(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089336
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20220609BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220609BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220609BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20220609BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/64 A
H01M4/13
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201665
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃大
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD08
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ14
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029HJ12
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA04
5H050FA05
5H050FA15
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】非水電解液を捲回電極体に効率よく浸透させつつ、捲回電極体の強度を確保する。
【解決手段】二次電池100は、正極シート50および負極シート60が少なくとも重ね合わされて、捲回軸W1を中心に所定の捲回方向D11に捲回された捲回電極体20と、非水電解液10と、捲回電極体20および非水電解液10を収容する電池ケース30と、を備えている。正極シート50および負極シート60は、それぞれシート状の集電体82と、集電体82に形成され、電極活物質を含む電極活物質層84と、を有する。正極シート50と負極シート60とが重なる重なり領域AR1における捲回軸方向D12の中央部分において、正極シート50および負極シート60のうちの少なくとも何れか一方の集電体82にスリット90が形成され、スリット90は、当該中央部分を除いた集電体82の部分には形成されていない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートとが少なくとも重ね合わされて、捲回軸を中心に所定の捲回方向に捲回された捲回電極体と、
非水電解液と、
前記捲回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、
を備え、
前記正極シートおよび前記負極シートは、それぞれシート状の集電体と、前記集電体に形成され、電極活物質を含む電極活物質層と、を有し、
前記正極シートと前記負極シートとが重なる領域における捲回軸方向の中央部分において、前記正極シートおよび前記負極シートのうちの少なくとも何れか一方の前記集電体にスリットが形成され、
前記スリットは、前記中央部分を除いた前記集電体の部分には形成されていない、二次電池。
【請求項2】
前記スリットは、前記正極シートおよび前記負極シートの両方の前記集電体に形成されている、請求項1に記載された二次電池。
【請求項3】
前記スリットが形成された前記集電体の部分には、前記電極活物質層が形成されていない、請求項1または2に記載された二次電池。
【請求項4】
前記スリットは、前記捲回方向に沿って前記集電体に複数形成されている、請求項1から3までの何れか1つに記載された二次電池。
【請求項5】
前記捲回電極体は、前記正極シートと、前記負極シートと、セパレータとが重ね合わされて捲回されており、
前記スリットは、前記正極シートおよび前記負極シートと重なる前記セパレータの部分に形成されている、請求項1から4までの何れか1つに記載された二次電池。
【請求項6】
前記スリットは、前記捲回電極体における前記捲回軸よりも、前記捲回電極体の長手方向の一方側に位置する前記集電体の部分に形成され、かつ、前記捲回電極体における前記捲回軸よりも、前記長手方向の他方側に位置する前記集電体の部分には形成されていない、請求項1から5までの何れか1つに記載された二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、捲回電極体を備えた二次電池が開示されている。上記捲回電極体は、長尺状の金属箔集電体の両面に、粉末状活物質を含む活物質層が形成されている。上記金属箔集電体には、全体に亘って、複数の不連続な線状のスリットが形成されている。
【0003】
