IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧

特開2022-89297セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具
<>
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図1
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図2
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図3
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図4A
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図4B
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図4C
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図5
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図6
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図7
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図8
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図9
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図10
  • 特開-セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089297
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】セラミックス基複合材料、その製造方法、及び取付具
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
C04B35/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201592
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】久保田 勇希
(72)【発明者】
【氏名】宇田 道正
(72)【発明者】
【氏名】添田 晴彦
(57)【要約】
【課題】マトリックス自体において、き裂の発生又は進展を抑制できるセラミックス基複合材料を提供する。
【解決手段】セラミックス基複合材料10は、マトリックス3と、マトリックス3内に設けられた強化繊維5とを備える。マトリックス3は、複数の層7が積み重なった層構造を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスと、前記マトリックス内に設けられた強化繊維と、を備えるセラミックス基複合材料であって、
前記マトリックスは、複数の層が積み重なった層構造を有している、セラミックス基複合材料。
【請求項2】
前記マトリックスの全体が前記層構造となっている、請求項1に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項3】
前記層構造において、多数本の前記強化繊維毎に、当該強化繊維の外周面を囲むように当該外周面の側から複数の層が形成されている、請求項1又は2に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項4】
互いに隣接する層同士の境界において前記マトリックスの弾性率が変化している、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項5】
互いに隣接する層同士の境界において前記マトリックスの結晶化度が変化している、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項6】
互いに隣接する層同士の境界において前記マトリックスの組成が変化している、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項7】
前記マトリックスは、主に炭化ケイ素により形成されており、
前記組成は、ケイ素に対する炭素の原子数比率である、請求項6に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項8】
前記層は、複数の副層を含み、当該複数の副層は、前記弾性率、前記結晶化度、又は前記組成が互いに異なっている、請求項4~7のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項9】
前記マトリックスの内部には、複数の微小な閉気孔が形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項10】
各前記強化繊維の外周面には、該強化繊維と前記マトリックスとの境界に位置する界面層が形成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のセラミックス基複合材料。
【請求項11】
マトリックスと、前記マトリックス内に設けられた強化繊維とを備えるセラミックス基複合材料の製造方法であって、
(A)前記マトリックスの液体原料内に、複数本の強化繊維を配置し、
(B)この状態で前記強化繊維を加熱することにより、前記液体原料から生じるセラミックスを前記マトリックスとして各強化繊維に堆積させていくことで、前記マトリックスを形成し、
前記(B)において、前記マトリックスの構造が、複数の層が積み重なった層構造となるように、加熱温度の上昇と下降を繰り返す、セラミックス基複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記(B)において、
(B1)前記強化繊維の温度が高温側の目標温度になるまで、前記強化繊維を加熱し、
(B2)前記強化繊維の加熱を停止し、強化繊維の温度が低温側の目標温度以下になるまで、強化繊維5の加熱を停止した状態を維持し、
前記(B1)と前記(B2)の繰り返しにおいて、前記(B1)で、前記強化繊維の昇温速度、前記高温側の目標温度、当該高温側の目標温度に到達する前の所定の途中温度に維持する時間、及び、前記高温側の目標温度に維持する時間の少なくともいずれかを制御する、請求項11に記載のセラミックス基複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記(B)において、加熱温度の上昇時における昇温速度は、前記層において複数の副層が形成される程度に遅い速度である、請求項11又は12に記載のセラミックス基複合材料の製造方法。
【請求項14】
セラミックス基複合材料の構成要素である繊維体が取り付けられ、当該繊維体に膜沸騰法を行うために、当該繊維体と共にマトリックスの液体原料内に配置される取付具であって、
誘導加熱される加熱体と、
前記加熱体を挟むように配置される1対の断熱板を備え、
前記加熱体と前記断熱板との間に配置される多孔体と、
前記繊維体が前記加熱体と前記多孔体との間に配置された状態で、前記加熱体、前記多孔体、及び前記繊維体を前記1対の断熱板で挟み込む力を作用させる作用機構と、を備え、
前記多孔体は、外周側に開放されている、取付具。
【請求項15】
前記加熱体と前記繊維体の外周を覆う断熱材を備える、請求項14に記載の取付具。
