(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089247
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】曲げパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 9/00 20060101AFI20220609BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20220609BHJP
B21D 41/04 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B21D9/00 Z
B21D22/02 F
B21D41/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201479
(22)【出願日】2020-12-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】592037217
【氏名又は名称】サンライズ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本玉 千道
(72)【発明者】
【氏名】柴原 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀孝
【テーマコード(参考)】
4E063
4E137
【Fターム(参考)】
4E063AA04
4E063BC15
4E063CA01
4E063DA02
4E063DA03
4E063HA01
4E063HA05
4E063JA07
4E063MA02
4E063MA18
4E137AA10
4E137AA15
4E137BA01
4E137BA05
4E137BB03
4E137CA01
4E137CA21
4E137CA25
4E137CA26
4E137EA01
4E137GA08
4E137GA12
4E137GA15
4E137GA16
4E137GB01
4E137HA06
(57)【要約】
【課題】バルジの曲管部側の端面と直管部の外周面との間の隙間を小さくすることができる、または隙間を無くすことができることに加えて、整った形状の長円形状のバルジおよび整った形状のその周辺部分とすることができる曲げパイプの製造方法を提供すること。
【解決手段】曲げパイプの製造方法は、曲げパイプ中間体の第2直管部を拡径第2直管部に成形する第1拡管工程、拡径第2直管部および曲管部中間体をそれぞれ拡幅第2直管部および最終的に得ようとする形状の曲管部に成形する第2拡管工程、拡幅第2直管部を断面長円の長円第2直管部に成形する絞り工程、およびバルジを成形するバルジ成形工程を備える。上記絞り工程において、絞りピンが内蔵された絞りパンチを用いる。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ素管に曲げ加工を施し、前記パイプ素管の一方の端部側に第1直管部、前記パイプ素管の他方の端部側に第2直管部を残しつつ、前記第1直管部と前記第2直管部との間に湾曲部を形成する仮曲げ工程と、
前記湾曲部を曲管部中間体の形状に成形するための空洞部を備えた割型状の成形型に前記仮曲げ工程で得られた曲げパイプ中間体を配置し、前記第1直管部または前記第2直管部の管端からストライク曲げR矯正用ピンを挿入することで、前記湾曲部の曲げ外側部の曲面を径方向外向きに拡大して前記湾曲部を前記曲管部中間体の形状に成形するストライク曲げR矯正工程と、
前記第1直管部を収容する第1空洞部と、前記曲管部中間体を収容する第2空洞部であって前記曲管部中間体の一部を拡幅するための窪みを有する第2空洞部と、前記第2直管部の外径より大きな内径になるように座ぐりされ、且つ、前記第1空洞部に配置された前記第1直管部の軸方向に沿う方向における前記第1直管部の断面視において前記第1空洞部と前記第1直管部の外周面とが接触する前記第2直管部側の接触線の延長上に形成された下部面を有する第3空洞部と、を備える割型状のクランプ型で、前記第1直管部および前記曲管部中間体を固定する管固定工程と、
前記第2直管部の内径よりも大きな外径の拡径部を有する第1拡管ピンを、前記クランプ型の外に突出した前記第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第1拡管ピンを前記第2直管部の管端から挿入することで、前記第2直管部を拡径して、前記第2直管部を拡径第2直管部に成形する第1拡管工程と、
前記拡径第2直管部の内径よりも大きな幅の断面長円の拡幅部を有する第2拡管ピンを、前記クランプ型の外に突出した前記拡径第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第2拡管ピンを前記拡径第2直管部の管端から挿入することで、前記拡径第2直管部および前記曲管部中間体の一部を拡幅して、前記拡径第2直管部および前記曲管部中間体をそれぞれ拡幅第2直管部および最終的に得ようとする形状の曲管部に成形する第2拡管工程と、
断面長円の形状保持部を有する絞りピンが内蔵された絞りパンチであって、入口から奥に向かって開口が徐々に狭められた各断面長円の絞りテーパー部と、前記絞りテーパー部より奥に形成された前記絞りテーパー部から延在する断面長円の絞り筒穴部とを備える絞りパンチを、前記クランプ型の外に突出した前記拡幅第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記絞りピンを前記拡幅第2直管部の管端から挿入するとともに、前記絞りパンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させることにより前記拡幅第2直管部を絞って、前記拡幅第2直管部を断面長円の長円第2直管部に成形する絞り工程と、