特許文献1に開示された二次電池を作製する際、まず金属箔集電体の一方の面に活物質層を形成する。その後、金属箔集電体の他方の面から金属箔集電体に複数のスリットを形成する。そして、金属箔集電体の他方の面に活物質層を形成する。その結果、金属箔集電体を捲回する際、金属箔集電体は、スリットによって活物質層の伸びに追従するため、ねじれや歪みを発生させ難くすることができる。
【0004】
また、特許文献2には、二次電池において、非水電解液を捲回電極体に浸透させる技術が開示されている。特許文献2に開示された二次電池では、捲回電極体の正極板および負極板において、捲回軸方向の一方の端部に、活物質層が形成されていない未塗布部が設けられている。この未塗布部に、捲回軸方向に延びたスリットを複数形成する。その結果、非水電解液がスリットを通じて捲回電極体に入り込み、非水電解液を捲回電極体に浸透させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-192726号公報
【特許文献2】特開2006-221817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に開示された二次電池では、捲回電極体の捲回軸方向の両端部には、非水電解液を浸透させ易いが、捲回電極体の全体に亘って非水電解液を浸透させるためには、時間を要した。また、特許文献1に開示された二次電池では、仮に金属箔集電体のスリットから非水電解液を通過させて、捲回電極体に浸透させることが可能である場合であっても、金属箔集電体の全体に亘ってスリットが形成されているため、捲回電極体に対する強度を確保し難い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで提案される二次電池は、捲回電極体と、非水電解液と、電池ケースとを備えている。捲回電極体は、正極シートと、負極シートとが少なくとも重ね合わされて、捲回軸を中心に所定の捲回方向に捲回されている。電池ケースは、捲回電極体および非水電解液を収容する。正極シートおよび負極シートは、それぞれシート状の集電体と、集電体に形成され、電極活物質を含む電極活物質層と、を有している。正極シートと負極シートとが重なる領域における捲回軸方向の中央部分において、正極シートおよび負極シートのうちの少なくとも何れか一方の集電体にスリットが形成されている。スリットは、上記中央部分を除いた集電体の部分には形成されていない。
【0008】
ここで提案される二次電池によれば、捲回電極体における捲回軸方向の両端は開口している。非水電解液は、捲回電極体における捲回軸方向の両端の開口以外に、集電体に形成されてスリットを通じて、捲回電極体内に浸透する。よって、非水電解液を捲回電極体に浸透させ易くすることができる。また、スリットは、捲回軸方向の中央部分以外の集電体82の部分に形成されていないため、捲回電極体の強度を確保することができる。
【0009】
ここで提案される二次電池では、スリットは、正極シートおよび負極シートの両方の集電体に形成されていてもよい。スリットが形成された集電体の部分には、電極活物質層が形成されていなくてもよい。また、スリットは、捲回方向に沿って集電体に複数形成されていてもよい。
【0010】
ここで提案される二次電池では、捲回電極体は、正極シートと、負極シートと、セパレータとが重ね合わされて捲回されていてもよい。この場合、スリットは、正極シートおよび負極シートと重なるセパレータの部分に形成されていてもよい。
【0011】
ここで提案される二次電池では、スリットは、捲回電極体における捲回軸よりも、捲回電極体の長手方向の一方側に位置する集電体の部分に形成され、かつ、捲回電極体における捲回軸よりも、長手方向の他方側に位置する集電体の部分には形成されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る二次電池の内部構造を模式的に示した断面図である。
【
図2】実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図であり、一部が展開された図である。
【
図3】正極シート、負極シートおよびセパレータを展開した状態を示す模式図である。
【
図4】変形例に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
【
図5】変形例に係る正極シートを展開した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ここで開示される二次電池の一実施形態について図面を参照して説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施されることができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0014】
