34)とを有するガイ装置(30)と、
前記クレーンブーム(12)の前記ラフィング軸(14)を中心にしたラフィング角度(W)を検出し、両前記ガイロッド(34)間の開き角度(V)を、前記クレーンブーム(12)の使用中において、前記ラフィング角度(W)に依存して変化させるように構成されているコントローラと、を備えたクレーン(1)。
【請求項8】
前記開き角度(V)を連続的に変化させるように構成されている、特に油圧式の開き駆動装置を備える、請求項7に記載のクレーン(1)。
【請求項9】
前記両ガイロッド(34)は、前記クレーンブーム(12)に対して径方向の平面内においてのみ互いに開くことが可能なように、連結されている、請求項8に記載のクレーン(1)。
【請求項10】
前記テンションロープ(32)のロープ張力を変化させるためのテンションウインチ(38)を備え、
前記コントローラは、前記テンションウインチ(38)を制御して、前記クレーンブーム(12)の使用中において前記ロープ張力を変化させるように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載のクレーン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、特に移動式クレーンに関し、好ましくは、通常は水平に向けられたラフィング軸を中心に位置調整可能な(すなわち、傾斜又は「ラフィング」(起伏)可能な)クレーンブームを有するクレーンに関する。さらに、本発明は、そのようなクレーンを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは負荷を運ぶために使用されることが知られており、建設現場において、通常、タワー(旋回)クレーン又は移動式クレーンの形で使用される。前者は固定された場所に設置され、通常、建設運転中はその場所に留まる。それに対して、移動式クレーンは、通常、自走式のシャーシ(大抵の場合「下部キャリッジ」と呼ばれる)の上に、大抵の場合、伸縮可能なクレーンブーム又はラチスブームが旋回可能に、及び、傾きの位置調整可能(傾斜可能又は「ラフィング可能」(起伏可能))に配置されている。それによって移動式クレーンは、柔軟性が高く、そのため、例えばタワークレーンを建てるために、又は、タワークレーンを建てるにはコストがかかりすぎるために短時間だけの使用の際に、(要求に応じて)建設現場に短時間だけ設置することも可能である。
【0003】
特に移動式クレーンは、比較的柔軟性が高く、例えば、様々な増設要素を使用することによって、様々な用途に対応できることが多い。例えば、増設先端部を使用することで、(水平方向と垂直方向の両方の)到達範囲を増やすことができる。移動式クレーンは、「シンプル」な増設先端部を有することが多い。この増設先端部は、ほぼ1つのブームセグメント(すなわち、伸縮可能クレーンブームの1つのセグメント)の長さを有する。一方、より大きな、すなわち、特により長い増設先端部は、通常、別々に輸送される。クレーンブームの持ち上げ可能な重量を増加させるために、クレーンブームの背面に沿って、負荷によるクレーンブームの曲げを打ち消すロープガイが使用されることが多い。このロープガイは、通常、2本のテンションロープを有し、その2本のテンションロープは、ブーム先端部からブーム基部まで伸び、いわゆるガイロッドによってクレーンブームに対して三角形状に支えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クレーンの運転性を向上させるという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。さらに、この課題は、本発明によれば、請求項7の特徴を有するクレーンによって解決される。有利な且つ部分的に発明性を有する、本発明の実施形態及びさらなる展開は、従属請求項及び以下の説明に記述されている。
【0006】
本発明による方法は、クレーン、特に移動式クレーンの運転に用いられる。この方法によって運転されるクレーンはクレーンブームを備えており、そのクレーンブームは、(少なくとも目的に応じた運転状態において)ほぼ水平に(目的に応じた運転状態において、好ましくは正確に、しかしながら、設置場所などに依存して、場合によっては「ただ」近似的に、すなわち最大±5度の偏差を有して)位置しているラフィング軸を中心に位置調整可能(「ラフィング可能」)である。さらに、クレーンは、クレーンブームのためのガイ装置を備えている。このガイ装置は、ブーム先端部からブーム基部まで伸びる2本のテンションロープと、そのテンションロープをクレーンブームに対して三角形状に支えるそれぞれのガイロッドとを含む。
