(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089219
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】連続プレス成形用金型及びそれを用いた複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/50 20060101AFI20220609BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B29C70/50
B29C70/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201420
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】500152267
【氏名又は名称】丸八株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】小林 史武
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寿秀
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐一
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA11
4F205AA24
4F205AA29
4F205AA32
4F205AA36
4F205AB11
4F205AB18
4F205AC03
4F205AC04
4F205AC07
4F205AD16
4F205AJ11
4F205AJ13
4F205AK14
4F205AM32
4F205AR06
4F205HA08
4F205HA22
4F205HA32
4F205HA37
4F205HA43
4F205HB02
4F205HF02
4F205HG04
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK25
4F205HK28
4F205HK32
(57)【要約】
【課題】強化繊維と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いた複合材料の連続加工を可能にすると共に、成形材料の幅方向の樹脂のはみ出しを防ぎ、成形品の品位を向上させる連続プレス成形用金型、ならびに、プレス面への金型分割による影響を抑えた複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】プレス面の裏側に単数または複数の加熱部と冷却部を備えた連続プレス成形用金型であって、前記加熱部及び冷却部が加工方向に直列に設けられ、該直列に設けられた加熱部及び冷却部の両端側に別の冷却部が設けられ、これらの加熱部と冷却部がそれぞれ断熱材を介して設置されていることを特徴とする連続プレス成形用金型、ならびに、連続繊維からなる繊維基材と樹脂を含む成形材料を前記連続プレス成形用金型のプレス面の間に挿通し、プレス面の間欠的開閉を繰り返しながら、成形材料を所定のピッチで移動させ、プレスすることを特徴とする複合材料の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス面の裏側に、単数または複数の加熱部と、単数または複数の冷却部と、を備えた連続プレス成形用金型であって、
前記加熱部及び冷却部が、加工方向に直列に設けられ、
該直列に設けられた加熱部及び冷却部の両端側に、別の冷却部が設けられており、
これら直列に設けられた加熱部及び冷却部ならびに両端側の冷却部が、それぞれ断熱材を介して配置されていることを特徴とする連続プレス成形用金型。
【請求項2】
両端側の冷却部が、連続プレス成形用金型の全横幅に対して、所定の幅で設けられる、請求項1に記載の連続プレス成形用金型。
【請求項3】
プレス面に1枚ものの金属板が配置されており、該金属の温度0~100℃の線膨張係数が10~11(×10-6/℃)である、請求項1または2に記載の連続プレス成形用金型。
【請求項4】
連続繊維からなる繊維基材と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とを含む成形材料を、請求項1~3のいずれかに記載の連続プレス成形用金型のプレス面の間に挿通し、プレス面の間欠的開閉を繰り返しながら、前記成形材料を所定のピッチで移動させ、プレスすることを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項5】
成形材料が、下記の(a)~(d)のいずれかである、請求項4に記載の複合材料の製造方法。
(a)強化繊維基材に樹脂フィルムを積層した成形材料
(b)強化繊維基材に樹脂粉末を付着させた成形材料
(c)強化繊維基材に樹脂を付着含浸させた成形材料