【請求項16】
前記液体原料内に配置された前記繊維体と前記加熱体を吊り下げる吊り下げ部を備える、請求項14又は15に記載の取付具。
【請求項17】
前記多孔体は、前記加熱体と一方の前記断熱板との間、及び、前記加熱体と他方の前記断熱板との間に配置され、
前記繊維体が、前記加熱体と一方の前記多孔体との間、及び、前記加熱体と他方の前記多孔体との間に配置された状態で、前記作用機構は、前記加熱体、2つの前記多孔体、及び2つの前記繊維体を前記1対の断熱板で挟み込む力を作用させる、請求項14~16のいずれか一項に記載の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスで形成されたマトリックスと、マトリックス内に設けられた強化繊維とを備えるセラミックス基複合材料に関する。また、本発明は、セラミックス基複合材料の製造方法と、この製造方法に用いられる取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス基複合材料は、ロケットのエンジンや航空機のジェットエンジンなどにおいて高温構造部材として使用されている。セラミックス基複合材料は、セラミックスをマトリックスとし、マトリックス内に強化繊維を設けた材料である。セラミックスとして例えば炭化ケイ素が用いられている。
【0003】
セラミックス基複合材料は、様々な繰り返し荷重に長時間耐える必要がある。この繰り返し荷重において、マトリックス内にき裂が複数発生し、耐え得る最高荷重が少しずつ低下していく。すなわち、き裂が、強化繊維を横断すると、セラミックス基複合材料の強度及び疲労特性が低下する。
【0004】
この低下を緩やかにすべく、き裂の伝播を制御するために、強化繊維とマトリックスとの間に界面層を形成することが行われている(例えば特許文献1、2)。界面層は、マトリックスにおいて発生したき裂が強化繊維に進展することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-184695号公報
【特許文献2】特開2003-321277号公報
【特許文献3】中国特許公開公報CN102795871A
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C. Besnarda et al. 「Synthesis of hexacelsian barium aluminosilicate by film boiling chemical vapour process」,Journal of the European Ceramic Society 40 (2020) 3494-3497
【非特許文献2】Masanori SHIMIZU et al. 「Crystallization Behavior and Change in Surface Area of Alkoxide-Derived Mullite Precursor Powders with Different Compositions」,Journal of the Ceramic Society of Japan 105 [2] 131-135 (1997)
【非特許文献3】Min Mei et al. 「Preparation of C/SiC composites by pulse chemical liquid-vapor deposition process」,Materials Letters 82 (2012) 36-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した界面層により、き裂が強化繊維に進展しないようにき裂の伝播を制御することは可能であるが、強化繊維とマトリックスの境界以外の領域において、すなわち、マトリックス自体において、き裂の発生又は進展を抑制できない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、マトリックス自体において、き裂の発生又は進展を抑制できるセラミックス基複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によるセラミックス基複合材料は、マトリックスと、マトリックス内に設けられた強化繊維と、を備え、マトリックスは、複数の層が積み重なった層構造を有している。
【0010】
また、本発明による製造方法は、マトリックスと、マトリックス内に設けられた強化繊維とを備えるセラミックス基複合材料の製造方法であって、
(A)マトリックスの液体原料内に、複数本の強化繊維を配置し、
(B)この状態で強化繊維を加熱することにより、液体原料から生じるセラミックスをマトリックスとして各強化繊維に堆積させていくことで、マトリックスを形成し、
前記(B)において、前記マトリックスの構造が、複数の層が積み重なった層構造となるように、加熱温度の上昇と下降を繰り返す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、セラミックス基複合材料のマトリックス自体において、き裂の発生又は進展を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態によるセラミックス基複合材料の断面を示す拡大概略構成図である。
図2図1において、破線で囲んだ領域Rの拡大図である。
図3】本発明の実施形態によるセラミックス基複合材料の製造方法を示すフローチャートである。
図4A】本発明の実施形態による製造方法で用いられる取付具の構成例を示す。
図4B図4Aの4B-4B矢視図である。
図4C図4Aの4C-4C矢視図である。
図5図4Aの取付具を、液体原料を保持する処理容器内に配置した状態を示す。
図6】実施例におけるマトリックス形成時の温度変化を示すグラフである。
図7】本発明の実施例によるセラミックス基複合材料の断面を示す画像である。
図8】本発明の実施例によるセラミックス基複合材料の断面を示す別の画像である。
図9図8において破線で描かれた帯の領域におけるC/Si比率を示す。
図10】本発明の実施例によるセラミックス基複合材料の曲げ試験の結果を示す。
図11】本発明の変更例によるセラミックス基複合材料の断面を示す拡大概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態によるセラミックス基複合材料10の断面を示す拡大概略構成図である。セラミックス基複合材料10は、ロケットのエンジンや航空機のジェットエンジンなどにおいて高温構造部材として使用されるものであってよい。セラミックス基複合材料10は、マトリックス3と、マトリックス3内に設けられた強化繊維5とを備える。図1において、マトリックス3の断面と4本の強化繊維5の断面とが示されている。
【0015】
マトリックス3は、セラミックスで形成されており、セラミックス基複合材料10の母材である。マトリックス3は、主に炭化ケイ素(SiC)により形成されたものであってよいが、他のセラミックスで形成されていてもよい。
【0016】
強化繊維5は、糸状に延びるものであり、複数本(例えば多数本)の強化繊維5が、マトリックス3の内部に配置されている。例えば、多数本の強化繊維5により形成された(織られた又は編まれた)繊維体がマトリックス3の内部に配置されていてよい。強化繊維5は、セラミックスの繊維であってよい。強化繊維5は、例えば炭素繊維又は炭化ケイ素繊維であってよい。ただし、強化繊維5は、これらに限定されず、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、ジルコニア繊維などの耐熱性酸化物繊維であってもよい。
【0017】
