(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089335
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】配電自動化システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220609BHJP
H02J 3/24 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201664
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】前島 雄介
(72)【発明者】
【氏名】水迫 優晴
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064BA02
5G064BA07
5G064CB04
5G064CB06
5G064CB10
5G064CB11
5G064CB19
5G064DA03
5G066AA04
5G066AA09
5G066AE03
5G066AE09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成で、複数の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御可能な配電自動化システムを提供する。
【解決手段】配電自動化システムにおいて、配電系統が複数の管理エリア101、102に分割され、隣接する複数の管理エリアを1つの総括エリア100とし、該総括エリアの配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置21と、配電系統内の設備を制御可能な監視制御卓4と、を備える。監視制御卓は、総括エリア内の全配電系統状態を監視可能で、権限を付与された管理エリアの配電系統内の設備を制御可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統が複数の管理エリアに分割され、1つの管理エリアまたは隣接する複数の管理エリアを1つの総括エリアとし、該総括エリアの配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、
配電系統内の設備を制御可能な監視制御装置と、
を備え、前記監視制御装置は、前記総括エリア内の全配電系統状態を監視可能で、権限を付与された管理エリアの配電系統内の設備を制御可能となっている、
ことを特徴とする配電自動化システム。
【請求項2】
前記監視制御装置には、複数の管理エリアの権限を付与可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電自動化システム。
【請求項3】
隣接する管理エリアの境界を変更可能となっている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の配電自動化システム。
【請求項4】
隣接する総括エリアの前記系統状態記憶装置の配電系統状態を相互に授受可能で、
一方の総括エリアの前記監視制御装置は、他方の総括エリアの配電系統状態のうち前記一方の総括エリアの制御に必要な配電系統状態を監視可能となっている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の配電自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統を監視、制御する配電自動化システムに関し、特に、複数の営業所の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御可能な配電自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配電系統の監視や開閉器の制御などを行い、停電が発生すると配電系統上の停電エリアを特定したり、監視、制御の結果に基づいて、停電の発生や給電の復旧などの停電情報を生成したりする配電自動化システムが設置、運用されている。この配電自動化システムでは、従来、営業所ごとに監視、制御などが行われ、例えば、A営業所の監視制御卓では管理エリアA内の配電系統のみを監視、制御することができ、B営業所の監視制御卓では管理エリアB内の配電系統のみを監視、制御することができるようになっていた。
【0003】
このため、例えば、管理エリアAと管理エリアBとの境界に設置されている開閉器ABが、A営業所の監視制御卓では非遠隔制御扱いであり、B営業所の監視制御卓では遠隔制御扱いであるとする。この場合、管理エリアAで事故が発生した際に、A営業所の監視制御卓からは開閉器ABを遠隔制御することができず、B営業所・管理エリアBから自動逆送することができない。一方、B営業所の監視制御卓では、開閉器ABを遠隔制御可能ではあるが、管理エリアAでの事故を監視、認識することができないため、A営業所・管理エリアAへ自動逆送することができない。