本明細書において、「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池および二次電池を含む概念である。「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などのいわゆる蓄電池を包含する。以下、二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池を例示して、ここで開示される二次電池について詳細に説明する。ただし、ここで開示される二次電池は、ここで説明される実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る二次電池100の内部構造を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、電池ケース30と、捲回電極体20と、非水電解液10とを備えた密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0016】
電池ケース30は、捲回電極体20および非水電解液10を内部に密閉した状態で収容する。本実施形態では、電池ケース30の形状は、直方体形状であり、扁平な角形である。電池ケース30は、本体31と、蓋体32とを備えている。本体31は、一端(例えば上端)に開口部(図示せず)を有する角形の中空の部材である。蓋体32は、本体31の上記開口部を塞ぐ板状のものである。蓋体32は、本体31に取り付けられている。
【0017】
蓋体32には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、安全弁36とが設けられている。安全弁36は、電池ケース30の内圧が所定圧力以上に上昇した場合、当該内圧を開放するものである。また、電池ケース30には、非水電解液10を本体31内に注入するための注入口(図示せず)が設けられている。電池ケース30の材質は特に限定されるものではないが、電池ケース30の材質としては、例えばアルミニウムなどの軽量で熱伝導性が高い金属材料が用いられる。
【0018】
図2は、本実施形態に係る二次電池100の捲回電極体20の構成を示す模式図である。
図2に示すように、捲回電極体20は、長尺状の正極シート50と、長尺状の負極シート60と、長尺状のセパレータ70とを有する。本実施形態では、セパレータ70は、第1セパレータ71と、第2セパレータ72とを有し、2枚のセパレータによって構成されている。捲回電極体20では、正極シート50と、負極シート60とが少なくとも重ね合わされて、捲回軸W1を中心に所定の捲回方向D11に捲回されたものである。本実施形態に係る捲回電極体20では、正極シート50および負極シート60と共に、セパレータ70が重ね合わされて捲回されている。詳しくは、正極シート50、第1セパレータ71、負極シート60、および、第2セパレータ72の順に捲回方向D11に向きを揃えて重ねられ、かつ、捲回軸W1周りに捲回されている。
【0019】
正極シート50および負極シート60は、それぞれ集電体82と、電極活物質を含む電極活物質層84とを有する。集電体82は長尺状であり、かつ、シート状のものである。電極活物質層84は、捲回方向D11に延びるように、集電体82の片面または両面(本実施形態では両面)に形成されている。
【0020】
本実施形態では、正極シート50において、集電体82のことを正極集電体52ともいい、電極活物質層84のことを正極活物質層54ともいう。正極活物質層54には、電極活物質の一例である正極活物質が含まれている。ここでは、シート状の正極集電体52における捲回軸W1が延びる方向(ここでは捲回軸方向D12)の一端側(
図2では左端側)の端部には、正極活物質層54が形成されていない未形成部52aが設けられている。ここで、捲回軸方向D12とは、展開したときの正極シート50の短手方向に沿った方向のことである。正極シート50の未形成部52aは、正極集電体52が露出した部分である。
図1に示すように、正極シート50の未形成部52aには、正極集電板42aが接合されている。正極集電板42aには、正極端子42が電気的に接続されている。
【0021】
本実施形態では、正極集電体52には、この種の二次電池の正極集電体として用いられるものを特に制限なく使用し得る。正極集電体52として、良好な導電性を有する金属製の正極集電体が用いられることが好ましい。正極集電体52として、例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼などの金属材を採用することが可能である。特にアルミニウム(例えばアルミニウム箔)を正極集電体52として用いることが好ましい。
【0022】
正極活物質層54に含まれる正極活物質として、例えば層状構造やスピネル構造などのリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4など)が挙げられる。正極活物質層54は、正極活物質と、必要に応じて用いられる材料(例えば導電材、バインダなど)と、を適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調整し、当該組成物の適当量を正極集電体52の表面に付与し、乾燥することによって形成されることができる。
【0023】
図2に示すように、負極シート60において、集電体82のことを負極集電体62ともいい、電極活物質層84のことを負極活物質層64ともいう。負極活物質層64には、電極活物質の一例である負極活物質が含まれている。ここでは、シート状の負極集電体62における捲回軸W1が延びる方向の他端側(