マトリックス3は、図1のように、複数(多数)の層7が積み重なった層構造を有している。マトリックス3の全体が当該層構造となっていてよい。すなわち、マトリックス3の全体が、互いに積層された多数の層7により形成されていてよい。層構造の各層7の厚みは、1μm以上であり10μm以下であってもよいし、又は、2μm以上であり8μm以下であってもよい。ただし、各層7の厚みは、本発明の効果が得られれば、他の数値範囲内の値であってもよい。
【0018】
層構造では、強化繊維5毎に、当該強化繊維5を中心に、当該強化繊維5を覆うように対応する複数の層7が形成されている。このように各強化繊維5について、その断面において、当該強化繊維5の外周面を囲むように当該外周面の側から順に複数(多数)の層7が積層されている。この場合、任意の1本の強化繊維5を中心に形成された層7(又は後述の副層7a,7b又は7c)が、他の1本の強化繊維5を中心に又は他の複数本の各々の強化繊維5を中心に形成された層7(又は副層7a,7b又は7c)と接触するようになる箇所では、互いに接触するこれらの層7(又は副層7a,7b又は7c)は、これらの強化繊維5を囲む1つの共通層7s1,7s2(又は共通副層)をなすように形成されている。共通層7s1,7s2よりも内側に位置し共通層7s1,7s2ではない各層7は、対応する1つの強化繊維5のみを囲むように形成されていてよい。共通層7s1,7s2は、複数又は多数形成されていてよい。図1では、多数の層7のうち、層7s1は、2本の強化繊維5を囲む共通層であり、層7s2は、4本の強化繊維5を囲む共通層である。
【0019】
マトリックス3の層構造は、次の(A)~(C)の特徴を有していてよい。
【0020】
(A)互いに隣接する層7同士の境界においてマトリックス3の弾性率が急激に(例えば不連続に)変化している。すなわち、互いに隣接する層7について、当該両層7の一方から当該両層7の他方へ移行すると、マトリックス3の弾性率が急激に変化する。互いに隣接する層7同士の各対について、当該層7同士の境界においてマトリックス3の弾性率が急激に変化していてよい。
【0021】
(B)互いに隣接する層7同士の境界においてマトリックス3の結晶化度が急激に(例えば不連続に)変化している。すなわち、互いに隣接する層7について、当該両層7の一方から当該両層7の他方へ移行すると、マトリックス3の結晶化度が急激に変化する。互いに隣接する層7同士の各対について、当該層7同士の境界においてマトリックス3の結晶化度が急激に変化していてよい。結晶化度は、層7において当該層7の全体積に対して結晶が占める体積の割合、層7における結晶粒子サイズ(例えば平均結晶粒子サイズ)、又は、これらの両方を考慮した結晶化度であってもよい。なお、これらの両方を考慮した結晶化度は、例えば、上記体積の割合に所定の係数k1を乗算した値と、上記結晶粒子サイズに所定の係数k2を乗算した値との和であってよい。
【0022】
(C)互いに隣接する層7同士の境界においてマトリックス3の組成が急激に(例えば不連続に)変化している。すなわち、互いに隣接する層7について、当該両層7の一方から当該両層7の他方へ移行すると、マトリックス3の組成が急激に変化する。互いに隣接する層7同士の各対について、当該層7同士の境界においてマトリックス3の組成が急激に変化していてよい。ここで、組成とは、マトリックス3を構成している主な複数の元素同士(例えば特定の2つの元素)の原子数の比率であってよい。マトリックス3が主に炭化ケイ素により形成されている場合には、上記組成は、ケイ素に対する炭素の原子数比率であってよい。すなわち、上記組成は、Si原子の数に対するC原子の数の比率(以下でC/Si比率という)であってよい。
【0023】
マトリックス3が主に炭化ケイ素により形成されている場合に、マトリックス3において、炭化ケイ素を構成していない炭素Cが隣接する二つの結晶粒の間(例えば結晶粒界)に存在し、もしくは、炭素Cの原子数が多めとなり結晶構造が歪んだSiCが存在していてよい。また、この場合、一例では、C/Si比率は1より大きく、マトリックス3において全てのケイ素Siは炭化ケイ素を構成していてよい。
【0024】
上記(A)は、上記(B)により得られてよく、上記(B)は、上記(C)により得られてよい。例えば、結晶化度が相対的に高い層7は、弾性率が相対的に高い層7であり、結晶化度が相対的に低い層7は、弾性率が相対的に低い層7であってよい。また、上述のC/Si比率は、上述の結晶化度および弾性率を表わしていてよい。この場合、C/Si比率が低いことは、結晶化度が高く、その結果、弾性率が高いことを示している。したがって、C/Si比率が低い層7ほど、結晶の割合が大きく、又は、結晶粒子サイズが大きいので、当該層7は、結晶化度が高く、弾性率が高い。一方、C/Si比率が高い層7ほど、炭素Cの割合が多いので、当該層7は、相対的に非晶質に近く、又は、結晶粒子サイズが小さく、したがって、弾性率が低い。
【0025】
なお、マトリックス3の層構造は、必ずしも上記(A)~(C)の全ての特徴を有していなくてもよく、上記(A)~(C)のいずれか1つ又は2つの特徴を有していてもよい。例えば、互いに隣接する層7同士の境界において、マトリックス3の弾性率が変化していればよく、マトリックス3の結晶化度と組成の一方又は両方は変化していなくてもよい。なお、上記(A)、(B)又は(C)について、マトリックス3の弾性率、結晶化度、又は組成は、互いに隣接する層7同士の境界において、変化していればよく、必ずしも上述のように急激に変化している必要はない。
【0026】
図2は、図1において、破線で囲んだ領域Rの拡大図である。本実施形態では、マトリックス3において、各層7、又は一部の層7は、図2のように、当該層7に対応する強化繊維5に近い順で複数の副層7a,7b,7cを含んでいてよい。図2において、隣接する副層同士の境界を破線で示し、隣接する層7同士の境界を実線で示している。複数の副層を有する各層7は、次の(a)~(c)の特徴を有していてよい。上記(A)の場合に、層7は、下記(a)の特徴を有していてよく、上記(B)の場合に、層7は、下記(b)の特徴を有していてよく、上記(C)の場合に、層7は、下記(c)の特徴を有していてよい。
【0027】
(a)層7を構成する複数(図2の例では3つ)の副層7a,7b,7cは、上述の弾性率が互いに異なっており、相対的に弾性率が高い副層7cと相対的に弾性率が低い副層7aとを含む。この場合、副層7bの弾性率は、副層7cの弾性率と副層7aの弾性率との間の値を有していてよい。また、複数の副層7a,7b,7cについて、互いに隣接する副層同士は、マトリックス3の弾性率が両者の境界で急激に(例えば不連続に)変化していてよい。また、各副層7a,7b,7cにおいて、マトリックス3の弾性率が実質的に均一であってよい。なお、層7において、対応する強化繊維5から離れた副層ほど、弾性率が高くなっていてよい。
【0028】
(b)層7を構成する複数(図2の例では3つ)の副層7a,7b,7cは、上述の結晶化度が互いに異なっており、相対的に結晶化度が高い副層7cと相対的に結晶化度が低い副層7aとを含む。この場合、副層7bの結晶化度は、副層7cの結晶化度と副層7aの結晶化度との間の値を有していてよい。また、複数の副層7a,7b,7cについて、互いに隣接する副層同士は、マトリックス3の結晶化度が両者の境界で急激に(例えば不連続に)変化していてよい。また、各副層7a,7b,7cにおいて、マトリックス3の結晶化度が実質的に均一であってよい。なお、層7において、対応する強化繊維5から離れた副層ほど、結晶化度が高くなっていてよい。
【0029】
