(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089242
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ワイパアームの連結構造
(51)【国際特許分類】
B60S 1/40 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B60S1/40 100E
B60S1/40 200E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201470
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 啓希
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
【Fターム(参考)】
3D025AA01
3D025AB01
3D025AC01
3D025AD01
3D025AE05
3D025AE11
3D025AE29
3D225AA01
3D225AB01
3D225AC01
3D225AD01
3D225AE05
3D225AE11
3D225AE29
(57)【要約】
【課題】ワイパアームの連結構造において、ワイパブレードの着脱の作業性の向上を図る。
【解決手段】一対の側壁を備えたワイパアーム10と、ワイパアーム10に連結されるワイパブレード12と、ワイパアーム10に設けられた連結軸部10cと、ワイパブレード12に設けられ、連結軸部10cと連結されるスナップフィット部12aと、を備えたワイパアーム10の連結構造である。連結軸部10cは、ワイパアーム10の幅方向に沿って延在し、ワイパアーム10の上記一対の側壁に接合されている。スナップフィット部12aは、連結軸部10cと係合可能な溝部12dを構成する一対の爪部12b,12cを備えており、これら一対の爪部12b,12cは、可撓性を有するとともに、ワイパブレード12の長手方向Lに沿って並んで設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の側壁を備えたワイパアームと、
前記ワイパアームに連結されるワイパブレードと、
前記ワイパアームに設けられた第1連結部と、
前記ワイパブレードに設けられ、前記第1連結部と連結される第2連結部と、
を備えたワイパアームの連結構造であって、
前記第1連結部または前記第2連結部の何れか一方は、前記ワイパアームの幅方向に沿って延在し、前記ワイパアームの前記一対の側壁に接合された連結軸部であり、
前記第1連結部または前記第2連結部の何れか他方は、前記連結軸部と係合可能な溝部を構成する一対の爪部を備え、
前記一対の爪部は、前記溝部の開口幅を広げる方向に撓む可撓性を有することを特徴とするワイパアームの連結構造。
【請求項2】
前記連結軸部は筒状であり、かつ、前記連結軸部の軸部に直交する方向の前記連結軸部の切断面の外周形状は、真円の一部からなる真円部と非真円部とから構成され、
前記非真円部と、該非真円部と対向する真円部と、の距離は、前記真円部の直径より小さいことを特徴とする請求項1に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項3】
前記ワイパブレードの長手方向に沿った方向において、前記一対の爪部の両側にスリット部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項4】
前記一対の爪部は、前記ワイパブレードの長手方向に沿って並んで設けられており、前記ワイパブレードの長手方向において前記溝部から遠ざかる方向に撓む可撓性を有することを特徴とする請求項3に記載のワイパアームの連結構造。
【請求項5】
前記第1連結部として前記連結軸部が設けられ、前記第2連結部に前記溝部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイパアームの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にはワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、駆動源であるワイパモータと、ワイパモータの駆動により揺動されるワイパアームと、ワイパアームの先端側に装着されるワイパブレードとを備えている。そして、ワイパアームとワイパブレードとは、特許文献1に記載されている連結構造によって連結される。上記特許文献1に記載されている連結構造では、ワイパアームに設けられた取付け用の溝部と、ワイパブレードに設けられた連結軸部とを係合させることによってワイパアームとワイパブレードとが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたワイパアームとワイパブレードの連結構造においては、ワイパブレードを、着脱を行う姿勢(着脱姿勢)にした時と、着脱を行わない姿勢(回動姿勢)にした時とで、連結軸部と取付け用の溝部(溝入口部)の幅寸法の大小関係を変えることにより、ワイパブレードのワイパアームに対する着脱および固定を可能としている。