断面長円の形状保持部を有するバルジピンが内蔵されたバルジパンチであって、最終的に得ようとする長円形状のバルジに対応した寸法で所定の深さ座ぐりされることで入口に形成された段差部と、前記段差部より奥に形成された前記段差部から延在する断面長円の筒穴部とを備えるバルジパンチを、前記クランプ型の外に突出した前記長円第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記バルジピンを前記長円第2直管部の管端から挿入するとともに、前記バルジパンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させることにより、前記第1直管部の外周に接するように前記バルジを成形するバルジ成形工程と、
を備える、曲げパイプの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の曲げパイプの製造方法において、
前記ストライク曲げR矯正工程は、
前記成形型に前記曲げパイプ中間体を配置し、前記第1直管部または前記第2直管部の管端から前記ストライク曲げR矯正用ピンを挿入するとともに、前記ストライク曲げR矯正用ピンを挿入しない側の前記第1直管部または前記第2直管部の管端から内径規制用ピンを挿入する第1ストライク曲げR矯正工程と、
前記曲げパイプ中間体を裏返して前記成形型に前記曲げパイプ中間体を配置し、前記第1ストライク曲げR矯正工程時に前記内径規制用ピンを挿入した前記第1直管部または第2直管部の管端から前記ストライク曲げR矯正用ピンを挿入するとともに、前記第1ストライク曲げR矯正工程時に前記ストライク曲げR矯正用ピンを挿入した前記第1直管部または第2直管部の管端から前記内径規制用ピンを挿入する第2ストライク曲げR矯正工程と、
を備える、曲げパイプの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の曲げパイプの製造方法において、
前記第1拡管工程において、前記第1拡管ピンが内蔵された第1拡管パンチを、前記クランプ型の外に突出した前記第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第1拡管ピンを前記第2直管部の管端から挿入するとともに、前記第1拡管パンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させる、
曲げパイプの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の曲げパイプの製造方法において、
前記第2拡管工程において、前記第2拡管ピンが内蔵された第2拡管パンチを、前記クランプ型の外に突出した前記拡径第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第2拡管ピンを前記拡径第2直管部の管端から挿入するとともに、前記第2拡管パンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させる、
曲げパイプの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の曲げパイプの製造方法において、
前記第2拡管パンチは、入口から奥に向かって開口が徐々に狭められた各断面長円のテーパー部と、前記テーパー部より奥に形成された前記テーパー部から延在する断面長円の筒穴部とを備える、
曲げパイプの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の曲げパイプの製造方法において、
前記絞りパンチの前記絞りテーパー部は、前記拡幅第2直管部と前記曲管部との境界部のうちの曲がり内側部に当接するテーパー部分における、前記絞りパンチの軸方向に対する傾斜角度が、前記境界部のうちの曲がり外側部に当接するテーパー部分における、前記軸方向に対する傾斜角度よりも大きくされている、
曲げパイプの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の曲げパイプの製造方法において、
前記バルジパンチの前記段差部は、当該段差部を正面から視たときに、当該段差部の長手方向中央部における幅が、当該段差部の長手方向端部における幅よりも広くされている、
曲げパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げパイプの製造方法に関し、例えば、自動車のエンジンルーム内に配設される曲げパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記曲げパイプの製造方法に関する技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、座ぐりされた段差部を備えたバルジ成形用のパンチの先端面を、クランプ型の第2空洞部における、第1空洞部と第1直管部の外周面とが接触する第2直管部側の接触線の延長上に形成された下部面に当接させることにより、曲管部の第2直管部に近い側の所定位置の拡径されたままの外径を、上記段差部の内周面に向かって径方向外向きにさらに膨張させて、第1直管部の外周に接するようにバルジを成形するという曲げパイプの製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の曲げパイプの製造方法によると、バルジの曲管部側の端面と直管部の外周面との間の隙間が小さい、または隙間が無い曲げパイプを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の曲げパイプの製造方法は、バルジが円形の場合の製造方法である。これに対して、昨今、バルジが円形ではなく長円形状の曲げパイプの製造ニーズがある。長円形状のバルジとするには、バルジを成形するための型部分の形状を長円形状にする必要がある。