(c)層7を構成する複数(図2の例では3つ)の副層7a,7b,7cは、上述の原子数の比率(上記組成)が互いに異なっており、原子数の当該比率が相対的に高い副層7c又は7aと原子数の当該比率が相対的に低い副層7a又は7cとを含む。この場合、副層7bの当該比率は、副層7cの当該比率と副層7aの当該比率との間の値を有していてよい。また、複数の副層7a,7b,7cについて、互いに隣接する副層同士は、マトリックス3の当該比率が両者の境界で急激に(例えば不連続に)変化していてよい。また、各副層7a,7b,7cにおいて、マトリックス3の当該比率が実質的に均一であってよい。なお、マトリックス3が主に炭化ケイ素により形成されている場合には、層7において、対応する強化繊維5から離れた副層ほど、C/Si比率が低くなっていてよい。
【0030】
上記(a)は、上記(b)により得られてよく、上記(b)は、上記(c)により得られてよい。例えば、結晶化度が相対的に高い副層は、弾性率が相対的に高い副層であり、結晶化度が相対的に低い副層は、弾性率が相対的に低い副層であってよい。なお、層7は、必ずしも上記(a)~(c)の全ての特徴を有していなくてもよく、上記(a)~(c)のいずれか1つ又は2つの特徴を有していてもよい。例えば、互いに隣接する副層同士の境界において、マトリックス3の弾性率が変化していればよく、マトリックス3の結晶化度と組成の一方又は両方は変化していなくてもよい。特に、互いに隣接する層7のそれぞれに属し両層7同士の境界を跨いで互いに隣接する副層同士は、弾性率、結晶化度、および組成のうち、少なくとも弾性率が互いに異なっている。また、1つの層7において、互いに隣接する副層同士は、弾性率、結晶化度、および組成のうち、少なくとも弾性率が互いに異なっている。なお、上記(a)、(b)、又は(c)について、マトリックス3の弾性率、結晶化度、又は組成は、互いに隣接する副層同士の境界において、変化していればよく、必ずしも上述のように急激に変化している必要はない。
【0031】
なお、1つの層7に存在する副層の数は、マトリックス3を形成する時の条件(例えば後述の昇温速度や目標温度など)に影響され得るので、3つに限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、副層7a,7b,7c同士の境界が明確でない層7が存在していてもよい。この場合、1つの層7において、2つの副層が存在していてもよいし、副層が存在していなくてもよい。
【0032】
各副層7a,7b,7cの厚みは、0.1μm以上であり10.0μm以下であってもよいし、0.3μm以上であり10.0μm以下であってもよいし、又は、0.3μm以上であり8.0μm以下であってもよい。ただし、各副層7a,7b,7cの厚みは、本実施形態の効果が得られれば、他の数値範囲内の値であってもよい。
【0033】
マトリックス3の内部には、複数(多数)の微小な閉気孔9が形成されている。各閉気孔9は、マトリックス3により密閉された空隙である。各閉気孔9は、1つの層7又は副層7a,7b,7cの内部に含まれる程度の寸法を有するものであってよい。例えば、各閉気孔9の寸法(その各方向の寸法のうち最大寸法)は、2μm以上であり8μm以下の範囲内の値であってよい。ただし、当該範囲外の寸法を有する閉気孔9がマトリックス3の内部に存在してもよい。
【0034】
(セラミックス基複合材料の製造方法)
図3は、本発明の実施形態によるセラミックス基複合材料10の製造方法を示すフローチャートである。図4Aは、この製造方法に使用可能な取付具100の構成例を示す。本実施形態による製造方法により、上述したセラミックス基複合材料10が得られる。この製造方法は、ステップS1~S3を有する。
【0035】
<ステップS1>
ステップS1において、複数本(多数本)の強化繊維5を用意する。例えば、多数本の強化繊維5により形成された(織られた又は編まれた)繊維体を用意する。繊維体は、3次元の形状を有するものであってよい。ステップS1で用意する強化繊維5は、例えば炭素繊維又は炭化ケイ素繊維であってよいが、上述のように、これらに限定されない。
【0036】
<ステップS2>
ステップS2において、ステップS1で用意した複数本の強化繊維5(例えば上述の繊維体)を、マトリックス3の液体原料内に配置する。この液体原料は、マトリックス3の原料となる液体である。主に炭化ケイ素によりマトリックス3を形成する場合には、液体原料は、例えば炭化ケイ素の液体原料(LPCS:Liquid Polycarbosilane)であってよい。
【0037】
・取付具
ステップS2は、図4Aに示す取付具100を用いて行われてよい。図4Bは、図4Aの4B-4B矢視図である。取付具100は、加熱体12と、1対の断熱板14と、多孔体16と、作用機構17と、断熱材18と、吊り下げ部23を備える。
【0038】
加熱体12は、誘導加熱される。加熱体12は、例えばグラファイトで形成されている。
【0039】
1対の断熱板14は、加熱体12を挟むように配置される。断熱板14は、断熱性能を有する材料(例えばアルミナ)で形成されている。断熱板14は、板形状を有している。なお、断熱板14と加熱体12は、断熱板14の厚み方向から見た場合、例えば同じ半径の円形であってよい。
【0040】
多孔体16は、加熱体12と断熱板14との間に配置される。多孔体16は、流体が通過できる多数の孔が形成されたものであり、例えば複数枚の金網を積み重ねたものであってよい。取付具100は、図4Aのように、2つの多孔体16を有していてよい。すなわち、多孔体16は、加熱体12と一方の断熱板14との間、及び、加熱体12と他方の断熱板14との間に配置されてよい。
【0041】
作用機構17は、繊維体15が加熱体12と多孔体16との間に配置された状態で、加熱体12、多孔体16、及び繊維体15を1対の断熱板14で挟み込む力を作用させる。これにより、繊維体15が加熱体12と多孔体16に接触した状態で取付具100に保持される。2つの多孔体16が設けられる場合、繊維体15が、加熱体12と一方の多孔体16との間、及び、加熱体12と他方の多孔体16との間に配置された状態で、作用機構17は、加熱体12、2つの多孔体16、及び2つの繊維体15を1対の断熱板14で挟み込む力を作用させる。これにより、各繊維体15が加熱体12と対応する多孔体16とに接触した状態で取付具100に保持される。
【0042】
作用機構17は、例えば、ボルト17aとナット17bを有する。ボルト17aは、2枚の断熱板14および加熱体12を隙間をもって貫通しており、各ボルト17aの両端部には、ナット17bが螺合している。2枚の断熱板14を互いに近づける方向に、ボルト17aに対してナット17bを締め付けることにより、1対の断熱板14の間に多孔体16と加熱体12と繊維体15が保持される。ボルト17aは、誘導加熱されない材料(例えばアルミナ)で形成されていてよい。このような作用機構17が複数(図4Aの例では2つ)設けられてよい。
【0043】
断熱材18は、加熱体12と繊維体15(図4Aの例では2つの繊維体15)の外周12a、15aを覆う。すなわち、加熱体12と繊維体15は、それぞれ、断熱板14の厚み方向を向く中心軸を囲む外周12a,15aを有し、これらの外周12a,15aが図4Bのように断熱材18に覆われる。図4Aでは、断熱材18のうち、加熱体12と繊維体15の両側(この図の左右両側)に位置する部分のみ二点鎖線で図示している。断熱材18は、断熱性能を有する材料で形成されている。例えば、断熱材18は、ガラス製の断熱クロス(織物)であってよい。なお、断熱材18を加熱体12に対して固定するために、図4A図4Bの例では、断熱材18には、その外側から針金19が巻き付けられていてよいが、他の手段で、断熱材18を固定してもよい。
【0044】