【0005】
しかしながら、ワイパアームの払拭動作中にワイパブレードが多少回転してもワイパアームからワイパブレードが外れてしまわないように、回動姿勢と着脱姿勢とでワイパブレードの位置が大きく変わるように設定する必要がある。すなわち、回動姿勢の際には、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より小さくなるように設定し、着脱姿勢の際には、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より大きくなるように取付け用の溝部の幅寸法と連結軸部の直径を設定する必要がある。この時、取付け用の溝部の幅寸法が連結軸部の直径より大きくなるようにするワイパブレードの回転角度の範囲が狭いため、ワイパブレードの着脱作業の際にはワイパブレードを大きく回転させなくてはならず、広いスペースが必要となり、ワイパブレードの着脱の作業性が悪かった。
【0006】
本発明の目的は、ワイパブレードの着脱の作業性の向上が図られたワイパアームの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、互いに対向する一対の側壁を備えたワイパアームと、前記ワイパアームに連結されるワイパブレードと、前記ワイパアームに設けられた第1連結部と、前記ワイパブレードに設けられ、前記第1連結部と連結される第2連結部と、を備えたワイパアームの連結構造であって、前記第1連結部または前記第2連結部の何れか一方は、前記ワイパアームの幅方向に沿って延在し、前記ワイパアームの前記一対の側壁に接合された連結軸部であり、前記第1連結部または前記第2連結部の何れか他方は、前記連結軸部と係合可能な溝部を構成する一対の爪部を備え、前記一対の爪部は、前記溝部の開口幅を広げる方向に撓む可撓性を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイパアームの連結構造において、ワイパブレードの着脱の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のワイパアームの連結構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すワイパアームの連結構造における連結部の詳細構造を示す部分拡大断面図である。
【
図3】
図2に示すワイパアーム側の連結部の構造を示す部分拡大断面図である。
【
図4】
図2に示すワイパブレード側の連結部の構造を示す部分拡大図である。
【
図5】
図2に示す連結軸部の軸方向に沿って切断した断面図である。
【
図6】
図2に示す連結軸部における真円部と非真円部の形状を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図6に示すワイパアームの連結軸部へのワイパブレードの組付け方向を示す部分拡大断面図である。
【
図8】変形例のワイパアーム側の連結部の構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1に示すワイパアーム10の連結構造は、例えば、自動車等の車両に設けられたリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置(図示せず)を形成する。ワイパアーム10の連結構造は、細長いワイパアーム10と、ワイパアーム10に連結されるワイパブレード12と、ワイパアーム10に設けられた第1連結部と、ワイパブレード12に設けられ、かつ、上記第1連結部と連結される第2連結部と、を有している。なお、ワイパアーム10は、アームヘッド11によって回動自在に支持されている。
【0012】
また、ワイパブレード12は、該ワイパブレード12の長手方向Lにおいて、ワイパアーム10の先端部付近の箇所に回動自在に連結されている。一方、ワイパアーム10の基端側には、上記ワイパ装置を形成するワイパモータの出力軸(図示せず)が固定されている。
