(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008936
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】患者固有の血流のモデリングのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220106BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20220106BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220106BHJP
G06T 7/12 20170101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B6/03 370A
G16H30/00
G06T7/00 612
G06T7/12
A61B6/03 360J
A61B6/03 375
A61B6/03 360G
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165273
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2020080027の分割
【原出願日】2011-07-29
(31)【優先権主張番号】61/401,462
(32)【優先日】2010-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/404,429
(32)【優先日】2010-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/401,915
(32)【優先日】2010-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/013,561
(32)【優先日】2011-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/402,345
(32)【優先日】2010-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/402,308
(32)【優先日】2010-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513030879
【氏名又は名称】ハートフロー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エー. テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー エー. フォンテ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ギルウー
(72)【発明者】
【氏名】バイ イン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ケイ. ザリンス
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA25
4C093AA26
4C093CA18
4C093DA02
4C093FD08
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4C093FF16
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4C093FF35
4C093FF43
4C093FG01
4C093FG12
4C093FG13
4C093FG16
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA13
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA13
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096JA11
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】患者固有の血流のモデリングのための方法およびシステムの提供。
【解決手段】一実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成し、前記三次元モデルとこの物理学に基づくモデルに基づいて、患者の心臓内の冠血流予備量比を特定するようにさらに構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血行動態指標を推定するためのコンピュータシステムを動作させる方法であって、
前記コンピュータシステムが、患者の血管の少なくとも狭小化を描く1つ以上の血管画像を取得することと、
前記コンピュータシステムが、前記患者の生理学的情報を取得することと、
前記コンピュータシステムが、前記取得された1つ以上の血管画像と前記患者の生理学的情報とに基づいて、前記患者の血管の狭小化の複合モデルを生成することと、
前記コンピュータシステムが、前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血液速度、血圧、または、血液流量の値を含む血流情報の第1の値を取得することと、
前記コンピュータシステムが、前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血流情報の第2の値を計算することと、
前記コンピュータシステムが、前記取得された血流情報の第1の値と、前記計算された血流情報の第2の値と、前記患者の生理学的情報とに少なくとも基づいて、前記患者の血管の狭小化における血管機能を示す血行動態指標を推定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記コンピュータシステムが、1つ以上のCT画像から動脈をセグメント化することと、
前記コンピュータシステムが、前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータシステムが、関心のある超音波の値を特定することと、
前記コンピュータシステムが、前記関心のある超音波の値に対する一組の速度データを生成することと、
前記コンピュータシステムが、前記一組の速度データを使用して、前記血流情報の第2の値を計算することと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータシステムが、1つ以上の再構成された画像から動脈をセグメント化することと、
前記コンピュータシステムが、前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の再構成された画像は、インターベンション画像診断法を使用して取得されたデータに基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複合モデルは、血管樹の位置、内腔減少の百分率、または、狭窄組成物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記血管の狭小化は、狭窄性病変を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記血行動態指標を推定することは、前記コンピュータシステムが、前記複合モデルを計算流体力学モデルに少なくとも提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記血流情報の第2の値を計算することは、前記コンピュータシステムが、前記計算流体力学モデルにおいて使用される流動境界条件を決定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の命令を符号化する1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記1つ以上の命令は、作用が実行されるようにし、
前記作用は、
患者の血管の少なくとも狭小化を描く1つ以上の血管画像を取得することと、
前記患者の生理学的情報を取得することと、
前記取得された1つ以上の血管画像と前記患者の生理学的情報とに基づいて、前記患者の血管の狭小化の複合モデルを生成することと、
前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血流情報の第1の値を取得することであって、前記血流情報は、血液速度、血圧、または、血液流量の値を含む、ことと、
