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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089315
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】薄型道路鋲の設置構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/553 20160101AFI20220609BHJP
   E01F 9/559 20160101ALI20220609BHJP
   E01F 9/658 20160101ALI20220609BHJP
【FI】
E01F9/553
E01F9/559
E01F9/658
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201635
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502139910
【氏名又は名称】株式会社クリーンベンチャー21
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 真男
(72)【発明者】
【氏名】室園 幹男
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】周 華
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA01
2D064AA03
2D064AA21
2D064AA22
2D064BA05
2D064CA02
2D064DA12
2D064DB01
2D064EA01
2D064EA03
2D064EB05
2D064GA03
2D064JA02
(57)【要約】
【課題】自発光式の薄型の道路鋲を、設置や撤去が容易で且つ位置ずれを生じない安定した状態で、仮設の設置物として路面に簡易に設置しておくことのできる薄型道路鋲の設置構造を提供する。
【解決手段】固定枠部材11を用いて薄型道路鋲20が路面30に取り付けるようになっており、固定枠部材11は、薄型道路鋲20よりも大きな平面形状を備えると共に、ビス部材18を介して路面30に固定されるクッション基板部12と、薄型道路鋲20の装着領域12aの四方を囲むように配置されてクッション基板部12に一体として設けられることで、薄型道路鋲20の横ずれ防止用の段差部13aを形成するずれ止め枠板部13と、短辺部枠板部13b,13bから張り出して設けられることで、張出し片部14aとクッション基板部12の上面との間に薄型道路鋲20の周縁部20aを挟み込む押え板部14とを含んで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速道路等の道路の路面に設置されて、夜間に走行する車両の運転者に車線を視認させる自発光式の薄型道路鋲を、固定枠部材を用いて着脱可能に路面に取り付けるための薄型道路鋲の設置構造であって、前記薄型道路鋲は、太陽電池及びLED光源を備える薄型の道路鋲となっており、前記固定枠部材は、前記薄型道路鋲の平面形状よりも一回り大きな平面形状を備えると共に、四方の角部分に打ち込まれるビス部材を介して路面に固定されるクッション基板部と、該クッション基板部の上面に重ね合わせて装着される前記薄型道路鋲の装着領域の四方を囲むように配置されて、該クッション基板部の周縁部分から上方に突出して一体として設けられることで、前記クッション基板部における前記薄型道路鋲の装着領域の周囲に、横ずれ防止用の段差部を形成するずれ止め枠板部と、該ずれ止め枠板部の対向する部分から各々前記装着領域側に張り出して一体として設けられることで、張出し片部と前記クッション基盤の上面との間に前記薄型道路鋲の周縁部を挟み込む押え板部とを含んで構成されており、
前記クッション基板部における前記ずれ止め枠板部によって囲まれる内側の前記装着領域に、前記薄型道路鋲を装着した状態で、前記クッション基板部が前記ビス部材を介して路面に固定されることで、前記固定枠部材を用いて前記薄型道路鋲が着脱可能に路面に取り付けられる薄型道路鋲の設置構造。
【請求項2】
前記薄型道路鋲は、厚さが10mm以下の薄型の道路鋲となっている請求項1記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項3】
