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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089357
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20220609BHJP
   H04N 1/191 20060101ALI20220609BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220609BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20220609BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H04N1/04 105
H04N1/191
G06T1/00 430H
G03B27/54 A
G03B27/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201691
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】松海 崇史
【テーマコード(参考)】
2H108
2H109
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
2H108AA01
2H108CB01
2H108GA09
2H108HA01
2H109AA02
2H109AA26
2H109AA94
2H109AA96
2H109DA12
5B047AA01
5B047BB02
5B047BC16
5B047BC23
5B047CA07
5B047CA12
5B047DA04
5B047DC01
5B047EA01
5C072AA01
5C072BA08
5C072CA05
5C072CA07
5C072DA03
5C072DA25
5C072EA07
5C072LA02
5C072LA18
5C072MA01
5C072MB01
5C072MB06
5C072RA06
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA11
(57)【要約】
【課題】黒領域と白領域との境界位置を正しく検知できる、読取装置を提供する。
【解決手段】CISユニットが副走査方向に1ラインずつ移動されて、CISユニットにより1ラインが読み取られる(S101,S102)。そして、その読み取られた1ライン分の各画素値が1つずつ注目画素値として注目され、その注目画素値と別の画素値との差分値が取得される(S103)。そして、その差分値が白黒検知閾値を超える注目画素値の画素が白黒エッジ、つまり白黒基準部の黒領域における白領域との境界の画素として抽出される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源および主走査方向に並べられた複数の受光素子を有しており、前記光源からの光を読取対象に照射し、前記読取対象で反射された光を前記受光素子で受光して、個々の前記受光素子での受光量に応じた画素値を出力する読取部と、
前記主走査方向に互いに離れた2個の黒領域および前記黒領域に連続し前記主走査方向の両側から前記黒領域に挟まれた白領域を有する白黒基準部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記読取部に前記白黒基準部を読み取らせて、
前記読取部から出力される各画素値を1つずつ注目画素値として注目し、前記注目画素値と前記注目画素値の画素から所定範囲内に含まれる別の1つの画素の画素値との差分値を取得し、
その取得した前記差分値が閾値を超えているかを判定して、前記別の1つの画素の画素値との前記差分値が前記閾値を超える前記注目画素値の画素位置から、前記黒領域と前記白領域との前記主走査方向における境界位置を検知する、読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置であって、
前記黒領域と前記白領域との境界位置を含む境界候補範囲を記憶する記憶部、をさらに備え、
前記制御部は、
前記別の1つの画素の画素値との前記差分値が前記閾値を超える前記注目画素値の画素位置を候補位置として、前記候補位置が前記境界候補範囲に含まれる場合、前記候補位置を前記黒領域と前記白領域との境界位置であると判断し、前記候補位置が前記境界候補範囲に含まれない場合、前記候補位置を前記黒領域と前記白領域との境界位置でないと判断する、読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の読取装置であって、
前記制御部は、
前記別の1つの画素の画素値との前記差分値が前記閾値を超える前記注目画素値の画素位置を候補位置として、前記候補位置が2つ以上存在する場合、2つの前記候補位置間の距離が所定範囲内である前記候補位置の組合せを判定し、その組合せの2つの前記候補位置をそれぞれ前記黒領域と前記白領域との境界位置であると判断する、読取装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、