【0013】
そして、車室内等に設けたワイパスイッチをオン操作することで、上記ワイパモータの出力軸が正逆方向に回転してワイパアーム10が揺動する。これにより、ワイパブレード12が備えるブレードラバー13が上記リヤガラス上の所定の範囲を往復払拭動作し、その結果、上記リヤガラスの払拭面に付着した雨水等が払拭される。
【0014】
ワイパアーム10は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで棒状に形成され、ワイパアーム10の先端側の太さは、基端側の太さよりも細く形成されている。より具体的には、ワイパアーム10は、その基端側から先端側に向かうにつれて徐々に細くなる先細り形状に形成されている。これにより、ワイパアーム10のデザイン性の向上が図られている。
【0015】
ワイパアーム10とワイパブレード12とは、上記第1連結部と上記第2連結部とからなる連結部を介して連結されている。具体的には、上記連結部を構成する上記第2連結部を支持する取付け部12gは、ワイパブレード12の長手方向Lの所定の位置に固定され、かつ、ワイパアーム10とワイパブレード12との間に位置している。また、取付け部12gは、ブレードラバー13が設けられたワイパブレード12を把持するように取付けられている。そして、上記第2連結部は、上記第1連結部に回動自在かつ着脱自在に係合している。
【0016】
なお、ワイパアーム10には、上記リヤガラスに向けてワイパアーム10を倒す方向に押圧力が作用しており、したがって、ワイパブレード12の往復払拭動作時において、ワイパアーム10からワイパブレード12が脱落するようなことは無い。なお、上記押圧力は、ワイパアーム10の基端側に設けられた引っ張り用のスプリング14のバネ力により発生する。
【0017】
ここで、ワイパアーム10は、
図5に示すように、互いに対向する一対の側壁10a,10bを備えている。そして、上記第1連結部または上記第2連結部の何れか一方は、
図1に示すワイパブレード12の長手方向Lに交差する
図5に示すワイパアーム10の幅方向Mに沿って延在し、ワイパアーム10の一対の側壁10a,10bに接合された連結軸部10cである。また、上記第1連結部または上記第2連結部の何れか他方は、連結軸部10cと係合可能な
図4に示す溝部12dを構成する一対の爪部12b,12cを備えたスナップフィット部12aである。本実施の形態では、
図3に示すように、ワイパアーム10に設けられた上記第1連結部が連結軸部10cであり、
図4に示すように、ワイパブレード12に設けられた上記第2連結部がスナップフィット部12aである場合について説明する。
【0018】
なお、スナップフィット部12aが備える一対の爪部12b,12cは、ワイパブレード12の長手方向Lに沿って並んで設けられるとともに、互いに可撓性を有している。
【0019】
そして、
図2に示すように、連結軸部10cと溝部12dとが係合している。具体的には、スナップフィット部12aに溝部12dが形成されており、ワイパアーム10に設けられた連結軸部10cと、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aの溝部12dと、が係合している。つまり、ワイパアーム10に設けられた連結軸部10cと、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aと、がスナップフィット結合している。この時、スナップフィット部12aが連結軸部10cに対して所望の角度回動可能となるように、連結軸部10cと溝部12dとが係合している。
【0020】
また、
図5に示す連結軸部10cは、筒状であり、この連結軸部10cの延在方向N(軸部)に直交する方向の連結軸部10cの
図3に示す切断面の外周形状は、真円の一部からなる真円部10dと、真円とは異なる非真円部とから構成されている。すなわち、筒状の連結軸部10cの外周面は、真円部10dと非真円部とからなる。上記非真円部は、該非真円部と、該非真円部と対向する真円部10dの一部と、の距離B(以降、この距離Bを、上記非真円部と真円部10dとの距離Bとも言う)が、真円部10dの直径Aより小さくなるように形成されている。本実施の形態の上記非真円部は、
図6に示すように、例えば、連結軸部10cの外周の一部分に形成された平面部10eである。該平面部10eは、詳細には、
図5に示す連結軸部10cの延在方向N(軸部)に沿って連結軸部10cの外周の一部分に形成された平面部分である。
【0021】
したがって、連結軸部10cの外周部の形状は、