前記薄型道路鋲は、矩形状の平面形状を有しており、前記固定枠部材の前記クッション基板部は、前記薄型道路鋲よりも一回り大きなが矩形状の平面形状を備えている請求項1又は2記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項4】
前記薄型道路鋲は、上面部に太陽電池を備えると共に、四方の周辺部に点滅部を有しており、前記固定枠部材の前記ずれ止め枠板部は、前記点滅部を前記固定枠部材の側面に臨ませるように、四方の一部が切り欠かれた状態で、前記クッション基板部の周縁部分から上方に突出して一体として設けられている請求項3記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項5】
前記固定枠部材の前記ずれ止め枠板部は、接着剤を介して前記クッション基板部に一体として接合されており、前記固定枠部材の前記押え板部は、接着剤を介して前記ずれ止め枠板部に一体として接合されている請求項2~4のいずれか1項記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項6】
前記固定枠部材の前記クッション基板部、前記ずれ止め枠板部、及び前記押え板部は、これらが一体となった成形品として形成されている請求項2~4のいずれか1項記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項7】
前記固定枠部材の前記クッション基板部、前記ずれ止め枠板部、及び前記押え板部は、JISK6253(2006)によるゴム硬度がA45~A90のクロロプレンゴムによって形成されている請求項1~6のいずれか1項記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項8】
前記固定枠部材を路面に固定する前記ビス部材は、舗装面に形成されたガイド孔に弾性接着剤が充填されている状態で、当該ガイド孔に締着されている請求項1~7のいずれか1項記載の薄型道路鋲の設置構造。
【請求項9】
前記ビス部材は、径の異なる高いねじ山と低いネジ山とによる2重の螺旋を備えている請求項1~8のいずれか1項記載の薄型道路鋲の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型道路鋲の設置構造に関し、特に、運転者に車線を視認させる薄型の道路鋲を、着脱可能に路面に取り付けるための薄型道路鋲の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の道路において、例えば工事規制のために車線を変更する必要が生じた際に、夜間に道路を走行する車両の運転者に変更した車線を視認させるための手段として、帯板形状の路面表示材を路面に接着させて用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。路面標示材は、例えばエンボス加工された柔軟性のある合成ゴム系樹脂による基材の表面に、セラミックビーズ等による反射素子を結合させた帯板形状の部材となっており、基材の裏面に塗布された接着剤を介して路面に接着させて用いられ、車両のライトを反射素子により反射させることによって、運転者に変更した車線を視認させるようになっている。
【0003】
また、夜間に車線を視認させる部材として、蓄光タイプの道路鋲も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の道路鋲によれば、自動車の車輪が乗り上げた時の衝撃及び騒音を小さくできると共に、車両のライトを反射させて夜間における視認性を高めるばかりでなく、ライトが無い状態においても、表面を被覆する蓄光材入り樹脂層によって、道路鋲の全体を発光させることにより、良好な視認性を与えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-105917号公報
【特許文献2】特開2010-180643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の路面表示材によって変更した車線を視認させるようにした従来の方法では、セラミックビーズ等の反射素子の反射によって車線を視認させるものであり、夜間において視認可能な道路線形の見通しが30m程度と短いことから、特に50~80km/h以上の高速で車両が走行する高速道路では、視認距離が短くなるため運転者の不安を感じさせやすくなる。
【0006】