繊維体15を取付具100に取り付けた状態(以下で単に取付状態という)では、図4Aのように、加熱体12、繊維体15(2つの繊維体15)、及び多孔体16(2つの多孔体16)が1対の断熱板14で挟み込まれ、上述のように断熱材18が、加熱体12と繊維体15の外周12a,15aを覆っている。この取付状態で、各多孔体16は、外周側に開放されている。すなわち、各多孔体16は、断熱板14の厚み方向を向く中心軸を囲む外周16aを有し、外周16aが、当該中心軸に対する径方向外側に外部に開放されている。なお、取付状態で、繊維体15は、図4Aの例では、加熱体12に接触しているが、必ずしも加熱体12に接触している必要はない。
【0045】
吊り下げ部23は、後述のステップ2で、繊維体15と加熱体12を吊り下げるためのものである。図4Cは、図4Aの4C-4C矢視図である。吊り下げ部23は、板状部材23aと棒状部材23bとを有する。板状部材23aは、上側の断熱板14の上面に沿って、図4A図4Cの左右方向に、細長く延びている。板状部材23aの両端部にボルト17aが隙間をもって貫通している。板状部材23aの両端部は、それぞれ、上側の断熱板14と上側のナット17bとの間に挟持されている。板状部材23aの中央部には、結合部23a1が設けられている。この結合部23a1には、棒状部材23bが結合されている。棒状部材23bは、結合部23a1から上方へ延びている。なお、図示を省略するが、例えば、結合部23a1の上面にボルトとしての突出部があり、棒状部材23bの下端面にボルト穴が形成されており、当該ボルトとボルト穴とが螺合することにより、結合部23a1と棒状部材23bとが結合されてもよい。
【0046】
ステップS2では、上記取付状態で、図5のように、繊維体15が、取付具100と共に処理容器11内に配置される。これにより、処理容器11の内部に保持されている液体原料13内に繊維体15の全体が位置する。また、この時、取付具100と加熱体12と繊維体15が、処理容器11の内面(底面と内周面)に接触しないように、繊維体15と加熱体12を吊り下げ部23により吊り下げる。また、この時、吊り下げ部23の棒状部材23bは、処理容器11の上面の開口を塞ぐ蓋部材11aの貫通穴11a1を貫通するように配置され、棒状部材23bの上端側部分は図示しない構造物に適宜の手段により結合されて支持されてよい。
【0047】
なお、ステップS2において、上述の吊り下げ部は、取付具100と加熱体12と繊維体15が処理容器11の内面に接触しないように(すなわち、処理容器の内面から離間するように)繊維体15と加熱体12を吊り下げることができれば、図4A図4C等に示す構成例に限定されない。また、取付具において各断熱板14を省略してもよい。
【0048】
処理容器11は、誘導加熱されない非導電性材料(例えばガラス)で形成されている。処理容器11には、後述のステップS3の時に処理容器11内の気相部分に窒素ガスを導入するガス導入穴11bや、ステップS3の時に処理容器11内の気相部分からガスを排出するガス排出穴11a2が形成されていてよい。
【0049】
<ステップS3>
ステップS3において、膜沸騰法(FB:Film Boiling)によりマトリックス3を形成する。すなわち、ステップS2において複数本の強化繊維5(例えば上述の繊維体15)が液体原料13内に配置された状態で、液体原料13と各強化繊維5を加熱する。液体原料13と各強化繊維5を加熱することにより、液体原料13から生じるセラミックスをマトリックス3として各強化繊維5に堆積させていくことで、マトリックス3を形成する。すなわち、液体原料13は、加熱された強化繊維5により加熱されることで、当該強化繊維5と液体原料13との界面において膜沸騰ガスとなり、この膜沸騰ガスにより、各強化繊維5にセラミックス(すなわちセラミックスとしての熱分解析出物)が生じて堆積する。各強化繊維5に生じるセラミックスは、次の(1)と(2)の一方又は両方の方法によるものであってよい。
【0050】
(1)膜沸騰ガスが、加熱された強化繊維5に衝突することで、さらに熱エネルギーを受け取ることで、熱分解および無機化が進行して固体のセラミックスとして強化繊維5に析出する。
【0051】
(2)膜沸騰ガスの一部に含まれるガスが既に熱分解された熱分解ガスとなっており、この熱分解ガスが、加熱された強化繊維5に衝突することで、無機化が進行して固体のセラミックスとして強化繊維5に析出する。
【0052】
上述のステップS3において、強化繊維5(繊維体15)の加熱温度の上昇と下降を繰り返す。これにより、上述した層構造が形成される。すなわち、ステップS3において、強化繊維5の温度の昇降の繰り返しに応じて、セラミックスの堆積過程でセラミックスの弾性率、結晶化度、組成等が変化し、その結果、マトリックス3の層構造が得られる。なお、後述のステップS31において、温度が高くなると、膜沸騰ガス中の熱分解ガスの比率が高くなっていき、その結果、マトリックス3の組成が変化する(例えばC/Si比率が下がる)と考えられる。
【0053】
ステップS3は、ステップS31とステップS32を有する。
【0054】
ステップS31では、強化繊維5(又は加熱体12)の温度が高温側の目標温度以上になるまで、強化繊維5を加熱する。高温側の目標温度は、上述した膜沸騰ガスによる各強化繊維5へのセラミックスが生じ始める温度よりも高い温度である。
【0055】
ステップS31では、例えば、図5のように、コイル21に交流電流を流すことでコイル21が発生する交流磁場により、加熱体12を誘導加熱する。加熱された加熱体12が発生する熱により各繊維体15と液体原料13を加熱する。ステップS31で、繊維体15(強化繊維5)の温度が高温側の目標温度以上になったら、ステップS32へ移行する。例えば、加熱体12の表面に取り付けた温度センサの計測温度が、上記目標温度以上になったら、ステップS32へ移行する。なお、目標温度は、おおよその基準であってもよい。すなわち、目標温度となったタイミングでステップS32を開始するのが困難な場合があるので、ステップS32を開始するタイミングは、強化繊維5の温度が目標温度となった時でもよいし、強化繊維5の温度が目標温度をある程度超えた時であってもよい。
【0056】
ステップS32では、強化繊維5の加熱を停止し、強化繊維5(又は加熱体12)の温度が低温側の目標温度以下になるまで、強化繊維5の加熱を停止した状態を維持する。
低温側の目標温度は、上述した膜沸騰ガスによる各強化繊維5へのセラミックスの発生が停止する温度以下の温度である。この低温側の目標温度は、液体原料13の沸点以上の温度であってよい。なお、ステップS32では、強化繊維5の加熱の停止に加えて、処理容器11の内部を冷却してもよい。例えば、処理容器11内の液体原料13の一部を処理容器11の外部へ流し、当該液体原料13を熱交換器により冷却し、その後、冷却された液体原料13を処理容器11内に戻すように、液体原料13を循環させてもよい。この場合、このように液体原料13を循環させる配管やポンプ(図示せず)が設けられてよい。
【0057】
ステップS32において強化繊維5(又は加熱体12)の温度が低温側の目標温度以下になったら(例えば、上述の温度センサが計測した温度を強化繊維5の温度として、当該計測温度が、当該目標温度以下になったら)、再びステップS31を開始して、ステップS31とステップS32を繰り返す。ステップS31とステップS32を1回行うことで、上述した膜沸騰ガスによる各強化繊維5へのセラミックスにより、各強化繊維5に対して1つの層7が形成される。ステップS31とステップS32を1回行うことを1サイクルとして、サイクル数と、各強化繊維5に対して形成される層7の数とが同じになる。
【0058】
