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特開2022-89313タイヤ/ホイール組立体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089313
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】タイヤ/ホイール組立体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/02 20060101AFI20220609BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20220609BHJP
   B60C 5/04 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B60C17/02
B60C17/00 B
B60C5/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201632
(22)【出願日】2020-12-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】591221167
【氏名又は名称】ミツマ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124280
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆雄
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131AA30
3D131BB10
3D131BC32
3D131BC42
3D131CB16
3D131JA02
3D131JA08
3D131LA39
3D131LA40
(57)【要約】
【課題】良好なランフラット走行性能を発揮できるタイヤ/ホイール組立体を実現する。
【解決手段】空気入りタイヤ(1)とホイールリム(2)により形成される空間内に弾性変形可能な環状中空体(4)を配置する。環状中空体は弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成する。環状中空体はタイヤ空間(5)の空気圧に応じて膨張及び収縮し、環状中空体の外径はタイヤ空間の空気圧に応じて変位する。パンクによる内圧低下時には環状中空体は膨張するので、荷重は空気入りタイヤと環状中空体によって支持される。この結果、良好なランフラット走行性能が得られると共にトレッド部の負担が軽減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成され、前記タイヤ空間の空気圧に応じて膨張及び収縮し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、環状中空体は収縮し、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記ランフラット走行時には、荷重は前記弾性変形可能な環状中空体と空気入りタイヤのサイドウォール部により弾性的に支持されることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤはチューブレスタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤ/ホイール組立体において、当該タイヤ/ホイール組立体は、市販のチューブレスタイヤと市販の環状中空体により構成されることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けたランフラットタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項6】
請求項1か5までのいずれか1項に記載に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記環状中空体は、SBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴム、又は、NBRゴムの単泡性スポンジ、或いは、EVA樹脂又はポリオリフィン系樹脂の単泡性発泡体により構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造に用いられる弾性変形可能な環状中空体であって、当該環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成され、外部の空気圧に応じて膨張及び収縮することを特徴とする環状中空体。
【請求項8】
請求項7に記載の環状中空体において、当該環状中空体は断面がほぼ円形の環状の内部空間を有し、当該内部空間には大気圧の空気が密封され、
前記内部空間が排気された場合偏平な断面形状を形成し、当該内部空間が外部と連通した場合弾性復元力により偏平な断面形状から円形の断面形状に復元することを特徴とする環状中空体。
【請求項9】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体の製造方法であって、
環状のホイールリムと、空気入りタイヤと、前記空気入りタイヤの内径に等しいか又はそれ以上のサイズの外径を有し、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成され、外部の空気圧に応じて膨張及び収縮する弾性変形可能な環状中空体とを用意する工程と、
前記環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む工程と、
環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをホイールリムにリム組する工程と、
