(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089253
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20220609BHJP
C21D 1/34 20060101ALI20220609BHJP
C21D 1/09 20060101ALI20220609BHJP
C21D 1/62 20060101ALI20220609BHJP
C21D 9/08 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B23K26/082
C21D1/34 H
C21D1/09 G
C21D1/09 M
C21D1/62
C21D9/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201488
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】515178535
【氏名又は名称】株式会社ワイヤード
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 明郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】杣 直彦
(72)【発明者】
【氏名】兼古 光行
【テーマコード(参考)】
4E168
4K042
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168BA00
4E168CB03
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4K042AA06
4K042BA03
4K042DA01
4K042DB04
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
【課題】筒状の被加工物がその周方向に回転不可能な重量物体やその周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体であっても、簡素で且つ小型化された装置構成で被加工物の内周壁面に対するレーザ加工を簡便かつ的確に照射して高精度のレーザ加工に達成するレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザ光を出射するレーザ発生源110と、被加工物Wに対してレーザ発生源110から出射したレーザ光の光軸を中心に回転させながら被加工物Wの内周壁面Wsに向けてレーザ光を導光するレーザ導光手段120と、レーザ導光手段120または被加工物Wの少なくとも一方を被加工物Wの筒長手方向に沿って移動させる移動手段130と、を備えているレーザ加工装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の被加工物内に向けてレーザ光を出射して前記被加工物の内周壁面をレーザ加工するレーザ加工装置において、
前記レーザ光を出射するレーザ発生源と、前記被加工物に対して前記レーザ発生源から出射したレーザ光の光軸を中心に回転させながら前記被加工物の内周壁面に向けて前記レーザ光を導光するレーザ導光手段と、該レーザ導光手段または前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の筒長手方向に沿って移動させる移動手段と、を備えていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ導光手段が、前記レーザ光の光軸に合致する回転軸を備えて該回転軸内に前記レーザ光を導光させる回転モータと、該回転モータの回転軸と同軸かつ同期回転自在に設けた回転体と、該回転体内に組込まれて前記レーザ光を前記被加工物の内周壁面に向けて反射させて照射するレーザ光反射部材とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記回転モータの回転軸が、中空軸であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記回転モータの回転軸が、光透過性材料からなる中実軸であることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ光反射部材が、前記レーザ光の入射角と反射角との和が鈍角をなすように前記回転体に設置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ導光手段が、前記レーザ光反射部材によって反射される前記レーザ光の反射角を変更自在とする反射角変更手段を備えていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の被加工物の内周壁面をレーザ加工するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、筒状の被加工物の内周壁面に切断、溶接、切削、焼入れなどの加工を施す装置として、筒状の被加工物内に向けてレーザ光を出射して被加工物の内周壁面をレーザ加工するレーザ加工装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被加工物としてのシリンダライナを回転テーブル上で回転させながらレーザ光熱処理装置を上下動して、シリンダライナの内面にレーザ加工を施すシリンダライナの加工装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、軸受装置の軌道面などの筒状の被加工物の内周壁面における焼入れ対象部に向けて被加工物の外周域に設けた照射スポットから加熱ビームを斜めに直に照射する一対のビーム照射