【0007】
この方法によれば、クレーン運転中に、ラフィング軸を中心としたクレーンブームのラフィング角度を検出する。言い換えれば、クレーンブームの傾きの現在値を検出する。その際、両ガイロッド間の開き角度を、クレーンブームの使用中において、少なくともラフィング角度に依存して変化させる。特に、クレーンブームを安定させるために、開き角度を変化させる。
【0008】
ガイロッド間の開き角度が可変のため、開き角度を、傾き、すなわちラフィング角度の値に適合させることができる。認識できるように、クレーンブームにかかる曲げ負荷は、ラフィング角度が小さいほど、すなわち、クレーンブームが長手方向に伸びて水平に近づいたときに増加する。これは、(自重と持ち上げた有効負荷とによる)重量がクレーンブームに対してほぼ垂直に作用するためである。クレーンブームがより急勾配になる(特に「ラフィングアップ」される)ほど、重量による圧力負荷が大きくなり(且つ、それに応じて曲げ負荷が小さくなり)、さらに、特にラフィング面に対して横方向にクレーンブームが座屈するリスクが発生する。クレーンブームの使用中にラフィング角度に依存して開き角度を調整することによって、有利にも、クレーンブームの安定性が、現在のラフィング角度に適合され、それによって現在の負荷に適合され、その結果、改善される。
【0009】
クレーンブームは、特に角柱状に、好ましくはほぼ長方形の断面を有して形成されており、その際、そのクレームブームの長手方向軸は、可能な限り大きな曲げ抵抗モーメントを実現するために、好適にはラフィング面と平行に位置する。
【0010】
方法の好ましい一変形例においては、開き角度を連続的に、好ましくは無段階に変化させる。代替的には、ガイロッドが、多数の(例えば少なくとも5か所の、好ましくはそれ以上の)の個別の開き位置に位置調整できるように、クレーンブームに連結されており、それによって、無段階の位置調整に近づけることができる。
【0011】
このような開き角の連続的な位置調整は、特定のクレーンの構成に合わせて決められた個別の荷物表に頼る必要がなく、常に可能な限り重い荷物の範囲においてクレーンを運転できるという利点を有する。言い換えれば、クレーンの(可能な)荷物を動的に変化させることができ、その結果、従来の技術に比べてクレーンの動作範囲を拡大して比較的重い有効負荷を扱うことができる。
【0012】
好適には、ラフィング角度が大きくなるにつれて、すなわち、クレーンブームが急勾配になるにつれて、開き角度を大きくする。それによって、テンションロープとガイロッドとから形成される「三角形」が、ますます横に「開かれ」ていく。それによって、クレーンブームの「座屈」に対する安定性が高まり、一方においてラフィング面内における曲げに対する安定性は減少する。
【0013】
方法の好適な一変形例においては、クレーンブームの長さ、又はブーム延長部(しばしば「デリック先端部」などともいう)を含むクレーンブームの長さを検出する。この方法変形例においては、両ガイロッド間の開き角度を、さらにクレーンブームの長さに依存して変化させる。この場合、例えば、ラフィング角度が大きい場合における、より長いクレーンブームの場合の開き角度は、短いクレーンブームの場合に比べて不釣り合いに大きくなる。
【0014】
上記のブーム延長部がクレーンブームに対して傾斜可能な場合(いわゆる「ラフィング先端部」として実施されている場合)には、このラフィング先端部のクレーンブームに対する傾斜角度も、オプションにおいては、開き角度の設定時に考慮される。例えば、クレーンブームのラフィング角度が比較的大きく、しかしながら、ラフィング先端部の傾斜角度(特に地面方向に対する)が大きい場合には、ラフィング先端部がクレーンブームと一直線に並んでいる場合又は存在しない場合に比べて、両ガイロッド間の開き角度を小さく抑えることができる。
【0015】
方法のさらなる好適な一変形例においては、クレーンブームの長さに加えて、又はそれに代えて、クレーンブームによって持ち上げられた有効負荷の重量を検出する。その際、この重量は、(場合によっては)設定する開き角度を決定する際に考慮される。言い換えれば、この場合は、開き角度をさらに重量に依存して変化させる。
