(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089232
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】除塵システム及びエア供給システム
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20220609BHJP
H05F 3/06 20060101ALI20220609BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B08B5/00 A
H05F3/06
G21K5/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201445
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】入江 史崇
【テーマコード(参考)】
3B116
5G067
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116BB32
3B116BB62
3B116BB72
3B116BB89
5G067DA24
(57)【要約】
【課題】軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、軟X線による除電を利用して物体表面の塵埃を除去することのできる除塵システムを提供することである。
【解決手段】給気管22を通してエアの供給を受け、除塵すべき物体Wの表面に向けてエア吐出口173からエアを吐出するエア噴射室170と、前記物体Wの表面上のエアをエア吸引口112a、112bを通して吸引するエア吸引室110とを有する除塵ヘッド10と、軟X線を照射して前記エア噴射室170内のエアをイオン化させる軟X線照射器18と、を備えた構成となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気管を通してエアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア吐出口からエアを吐出するエア噴射室と、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引するエア吸引室とを有する除塵ヘッドと、
軟X線を照射して前記エア噴射室内のエアをイオン化させる軟X線照射器と、を備えた除塵システム。
【請求項2】
前記軟X線照射器は、軟X線を前記エア噴射室内に照射するように設けられた、請求項1記載の除塵システム。
【請求項3】
前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管内に照射するように設けられた、請求項1記載の除塵システム。
【請求項4】
前記給気管は、給気管本体と、該給気管本体から分岐する閉鎖管とを有し、
前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管本体に向けて照射するように前記閉鎖管内に設けられた、請求項3記載の除塵システム。
【請求項5】
前記給気管は、密閉管と、該密閉管からエア供給方向の上流側に延びる上流側配管と、前記密閉管からエア供給方向の下流側に延びる下流側配管とを有し、
前記軟X線照射器は、前記密閉管内に軟X線を照射するように当該密閉管内に設けられた、請求項3記載の除塵システム。
【請求項6】
エアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア吐出口からエアを吐出するエア噴射室と、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引するエア吸引室とを有する除塵ヘッドの前記エア噴射室にエアを供給するエア供給システムであって、
エア供給源からのエアを前記エア噴射室に導く給気管と、
前記給気管内に軟X線を照射して、前記エア噴射室に供給されるエアをイオン化させる軟X線照射器と、を有するエア供給システム。
【請求項7】
前記給気管は、給気管本体と、該給気管本体から分岐する閉鎖管とを有し、
前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管本体に向けて照射する様に前記閉鎖管に設けられた、請求項6記載のエア供給システム。
【請求項8】
前記給気管は、密閉管と、該密閉管からエア供給方向の上流側に延びる上流側配管と、前記密閉管からエア供給方向の下流側に延びる下流側配管とを有し、
前記軟X線照射器は、前記密閉管内に軟X線を照射するように当該密閉管内に設けられた、請求項6記載のエア供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵すべき物体の表面にエアを吹き付けつつその表面上のエアを吸引して前記物体の表面に付着した塵埃を除去する除塵システム及びその除塵システムに用いられるエア供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のクリーニングヘッド(除塵ヘッド)を用いたシステム(除塵システム)が知られている。このシステムに用いられるクリーニングヘッド内には、エア噴射室とエア吸引室とが形成されている。そして、エア噴射室は、給気ダクト(給気管)を通して清浄エアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア噴射口(エア吐出口)から清浄エアを噴射させる。また、エア吸引室は、排気ダクトを通した排気作用により、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引する。