(d)強化繊維と熱可塑性樹脂の合成繊維糸との複合糸から構成される成形材料
【請求項6】
成形材料を構成する、樹脂フィルムの幅もしくは繊維基材に付着している樹脂粉末部分の幅もしくは繊維基材に付着含浸している樹脂部分の幅が、加熱金型の幅と同じであり、
繊維基材の幅が、加熱金型の幅よりも広幅である、
請求項5に記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続プレス成形用金型、及びそれを用いた複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維と熱硬化性樹脂とからなる複合材料は、軽量かつ機械強度に優れることから、構造部材の金属代替材料として航空機や自動車等に使用されている。これら複合材料は、炭素繊維基材に液状エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させ樹脂を硬化させる方式により製造されるものの他、加熱及び加圧下で炭素繊維基材に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含浸させるタイプのものが知られている。
【0003】
しかし、繊維強化複合材料は、流動性の極めて悪い強化繊維の存在により、短時間での成形性に劣る。例えば、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、樹脂の硬化に時間を要し、一方、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合には、一般的には熱硬化性樹脂と比較して工程中での樹脂粘度が高いため、繊維に樹脂を含浸する際に時間を要する。
【0004】
ダブルベルトプレス等連続加工できる装置はあるが、非常に高価である。連続プレス加工では、プレスにて段階的に徐々に材料をプレスしていく必要があり、プレス部が複数必要となる。更にプレス部が別々に作動する必要があるため、装置が高価になってしまう。
【0005】
そこで、連続繊維を用いた強化繊維シートに樹脂を含浸した複合材料を、プレス面に間欠的に供給し、熱プレスが完了した成形品を間欠的に引き取る方式により、シート状加工物を連続成形する方式が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献2では、プレス面に温度設定が異なる3つの加熱領域を設け、材料供給側の加熱領域の温度を中央の加熱領域の最高温度より20℃以上低く設定し、成形品引取側の加熱領域の温度を中央の加熱領域の最高温度よりも高くして熱硬化性樹脂の硬化時間を短縮させている。
【0006】
しかし、プレス装置では、樹脂が繊維に含浸しやすい粘度になるまで温度を上げると、圧力をかけた時に樹脂と繊維のはみ出しが起こってしまうため、壁を設ける必要がある。壁を設けた場合、壁に樹脂が付着し、連続で加工していくと壁に付着した樹脂が溜まっていってしまう。
さらに、金型を分割する場合には、金型温度を別々の設定にするので、温度の影響を受けないように金型を離すか断熱材等で温度を遮断する必要があるが、金型を離す場合は金型と金型の間に空間が出来てしまうため、製品に金型端部の跡がついてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63-43795号公報(特許請求の範囲、第1図等)
【特許文献2】特開2005-125774号公報(特許請求の範囲、
図1~
図2等)
【特許文献3】特開2003-181832号公報(
図1、実験例1~実験例3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いた複合材料の連続加工を可能にすると共に、成形材料の幅方向の樹脂のはみ出しを防ぎ、成形品の品位を向上させる連続プレス成形用金型、ならびに、プレス面への金型分割による影響(即ち、金型を分割した跡が成形品に付く事)を抑えた複合材料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金型を、成形材料の流れ方向(加工方向)に加熱金型と冷却金型に分割する(以下、加熱金型と冷却金型に分割した金型を「分割金型」と称することがある。)と共に、これら加熱金型と冷却金型の両端側に冷却金型を設け、分割金型の隙間を開けず断熱材を挟み込んで連結することにより、加熱から冷却までの連続加工が可能になり、加熱金型と冷却金型を同じ圧力条件で稼動できる製造装置が得られること、又、成形材料の供給方法を調整することにより、成形品の生産効率や経済性の向上が図れることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、プレス面の裏側に、単数または複数の加熱部と、単数または複数の冷却部と、を備えた連続プレス成形用金型であって、
前記加熱部及び冷却部が、加工方向に直列に設けられ、
該直列に設けられた加熱部及び冷却部の両端側に、別の冷却部が設けられており、