前記タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に上昇させて前記環状中空体を収縮させ、前記空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間を形成する工程とを含むことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体は断面がほぼ円形の環状内部空間を有し、前記内部空間には大気圧の空気が充填されていることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込む工程において、前記環状中空体の内部空間の空気を排気することにより環状中空体を偏平状に形成し、断面が偏平形状の環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込むことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記断面が偏平な形状の環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込みリム組した後、前記環状中空体の内部空間に空気を流入させて弾性復元力により元の形状に復元させることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記空気入りタイヤとして市販のチューブレスタイヤ又は市販のランフラットタイヤを用いることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なランフラット走行性能が得られるタイヤ/ホイール組立体に関するものである。
また、本発明は、タイヤ/ホイール組立体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンク等により空気入りタイヤ内部の空気が漏出した場合、空気圧によって支持していた荷重をサイドウォール部で支持することになる。よって、サイドウォール部が大きく変形し、走行が困難になってしまう。このため、パンク等によって空気が漏出した状態における走行、いわゆるランフラット走行が可能なタイヤの開発が急務の課題である。ランフラット性能が改良されたタイヤとして、サイドウォール部の内側に補強ゴム層を設け、サイドウォール部の剛性を向上させたランフラットタイヤが既知である。例えば、特許文献1には、サイドウォール部に配設した補強ゴム層の材質を改良することにより低発熱性及び高硬度性を両立したランフラットタイヤが開示されている。
【0003】
また、別のランフラットタイヤとして中子支持方式のランフラットタイヤが既知である。例えば、特許文献2には、空気入りタイヤと、空気入りタイヤが装着されるホイールリムと、ホイールリムに固定された環状のサポートリングとを有するランフラットタイヤが開示されている。この既知のランフラットタイヤでは、タイヤがパンクした場合、空気入りタイヤのトレッド部の内面がサポートリングの外周面と当接し、空気入りタイヤがサポートリングにより支持され、パンクが発生した時でもランフラット走行が可能にされている。
【0004】
自転車用のノーパンクタイヤとし、環状のリムと、タイヤ基体と、リムとタイヤ基体との間に配置され、弾性変形可能な単泡性スポンジ材料で構成された環状中空体とを有するノーパンクタイヤが既知である(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2006-282913号公報
【特許文献2】特開2018-154138号公報
【特許文献3】特開2012-254785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のランフラットタイヤでは、補強ゴム層の材質を改良することにより低発熱性及び高硬度性を実現しようとしている。しかしながら、パンク等によりタイヤの内圧が低下すると、車輛の荷重をタイヤのサイドウォール部だけで支持するため、サイド補強ゴム層は走行中に大きな変形を繰り返す。従って、サイドウォール部が劣化し易く、十分な耐久性が得られない欠点がある。また、サイドウォール部に補強ゴム層を設けると、通常運転時のクッション性が低下する不具合が発生する。
【0006】
特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、ホイールリムに取り付けた環状のサポートリングを用いて荷重を支持しているため、サイドウォール部の劣化に対して有効である。しかしながら、サポートリングは金属材料や高硬度材料で構成されるため、クッション性が得られず、ランフラット走行時の走行性能が著しく低下する欠点がある。また、トレッド部の内周面と環状のサポートリングとの間に摩擦が生じ、耐久性にも問題がある。
【0007】
本発明の目的は、サイドウォール部が劣化しにくく、且つ良好なランフラット走行性能を発揮できるタイヤ/ホイール組立体及びその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体は、環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成され、前記タイヤ空間の空気圧に応じて膨張及び収縮し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、環状中空体は収縮し、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とする。
【0009】
本発明者が弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成した環状中空体について種々の実験及び解析を行なった結果、環状中空体は、外部雰囲気の空気圧に応じて膨張及び収縮することが判明した。本発明は、この環状中空体の特有の性質を利用する。
【0010】
単泡性スポンジゴム(独立気泡型スポンジゴム)に形成された気泡は、その周囲は弾性変形可能なゴムにより囲まれ、その内部は大気圧にほぼ等しい圧力の気体が充填されている。従って、環状中空体の外部雰囲気の空気圧が大気圧の状態からより高い空気圧に変化すると、気泡は収縮する。また、環状中空体の外部の空気圧が大気圧よりも高い空気圧から大気圧に低下すると、気泡は膨張する。すなわち、環状中空体は、外部雰囲気の空気圧の変化に応じて膨張及び収縮し、環状中空体の外周面と空気入りタイヤの内周面との間の間隔は、外部の空気圧の変化に応じて変化する。