【0016】
例えば、現在の構成(特にクレーンブームの長さ、オプションにおいてブーム延長を含む)においてクレーンブームの曲がり線を計算し、そこからガイロッドの必要な調整を導き出す。その曲がり線においては、空間におけるクレーンブームの向き、長さ、及び負荷が考慮される。簡単に表現すれば、特に、(ラフィング面における)確定された曲げ負荷が小さいほど、ガイロッドをより大きく開くことができる。
【0017】
方法のオプションの一変形例においては、また、クレーンブームにかかる風負荷、特に風向きを確定する。例えば、横風が吹いている場合には、クレーンブームにかかる横方向の負荷が大きくなるため、特にクレーンブームが急傾斜している場合には、「穏やかな風」の時よりも開き角度をさらに大きくする。
【0018】
方法のさらなるオプションの一変形例においては、テンションウインチを用いて、テンションロープのロープ張力を、開き角度、ラフィング角度、クレーンブームの長さ、及び/又は、有効負荷の重量に応じて変化させる。ロープ張力は、認識されるように、クレーンブームの抵抗モーメントに影響を与える。この場合、例えばテンションウインチを用いてテンションロープのロープ張力を増減させる。
【0019】
本発明によるクレーンは、上記の方法に従って運転されるように構成されている。このクレーンは、好ましくは移動式クレーンであり、上記のようなクレーンブームを有している。このクレーンブームは、ほぼ(目的に応じた運転状態において、好ましくは正確に、しかしながら、設置場所などに依存して、場合によっては、「ただ」近似的に、すなわち最大±5度の偏差を有して)水平に位置しているラフィング軸を中心に位置調整可能である。さらに、このクレーンは、上記のクレーンブームのためのガイ装置を備え、このガイ装置は、クレーンブームのブーム先端部からブーム基部までの2本のテンションロープと、そのテンションロープをクレーンブームに対して三角形状に支えるそれぞれのガイロッドとを有する。さらに、クレーンはコントローラを備え、そのコントローラは、クレーンブームのラフィング角度を検出し、両ガイロッド間の開き角度を、クレーンブームの使用中において、(少なくとも)そのラフィング角度に依存して変化させるように構成されている。言い換えれば、コントローラは、上記の方法を、特に自動的に、オプションにおいては運転人(例えば、「クレーン運転者」)との相互作用によって、実行するように構成されている。
【0020】
このように、本発明による方法と本発明によるクレーンとは、ここ及び以下に記載されている特徴(特にクレーンは、方法の説明から得られる物質的特徴)、並びに利点を共有している。
【0021】
好ましい一実施形態においては、クレーンは、開き角度を連続的に変化させるように構成されている、特に油圧式の開き駆動装置を備えている。好ましくは、開き駆動装置は油圧シリンダであり、オプションとして、制御可能なロックバルブを有している。そのロックバルブは、油圧シリンダを任意の位置においてロックし、それによってガイロッドを現在の開き位置に保持することができるように使用される。
【0022】
好適な一実施形態においては、両ガイロッドは、クレーンブームに対して径方向の平面内においてのみ互いに開くことが可能なように、連結されている。
【0023】
好適には、クレーンは、クレーンブームの長さ、持ち上げられた有効負荷の重量、及び/又は、場合によっては風負荷を確定するセンサシステムを備える。オプションとして、コントローラは、クレーンの構成中における運転人側の入力に基づいてクレーンブームの長さを確定するように構成されている。
【0024】
さらなる好適な一実施形態においては、クレーンは、テンションロープのロープ張力を変化させるための上記のテンションウインチを備える。この場合、コントローラは、そのテンションウインチを制御して、クレーンブームの使用中においてロープ張力を変化させるように構成されている。
【0025】