これら直列に設けられた加熱部及び冷却部ならびに両端側の冷却部が、それぞれ断熱材を介して設置されていることを特徴とする連続プレス成形用金型を提供する。
【0011】
また、本発明は、連続繊維からなる繊維基材と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂とを含む成形材料を、上記の連続プレス成形用金型のプレス面の間に挿通し、プレス面の間欠的開閉を繰り返しながら、前記成形材料を所定のピッチで移動させ、プレスすることを特徴とする複合材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合材料用の連続プレス成形用金型及び複合材料の製造方法によれば、以下の効果が奏される。
(1)成形材料の流れ方向(加工方向)に加熱金型と冷却金型を設け、分割した金型の隙間を開けず断熱材を挟み込んで連結することにより、加熱から冷却までの連続加工が可能になり、加熱金型と冷却金型を同じ圧力条件で稼動できる。
(2)加熱金型及び冷却金型の両端側に、冷却金型を設け、繊維基材の幅を加熱金型の幅より大きくし、繊維基材の耳部を両端側の冷却部にはみ出させることにより、成形材料中の溶融樹脂が繊維基材の外側にはみ出すことを防止できるので、複合材料のVf及びVr(複合材料内の繊維及びマトリックス樹脂の体積比率)のばらつき削減が可能となる。繊維基材からの溶融樹脂のはみ出しが防止されることにより、複合材料の外観や強度のばらつきを削減することが可能となる。
(3)複数の加熱金型を直列に設けることにより、成形材料を予備加熱した後、本加熱することが可能になる。それにより、繊維基材への熱可塑性樹脂の含浸性(含浸速度、低ボイド率)を高めることができ、成形品の連続加工が可能となることで、成形品(複合材料)の高品質化、製造時間の短縮、製造コストの削減が可能になる。
(4)複数の冷却金型を直列に設けることにより、急激な冷却による成形材料の収縮を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の連続プレス成形用金型の一例を示す概略平面図である。
【
図2】
図1の連続プレス成形用金型の概略断面図である。
【
図3】本発明の別の連続プレス成形用金型の一例を示す概略平面図である。
【
図4】本発明の複合材料の製造方法の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
【0015】
[連続プレス成形用金型]
図1は、本発明の連続プレス成形用金型の一例を示す概略平面図であり、
図2は、
図1の連続プレス成形用金型の概略断面図である。
図3は、本発明の別の連続プレス成形用金型の一例を示す概略平面図である。
図4は、本発明の
図1の連続プレス成形用金型を用いる複合材料の製造方法の一例を説明する説明図である。
図1~
図4において、10は連続プレス成形用金型(10aは上プレス部の金型、10bは下プレス部の金型)、1,2は加熱部(加熱金型)、3,4は冷却部(冷却金型)、5は分割した金型間に配置された断熱材、6はプレス面、7は金型1~4とプレス面6との間に配置された膨張黒鉛シートである。11は繊維基材、12は樹脂シートである。
【0016】
本発明の連続プレス成形用金型は、互いに対称な上プレス部と下プレス部とを備えた連続プレス成形用金型である。上下のプレス部のプレス面6の裏側に、単数または複数の加熱部と、単数または複数の冷却部とに分割された金型が、それぞれ、断熱材5を介して加工方向に直列に配置される。
【0017】
本発明の連続プレス成形用金型では、複数の加熱金型及び冷却金型を、断熱材5を介して配置することにより、各金型の設定温度を精度よく確保することが可能となり、結果として、繊維基材への樹脂含浸性が向上し、高強度の複合材料を成形することができる。
【0018】
上記の断熱材5の厚みは、特に制限されるものではなく、所望の断熱効果との兼ね合いで設定することができる。例えば、加熱金型と冷却金型の間に設置する断熱材の厚みは、より良好な断熱効果を得るために厚くすることが好ましく、加熱金型と加熱金型の間に設置する断熱材の厚みは比較的薄めにすることができる。
【0019】
図1には、本発明の連続プレス成形用金型の上プレス部10aのプレス面6の裏側の、加熱金型及び冷却金型の構成例を示している。加工方向に対して入口側から順に、加熱金型1、加熱金型2、冷却金型3が、それぞれ断熱材5を介して設けられ、さらに加熱金型1,2及び冷却金型3の両端側に、断熱材5を介して冷却金型4が設けられている。下プレス部10bについては、図示を省略するが、上プレス部10aと対称に構成されている。
【0020】
図3には、本発明の連続プレス成形用金型の上プレス部10aのプレス面6の裏側の、
図1とは異なる加熱金型及び冷却金型の構成例を示している。加工方向に対して入口側から順に、冷却金型3、加熱金型1、加熱金型2が、それぞれ断熱材を介して設けられ、さらに冷却金型3及び加熱金型1,2の両端側に、断熱材5を介して冷却金型4が設けられている。下プレス部10bについては、図示を省略するが、上プレス部10aと対称に構成されている。