【0004】
このため、営業所境界付近の配電線においても電力系統監視を遠方監視できる、という配電系統操作装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、自営業所管轄内の配電系統設備データと配電系統表示データを保有すると共に、隣接する他営業所管轄内の配電系統設備データと配電系統表示データを保有し、自営業所に設置された配電系統制御装置と、隣接する他営業所に設置された配電系統制御装置とを伝送路を介して接続し、相互に自営業所管轄内配電系統状態情報を送信し合う。また、必要な制御が隣接する配電系統に含まれる場合には、操作依頼出力手段により隣接する配電系統操作装置に操作依頼し、この操作依頼を受けて当該配電系統の該当機器を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の配電系統操作装置では、各営業所において自営業所と隣接営業所の配電系統設備データおよび配電系統表示データを保有しなければならず、設備負担が大きく費用も嵩む。また、必要な制御が隣接する配電系統に含まれる場合に、隣接する配電系統操作装置に操作依頼すれば、隣接する配電系統の状況などを詳細かつ適正に把握していなくても、該当機器を間接的に制御することができてしまう。この結果、不適切・不必要な制御が行われるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、複数の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御可能にする配電自動化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、配電系統が複数の管理エリアに分割され、1つの管理エリアまたは隣接する複数の管理エリアを1つの総括エリアとし、該総括エリアの配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置と、配電系統内の設備を制御可能な監視制御装置と、を備え、前記監視制御装置は、前記総括エリア内の全配電系統状態を監視可能で、権限を付与された管理エリアの配電系統内の設備を制御可能となっている、ことを特徴とする配電自動化システムである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の配電自動化システムにおいて、前記監視制御装置には、複数の管理エリアの権限を付与可能となっている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の配電自動化システムにおいて、隣接する管理エリアの境界を変更可能となっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の配電自動化システムにおいて、隣接する総括エリアの前記系統状態記憶装置の配電系統状態を相互に授受可能で、一方の総括エリアの前記監視制御装置は、他方の総括エリアの配電系統状態のうち前記一方の総括エリアの制御に必要な配電系統状態を監視可能となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、監視制御装置は、総括エリア内の全配電系統状態を監視可能で、権限を付与された管理エリアの配電系統内の設備を制御可能なため、複数の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。すなわち、監視制御装置は、権限を付与された管理エリアのみではなく、隣接する管理エリアの配電系統状態も監視可能なため、例えば、隣接する管理エリアでの事故発生を監視、認識した場合に、権限を付与された管理エリアの設備を制御することで、隣接する管理エリアへ自動逆送することが可能となる。しかも、監視制御装置は、権限を付与された管理エリアのみを制御可能で、権限を付与されていない管理エリアを制御できないため、不適切・不必要な制御が行われるのを防止、抑制することが可能となる。このようにして、複数の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となり、電力供給の信頼度、安定性が向上する。
【0013】