しかしながら、バルジが円形の場合の曲げパイプの製造方法からの変更点が、単に上記型部分の形状の変更のみであると、長円形状のバルジおよびその周辺部分を整った形状のものとすることが困難である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルジの曲管部側の端面と直管部の外周面との間の隙間を小さくすることができる、または隙間を無くすことができることに加えて、整った形状の長円形状のバルジおよび整った形状のその周辺部分とすることができる曲げパイプの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の曲げパイプの製造方法は、パイプ素管に曲げ加工を施し、前記パイプ素管の一方の端部側に第1直管部、前記パイプ素管の他方の端部側に第2直管部を残しつつ、前記第1直管部と前記第2直管部との間に湾曲部を形成する仮曲げ工程と、前記湾曲部を曲管部中間体の形状に成形するための空洞部を備えた割型状の成形型に前記仮曲げ工程で得られた曲げパイプ中間体を配置し、前記第1直管部または前記第2直管部の管端からストライク曲げR矯正用ピンを挿入することで、前記湾曲部の曲げ外側部の曲面を径方向外向きに拡大して前記湾曲部を前記曲管部中間体の形状に成形するストライク曲げR矯正工程と、前記第1直管部を収容する第1空洞部と、前記曲管部中間体を収容する第2空洞部であって前記曲管部中間体の一部を拡幅するための窪みを有する第2空洞部と、前記第2直管部の外径より大きな内径になるように座ぐりされ、且つ、前記第1空洞部に配置された前記第1直管部の軸方向に沿う方向における前記第1直管部の断面視において前記第1空洞部と前記第1直管部の外周面とが接触する前記第2直管部側の接触線の延長上に形成された下部面を有する第3空洞部と、を備える割型状のクランプ型で、前記第1直管部および前記曲管部中間体を固定する管固定工程と、前記第2直管部の内径よりも大きな外径の拡径部を有する第1拡管ピンを、前記クランプ型の外に突出した前記第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第1拡管ピンを前記第2直管部の管端から挿入することで、前記第2直管部を拡径して、前記第2直管部を拡径第2直管部に成形する第1拡管工程と、前記拡径第2直管部の内径よりも大きな幅の断面長円の拡幅部を有する第2拡管ピンを、前記クランプ型の外に突出した前記拡径第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記第2拡管ピンを前記拡径第2直管部の管端から挿入することで、前記拡径第2直管部および前記曲管部中間体の一部を拡幅して、前記拡径第2直管部および前記曲管部中間体をそれぞれ拡幅第2直管部および最終的に得ようとする形状の曲管部に成形する第2拡管工程と、断面長円の形状保持部を有する絞りピンが内蔵された絞りパンチであって、入口から奥に向かって開口が徐々に狭められた各断面長円の絞りテーパー部と、前記絞りテーパー部より奥に形成された前記絞りテーパー部から延在する断面長円の絞り筒穴部とを備える絞りパンチを、前記クランプ型の外に突出した前記拡幅第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記絞りピンを前記拡幅第2直管部の管端から挿入するとともに、前記絞りパンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させることにより前記拡幅第2直管部を絞って、前記拡幅第2直管部を断面長円の長円第2直管部に成形する絞り工程と、断面長円の形状保持部を有するバルジピンが内蔵されたバルジパンチであって、最終的に得ようとする長円形状のバルジに対応した寸法で所定の深さ座ぐりされることで入口に形成された段差部と、前記段差部より奥に形成された前記段差部から延在する断面長円の筒穴部とを備えるバルジパンチを、前記クランプ型の外に突出した前記長円第2直管部の管端と離間した状態で対向させ、その後、前記バルジピンを前記長円第2直管部の管端から挿入するとともに、前記バルジパンチの先端面を前記第3空洞部の前記下部面に当接させることにより、前記第1直管部の外周に接するように前記バルジを成形するバルジ成形工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の曲げパイプの製造方法によれば、バルジの曲管部側の端面と直管部の外周面との間の隙間を小さくすることができる、または隙間を無くすことができることに加えて、整った形状の長円形状のバルジおよび整った形状のその周辺部分とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1B】仮曲げ工程後の曲げパイプ中間体の形状を示す図である。
【
図2】第1ストライク曲げR矯正工程前の、曲げパイプ中間体、成形型、ストライク曲げR矯正用ピン、および内径規制用ピンの位置関係を示す図である。
【
図3】
図2に示す状態から第1ストライク曲げR矯正工程が実施された状態を示す図である。
【
図4】第1ストライク曲げR矯正工程後に、曲げパイプ中間体が裏返されて第2ストライク曲げR矯正工程が実施された状態を示す図である。
【
図17】第1拡管工程の手順を説明するための図である。
【
図18】第2拡管工程の手順を説明するための図である。
【
図19】絞り工程の手順を説明するための図である。
【
図20】バルジ成形工程の手順を説明するための図である。
【
図22】長円第2直管部の開口側を斜め上向きにして撮影した最終形態の曲げパイプの写真である。
【
図23】長円第2直管部の開口側を横向きにして撮影した最終形態の曲げパイプの写真である。
【
図24】長円第2直管部の開口側を下向きにして撮影した最終形態の曲げパイプの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1Aは、曲げパイプの素材であるパイプ素管1を示す。パイプ素管1として、例えば、Al-Mn系アルミニウム合金A3003管などのアルミニウム合金管、高圧配管用炭素鋼鋼管STSW1-B、銅管などの金属製管が用いられる。パイプ素管1の外径D1は、これに限られることはないが、例えば、φ17mmである。また、パイプ素管1の肉厚は、これに限られることはないが、例えば、1.2mmである。