【0021】
本発明では、加工方向に直列に設けられた加熱部(加熱金型)及び冷却部(冷却金型)の両端側に、別の冷却部(冷却金型4)が、断熱材5を介して設けられている。この冷却金型4を設けることにより、成形材料を構成する繊維基材の幅を加熱部より広くして冷却部にはみ出させることができる。成形材料を構成する樹脂材料の幅を加熱金型と同じ幅にしておくことにより、樹脂が繊維に含浸しやすい粘度になるまで温度を上げて圧力をかけた時にはみだした樹脂が冷却部の繊維基材に含浸するので、幅方向への樹脂のはみ出しを防止できる。その結果、はみ出し樹脂の無い高品質の複合材料を製造できる。なお、樹脂材料の幅は、加熱金型の幅より狭くすることもできるが、生産効率や経済性を考慮すると、加熱金型と同じ幅にすることが好ましい。
【0022】
また、加熱金型1,2及び冷却金型3の両端側の冷却金型4は、連続プレス成形用金型の全横幅に対して、所定の幅で設けられる。この両端側の冷却金型4の幅は、連続プレス成形用金型の全横幅に対する比率として、それぞれ、5~15%の範囲に設定されることが好ましい。各冷却金型4の幅が5%以上あれば、繊維基材の耳(両耳)部分を冷却部に収容することにより、加熱された樹脂が加熱金型上の繊維基材から溢れ出した際に、この冷却部で溢れ出た樹脂を収容できるので、複合材料の外観や品質の低下を防止することができる。また、15%以内であれば、加工性、生産性が著しく低下することがない。両端側冷却金型4の幅は、連続プレス用金型の規模により異なるが、生産性等を考慮すると、一般的には50~200mmが好ましく、60~150mmがより好ましい。
また、冷却金型4の形状は、幅方向の樹脂のはみ出しを防ぐことができる形状であれば特に限定されず、例えば、加工方向に対して同じ幅で構成する(
図1、
図3参照)、加工方向に沿って徐々に狭くする、加工方向に沿って徐々に広くする等、様々な形態であって良い。
【0023】
図2は、
図1の連続プレス成形用金型の上プレス部10aと、下プレス部10b(
図1では図示していない)とを、加工方向に対して入口の加熱金型1の側から見たときの概略断面図である。本発明の連続プレス成形用金型では、
図2に示す様に、上下のプレス部10a,10bにおける分割した金型の加工面6が均一になる様に、加熱金型1,2及び冷却金型3ならびに両端側の冷却金型4の高さが同じ高さになるよう構成する。この様に、各金型の加工面の高さを揃えることにより、上プレス部10a加工面と下プレス部10b加工面の間隔は、成形材料の入口から出口に至るまで一定となるので、成形品(複合材料)に金型を分割した跡が付くことを防止できる。
【0024】
また、本発明の連続プレス成形用金型では、
図2に示す様に、上下のプレス面6と、分割金型及び両端側冷却金型の上面との間に、膨張黒鉛シート7を挟み込むことができ、これにより、材料に掛かる圧力バランスのずれを緩和することができる。膨張黒鉛シートは、従来公知のものを使用することができる。
【0025】
分割金型及び両端側冷却金型の表面に配置する(即ち、上下のプレス面6を構成する)材料としては、1枚ものの金属板が好ましい。こうすることで、成形品に金型を分割した跡が付くことを防止できる。
1枚ものの金属板を構成する材料としては、ステンレス鋼材、一般鋼材、マグネシウム合金、アルミニウム合金、チタン合金等が挙げられるが、温度0~100℃の線膨張係数が10~11(×10-6/℃)である金属が好ましい。線膨張係数が前記の範囲にある金属を選択することにより、鉄製の金型との熱膨張差を最小限に抑えることができるため、寸法精度が高い高品質の成形品(複合材料)を製造することができる。
【0026】
金属板を構成する材料は、耐錆性に優れる点からステンレス鋼材が好ましい。その中でも、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430、SUS405、マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS403、SUS410、SUS416、SUS440A,B,C等が好ましく、特に熱膨張率の少ないSUS430が好ましい。
【0027】
本発明の連続プレス成形用金型は、加熱機構を有する加熱金型と、冷却機構を有する冷却金型とから構成されており、冷却機構としては種々の方式を採用でき、例えば、水等の冷媒あるいは低温のオイルをパイプ内の流路を通過させる通常の方式が採用できる。コスト面からは冷媒が水であることが好ましい。加熱機構としては種々の方式を採用でき、例えば、一般的に使用されているヒーターが採用できる。加熱機構及び冷却機構には、図示していない出力調整装置や制御装置が設けられている。本発明の連続プレス成形用金型には、プレス成形後に成形品を引き取る、引き取り機構が設けられていても良い。