【0011】
環状中空体として、大気圧の雰囲気下において、外径が空気入りタイヤのトレッド部の内周面の直径にほぼ等しいか又は若干大きく、内径は外径の25% &#12316;50%のサイズを有する環状中空体を用意する。この環状中空体の環状の内部空間の気圧は大気圧に設定する。このようなサイズの環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む。続いて、環状中空体が装着された空気入りタイヤをホイールリムにリム組する。この時、環状中空体の外周面はトレッド部の内周面と当接し、これらの間隔は零である。この状態において、空気入りタイヤとホイールリムにより形成されるタイヤ空間内にリムバルブを介して高圧空気を封入してインフレートし、タイヤ空間に通常走行の正規の空気圧(例えば、240kPa)を充填する。前述したように、タイヤ空間の空気圧が上昇すると、環状中空体は収縮する。環状中空体が収縮することにより、環状中空体の外周面と空気入りタイヤの内周面との間に正規の空気圧の空間ないし空気層が形成される。また、サイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間にも正規の空気圧の空間が形成される。従って、トレッド部は路面に応じて変位し、サイドウォール部は自在に弾性変形する。この際、環状中空体はタイヤ半径方向の内向きに収縮するため、環状中空体はホイールリムに密着する。よって、走行中、環状中空体はホイールリムと一体的に回転する。この結果、タイヤ空間が正規の空気圧に設定された通常の走行時には、チューブレスタイヤと同等の走行性能が発揮される。尚、正規の空気圧とは、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Bookにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいう。
【0012】
走行中にパンクにより内圧低下が生じると、タイヤ空間の空気圧は正規の空気圧から大気圧に低下する。この空気圧の低下に応じて環状中空体は膨張し、その外周面はトレッド部の内周面と圧接する。この結果、荷重は空気入りタイヤのサイドウォール部と環状中空体の両方によって支持される。従って、ランフラット走行時には、荷重は空気入りタイヤのサイドウォール部と弾性変形可能な環状中空体によって支持されるので、サイドウォール部の負担が軽減され、サイドウォール部の劣化に対して有効に対処することができる。特に重要なことは、環状中空体は弾性変形可能であるので、走行中に発生する衝撃や振動は環状中空体によって吸収され、良好な転がり特性及びクッション性が得られ、ランフラット走行性能が格段に改善される。
【0013】
本発明の環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成されると共に大気圧の空気が充填された環状の内部空間を有するので、忠実な弾性ゴム材料で構成した場合よりもはるかに軽量である。また、環状の内部空間を有するので、膨張及び収縮時の変形量を大きく設定できる利点がある。尚、完全な単泡性スポンジを製造することは困難である。従って、気泡が部分的に連通しているスポンジゴムも本発明の単泡性スポンジゴムに含まれる。
【0014】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体の好適実施例は、前記空気入りタイヤをチューブレスタイヤで構成したことを特徴とする。本発明のタイヤ/ホイール組立体は、市販のチューブレスタイヤの内側に環状中空体を嵌め込み、ホイールリムにリム組することにより構成することができる。すなわち、本発明では、空気入りタイヤとして市販のチューブレスタイヤを用いれば、チューブレスタイヤと同等の走行性能を得ることができる。
【0015】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体の別の好適実施例は、空気入りタイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けたランフラットタイヤで構成したことを特徴とする。サイド補強ゴム層を有するランフラットタイヤの内側に環状中空体を嵌め込み、ホイールにリム組し、正規の空気圧を充填することにより本発明のタイヤ/ホイール組立体が完成する。このタイヤ/ホイール組立体は、トレッド部が補強されると共に、内圧が低下した際荷重はサイドウォール部と環状中空体により支持されるので、タイヤの耐久性が大幅に向上する。この結果、ランフラット走行時における走行可能距離を大幅に延長される。
【0016】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体の製造方法は、環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体の製造方法であって、
環状のホイールリムと、空気入りタイヤと、前記空気入りタイヤの内径に等しいか又はそれを超えるサイズの外径を有し、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成され、外部の空気圧に応じて膨張及び収縮する環状中空体とを用意する工程と、
前記環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む工程と、
環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをホイールリムにリム組する工程と、
前記タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に上昇させて前記環状中空体を収縮させ、前記空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明によるタイヤ/ホイール組立体の製造方法の好適実施例は、前記環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込む工程において、前記環状中空体の内部空間の空気を排気して断面を扁平状に形成し、断面が偏平形状の環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込むことを特徴とする。