図2では右端側)の端部には、負極活物質層64が形成されていない未形成部62aが設けられている。負極シート60の未形成部62aは、負極集電体62が露出した部分である。
図1に示すように、負極シート60の未形成部62aには、負極集電板44aが接合されている。負極集電板44aには、負極端子44が電気的に接続されている。
【0024】
本実施形態では、負極集電体62には、この種の二次電池の負極集電体として用いられるものを特に制限なく使用し得る。負極集電体62として、良好な導電性を有する金属製の負極集電体が用いられることが好ましい。負極集電体62として、例えば銅(例えば銅箔)、または、銅を主体とする合金を用いることができる。
【0025】
負極活物質層64に含まれる負極活物質として、例えば少なくとも一部にグラファイト構造(例えば層状構造)を含む粒子状(あるいは球状、鱗片状)の炭素材料、リチウム遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12等のリチウムチタン複合酸化物)、リチウム遷移金属複合窒化物などが挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質と、必要に応じて用いられる材料(例えばバインダなど)と、を適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調整し、当該組成物の適当量を負極集電体62の表面に付与し、乾燥することによって形成されることができる。
【0026】
図2に示すように、セパレータ70(詳しくは第1セパレータ71および第2セパレータ72)として、従来公知の多孔質シートから成るセパレータを特に制限なく使用することができる。セパレータ70として、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミドなどの樹脂から成る多孔質シート(例えばフィルム、不織布など)が挙げられる。かかる多孔質シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えばPE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、多孔質シートの片面または両面に、多孔質の耐熱層を備える構成のものであってもよい。この耐熱層は、例えば無機フィラーとバインダとを含む層(例えばフィラー層)であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカなどを好ましく採用し得る。
【0027】
図1に示すように、捲回電極体20と共に電池ケース30に収容される非水電解液10は、適当な非水溶媒に支持塩を含有するものであり、従来公知の非水電解液を特に制限なく採用することができる。非水溶媒として、例えばエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などを用いることができる。また、支持塩としては、例えばリチウム塩(例えば、LiBOB、LiPF
6など)を好適に用いることができる。本実施形態では、支持塩として、LiBOBが採用されている。この場合、非水電解液10におけるLiBOB含有量は、0.3wt%~0.6wt%であることが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態に係る捲回電極体20について更に詳しく説明する。
図2に示すように、捲回電極体20は、第1R部21と、第2R部22と、扁平部23とを有している。第1R部21および第2R部22は、捲回軸方向D12から見たときに、アールが形成された捲回電極体20の部分である。
図1に示すように、第1R部21は、捲回電極体20における捲回軸W1の方向(ここでは捲回軸方向D12)に直交する長手方向D13の一端部を構成している。第2R部22は、捲回軸W1を挟んで第1R部21と対向しており、捲回電極体20における長手方向D13の他端部を構成している。扁平部23は、第1R部21と第2R部22との間に配置されており、
図2に示すように、互いに対向する2つの扁平表面24を有する。扁平表面24は、長手方向D13に延びた平らな面である。
【0029】
本実施形態では、捲回電極体20は、捲回軸方向D12に比較的に長いものである。例えば本実施形態に係る捲回電極体20において、捲回軸方向D12の長さは、長手方向D13の長さよりも2倍~100倍の範囲であり、好ましくは5倍~50倍の範囲であり、特に好ましくは10倍~35倍の範囲である。
【0030】
図2に示すように、正極シート50と負極シート60とが重なる重なり領域AR1において、正極シート50および負極シート60のうちの少なくとも何れか一方の集電体82にスリット90が形成されている。本実施形態では、スリット90は、正極シート50および負極シート60の両方の集電体82(詳しくは正極集電体52および負極集電体62)に形成されている。更に、スリット90は、正極シート50および負極シート60と重なる(言い換えると、重なり領域AR1に重なる)セパレータ70の部分に形成されている。すなわち、スリット90は、第1セパレータ71および第2セパレータ72にも形成されている。以下、正極集電体52、負極集電体62、セパレータ70に形成されたスリット90のことを、それぞれ正極スリット91、負極スリット92、セパレータスリット93ともいう。