前記読取部を前記主走査方向と直交する副走査方向に移動させつつ、前記白黒基準部を1ラインずつ複数ラインにわたって読み取らせて、
前記別の1つの画素の画素値との前記差分値が前記閾値を超える前記注目画素値の画素位置を候補位置として、前記副走査方向に連続する複数のラインで前記候補位置が同位置である場合に、前記候補位置を前記黒領域と前記白領域との境界位置であると判断する、読取装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、
前記別の1つの画素の画素値との前記差分値が前記閾値を超える前記注目画素値の画素位置を候補位置として、前記候補位置が1つしか存在しない場合には、前記候補位置は前記黒領域と前記白領域との境界位置でないと判断する、読取装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記読取部は、円柱状のレンズを主走査方向に複数並べたレンズアレイを有し、前記読取対象で反射された光を前記レンズアレイを介して前記受光素子で受光して、個々の前記受光素子での受光量に応じた画素値を出力し、
前記所定範囲は、1つの前記レンズを通過した光を受光する前記受光素子の数以上の範囲に設定されている、読取装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、
前記光源から前記読取対象に照射される光の光量の調整を行う前に、前記黒領域と前記白領域との境界位置を検知する、読取装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、
シェーディング補正用の補正データを取得する前に、前記黒領域と前記白領域との境界位置を検知する、読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を読み取る読取装置では、主走査方向に延びる読取デバイスと原稿とが副走査方向に相対的に移動されつつ、読取デバイスにより原稿が1ラインずつ読み取られる。
【0003】
読取装置の電源投入時などには、読取デバイスによる有効読取範囲を決定するために、その基準となる基準位置が設定される。たとえば、2個の黒領域を主走査方向に離して白領域を挟んで配置した基準板が読取装置に設けられており、基準板が読取デバイスで読み取られ、その読み取られた黒領域と白領域との境界の位置から基準位置が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-49742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
読取デバイスには、光源、ライトガイドおよびイメージセンサなどが内蔵されている。光源は、LED(Light Emitting Diode)であり、主走査方向の一端に配置されている。ライトガイドは、透明材料からなり、光源と主走査方向に隣接して配置されて、主走査方向に延びている。イメージセンサは、たとえば、複数の受光素子が主走査方向に配列されたリニアイメージセンサであり、ライトガイドと副走査方向に位置をずらして配置されている。
【0006】
光源からの光がライトガイドを通して原稿に照射されて、原稿での反射光がレンズを通過してイメージセンサに入射する。イメージセンサの各受光素子で光電変換が行われ、各受光素子から電気信号が出力されて、その電気信号が画素値に変換されることにより、読取デバイスによる主走査方向の1ライン分の読み取りが達成される。
【0007】
光源がライトガイドの主走査方向の一方側にのみ設けられているので、ライトガイドから原稿に照射される光の光量は、光源が設けられている側で大きく、その逆側で小さくなる。これに応じて、イメージセンサによる受光量は、図11に示されるように、光源が設けられている側で大きく、その逆側で小さくなる。このイメージセンサの感度不均一性(PRNU:Photo Response Non-Uniformity)や光源の劣化による光量ダウンを考慮して、基準板を読取デバイスで読み取ったときの白黒判定の閾値は、画素値の範囲(0~255)の中間値よりも低い値に設定される。
【0008】
そのため、光源の劣化が進んだ場合などに、図11に破線で示されるように、白領域の画素を黒画素と判定してしまい、白領域と黒領域との境界位置を正しく検知できない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、黒領域と白領域との境界位置を正しく検知できる、読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係る読取装置は、光源および主走査方向に並べられた複数の受光素子を有しており、光源からの光を読取対象に照射し、読取対象で反射された光を受光素子で受光して、個々の受光素子での受光量に応じた画素値を出力する読取部と、主走査方向に互いに離れた2個の黒領域および黒領域に連続し主走査方向の両側から黒領域に挟まれた白領域を有する白黒基準部と、制御部とを備え、制御部は、読取部に白黒基準部を読み取らせて、読取部から出力される各画素値を1つずつ注目画素値として注目し、注目画素値と注目画素値の画素から所定範囲内に含まれる別の1つの画素の画素値との差分値を取得し、その取得した差分値が閾値を超えているかを判定して、別の1つの画素の画素値との差分値が閾値を超える注目画素値の画素位置から、黒領域と白領域との主走査方向における境界位置を検出する。