【0018】
環状中空体のサイズに関して、外径が空気入りタイヤのトレッド部の内周面の直径にほぼ等しい又はそれよりも若干大きいサイズの環状中空体を用いることが望ましい。しかしながら、このようなサイズの環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む際サイドウォール部が障害となり、嵌め込み作業が困難になる。この課題を解決するため、例えば、環状中空体を嵌め込む前に、環状中空体に細い中空体を差し込んで環状中空体の内部空間を外部と連通させる。この状態で環状中空体に対してタイヤ中心軸線方向に機械的押圧力を作用して内部空間の空気を排気し、環状中空体を断面が偏平になるように収縮させる。或いは、ポンプを用いて内部空間を排気する。そして、接着剤等を用いて微細な孔を閉止する。その後、扁平状に変形した環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む。
【0019】
断面が扁平状に形成された環状中空体は、その幅が空気入りタイヤの幅よりも小さいため、空気入りタイヤの内側に容易に嵌め込むことができる。すなわち、環状中空体の断面形状を円形から偏平形状に変えることにより、環状中空体を空気入りタイヤの内側に容易に嵌め込むことができる。この結果、作業性が大幅に改善される。また、断面が扁平な環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込んだ後にリム組し、続いて、環状中空体の内部空間に空気を送り込み、環状中空体を膨張させてほぼ円形にする。その後タイヤ空間を正規の空気圧に設定することにより、チューブレスタイヤと同等の走行性能を有するタイヤ/ホイール組立体が実現される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタイヤ/ホイール組立体は、タイヤ空間に正規の空気圧が充填された通常走行時には、環状中空体の外周面と空気入りタイヤの内周面との間に正規の空気圧の空間が形成されるので、チューブレスタイヤとほぼ同等な走行性能が得られる。また、内圧が低下したランフラット走行時には、荷重は弾性変形可能な環状中空体とサイドウォール部とにより支持されるので、良好なランフラット走行性能が得られると共にサイドウォール部の負担が軽減され、サイドウォール部の劣化に対して有効に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるタイヤ/ホイール組立体の一例を示す縦断面図である。
図2】本発明による環状中空体の一例を示す縦断面図であり、図2(A)は大気圧雰囲気下の形状を示し、図2(B)は正規の空気圧雰囲気下における形状を示す。
図3】は本発明によるタイヤ/ホイール組立体の子午線方向断面図である。
図4】は本発明によるタイヤ/ホイール組立体の製造工程を説明するための図である。
図5】組立体工程におけるタイヤ/ホイール組立体の構造形態を示す図である。
【発明の実施するための形態】
【0022】
図1は本発明によるタイヤ/ホイール組立体の一例を示す線図的縦断面図である。尚、図1は、タイヤ空間をインフレートし、タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に設定した状態を示す。本発明のタイヤ/ホイール組立体は、空気入りタイヤ1と、ホイール2と、空気入りタイヤが勘合される円環状のホイールリム3と、空気入りタイヤ1とホイールリム3とによって形成されるタイヤ空間内に配置した弾性変形可能な環状中空体4とを有する。
【0023】
空気入りタイヤ1は、路面と接地するトレッド部1aと、その両端部から半径方向内側に延在する1対のサイドウォール部1bと、これらサイドウォール部のタイヤ半径方向内側に設けた1対のビード部1cとを有する。本例では、空気入りタイヤ1の内周面は、ゴムライニングを施したチューブレス仕様とする。すなわち、本発明では、空気入りタイヤ1は、市販のチューブレスタイヤを用いることができる。
【0024】
空気入りタイヤ1はホイール2により支持する。ホイール2はホイールリム3を有し、ホイールリム3に空気入りタイヤ1をリム組する。
【0025】
ホイールリム3には、リムバルブ3aを設ける。このリムバルブ3aを介して空気入りタイヤ1とホイールリム3とにより形成されるタイヤ空間5内の空気圧を調整することができる。
【0026】
本発明では、空気入りタイヤ1とホイールリム3とによって形成されるタイヤ空間5内に弾性変形可能な環状中空体4を配置し、パンクによってタイヤ空間5の内圧が低下した場合、環状中空体4とサイドウォール部1bにより荷重を支持する。環状中空体4は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴム(独立気泡型スポンジゴム)で構成する。単泡性スポンジゴムの発泡量は、例えば2~5倍とする。単泡性スポンジゴム材料として、各種工業用ゴムを用いることができ、例えばSBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴム、NBRゴムを用いることができる。また、合成樹脂発泡体も用いることができ、EVA樹脂スポンジやポリオリフィン系樹脂発泡体を用いることができる。尚,EVA樹脂スポンジは、優れた弾性反発力を有し、他の樹脂材料と比べて比重が軽いので、特に優れた乗り心地性能が得られる。
【0027】
環状中空体4は、大気圧の空気が充填された環状の内部空間4aを有する。この環状の内部空間4aはタイヤ空間5の空気圧に応じて膨張及び収縮する。また、大気圧の空気で満たされた内部空間4aを形成することにより、環状中空体自身が弾性変形し易く、大きな変形量を得ることができる。さらに、空気で満たされた環状の内部空間を形成することにより、環状中空体の重量を軽量にすることができ、燃費の低下が軽減される。
【0028】
これに対して、環状中空体の代わりに、内部が忠実な環状弾性体を用いた場合、その膨張及び収縮できる範囲が小さいため弾性変形量が小さく、良好な転がり特性及びクッション性が得にくい欠点がある。さらに、タイヤ自身の重量が重くなり、燃費に悪影響を与えるおそれもある。