図3に示すように、直径Aの真円の一部からなる真円部10dと平面部10eとによって構成されており、平面部10eと真円部10dとの距離Bは、真円部10dの直径Aより小さく、A>Bの関係となっている。すなわち、平面部10eと、該平面部10eと対向する真円部10dと、の距離Bが真円部10dの直径Aより小さくなるように、連結軸部10cの延在方向Nに沿って連結軸部10cの外周部の一部に平面部10eが形成されている。
【0022】
また、
図4に示すように、ワイパブレード12に取付けられたスナップフィット部12aにおいて、一対の爪部12b,12cによって構成される溝部12dは、該溝部12dの内周面の断面形状が真円に形成されている。そして、
図2に示すように、溝部12dの内周面の真円の直径は、連結軸部10cの真円部10dの直径Aよりも僅かに大きい。これにより、スナップフィット部12aは、連結軸部10cに対して所望の角度回動可能に係合される。
【0023】
なお、
図4に示すように、スナップフィット部12aの一対の爪部12b,12cの互いに対向する部分の距離Cは、
図3に示す平面部10eと真円部10dとの距離Bより小さい部分を含むことが好ましい。すなわち、一対の爪部12b,12cの互いに対向する部分の距離Cは、溝部12dの開口幅でもあるため、真円部10dの直径A、平面部10eと真円部10dとの距離B、および溝部12dの開口幅Cの関係は、A>B>Cであることが好ましい。これにより、ワイパアーム10の動作により、車両のリヤガラス等の払拭面を払拭している時に、連結軸部10cからスナップフィット部12aが外れることを防止できる。
【0024】
仮に、上記第2連結部としてスナップフィット部12aを用いなかった場合、真円部10dの直径A、平面部10eと真円部10dとの距離B、および溝部12dの開口幅Cの関係を、A>C>Bとしないと、ワイパアーム10をワイパブレード12に組み付けることが出来ない。すると、ワイパアーム10の払拭動作中、平面部10eと真円部10dとの距離Bの部分が溝部12dの開口幅Cの部分と平行にならないような位置に平面部10eを形成する必要があり、設計上の制約が生じる。しかしながら、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造では、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結に、スナップフィット部12aによる連結を採用したことで、連結軸部10cを溝部12dに挿入する際に爪部12b,12cが撓み、一時的にC>Bとなるため、真円部10dの直径A、平面部10eと真円部10dとの距離B、および溝部12dの開口幅Cの関係を、A>B>Cとすることができる。
【0025】
また、
図4に示すように、ワイパブレード12の長手方向Lに沿った方向において、一対の爪部12b,12cの両側には切り込み部であるスリット部12e,12fが設けられている。すなわち、爪部12bの外側(爪部12bの溝部12dと反対側)にスリット部12eが設けられ、爪部12cの外側(爪部12cの溝部12dと反対側)にスリット部12fが設けられている。言い換えると、爪部12bの両側および爪部12cの両側は、それぞれ空間部である。
【0026】
したがって、一対の爪部12b,12cのそれぞれは、ワイパブレード12の長手方向Lに沿った方向において、溝部12dから遠ざかる方向に撓むことが可能である。つまり、一対の爪部12b,12cのそれぞれは、ワイパブレード12の長手方向Lにおいて溝部12dから遠ざかる方向に撓む可撓性を有している。
【0027】
ここで、一対の爪部12b,12cのそれぞれが、溝部12dから遠ざかる方向に撓むことにより得られる効果について説明する。例えば、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の幅方向M(
図5参照)に沿って撓ませようとする場合、ワイパブレード12がその幅方向Mに大型化する。ワイパブレード12による払拭動作中に、車両の運転手の視界の妨げになってはならないため、ワイパブレード12の幅方向Mが大きくなることは避けなければならない。一方、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の長手方向L(
図4参照)に撓ませようとする場合、長手方向Lに対してはスペースの確保が容易であることから、長手方向Lに撓み易くすることが可能であるとともに、爪部12b,12cの撓み量等を増やすことも容易である。
【0028】