【0011】
この構成によれば、白黒基準部の読み取りにより読取部から出力される各画素値が1つずつ注目画素値として注目され、その注目画素値と注目画素値の画素から所定範囲内に含まれる別の1つの画素の画素値との差分値が取得される。そして、その差分値が閾値を超える注目画素値が検出されると、その注目画素値の画素位置から黒領域と白領域との境界位置が検出される。注目画素値と別の画素値との差分値は、受光素子列における感度不均一性や光源の劣化による光量ダウンの影響を受けないので、差分値が閾値を超える注目画素値の画素位置から黒領域と白領域との境界位置を検出することにより、黒領域と白領域との境界位置を正しく検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、黒領域と白領域との境界位置を正しく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る読取装置の構成を図解的に示す断面図である。
図2】読取装置の筐体の天面板を下側から見た図である。
図3】CISユニットの構成を示す斜視図である。
図4】ロッドレンズと受光素子数との関係を説明するための図である。
図5】読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】メインフローを示すフローチャートである。
図7】原点検知処理の流れを示すフローチャートである。
図8】白黒テープ候補ライン検知処理の流れを示すフローチャートである。
図9】異物上のラインをCISユニットで読み取ったときの画素位置(画素番号)と差分値との関係と、白黒基準部の黒領域および白領域を通るラインをCISユニットで読み取ったときの画素位置(画素番号)と差分値との関係とを示す図である。
図10】2個の異物上のラインをCISユニットで読み取ったときの画素位置(画素番号)と差分値との関係を示す図である。
図11】基準板を読取デバイスで読み取ったときの画素位置(画素番号)と受光量との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<読取装置の構成>
図1に示される読取装置1は、原稿を読み取るための装置であり、筐体2および原稿カバー3を備えている。読取装置1では、FB方式およびADF方式の両方式による原稿の読み取りが可能に構成されている。読取装置1は、原稿カバー3には、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)4が設けられている。
【0016】
なお、以下の説明で使用するため、読取装置1をその正面側から見た状態を基準に読取装置1の前後左右を規定する。また、上下については、読取装置1が水平面上に設置された状態で規定する。図1には、読取装置1を左右方向に延びる切断面線に沿って切断した断面が示されている。
【0017】
筐体2は、略直方体形状をなしている。筐体2の天面板11には、図2に示されるように、第1開口12および第2開口13が設けられている。
【0018】
第1開口12は、前後方向および左右方向に延びる端縁を有し、前後よりも左右に長い矩形状に形成されている。第1開口12を下側から塞ぐように、原稿載置板14が設けられている。原稿載置板14は、透明な材料を用いて平板状に形成されている。
【0019】
第2開口13は、第1開口12の左側において、前後方向および左右方向に延びる端縁を有し、前後方向に細長く延びる矩形状に形成されている。第2開口13を下側から塞ぐように、原稿通過板15が設けられている。原稿通過板15は、透明な材料を用いて平板状に形成されている。
【0020】
筐体2内には、CIS(Contact Image Sensor)ユニット21が原稿載置板14および原稿通過板15の下方で、左右方向である副走査方向に移動可能に設けられている。CISユニット21(読取部の一例)は、光源22、ライトガイド23、ロッドレンズアレイ24および光電変換部25を備えている。
【0021】
光源22は、赤色、緑色および青色の3色のLED(Light Emitting Diode)を含む。
【0022】
ライトガイド23は、光源22の光を伝搬する部材であり、透明材料からなる。ライトガイド23は、光源22の前側に配置されて、副走査方向と直交する前後方向である主走査方向に延びている。
【0023】
ロッドレンズアレイ24は、ライトガイド23と左右方向に位置をずらして、たとえば、ライトガイド23の左側に配置されている。ロッドレンズアレイ24は、図3に示されるように、主走査方向に整列して並ぶ多数のロッドレンズ26(レンズの一例)を備えている。ロッドレンズ26は、成立等倍の屈折率分布型レンズである。