このようなクリーニングヘッドを用いたシステムでは、エア噴射室から噴射される清浄エアによって物体表面上から塵埃が浮き上がるとともに、その表面上から浮き上がった塵埃がエアとともにエア吸引口を通してエア吸引室内に吸引され、更に排気ダクトを通して排出される。このようにして物体表面の除塵が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体の表面に静電作用(帯電)によって付着した塵埃は、上述したクリーニングヘッドによる清浄エアの噴射及びエアの吸引だけでは除去し難い場合がある。この場合、エア噴射及びエア吸引とともに、物体表面に付着した帯電された塵埃を除電することが好ましい。このように帯電された塵埃を除電するために、物体表面に向けて軟X線を照射して物体表面近傍のエアをイオン化して除電することが考えられる。
【0005】
このように物体表面に向けて軟X線を照射して物体表面近傍のエアをイオン化するためには、軟X線の人体への被爆を防止するために、除塵の対象となる物体の周辺を遮蔽するための設備が別途必要になる。しかしながら、物体の表面の塵埃を除去する除塵システムの構造によっては、空間的にそのような設備を設置できない場合がある。また、そのような設備が設置できたとしても、除電を伴う除塵のシステム全体が大型化してしまうというデメリットがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軟X線を遮蔽するための設備を別途設けることなく、軟X線による除電を利用して物体表面の塵埃を除去することのできる除塵システムを提供するものである。
【0007】
また、このような除塵システムに用いられるエア供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る除塵システムは、給気管を通してエアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア吐出口からエアを吐出するエア噴射室と、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引するエア吸引室とを有する除塵ヘッドと、軟X線を照射して前記エア噴射室内のエアをイオン化させる軟X線照射器と、を備えた構成となる。
【0009】
このような構成により、軟X線照射器から軟X線が照射されて除塵ヘッドのエア噴射室内のエアがイオン化される。そして、イオン化されたエアがエア噴射室からエア吐出口を通して除塵すべき物体の表面に向けて吐出するとともに、その物体の表面上のイオン化されたエアを含むエアが吸引口を通してエア吸引室に吸引される。このようにしてイオン化されたエアにより物体表面上の塵埃が除電されつつその物体表面から除去される。
【0010】
本発明に係る除塵システムにおいて、前記軟X線照射器は、軟X線を前記エア噴射室内に照射するように設けられた、構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、軟X線照射器から軟X線が除塵ヘッドのエア噴射室内に照射されて、当該エア噴射室内のエアがイオン化される。
【0012】
本発明に係る除塵システムにおいて、前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管内に照射するように設けられた、構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、軟X線照射器から軟X線が給気管内に照射され、給気管を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給されるエアがイオン化される。その結果、エア噴射室内のエアがイオン化されたものとなる。
【0014】
本発明に係る除塵ステムにおいて、前記給気管は、給気管本体と、該給気管本体から分岐する閉鎖管とを有し、前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管本体に向けて照射するように前記閉鎖管内に設けられた、構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、閉鎖管に設けられた軟X線照射器から軟X線がその閉鎖管から漏れることなく給気管本体に向けて照射される。その軟X線により、給気管本体を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給されるエアがイオン化される。その結果、エア噴射室内のエアがイオン化されたものとなる。
【0016】
本発明に係る除塵システムにおいて、前記給気管は、密閉管と、該密閉管からエア供給方向の上流側に延びる上流側配管と、前記密閉管からエア供給方向の下流側に延びる下流側配管とを有し、前記軟X線照射器は、前記密閉管内に軟X線を照射するように当該密閉管内に設けられた、構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、密閉管内に設けられた軟X線照射器から軟X線が当該密閉管から漏れることなく照射される。その軟X線により、上流側配管から密閉管に入るエアがイオン化され、そのイオン化されたエアが密閉管から下流側配管を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給される。その結果、エア噴射室内のエアがイオン化されたものとなる。
【0018】