【0028】
[繊維基材]
本発明において、複合材料成形用の繊維基材は、非連続繊維(短繊維、フェルト)であっても良いし、連続繊維であっても良いが、複合材料の強度向上が図れる点で、連続繊維であることが好ましい。繊維基材を連続繊維とすることにより、非連続繊維の場合と比較して、成形品や、複数の成形品を接合した成形体に、より優れた物性(強度・弾性率・軽量性等)を付与することができる。
【0029】
繊維の種類としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等の強化繊維を用いることが可能である。これらの強化繊維は、1種を単独で用いることができ、又、2種類以上を併用することもできる。複数の強化繊維を1枚の織物中に織り込むことや、成形時に異なる強化繊維を重ね合わせて同時に成形することも可能である。炭素繊維は融点を示さず、加工性に優れていることから特に好適に用いることができる。ガラス繊維も、前述の繊維の中でも比較的安価に入手できるため、同様に好適に用いることができる。
【0030】
連続繊維からなる繊維基材の形態としては、長繊維フィラメント糸を製織または製編した織物や編物(織編物)が好ましく、強化繊維を一方向に配列させたいわゆる繊維束でも良い。炭素繊維と熱可塑性の合成繊維糸との複合繊維糸を経糸及び/または緯糸として織編した織編物、あるいは、炭素繊維織物(一方向織物、二方向織物)の経糸や緯糸の交絡部を熱可塑性繊維で目止めした織物でも良い。織物組織としては、平織、綾織、三軸織等が挙げられる。編物としては、丸編機等のよこ編機、または、トリコット編機、ラッセル編機、ミラニーズ編機等のたて編機で製編したものが挙げられる。上記形態の中でも、織物は、樹脂を含浸させた際の形態保持性に優れている点で特に好ましい。開繊炭素繊維束から構成される織物は、樹脂含浸性に優れている点で特に好ましい。
【0031】
織編物の目付は、好ましくは50~500g/m2であり、より好ましくは50~450g/m2、さらに好ましくは75~400g/m2である。目付が大きすぎると、樹脂を短時間で含浸させることが困難となり、一方、目付が小さすぎると、複合材料の機械特性が不十分になるおそれがある。織編物の使用枚数に制限はない。
【0032】
[樹脂材料]
本発明において、複合材料成形用の樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用できる。
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、芳香族ポリエーテルケトン、液晶芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)等、及び、それらの共重合体や変性体を挙げることができ、これらのうち1種を単独で用いることもできるし、又、これらのうちの2種類以上からなる混合樹脂を用いることもできる。
【0033】
熱硬化性樹脂の種類としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ユリア、メラミン、ベンゾオキサジン、シアネート、マレイミド、ビスマレイミド、ベンゾシクロブテン等や、これらの共重合体、変性体を挙げることができ、これらのうち1種を単独で用いることもできるし、又、これらのうちの2種類以上からなる混合樹脂を用いることもできる。硬化剤は、公知の熱硬化性樹脂組成物における割合で添加されたものが用いられる。
【0034】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂には、諸物性を改良、調整する目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、他の樹脂や、改質剤、充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤、エラストマー、難燃剤、密着性向上剤、シランカップリング剤、吸熱フィラー等が適宜添加されていても良い。
【0035】
上記の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の中でも、繊維基材への含浸性、複合材料の機械的特性が良好である点から、ポリアミド系、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、エポキシ系、ベンゾオキサジン系樹脂等が好ましい。
【0036】
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂と言った樹脂材料は、フィルム状、粉末状、繊維状、液状等の各種形態で使用できるが、複合材料成形時において溶融し易く、繊維基材への含浸性、接着性、取扱性に優れる点からは、フィルムあるいは粉末状が好ましい。樹脂フィルム及び樹脂粉末は、公知の方法で製造されたものが用いられる。
【0037】
[分割金型の構成]