また、1つの管理エリアまたは複数の管理エリアを含む総括エリアの全配電系統状態が1つの系統状態記憶装置に記憶され、監視制御装置が全配電系統状態を監視可能となっている。つまり、管理エリアごとにこの管理エリアと隣接する管理エリアの配電系統状態を記憶する(管理エリアごとに系統状態記憶装置を備える)必要がないため、構成が簡易で、設備負担・費用を軽減することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、複数の管理エリアの権限を監視制御装置に付与可能なため、1つの監視制御装置で複数の管理エリアの設備を制御でき、設備費や人員を削減することができる。しかも、緊急時や系統状態などに応じて、1つの監視制御装置で複数の管理エリアの設備を制御することで、矛盾する制御や不適切・不必要な制御などを防止、抑制することが可能となる。つまり、複数の管理エリアにまたがる配電系統をより適正に監視、制御することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、隣接する管理エリアの境界を変更可能なため、各営業所が管理する管理エリアの範囲が実際に変わった場合などに、それに合わせて本配電自動化システム上の管理エリアの境界を変更する。これにより、変更後の管理エリアに対応する配電系統状態を監視制御装置で適正に監視したり、変更後の管理エリアの設備を監視制御装置で適正に制御したりすることができる。このように、各営業所が管理する管理エリアの範囲が実際に変わったりしても、複数の管理エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、一方の総括エリアの監視制御装置で他方の総括エリアの配電系統状態が監視可能なため、隣接する総括エリア間においても配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。すなわち、1つの総括エリア内だけではなく、隣接する複数の総括エリアにまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。しかも、他方の総括エリアの配電系統状態のうち一方の総括エリアの制御に必要な配電系統状態のみが監視可能となっており、他方の総括エリアの全配電系統状態を授受する必要がないため、送受信量および記憶量を削減することができ、構成が簡易となる。一方、一方の総括エリアの制御に必要な配電系統状態は監視可能なため、配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態に係る配電自動化システムにおいて、権限によってどの管理エリアを監視、制御できるかを示す第1の説明図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係る配電自動化システムを示す概略構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態に係る配電自動化システムにおける配電系統の分割状態を示す図である。
【
図4】
図2の配電自動化システムにおいて、権限によってどの管理エリアを監視、制御できるかを示す第2の説明図である。
【
図5】
図2の配電自動化システムにおいて、管理エリアの境界を変更した場合に、権限によってどの管理エリアを監視、制御できるかを示す第3の説明図である。
【
図6】
図2の配電自動化システムにおいて、権限によってどの総括エリアを監視、制御できるかを示す第4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図6は、この発明の実施の形態を示し、
図2は、この実施の形態に係る配電自動化システム1を示す概略構成図である。この配電自動化システム1は、配電系統を監視、制御するシステムであり、複数の営業所A、B、C…の管理エリア101、102、201…にまたがる配電系統を監視、制御する。
【0020】
ここで、
図3に示すように、配電系統全体が複数の管理エリア101、102、201…に分割され、1つの管理エリア101、102、201…または隣接する複数の管理エリア101、102、201…が1つの総括エリア100、200…として関連づけられている。この実施の形態では、管理エリア101と管理エリア102とを含むエリアが総括エリア100とされ、管理エリア201を含むエリアが総括エリア200とされている場合について、主として説明する。
【0021】
配電自動化システム1は、後述する監視、制御構成が従来と異なり、従来と同等の構成については詳述を省略するが、概略次のような構成となっている。すなわち、
図2に示すように、配電自動化サーバ2と各遠制親局(配電遠制装置)3とが通信自在に接続され、配電自動化サーバ2と監視制御卓(監視制御装置)4とが通信自在に接続されている。また、各電柱Pに取り付けられた遠制子局41が遠制親局3と通信自在に接続され、遠制子局41によって電柱P上の遠制開閉器42が開閉制御されるようになっている。
【0022】
そして、配電線の運用状態(配電系統状態)を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、遠制開閉器42等を制御しながら停電を引き起こした事故箇所を特定し、監視制御卓4からの操作や自動によって事故区間以外の配電線への配電(自動逆送)を行う。このようにして、遠制開閉器42等の開閉によって停電エリアが確定され、遠制開閉器42等を境にして停電エリアと非停電エリアとが分かれることになる。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、監視制御卓4からの操作や自動によって、停電が発生した地域に対して周辺の配電線からの配電(自動逆送)を行ったりするものである。