本発明に係るエア供給システムは、エアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア吐出口からエアを吐出するエア噴射室と、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引するエア吸引室とを有する除塵ヘッドの前記エア噴射室にエアを供給するエア供給システムであって、エア供給源からのエアを前記エア噴射室に導く給気管と、前記給気管内に軟X線を照射して、前記エア噴射室に供給されるエアをイオン化させる軟X線照射器と、を有する構成となる。
【0019】
このような構成により、軟X線照射器から軟X線が給気管内に照射され、給気管を通るエアがイオン化される。その結果、イオン化された空気が給気管を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給される。そして、除塵ヘッドでは、イオン化されたエアがエア噴射室からエア吐出口を通して除塵すべき物体の表面に向けて吐出するとともに、その物体の表面上のイオン化されたエアを含むエアが吸引口を通してエア吸引室に吸引される。このようにしてイオン化されたエアにより物体表面上の塵埃が除電されつつその物体表面から除去される。
【0020】
本発明に係るエア供給システムにおいて、前記給気管は、給気管本体と、該給気管本体から分岐する閉鎖管とを有し、前記軟X線照射器は、軟X線を前記給気管本体に向けて照射する様に前記閉鎖管に設けられた、構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、閉鎖管に設けられた軟X線照射器から漏れることなく給気管に軟X線が照射され、給気管を通るエアがイオン化される。その結果、イオン化された空気が給気管を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給される。
【0022】
本発明に係るエア供給システムにおいて、前記給気管は、密閉管と、該密閉管からエア供給方向の上流側に延びる上流側配管と、前記密閉管からエア供給方向の下流側に延びる下流側配管とを有し、前記軟X線照射器は、前記密閉管内に軟X線を照射するように当該密閉管内に設けられた、構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、密閉管内に設けられた軟X線照射器から漏れることなく当該密閉管内に軟X線が照射される。その軟X線により、上流側配管から密閉管に入るエアがイオン化され、そのイオン化されたエアが密閉管から下流側配管を通して除塵ヘッドのエア噴射室に供給される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る除塵システムによれば、軟X線照射器から照射される軟X線により除塵ヘッドのエア噴射室内のエアをイオン化するようにしているので、軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、軟X線による除電を利用して物体表面の塵埃を除去することができる。
【0025】
また、本発明に係るエア供給システムによれば、軟X線を遮蔽するための設備を別途設けることなく、軟X線による除電を利用して物体表面の塵埃を除去することができる除塵システムを実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る除塵システムの基本的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、除塵システムに用いられる除塵ヘッドの外観を示す正面図である。
【
図3】
図3は、除塵ヘッドの
図2のA-A断面を示す断面図である。
【
図4】
図4は、除塵ヘッドの一方の側面を示す側面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第2の実施の形態に係る除塵システムに用いられる給気管の構造を示す正面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の第2の実施の形態に係る除塵システムに用いられる給気管の構造を示す側面図である。
【
図6A】
図6Aは、給気管の変形例の構造を示す正面図である。
【
図6B】
図6Bは、給気管の変形例の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0028】
本発明の第1の実施の形態に係る除塵システムは、
図1~
図4に示すように構成される。
図1は、当該除塵システムの基本的な構成を示す図であり、
図2は、当該除塵システムに用いられる除塵ヘッドの外観を示す正面図であり、
図3は、除塵ヘッドの断面(
図2におけるA-A断面)を示す断面図であり、
図4は、除塵ヘッドの一方の側面を示す側面図である。
【0029】
図1において、この除塵システムは、除塵ヘッド10を備えている。除塵ヘッド10は、
図1とともに
図2に示すように、長尺形状のヘッド本体11の上に同様に長尺形状となる排気ダクトユニット12が重ねられた構造となって、ヘッド本体11及び排気ダクトユニット12がそれらの長手方向において2つの端部プレート13、14によって挟まれている。給気ポート15が一方の端部プレート13を貫通してヘッド本体11に結合するとともに、排気ポート16がその端部プレート13を貫通して排気ダクトユニット12に結合している。
図1に示すように、給気ポート15には、エア供給源21(例えば、加圧ポンプ)から延びる給気管22が接続され、排気ポート16には、エア吸引源23(例えば、減圧ポンプ)から延びる排気管24が接続される。そして、エア供給源21からのエアAr(加圧エア)が給気管22及び給気ポート15を通して除塵ヘッド10のヘッド本体11内に取り入れられる。また、排気ダクトユニット12からは、排気管24を介したエア吸引源23の吸引作用によって、排気ポート16を通してエアArが排出される。