機構と、焼入れ対象部に沿って加熱ビームを走査するように一対のビーム照射機構を制御する制御機構とを備えた焼入れ装置が記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、レーザ光源よりレーザ光を導く1系統分の可撓性導光手段と、この可撓性導光手段により導かれたレーザ光のスポット径を可変調整する凸レンズおよび凹レンズによるレンズ光学機構と、このレンズ光学機構の光軸に光軸を一致させて配置され、該レンズ光学機構によりスポット径を調整されたレーザ光を漏斗状に光路変換すると共に、被加熱管体の管内表面へのレーザ光のビーム入射角が70~80°になる角度に変換して加熱用レーザ光として出射する円錐レンズ(アキシコンレンズ)とより構成された管状体加熱用のレーザ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56-5923号公報
【特許文献2】特開2003-147431号公報
【特許文献3】特開平8-19881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された加工装置は、円筒形のシリンダライナを加工対象物とするものであって、この加工装置を大型もしくは大重量の被加工物に用いた場合には、これらの大型もしくは大重量の被加工物を回転させるために大型の重厚な回転テーブルを用いる必要があり、その回転テーブルの回転駆動機構が大掛かりな機構となり、加工装置が全体的に大型化するという問題があり、また、この加工装置を周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体からなる被加工物に用いた場合にも、被加工物の重心のバランスをとって被加工物を回転させることが難しく、そのための複雑な駆動機構を付設する必要があるなど加工装置上の厄介な問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された焼入れ装置では、被加工物の外側から内周壁面の焼入れ部位にレーザ光を斜めに照射する際に、被加工物に形成されている内周壁面が長尺である場合、一対のビーム照射機構から離れた奥側位置の内周壁面に対して手前側位置の内周壁面に比して大きい入射角でビーム光を照射しなければならず、内周壁面内の奥側の焼入れ位置に向かって照射するレーザ光の照射密度が低下し、内周壁面手前側位置から奥側位置へ向かうにつれて焼き入れ処理が不完全となり、全体的に十分な加工精度が得られないという問題があり、また、被加工物の内径が小さい場合にも、奥側位置へ向かうにつれて大きな入射角でビーム光を照射しなければならず、前述した被加工物が長尺である場合と同様に、十分な加工精度が得られないという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載されたレーザ装置では、被加熱物の外側となる被加熱物の管開口部から円錐レンズを通して管内表面にレーザ光を照射するため、管の長手方向にレーザ光の照射位置を変化させる場合あるいは異なる内径の管にレーザ光を照射する場合、円錐面の角度が異なる円錐レンズに変更する必要があり、その円錐レンズの交換や焦点距離の調整など、煩雑かつ余計な調整作業を強いられるという装置取り扱い上の厄介な問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、筒状の被加工物がその周方向に回転不可能な重量物体やその周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体であっても、簡素で且つ小型化された装置構成で被加工物の内周壁面に対するレーザ加工を簡便かつ的確に照射して高精度のレーザ加工を達成するレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、筒状の被加工物内に向けてレーザ光を出射して前記被加工物の内周壁面をレーザ加工するレーザ加工装置において、前記レーザ光を出射するレーザ発生源と、前記被加工物に対して前記レーザ発生源から出射した前記レーザ光の光軸を中心に回転させながら前記被加工物の内周壁面に向けて前記レーザ光を導光するレーザ導光手段と、該レーザ導光手段または前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の筒長手方向に沿って移動させる移動手段と、を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0012】
請求項2に係るレーザ加工装置は、請求項1に係るレーザ加工装置の構成に加えて前記レーザ導光手段が、前記レーザ光の光軸に合致する回転軸を備えて該回転軸内に前記レーザ光を導光させる回転モータと、該回転モータの回転軸と同軸かつ同期回転自在に設けた回転体と、該回転体内に組込まれて前記レーザ光を前記被加工物の内周壁面に向けて反射させて照射するレーザ光反射部材とで構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
請求項3に係るレーザ加工装置は、請求項2に係るレーザ加工装置の構成に加えて、前記回転モータの回転軸が、中空軸であることにより、前述した課題を解決するものである。
【0014】
請求項4に係るレーザ加工装置は、請求項2に係るレーザ加工装置の構成に加えて、前記回転モータの回転軸が、光透過性材料からなる中実軸であることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0015】
請求項5に係るレーザ加工装置は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に係るレーザ加工装置の構成に加えて、前記レーザ光反射部材が、前記レーザ光の入射角と反射角との和が鈍角をなすように前記回転体に設置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0016】