ステップS31とステップS32を繰り返すことで、各強化繊維5を中心にセラミックスが順に堆積していくことにより、セラミックスによるマトリックス3が形成される。また、ステップS31とステップS32の繰り返しにより、マトリックス3の密度が高まっていく。そのために、この繰り返し(上記サイクル)を、数回又は多数回行ってよい。
【0059】
主に炭化ケイ素からなるマトリックス3を形成する場合には、ステップS31における高温側の目標温度は、800℃以上であり1600℃以下の範囲内の温度であるのが望ましく、ステップS32における低温側の目標温度は、800℃未満であるが望ましく、500℃以下(例えば500℃)であるのがより望ましい。
【0060】
また、主に炭化ケイ素からなるマトリックス3を形成する場合には、ステップS31において、強化繊維5(又は加熱体12)の昇温速度は、1000℃/hour以上であるのがよい。この場合、昇温速度は、3000℃/hour以下であってよいが、3000℃/hを超えてもよい。ただし、昇温速度は、他の値であってもよい。
【0061】
マトリックス3を主に炭化ケイ素で形成する場合だけでなく、マトリックス3を他の材料で形成する場合においても、ステップS31の昇温速度は、1つの層7(各層7)において複数の副層が形成される程度に遅い速度である。例えば、当該昇温速度は、3000℃/hour以下、2000℃/hour以下、又は1500℃hour以下であるのがよい。この場合、当該昇温速度は、1000℃/hour以上であって(又は1000℃/hourよりも高くて)よい。
別の観点から言い換えると、マトリックス3の層構造(例えば、1つの層7における複数の副層)を形成するために、適度の時間をかけて繊維体15を加熱するのがよい。例えば、1回のステップS31において、繊維体15を昇温させている時間(すなわち、繊維体15が昇温している合計時間)は、10分よりも長く、15分以上、20分以上、又は30分以上であってよい。この場合、繊維体15を昇温させている当該時間は、例えば、40分以内、50分以内、又は60分以内であってよいが、これに限定されず、60分よりも長い時間であってもよい。
【0062】
また、ステップS3において、上述のセラミックスで形成された層7は、熱により組成変化(結晶化)が進行して、体積が収縮する。この収縮量は、副層7a,7b,7c毎に異なる。マトリックス3を主に炭化ケイ素で形成する場合には、例えば、副層7aでは、有機状態に近い半無機から無機状態になるため、収縮量が大きくなるとともに、C/Si比率が高くなる。このように収縮量に差があると、収縮量が大きい副層7a,7bでは引張応力が働き、収縮量が小さい副層7cでは圧縮応力が働く。この引張応力によってマトリックス3に微小な閉気孔9が発生する。セラミックスによる各副層7a,7b,7cが形成された状態で、上述の引張応力が働くので、多くの場合、特に副層7a,7b内に、閉じた空隙として閉気孔9が発生する。
【0063】
(実施形態の効果)
<セラミックス基複合材料の効果>
本実施形態のセラミックス基複合材料10によると、以下の効果(i)~(iv)が得られる。
【0064】
(i)上述のステップS3により、層構造の各層7において、相対的に弾性率が低い副層7aと、相対的に弾性率が高い副層7cとを形成することが可能となる。マトリックス3が主に炭化ケイ素により形成されている場合に、相対的に弾性率が低い副層7aは、C/Si比率が高い副層であり、相対的に弾性率が高い副層7cは、C/Si比率が低い副層である。低弾性率の副層7aは、セラミックス基複合材料10の湾曲などの変形に追従しやすい。これにより、セラミックス基複合材料10にき裂が発生することを抑制できる。一方、高弾性率の副層7cにおいて高弾性率が維持される。したがって、マトリックス3の層構造において、低弾性率の副層7aと高弾性率の副層7cが混在することにより、高い弾性率を維持しつつ、き裂の発生を抑制できる。
【0065】
(ii)材料に応力が生じた場合に、当該応力によるき裂が進展して材料が破壊することに対する抵抗は、破壊靭性値で表される。き裂の進展により材料が破壊するのに要するエネルギーが高いほど、材料の破壊靭性値は高くなる。一方、応力が生じる材料において、発生するエネルギーは、材料の断面積に比例する。したがって、層構造を形成することにより、断面積の小さい層7に生じる上記エネルギーは小さくなる。すなわち、マトリックス3が層構造を有することにより、応力によるエネルギーが層構造の各層7又は各副層7aに分散されるため、き裂が進展し難くなる。これにより、セラミックス基複合材料10において、き裂が進展し難くなる。
【0066】
(iii)マトリックス3において、閉気孔9は、上記ステップS3のマトリックス3の生成過程において、副層同士の収縮量の差や、体積が収縮するセラミックスと体積が収縮しない強化繊維5とのひずみ差によって生じる。この閉気孔9の発生によって、マトリックス3において、体積収縮による応力が緩和された状態となっている。このように、マトリックス3の残留応力が抑えられているので、マトリックス3において、き裂の発生を抑制できる。
また、層構造を有しないマトリックス3では、上述の体積収縮により大きなき裂が発生する可能性がある。これに対し、本実施形態によるマトリックス3は層構造を有するので、閉気孔9は、層7ごと又は副層7a,7b,7cごとに発生し、多くの場合、その寸法が層7又は副層の厚み以下程度に抑えられる。したがって、閉気孔9は、微細であり、層7又は副層内に存在して閉じているので、閉気孔9が大きなき裂に進展し難い。
【0067】
(iV)本実施形態のセラミックス基複合材料10によると、マトリックス3は、多数の層7が積み重なった層構造を有する。この層構造により、マトリックス3にき裂が生じるのを抑制できる。セラミックスにより一旦形成された各層7は、高温側の目標温度以上の温度で既に加熱されているので、当該各層7内の原子同士または分子同士は、イオン結合や共有結合などの原子間結合により強く結合されているといえる。したがって、一旦形成された各層7については、以降の加熱において、原子間の結合力が更に高まるような反応が起こり難い。そのため、層構造において、各層7内の原子同士または分子同士は、原子間結合により強く結合されているのに対し、隣接する層7同士は、原子間結合よりも弱い力(例えば分子間力)、又は、部分的な原子間力で結合していると考えられる。したがって、隣接する層7同士の結合力は、比較的小さいといえる。したがって、層7同士の界面において、ひずみが生じやすいので、セラミックス基複合材料10に外力が作用した場合に、当該外力が、層7同士の界面でのひずみにより吸収されやすい。これにより、マトリックス3にき裂が生じるのを抑制できる。
【0068】
なお、本発明によると、必ずしも上記の効果(i)~(iv)の全てが得られなくてもよく、上記の効果(i)~(iv)のいずれか1つ又は複数が得られればよい。
【0069】
昇降温過程(上述のステップS31,S32)で析出するマトリックス3は、その析出開始温度によって状態が大きく異なると考えられる。例えば、800℃以下の低い温度での析出では有機に近い半無機物が固体として強化繊維5周りに堆積し、その後熱エネルギーを受け無機化する。一方で1000℃以上の高い温度では、膜沸騰ガス中の熱分解ガスの比率が高く、はじめから無機に近い半無機物が析出する。つまり、膜沸騰ガス中の熱分解ガスの比率と、熱分解ガスの無機化度合が温度によって異なる。このような違いによって、形成される無機物の材料状態(弾性率、結晶化度、組成)が異なり、その結果、層構造が形成されると考えられる。マトリックス3の材料が炭化ケイ素以外の場合も同様で、昇温過程(ステップS31)では、生じるセラミックス(熱分解析出物)が半無機物から無機物へ変化しながら層構造の一層が形成され、降温してから(ステップS32の後)昇温することで形成された無機物の上に半無機物が堆積するため、層構造が形成される。このような原理から、マトリックス3の材料が炭化ケイ素以外の場合でも、層構造(各層7、又は各層7とその副層)を形成することができる。