本発明の連続プレス成形用金型において、加工方向に直列に設ける加熱金型及び冷却金型(分割金型)の配置は、成形材料(特に樹脂材料)の種類や特性に応じて自由に設計することができる。
分割金型の構成例として、
図1及び
図3には、複数の加熱部(加熱金型1、加熱金型2)及び単数の冷却部(冷却金型3)を加工方向に直列に設けた構成例を示しているが、本発明では、加熱金型及び冷却金型は、少なくとも各1台必要である点を除き、配置順序や台数に制限はない。一方、両端側冷却金型4は、通常、分割金型の直列長さ(断熱材の幅を含む)の総長と同じ長さのものが配置される。
【0038】
図1に示す分割金型の構成例によれば、入口側から順に、2台の加熱金型1,2を配置し、かつ、これら複数の金型の温度を調整することにより、成形材料を、加熱金型2による本加熱前に加熱金型1で予備加熱することができるため、加工時間の短縮が可能となる。また、出口側に冷却金型3を設けることにより、冷却を行うことによる結晶化度のコントロールで、成形品(複合材料)物性の向上、及び、厚み制御によるばらつき削減が可能となる。
【0039】
図3に示す分割金型の構成例によれば、入口側に冷却金型3を配置することにより、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いる場合に、加熱・加圧部に届くまでは硬化させないことが可能となるため、ボイドや強度ばらつきが削減された良好な成形品を得ることができる。
【0040】
すなわち、繊維基材と熱可塑性樹脂とからなる成形材料の場合は、
図1のように分割金型の配置を、加工方向に対して入口側に加熱金型、出口側に冷却金型とすることができる。加熱金型を入口側に配設することにより、熱可塑性樹脂を軟化もしくは溶融させ加圧することで繊維基材と複合化することができ、又、冷却金型を出口側に配設することにより、別途、後流に冷却装置を設ける必要がないため、製造装置を簡素化することができる。
【0041】
例えば、成形材料の予備加熱と本加熱を行う場合は、連続する2台または3台の加熱金型を配設することができる。成形材料の予備冷却と本冷却を行う場合は、連続する2台または3台の冷却金型を配設することができる。
【0042】
一方、繊維基材と熱硬化性樹脂からなる成形材料の場合は、
図3のように分割金型の配置を、加工方向に対して入口側を冷却金型とすることができる。冷却金型を入口側に配設することにより、プリプレグの硬化度を調整することができる。
【0043】
上記した様に、本発明では、加熱金型と冷却金型を機能的に直列配置することにより、加熱から冷却までの工程を1台のプレス成形金型で行うことができる。加熱部(加熱金型)及び冷却部(冷却金型)の構成は、成形材料の種類や特性によって変更することができる。例えば、繊維基材と熱可塑性樹脂の複合材料を製造する場合の金型配置例としては、成形材料の加工方向に対して入口側から順に、
(A-1)加熱金型→加熱金型→加熱金型→冷却金型
(A-2)加熱金型→加熱金型→冷却金型→冷却金型
等の構成を採用することができる。
(A-1)の様に加熱金型を3台設けることにより、
図1の金型に比べてより正確な加熱温度調整を行うことが可能となり、又、(A-2)の様に冷却金型を2台設けることにより、
図1の金型に比べて急激な冷却による材料収縮等を抑制することが可能となる。
【0044】
また、例えば、繊維基材と熱硬化性樹脂の複合材料を製造する場合の金型配置例としては、成形材料の加工方向に対して入口側から順に、
(B-1)冷却金型→加熱金型→加熱金型→加熱金型
(B-2)冷却金型→加熱金型→冷却金型
等の構成を採用することができる。
(B-1)の様に加熱金型を3台設けることにより、
図3の金型に比べてより厳密な硬化度の調整を行うことが可能となり、又、(B-2)の様に冷却部を成形材料入口側と出口側の2台設けることにより、
図3の金型よりも材料の変形を抑制することが可能となる。
【0045】
あるいは、成形材料の加工方向に対して入口側から順に、
(C-1)冷却金型→加熱金型→冷却金型→加熱金型
等の構成を採用することができる。
冷却金型と加熱金型を交互に設けることにより、熱硬化性樹脂の硬化度の精密な調整が可能となる。
【0046】
[製造方法]
本発明の複合材料の製造方法では、連続繊維からなる繊維基材と、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂(樹脂材料)とを含む成形材料を、同時に、本発明の連続プレス成形用金型のプレス面の間に挿通し、プレス面の間欠的開閉を繰り返しながら、前記成形材料を所定のピッチで移動させ、プレス成形する。例えば、
図4に例示した様に、繊維基材11と、該繊維基材11よりも狭幅の樹脂材料12とを含む成形材料を、連続プレス成形用金型のプレス面の間に挿通し、間欠的にプレスする。プレス成形後に成形品を引き取る。
【0047】