請求項6に係るレーザ加工装置は、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に係るレーザ加工装置の構成に加えて、前記レーザ導光手段が、前記レーザ光反射部材によって反射される前記レーザ光の反射角を変更自在とする反射角変更手段を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレーザ加工装置によれば、筒状の被加工物内に向けてレーザ光を出射して被加工物の内周壁面をレーザ加工することができるばかりでなく、以下の本願発明に特有の構成により、本願発明に特有の効果を奏することができる。
【0018】
請求項1に係る発明のレーザ加工装置によれば、レーザ光を出射するレーザ発生源と、被加工物に対してレーザ発生源から出射したレーザ光の光軸を中心に回転させながら被加工物の内周壁面に向けて導光するレーザ導光手段と、このレーザ導光手段または被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の筒長手方向に沿って移動させる移動手段と、を備えていることにより、被加工物の少なくとも周方向の回動を静止させたまま、移動手段が、レーザ導光手段と被加工物とを相対的に移動させてレーザ導光手段を被加工物の内周壁面内において筒長手方向に移動させるとともに、レーザ導光手段が、レーザ光の光軸を中心として被加工物の内周壁面の周方向にレーザ光の照射位置を移動させるため、筒状の被加工物が、その周方向に回転不可能な重量物体やその周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体であっても、従来のように被加工物自体を周方向に回転させる大掛かりな回転駆動手段を設けることなく、簡素で且つ小型化された装置構成で被加工物の内周壁面に対するレーザ光の周方向の照射位置を順次変位させて被加工物の内周壁面に対してレーザ光を簡便かつ的確に照射して切断、溶接、切削、焼入れなどのレーザ加工を高精度に達成することができる。
【0019】
請求項2に係る発明のレーザ加工装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、レーザ導光手段が、レーザ光の光軸に合致する回転軸を備えてこの回転軸内にレーザ光を導光させる回転モータと、この回転モータの回転軸と同軸かつ同期回転自在に設けた回転体と、この回転体内に組込まれたレーザ光反射部材とで構成されていることにより、レーザ発生源から出射したレーザ光の光軸が、レーザ加工時に回転軸、回転体、レーザ光反射部材のそれぞれと同軸配置となるため、レーザ発生源から出射したレーザ光を回転モータの回転軸からレーザ光反射部材を経て被加工物の内周壁面に対して回転ブレを惹起することなくその周方向に確実に照射させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明のレーザ加工装置によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、回転モータの回転軸が、中空軸であることにより、レーザ発生源から出射したレーザ光が、回転モータの回転軸を形成する中空軸内を経てレーザ光反射部材まで何ら遮断されずにレーザ強度を維持したまま導光可能となるため、レーザ発生源から出射したレーザ光を減衰させることなく被加工物の内周壁面に対して照射させることができる。
【0021】
請求項4に係る発明のレーザ加工装置によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、前記回転軸が、光透過性材料からなる中実軸であることにより、レーザ発生源から出射されたレーザ光が、回転モータの回転軸を形成する光透過性材料からなる中実軸内を経てレーザ光反射部材まで透光可能となるため、レーザ発生源から出射したレーザ光の減衰をほぼ回避した状態で被加工物の内周壁面に対して照射させることができる。
【0022】
請求項5に係る発明のレーザ加工装置によれば、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に係る発明が奏する効果に加えて、レーザ光反射部材が、レーザ光の入射角と反射角との和が鈍角をなすように回転体に設置されていることにより、被加工物の内周壁面内に入射したレーザ光が、被加工物の筒長手方向においてレーザ光反射部材の進入位置よりもさらに奥の位置まで照射可能になるため、レーザ光反射部材の進入位置よりもさらに奥の位置までレーザ加工することができるばかりでなく、特に、筒状の被加工物が有底である場合には、レーザ導光手段の被加工物の底面側に向けられた回転体の端部が被加工物の底面に不用意に追突することがなく、被加工物の底面周辺の内周壁面まで確実にレーザ加工することができる。
【0023】
請求項6に係る発明のレーザ加工装置によれば、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に係る発明が奏する効果に加えて、レーザ導光手段が、レーザ光反射部材によって反射されるレーザ光の反射角を変更自在とする反射角変更手段を備えていることにより、レーザ光の反射角を変更自在となるため、底なしあるいは有底の被加工物の内周壁面に切断、溶接、切削、焼入れなどの各種加工に応じたレーザ光の入射角度でレーザ加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施例に係るレーザ加工装置の概略を示す斜視図。
【
図2】本発明の第1実施例に係るレーザ加工装置を示す側断面図。
【
図3】