【0012】
(仮曲げ工程)
仮曲げ工程について説明する。
図1Bに示すように、NCベンダーなどの曲げ加工機を用いて、パイプ素管1に曲げ加工を施し、パイプ素管1の一方の端部側に第1直管部2a、パイプ素管1の他方の端部側に第2直管部2bを残しつつ、第1直管部2aと第2直管部2bとの間に湾曲部2cを形成し、第1直管部2a、湾曲部2c、および第2直管部2bを備える曲げパイプ中間体2を製造する。
【0013】
(ストライク曲げR矯正工程)
ストライク曲げR矯正工程について説明する。上記湾曲部2cの曲げR(曲率半径)を矯正して湾曲部2cを曲管部中間体3c(
図4参照)の形状に成形する。
図2は、第1ストライク曲げR矯正工程前の、曲げパイプ中間体2、成形型10、ストライク曲げR矯正用ピン20、および内径規制用ピン30の位置関係を示す図である。
【0014】
成形型10は、割型状の成形型であって、対称形状の一対の型からなる。なお、
図2~
図4に示す成形型10部分における曲げパイプ中間体2、3を示す図は、一対の型同士の接触面で管を切断した場合を図示したものである。
図2などには、対称形状の一対の型からなる成形型10のうちの一方の型のみを示している。曲げパイプ中間体2を成形型10にセットする際、
図2などに示す一方の型と、図示を省略するもう一方の型とで、曲げパイプ中間体2を挟み込むようにする。
【0015】
成形型10は、湾曲部2cを曲管部中間体3c(
図4参照)の形状に成形するための空洞部10cを有する。空洞部10cは、曲管部中間体3c(
図4参照)の曲げ外側部の曲面に対応した形状(曲率半径)の第1内周面10c1と、湾曲部2cの曲げ内側部の曲面に対応した形状(曲率半径)の第2内周面10c2とを有する。また、成形型10は、第1直管部2aおよび第2直管部2bを収容するための空洞部10a、10bを有する。
【0016】
ストライク曲げR矯正用ピン20は、円柱形状の本体部20aと、第1内周面10c1の形状(曲率半径)に対応した湾曲面を有する爪部20bとを有する。内径規制用ピン30は、円柱形状の本体部30aと、先端に向かうに連れて外径が小さくなる先端部30bとを有する。
【0017】
本実施形態のストライク曲げR矯正工程は、第1ストライク曲げR矯正工程、および第2ストライク曲げR矯正工程という2段階のストライク曲げR矯正工程である。
【0018】
〈第1ストライク曲げR矯正工程〉
図2に示すように、成形型10の空洞部10a~10cに曲げパイプ中間体2を配置し、第1直管部2aの管端からストライク曲げR矯正用ピン20を挿入するとともに、ストライク曲げR矯正用ピン20を挿入しない側の第2直管部2bの管端から内径規制用ピン30を挿入する。
【0019】
図3に示すように、ストライク曲げR矯正用ピン20が挿入されると、その爪部20bが湾曲部2cを内側から押圧する。その結果、曲げパイプ中間体2の湾曲部2cの曲げ外側部の曲面が径方向外向きに拡大する。また、湾曲部2cの曲げ内側部は、上記曲げ外側部が径方向外向きに拡大することによって内側へ引っ張られて管の内方へ変形する。
図2と
図3とを比較すればわかるように、湾曲部2cの曲げ外側部の曲面の曲率半径、および湾曲部2cの曲げ内側部の曲面の曲率半径は、いずれも小さくなる。
【0020】
〈第2ストライク曲げR矯正工程〉
次いで、
図4に示すように、曲げパイプ中間体2を裏返して成形型10の空洞部10a~10cに曲げパイプ中間体2を配置し、第1ストライク曲げR矯正工程時に内径規制用ピン30を挿入した第2直管部2bの管端からストライク曲げR矯正用ピン20を挿入するとともに、第1ストライク曲げR矯正工程時にストライク曲げR矯正用ピン20を挿入した第1直管部2aの管端から内径規制用ピン30を挿入する。
【0021】
ストライク曲げR矯正用ピン20が挿入されると、その爪部20bが湾曲部2cを内側から押圧する。その結果、曲げパイプ中間体2の湾曲部2cの曲げ外側部の曲面が径方向外向きに拡大する。また、湾曲部2cの曲げ内側部は、上記曲げ外側部が径方向外向きに拡大することによって内側へ引っ張られて管の内方へ変形する。
【0022】
第1ストライク曲げR矯正工程、および第2ストライク曲げR矯正工程の実施により、
図2に示す湾曲部2cは、
図4に示す曲管部中間体3cの形状に成形される。曲管部中間体3cの曲げ外側部の曲面の曲率半径、および曲管部中間体3cの曲げ内側部の曲面の曲率半径は、湾曲部2cのそれぞれ対応する曲面の曲率半径よりも小さい。すなわち、曲管部中間体3cの曲率半径は、湾曲部2cの曲率半径よりも小さい。
【0023】
なお、第1ストライク曲げR矯正工程のときに、第2直管部2bの管端からストライク曲げR矯正用ピン20を挿入し、第1直管部2aの管端から内径規制用ピン30を挿入するとともに、第2ストライク曲げR矯正工程のときに、第1直管部2aの管端からストライク曲げR矯正用ピン20を挿入し、第2直管部2bの管端から内径規制用ピン30を挿入してもよい。
【0024】
また、第1直管部2aまたは第2直管部の管端からストライク曲げR矯正用ピン20を挿入することのみで、すなわち、1回のストライク曲げR矯正工程のみで、
図4に示す曲管部中間体3cの形状が得られれば、第1ストライク曲げR矯正工程、および第2ストライク曲げR矯正工程という2段階のストライク曲げR矯正工程ではなく、1段階のストライク曲げR矯正工程とされてもよい。なお、上記のような2段階のストライク曲げR矯正工程を実施することで、より確実に且つ安定して湾曲部2cを曲管部中間体3cの形状に成形することができる。
【0025】
(管固定工程)
管固定工程について説明する。
図5および
図6は、ストライク曲げR矯正工程後の曲げパイプ中間体3をセット(固定)する割型状のクランプ型40を示す図である。