好ましい形態においては、コントローラは、少なくともそのコア部分において、プロセッサとデータメモリとを有するマイクロコントローラによって形成されている。このマイクロコントローラには、本発明による方法を実行するための機能が、オペレーティング・ソフトウェア(ファームウェア)の形でプログラム的に実装されている。そのため、オペレーティング・ソフトウェアがマイクロコントローラ内において実行される場合には、本方法は(場合によっては、運転人との相互作用において)、自動的に実行される。コントローラは、本発明による方法を実行するための機能が回路技術的手段によって実装された、プログラム不可能な電子部品、例えばASICによって、本発明の範囲内において代替的に形成することができる。
【0026】
以下、本発明の実施例を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】クレーンブームを備えた移動式クレーンの概略的な側面図である。
図2】第1のラフィング位置にあり、且つ有効負荷を持ち上げた状態における、ガイ装置を有するクレーンブームの概略的な側面図である。
図3】クレーンブームの長手方向の軸に沿ってブーム先端方向に見たクレーンブームの概略的な部分図である。
図4図2よりも大きなラフィング角度を有する第2のラフィング位置におけるクレーンブームの、図2に基づく図である。
図5】第2のラフィング位置におけるクレーンブームの、図3に基づく図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全ての図において、互いに対応する部分及び量には常に同一の参照符号を付す。
【0029】
図1は、クレーン、具体的には移動式クレーン1を概略的に示している。移動式クレーン1は下部キャリッジ2を含み、その下部キャリッジ2は、車輪4を装備した複数の走行軸を有するシャーシと、コックピット6とを有する。移動式クレーン1は、さらに上部キャリッジ8を含み、この上部キャリッジ8は、垂直軸10を中心に旋回可能に、下部キャリッジ2に連結されている。さらに、移動式クレーン1はクレーンブーム12を含み、そのクレーンブーム12は、上部キャリッジ8の一部を構成し、ラフィング軸(起伏軸)14を中心に傾斜移動可能(「ラフィング可能」(起伏可能)、すなわち、その傾きを調整可能)に、上部キャリッジ8の取付台にヒンジ連結されている。クレーンブーム12は伸縮可能であり、そのために、クレーンブーム12の長手方向軸20に沿って変位可能なように、それぞれがより小さい断面を有する複数のブームセグメント18が収容されたベースセグメント16を有する。その際、「最後の」又は最小のブームセグメント18は、いわゆるローラヘッド22を有しており、そのローラヘッド22には滑車の複数のローラ24が配置されている。
【0030】
目的に応じたクレーン運転において、クレーンロープ26が、(有効)負荷28を持ち上げるためにローラヘッド22を経由して運ばれる。その一例として、図2において、クレーンブーム12を単独に示す。クレーンブーム12は、ラフィング軸14を中心にラフィング角度Wだけ上向きに傾斜している。その際、自重と負荷28の重さによって、クレーンブーム12には曲げモーメントがかかり、その曲げモーメントは、ラフィング角度Wをなすラフィング面にも曲げを発生させる。この曲げに対してクレーンブーム12を安定させるために、クレーンブーム12はガイ装置30を有する。このガイ装置30は、2本のテンションロープ32と2本のガイロッド34とを含む。両テンションロープ32は、ブーム基部36とブーム先端部(すなわちローラヘッド22の領域において)とに(少なくとも大まかに)係合しており、割り当てられたガイロッド34(本実施例においては、クレーンブーム12に対して直角に配置されている)によって、それぞれ、クレーンブーム12に対して三角形状に支えられている。ブーム基部36には、テンションロープ32用の概略的に示されたテンションウインチ38が配置されている。このテンションウインチ38によって、テンションロープ32のロープ張力を調整することができる。
【0031】
両ガイロッド34は、ヒンジによって、且つ、クレーンブーム12に対して径方向の平面内において互いに位置調整可能に、クレーンブーム12に、具体的に、本実施例においてはベースセグメント16に連結されている。ガイロッド34には、本実施例においては油圧シリンダによって形成されているアクチュエータ(図示せず)が割り当てられている。このアクチュエータは、位置調整、具体的には、図2図5に開き角度Vによって記述された両ガイロッド34の間のV字型の開きを生じさせる。そのため、このアクチュエータは「開き駆動装置」ともいう。アクチュエータは、開き角度Vを連続的に調整できるように構成されている。このために、アクチュエータは、ガイロッド34を現在の位置にロックする固定手段も含む。その際、例えば、制動装置が挙げられ、又は、上記の油圧シリンダ内の油圧を、特に制御可能なロックバルブを用いて固定することが挙げられる。