【0023】
ここで、運転制御センターに配電自動化サーバ2が設置され、各営業所A、B、C…に遠制親局3が設置されている。この実施の形態では、総括エリア100においては、営業所Aが運転制御センターつまり総括営業所であり、営業所Bが一般営業所とする。そして、総括営業所Aの遠制親局3が管理エリア101の遠制子局41と接続され、一般営業所Bの遠制親局3が管理エリア102の遠制子局41と接続されている。また、
図2では、2つの監視制御卓4が総括営業所Aに配設されている場合について図示しているが、後述するように、一方の監視制御卓4を総括営業所Aに配設し、他方の監視制御卓4を一般営業所Bに配設してもよい。
【0024】
また、総括エリア200においては、上記のように、管理エリア201のみを含むため、後述する
図6に示すように、管理エリア201つまり総括エリア200を監視、制御する営業所Cが総括営業所となり、配電自動化サーバ2と遠制親局3が設置されている。
【0025】
次に、本配電自動化システム1の特徴的な監視、制御構成について説明する。
【0026】
まず、各総括エリア100、200…の配電系統状態を記憶する系統状態記憶装置(データベース)21を総括エリア100、200…ごと(総括営業所A、C…ごと)に備える。すなわち、配電系統図上で上記のような管理エリア101、102、201…や総括エリア100、200…が分割、設定され、各総括エリア100、200…に対して監視した配電系統状態が、逐次リアルタイムに総括エリア100、200…ごとに各系統状態記憶装置21に記憶される。
【0027】
例えば、総括エリア100の場合、
図1に示すように、管理エリア101、102を含む総括エリア100の配電系統状態が、総括営業所Aに配設された系統状態記憶装置21に記憶される。同様に、総括エリア200の場合、
図6に示すように、管理エリア201を含む総括エリア200の配電系統状態が、総括営業所Cに配設された系統状態記憶装置21に記憶される。
【0028】
ここで、系統状態記憶装置21は、配設された総括営業所A、C…の配電自動化サーバ2とアクセス自在に接続され、配電自動化サーバ2やその他の装置からの入力によって、配電系統図上での管理エリア101、102、201…を任意に分割、設定できるようになっている。従って、配電自動化サーバ2などからの入力によって、隣接する管理エリア101、102、201…の境界を変更可能となっている。例えば、管理エリア101、102、201…の境界を示す開閉器(遠制、非遠制を含む)を任意に設定、変更できるようになっている。また、どの管理エリア101、102、201…をどの総括エリア100、200…に所属させるかを、配電自動化サーバ2などからの入力によって可能となっている。
【0029】
監視制御卓4は、配電系統状態を監視・モニタリング可能で配電系統内の設備を制御可能な装置であり、1つの総括エリア100、200…に対して少なくとも1台の監視制御卓4を備える。この監視制御卓4は、設定されたいずれかの総括エリア100、200…つまり総括営業所A、C…に所属する。ここで、監視制御卓4を総括営業所A、C…のみに配設してもよいし、一般営業所B…にも配設してもよい。例えば、
図1に示すように、総括営業所Aに2台の監視制御卓4を配設し、一般営業所Bに1台の監視制御卓4を配設してもよい。
【0030】
この監視制御卓4は、所属する総括営業所A、C…の配電自動化サーバ2と通信自在に接続され、所属する総括エリア100、200…内の全配電系統状態を監視可能となっている。すなわち、どの営業所A、B、C…に配設されていても、所属する総括営業所A、C…が管理する総括エリア100、200…の全配電系統状態を、系統状態記憶装置21から読み出しモニタに表示して監視できるようになっている。例えば、上記の
図1の場合、総括営業所Aに配設された監視制御卓4も一般営業所Bに配設された監視制御卓4も同じ画面、つまり、総括エリア100内の全配電系統状態(例えば、
図1の変電所Aから変電所Bまでの全状態)がモニタに表示されて監視することができる。
【0031】
また、監視制御卓4は、権限を付与された管理エリア101、102、201…の配電系統内の設備を制御可能となっている。すなわち、どの監視制御卓4によってどの管理エリア101、102、201…を制御可能とするかを、各監視制御卓4や配電自動化サーバ2などから設定可能となっている。この際、ソフトウエアでインターロックをかけて、所定の監視制御卓4からは所定の管理エリア101、102、201…しか制御できないようにしてもよいし、オペレータに権限を与え、間接的に監視制御卓4に権限を付与してもよい。例えば、オペレータが任意の監視制御卓4で所定のIDやパスワードなどを入力することで、所定の管理エリア101、102、201…を制御できるようにしてもよい。
【0032】