【0024】
光電変換部25は、所定個(たとえば、12個)のセンサICチップ27を備えている。センサICチップ27は、主走査方向に一列に並べて配置されている。各センサICチップ27は、受光素子列28を備えている。受光素子列28は、複数の受光素子29を主走査方向に等ピッチで一列に配置して構成されている。各受光素子29は、受光量に応じた電荷を1画素の電気信号として出力する。
【0025】
また、光電変換部25には、ゲイン調整回路およびA/D変換回路などが備えられている。各光電変換素子から出力される電圧は、ゲイン調整回路による増幅後、A/D変換回路によりデジタル値である画素データ(画素値)に変換される。A/D変換回路は、たとえば、8ビット(0~255)の分解能を有しており、下限側の基準電圧(下限値)未満の電圧については一律に「0」に変換し、上限側の基準電圧(上限値)を超える電圧については一律に「255」に変換し、下限値から上限値の範囲の電圧についてはその電圧の大小に応じた画素データに変換する。
【0026】
光源22からの光がライトガイド23を通して読取対象物に照射されて、読取対象物での反射光がロッドレンズアレイ24を通過して光電変換部25に入射する。1個のロッドレンズ26は、たとえば、図4に示されるように、約3.5個の受光素子29の受光面上に成立当倍像を結像させる。各受光素子29で光電変換が行われ、各受光素子29から電気信号が出力されて、その電気信号が画素データに変換されることにより、CISユニット21による主走査方向の1ライン分の読み取りが達成される。
【0027】
ADF4は、図2に示されるように、供給トレイ31および排出トレイ32を備えている。供給トレイ31および排出トレイ32は、上下に間隔を空けて重なった状態に設けられている。ADF4内には、搬送経路33が形成されている、搬送経路33は、その一端が供給トレイ31における副走査方向の一方側の端部上で開放され、U字状に湾曲しつつ折り返されて、原稿通過面17上を経由し、他端が供給トレイ31と排出トレイ32との間で開放されている。また、ADF4内には、搬送経路33に沿って、供給ローラ34、分離ローラ35、搬送ローラ36、反転ローラ37および排出ローラ38が供給トレイ31側からこの順に設けられている。
【0028】
原稿カバー3は、開位置と閉位置とに開閉可能に設けられている。原稿カバー3が閉位置に位置する状態では、原稿カバー3により、筐体2の上面の全域が被覆される。原稿カバー3は、閉位置から手前側が持ち上げられることにより、開位置に変位される。原稿カバー3が開位置に位置する状態では、筐体2の上面の全域が露出する。
【0029】
FB方式による原稿の読み取りの際には、原稿カバー3が開位置に開かれて、原稿が原稿載置板14の上面に載置される。このとき、原稿は、左側の端縁が第1開口12の左側の端縁に右側から当接し、かつ、後側の端縁が第1開口12の後側の端縁に前側から当接した状態に配置される。その後、原稿カバー3が閉位置に閉じられて、原稿が原稿カバー3によって上側から覆われた状態にされる。そして、スキャンの実行の指令に応じて、CISユニット21が読取範囲の先頭の読取開始位置に対応する位置に移動され、その位置から副走査方向に移動されながら、CISユニット21が原稿載置板14上の原稿を1ラインずつ副走査方向に順に読み取ることにより、原稿の読み取りが達成される。
【0030】
一方、ADF方式による原稿の読み取りの際には、ADF4の供給トレイ31上に原稿が載置される。また、CISユニット21が原稿通過板15に下方から対向する位置で停止される。その後、スキャンの実行の指令に応じて、供給ローラ34による原稿の搬送が開始される。原稿は、分離ローラ35により1枚ずつに分離されて、搬送ローラ36および反転ローラ37により搬送経路33を搬送される。原稿が原稿通過板15上を通過しつつ、CISユニット21が原稿を1ラインずつ順に読み取ることにより、原稿の読み取りが達成される。
【0031】
原稿通過板15の左側には、図2に示されるように、白黒基準部41が設けられている。白黒基準部41は、矩形状のテープとして形成され、原稿通過板15の左側で主走査方向と一致する前後方向に延びるように、筐体2の天面板11の裏面(下側を向いた面)に貼着されている。白黒基準部41では、前右側および後右側の各角部の矩形状の領域が黒領域42とされ、残余の領域が白領域43とされている。これにより、白黒基準部41の右側の端縁に沿った領域では、白領域43が2個の黒領域42に挟まれて、各黒領域42と白領域43とが連続し、前側の端縁に沿った領域および後側の端縁に沿った領域では、黒領域42の左側に白領域43が隣接して、黒領域42と白領域43とが連続している。
【0032】
また、読取装置1は、図5に示されるように、CPU(Central Processing Unit)51と、フラッシュメモリやE2PROMなどのデータの書き換えが可能な不揮発性メモリ52(記憶部の一例)と、SDRAMなどの揮発性メモリ53とを備えている。CPU51、不揮発性メモリ52および揮発性メモリ53は、データ通信のためのバス54に接続されている。