また、上述の道路鋲を用いた方法では、アンカー部(脚部)を路面に埋め込んで道路鋲を本設の設置物として固定するものであるため、道路鋲の設置時に路面を斫り取ったり、撤去時に路面を復旧したりする必要があり、設置や撤去に時間と手間がかかり過ぎて、例えば工事規制のために一時的に車線を変更する際の、仮設の設置物として用いることは適切でないばかりか、道路鋲は、通常は車両の乗り込みを防止するために設けられるものであり、設置時の高さが例えば20mm以上となっていることから、特に高速道路では、車両の運転に影響を及ぼし易くなる。
【0007】
一方、例えば車両の運転に影響を及ぼすことがないように、好ましくは厚さを9mm程度以下に留めた自発光式の薄型の道路鋲として、球状シリコン太陽電池や高光度LEDを備える超薄型タイプの自発光式道路鋲が、例えば商品名「スマートソーラーライト、CVRS-AFシリーズ」として、株式会社クリーンベンチャー21によって供給されている。このような超薄型タイプの自発光式道路鋲によれば、球状シリコン太陽電池がフレキシブルに曲げることが可能な特徴を有するため、道路を走行する車両の振動を受けたり、例えば10t程度以上の大型トラックに踏まれたりしても、割れ難く、過酷な使用にも耐え得る信頼性の高い設計が可能になり、また大容量の蓄電部を備えていることで、フル充電で例えば72時間程度の長時間の連続作動が可能になり、さらに、高光度LEDを用いることによって、夜間における例えば500m程度の視認距離を得ることが可能になる。
【0008】
しかしながら、上述の自発光式の薄型の道路鋲を、例えば高速道路において工事規制する際に変更される車線を視認させるための、仮設の設置物として路面に設置して用いる場合、接着剤を用いて路面に設置する方法では、例えば走行する車両に踏まれた際に剥がれて位置ずれを生じ易くなり、またアンカー部(脚部)を路面に埋め込んで固定する方法では、設置や撤去に時間と手間がかかり過ぎて採用することは難しい。このようなことから、自発光式の薄型の道路鋲を、例えば工事規制を行なう期間だけ、設置や撤去が容易で且つ位置ずれを生じない安定した状態で、仮設の設置物として路面に簡易に設置しておくことを可能にする新たな技術の開発が要望されている。
【0009】
本発明は、自発光式の薄型の道路鋲を、例えば工事規制を行なう期間だけ、設置や撤去が容易で且つ位置ずれを生じない安定した状態で、仮設の設置物として路面に簡易に設置しておくことのできる薄型道路鋲の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、 高速道路等の道路の路面に設置されて、夜間に走行する車両の運転者に車線を視認させる自発光式の薄型道路鋲を、固定枠部材を用いて着脱可能に路面に取り付けるための薄型道路鋲の設置構造であって、前記薄型道路鋲は、太陽電池及びLED光源を備える薄型の道路鋲となっており、前記固定枠部材は、前記薄型道路鋲の平面形状よりも一回り大きな平面形状を備えると共に、四方の角部分に打ち込まれるビス部材を介して路面に固定されるクッション基板部と、該クッション基板部の上面に重ね合わせて装着される前記薄型道路鋲の装着領域の四方を囲むように配置されて、該クッション基板部の周縁部分から上方に突出して一体として設けられることで、前記クッション基板部における前記薄型道路鋲の装着領域の周囲に、横ずれ防止用の段差部を形成するずれ止め枠板部と、該ずれ止め枠板部の対向する部分から各々前記装着領域側に張り出して一体として設けられることで、張出し片部と前記クッション基盤の上面との間に前記薄型道路鋲の周縁部を挟み込む押え板部とを含んで構成されており、前記クッション基板部における前記ずれ止め枠板部によって囲まれる内側の前記装着領域に、前記薄型道路鋲を装着した状態で、前記クッション基板部が前記ビス部材を介して路面に固定されることで、前記固定枠部材を用いて前記薄型道路鋲が着脱可能に路面に取り付けられる薄型道路鋲の設置構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記薄型道路鋲が、厚さが10mm以下の薄型の道路鋲となっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記薄型道路鋲が、矩形状の平面形状を有しており、前記固定枠部材の前記クッション基板部は、前記薄型道路鋲よりも一回り大きなが矩形状の平面形状を備えていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、 