【0029】
図2は環状中空体をその中心軸線を含む面で切って示す縦断面図である。図2(A)は大気圧雰囲気下における環状中空体の断面形状及びサイズを示し、図2(B)は外部雰囲気を正規の空気圧(例えば、240kPa)を充填した際の断面形状及びサイズを示す。環状中空体の内部には多数の気泡が存在し、これらの気泡は外部雰囲気の空気圧の変化に応じて膨張及び収縮する。よって、環状中空体は、外部雰囲気の空気圧の変化に応じて膨張及び収縮する。例えば、外部雰囲気の空気圧が大気圧の状態から正規の空気圧に上昇すると、気泡の収縮によって環状中空体は全体として収縮し、矢印a及びbで示す中心軸線方向に収縮すると共に、矢印c及びdで示す半径方向に収縮する。一方、外部雰囲気の空気圧が正規の空気圧から大気圧に低下すると、気泡は膨張し、環状中空体は全体として膨張する。
【0030】
本発明は、上述した環状中空体の特性を有効利用する。すなわち、大気圧雰囲気下において空気入りタイヤの内側に環状中空体を嵌め込む。続いて、タイヤ空間に高圧の空気を送り込んでインフレートする。タイヤ空間を正規の空気圧に設定すると、空気入りタイヤのトレッド部の内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間が形成され、サイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間にも正規の空気圧の空間が形成される。これにより、トレッド部及びサイドウォール部は路面の状態に応じて自在に変形するので、チューブレスと同等の走行性能を得ることができる。
【0031】
一方、内圧低下を発生し、タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧から大気圧に低下すると、環状中空体は膨張する。環状中空体の膨張により、環状中空体は空気入りタイヤのトレッド部と当接し、荷重は環状中空体と空気入りタイヤのサイドウォール部により支持することになる。この際、荷重の一部は弾性変形可能な環状中空体により負担されるので、ランフラット走行時における走行性能が段格段に改善される。
【0032】
図3は本発明によるタイヤ/ホイール組立体の子午線方向断面図であり、タイヤ空間の空気圧の変化に対するタイヤ構造の変化を示す。図3(A)は空気入りタイヤに環状中空体を嵌め込み、リム組した状態を示し、図3(B)はタイヤ空間を正規の空気圧にインフレートした状態を示し、図3(C)はパンクにより内圧低下を生じた状態を示す。
【0033】
本例では、タイヤの半径方向の中心を原点とし、環状中空体の内径(内側半径)はリムの外径に等しくし、環状中空体の外径は空気入りタイヤのトレッド部の内周面の半径よりも若干大きくなるように設定する。環状中空体を空気入りタイヤの内側空間に嵌め込み、ホイールをホイールリムに組み付けることにより、空気入りタイヤとホイールリムが形成する空間内に収納される。尚、環状中空体の内部空間の空気圧は大気圧に設定する。
【0034】
リム組した直後は、タイヤ空間は大気圧であり、環状中空体は膨張した状態にある。従って、リム組した直後では、図3(A)に示すように、空気入りタイヤは環状中空体の外周に沿うような形状をとる。
【0035】
リム組した後、リムバルブを介してタイヤ空間に高圧空気を封入してタイヤ空間を正規の空気圧(例えば、240kPa)に設定する。タイヤ空間に高圧空気を封入すると、環状中空体は中心軸線方向及び半径方向に収縮する。この収縮により、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間が形成される。図3(B)はタイヤ空間をインフレートした状態を示す。図3(B)に示すように、空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間には正規の空気圧の空間が形成されるので、トレッド部及びサイドウォール部は路面の状態に応じて自在に変形することが可能である。この結果、本発明のタイヤ/ホイール組立体は、市販のチューブレスタイヤと同等の走行性能を発揮することができる。
【0036】
尚、環状中空体は半径方向の内向きにも収縮しようとするが、ホイールリムにより規制されるため、環状中空体の内周面はホイールリムの外周面に密着する。よって、走行中、環状中空体はホイールリムと一体的に回転する。
【0037】
パンクにより内圧が低下すると、タイヤ空間の空気圧は大気圧まで低下する。タイヤ空間の空気圧の低下により、環状中空体に含まれる多数の気泡が膨張する。この結果、図3(C)に示すように、環状中空体は膨張し、その外周面はトレッド部の内周面と当接し、トレッド部の内周面をタイヤ半径外方に押圧する。また、環状中空体の内周面はホイールリムの外周面と当接する。これにより、ランフラット走行時には、荷重は空気入りタイヤのサイドウォール部と弾性変形可能な環状中空体の両方により支持され、サイドウォール部の負担が軽減される。また、環状中空体は弾性変形可能に荷重を支持するので、良好な転がり特性及びクッション性が得られ、ランフラット走行性能が格段に改善される。
【0038】
次に、本発明によるタイヤ/ホイール組立体の製造方法について説明する。図4は本発明のタイヤ/ホイール組立体の一連の製造工程を示す図であり、図5は各製造工程における組立体の構造を示す線図的断面図である。初めに、環状のホイールリム、空気入りタイヤ、及び弾性変形可能な環状中空体を用意する(ステップ1)。空気入りタイヤは、市販のチューブレスタイヤ又はランフラットタイヤを用いることができる。環状中空体として、大気圧の空気が封入された内部空間を有し、単泡性の気泡が形成された弾性変形なスポンジにより構成した環状中空体を用いる。環状中空体のサイズは、外径が空気入りタイヤの内径よりも若干大きいサイズとし、その内径はホイールリムの外径にほぼ等しいか又はそれよりも若干小さいサイズとする。
【0039】
空気入りタイヤの内側エリアに上述したサイズの環状中空体を嵌め込む作業は困難な場合がある。そこで、本発明では、空気入りタイヤに嵌め込む前に、図5(A)に示すように、環状中空体の内部空間を排気して断面が扁平状に変形させる(ステップ2)。尚、内部空間の排気は、先端が針状の中空管とポンプを用いて行うことができる。