この結果、例えば、上記の
図1の場合、総括営業所Aに配設された一方の監視制御卓4(4-1)は、管理エリア101の設備のみを制御可能で、管理エリア102の設備は制御できない。一方、総括営業所Aに配設された他方の監視制御卓4(4-2)と一般営業所Bに配設された監視制御卓4(4-3)は、管理エリア102の設備のみを制御可能で、管理エリア101の設備は制御できないようになっている。
【0033】
さらに、監視制御卓4には、複数の管理エリア101、102、201…の権限を付与可能となっている。すなわち、上記と同様にインターロックなどによって、1台の監視制御卓4に対して複数の管理エリア101、102、201…の権限を付与して、1台の監視制御卓4で複数の管理エリア101、102、201…の配電系統内の設備を制御可能となっている。ただし、監視制御卓4が所属する総括エリア100、200…内に限り、所属する総括エリア100、200…を超えて制御することはできない。例えば、
図1と同様に監視制御卓4が配設されている場合に、
図4に示すように、総括営業所Aに配設された一方の監視制御卓4(4-1)に2つの管理エリア101、102の権限を付与して、一方の監視制御卓4(4-1)で2つの管理エリア101、102の設備を制御できるようにする。
【0034】
また、上記のようにして、隣接する管理エリア101、102、201…の境界が変更された場合、これに伴って、各監視制御卓4で制御可能な設備も変わる。例えば、上記
図1のように各監視制御卓4に権限が付与され、
図5に示すように、管理エリア101と管理エリア102との境界を示す遠制開閉器42が管理エリア102・変電所B側に移行した(管理エリア101が管理エリア102側に拡張した)とする。この場合、総括営業所Aの他方の監視制御卓4(4-2)と一般営業所Bの監視制御卓4(4-3)は、変更前は変電所B側の3つの遠制開閉器42(42-1、42-2、42-3)を制御できるが、変更後は1つの遠制開閉器42(42-1)のみを制御できる。これに対して、総括営業所Aの一方の監視制御卓4(4-1)は、変更前は変電所B側の3つの遠制開閉器42(42-1、42-2、42-3)を制御できないが、変更後は2つの遠制開閉器42(42-2、42-3)を制御できることになる。
【0035】
また、隣接する総括エリア100、200…の系統状態記憶装置21の配電系統状態を相互に授受可能で、一方の総括エリア100、200…の監視制御卓4は、他方の総括エリア100、200…の配電系統状態のうち一方の総括エリア100、200…の制御に必要な配電系統状態を監視可能となっている。すなわち、隣接する総括エリア100、200…の配電自動化サーバ2同士が通信自在に接続され、相互に、一方の配電自動化サーバ2は、自総括エリア100、200…の制御に必要な他方の総括エリア100、200…の配電系統状態を、逐次リアルタイムに他方の配電自動化サーバ2の系統状態記憶装置21から授受・受信して、系統状態記憶装置21に記憶する。そして、常時あるいは必要に応じて、他方の総括エリア100、200…の配電系統状態を監視制御卓4のモニタに表示して監視できるようになっている。
【0036】
ここで、自総括エリア100、200…の制御に必要な他方の総括エリア100、200…の配電系統状態とは、配電系統の構成や状態などによるが、この実施の形態では、他方の総括エリア100、200…(特に、隣接部周辺)が充電されているか否かを示すダミー電源の状態と、他方の総括エリア100、200…との境界に設置されている開閉器(遠制、非遠制を含む)の状態と、を含む簡易配電系統状態である。例えば、
図6に示すように、総括エリア100(例えば、総括営業所A)の監視制御卓4には、自総括エリア100の全配電系統状態100Sと、隣接総括エリア200のダミー電源と境界の開閉器(例えば、遠制開閉器42)の状態を示す簡易配電系統状態200S´が表示され、監視可能となる。同様に、総括エリア200(総括営業所C)の監視制御卓4には、自総括エリア200の全配電系統状態200Sと、隣接総括エリア100のダミー電源と境界の開閉器(例えば、遠制開閉器42)の状態を示す簡易配電系統状態100S´が表示され、監視可能となる。
【0037】
このような構成の配電自動化システム1によれば、監視制御卓4は、所属する総括エリア100、200…内の全配電系統状態を監視可能で、権限を付与された管理エリア101、102、201…の配電系統内の設備を制御可能なため、複数の管理エリア101、102、201…にまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。すなわち、例えば、
図1に示す一般営業所Bの監視制御卓4は、権限を付与された管理エリア102のみではなく、隣接する管理エリア101の配電系統状態も監視することが可能である。このため、例えば、隣接する管理エリア101での事故発生を監視、認識した場合に、権限を付与された管理エリア102の設備(例えば、管理エリア101との境界に位置する遠制開閉器42)を制御することで、隣接する管理エリア101へ自動逆送することが可能となる。