【0031】
図3は、正極シート50、負極シート60およびセパレータ70を展開した状態を示す模式図である。本実施形態では、
図3に示すように、スリット90は、集電体82(詳しくは、正極集電体52と負極集電体62)、および、セパレータ70のそれぞれにおいて、捲回方向D11に並ぶように複数形成されている。詳しくは、正極スリット91は、捲回方向D11に並ぶように正極集電体52に複数形成されている。同様に、負極スリット92は、捲回方向D11に並ぶように負極集電体62に複数形成され、セパレータスリット93は、捲回方向D11に並ぶようにセパレータ70に複数形成されている。これらスリット90は、不連続に並んでいる。
【0032】
ここでは、スリット90は、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいて、捲回方向D11に沿って1列に並んでいる。ただし、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいてスリット90が並ぶ列数は、1つに限定されず、2列であってもよく、3列であってもよい。すなわち、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいて、スリット90が並ぶ列数は、複数であってもよい。
【0033】
上述のように、
図2に示すように、正極シート50と負極シート60とが重なる領域のことを重なり領域AR1という。この重なり領域AR1は、正極集電体52と負極集電体62とが重なる領域であり、更に、セパレータ70が重なる領域でもある。スリット90は、重なり領域AR1に位置する集電体82(詳しくは正極集電体52および負極集電体62)の部分、および、セパレータ70の部分に形成されている。ここでは、スリット90は、重なり領域AR1における捲回軸方向D12の中央部分に位置する集電体82の部分、および、セパレータ70の部分に形成されている。また、スリット90は、捲回軸方向D12の中央部分以外の集電体82の部分、および、セパレータ70の部分には、形成されていない。ここで、捲回軸方向D12の中央部分とは、例えば集電体82を捲回軸方向D12に三等分したときの中央部分のことをいう。
【0034】
本実施形態では、
図2に示すように、重なり領域AR1における捲回軸方向D12の中心C1を通過する捲回方向D11に沿った中心軸W2上に位置する集電体82の部分、および、セパレータ70の部分に、スリット90が形成されている。ここでは、捲回電極体20が捲回された状態において、正極スリット91の捲回軸方向D12の位置と、負極スリット92の捲回軸方向D12の位置と、セパレータスリット93の捲回軸方向D12の位置とは、同じである。
【0035】
本実施形態では、
図3に示すように、スリット90は、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいて、捲回したときにおける巻き始め側(例えば
図3の下側)の端から巻き終わり側(例えば
図3の上側)の端に亘って、所定の間隔(例えば一定の間隔)で形成されている。しかしながら、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいて、捲回方向D11の一部分において、スリット90が形成されていなくてもよい。例えば集電体82に形成されたスリット90を例にすると、集電体82における巻き始めから所定の巻き数までの部分にのみ、スリット90が形成されてもよい。また、集電体82における巻き終わりから所定の巻き数までの部分にのみ、スリット90が形成されてもよい。
【0036】
なお、スリット90の形状や大きさは特に限定されない。本実施形態では、複数のスリット90は、同じ形状であり、同じ大きさである。しかしながら、複数のスリット90のうち一部のスリット90は、他のスリット90と形状が異なっていてもよいし、大きさが異なっていてもよい。言い換えると、本実施形態では、正極スリット91と、負極スリット92と、セパレータスリット93は、同じ形状および同じ大きさであるが、形状が異なっていてもよいし、大きさが異なっていてもよい。また、複数の正極スリット91(または、複数の負極スリット92、もしくは、セパレータスリット93)において、同じ形状および同じ大きさであるが、一部のスリットが異なる形状であってもよいし、異なる大きさであってもよい。
【0037】
本実施形態では、
図3に示すように、スリット90(詳しくは正極スリット91、負極スリット92およびセパレータスリット93)は、捲回方向D11の延びた切り込みである。スリット90の形状は、ライン状である。スリット90の長さ(詳しくは捲回方向D11の長さ)は、1mm~50mmであり、好ましくは1mm~10mmであり、特に好ましくは1mm~5mmである。ただし、スリット90は、捲回方向D11の長さが短い、いわゆる点状のものであってもよい。本実施形態では、スリット90とは、非水電解液10を通過させるものであり、かつ、集電体82やセパレータ70を貫通させるものをいい、上記のように点状の孔もスリット90に含まれるものとする。本実施形態では、集電体82およびセパレータ70のそれぞれにおいて、捲回方向D11に並ぶスリット90の間隔は、同じであるが、異なっていてもよい。