ここで、ワイパブレード12がリヤガラスの曲面に沿うように、ワイパブレード12をワイパアーム10に対して回動可能に連結させるため、連結軸部10cの軸方向はワイパブレード12の幅方向Mに平行となるように配置することが好ましい。よって、爪部12b,12cを長手方向Lに撓ませる場合、スナップフィット部12aに必要なスペースは、爪部12b,12cのそれぞれの幅+撓み量+連結軸部10cの直径となる。これに対して、爪部12b,12cを幅方向Mに撓ませる場合、スナップフィット部12aに必要なスペースは、爪部12b,12cのそれぞれの幅+撓み量+連結軸部10cの軸長となる。したがって、スナップフィット部12aにおいて、爪部12b,12cのそれぞれをワイパブレード12の長手方向Lにおける溝部12dから遠ざかる方向に撓ませた方が、ワイパブレード12の小型化を図ることができる。
【0029】
次に、連結軸部10cの外周部における平面部10eの形成領域について説明する。
図6に示すように、平面部10eは、ワイパアーム10の高さ方向と平行を成す基準線Rに対して角度θ2を成す仮想線Sと、該仮想線Sと角度θ1を成す仮想線Tと、の間の領域に形成されていることが好ましい。詳細には、平面部10eと該平面部10eの中心を通る中心線10fとが、仮想線Sと仮想線Tとの間の領域に配置されるように平面部10eが形成されていることが好ましい。ここで、角度θ1は、例えば、90°である。そして、角度θ2は、例えば、45°である。すなわち、中心線10fは基準線Rに対して45°~135°をなす。
【0030】
以上のように連結軸部10cの外周部において上記領域に平面部10eを設けることにより、ワイパブレード12をワイパアーム10に組付ける際に、ワイパブレード12をワイパアーム10に対して傾ける角度が小さくなり、ワイパアーム10とワイパブレード12とが干渉することを防止できる。
【0031】
また、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造では、ワイパアーム10とワイパブレード12の組付けにおいて、
図1に示すような組付けやすい挿入力Qで、かつ、抜けにくい抜去力Pを実現することが好ましい。そこで、
図3に示すワイパアーム10に設けられた筒状の連結軸部10cの外周部の一部を平面部10eとすることにより、真円部10dの直径Aと、平面部10eと真円部10dとの距離Bと、の関係が、A>Bとなっている。さらに、ワイパブレード12をワイパアーム10に組付ける際に、ワイパブレード12を
図7に示す組付け方向K(平面部10eと平行な方向)から組付けることで、
図4に示すワイパブレード12側のスナップフィット部12aの爪部12b,12cの開き量が少なくなるため、挿入力Qを小さくすることが可能になる。ワイパアーム10の連結構造の車両への組付け後、ワイパブレード12は、主に連結軸部10cの真円部10dの直径Aの部分で回動するため、抜去力Pは小径Bの長さの影響を受けにくく、抜去力Pが小さくなることはない。すなわち、ワイパアーム10によってリヤガラス等を払拭中、ワイパアーム10に対してワイパブレード12を外れにくくすることができる。
【0032】
なお、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結にスナップフィット部12aによる連結を採用していない場合には、ワイパブレード12の着脱を行わない回動姿勢の際にワイパブレード12が外れないように、ワイパブレード12の着脱を行う着脱姿勢と上記回動姿勢とでワイパブレード12とワイパアーム10の位置関係を大きく変える必要があった。すなわち、ワイパアーム10とワイパブレード12の組付けの際には、ワイパブレード12を大きく回転させて組付ける必要があり、作業スペースが広く必要になる。さらに、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結部以外の部分が接触しないようにワイパブレード12の回転方向が制限されていた。また、ワイパアーム10の先端がワイパブレード12に干渉しないように、ワイパブレード12に凹部等の避け部を設ける必要があった。さらに、ワイパアーム10の押圧力をワイパブレード12に均等に伝達するためには、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結部をワイパブレード12の中央部に設けることが好ましいが、スナップフィット部12aによる連結を採用していない場合、ワイパブレード12とワイパアーム10の先端が干渉してしまうため、連結部をワイパアーム10の先端に配置する必要があった。そのため、ワイパブレード12の長手方向の約半分はワイパアーム10でカバーすることが出来ないという意匠性の制限があった。