【0033】
CPU51(制御部の一例)は、各種の処理のためのプログラムを実行することにより、ADF4、CISユニット21およびCISユニット21を副走査方向に移動させるCISユニット移動機構55など、読取装置1の各部を制御する。不揮発性メモリ52には、CPU51によって実行されるプログラムおよび各種のデータなどが記憶されている。揮発性メモリ53は、CPU51がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。
【0034】
CISユニット移動機構55は、CISユニット21を担持するキャリッジ、正逆回転可能なステッピングモータ、ステッピングモータにより回転駆動される駆動プーリ、駆動プーリと対をなす従動プーリおよび駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられたベルトを備えている。駆動プーリと従動プーリとは、左右方向に互いの間に間隔を空けて、それぞれ回転軸線が前後方向に延びるように配置されている。ベルトの途中部は、キャリッジに固定されている。駆動プーリの回転により、ベルトが走行し、ベルトの走行に伴って、CISユニット21を担持したキャリッジが左右方向と一致する副走査方向に移動する。
【0035】
<メインフロー>
読取装置1の電源がオンされると、CPU51により、読取装置1の動作制御のメインフローが実行される。
【0036】
読取装置1の電源がオンされたことに応じて、図6に示されるように、CPU51は、まず、原点検知処理を実行する(S1)。読取装置1では、主走査方向におけるCISユニット21による読取範囲の位置を決めるために、その基準となる原点が必要である。原点検知処理では、主走査方向における白黒基準部41の一方の黒領域42と白領域43との境界位置が主走査方向の原点として検知される。原点検知処理の具体的な内容については、後述する。
【0037】
原点検知処理の終了後、CPU51は、光量調整を行う(S2)。光量調整では、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に白黒基準部41の白領域43を読み取らせる。そして、CPU51は、その読み取りにより得られる1ライン分の各画素の画素値の最大値が所定値(たとえば、254)になるように、CISユニット21の光源22に供給される電流の値を調整する。
【0038】
光量調整後、CPU51は、光学系の特性による画素間の濃度むらを低減するシェーディング補正用の補正データを取得する(S3)。すなわち、CPU51は、光量調整後の値の電流を光源22に供給して、CISユニット21に白黒基準部41の白領域43を読み取らせる。そして、CPU51は、その読み取りにより得られる1ライン分の白データをシェーディング補正用の補正データとして揮発性メモリ53に記憶させる。
【0039】
その後、CPU51は、CISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21を所定の待機位置まで移動させて、CISユニット21を待機位置で待機させる(S4)。待機位置は、たとえば、原稿載置板14と白黒基準部41との間に設定されている。そして、CISユニット21を待機位置で待機させた状態で、CPU51は、原稿の読取指示が入力されたか否かを判断する(S5)。原稿の読取指示は、たとえば、読取装置1に設けられた操作パネルの操作により、操作パネルからCPU51に入力される。
【0040】
CPU51は、読取指示が入力されていないと判断した場合(S5:NO)、読取装置1の電源がオフされたか否かを判断する(S6)。読取指示が入力されるか、または、電源がオフされるまで、CPU51は、読取指示が入力されたか否かの判断および電源がオフされたか否かの判断を繰り返し行う(S5,S6)。
【0041】
電源がオフにされた場合(S6:YES)、CPU51は、このメインフローを終了する。
【0042】
読取指示が入力された場合(S5:YES)、CPU51は、画像の読み取りを実行する(S7)。FB方式による原稿の読み取りでは、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、原稿載置板14上の原稿をCISユニット21に読み取らせる。FB方式による原稿の読み取りでは、1枚の原稿がCISユニット21に読み取られると、原稿の読み取りが終了となる。ADF方式による原稿の読み取りでは、CPU51は、ADF4、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、原稿通過板15上を通過する原稿をCISユニット21に読み取らせる。ADF方式による原稿の読み取りでは、供給トレイ31上に載置された原稿のすべてがCISユニット21に読み取られると、原稿の読み取りが終了となる。
【0043】