【0040】
次に、扁平状に変形した環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む(ステップ3)。扁平状に変形させることにより、環状中空体を空気入りタイヤのサイドウォール部間に嵌め込むことができる。
【0041】
次に、扁平状の環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをリムに装着する(ステップ4)。この状態を図5(B)に示す。
【0042】
次に、環状中空体に貫通孔を形成し、貫通孔を介して環状中空体の内部空間を外部と連通させ、内部空間に空気を送り込んで内部空間をインフレートする(ステップ5)。この状態を図5(C)に示す。すなわち、扁平状に収縮した環状中空体は、その復元力により断面が円形に復帰しようとする。よって、環状中空体に貫通孔を形成し、貫通孔を介して内部空間を外部雰囲気と連通させることにより、元の形状に容易に膨張復帰させることができる。尚、貫通孔を形成する代わりに、針状の中空体を環状中空体に差し込んで内部空間を外部雰囲気と連通させることもできる。
【0043】
最後に、タイヤ空間に高圧の空気を封入し、タイヤ空間を正規の空気圧に設定する(ステップ6)。この状態を図5(D)に示す。
【0044】
尚、ステップ5において、環状中空体の内部空間を外部と連通させ、内部空間を膨張させたが、この工程はタイヤ空間に高圧空気を封入する工程において実行することができる。すなわち、扁平状の環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込んだ後、環状中空体に外部と連通する貫通孔を形成する。この状態において、タイヤ空間に高圧空気を封入する。タイヤ空間に流入した高圧空気は、貫通孔を介して環状中空体の内部空間に流入する。その結果、環状中空体の内部空間は膨張し、弾性復元力により扁平状から円形に復帰する。この場合、環状中空体に微小孔が形成されるが、環状中空体の内部空間の空気圧は空気入りタイヤのタイヤ空間の空気圧に等しくなるため、不具合は全く生じない。
【0045】
本発明は上述した実施例に限定されず種々の変更や変形が可能である。例えば、上述した実施例では、環状中空体として断面が円形の中空体を用いたが、矩形や楕円形の断面形状をもつ中空体を用いることができる。さらに、空気入りタイヤの断面形状と整合する断面形状に設定することができる。例えば、環状中空体のトレッド部の内周面と対向する表面形状をトレッド部の内周面と整合する形状とすることができる。
【0046】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体は、一般の自動車だけでなく、モノレール等の各種車輛のタイヤに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 空気入りタイヤ
2 ホイール
3 ホイールリム
3a リムバルブ
4 環状中空体
5 タイヤ空間
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2020-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジで構成され、前記タイヤ空間の空気圧に応じて膨張及び収縮し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、環状中空体は収縮し、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体は、環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジで構成され、前記タイヤ空間の空気圧に応じて膨張及び収縮し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、環状中空体は収縮し、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とする。

【手続補正書】
【提出日】2021-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は弾性変形可能な単泡性スポンジゴム又単泡性発泡体で構成され、当該環状中空体はタイヤ空間の空気圧の変化に応じて膨張又は収縮し、当該環状中空体の環状の内部空間は貫通孔を介して前記タイヤ空間と連通し
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、前記環状の内部空間の空気圧
はタイヤ空間の空気圧と等しくなり
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記ランフラット走行時には、荷重は前記弾性変形可能な環状中空体と空気入りタイヤのサイドウォール部により弾性的に支持されることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤはチューブレスタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項4】
請求項1,2、又は3に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けたランフラットタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項5】
請求項1か4までのいずれか1項に記載に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記環状中空体は、SBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴム、又は、NBRゴムの単泡性スポンジ、或いは、EVA樹脂又はポリオリフィン系樹脂の単泡性発泡体により構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項6】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体の製造方法であって、