前記薄型道路鋲が、上面部に太陽電池を備えると共に、四方の周辺部に点滅部を有しており、前記固定枠部材の前記ずれ止め枠板部は、前記点滅部を前記固定枠部材の側面に臨ませるように、四方の一部が切り欠かれた状態で、前記クッション基板部の周縁部分から上方に突出して一体として設けられていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記固定枠部材の前記ずれ止め枠板部が、接着剤を介して前記クッション基板部に一体として接合されており、前記固定枠部材の前記押え板部は、接着剤を介して前記ずれ止め枠板部に一体として接合されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記固定枠部材の前記クッション基板部、前記ずれ止め枠板部、及び前記押え板部が、これらが一体となった成形品として形成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記固定枠部材の前記クッション基板部、前記ずれ止め枠板部、及び前記押え板部が、JIS K6253(2006)によるゴム硬度がA45~A90のクロロプレンゴムによって形成されていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記固定枠部材を路面に固定する前記ビス部材が、舗装面に形成されたガイド孔に弾性接着剤が充填されている状態で、当該ガイド孔に締着されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の薄型道路鋲の設置構造は、前記ビス部材が、径の異なる高いねじ山と低いネジ山とによる2重の螺旋を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薄型道路鋲の設置構造によれば、自発光式の薄型道路鋲を、例えば工事規制を行なう期間だけ、設置や撤去が容易で且つ位置ずれを生じない安定した状態で、仮設の設置物として路面に簡易に設置しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る薄型道路鋲の設置構造を説明する平面図、図1(b)は、図1(a)のA-Aに沿った断面図、図1(c)は、図1(a)のB-Bに沿った断面図、図1(d)は、図1(a)のC-Cに沿った断面図である。
図2図2(a)は、薄型道路鋲を説明する平面図、図2(b)は、図2(a)を下方から見た側面図、図2(c)は、図2(a)を右側から見た側面図である。
図3図3は、ビス部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(a)~(d)に示す本発明の好ましい一実施形態に係る薄型道路鋲の設置構造10は、高速道路等の道路において、例えば工事規制のために車線を変更する必要が生じた際に、変更した車線を夜間に走行する車両の運転者に視認させる自発光式の薄型道路鋲20(図2(a)~(c)参照)を、仮設の設置物として、路面30に設置しておくための設置構造として採用されたものである。本実施形態の設置構造10は、薄型道路鋲20を、路面30への設置や路面30からの撤去を容易にすると共に、走行する車両に踏まれても位置ずれしない安定した状態で、簡易に設置できるようにする機能を備えている。
【0022】
そして、本実施形態の薄型道路鋲の設置構造10は、高速道路等の道路の路面30に設置されて、夜間に走行する車両の運転者に車線を視認させる自発光式の薄型道路鋲20を、固定枠部材11を用いて着脱可能に路面30に取り付けるための設置構造であって、図1(a)~(d)及び図2(a)~(c)に示すように、薄型道路鋲20は、太陽電池21及びLED光源22を備える薄型の道路鋲となっており、固定枠部材11は、薄型道路鋲20の平面形状よりも一回り大きな平面形状を備えると共に、四方の角部分に打ち込まれるビス部材18(図1(d)参照)を介して路面30に固定される好ましくはゴム製のクッション基板部12と、クッション基板部12の上面に重ね合わせて装着される薄型道路鋲20の装着領域12aの四方を囲むように配置されて、クッション基板部12の周縁部分から上方に突出して一体として設けられることで、クッション基板部12における薄型道路鋲20の装着領域12aの周囲に、横ずれ防止用の段差部13aを形成する好ましくはゴム製のずれ止め枠板部13と、ずれ止め枠板部13の対向する部分として、対向する一対の短辺部枠板部13b,13bから、各々装着領域12a側に張り出して一体として設けられることで、張出し片部14aとクッション基板部12の上面との間に薄型道路鋲20の周縁部20aを挟み込む好ましくはゴム製の押え板部14とを含んで構成されている。クッション基板部12におけるずれ止め枠板部13によって囲まれる内側の装着領域12aに、薄型道路鋲20を装着した状態で、クッション基板部12がビス部材18を介して路面30に固定されることで、固定枠部材11を用いて薄型道路鋲20が着脱可能に路面30に取り付けられるようになっている。