間欠的にプレスする場合の成形材料としては、連続繊維からなる繊維基材に樹脂フィルムを積層、樹脂粉末を付着、あるいは液状樹脂を付着含浸させた成形材料を挙げることができる。プレス成形時において溶融樹脂が繊維基材の外側にはみ出すことを防止しつつ、加熱効率を高めるためには、樹脂フィルムの幅は加熱金型と同じ幅であることが好ましい。一方、繊維基材の幅は、溶融して流動し易くなった樹脂を収容できるように、樹脂フィルムの幅よりも広幅であることが好ましく、最大幅が連続プレス成形用金型の幅であることがより好ましい。例えば、
図4に示す様に、繊維基材11が連続プレス成形用金型の幅で、樹脂フィルム12が加熱金型1の幅である成形材料が最も好ましい。
【0048】
本発明で用いる成形材料としては、例えば、(a)熱可塑性樹脂フィルムが積層した繊維基材や(b)熱硬化性樹脂フィルムが積層した繊維基材の他に、(c)熱可塑性または熱硬化性の樹脂粉末を付着させた繊維基材、(d)熱硬化性の液状樹脂を付着含浸させた繊維基材、等を挙げることができる。繊維基材に付着させた樹脂粉末部分の幅、あるいは、繊維基材に付着含浸させた液状樹脂部分の幅は、プレス成形時における溶融樹脂のしみ出しや、硬化度のばらつきを防止するためには、加熱金型の幅とすることが好ましい。
【0049】
間欠プレスは、上下のプレス部のプレス面を開き、成形材料を最初の分割金型に送り、上下のプレス部のプレス面を閉じ、加熱加圧(または冷却加圧)を行う。所定時間後、上下のプレス部のプレス面を開き、成形材料を次の分割金型に送り、上下のプレス部のプレス面を閉じ、加熱加圧を行う。所定時間後、同様の基本操作を繰り返し、成形材料を次の分割金型に送り、最後に冷却加圧(または加熱加圧)を行う。この際、加工ピッチを、分割金型長さの65~85%とすることが、複合材料に金型分割跡が付くことを防止する観点より好ましい。より好ましくは75~80%である。
【0050】
本発明により製造される複合材料における強化繊維の体積含有率(Vf)は、低すぎる場合は複合材料の利点が失われ、一方、高すぎる場合は樹脂材料の含浸が不十分となり、複合材料に機械的強度を発現させることが困難となることより、35~75%であることが好ましい。強化繊維の含有率が、35%未満では、低熱膨張及び高弾性の連続繊維複合材料が得られ難くなり、75%を超えると、複合材料の加工性及びハンドリング性が不良になる傾向がある。強化繊維の体積含有率(Vf)は、さらに好ましくは40~70%、特に好ましくは55~60%である。
【0051】
本発明の連続プレス成形用金型において、成形加工時における加熱金型及び冷却金型のプレス面の温度は、複合材料に使用するマトリックス樹脂に応じて変更する。
加熱金型の場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性熱可塑性樹脂では融点の-10℃~+80℃程度、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の非結晶性熱可塑性樹脂ではガラス転移温度(Tg)の-10℃~+80℃程度、融点やガラス転移温度が不明または無い樹脂では荷重撓み温度やビカット軟化温度等、をそれぞれ目安とする。冷却金型のプレス面の温度は、加工方向に直列に設けられた冷却金型では50~150℃が好ましく、両端側に設けられた冷却金型では0~100℃が好ましい。
【0052】
連続プレス成形用金型における成形圧力は、0.1~10MPa(ゲージ圧)が好ましく、2~6MPa(ゲージ圧)がより好ましい。0.1MPa未満では、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を流動させて繊維基材に含浸させる効果が不十分となる。10MPaを超えると、前記樹脂のプレス面外への流出、繊維基材の破壊が生じることがある。
【0053】
本発明によれば、炭素繊維織物等の繊維基材に、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなるフィルム等を重ね合わせ熱プレス等することにより、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が炭素繊維織物等に含浸した複合材料を得ることができる。炭素繊維織物等の繊維基材及びフィルムは、複数枚重ね合わせても良い。この際、各炭素繊維織物の組織方向が一定の角度でずれる様に各炭素繊維織物を重ね合わせることにより、より一層機械強度に優れる複合材料を得ることができる。
【0054】
また、本発明によれば、製造された複合材料を複数重ね合せて成形することにより、厚さ0.5mm~10mmまで広範囲の厚みの長尺の成形品を製造できる。成形品は、そのまま板材として使用できる。
【実施例0055】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