【0030】
また、除塵ヘッド10の他方の端部プレート14には、軟X線照射器18が固定されている。軟X線照射器18は、軟X線(例えば、管電圧4keV~20keV)を、後述するように、ヘッド本体11内に形成されるエア噴射室170内に照射する(
図4参照)。
【0031】
除塵ユニット10の更に詳細な構造について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0032】
図2とともに
図3に示すように、排気ダクトユニット12は、その底部が開口しており、その開口する底部の長手方向の縁部分がヘッド本体11の上壁部113の長手方向の縁部分に結合されて、排気ダクトユニット12とヘッド本体11とが一体化される。このように排気ダクトユニット12とヘッド本体11とが一体化された状態で、排気ダクトユニット12の内部に排気経路120としての空間が形成される。ヘッド本体11内には、一方の端部プレート13から他方の端部プレート14(
図2参照)まで延びる内ケース17が設けられている。内ケース17は、下方部分が狭窄した形状であり、その狭窄した部分の先端がヘッド本体11の底板部111に至って開放している。内ケース17は、狭窄した部分に形成されたノズル板171によって塞がれており、内ケース17の内部にエア噴射室170としての空間が形成されている。また、内ケース17の上壁部には、長手方向に延びる吊り下げ板172が設けられている。ヘッド本体11の上壁部113の内面には、長手方向に延びる支持レール114が設けられており、この支持レール114に内ケース17の吊り下げ板172が結合している。これにより、内ケース17は、ヘッド本体11の内部において、支持レール114と底板部111とに挟まれて支持された状態となる。
【0033】
内ケース17のノズル板171には長手方向に延びるスリット状のエア吐出口173が形成されている。また、ヘッド本体11の底板部111には、内ケース17の狭窄した部分の先端を挟むように長手方向に延びるスリット状の2つのエア吸引口112a、112bが形成されている。ヘッド本体11の内面と内ケース17の外面との間にエア吸引室110としての空間が形成される。このヘッド本体11内に形成されたエア吸引室110(空間)は、ヘッド本体11の上壁部113に長手方向に延びるように形成された2つの連通孔115a、115bを通して排気ダクトユニット12の排気経路120(空間)に連通している。
【0034】
前述したように一方の端部プレート13を通してヘッド本体11に結合する給気ポート15は、内ケース17内に形成されたエア噴射室170に連通している。これにより、給気管21及び給気ポート15を通して供給されるエア供給源21(
図1参照)からの加圧エアArがヘッド本体11のエア噴射室170に取り入れられる。このエア噴射室170に加圧エアArが取り入れられることにより、エア吐出口173からエアが吐出する。また、その一方の端部プレート13を通して排気ダクトユニット12に結合する排気ポート16は、排気ダクトユニット12内に形成される排気経路120に連通している。これにより、エア吸引源23の吸引作用が、排気管24及び排気ポート16を通して排気ダクトユニット12内に形成される排気経路120におよび、更に、その吸引作用は、ヘッド本体11の上壁部113に形成された2つの連通孔115a、115bを通してエア吸引室110にまでおよぶ。このようにしてエア吸引源23の吸引作用がエア吸引室110に及ぶことにより、エア吸引口112a、112bを通してエアがエア吸引室110内に吸引される。
【0035】
除塵ヘッド10において、ヘッド本体11、排気ダクト12、2つの端部プレート13、14、給気ポート15、排気ポート16、及びヘッド本体11内に設けられた内ケース17のそれぞれは、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム)によって形成されている。このような金属製の除塵ヘッド10の端部プレート14には、
図4に示すように、ヘッド本体11内の内ケース17に形成されたエア噴射室170に臨むように照射孔140が形成されている。そして、軟X線照射器18は、その照射孔140を通して、エア噴射室170内に軟X線を照射できるように端部プレート14に固定されている。
【0036】
上述したような構造の除塵システムでは、除塵ヘッド10(ヘッド本体11)が、
図2に示すように、除塵すべき物体W(例えば、板状物体、シート状物体)に対向するように配置される。更に具体的には、その除塵ヘッド10(ヘッド本体11)は、エア吐出口173及びエア吸引口112a、112bが、
図3に示すように、その物体Wの表面に対向するように、配置される。そして、物体Wは、除塵ヘッド10(エア吐出口173及びエア吸引口112a、112b)の長手方向を横切る方向(例えば、直交する方向)Dm(
図3参照)に移動する。
【0037】
物体Wが除塵ヘッド10の長手方向を横切る方向(例えば、直交する方向)Dmに移動する過程で、エア供給源21から供給管22を通して供給される加圧エアArが更に給気ポート15を通して除塵ヘッド10(ヘッド本体11)のエア噴射室170(内ケース17内)に取り入れられる。そして、軟X線照射器18から照射される軟X線によってエア噴射室170に取り入れられるエアがイオン化され、そのイオン化された加圧エアがそのエア噴射室170からエア吐出口173を通して物体Wの表面に向けて吐出される。また、同時に、排気管24、排気ポート16及び排気ダクトユニット12内の排気経路120を通してエア吸気室110(ヘッド本体11)にまで及ぶエア吸引源23の吸引作用によって、物体Wの表面上の前記イオン化されたエアを含むエアがエア吸引口112a、112bを通してエア吸引室110に吸引される。