【0023】
また、本実施形態では、薄型道路鋲20は、矩形状の平面形状を有しており、固定枠部材11のクッション基板部12は、薄型道路鋲20よりも一回り大きなが矩形状の平面形状を備えている。
【0024】
さらに、本実施形態では、薄型道路鋲20は、上面部に太陽電池21を備えると共に、四方の周辺部にLED光源22による点滅部22aを有しており、固定枠部材11のずれ止め枠板部13は、点滅部22aを固定枠部材11の側面に臨ませるように、四方の一部が切り欠かれた状態で、クッション基板部12の周縁部分から上方に突出して一体として設けられている。
【0025】
本実施形態では、薄型道路鋲20は、図2(a)~(c)に示すように、太陽電池21と蓄電部(図示せず)及びLED光源22を備える、厚さが10mm以下の自発光式の道路鋲20となっており、また好ましくは厚さが9mm以下の、超薄型の道路鋲となっている。このような太陽電池21と蓄電部及びLED光源22を備える超薄型の薄型道路鋲20として、好ましくは市販されている商品名「スマートソーラーライト、CVRS-AFシリーズ」((株)クリーンベンチャー21供給)を用いることができる。(株)クリーンベンチャー21供給の薄型道路鋲20は、例えば縦100mm、横135mm程度の大きさの、矩形状の平面形状を備えており、上面部に、太陽電池21として球状シリコン太陽電池が取り付けられている。また薄型道路鋲20の内部には、例えばリチウムイオン電池による蓄電部や、制御回路等が組み込まれている。さらに、四方の四隅の周辺部には、内部にφ3mm程度の大きさのLED光源22が配設された点滅部22aが設けられている。LED光源22による点滅部22aは、例えば500m離れた距離から認識可能な光度で、制御回路によって、連続点灯発光もしくは点滅発光ができるようになっていると共に、好ましくは暗くなった時間帯にのみ、発光できるようになっている。本実施形態では、薄型道路鋲20は、固定枠部材11に着脱可能に装着されて、変更される車線に沿った所定の位置に、例えば10~20m程度の所定の間隔をおいて連設配置された状態で、各々が固定枠部材11を介して路面30に設置されることになる。
【0026】
固定枠部材11は、ゴム製の材料として、好ましくはJIS K6253(2006)によるゴム硬度がA45~A90(本実施形態では、A65)のクロロプレンゴムを用いて形成されており、図1(a)~(d)に示すように、クッション基板部12と、ずれ止め枠板部13と、押え板部14を含んで構成されている。
【0027】
固定枠部材11を構成するクッション基板部12は、本実施形態では、薄型道路鋲20よりも一回り大きな、例えば縦150mm、横185mm程度の大きさの、矩形状の平面形状を備えており、また好ましくは5mm程度の厚さを有するように形成されている。クッション基板部12の中央部分の、例えば縦100mm、横135mm程度の大きさの矩形領域が、上面に薄型道路鋲20を重ね合わせた状態で装着させる、装着領域12aとなっている。この装着領域12aの四方を囲むように配置されて、薄型道路鋲20の横ずれ防止用の段差部13aを形成する、ずれ止め枠板部13が、クッション基板部12に一体として取り付けられている。
【0028】
固定枠部材11を構成するずれ止め枠板部13は、本実施形態では、矩形状の平面形状を備えるクッション基板部12の、短辺部分に沿って取り付けられる一対の短辺部枠板部13bと、長辺部分に沿って取り付けられる一対の長辺部枠板部13cとを有している。短辺部枠板部13bは、例えば縦150mm、横幅25mm程度の大きさの、縦長帯状の平面形状を備えており、好ましくは3mm程度の厚さを有するように形成されている。各々の短辺部枠板部13bは、公知の接着剤を介して、各々の短辺部分に沿ったクッション基板部12の縁部分に、これらの短辺部分の全長に亘って連続して一体として接合されて取り付けられている。長辺部枠板部13cは、例えば縦幅25mm、横80mm程度の大きさの、横長帯状の平面形状を備えており、好ましくは5mm程度の厚さを有するように形成されている。各々の長辺部枠板部13cは、公知の接着剤を介して、各々の長辺部分に沿ったクッション基板部12の縁部分に、これらの長辺部分の中間部分に配置されて、両側の短辺部枠板部13bとの間に27.5mm程度の間隔sを保持した状態で、一体として接合されて取り付けられている。
【0029】