図1に示すレーザ加工装置の要部を示す断面図。
【
図4】
図1に示すレーザ加工装置の要部を拡大視した斜視図。
【
図5】
図3に示すレーザ加工装置で有底の被加工物をレーザ加工する説明図。
【
図6】
図3に示すレーザ加工装置でレーザ光反射部材の反射角度を変更した図。
【
図7A】本発明の第2実施例に係るレーザ加工装置においてレーザ光の入射角と反射角との和を鈍角である場合のレーザ光の照射状態を示す図。
【
図7B】本発明の第2実施例に係るレーザ加工装置においてレーザ光の入射角と反射角との和を略直角である場合のレーザ光の照射状態を示す図。
【
図8】本発明の第3実施例に係るレーザ加工装置を示した側断面図。
【
図9】
図8に示すレーザ加工装置の回転体周辺の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、筒状の被加工物内に向けてレーザ光を出射して被加工物の内周壁面をレーザ加工するレーザ加工装置において、レーザ光を出射するレーザ発生源と、被加工物に対してレーザ発生源から出射したレーザ光の光軸を中心に回転させながら被加工物の内周壁面に向けてレーザ光を導光するレーザ導光手段と、このレーザ導光手段または被加工物の少なくとも一方を被加工物の筒長手方向に沿って移動させる移動手段と、を備え、筒状の被加工物がその周方向に回転不可能な重量物体やその周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体であっても、簡素で且つ小型化された装置構成で被加工物の内周壁面に対するレーザ加工を簡便かつ的確に照射して高精度のレーザ加工を達成するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
例えば、本発明のレーザ加工装置に用いるレーザ発生源については、ファイバーレーザ発振器、炭酸ガスレーザ発振器、YAGレーザ発振器等のレーザ光を照射可能な形態であれば如何なるものであっても良い。
【0027】
また、本発明のレーザ加工装置に用いる移動手段については、レーザ導光手段または被加工物の少なくとも一方を被加工物の筒長手方向に沿って直線的に移動させる手段であれば良く、例えば、ピストンロッドや直線駆動用アクチエータなどを用いたものであっても良い。
【0028】
さらに、本発明のレーザ加工装置に用いるレーザ光反射部材については、平板状、湾曲状のいずれの反射鏡、あるいは分光可能なプリズムであっても良く、平板状の反射鏡を用いた場合には、レーザ光の照射角度を任意の角度に調整し易い。
【0029】
また、本発明のレーザ加工装置に用いる反射角変更手段については、レーザ光反射部材によって反射されるレーザ光の反射角を変更自在とする手段であれば良く、例えば、レーザ光反射部材として反射鏡を用いた場合、反射角変更手段は、反射鏡が回動可能に支持される支持部と、支持部を支点として回転された反射鏡を複数の角度で固定することができる固定部を備えるものであっても構わない。
【0030】
なお、本発明のレーザ加工装置が適用可能となる筒状の被加工物としては、たとえば、その周方向に回転不可能な重量物体やその周方向の回転軸が偏心している偏心物体や異形の外周断面を呈する異形物体、長尺の小径物体などであることは言うまでもない。
【0031】
また、集光光学系レンズによって集光されたレーザ光は、レーザ光反射部材によって反射された後、切断、溶接、切削、焼入れなどの加工に応じたビーム径で加工対象物の内周壁面に向けて照射させることが可能である。
すなわち、レーザ光は、集光光学系レンズとレーザ光反射部材との相対的な距離を調整するか、異なる焦点のレンズに交換することによって、レーザ光を焼入れ、溶接などの加工に応じたビーム径(例えば、0.02~2.00mm)に集光して被加工物の内周壁面に照射することができる。
【第1実施例】
【0032】
以下、本発明の第1実施例であるレーザ加工装置100について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
ここで、
図1は、本発明の第1実施例に係るレーザ加工装置100の概略を示す斜視図であり、
図2は、本発明の第1実施例に係るレーザ加工装置100を示す側断面図であり、
図3は、
図1に示すレーザ加工装置100の要部を示す断面図であり、
図4は、
図1に示すレーザ加工装置100の要部を拡大視した斜視図であり、
図5は、
図3に示すレーザ加工装置100で有底の被加工物Wをレーザ加工する説明図であり、
図6は、
図3に示すレーザ加工装置100でレーザ光反射部材125の反射角度を変更した図である。
【0033】
<1.レーザ加工装置の概要>
レーザ加工装置100は、
図1乃至
図3に示すように、レーザ光Lを出射するレーザ発生源110と、円筒状の被加工物Wに対してレーザ発生源110から出射したレーザ光Lの光軸Aを中心に回転させながら被加工物Wの内周壁面Wsに向けてレーザ光Lを導光するレーザ導光手段120と、このレーザ導光手段120を被加工物Wの筒長手方向に沿って移動させる移動手段130と、被加工物Wを機台フレームなどに固定するための加工物固定手段140とを備えている。
なお、本発明の第1実施例では、被加工対象物として、円筒状の被加工物Wを加工する場合について説明する。
【0034】
<2.レーザ発生源の具体的構成について>
本発明の第1実施例におけるレーザ発生源110は、市販のファイバーレーザ発振器を用いている。
このレーザ発生源110は、レーザ光Lの光軸A方向でのレーザ導光手段120との間隔を調整可能にレーザ加工装置100の機台フレームに設けられている。
【0035】
<3.レーザ導光手段の具体的構成について>