【0070】
<取付具の効果>
本実施形態の取付具100によると、1対の断熱板14により、加熱体12と繊維体15からの、軸方向(断熱板14の厚み方向)への放熱が抑制され、断熱材18により、加熱体12と繊維体15からの径方向(上記軸方向と直交する各方向)への放熱が抑制される。したがって、取付具100の周囲に液体原料13が存在する環境でも、加熱体12と繊維体15からの放熱を抑制できる。
【0071】
また、このように放熱を抑制している状態で、多孔体16は、外周側に開放されている。したがって、加熱体12と繊維体15からの放熱を抑制しつつ、液体原料13が多孔体16を介して繊維体15に進入でき、液体原料13と繊維体15との界面で生じた上述の膜沸騰ガスもしくは熱分解ガスのうちマトリックスの生成に寄与しなかったガスが、多孔体16を介して放出される。
【0072】
更に、上述の取付具100では、加熱体12と一方の多孔体16との間だけでなく、加熱体12と他方の多孔体16との間にも、繊維体15を配置できる。したがって、2つの繊維体15に対してマトリックス3を同時に形成することができる。
【0073】
また、ステップS31において、上述のように加熱体を誘導加熱する場合、非導電性材料で形成された処理容器11は誘導加熱されない。この時、図5のように、加熱体12と繊維体15と取付具100は、吊り下げ部23により、処理容器11の内面に接触しないように吊り下げられているので、処理容器11が、高温の加熱体12と繊維体15と取付具100に接触することにより破損することが防止される。
【0074】
(実施例)
実施例では、上述のステップS1で用意する強化繊維5を炭素繊維とし、ステップS2で用いる液体原料13をLPCS(Liquid Polycarbosilane)として、また、図4Aに示す構成を用いて、上述の図3のフローチャートに示す製造方法を行った。その結果、層構造のマトリックス3を有するセラミックス基複合材料10が得られた。
【0075】
図6は、実施例における上述のステップS3での温度変化を示すグラフである。図6において、実線は、加熱体12の表面温度を示し、破線は、図4Aの上側の繊維体15の上面の温度を示し、一点鎖線は、図4Aの下側の繊維体15の下面の温度を示し、二点鎖線は、図4Aの液体原料13の温度を示す。
【0076】
図7図8は、このような実施例で得られたセラミックス基複合材料10の、走査電子顕微鏡による画像である。図7は、強化繊維5の断面と、当該強化繊維5の周囲に形成された層構造を示す。図8は、図7よりも大きい倍率の画像である。図8において、縦に細長い実線の帯の実際の長さは、この長方形に付された「20μm」である。
【0077】
図9は、図8において破線で描かれた帯の領域におけるC/Si比率を示す。このC/Si比率は、EDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)分析により得られたものである。図9において、横軸は、図8における左右方向の位置座標を示し、縦軸は、C/Si比率を示す。図9の横軸の原点は、図8における破線で示す帯の左端である。また、図8において数字1~6が示す範囲は、それぞれ、第1~第6の層7を示し、図9において数字1~6が示す位置座標の範囲は、それぞれ、当該第1~第6の層7の範囲を示す。図9の横軸において、原点に近い側における各層7の範囲の開始位置は、C/Si比率が下がった直後に急激に上昇する位置である。
【0078】
図7図8に示すように層構造を有するマトリックス3が形成されていることが分かる。図7図8において、マトリックス3の領域では、色が薄い部分ほど、C/Si比率が小さいと考えられる。図9において、第3の層7の範囲で、符号7a,7b,7cを付した両矢印により各副層の範囲を示している。この第3の層7において、第1の副層7aは、C/Si比率が相対的に高い副層であり、第3の副層7cは、C/Si比率が相対的に低い副層となっている。
【0079】
図10は、実施例と比較例によるセラミックス基複合材料の曲げ試験の結果を示す。図10において、横軸は、セラミックス基複合材料を曲げるようにセラミックス基複合材料に生じさせた変位を示し、縦軸は、セラミックス基複合材料に生じた曲げ応力を示す。図10において、グラフAは、上記実施例により得られたセラミックス基複合材料10の場合を示し、グラフBは、層構造を有しない比較例による従来のセラミックス基複合材料の場合を示す。実施例によるセラミックス基複合材料10と、比較例によるセラミックス基複合材料とは、マトリックス3が層構造を有するか否かの点で異なり、他の点は共通している。
【0080】
図10が示すように、実施例によるセラミックス基複合材料10では、グラフAが示すように、変位と曲げ応力との関係が、変位が0.10mm~0.85mm程度の範囲において直線で表すことができる。これに対し、従来のセラミックス基複合材料では、グラフBが示すように、変位と曲げ応力との関係が、変位が0.10mm~0.45mm程度の範囲までしか直線で表すことができない。このように、実施例では、従来のセラミックス基複合材料の比較例よりも、2倍に近い大きさの変位まで、変位と曲げ応力との関係が直線で表せるようになっている。このことから、実施例では、マトリックス3のき裂の発生や進展が抑制されていると理解できる。
【0081】
また、図10において、実施例によるセラミックス基複合材料10では、グラフAが示すように、曲げ応力は700MPa程度になるまで低下しないので、700MPa程度の曲げ応力に相当する強度が得られている。これに対し、溶融含浸(MI:Melt Infiltration:)法やポリマー含浸焼成(PIP:Polymer Imgregnation of Pyrolysis)法等で作られた従来のセラミックス基複合材料の強度は、図10の両矢印が示す200MPaから300MPaの範囲に相当する。このように、実施例によるセラミックス基複合材料10は、従来よりも大幅に高い強度を有することが分かる。
【0082】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1~5のいずれかを採用してもよいし、変更例1~5の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で説明しない点は上述と同じであってよい。
【0083】
(変更例1)
図11は、本発明の変更例によるセラミックス基複合材料10の断面を示す拡大概略構成図である。図11において、4本の繊維の断面とマトリックス3の断面が示されている。図11に示すように、各強化繊維5の外周面には、該強化繊維5とマトリックス3との境界に位置する界面層6が形成されていてもよい。この場合、上述のステップS1の前又は後であってステップS2の前に、各強化繊維5の外周面に界面層6を形成する処理を行ってもよい。この処理は、公知の方法(例えば特許文献2に記載の方法)で行われてよい。界面層6は、窒化ホウ素を含む層であってよい。マトリックス3においてき裂が発生して強化繊維5へ進展して来ても、このき裂が、界面層6により強化繊維5に伝播することを防ぐことができる。
【0084】
(変更例2)
【0085】