各々の長辺部枠板部13cが、両側の短辺部枠板部13bとの間に間隔sを保持した状態で、クッション基板部12の長辺部分の中間部分に取り付けられていることにより、これらの間隔部分sをずれ止め枠板部13の切欠き部分13dとして、上述のように、薄型道路鋲20のLED光源22による点滅部22aを、固定枠部材11の側面に臨ませることができるようになっている(図1(d)参照)。
【0030】
また、本実施形態では、クッション基板部12の短辺部分に沿って取り付けられた各々の短辺部枠板部13bの縦長方向の両側の端部には、当該短辺部枠板部13bが一体として接合されたクッション基板部12の四方の角部分に配置されて、当該短辺部枠板部13b及びクッション基板部12を貫通して形成されたビス締着孔19が形成されている。これらのビス締着孔19には、固定枠部材11を路面30に固定するためのビス部材18(図3参照)が、路面30に向けて打ち込まれて、締着されることになる。短辺部枠板部13bの縦長方向の中間部分には、装着される薄型道路鋲20の周縁部20aを押え付けて係止するための押え板部14が、短辺部枠板部13bに一体として取り付けられている。
【0031】
固定枠部材11を構成する押え板部14は、本実施形態では、例えば縦60mm、横幅30mm程度の大きさの、縦長の矩形状の平面形状を備えており、好ましくは5mm程度の厚さを有するように形成されている。押え板部14は、短辺部枠板部13bの横幅よりも大きな横幅を有しており、外側の辺縁部を短辺部枠板部13bの外側の辺縁部に沿わせて取り付けられていることで、内側の辺部に沿った部分を張出し片部14aとして、クッション基板部12の装着領域12a側に張り出させた状態で、公知の接着剤を介して、短辺部枠板部13bに一体として接合されている。これによって、クッション基板部12のずれ止め枠板部13で囲まれる内側の装着領域12aに、薄型道路鋲20を装着した際に、装着された薄型道路鋲20の両側の短辺部分における周縁部20aを、押え板部14の張出し片部14aとクッション基板部12の上面との間に、張出し片部14aによって各々上方から押え付けるようにしながら挟み込むことにより、薄型道路鋲20を、クッション基板部12の装着領域12aから脱落したり位置ずれしたりしないように、簡易に且つ安定した状態で装着しておくことが可能になる(図1(b)、(d)参照)。
【0032】
本実施形態の薄型道路鋲の設置構造10によれば、上述の構成を備える固定枠部材11に薄型道路鋲20を、例えば押え板部14の張出し片部14aを弾性変形させつつ斜め横方向から差し込むようにして押し込んで、底面部をクッション基板部12の上面に重ねるようにしながら、ずれ止め枠板部13によって周囲を囲まれる装着領域12aに装着する。しかる後に、薄型道路鋲20が装着された複数の固定枠部材11の各々を、例えば高速道路の路面30における変更される車線に沿った所定の位置に、所定の間隔をおいてビス部材18を用いて各々固定することによって、複数の薄型道路鋲20が、変更される車線に沿って連設配置された状態で、固定枠部材11を介して路面30に設置されることになる。
【0033】
薄型道路鋲20が装着された各々の固定枠部材11を、ビス部材18(図3参照)を用いて路面30に固定するには、例えば路面30における各々の固定枠部材11の設置箇所において、設置される固定枠部材11の4箇所の角部分のビス締着孔19と対応する位置に、例えば公知の削孔ドリルを用いて、ビス部材18よりも小径のガイド孔31を予め穿孔形成しておく。しかる後に、公知のビス打込み装置を用いて、ビス部材18を、形成した各々のガイド孔31にガイドさせながら、ビス締着孔19を介して路面30に向けて打ち込むと共に、これらのガイド孔31やビス締着孔19に締着させることによって、各々の薄型道路鋲20を、固定枠部材11を介して、容易に且つスムーズに、路面30の所定の位置に設置することが可能になる。
【0034】
ここで、ビス部材18は、路面30に打ち込むことが可能なコンクリート用又は舗装用の公知のビス部材であって、好ましくは図3に示すように、径の異なる高いネジ山18aと低いネジ山18bとによる2重の螺旋を備えていることが好ましい。これによって、例えば路面30を形成するアスファルト舗装に、ビス部材18をしっかりと固着させることが可能になる。このようなビス部材18としては、プラグ不要でコンクリートにねじを切ることが可能な、例えば商品名「ハードエッジドライブ」(サンコーテクノ株式会社製)を好ましく用いることができる。
【0035】