本発明の第1実施例で用いたレーザ導光手段120は、前述した移動手段130に連結されてレーザ発生源110から出射したレーザ光Lを囲繞した状態で被加工物Wの内周壁面Wsに対して筒長手方向に挿入自在となる円筒状の外套体121と、外套体121の挿入先端側に設けてレーザ光Lの光軸Aと合致させた状態でレーザ光Lを導光する回転軸122aを備えた回転モータ122と、この回転モータ122の回転軸122aと同軸かつ同期回転自在に設けた回転体123と、レーザ発生源110から出射したレーザ光Lを集光させる集光光学系レンズ124と、回転体123内に組込まれてレーザ光Lを被加工物Wの内周壁面Wsに向けて反射させて照射するレーザ光反射部材125と、で構成されている。
なお、ここで用いるレーザ光Lは、被加工物Wの内周壁面Wsに対して、例えば、焼入れ加工に応じたビーム径で照射することができる。
【0036】
そして、本発明の第1実施例で用いたレーザ導光手段120の一部を構成する外套体121は、円筒状の周壁を持つ円筒体をなしており、移動手段130によって被加工物Wの筒長手方向に沿って移動可能に移動手段130のスライダ131に連結されており、移動手段130による移動方向の長さが回転モータ122に連結された回転体123を被加工物Wの挿入開始側の開口部から筒内方奥側の開口部位置周辺に到達させることができる寸法に設定されている。
なお、本発明の第1実施例で用いたレーザ導光手段120一部を構成する外套体121の具体的形態については、円筒状の周壁を持つ円筒体であるが、移動手段130に連結されてレーザ発生源110から出射したレーザ光Lを囲繞した状態で被加工物Wの内周壁面Wsに対して筒長手方向に挿入自在となるものであれば、円筒状のもの以外の複数の縦長リブからなる円筒状のケージ枠体であっても何ら構わない。
【0037】
そして、外套体121には、円筒内部の挿入先端位置に回転モータ122が固定されている。
ここで、この回転モータ122は、ACモータ、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、ブラシレスモータ等の各種のモータを適用することができる。
また、本発明の第1実施例における回転モータ122には、その回転軸122aとして金属製の中空軸を用いている。
すなわち、回転モータ122は、市販の回転モータの金属製の回転軸を中空軸に加工し、あるいは、金属製の中空軸に交換して用いている。
この回転軸122aには、軸方向の一端側から他端側に貫通して貫通孔が形成されており、この貫通孔が回転軸の一端側から他端側にレーザ光Lを通す導光路になっている。
回転モータ122の回転軸122aに形成される貫通孔の孔径は、回転軸122aの直径及び強度を考慮して適宜定められる。
【0038】
なお、本発明の第1実施例の変形例においては、回転モータ122の回転軸122aは、金属製の中空軸に換えて、光透過性樹脂、ガラス等の図示しない光透過性材料からなる中実軸を用いてもよく、この場合は、レーザ発生源から出射されたレーザ光が、光透過性材料からなる中実軸内を経てレーザ光反射部材まで透光可能となるため、レーザ発生源から出射したレーザ光の減衰をほぼ回避した状態で被加工物Wの内周壁面に対して照射させることができる。
【0039】
そして、前述した回転モータ122の回転軸122aの一端部には、前述したように、この回転モータ122の回転軸122aと同軸かつ同期回転自在に設けた回転体123が連結されており、さらに、この回転体123の内部には、少なくとも1つの光学レンズから構成された集光光学系レンズ124と前述のレーザ光反射部材125とが設けられている。
また、回転体123には、この回転軸122aを通して回転体123の内部に導かれたレーザ光Lがレーザ光反射部材125に入射されるまでの導光路およびレーザ光反射部材125によって反射されたレーザ光Lが被加工物Wの内周壁面Wsに照射されるまでの導光路を確保するための空間および開口部122a(
図4参照)が形成されている。
【0040】
このような回転体123は、回転軸122aを通して導光されるレーザ光Lの光軸を中心として集光光学系レンズ124およびレーザ光反射部材125を配置することにより、回転軸122aを中心として重心のバランスをとって回転させている。
【0041】
なお、本発明の第1実施例では、集光光学系レンズ124をレーザ光反射部材125の近傍に設置することにより、レーザ光Lをレーザ光反射部材125に向けてより確実に集光しているが、基本的には、レーザ光反射部材125に入射されるレーザ光Lを集光させることができればよく、その設置場所は、外套体121内であってもよい。
また、集光光学系レンズ124は、図中において、1つの集光レンズで簡略的に示しているが、複数のレンズを組み合わせて構成しても構わない。
【0042】
本発明の第1実施例におけるレーザ光反射部材125は、平板状の反射鏡を用いており、反射面を所定の角度にした状態で回転体に設置されている。
より具体的には、
図3乃至
図5に示すように、レーザ光反射部材125は、レーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角をなすように回転体123の内壁面に一部が固定されている。
すなわち、レーザ光反射部材125は、レーザ光反射部材125によって反射されて被加工物Wの内周壁面Ws内に入射したレーザ光Lが、被加工物Wの筒長手方向においてレーザ光反射部材125の進入位置よりもさらに奥の位置まで照射可能な角度で回転体123に予め設置されている。
【0043】
図3乃至
図5に示すように、レーザ光反射部材125が、レーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角をなすように回転体123に組み込まれている場合、被加工物Wの内周壁面Ws内に入射したレーザ光Lが、被加工物Wの筒長手方向においてレーザ光反射部材125の進入位置よりもさらに奥の位置まで照射可能になるため、筒状の被加工物Wが有底であっても、レーザ導光手段120の被加工物Wの底面側に向けられた回転体123の端部が被加工物Wの底面に不用意に追突することがなく、被加工物Wの底面周辺の内周壁面Wsまで確実にレーザ加工することができる。