【0038】
これにより、移動する物体Wの表面上の塵埃が、エア吐出口173から吐出されるイオン化されたエアによって順次除電されつつその物体Wの表面から浮き上がってエア吸引口112a、112bを通してエアとともにエア吸引室110に吸引され、その物体Wの表面から除去される。
【0039】
上述した除塵システムにおいては、軟X線照射器18は、除塵ヘッド10の外部から物体Wの表面に軟X線を照射するのではなく、金属製のヘッド本体11内の金属製の内ケース17内に形成されたエア噴射室170に軟X線を照射して、そのエア噴射室170内のエアをイオン化している。また、エア噴射室170からエア吐出口173を通して吐出されるイオン化されたエアも、そのまま除塵ヘッド10の周囲に広がるのではなく、エア吸引口112a、112bを通して金属製のヘッド本体11内に形成されるエア吸引室110内に吸引される。これにより、除塵ヘッド10の周囲に漏洩する軟X線の線量レベルを極めて低レベルに維持することができる。
【0040】
従って、上述した除塵システムによれば、軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、その軟X線による除電を利用して物体W表面の塵埃を除去することができる。
【0041】
なお、本発明に係る除電システムにおいて、軟X線照射器18は、上述したように除塵ヘッド10(ヘッド本体11)の外部から軟X線をエア噴射室170内に照射するものではなく、除塵ヘッド10(ヘッド本体11)のエア噴射室170内に設けられ、そのエア噴射室170内で軟X線を照射するものであってもよい。更に、軟X線照射器18は、軟X線を除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内に形成されるエア噴射室170内に直接照射するものでなくてもよい。照射される軟X線によって結果的にエア噴射室170内のエアがイオン化されるように、軟X線照射器18が設けられる構成であればよい。
【0042】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る除塵システムについて説明する。
【0043】
本発明の第2の実施の形態に係る除塵システムは、軟X線照射器が除塵ヘッド10の給気ポート15に接続する給気管22に設けられる点で、前述した第1の実施の形態に係る除塵システムと異なる。
【0044】
除塵ヘッド10の構成は、端部プレート14の構造を除いて
図1、
図2及び
図3に示すものと同じである。端部プレート14には照射孔140(
図4参照)が形成されておらず、エア噴射室170は、2つの端部プレート13、14によって閉ざされている。また、排気管24が、第1の実施の形態の場合(
図1参照)と同様、エア吸引源23と除塵ヘッド10(排気ダクトユニット12)の排気ポート16とに接続されている。
【0045】
この除塵システムに用いられるエア供給システムにおける給気管22は、
図5A及び
図5Bに示すように構成される。なお、
図5Aは、給気管22の構造を示す正面図であり、
図5Bは、その給気管22の構造を示す側面図である。
【0046】
図5A及び
図5Bにおいて、給気管22は、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム)で形成され、給気管本体22aと、給気管本体22aから分岐する閉鎖管22bとをから構成される。そして、給気管本体22aの一端は、エア供給源21(
図1参照)に接続され、給気管本体22aの他端は、除塵ヘッド10(ヘッド本体11)の給気ポート15に接続される。これにより、エア供給源21からの加圧エアは、給気管本体22aを通して除塵ヘッド10の給気ポート15に供給され、更に、その給気ポート15から除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内のエア噴射室170(内ケース17)に取り入れられる。一端部が給気管本体22aに開口して他端部が閉鎖している閉鎖管22b内には、給気管本体22aに向けて軟X線を照射するように軟X線照射器19が設けられている。
【0047】
このような構成の除塵システム(エア供給システム)では、閉鎖管22b内に設けられた軟X線照射器19から軟X線が、その閉鎖管22bから漏れることなく給気管本体22aに向けて照射される。その軟X線により、エア供給源21から供給されて給気管本体22aを流れる加圧エアがイオン化される。そのイオン化された加圧エアが給気管本体22a及び給気ポート15を順次通って除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内に形成されたエア噴射室170(内ケース17)に供給される。その結果、エア噴射室170内のエアがイオン化されたものとなる。そして、そのエア噴射室170からエア吐出口173を通してイオン化されたエアが除塵対象の物体Wの表面に向けて吐出されるとともに、そのイオン化されたエアを含む物体Wの表面上のエアがエア吸引口112a、112bを通してエア吸引室110内に吸引される。
【0048】
上述した除塵システムにおいては、軟X線照射器19は、除塵ヘッド10の外部から物体Wの表面に軟X線を照射するのではなく、金属製の給気管22(給気管本体22a、閉鎖管22b)内に照射して、除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内のエア噴射室170(内ケース)に送り込まれるエアをイオン化している。そして、イオン化されたエアをエア吐出口173を通してエア噴射室170から物体Wの表面に向けて吐出しつつ、そのイオン化されたエアを含むその物体Wの表面上のエアをエア吸引口112a、112bを通してエア吸引室110に吸引することにより、その物体Wの表面上の塵埃を除去する。