また、固定枠部材11を路面30に固定するビス部材18は、舗装面30に予め穿孔形成されたガイド孔31に弾性接着剤を供給することで、弾性接着剤が充填されている状態で、ガイド孔31に締着されるようになっていることが好ましい。これによって、路面30を走行する車両による振動や衝撃に対して、良好な応力緩和性能を発揮することが可能になる。また高速道路等の道路の路面30を形成するアスファルト舗装の表層部分が、排水性を備えるポーラスなものとなっていて、穿孔形成されたガイド孔31の周囲に微細な空洞部が点在して形成されている場合でも、これらの空洞部に弾性接着剤を入り込ませることによって、良好な接着性能を得ることが可能になる。このような弾性接着剤としては、無溶剤一液湿気硬化型弾性接着剤として公知の、例えば商品名「Three Bond 1530」(スリーボンド株式会社製)を好ましく用いることができる。
【0036】
本実施形態では、固定枠部材11を介して路面30に設置された各々の薄型道路鋲20は、太陽電池21と蓄電部及びLED光源22を備える自発光式の薄型道路鋲となっている。これによって、走行する車両のライトに依存することなく、例えば500m程度離れた距離からでも認識可能な光度で、発光することが可能である。また太陽電池21によって昼間に得られた電力を、内蔵する蓄電部に蓄電することで、例えば72時間程度の長時間、連続して発光することが可能である。これらによって、例えば工事規制を行なう必要のある所定の短い期間、安定した状態で、夜間に道路を走行する車両の運転者に、変更した車線を容易に視認させることが可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、例えば工事が終了して道路規制を行なう必要がなくなったら、別の施工箇所のため新たに工事規制を行う際には、固定枠部材11を介して設置された薄型道路鋲20を、路面30から速やかに撤去することができる。すなわち、本実施形態では、固定枠部材11のビス締着孔19や路面30に形成されたガイド孔31に締着されているビス部材18を、例えば公知のビス打込み装置を逆回転させることによって引く抜くことで、固定枠部材11の固定状態を開放することにより、各々の薄型道路鋲20を、固定枠部材11と共に路面30から取り外して、容易に且つスムーズに撤去することができる。ビス部材18を引き抜いた後に路面30に残る孔は、例えばφ6mm程度と小さいので、そのままでも、車両の走行に影響を及ぼすことがない。固定枠部材11と共に路面30から撤去された薄型道路鋲20は、別の施工箇所のため新たに工事規制を行う際に、転用して用いることができる。
【0038】
したがって、本実施形態の薄型道路鋲の設置構造10によれば、自発光式の薄型道路鋲20を、例えば工事規制を行なう期間だけ、設置や撤去が容易で且つ位置ずれを生じない安定した状態で、仮設の設置物として路面30に簡易に設置しておくことが可能になる。
【0039】
また、本実施形態によれば、薄型道路鋲20は、上述のように、例えば押え板部14の張出し片部14aを弾性変形させつつ斜め横方向から差し込むようにして押し込んで、底面部をクッション基板部12の上面に重ねるようにしながら装着領域12aに装着することができると共に、例えば押え板部14の張出し片部14aを弾性変形させつつ斜め横方向に引き出すことで、固定枠部材11から取り外すことができ、したがって固定枠部材11に着脱可能に装着することができるので、固定枠部材11を路面30に固定したまま、薄型道路鋲20を適宜交換しながら、路面30に設置して用いることが可能になる。
【0040】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、固定枠部材のずれ止め枠板部は、接着剤を介してクッション基板部に一体として接合されている必要は必ずしも無く、固定枠部材の押え板部は、接着剤を介してずれ止め枠板部に一体として接合されている必要は必ずしもない。固定枠部材のクッション基板部、ずれ止め枠板部、及び押え板部は、好ましくはこれらが一体となった成形品として形成されていても良い。
【符号の説明】
【0041】
10 薄型道路鋲の設置構造
11 固定枠部材
12 クッション基板部
12a 装着領域
13 ずれ止め枠板部
13a 横ずれ防止用の段差部
13b 短辺部枠板部
13c 長辺部枠板部
13d 切欠き部分
14 押え板部
14a 張出し片部
18 ビス部材
18a 高いネジ山
18b 低いネジ山
19 ビス締着孔
20 薄型道路鋲
21a 周縁部
21 太陽電池
22 LED光源
22a 点滅部
30 路面
31 ガイド孔
図1
図2
図3