環状のホイールリムと、空気入りタイヤと、弾性変形可能な単泡性スポンジ又は単泡性発泡体で構成した弾性変形可能な環状中空体とを用意する工程と、
前記環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む工程と、
前記環状中空体に、環状の内部空間を外部と連通させる貫通孔を形成する工程と
環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをホイールリムにリム組する工程と、
前記タイヤ空間に高圧空気を封入し、タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に設定すると共に、前記環状中空体に形成された貫通孔を介して環状内部空間に高圧空気を流入させて環状の内部空間の空気圧をタイヤ空間の空気圧に等しい空気圧に設定する工程とを含み、
前記高圧空気を封入する工程において、前記空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間を形成することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込む工程において、前記環状中空体の環状内部空間の空気を排気することにより環状中空体を偏平状に形成し、断面が偏平形状の環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込むことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7又に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体は前記空気入りタイヤの内径に等しいか又はそれ以上のサイズの外径を有することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項9】
請求項6、7又は8に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記空気入りタイヤとして市販の空気入りタイヤ又は市販のランフラットタイヤを用いることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
パンク等により空気入りタイヤ内部の空気が漏出した場合、空気圧によって支持していた荷重をサイドウォール部で支持することになる。よって、サイドウォール部が大きく変形し、走行が困難になってしまう。このため、パンク等によって空気が漏出した状態における走行、いわゆるランフラット走行が可能なタイヤの開発が急務の課題である。ランフラット性能が改良されたタイヤとして、サイドウォール部の内側に補強ゴム層を設け、サイドウォール部の剛性を向上させたランフラットタイヤが既知である。例えば、特許文献1には、サイドウォール部に配設した補強ゴム層の材質を改良することにより低発熱性及び高硬度性を両立したランフラットタイヤが開示されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体は、環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴム又単泡性発泡体で構成され、環状中空体の環状内部空間は貫通孔を介して前記タイヤ空間と連通し、
前記環状中空体は、タイヤ空間の空気圧の変化に応じて膨張及び収縮し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、前記環状中空体は収縮し、空気入りタイヤの内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成されると共に、前記環状の内部空間はタイヤ空間の空気圧に等しい正規の空気圧に設定され
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
環状中空体として、大気圧の雰囲気下において、外径が空気入りタイヤのトレッド部の内周面の直径にほぼ等しいか又は若干大きく、内径は外径の25%50%のサイズを有する環状中空体を用意する。この環状中空体の環状の内部空間の気圧は大気圧に設定する。このようなサイズの環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む。続いて、環状中空体が装着された空気入りタイヤをホイールリムにリム組する。この時、環状中空体の外周面はトレッド部の内周面と当接し、これらの間隔は零である。この状態において、空気入りタイヤとホイールリムにより形成されるタイヤ空間内にリムバルブを介して高圧空気を封入してインフレートし、タイヤ空間に通常走行の正規の空気圧(例えば、240kPa)を充填する。前述したように、タイヤ空間の空気圧が上昇すると、環状中空体は収縮する。環状中空体が収縮することにより、環状中空体の外周面と空気入りタイヤの内周面との間に正規の空気圧の空間ないし空気層が形成される。また、サイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間にも正規の空気圧の空間が形成される。従って、トレッド部は路面に応じて変位し、サイドウォール部は自在に弾性変形する。この際、環状中空体はタイヤ半径方向の内向きに収縮するため、環状中空体はホイールリムに密着する。よって、走行中、環状中空体はホイールリムと一体的に回転する。この結果、タイヤ空間が正規の空気圧に設定された通常の走行時には、チューブレスタイヤと同等の走行性能が発揮される。尚、正規の空気圧とは、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Bookにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいう。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の環状中空体は、弾性変形可能な単泡性スポンジゴムで構成されると共に大気圧の空気が充填された環状の内部空間を有するので、忠実な弾性ゴム材料で構成した場合よりもはるかに軽量である。また、環状の内部空間を有するので、膨張及び収縮時の変形量を大きく設定できる利点がある。尚、完全な単泡性スポンジを製造することは困難である。従って、気泡が部分的に連通しているスポンジゴムも本発明の単泡性スポンジゴムに含まれる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明によるタイヤ/ホイール組立体の製造方法は、環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体の製造方法であって、