原稿の読み取りが終了すると、CPU51は、CISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21を白黒基準部41の位置に向けて移動(リターン動作)させる(S8)。そして、CPU51は、CISユニット21が主走査方向における白黒基準部41の黒領域42と白領域43との境界位置の近傍まで戻ったか否を判断し(S9)、CISユニット21がその境界位置まで戻っていなければ(S9:NO)、CISユニット21のリターン動作を継続させる(S8)。
【0044】
その後、CPU51は、CISユニット21が黒領域42と白領域43との境界位置の近傍まで戻ったと判断すると(S9:YES)、原点検知処理を実行した後(S10)、CISユニット21を待機位置にて待機させる(S4)。
【0045】
<原点検知処理>
メインフローのステップS1,S10で実行される原点検知処理の流れは、図7に示されている。
【0046】
原点検知処理では、CPU51は、CISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21を待機位置から白黒基準部41に向けて1ライン分移動させる(S101)。そして、CPU51は、CISユニット21を制御して、CISユニット21に1ラインの読取動作を行わせることにより、読取対象物での反射光の受光量に応じた画素値を取得する(S102)。画素値(画素データ)には、シェーディング補正などの画像処理が行われず、画素値は、そのままの生データの状態で揮発性メモリ53に記憶される。
【0047】
その後、CPU51は、各画素値を1つずつ注目画素値として注目し、その注目画素値と注目画素値の画素から所定範囲内に含まれる別の1つの画素の画素値(以下、単に「別の画素値」という。)との差分値を取得する(S103)。なお、この差分値は、注目画素値と別の画素値との差分を取った値の絶対値とする。
【0048】
CISユニット21は、1個のロッドレンズ26が約3.5個の受光素子29の受光面上に成立当倍像を結像させるように構成されているので、ロッドレンズ26の中央付近に対向する受光素子29は、ロッドレンズ26の端付近に対向する受光素子29よりも受光量が多いので、ロッドレンズ26の中央付近の画素の画素値(生データ)は、ロッドレンズ26の端付近の画素の画素値よりも大きくなる。そのため、注目画素値と注目画素値の画素の隣の画素の画素値との差分値には、ロッドレンズ26との位置関係による受光量の差による誤差要素が含まれる。この誤差要素を排除するため、注目画素値の画素から1個のロッドレンズ26を通過した光を受光する受光素子29の数以上離れた位置の画素、たとえば、注目画素値の画素から3×N画素(N:1以上の整数)離れた画素の画素値を別の画素値として、注目画素値と別の画素値との差分値が取得される。本実施形態では、N=1とする。
【0049】
そして、CPU51は、全画素値について別の画素値との差分値を取得すると、それらの差分値を用いて、白黒テープ候補ライン検知処理を行う(S104)。
【0050】
白黒テープ候補ライン検知処理の流れは、図8に示されている。
【0051】
白黒テープ候補ライン検知処理では、CPU51は、すべての差分値と白黒検知閾値とを比較する。そして、CPU51は、白黒検知閾値よりも大きい差分値を生じた注目画素値の画素、すなわち、別の画素値との差分値が白黒検知閾値よりも大きい注目画素値の画素を白黒エッジとして抽出する(S1041)。
【0052】
その後、CPU51は、抽出した白黒エッジの個数が2個であるか否かを判断する(S1042)。
【0053】
図9に示されるように、たとえば、白黒基準部41の白領域43に異物が付着しており、異物上のラインL1がCISユニット21に読み取られた場合、CPU51は、1個の白黒エッジを抽出することになる。一方、白黒基準部41の黒領域42と白領域43とを通るラインL2がCISユニット21に読み取られた場合、CPU51は、2個の白黒エッジを抽出することになる。そこで、CPU51は、抽出した白黒エッジの個数が2個でない場合(S1402:NO)、CISユニット21に読み取られた読取ラインを白黒基準部41の黒領域42と白領域43とを通る白黒テープ候補ラインとして検知せずに、白黒テープ候補ライン検知処理を終了して、メインフローの処理に戻る。
【0054】
CPU51は、2個の白黒エッジを抽出した場合(S1402:YES)、画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれるか否かを判断する(S1403)。また、2個の白黒エッジのうちの画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれるか否かを判断する(S1404)。
【0055】
主走査方向における白黒基準部41の2個の黒領域42と白領域43との境界を読み取る画素の位置(画素番号)は、ある程度の範囲内に限られる。そこで、主走査方向における一方の黒領域42と白領域43との境界が含まれる画素の範囲が白黒エッジ1範囲として設定されている。また、主走査方向における他方の黒領域42と白領域43との境界が含まれる画素の範囲が白黒エッジ2範囲として設定されている。白黒エッジ1範囲および白黒エッジ2範囲は、不揮発性メモリ52に記憶されている。