【0038】
しかも、監視制御卓4は、権限を付与された管理エリア101、102、201…のみを制御可能で、権限を付与されていない管理エリア101、102、201…を制御できないため、不適切・不必要な制御が行われるのを防止、抑制することが可能となる。このようにして、複数の管理エリア101、102、201…にまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となり、電力供給の信頼度、安定性が向上する。
【0039】
また、1つの管理エリア101、102、201…または複数の管理エリア101、102、201…を含む総括エリア100、200…の全配電系統状態が1つの系統状態記憶装置21に記憶され、各監視制御卓4が所属する総括エリア100、200…の全配電系統状態を監視可能・共有可能となっている。例えば、
図1において、1つの総括エリア100に対して1つの系統状態記憶装置21を備え、総括営業所Aの監視制御卓4と一般営業所Bの監視制御卓4はともに、総括エリア100の全配電系統状態を監視可能・共有可能となっている。このように、管理エリア101、102、201…(営業所A、B、C…)ごとに、この管理エリア101、102、201…と隣接する管理エリア101、102、201…の配電系統状態を記憶する(管理エリア101、102、201…ごとに系統状態記憶装置21を備える)必要がないため、構成が簡易で、設備負担・費用を軽減することが可能となる。
【0040】
また、
図4に示すように、複数の管理エリア101、102の権限を1台の監視制御卓4に付与可能なため、1台の監視制御卓4で複数の管理エリア101、102の設備を制御でき、設備費や人員を削減することができる。しかも、緊急時や系統構成、状態などに応じて、1台の監視制御卓4(一人のオペレータ)で複数の管理エリア101、102の設備を制御することで、矛盾する制御や不適切・不必要な制御などを防止、抑制することが可能となる。つまり、複数の管理エリア101、102にまたがる配電系統をより適正に監視、制御することが可能となる。
【0041】
さらに、
図5に示すように、隣接する管理エリア101、102の境界を変更可能なため、各営業所A、Bが管理する管理エリア101、102の範囲が実際に変わった場合などに、それに合わせて本配電自動化システム1上の管理エリア101、102の境界を変更する。これにより、変更後の管理エリア101、102に対応する配電系統状態を監視制御卓4で適正に監視したり、変更後の管理エリア101、102の設備を監視制御卓4で適正に制御したりすることができる。このように、各営業所A、Bが管理する管理エリア101、102の範囲が実際に変わったりしても、複数の管理エリア101、102にまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。
【0042】
また、
図6に示すように、一方の総括エリア100、200の監視制御卓4で他方の総括エリア100、200の配電系統状態が監視可能なため、隣接する総括エリア100、200間においても配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。すなわち、1つの総括エリア100、200内だけではなく、隣接する複数の総括エリア100、200にまたがる配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。しかも、他方の総括エリア100、200の配電系統状態のうち一方の総括エリア100、200の制御に必要な配電系統状態のみ、つまり、ダミー電源と境界の開閉器との状態を示す簡易配電系統状態100S´、200S´のみが監視可能となっている。すなわち、他方の総括エリア100、200の全配電系統状態を授受する必要がないため、送受信量および記憶量を削減することができ、構成が簡易となる。一方、一方の総括エリア100、200の制御に必要な配電系統状態つまり簡易配電系統状態100S´、200S´は監視可能なため、配電系統を適正に監視、制御することが可能となる。
【0043】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、配電系統の分割構成や総括エリア100、200…の構成などは、上記のものに限らず、例えば、総括エリアが3つ以上の隣接する管理エリアで構成されていてもよい。この場合、連鎖的に隣接する管理エリアであってもよく、いずれかの管理エリアと隣接していればよく、すべての管理エリアに隣接する必要はない。
【符号の説明】
【0044】
1 配電自動化システム
2 配電自動化サーバ
21 系統状態記憶装置
3 遠制親局(配電遠制装置)
4 監視制御卓(監視制御装置)
41 遠制子局
42 遠制開閉器
101、102、201 管理エリア
100、200 総括エリア