環状のホイールリムと、空気入りタイヤと、前記空気入りタイヤの内径に等しいか又はそれ以上のサイズの外径を有し、弾性変形可能な単泡性スポンジ又は単泡性発泡体で構成された環状中空体とを用意する工程と、
前記環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む工程と、
前記環状中空体に、環状内部空間を外部と連通させる貫通孔を形成する工程と、
環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをホイールリムにリム組する工程と、
前記タイヤ空間に高圧空気を封入し、タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に設定すると共に、前記環状中空体に形成された貫通孔を介して環状内部空間に高圧空気を封入して環状内部空間の空気圧をタイヤ空間の空気圧に等しい正規の空気圧に設定する工程とを含み、
前記高圧空気を封入する工程において、前記環状中空体を収縮させて、前記空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間を形成することを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体であって、
前記環状中空体は弾性変形可能な単泡性スポンジゴム又単泡性発泡体で構成され、当該環状中空体はタイヤ空間の空気圧の変化に応じて膨張又は収縮し、当該環状中空体の環状の内部空間は貫通孔を介して前記タイヤ空間と連通し、
前記タイヤ空間の空気圧が正規の空気圧に設定された通常走行時には、空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間には前記正規の空気圧の空間が形成され、前記環状の内部空間の空気圧はタイヤ空間の空気圧と等しくなり、
タイヤ空間の空気圧が低下したランフラット走行時には、前記環状中空体は膨張し、その外周面が空気入りタイヤのトレッド部の内周面と圧接することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記ランフラット走行時には、荷重は前記弾性変形可能な環状中空体と空気入りタイヤのサイドウォール部により弾性的に支持されることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤはチューブレスタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項4】
請求項1,2、又は3に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記空気入りタイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けたランフラットタイヤで構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項5】
請求項1か4までのいずれか1項に記載に記載のタイヤ/ホイール組立体において、前記環状中空体は、SBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴム、又は、NBRゴムの単泡性スポンジ、或いは、EVA樹脂又はポリオリフィン系樹脂の単泡性発泡体により構成したことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体。
【請求項6】
環状のホイールリムと、ホイールリムに装着された空気入りタイヤと、ホイールリムと空気入りタイヤによって形成される環状のタイヤ空間内に配置され、環状の内部空間を有する弾性変形可能な環状中空体とを有するタイヤ/ホイール組立体の製造方法であって、
環状のホイールリムと、空気入りタイヤと、弾性変形可能な単泡性スポンジ又は単泡性発泡体で構成した弾性変形可能な環状中空体とを用意する工程と、
前記環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込む工程と、
前記環状中空体に、環状の内部空間を外部と連通させる貫通孔を形成する工程と、
環状中空体が嵌め込まれた空気入りタイヤをホイールリムにリム組する工程と、
前記タイヤ空間に高圧空気を封入し、タイヤ空間の空気圧を正規の空気圧に設定すると共に、前記環状中空体に形成された貫通孔を介して環状内部空間に高圧空気を流入させて環状の内部空間の空気圧をタイヤ空間の空気圧に等しい空気圧に設定する工程とを含み、
前記高圧空気を封入する工程において、前記空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の内周面と環状中空体の外周面との間に正規の空気圧の空間を形成することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体を空気入りタイヤに嵌め込む工程において、前記環状中空体の環状内部空間の空気を排気することにより環状中空体を偏平状に形成し、断面が偏平形状の環状中空体を空気入りタイヤの内側に嵌め込むことを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記環状中空体は前記空気入りタイヤの内径に等しいか又はそれ以上のサイズの外径を有することを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。
【請求項9】
請求項6、7又は8に記載のタイヤ/ホイール組立体の製造方法において、前記空気入りタイヤとして市販の空気入りタイヤ又は市販のランフラットタイヤを用いることを特徴とするタイヤ/ホイール組立体の製造方法。