【0056】
そこで、2個の白黒エッジのうちの画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれない場合(S1403:NO)、その白黒エッジは、黒領域42と白領域43との境界ではない。また、画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれない場合(S1404:NO)、その白黒エッジは、黒領域42と白領域43との境界ではない。そのため、画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれない場合(S1403:NO)、または、画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれない場合(S1404:NO)、CPU51は、読取ラインを白黒テープ候補ラインとして検知せずに、白黒テープ候補ライン検知処理を終了して、メインフローの処理に戻る。
【0057】
2個の白黒エッジのうちの画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれ(S1403:YES)、かつ、画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれる場合(S1404:YES)、CPU51は、読取ラインを白黒テープ候補ラインとして検知し、白黒テープ候補ライン検知処理を終了して、メインフローの処理に戻る。
【0058】
白黒テープ候補ライン検知処理からメインフローに戻って、CPU51は、白黒テープ候補ライン検知処理で白黒テープ候補ラインを検知したか否かを判断する(S105)。CPU51は、白黒テープ候補ラインを検知していない場合(S105:NO)、CISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21を待機位置から白黒基準部41に向けて1ライン分移動させて(S101)、前述のステップS102以降の処理を行う。
【0059】
CPU51は、白黒テープ候補ライン検知処理で白黒テープ候補ラインを検知した場合(S105:YES)、白黒テープ候補ラインとして検知したラインの連続数を表す白黒テープ候補ライン数の値をインクリメント(+1)する(S106)。そして、そのインクリメント後の白黒テープ候補ライン数が所定値Aに達したか否かを判断する(S107)。所定値Aは、あらかじめ設定される整数値であり、たとえば、5である。
【0060】
白黒基準部41の2個の黒領域42は、図10に示されるように、副走査方向に一定ライン数A分の幅を有している。たとえば、白黒基準部41の黒領域42と白領域43とを通らないラインL3上において、2個の黒領域42と白領域43との各境界と主走査方向にほぼ同じ位置に異物が付着しており、そのラインL3がCISユニット21に読み取られた場合、CPU51は、2個の白黒エッジを抽出する。そして、その2個の白黒エッジがそれぞれ白黒エッジ1範囲および白黒エッジ2範囲に含まれるため、CPU51は、ラインL3を白黒テープ候補ラインとして検知する。しかし、CPU51がラインL3を白黒テープ候補ラインとして検知した後、ラインL3の次のラインがCISユニット21に読み取られたときに、CPU51は、2個の白黒エッジを抽出しない。
【0061】
そこで、CPU51は、白黒テープ候補ライン数が所定値Aに達していない場合には(S107:NO)、CISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21を待機位置から白黒基準部41に向けて1ライン分移動させて(S101)、前述のステップS102以降の処理を行う。
【0062】
そして、白黒テープ候補ライン数が所定値Aに達した場合、つまり白黒テープ候補ラインとして検知したラインの連続数が所定値Aに達した場合(S107:YES)、2個の白黒エッジの位置を白黒基準部41の黒領域42と白領域43との境界位置とし、2個の白黒エッジのうちの画素番号が小さい白黒エッジの位置を原点として検知し、原点検知処理を終了する。
【0063】
<作用効果>
以上のように、CISユニット21が副走査方向に1ラインずつ移動されて、CISユニット21により1ラインが読み取られる。そして、その読み取られた1ライン分の各画素値が1つずつ注目画素値として注目され、その注目画素値と別の画素値との差分値が取得される。そして、その差分値が白黒検知閾値を超える注目画素値の画素が白黒エッジ、つまり白黒基準部41の黒領域42における白領域43との境界の画素(以下、単に「境界画素」という。)として抽出される。注目画素値と別の画素値との差分値は、受光素子列28における感度不均一性や光源22の劣化による光量ダウンの影響を受けないので、差分値が白黒検知閾値を超える注目画素値の画素を白黒エッジとすることにより、白黒基準部41の黒領域42と白領域43との境界位置を正しく検知することができる。