【0038】
本実施形態では、スリット90が形成された集電体82の部分には、電極活物質層84が形成されていない。ここでは、スリット90に沿って電極活物質層84が形成されていない集電体82の部分を、スリット側未形成部86という。スリット側未形成部86は、正極集電板42a(
図1参照)や負極集電板44a(
図1参照)が接合される未形成部52a、62aとは異なるものである。ここでは、
図3に示すように、正極シート50におけるスリット側未形成部86のことを、正極スリット側未形成部56ともいい、負極シート60におけるスリット側未形成部86のことを、負極スリット側未形成部66ともいう。
【0039】
本実施形態では、スリット側未形成部86にスリット90が形成されている。スリット側未形成部86は、捲回方向D11に沿って延びている。スリット側未形成部86の捲回軸方向D12の両側には、集電体82が配置されている。なお、本実施形態では、スリット側未形成部86は、捲回方向D11に連続しているが、例えば捲回方向D11に並んだスリット90の間の集電体82の部分には、スリット側未形成部86が設けられておらず、電極活物質層84が形成されてもよい。すなわち、スリット側未形成部86は、少なくともスリット90が形成された集電体82の部分に設けられ、捲回方向D11に不連続に設けられてもよい。
【0040】
本実施形態では、スリット側未形成部86の捲回軸方向D12の長さは、正極シート50の未形成部52aの捲回軸方向D12の長さよりも短いが、長くてもよい。また、スリット側未形成部86の捲回軸方向D12の長さは、負極シート60の未形成部62aの捲回軸方向D12の長さよりも短いが、長くてもよい。ただし、スリット側未形成部86の捲回軸方向D12の長さは、未形成部52a、62aの捲回軸方向D12の長さと同じであってもよい。また、スリット側未形成部86の捲回軸方向D12の長さは、1mm~10mmであり、好ましくは1mm~5mmであり、特に好ましくは1mm~3mmである。
【0041】
本実施形態では、
図2に示すように、捲回電極体20が捲回された状態において、正極スリット側未形成部56と、負極スリット側未形成部66とは、重なっている。正極スリット側未形成部56の捲回軸方向D12の長さと、負極スリット側未形成部66の捲回軸方向D12の長さは、同じである。しかしながら、正極スリット側未形成部56の捲回軸方向D12の長さは、負極スリット側未形成部66の捲回軸方向D12の長さよりも長くてもよいし、短くてもい。
【0042】
なお、捲回電極体20の集電体82にスリット90およびスリット側未形成部86を形成する方法は特に限定されない。例えば集電体82に電極活物質層84を形成する際、電極活物質を含むペースト状(またはスラリー状)の組成物を調整し、集電体82上に当該組成物を付与することで、電極活物質層84を形成することができる。このとき、スリット側未形成部86を設ける集電体82の部分には、電極活物質を含む組成物を付与しないようにすることで、スリット側未形成部86を集電体82に設けることができる。そして、例えば刃物などを使用して、スリット側未形成部86にスリット90を形成する。また、例えば刃物などを使用して、セパレータ70にスリット90を形成する。このことで、本実施形態に係る捲回電極体20を作製することができる。
【0043】
以上、本実施形態では、
図2に示すように、二次電池100は、正極シート50と負極シート60とが少なくとも重ね合わされて、捲回軸W1を中心に所定の捲回方向D11に捲回された捲回電極体20と、非水電解液10(
図1参照)と、捲回電極体20および非水電解液10を収容する電池ケース30(
図1参照)と、を備えている。
図2に示すように、正極シート50および負極シート60は、それぞれシート状の集電体82と、集電体82に形成され、かつ、電極活物質を含む電極活物質層84と、を有する。正極シート50と負極シート60とが重なる重なり領域AR1における捲回軸方向D12の中央部分において、正極シート50および負極シート60のうちの少なくとも何れか一方の集電体82にスリット90が形成されている。スリット90は、捲回軸方向D12の中央部分を除いた集電体82の部分には形成されていない。捲回電極体20における捲回軸方向D12の両端は開口している。そのため、非水電解液10は、捲回電極体20の捲回軸方向D12の両端の開口以外に、集電体82に形成されたスリット90を通過して、捲回電極体20内に浸透する。よって、従来と比較して、非水電解液10を捲回電極体20に浸透させ易くすることができ、非水電解液10を捲回電極体20に効率よく浸透させることができる。また、本実施形態では、スリット90は、捲回軸方向D12の中央部分以外の集電体82の部分に形成されていないため、捲回電極体20の強度を確保することができる。
【0044】