マトリックス3を形成する材料は、炭化ケイ素以外であってもよい。この場合、アルコキシド溶液を含むセラミックスの原料であって、液体状態となる程度に分子量が低い無機高分子材料を、上述の膜沸騰法における液体原料13として使用してもよい。また、他の材料を液体原料13として使用してもよい。このように、上述の膜沸騰法における液体原料13は、上述のLPCS以外の液体原料であってもよい。例えば、液体原料13は、ボラジン、メチルトリクロロシラン、シクロヘキサン、ケイ素アルコキシド溶液、アルミニウムアルコキシド溶液、ケイ素アルコキシド溶液とアルミニウムアルコキシド溶液の混合液、又は、ジルコニウムアルコキシド溶液であってもよい。
【0086】
液体原料13がボラジンの場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、ボロンナイトライド(BN)となる。ボロンナイトライドは、炭化ケイ素との接着性が低い。したがって、強化繊維5が炭化ケイ素繊維である場合には、ボロンナイトライドのマトリックス3と炭化ケイ素の強化繊維5との界面で、き裂の伝播を抑制することができる。
【0087】
液体原料がメチルトリクロロシランの場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、液体原料がポリカルボシラン(LPCS)の場合と同様に、セラミックスである炭化ケイ素(SiC)となる。
【0088】
液体原料13がシクロヘキサンの場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、炭素となる。この炭素は、ボロンナイトライドの場合と同様の機能を有する。
【0089】
液体原料13がケイ素アルコキシド溶液の場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、二酸化ケイ素となる。ケイ素アルコキシド溶液は、LPCSよりも安価である。
【0090】
液体原料13がアルミニウムアルコキシド溶液の場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、アルミナとなる。アルミニウムアルコキシド溶液は、LPCSよりも安価である。
【0091】
液体原料13がケイ素アルコキシド溶液とアルミニウムアルコキシド溶液の混合液の場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、ムライトとなる。
【0092】
液体原料13がジルコニウムアルコキシド溶液の場合、上述のステップS31の加熱により生成されるセラミックスは、ジルコニアとなる。ジルコニアは、炭化ケイ素よりも融点が高いセラミックスであるので、超高温環境でも、溶けずにマトリックスとして機能する。
【0093】
なお、本発明によると、ステップS3で用いる液体原料13は、上述の具体例に限定されず、他の液体原料であってもよい。例えば、他の金属アルコキシド溶液を、ステップS3で用いる液体原料13としてもよい。この場合、上述のステップ31の加熱により生成されるセラミックスは、酸化物セラミックスであってよい。この場合、ステップS31で生成されるセラミックスがbarium aluminosilicate (BaAlSi)となるように、ステップS3で用いる液体原料13は、例えば、非特許文献1に記載されているように、3つのアルコキシド溶液(alkoxydes)の混合液であってもよい。この液体原料13から形成されるマトリックス3は、少なくとも部分的に結晶化されていてよい。
【0094】
なお、マトリックス3をムライトで形成する場合、上述の膜沸騰法で用いる液体原料13は、上記の非特許文献2に記載されているような、複数のアルコキシド溶液(alkoxydes)の混合液であってよく、この液体原料13から形成されるマトリックス3は、少なくとも部分的に結晶化されていてよい。
【0095】
(変更例3)
マトリックス3の上述の層構造は、CVI(化学気相含浸)により形成されてもよい。このCVIでは、2種類の反応性ガスを繊維体15の内部で反応させることにより、マトリックス3を形成する。この時、2種の反応性ガスを反応させる時の温度(以下で反応温度という)の上昇と下降を繰り返す。反応温度に応じて、形成されるマトリックス3の弾性率、結晶化度、及び組成(C/Si比率)のうち少なくとも弾性率が異なるので、反応温度の上昇と下降を繰り返すことにより、マトリックス3の上記層構造が形成される。なお、反応温度の上昇と下降は、例えば、繊維体15が接触しており繊維体15が載せられている加熱体の温度の上昇と下降によりなされてもよいが、これに限定されない。なお、2種類の反応性ガスは、SiClとNHであってよいが、この組み合わせに限定されない。
【0096】
(変更例4)
上述した取付具は、セラミックス基複合材料の構成要素である繊維体が取り付けられ、当該繊維体に膜沸騰法を行うために、当該繊維体と共にマトリックスの液体原料内に配置される取付具であればよい。この場合の膜沸騰法は、上述の図3に示すフローチャートのステップS3での膜沸騰法であってもよいし、そうでなくてもよい。後者の場合、例えば、上述の取付具100を用いるステップS3において、強化繊維5(繊維体15)の加熱温度の上昇と下降を繰り返さなくてもよい。すなわち、取付具100は、層構造を有しないマトリックス3を膜沸騰法で形成する時に用いられてもよい。あるいは、セラミックス材料の粉末を含浸させた繊維体(強化繊維により形成された繊維体)に対して上述のステップS3の膜沸騰法を行うことでセラミックス基複合材料を形成する場合においても、上述した取付具を利用することが考えられる。
【0097】
さらに、取付具に取り付けられる繊維体(強化繊維により形成された繊維体)を、マトリックスが既に形成されている繊維体(例えば製造済みのセラミックス基複合材料)とすることも考えられる。この場合、当該繊維体に上述のような膜沸騰法を行うことにより、繊維体に形成済みのマトリックスに存在する気孔(外部に開口している気孔)内にマトリックスが充填されるように形成される。
【0098】
(変更例5)
上述のステップS31とステップS32の繰り返しにおいて、上述のステップS31における強化繊維5の昇温速度、高温側の目標温度、当該目標温度に到達する前の所定の途中温度に維持する第1時間、及び、当該高温側の目標温度に維持する第2時間の少なくともいずれかを制御する。この場合、ステップS31とステップS32を1回行うことを1サイクルとして、サイクル毎に、上述のステップS31における強化繊維5の昇温速度、高温側の目標温度、上記第1時間、及び上記第2時間の少なくともいずれかを変化させ、あるいは、少なくともいずれかのサイクルと他のサイクルとの間で、上述のステップS31における強化繊維5の昇温速度、高温側の目標温度、上記第1時間、及び上記第2時間の少なくともいずれかが異なるようにしてよい。このような場合においても、上述のように低温側にも目標温度がある。
【0099】
上述のステップS31における強化繊維5の昇温速度、高温側の目標温度、上記第1時間、及び上記第2時間の少なくともいずれかを制御することにより、層7又は副層7a,7b,7cの厚みや材料状態(弾性率、結晶化度、組成)を制御することができる。
【符号の説明】
【0100】
3 マトリックス、5 強化繊維、6 界面層、7 層、7a,7b,7c 副層、7s1,7s2 共通層、9 閉気孔、10 セラミックス基複合材料、11 処理容器、11a 蓋部材、11a1 貫通穴、11a2 ガス排出穴、11b ガス導入穴、12 加熱体、12a 外周、13 マトリックスの液体原料、14 断熱板、15 繊維体、15a 外周、16 多孔体(金網)、17 作用機構、17a ボルト、17b ナット、18 断熱材、19 針金、21 コイル、23 吊り下げ部、23a 板状部材、23a1 結合部、23b 棒状部材、100 取付具
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11