図1に示す構成の連続プレス成形用金型を使用した。加熱金型1と加熱金型2の間に幅5mmの断熱材、加熱金型2と冷却金型3の間に幅10mmの断熱材、冷却金型4と他の金型の間に幅10mmの断熱材が挟み込まれている。成形材料進行方向の加熱金型1、加熱金型2及び冷却金型3の合計長さは450mmである。断熱材と金型1~4は、上面(加工面)の高さが同じである。
【0057】
[実施例1]
繊維基材として、幅1450mmの炭素繊維平織物(3Kクロス、目付200g/m2)を使用し、樹脂材料として、幅1270mmのポリアミド6樹脂フィルム(目付120g/m2、融点215℃)を使用した。
繊維基材の片面にかつ中央部に、樹脂フィルム1枚を重ね合わせたもの(成形材料)を、連続プレス成形用金型に供給した。加熱金型1及び加熱金型2の表面温度は280℃、冷却金型3及び冷却金型4の表面温度は100℃に設定し、プレス圧力は2MPaに設定した。加工ピッチ120mmで成形材料を移動させ、上記の表面温度及びプレス圧で繰り返しプレスを行い、1ply品を得た(トータルプレス時間2分)。
得られた1ply品を10枚重ねたものを、ダブルベルトプレス装置を使用して、表1に示す成形条件でプレスし、厚さ2.17mm、Vf51.0%、RC37.5%の複合材料を得た。
金型温度を上げて圧力を掛けた時でも、樹脂の織物からのはみ出しや、織物の金型からのはみ出しは全く起きなかった。金型と金型の間に空間が無いため、製品に金型端部の跡が付くこともなかった。また、金型の加工面と、金型と金型の間に挟み込んだ断熱材の上面の高さが揃えられているため、金型と断熱材の境目の跡が製品に付くこともなかった。得られた1ply品及び複合材料は、表面が均一な光沢を有していた。
【0058】
[実施例2]
繊維基材として、実施例1で使用したものと同じ炭素繊維平織物を使用し、樹脂材料として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のパウダーを使用した。
繊維基材の上面に、幅1270mmに亘ってPEEKパウダーをばら撒いたもの(成形材料)を、連続プレス成形用金型に供給した。加熱金型1及び加熱金型2の表面温度は380℃、冷却金型3及び冷却金型4の表面温度は100℃に設定し、プレス圧力は2MPaとした。加工ピッチ120mmで成形材料を移動させ、上記の表面温度及びプレス圧で繰り返しプレスを行い、1ply品を得た。
得られた1ply品を9枚重ねたものを、ダブルベルトプレス装置を使用して、表1に示す成形条件でプレスして、厚さ2.00mm、Vf50.8%、RC41.2%の複合材料を得た。
炭素繊維織物に高融点の熱可塑性樹脂を複合化する際に、金型表面温度を高くしても、樹脂の織物からのはみ出しは全く起きなかった。高融点樹脂を短時間で複合化することができた。得られた1ply品及び複合材料は、表面が均一な光沢を有していた。
【0059】
[実施例3]
繊維基材として、実施例1で使用したものと同じ炭素繊維平織物を使用し、樹脂材料として、芳香族ポリエステル系液晶ポリマー(LCP)のパウダーを使用し、加熱金型1及び加熱金型2の表面温度を360℃とした以外は、実施例2と同様の方法で1ply品を得た。
得られた1ply品を9枚重ねたものを、ダブルベルトプレス装置を使用して、表1に示す成形条件でプレスして、厚さ1.99mm、Vf50.4%、RC42.9%の複合材料を得た。
炭素繊維織物への熱可塑性液晶樹脂の複合化を短時間で行うことでき、金型表面温度を高くしても、樹脂の織物からのはみ出しは全く起きなかった。得られた1ply品及び複合材料は、表面が均一な光沢を有していた。
【0060】
[実施例4]
成形材料として、ポリプロピレン繊維をコミングルした炭素繊維織物(目付783g/m2)を使用した。
成形材料を連続プレス成形用金型に供給し、加熱金型1及び加熱金型2の表面温度は230℃、冷却金型3及び冷却金型4の表面温度は100℃に設定し、プレス圧力は2MPaに設定した。加工ピッチ120mmで成形材料を移動させ、上記の表面温度及びプレス圧で繰り返しプレスを行い、1ply品を得た(トータルプレス時間0.5分)。
得られた1ply品を4枚重ねたものを、ダブルベルトプレス装置を使用して、表1に示す成形条件でプレスし、厚さ2.00mm、Vf35.2%、RC40.0%の複合材料を得た。
炭素繊維/PPコミングル織物を用いることにより、短時間で複合材料を得ることができた。
【0061】
【0062】
本発明の連続プレス成形用金型を用いることにより、金型温度を上げて圧力を掛けた時でも樹脂の繊維からのはみ出し等が全く起きず、製品に金型端部の跡が付くこともなく、金型と断熱材の境目の跡が製品に付くこともなかった。従来のプレス成形に比べて、短時間で成形することができた。
本発明の連続プレス成形用金型及びそれを用いる複合材料の製造方法は、繊維基材を強化繊維とし、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として用いる複合材料の成形に幅広く利用できる。従来のプレス成形に比べ短時間で成形できるため、経済的メリットが大きい。よって、産業の発達に寄与することは言うまでもない。