【0044】
なお、本発明の第1実施例では、
図3乃至
図5に示すように、レーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角をなすように回転体123に組み込んでいるが、
図6に示すように、レーザ光反射部材125を、レーザ光Lの入射角と反射角との和が略直角をなすように回転体123に設置してもよい。
図6に示すような場合には、入射角と反射角との和が略直角をなすようにレーザ光反射部材125によって反射されたレーザ光Lは、入射角と反射角との和が鈍角をなす場合に比してより高密度で被加工物Wの内周壁面Wsに照射することが可能になる。
すなわち、レーザ光反射部材125が、入射角と反射角との和を略直角に設定して回転体123に組み込んだ場合、特に、高密度でのレーザ加工が要求される切断処理、溶接処理等、焼き入れ処理などのレーザ加工処理に有効である。
【0045】
<4.移動手段の具体的構成について>
本発明の第1実施例で用いた移動手段130は、例えば、外套体121の端部が連結されたスライダ131がボールねじに沿って移動されるボールねじ式の駆動手段によって実現される。
この移動手段130によって、レーザ導光手段120の回転体123が被加工物Wの筒長手方向に沿って被加工物Wの長手方向一端部周辺位置と他端部周辺位置との間で移動配置可能になっている。
【0046】
<5.加工物固定手段の具体的構成について>
本発明の第1実施例で用いた加工物固定手段140は、被加工物Wをレーザ加工装置100の機台フレーム上の所定位置に固定するものである。
すなわち、被加工物Wは、レーザ加工装置100の所定位置に回転不可能な状態で固定されている。
このように被加工物Wが加工物固定手段140によってレーザ加工装置100の所定位置に固定されるため、レーザ導光手段120が被加工物Wに対して相対的に移動されることによって被加工物Wの内周壁面Wsへのレーザ光Lの照射位置が変化される。
【0047】
<6.レーザ加工装置を用いた焼き入れ処理について>
ここで、レーザ加工装置100を用いた焼き入れ処理の一例について説明する。
なお、以下の説明では、被加工物Wが、有底の筒状部材であり、レーザ光反射部材125におけるレーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角である。
そして、本実施例のレーザ加工装置100は、不図示の制御手段によってレーザ加工装置100を構成する各手段の動作が制御される。
すなわち、制御手段によって移動手段130によるレーザ導光手段120の筒長手方向に沿った移動、レーザ発生源110によるレーザ光Lの出射および出射停止、回転モータ122による回転体123の回転および回転停止等のレーザ加工装置100の各部の動作が制御される。
なお、レーザ加工装置100は、制御手段によって全自動で動作させるだけでなく、手動操作を一部に介在させても構わない。
【0048】
まず、レーザ加工装置100の機台フレームに固定された被加工物Wに対して、レーザ導光手段120の外套体121が移動手段130によって被加工物Wの上方から被加工物Wの上端部の内周壁面Wsにレーザ光Lを照射可能なレーザ照射開始位置に下降移動され、その後、回転モータ122が駆動されて回転体123が回転開始されると共にレーザ発生源110によってレーザ光Lが出射開始される。
これによって、レーザ発生源110から出射されたレーザ光Lが回転モータ122の回転軸122aを通って回転体123内のレーザ光反射部材125に入射され、レーザ光反射部材125によって反射されたレーザ光Lが被加工物Wの上端部の内周壁面Wsに所定の入射角度で入射される。
ここで、レーザ光Lの光軸Aを中心として回転される回転体123に組み込まれたレーザ光反射部材125が回転体123の回転軸122a、すなわち、レーザ光Lの光軸Aを中心として回転体123と一体となって回転されるため、回転不可能な状態で固定された被加工物Wの内周壁面Wsに対して周方向に位置を移動させながらレーザ光Lが照射される。
【0049】
回転体123を少なくとも1回転させたタイミングで、レーザ導光手段120の外套体121が移動手段130によって筒長手方向となる被加工物Wの筒内方に向けて所定量移動される。
これによって、被加工物Wの内周壁面Wsに対して筒長手方向に位置を移動させながらレーザ光Lを照射させることができる。
このような被加工物Wの内周壁面Wsに対して、周方向および筒長手方向に位置を移動させながらレーザ光Lを照射する処理を繰り返し、内周壁面Ws全域に対するレーザ加工処理、すなわち、被加工物Wの上端部から下端部の底面周辺の内周壁面Wsに対するレーザ加工処理が完了されると、レーザ発生源110によるレーザ光Lの照射が停止されると共に回転モータ122による回転体123の回転が停止され、被加工物Wの内周壁面Wsに対する焼き入れ処理が完了される。
【0050】
また、この説明では、焼き入れ処理の流れを説明したが、切断、溶接、切削等、処理の内容に応じて移動手段130によるレーザ導光手段120の筒長手方向に沿った移動量、レーザ発生源110によるレーザ光Lの出射タイミング、回転モータ122による回転体123の回転動作のタイミング等のレーザ加工装置100の各部の動作を設定すればよい。
例えば、切断処理の場合、移動手段130によってレーザ導光手段120を筒長手方向の切断位置に移動させた後、その切断位置で切断完了されるまで回転モータ122によって回転体123を回転させてレーザ光Lを照射するとよい。