【0026】
クランプ型40は、割型状のクランプ型であって、対称形状の一対の型からなる。
図5および
図6には、対称形状の一対の型からなるクランプ型40のうちの一方の型のみを示している。曲げパイプ中間体3をクランプ型40にセットする際、言い換えれば、曲げパイプ中間体3をクランプ型40で固定する際、
図5などに示す一方の型と、図示を省略するもう一方の型とで、曲げパイプ中間体3を挟み込むようにする。
【0027】
クランプ型40は、曲げパイプ中間体3の第1直管部2aを収容する第1空洞部40aと、曲管部中間体3cを収容する第2空洞部40bと、第2直管部2bの外径より大きな内径になるように座ぐりされてなる第3空洞部40cとを有する。
【0028】
上記第2空洞部40bは、曲管部中間体3cを最終的に得ようとする曲管部4c(
図21参照)の形状に成形するための空洞部である。第2空洞部40bは、曲管部中間体3cの一部(第2直管部2b側)を拡幅するための窪み40b1を有する。
【0029】
図17などに示すように、上記第3空洞部40cは、第1空洞部40aに配置された第1直管部2aの軸方向に沿う方向における第1直管部2aの断面視において第1空洞部40aと第1直管部2aの外周面とが接触する第2直管部2b側の接触線Lの延長上に形成された下部面40c1を有する。なお、
図17に示すクランプ型40部分における曲げパイプ中間体3を示す図は、一対の型同士の接触面で管を切断した場合を図示したものである(
図18~
図20においても同様)。
【0030】
対称形状の一対の型で構成される上記クランプ型40で、曲げパイプ中間体3の第1直管部2aおよび曲管部中間体3cのうちの少なくとも第1直管部2aに近い側の部分を挟み込んで固定する。
【0031】
図17などに示すように、本実施形態では、この管固定工程において、第1直管部2aの管端から曲管部中間体3c近傍までパイプ内支えピン45を挿入している。パイプ内支えピン45を挿入することで、以後の工程(第1拡管工程、第2拡管工程、絞り工程、およびバルジ成形工程)において、第1直管部2aが座屈することを防止することができる。なお、第2直管部2bの長さによっては、曲げパイプ中間体3をクランプ型40にセットする(曲げパイプ中間体3をクランプ型40で固定する)前に、第2直管部2bを所望の長さ切断して、第2直管部2bを短くする。
【0032】
(第1拡管工程)
第1拡管工程について説明する。
図7は、曲げパイプ中間体3の第2直管部2bを拡径して、第2直管部2bを拡径第2直管部3b(
図18参照)に成形する第1拡管工程で用いる第1拡管ピン50を示す斜視図である。
図17は、第1拡管工程の手順を説明するための図である。
【0033】
図7および
図17に示すように、第1拡管ピン50は、第2直管部2bの内径よりも大きな外径の円柱状形状の拡径部50aと、第2空洞部40bの曲面形状に対応した湾曲面を有する先端爪部50bとを有する。先端爪部50bの外径は、拡径部50aの外径よりも小さい。先端爪部50bと拡径部50aとの間に先細りのテーパー部50cが設けられている。また、拡径部50aの表面には拡径部50aの軸方向に延びる平面部50a1が設けられている。平面部50a1は、拡径部50aの周方向で相互に180度ずらされて合計2箇所設けられている。2つの平面部50a1間の距離は、拡径部50aの外径よりも小さい。なお、拡径部50aの表面に上記2つの平面部50a1が設けられていなくてもよい。すなわち、拡径部50aは、完全な円柱形状(断面円形)とされてもよい。
【0034】
上記第1拡管ピン50は、第1拡管パンチ60に内蔵される。第1拡管パンチ60は、筒状部60aを有する。この筒状部60aの有底の筒穴部60a1に第1拡管ピン50が挿入された状態で、第1拡管ピン50は第1拡管パンチ60にボルト(不図示)などで固定される。筒状部60aの外形および筒穴部60a1は、いずれも円形である。第1拡管ピン50の拡径部50aと第1拡管パンチ60の筒穴部60a1との間には隙間があり、この隙間に第2直管部2bが入り込むようになっている。
【0035】
図17に示すように、第1拡管ピン50が内蔵された第1拡管パンチ60を、クランプ型40の外に突出した第2直管部2bの管端と離間した状態で対向させ、その後、第1拡管ピン50を第2直管部2bの管端から挿入するとともに、第1拡管パンチ60の先端面60a2をクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接させる。
【0036】
図18中の右に示すように、第2直管部2bの管端から第1拡管ピン50が挿入されると、第1拡管ピン50のテーパー部50cおよび拡径部50aが第2直管部2bを拡径し、第2直管部2bは、第2直管部2bよりも径が大きい断面略円形の拡径第2直管部3bに成形される。第1拡管ピン50にテーパー部50cが設けられていることで、第2直管部2bをスムーズに拡径することができる。また、拡径部50aの表面に上記2つの平面部50a1が設けられていることで、成形された拡径第2直管部3bの断面が真円ではなく若干横長の円となり、次工程(第2拡管工程)での拡径第2直管部3bの加工(拡管)が行いやすい。
【0037】
(第2拡管工程)
第2拡管工程について説明する。
図8は、第2拡管パンチ80を示す斜視図であり、
図9は、
図8に示す第2拡管パンチ80の正面図である。
図10は、第2拡管ピン70を示す斜視図である。
図18は、第2拡管工程の手順を説明するための図である。
【0038】
第2拡管ピン70は、拡径第2直管部3bの内径よりも大きな幅の断面長円の拡幅部70aを有する。拡幅部70aは、幅および高さが一定の拡幅本体部70a1と、先細りの拡幅先端部70a2とで構成される。
【0039】