【0064】
不揮発性メモリ52には、黒領域42と白領域43との境界位置を含む境界候補範囲である白黒エッジ1範囲および白黒エッジ2範囲が記憶されている。2個の白黒エッジがそれぞれ白黒エッジ1範囲および白黒エッジ2範囲に含まれる場合、それらの白黒エッジを境界画素であると判断することができる。一方、2個の白黒エッジのうちの画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれない場合、その白黒エッジを境界画素ではないと判断することができる。また、画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれない場合、その白黒エッジを境界画素ではないと判断することができる。これにより、白領域43に異物が付着している場合に、その異物の位置を黒領域42と白領域43との境界位置と誤検知することを防止できる。
【0065】
また、2個の白黒エッジのうちの画素番号が小さい白黒エッジが白黒エッジ1範囲に含まれ、かつ、画素番号が大きい白黒エッジが白黒エッジ2範囲に含まれる場合、その2個の白黒エッジ上のラインが白黒テープ候補ラインとして検知される。そして、副走査方向に連続するA本のラインで2個の白黒エッジの主走査方向の位置が同位置であり、白黒テープ候補ラインとして検知したラインの連続数が所定値Aに達した場合、2個の白黒エッジが黒領域42と白領域43との境界位置として検知される。これにより、黒領域42と副走査方向に重なる位置に異物が存在していても、その異物の位置を黒領域42と白領域43との境界位置と誤検知することを防止できる。
【0066】
また、白黒エッジが1個しか抽出されない場合には、その白黒エッジを境界画素ではないと判断できるので、その白黒エッジを含むラインは、白黒テープ候補ラインとして検知されない。これにより、白領域43に異物が存在していても、その異物の位置を黒領域42と白領域43との境界位置と誤検知することを防止できる。
【0067】
1つのロッドレンズ26を通過した光は、複数(前述の実施形態では、約3.5個)の受光素子29に入射する。ロッドレンズ26の中央付近(中心付近)に位置する受光素子29は、受光量が相対的に大きく多く、ロッドレンズ26の端付近に位置する受光素子29は、受光量が相対的に小さい。そのため、主走査方向に隣接する2つの受光素子29での受光量に応じた画素値の差分値が取得されると、そのロッドレンズ26のレンズ特性による受光量のむらが差分値に現れる。そこで、注目画素値の画素から1個のロッドレンズ26を通過した光を受光する受光素子29の数以上離れた位置の画素を別の画素値として、注目画素値と別の画素値との差分値が取得される。これにより、ロッドレンズ26のレンズ特性による受光量のむらが差分値に誤差として現れることを抑制できる。
【0068】
また、原点検知処理による白黒基準部41の黒領域42と白領域43との境界位置の検知は、光量調整およびシェーディング補正用の補正データの取得の前に行われる。光量調整およびシェーディング補正が行われなくても、白黒基準部41の黒領域42における白領域43との境界の画素の画素値が注目画素値である場合、注目画素値と別の画素値との差分値が白黒検知閾値を超えるので、黒領域42と白領域43との境界位置を正しく検知することができる。
【0069】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0070】
たとえば、原点検知処理において、2個以上の白黒エッジが抽出された場合、2個の白黒エッジ間の距離が所定範囲内である白黒エッジの組合せを判定して、その組合せの2個の白黒エッジをそれぞれ黒領域42と白領域43との境界位置であると判断してもよい。これにより、白領域43に異物が付着している場合に、その異物の位置を黒領域42と白領域43との境界位置と誤検知することを防止できる。所定範囲は、たとえば、白黒エッジ1範囲の主走査方向内側の端と白黒エッジ2範囲の主走査方向内側の端との間の距離より大きく、かつ、白黒エッジ1範囲の主走査方向外側の端と白黒エッジ2範囲の主走査方向外側の端との距離未満の範囲である。
【0071】
また、前述の実施形態においては、別の画素値として、注目画素値の画素から1個のロッドレンズ26を通過した光を受光する受光素子29の数以上離れた位置の画素、たとえば、注目画素値の画素から3×N画素(N:1以上の整数)離れた画素の画素値を採用していた。しかしながら、ロッドレンズ26との位置関係による受光量の差による誤差要素が無視できる程度であれば、たとえば、別の画素値として、注目画素の隣の画素の画素値を採用してもよい。
【0072】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:読取装置
21:CISユニット
22:光源
26:ロッドレンズ
29:受光素子
41:白黒基準部
42:黒領域
43:白領域
51:CPU
53:揮発性メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11