また、この説明では、移動手段130によってレーザ導光手段120を筒長手方向の上方から下方に向けて移動させて被加工物Wの内周壁面にレーザ加工処理を施すもの例示したが、移動手段130によってレーザ導光手段120を筒長手方向の下方から上方に向けて移動させて被加工物Wの内周壁面Wsにレーザ加工処理を施しても構わない。
【0051】
<7.本発明の第1実施例であるレーザ加工装置が奏する効果>
上述したように、本発明の第1実施例であるレーザ加工装置100は、レーザ光Lを出射するレーザ発生源110と、被加工物Wに対してレーザ発生源110から出射したレーザ光Lの光軸Aを中心に回転させながら被加工物Wの内周壁面Wsに向けて導光するレーザ導光手段120と、このレーザ導光手段120または被加工物Wの少なくとも一方を被加工物Wの筒長手方向に沿って移動させる移動手段130と、を備えていることにより、従来のような被加工物W自体を周方向に回転させる大掛かりな回転駆動手段を設けることなく、簡素で且つ小型化された装置構成で被加工物Wの内周壁面Wsに対するレーザ光Lの周方向の照射位置を順次変位させて被加工物Wの内周壁面Wsに対してレーザ光Lを簡便かつ的確に照射してレーザ加工を高精度に達成することができる。
【0052】
また、レーザ導光手段120が、レーザ光Lの光軸Aに合致する回転軸122aを備えてこの回転軸122a内にレーザ光Lを導光させる回転モータ122と、この回転モータ122の回転軸122aと同軸かつ同期回転自在に設けた回転体123と、この回転体123内に組込まれたレーザ光反射部材125とで構成されていることにより、従来のように被加工物Wを回転させることなく、レーザ発生源110から出射したレーザ光Lをレーザ光反射部材125から被加工物Wの内周壁面Wsに確実に照射させることができる。
そして、レーザ光反射部材125が内部に組み込まれた回転体123が回転モータ122の回転軸122aと同軸上に設けられていることにより、レーザ発生源110から出射したレーザ光Lをレーザ光反射部材125から被加工物Wの内周壁面Wsに高精度で照射させることができる。
【0053】
さらに、回転軸122aが、中空軸であることにより、筒状の被加工物Wが有底であっても、レーザ発生源110から出射されたレーザ光Lを回転軸122aの被加工物Wの底面に向けられた端部とは反対側の端部から中空軸内を通してレーザ光反射部材125に導光させることができる。
【0054】
また、回転軸122aが、光透過性材料からなる中実軸であることにより、筒状の被加工物Wが有底であっても、レーザ発生源110から出射されたレーザ光Lを回転軸122aの被加工物Wの底面に向けられた端部とは反対側の端部から回転軸122aを通してレーザ光反射部材125に導光させることができるとともに、レーザ発生源110から出射されたレーザ光Lを回転軸122aの径方向の幅全体を有効に利用してレーザ光反射部材125に導光させることができる。
【0055】
また、レーザ光反射部材125が、レーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角をなすように回転体123に設置されていることにより、筒状の被加工物Wが有底であっても、レーザ導光手段120の被加工物Wの底面側に向けられた回転体123の端部が被加工物Wの底面に不用意に追突することがなく、被加工物Wの底面周辺の内周壁面Wsまで確実にレーザ加工することができるなど、その効果は格別である。
【第2実施例】
【0056】
以下、
図7Aおよび
図7Bに基づいて、本発明の第2実施例であるレーザ加工装置200を説明する。
ここで、
図7Aは、レーザ光の入射角と反射角との和を鈍角に設定した場合のレーザ光の照射状態を示す図である。
図7Bは、レーザ光の入射角と反射角との和を略直角に設定した場合のレーザ光の照射状態を示す図である。
【0057】
本発明の第2実施例であるレーザ加工装置200は、上述した本発明の第1実施例であるレーザ加工装置100と比較すると、レーザ導光手段220が、レーザ光反射部材によって反射されるレーザ光Lの反射角を変更自在とする反射角変更手段226を備えている構成のみが異なっており、その他の構成については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第1実施例のレーザ加工装置100と同一の部分、部材について対応する200番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0058】
本発明の第2実施例であるレーザ加工装置200の反射角変更手段226は、レーザ光反射部材225の一部を突き当てて複数の角度で回転体223内に固定できるように回転体223の内面に形成された面である。
この反射角変更手段226は、より具体的には、レーザ光Lの入射角と反射角との和が鈍角をなすようにレーザ光反射部材125の一部を突き当てて固定する鈍角固定面226a(
図7A参照)と、レーザ光Lの入射角と反射角との和が略直角をなすようにレーザ光反射部材225の一部を突き当てて固定する直角固定面226b(
図7B参照)と、を有する。
【0059】
このような本発明の第2実施例であるレーザ加工装置200は、有底の被加工物Wに対して底面周辺の内周壁面Wsに対しても満遍なくレーザ加工を施したい場合、レーザ加工装置200によってレーザ加工を開始する前に、レーザ光反射部材225を鈍角固定面226aに固定することにより、レーザ発生源210から出射されたレーザ光Lが、レーザ光反射部材225によって入射角と反射角との和が鈍角をなすように被加工物Wの内周壁面Wsに照射され、有底の被加工物Wにおける底面周辺の内周壁面Wsに対して確実に焼入れ等のレーザ加工を施すことができる。
【0060】