【0049】
したがって、上述した除塵システムによれば、軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、その軟X線による除電を利用して物体W表面の塵埃を除去することができる。
【0050】
エア供給システムにおける給気管22は、
図6A及び
図6Bに示す構成であってもよい。なお、
図6Aは、給気管22の構造を示す正面図であり、
図6Bは、その給気管22の構造を示す側面図である。
【0051】
図6A及び
図6Bにおいて、給気管22は、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム)で形成され、密閉管22cと、密閉管22cからエア供給方向(
図6Aの矢印参照)の上流側に延びてエア供給源21に接続される上流側配管22dと、密閉管22cからエア供給方向の下流側に延びて除電ヘッド10の給気ポート15に接続される下流側配管22eとから構成される。エア供給源21からの加圧エアは、上流側配管22d、密閉管22c、下流側配管22eを通して除塵ヘッド10の給気ポート15に供給され、更に、その給気ポート15から除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内のエア噴射室170(内ケース17)に取り入れられる。密閉管22c内には、3つの軟X線照射器19a、19b、19cが、軟X線をその密閉管22c内に照射するように設けられている。
【0052】
このような構造の給気管22を用いた除塵システム(エア供給システム)では、密閉管22c内に設けられた3つの軟X線照射器19a、19b、19cから軟X線がその密閉管22cから漏れることなく照射される。その軟X線により、上流側配管22dから密閉管22cに入る加圧エアがイオン化される。そのイオン化された加圧エアが密閉管22cから更に下流側配管22e及び給気ポート15を順次通って除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内に形成されたエア噴射室170(内ケース17)に供給される。その結果、エア噴射室170内のエアがイオン化されたものとなる。そして、そのエア噴射室170からエア吐出口173を通してイオン化されたエアが除塵対象の物体Wの表面に向けて吐出されるとともに、そのイオン化されたエアを含む物体Wの表面上のエアがエア吸引口112a、112bを通してエア吸引室110内に吸引される。
【0053】
上述したような給気管22(密閉管22c、上流側配管22d、下流側配管22e:エア供給システム)を用いた除塵システムにおいては、3つの軟X線照射器19a、19b、19cは、除塵ヘッド10の外部から物体Wの表面に軟X線を照射するのではなく、金属製の給気管22(密閉管22c)内に照射して、除塵ヘッド10(ヘッド本体11)内のエア噴射室170(内ケース17)に送り込まれるエアをイオン化している。そして、そのイオン化されたエアをエア吐出口173を通してエア噴射室170から物体Wの表面に向けて吐出しつつ、そのイオン化されたエアを含む物体Wの表面上のエアをエア吸引口112a、112bを通してエア吸引室110に吸引することにより、その物体Wの表面上の塵埃を除去する。
【0054】
従って、上述した給気管22(エア供給システム)を用いた除塵システムによっても、軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、その軟X線による除電を利用して物体W表面の塵埃を除去することができる。
【0055】
なお、上述した各除塵システムにおける除塵ヘッドの構造は、上述したもの(
図2、
図3参照)に限られない。この除塵ヘッドは、給気管を通してエアの供給を受け、除塵すべき物体の表面に向けてエア吐出口からエアを吐出するエア噴射室と、前記物体の表面上のエアをエア吸引口を通して吸引するエア吸引室とを有するものであれば、特に限定されない。
【0056】
また、上述した各除塵システムは、除塵ヘッド10に対して物体Wが移動するものであったが、固定された物体Wに対して除塵ヘッド10を移動させるものであってもよい。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る除塵装置は、軟X線を遮閉するための設備を別途設けることなく、軟X線による除電を利用して物体表面の塵埃を除去するという効果を有し、除塵すべき物体の表面にエアを吹き付けつつその表面上のエアを吸引して前記物体の表面に付着した塵埃を除去する除塵システムとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 除塵ヘッド
11 ヘッド本体
12 排気ダクトユニット
13、14 端部プレート
15 給気ポート
16 排気ポート
17 内ケース
18、19、19a、19b、19c 軟X線照射器
21 エア供給源
22 給気管
22a 給気管本体
22b 閉鎖管
22c 密閉管
22d 上流側配管
22e 下流側配管
23 エア吸引源
24 排気管
110 エア吸引室
111 底板部
112a、112b エア吸引口
113 上壁部
114 支持レール
115a、115b 連通孔
140 通孔
120 排気経路(空間)
170 エア噴射室
171 ノズル板
172 吊り下げ板
173 エア吐出口