【0033】
これに対して、本実施の形態のワイパアーム10の連結構造においては、ワイパアーム10とワイパブレード12の連結にスナップフィット部12aによる連結を採用したことにより、スナップフィット部12aの溝部12dの開口幅Cを、連結軸部10cの真円部10dの直径Aより小さく設定することが可能になり、ワイパブレード12を外れにくくすることができる。したがって、ワイパブレード12の上記着脱姿勢と上記回動姿勢とで、ワイパブレード12とワイパアーム10の位置関係を大きく変える必要がないため、作業スペースやワイパブレード12の組付け方向Kの制限を少なくすることが可能になる。すなわち、ワイパアーム10の連結構造において、ワイパブレード12の着脱の作業性の向上を図ることができる。
【0034】
また、ワイパブレード12の着脱において、ワイパアーム10の先端とワイパブレード12が干渉する角度までワイパブレード12を回転させる必要がないため、ワイパブレード12にワイパアーム10の避け部を設ける必要がなくなり、ワイパブレード12の高さを低くすることができる。さらに、ワイパブレード12の長手方向Lにおける連結軸部10cの設置位置の制限も少なくなるため、例えば、ワイパアーム10の先端をワイパブレード12の先端まで伸ばすことができ、ワイパアーム10の意匠性の自由度を高めることができる。
【0035】
また、ワイパアーム10とワイパブレード12とでは、ワイパブレード12に消耗品であるブレードラバーが装着されているため、ワイパブレード12の方が交換の頻度がワイパアーム10に比べて遥かに高い。したがって、本実施の形態のように爪部12b,12cを備えたスナップフィット部12aがワイパブレード12に取り付けられていることにより、万が一爪部12b,12cが破損・劣化した際に、ワイパブレード12ごと容易に交換することが可能である。
【0036】
次に、
図8に示す変形例のワイパアーム10の連結部の構造について説明する。
【0037】
図8に示すワイパアーム10の連結軸部10cでは、その外周形状は、略円筒状であるとともに、真円部10dと非真円部とを含んでおり、変形例における上記非真円部は、連結軸部10cの外周の一部分に形成された楕円部10gである。すなわち、連結軸部10cの外周部は、真円部10dと楕円部10gの組み合わせで構成されている。なお、楕円部10gと、該楕円部10gと対向する真円部10dと、の距離は、Bである。
【0038】
つまり、変形例のワイパアーム10においても、連結軸部10cの外周部の形状は、直径Aの真円の一部からなる真円部10dと、楕円部10gと真円部10dとの距離がBとなる楕円部10gと、によって構成されており、溝部12dの開口幅Cに対してA>B>Cの関係となっている。したがって、真円部10dと平面部10eとからなる連結軸部10cを有したワイパアーム10の場合と同様に、ワイパブレード12を外れにくくしつつ、装着しやすくすることができる。また、ワイパブレード12の上記着脱姿勢と上記回動姿勢とでワイパブレード12とワイパアーム10の位置関係を大きく変える必要がないため、作業スペースやワイパブレード12の組付け方向Kの制限を少なくすることが可能になる。つまり、変形例のワイパアーム10の連結部の構造においても、ワイパブレード12の着脱の作業性の向上を図ることができる。
【0039】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ワイパアーム10の連結構造を、自動車等の車両のリヤガラスを払拭するリヤワイパ装置に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、自動車等の車両のフロント側に搭載されるワイパ装置や、船舶、航空機、鉄道車両等に搭載されるワイパ装置にも適用することが可能である。また、上記実施の形態においては、ワイパアーム10を樹脂材料により成形するとしたが、本発明はこれに限らず、金属材料により成形してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10:ワイパアーム,10a,10b:側壁,10c:連結軸部(第1連結部),10d:真円部,10e:平面部(非真円部),10f:中心線,10g:楕円部(非真円部),11:アームヘッド,12:ワイパブレード,12a:スナップフィット部(第2連結部),12b,12c:爪部,12d:溝部,12e,12f:スリット部,12g:取付け部,13:ブレードラバー,14:スプリング