【0032】
移動式クレーン1は、以下に詳述する方法を自動的に(オプションとして、移動式クレーン1の操作員との相互作用において)実行するように構成された制御装置(図示せず、「コントローラ」ともいう)を含む。
【0033】
その際、制御装置は、現在のラフィング角度Wを確定する。オプションとして、ラフィング角度W(の現在の値)は、その際、図示しない(油圧式)ラフィングシリンダの(伸長)位置に基づいて算出され、その角度によってクレーンブーム12が傾斜し、すなわち「ラフィング」(起伏)されることになる。代替的には、移動式クレーン1は、クレーンブーム12に図示しない傾斜センサを有しており、この傾斜センサを用いて、ラフィング角度Wの知覚的な測定値を検出することができる。
【0034】
簡単な一変形例においては、制御装置は、クレーンブーム12の使用中(すなわち、負荷28のハンドリング中、ラフィング中など)に、ラフィング角度Wが大きくなるにつれて開き角度Vも大きくなるように、ガイロッド34のアクチュエータを制御する(図2図5参照)。
【0035】
これに関して、ラフィング角度Wが大きくなる場合には、その結果として曲げモーメントが減少するため、上記のような負荷による曲げが減少するという背景がある。ロープ支持されていないブームにおいては、その際、ブームの、例えば既知のオイラーのケースに従った、特に横方向への曲げ(座屈)のリスクが増大する。なぜなら、この場合には、クレーンブーム12は、図3から認識できるように長方形の断面を有しており、クレームブーム12の長手方向軸は重力方向に、すなわちラフィング面に平行に向いているためである。ガイロッド34の開きの増加によって、このリスクを打ち消すことができ、有利には、進行中の運転中において、ラフィング面内での剛性を下げ、代わりにラフィング面に対して横方向に剛性を上げることができる。
【0036】
更なる一実施例においては、制御装置は、ラフィング角度Wに加えて、クレーンブーム12の現在のブーム長さを確定する。現在のブーム長は、オプションにおいては動作中においても可変な量であるため、通常、制御装置のメモリから読み取ることができる。その他の場合においても、現在、(すなわち、現在のクレーン作業に具体的に)構成されているブーム長がメモリに保存される。
【0037】
さらに、制御装置は、持ち上げた負荷28の重量も確定する。この場合、ラフィング角度W、ブーム長、及び負荷28の重量に依存して、ガイロッド34の位置調整(開き)が行われる。
【0038】
例えば、クレーンブーム12が比較的長く伸ばされている場合には、ラフィング角度Wが比較的大きくなるまではガイロッド34は開けられない。
【0039】
開き角度Vの例示的な値は、ラフィング角度Wが10度の場合には0度、ラフィング角度Wが50度の場合には70度、ラフィング角度Wが80度の場合には120度である。
【0040】
オプションの一実施例においては、移動式クレーン1は、風センサ(図示せず)を有し、制御装置は、その風センサを用いてクレーンブーム12に作用する風負荷を確定する。制御装置は、ラフィング面に沿った風の場合よりも横風の場合において、ガイロッド34がより大きく開くようにアクチュエータを制御する。
【0041】
本発明の主題は、上記の実施例に限定されるものではない。むしろ、当業者は、本発明のさらなる実施形態を、上記の説明から導き出すことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 移動式クレーン
2 下部キャリッジ
4 車輪
6 コックピット
8 上部キャリッジ
10 垂直軸
12 クレーンブーム
14 ラフィング軸(起伏軸)
16 ベースセグメント
18 ブームセグメント
20 長手方向軸
22 ローラヘッド
24 ローラ
26 クレーンロープ
28 有効負荷
30 ガイ装置
32 テンションロープ
34 ガイロッド
36 ブーム基部
38 テンションウインチ
V 開き角度
W ラフィング角度
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】