本実施形態では、スリット90は、正極シート50および負極シート60の両方の集電体82に形成されている。このことによって、非水電解液10は、正極シート50側のスリット90である正極スリット91を通じて、正極シート50を通過し、かつ、負極シート60側のスリット90である負極スリット92を通じて、負極シート60を通過することができる。よって、非水電解液10を捲回電極体20により効率的に浸透させることができる。
【0045】
本実施形態では、スリット90が形成された集電体82の部分には、電極活物質層84が形成されていない。このことで、スリット90を電極活物質層84に形成しなくてもよいため、スリット90を集電体82に形成する作業を行い易い。
【0046】
本実施形態では、
図3に示すように、スリット90は、捲回方向D11に沿って集電体82に複数形成されている。このことによって、捲回電極体20の全体に、非水電解液10を効率よく浸透させ易い。
【0047】
本実施形態では、
図2に示すように、捲回電極体20は、正極シート50と、負極シート60と、セパレータ70とが重ね合わされて捲回されている。スリット90(詳しくはセパレータスリット93)は、正極シート50および負極シート60と重なるセパレータ70の部分に形成されている。このことによって、非水電解液10は、セパレータスリット93を通じてセパレータ70を通過することができる。よって、非水電解液10を捲回電極体20により効率的に浸透させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、スリット90は、捲回方向D11に沿って等間隔になるように、集電体82に形成されており、かつ、捲回された状態における捲回電極体20の長手方向D13の一端から他端まで形成されていた。しかしながら、
図4および
図5の変形例に示す捲回電極体20Aのように、スリット90Aは、捲回電極体20の長手方向D13の一部に形成され、他の一部には形成されていなくてもよい。ここでは、
図4に示すように、捲回軸W1よりも一方側(ここでは第1R部21側)の捲回電極体20の部分を第1部分25という。一方、捲回軸W1よりも他方側(ここでは第2R部22側)の捲回電極体20の部分を第2部分26という。
【0049】
ここでは、第1部分25に位置する集電体82(詳しくは正極集電体52および負極集電体62)の部分、および、セパレータ70の部分には、スリット90Aが形成されている。一方、第2部分26に位置する集電体82の部分、および、セパレータ70の部分には、スリット90Aが形成されていない。そのため、
図5に示すように、捲回方向D11に並んだスリット90Aの間隔は、一定ではない。なお、
図5では、正極シート50の正極集電体52に形成されたスリット90Aのみが図示されているが、負極シート60の負極集電体62に形成されたスリット90Aの形状、大きさ、間隔、および、セパレータ70に形成されたスリット90Aの形状、大きさ、間隔は、正極集電体52に形成されたスリット90Aと同様である。
【0050】
本変形例によれば、第1部分25において、非水電解液10が捲回電極体20に浸透し易くなるため、非水電解液10を捲回電極体20に効率よく浸透させることができる。第2部分26において、スリット90Aが形成されていないため、捲回電極体20の強度を確保することができる。このように、本変形例によれば、非水電解液10を捲回電極体20に効率よく浸透させつつ、捲回電極体20の強度を確保することができる。
【0051】
上記実施形態では、スリット90は、正極シート50および負極シート60の両方の集電体82(詳しくは正極集電体52および負極集電体62)に形成されていた。しかしながら、スリット90は、正極集電体52および負極集電体62の何れか一方に形成され、他方には形成されていなくてもよい。例えばスリット90は、正極集電体52に形成され、負極集電体62には形成されていなくてもよい。この場合であっても、スリット90から非水電解液10を浸透させることができるため、従来と比較すると、非水電解液10を捲回電極体20に効率よく浸透させることができる。
【0052】
上記実施形態では、セパレータ70にスリット90が形成されていた。しかしながら、スリット90は、セパレータ70に形成されていなくてもよい。
【0053】
上記実施形態では、スリット90が形成された集電体82の部分には、電極活物質層84が形成されておらず、スリット90は、スリット側未形成部86に設けられていた。しかしながら、スリット90が形成された集電体82の部分には、電極活物質層84が形成されていてもよい。すなわち、スリット側未形成部86は省略されてもよい。この場合、電極活物質層84には、集電体82に形成されたスリット90と重なる位置にスリットが形成されているとよい。
【符号の説明】
【0054】
10 非水電解液
20 捲回電極体
30 電池ケース
50 正極シート
60 負極シート
70 セパレータ
82 集電体
84 電極活物質層
90、90A スリット
91 正極スリット
92 負極スリット
93 セパレータスリット
100 二次電池
AR1 重なり領域
D11 捲回方向
D12 捲回軸方向
W1 捲回軸