上記第2拡管ピン70は、第2拡管パンチ80に内蔵される。第2拡管パンチ80は、筒状部80aを有する。この筒状部80aの有底の筒穴部80a1に第2拡管ピン70が挿入された状態で、第2拡管ピン70は第2拡管パンチ80にボルト(不図示)などで固定される。筒状部80aの外形は円形であり、これに対し、筒穴部80a1は断面長円である。また、第2拡管パンチ80は、入口から奥に向かって開口が徐々に狭められた各断面長円のテーパー部80a2を有する。筒穴部80a1は、テーパー部80a2より奥に形成され、テーパー部80a2から延在する。第2拡管ピン70の拡幅部70aと第2拡管パンチ80の筒穴部80a1との間には隙間があり、この隙間に拡径第2直管部3bが入り込むようになっている。
【0040】
図18に示すように、第2拡管ピン70が内蔵された第2拡管パンチ80を、クランプ型40の外に突出した拡径第2直管部3bの管端と離間した状態で対向させ、その後、第2拡管ピン70を拡径第2直管部3bの管端から挿入するとともに、第2拡管パンチ80の先端面80a3をクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接させる。
【0041】
拡径第2直管部3bの管端から第2拡管ピン70が挿入されると、第2拡管ピン70の拡幅部70aが拡径第2直管部3bを拡幅する。これに加えて、
図19中の右に示すように、第2拡管パンチ80の先端面80a3がクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接する過程で、第2拡管パンチ80の断面長円の筒穴部80a1によって、第1直管部2aの軸方向において拡径第2直管部3bが凹む。その結果、拡径第2直管部3bは、断面長円の拡幅第2直管部4bに成形される。なお、拡幅第2直管部4bは、
図20および
図21に示す最終的に得ようとする長円第2直管部5bよりもひとまわり大きい。
【0042】
また、第2拡管パンチ80の筒穴部80a1が断面長円であること、および筒穴部80a1の先端部に先広がりの上記テーパー部80a2が設けられていることで、第2拡管パンチ80の先端面80a3がクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接する過程で、
図19中の右に示すように、第1直管部2aの軸方向において、拡幅第2直管部4bと曲管部4cとの境界部にバルジ中間体6が形成される。
【0043】
バルジ中間体6は、後に、バルジ7となる部分(凸部)である。この第2拡管工程において、バルジ中間体6を成形しておくことで、後のバルジ成形工程にて、より整った形状のバルジ7を成形することができる。
【0044】
また、拡径第2直管部3bの管端から第2拡管ピン70が挿入されると、第2拡管ピン70の拡幅先端部70a2が、曲管部中間体3cを内側から押圧する。クランプ型40の第2空洞部40bには窪み40b1(
図5参照)が設けられているため、拡幅先端部70a2が曲管部中間体3cを内側から押圧すると、曲管部中間体3cの一部(第2直管部2b側)が窪み40b1に嵌り込むようにして拡幅変形し、その結果、曲管部中間体3cは最終的に得ようとする形状の曲管部4c(
図21参照)に成形される。
図21および
図24に示すように、曲管部4cは、左右一対の膨らみ部5を有する。この膨らみ部5が、曲管部中間体3cの一部(第2直管部2b側)が拡幅変形した部分である。
【0045】
このようにして、第2拡管工程により、拡径第2直管部3bおよび曲管部中間体3cは、それぞれ拡幅第2直管部4bおよび曲管部4cに成形される。
【0046】
(絞り工程)
絞り工程について説明する。
図11は、絞りパンチ100を示す斜視図であり、
図12は、
図11に示す絞りパンチ100の正面図である。
図13は、絞りピン90を示す斜視図である。
図19は、絞り工程の手順を説明するための図である。
【0047】
絞りピン90は、断面長円の形状保持部90aを有する。形状保持部90aの断面形状およびその寸法は、本絞り工程にて得ようとする長円第2直管部5bの断面内側形状およびその寸法とほぼ等しい。
【0048】
上記絞りピン90は、絞りパンチ100に内蔵される。絞りパンチ100は、筒状部100aを有する。この筒状部100aの有底の絞り筒穴部100a1に絞りピン90が挿入された状態で、絞りピン90は絞りパンチ100にボルト(不図示)などで固定される。筒状部100aの外形は円形であり、絞り筒穴部100a1は断面長円である。また、絞りパンチ100は、入口から奥に向かって開口が徐々に狭められた各断面長円の絞りテーパー部100a2を有する。絞り筒穴部100a1は、絞りテーパー部100a2より奥に形成され、絞りテーパー部100a2から延在する。
図19に示すように、絞りピン90の形状保持部90aと絞りパンチ100の絞り筒穴部100a1との間には隙間があり、この隙間に拡幅第2直管部4bが入り込むようになっている。
【0049】
図19に示すように、上記絞りテーパー部100a2は、拡幅第2直管部4bと曲管部4cとの境界部のうちの曲がり内側部103に当接するテーパー部分101における、絞りパンチ100の軸方向に対する傾斜角度α1が、上記境界部のうちの曲がり外側部104に当接するテーパー部分102における、上記軸方向に対する傾斜角度α2よりも大きくされている。
【0050】
絞りピン90が内蔵された絞りパンチ100を、クランプ型40の外に突出した拡幅第2直管部4bの管端と離間した状態で対向させ、その後、絞りピン90を拡幅第2直管部4bの管端から挿入するとともに、絞りパンチ100の先端面100a3をクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接させる。
【0051】
図20中の右に示すように、絞りパンチ100が拡幅第2直管部4bの管端と離間した状態から、その先端面100a3がクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接する過程で、絞りパンチ100の絞りテーパー部100a2および絞り筒穴部100a1によって、断面長円の拡幅第2直管部4bは全周にわたって絞られ、その結果、拡幅第2直管部4bは、最終的に得ようとする断面長円の長円第2直管部5bに成形される。また、絞りパンチ100の絞りテーパー部100a2によって、長円第2直管部5bと曲管部4cとの境界部にはその全周にわたってバルジ中間体6が形成される。