一方、本発明の第2実施例であるレーザ加工装置200は、切断、溶接等の被加工物の端部から比較的離れた内周壁面Wsにレーザ加工を施したい場合、レーザ加工装置200によってレーザ加工を開始する前に、レーザ光反射部材225を直角固定面226bに固定することにより、レーザ発生源210から出射されたレーザ光Lが、レーザ光反射部材225によって入射角と反射角との和が略直角をなすように被加工物Wの内周壁面Wsに照射され、切断、溶接等の加工処理に必要なより高密度のレーザ光で確実なレーザ加工を施すことができる。
【0061】
上述したような本実施例のレーザ加工装置200は、本発明の第1実施例であるレーザ加工装置100と同様の効果を奏すると共に、照射角度を変えて被加工物Wの内周壁面Wsにレーザ光Lを照射することができるため、底なしあるいは有底の被加工物Wの内周壁面Wsに各種加工に応じて異なったレーザ光Lの入射角度でレーザ加工を施すことができるなど、その効果は格別である。
【第3実施例】
【0062】
以下、
図8乃至
図9に基づいて、本発明の第3実施例であるレーザ加工装置300を説明する。
ここで、
図8は、本発明の第3実施例に係るレーザ加工装置を示す側断面図であり、
図9は、
図8に示すレーザ加工装置の回転体周辺の拡大図である。
【0063】
本発明の第3実施例であるレーザ加工装置300は、上述した本発明の第1実施例であるレーザ加工装置100と比較すると、被加工物に対するレーザ発生源310の配置形態のみが異なっており、その他の構成については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第1実施例のレーザ加工装置100と同一の部分、部材について対応する300番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0064】
本発明の第3実施例であるレーザ加工装置300は、レーザ発生源310が筒状の被加工物Wに対してレーザ導光手段320が進入される側とは逆側の端部開口部からレーザ光Lを出射するように配置されている。
すなわち、レーザ加工装置300は、移動手段330によってレーザ導光手段320を筒状の被加工物Wの一端側開口部から被加工物W内に移動可能であるとともに、レーザ発生源310から出射されたレーザ光Lを被加工物Wの他端側開口部から被加工物W内に向けて照射されるように構成されている。
【0065】
ここで、レーザ加工装置300によって被加工物Wに対して実施される焼入れ処理の流れについて説明する。
なお、以下の説明では、被加工物Wが有底でない筒状部材であり、レーザ光反射部材325がレーザ光Lの入射角と反射角との和が略直角をなすように回転体323に設置されているものとする。
【0066】
まず、レーザ加工装置300の機台フレームに加工物固定手段340によって固定された被加工物Wに対して、レーザ導光手段320が移動手段330によって被加工物Wの上方から被加工物Wの下端部の内周壁面Wsにレーザ光Lを照射可能なレーザ照射開始位置に下降移動され、その後、回転モータ322が駆動されて回転体323が回転開始されると共にレーザ発生源310によってレーザ光Lが出射開始される。
これによって、レーザ発生源310から出射されたレーザ光Lが回転体323内のレーザ光反射部材325に入射され、レーザ光反射部材325によって反射されたレーザ光Lが被加工物Wの下端部の内周壁面Wsに所定の入射角度で入射される。
ここで、レーザ光Lの光軸Aを中心として回転される回転体323に組み込まれたレーザ光反射部材325が回転体323の回転軸322a、すなわち、レーザ光Lの光軸Aを中心として回転されるため、機台フレームに固定された被加工物Wの内周壁面Wsに対して周方向に位置を移動させながらレーザ光Lが照射される。
【0067】
回転体323を少なくとも1回転させたタイミングで、レーザ導光手段320が移動手段330によって筒長手方向となる被加工物Wの筒内上方に向けて所定量移動される。
これによって、被加工物Wの内周壁面Wsに対して筒長手方向に位置を移動させながらレーザ光Lを照射させることができる。
このような被加工物Wの内周壁面Wsに対して、周方向および筒長手方向に位置を移動させながらレーザ光Lを照射する処理を繰り返し、内周壁面全域のレーザ加工処理、すなわち被加工物の下端部から上端部の内周壁面Wsに対してのレーザ加工処理が完了されると、レーザ発生源310によるレーザ光Lの照射が停止されると共に回転モータ322による回転体323の回転が停止され、被加工物Wの内周壁面Wsに対する焼き入れ処理が完了される。
【0068】
上述したような本実施例のレーザ加工装置は、有底でない筒状の被加工物に対して本発明の第1実施例であるレーザ加工装置と同様の効果を奏することができる。
【0069】
以上、本発明に係るレーザ加工装置について実施例を用いて説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0070】
100 、200 、300 ・・・レーザ加工装置
110 、310 ・・・レーザ発生源
120 、220 、320 ・・・レーザ導光手段
121 、321 ・・・外套体
122 、322 ・・・回転モータ
122a、222a、322a ・・・回転軸
123 、223 、323 ・・・回転体
123a、223a、323a ・・・開口部
124 、224 、324 ・・・集光光学系レンズ
125 、225 、325 ・・・レーザ光反射部材
226 ・・・反射角変更手段
226a ・・・鈍角固定面
226b ・・・直角固定面
130 、 330 ・・・移動手段
131 、 331 ・・・スライダ
140 、 340 ・・・加工物固定手段
W ・・・被加工物
Ws ・・・内周壁面
L ・・・レーザ光
A ・・・光軸
【手続補正書】
【提出日】2020-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】