【0052】
ここで、傾斜角度α1>傾斜角度α2とされていることで、上記絞りテーパー部100a2により、曲がり内側部103のバルジ中間体6は、曲がり外側部104のバルジ中間体6よりも第1直管部2a側の方へ大きく伸びる(
図20参照)。曲がり内側部103および曲がり外側部104は、整った形状のバルジ7(
図21参照)に幾分成形しづらい部分であり、且つ、曲がり内側部103は、曲がり外側部104よりも整った形状のバルジ7(
図21参照)に成形しづらい部分である。傾斜角度α1>傾斜角度α2とされていることで、曲がり内側部103のバルジ中間体6が第1直管部2a側の方へ大きく伸びる。その結果、バルジ7を成形し易くなる。これにより、次のバルジ成形工程にて、曲がり内側部103においてより整った形状のバルジ7を成形することができる。なお、傾斜角度α1>傾斜角度α2とされていることは必須ではない。
【0053】
また、断面長円の形状保持部90aを有する絞りピン90が内蔵された絞りパンチ100を絞り工程で用いることで、絞りパンチ100の絞りテーパー部100a2および絞り筒穴部100a1によって拡幅第2直管部4bが絞られる際に、拡幅第2直管部4bの内面が絞りピン90で支持されるので、整った形状の長円第2直管部5bとすることができる。なお、特許文献1(特許第6546684号公報)に記載の曲げパイプの製造方法では、絞り工程に相当する工程において、絞りピン90に相当する部材は用いられていない。
【0054】
(バルジ成形工程)
バルジ成形工程について説明する。
図14は、バルジパンチ120を示す斜視図であり、
図15は、
図14に示すバルジパンチ120の正面図である。
図16は、バルジピン110を示す斜視図である。
図20は、バルジ成形工程の手順を説明するための図である。
【0055】
バルジピン110は、断面長円の形状保持部110aを有する。形状保持部110aの断面形状およびその寸法は、長円第2直管部5bの断面内側形状およびその寸法とほぼ等しい。
【0056】
上記バルジピン110は、バルジパンチ120に内蔵される。バルジパンチ120は、筒状部120aを有する。この筒状部120aの有底の筒穴部120a1にバルジピン110が挿入された状態で、バルジピン110はバルジパンチ120にボルト(不図示)などで固定される。筒状部120aの外形は円形であり、筒穴部120a1は断面長円である。また、バルジパンチ120は、最終的に得ようとする長円形状のバルジ7に対応した寸法で所定の深さ座ぐりされることで入口に形成された段差部120a2を有する。筒穴部120a1は、段差部120a2より奥に形成され、段差部120a2から延在する。
図20に示すように、バルジピン110の形状保持部110aとバルジパンチ120の筒穴部120a1との間には隙間があり、この隙間に長円第2直管部5bが入り込むようになっている。
【0057】
図15に示すように、上記段差部120a2は、長円形状のバルジ7を成形するための段差部であるため、長円形状のリング状である。この段差部120a2は、当該段差部120a2を正面から視たときに、当該段差部120a2の長手方向中央部105における幅が、当該段差部120a2の長手方向端部106における幅よりも広くされている。また、段差部120a2の幅は、長手方向端部106から長手方向中央部105に向けて滑らかに広げられている。
【0058】
上記長手方向中央部105は、曲げパイプ中間体3における曲がり内側部103および曲がり外側部104に対応する部分である(
図20参照)。これら曲がり内側部103および曲がり外側部104は、整った形状のバルジ7(
図21参照)に幾分成形しづらい部分である。段差部120a2の長手方向中央部105における幅が、段差部120a2の長手方向端部106における幅よりも広くされていると、段差部120a2の長手方向中央部105にバルジ中間体6が伸び易くなり、その結果、より整った形状のバルジ7を成形することができる。
【0059】
なお、段差部120a2の長手方向中央部105における幅と、段差部120a2の長手方向端部106における幅とは等しくされていてもよい。すなわち、長円形状のリング状の段差部120a2において、当該段差部120a2を正面から視たときに、全周にわたって均一な寸法の幅の段差部とされてもよい。
【0060】
バルジピン110が内蔵されたバルジパンチ120を、クランプ型40の外に突出した長円第2直管部5bの管端と離間した状態で対向させ、その後、バルジピン110を長円第2直管部5bの管端から挿入するとともに、バルジパンチ120の先端面120a3をクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接させる。
【0061】
バルジパンチ120が長円第2直管部5bの管端と離間した状態から、その先端面120a3がクランプ型40の第3空洞部40cの下部面40c1に当接する過程で、バルジパンチ120の段差部120a2によって、バルジ中間体6は、長円第2直管部5bの軸方向において圧縮されるとともに径方向に伸びる。その結果、バルジ中間体6は、第1直管部2aの外周に接するような長円形状のバルジ7(
図21参照)に成形される。長円形状のバルジ7とは、長円形状の環状凸部であり、言い換えれば、長円形状の鍔であり、長円形状のリングである。
【0062】
なお、バルジピン110の形状保持部110aの基端に設けられた段差部110bが、長円第2直管部5bの管端のストッパーとなる。バルジパンチ120の先端面120a3とバルジピン110の段差部110bとの間のバルジパンチ120の軸方向における距離が、クランプ型40の外に突出した長円第2直管部5bの管端と第3空洞部40cの下部面40c1との間の長円第2直管部5bの軸方向における距離よりも短い場合、バルジパンチ120の先端面120a3が第3空洞部40cの下部面40c1に当接する過程で、バルジピン110の段差部110bによって、長円第2直管部5bは第3空洞部40c内に押し込まれる。この作用によっても、バルジ中間体6は、長円第2直管部5bの軸方向において圧縮されるとともに径方向に伸びる。
【0063】
なお、バルジパンチ120の先端面120a3とバルジピン110の段差部110bとの間のバルジパンチ120の軸方向における距離が、クランプ型40の外に突出した長円第2直管部5bの管端と第3空洞部40cの下部面40c1との間の長円第2直管部5bの軸方向における距離よりも長くされてもよいし、同じ距離にされていてもよい。
【0064】
長円形状のバルジ7を備える最終形態の曲げパイプ8を、
図21~
図24に示した。
図21~
図24に示すように、上記各工程を経て得られた曲げパイプ8は、バルジ7の曲管部側の端面7aと第1直管部2aの外周面との間の隙間が小さい(隙間がほとんど無い)。すなわち、本実施形態の曲げパイプの製造方法によると、バルジ7の曲管部側の端面7aと直管部の外周面との間の隙間を小さくすることができる、または隙間を無くすことができる。
【0065】
なお、実際に製造した
図22~
図24に示す曲げパイプ8に関し、第1直管部2aには、2つのスプール9が形成されている。これらのスプール9は、本発明と特に関係はない。
【0066】
本発明では、第1拡管工程、第2拡管工程という2段階の拡管工程を行った後に、絞り工程を行って、パイプ素管1の第2直管部2bを、最終形態である長円第2直管部5bに成形する。絞り工程を行う前に、上記2段階の拡管工程を行うことで、パイプ素管1の第2直管部2bを徐々に最終形態である長円第2直管部5bにすることができ、バルジ7から連なる整った形状の長円第2直管部5bとすることができる。また、バルジ7へと連なる曲管部4cについても左右一対の膨らみ部5を有する整った形状の曲管部4cとすることができる。そして、バルジ成形工程にて、最終的に得ようとする長円形状のバルジ7を成形することで、整った形状のバルジ7とすることができる。バルジ7が長円形状であるので狭い場所に曲げパイプ8を配置することができる。
【0067】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0068】
内径規制用ピン30を用いることは必須ではない。すなわち、第1ストライク曲げR矯正工程において、内径規制用ピン30を用いなくてもよい。また、第2ストライク曲げR矯正工程において、内径規制用ピン30を用いなくてもよい。ストライク曲げR矯正工程において、内径規制用ピン30を用いなくてもよい。
【0069】
第1拡管工程、第2拡管工程、絞り工程、およびバルジ成形工程において、第1直管部2aをパイプ内支えピン45で内側から支持することは必須ではない。すなわち、管固定工程において、パイプ内支えピン45を用いなくてもよい。
【0070】
第1拡管パンチ60は必須ではない。例えば、第1拡管パンチ60を用いずに何らかの公知の方法で保持した第1拡管ピン50を、クランプ型40の外に突出した第2直管部2bの管端と離間した状態で対向させ、その後、第1拡管ピン50を第2直管部2bの管端から挿入することで、第2直管部2bを拡径してもよい。なお、上記実施形態のように、第1拡管パンチ60を用いることで、第1拡管ピン50による第2直管部2bの拡径がより安定する。
【0071】
第2拡管パンチ80の筒穴部80a1は、断面長円でなく断面円形の穴部とされてもよい。筒穴部80a1が断面円形の穴部とされていても、拡径第2直管部3bの内径よりも大きな幅の断面長円の拡幅部70aを有する第2拡管ピン70によって、拡径第2直管部3bを拡幅することができる。拡径第2直管部3bが拡幅すると、第1直管部2aの軸方向において拡径第2直管部3bは自然に凹む。その結果、拡径第2直管部3bは、断面長円の拡幅第2直管部4bとなる。
【0072】
第2拡管パンチ80は必須ではない。例えば、第2拡管パンチ80を用いずに何らかの公知の方法で保持した第2拡管ピン70を、クランプ型40の外に突出した拡径第2直管部3bの管端と離間した状態で対向させ、その後、第2拡管ピン70を拡径第2直管部3bの管端から挿入することで、拡径第2直管部3bおよび曲管部中間体3cの一部を拡幅してもよい。なお、上記実施形態のように、第2拡管パンチ80を用いることで、第2拡管ピン70による拡径第2直管部3bおよび曲管部中間体3cの一部の拡幅がより安定する。
【0073】
本願で「長円」とは、2つの長辺が平行な長円だけでなく、楕円で定義されるような円も長円に含まれる。
【0074】
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは勿論可能である。
【符号の説明】
【0075】
1:パイプ素管
2:曲げパイプ中間体
2a:第1直管部
2b:第2直管部
2c:湾曲部
3b:拡径第2直管部
3c:曲管部中間体
4b:拡幅第2直管部
4c:曲管部
5b:長円第2直管部
7:バルジ
8:曲げパイプ
10:成形型
10c:空洞部
20:ストライク曲げR矯正用ピン
30:内径規制用ピン
40:クランプ型
40a:第1空洞部
40b:第2空洞部
40b1:窪み
40c:第3空洞部
40c1:下部面
40:クランプ型
50:第1拡管ピン
50a:拡径部
60:第1拡管パンチ
70:第2拡管ピン
70a:拡幅部
80:第2拡管パンチ
80a1:筒穴部
80a2:テーパー部
90:絞りピン
90a:形状保持部
100:絞りパンチ
100a1:絞り筒穴部
100a2:絞りテーパー部
101、102:テーパー部分
103:曲がり内側部
104:曲がり外側部
110:バルジピン
120:バルジパンチ
120a1:筒穴部
120a2:段差部
α1、α2:傾斜角度