前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血流情報の第2の値を計算することと、
前記取得された血流情報の第1の値と、前記計算された血流情報の第2の値と、前記患者の生理学的情報とに少なくとも基づいて、前記患者の血管の狭小化における血管機能を示す血行動態指標を推定することと
を含む、1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項11】
前記1つ以上の命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
1つ以上のCT画像から動脈をセグメント化することと、
前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを生成することと
を含む、請求項10に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項12】
前記1つ以上の命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
関心のある超音波の値を特定することと、
前記関心のある超音波の値に対する一組の速度データを生成することと、
前記一組の速度データを使用して、前記血流情報の第2の値を計算することと
を含む、請求項11に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項13】
前記1つ以上の命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
1つ以上の再構成された画像から動脈をセグメント化することと、
前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを生成することと
を含む、請求項10に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項14】
前記1つ以上の再構成された画像は、インターベンション画像診断法を使用して取得されたデータに基づく、請求項13に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項15】
前記複合モデルは、血管樹の位置、内腔減少の百分率、または、狭窄組成物をさらに含む、請求項10に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項16】
前記血行動態指標を推定することは、前記複合モデルを計算流体力学モデルに少なくとも提供することを含む、請求項10に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項17】
前記血流情報の第2の値を計算することは、前記計算流体力学モデルにおいて使用される流動境界条件を決定することをさらに含む、請求項16に記載の1つ以上の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項18】
プロセッサベースのコンピュータシステムであって、
血行動態指標を推定するための1つ以上の命令を符号化するデジタルコンピュータメモリ記憶装置と、
前記1つ以上の命令を実行するように構成されているコンピュータプロセッサと
を備え、
前記命令は、実行されると、ステップを実行することを前記コンピュータシステムに行わせ、
前記ステップは、
前記コンピュータプロセッサが、患者の血管の少なくとも狭小化を描く1つ以上の血管画像を取得することと、
前記患者の生理学的情報を取得することと、
前記取得された1つ以上の血管画像と前記患者の生理学的情報とに基づいて、前記患者の血管の狭小化の複合モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサが、前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血液速度、血圧、または、血液流量の値を含む血流情報の第1の値を取得することと、
前記患者の血管の狭小化の前記複合モデルを通る血流をシミュレーションすることを介して、血流情報の第2の値を計算することと、
前記取得された血流情報の第1の値と、前記計算された血流情報の第2の値と、前記患者の生理学的情報とに少なくとも基づいて、前記患者の血管の狭小化における血管機能を示す血行動態指標を推定することと
を含む、プロセッサベースのコンピュータシステム。
【請求項19】
前記命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
1つ以上のCT画像から動脈をセグメント化することと、
前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを生成することと
を含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項20】
前記命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
関心のある超音波の値を特定することと、
前記関心のある超音波の値に対する一組の速度データを生成することと、
前記一組の速度データを使用して、前記血流情報の第2の値を計算することと
を含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項21】
前記命令は、更なる作用が実行されるようにし、
前記更なる作用は、
1つ以上の再構成された画像から動脈をセグメント化することと、
前記セグメント化された動脈に少なくとも基づいて、前記複合モデルを導くことと
を含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項22】
前記1つ以上の再構成された画像は、インターベンション画像診断法を使用して取得されたデータに基づく、請求項21に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項23】
前記複合モデルは、血管樹の位置、内腔減少の百分率、または、狭窄組成物をさらに含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項24】
前記血行動態指標を推定することは、前記複合モデルを計算流体力学モデルに少なくとも提供することを含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項25】
前記血流情報の第2の値を計算することは、前記計算流体力学モデルにおいて使用される流動境界条件を決定することをさらに含む、請求項24に記載のプロセッサベースのシステム。
【請求項26】
前記血管の狭小化は、狭窄性病変を含む、請求項18に記載のプロセッサベースのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
優先権
本願は、2010年8月12日出願の米国仮出願第61/401,462号、2010年8月20日出願の米国仮出願第61/401,915号、2010年8月26日出願の米国仮出願第61/402,308号、2010年8月27日出願の米国仮出願第61/402,345号、および2010年10月1日出願の米国仮出願第61/404,429号からの優先権の利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
実施形態は、流体流動のモデリングのための方法およびシステム、より具体的には患者固有の血流のモデリングのための方法およびシステムを含む。
【背景技術】
【0003】
冠動脈疾患は、心臓に血液を供給する血管に冠動脈病変、例えば狭窄(血管の異常な狭小化)を発生させる可能性がある。結果として、心臓への血流が制限される恐れがある。冠動脈疾患に罹患した患者は、身体労作の慢性安定狭心症または安静時の不安定狭心症と称される胸痛を経験し得る。疾患のより重篤な症状は、心筋梗塞または心臓発作につながる恐れがある。
【0004】
冠動脈病変に関連するより正確なデータ、例えば、サイズ、形状、位置、機能的重要性(例えば、その病変が血流に影響を及ぼすかどうか)などを提供する必要性が存在する。胸痛を患っている、および/または冠動脈疾患の兆候を示す患者は、冠動脈病変に関連する何らかの間接的な証拠を提供し得る1つまたは複数の検査を受けることがある。例えば、非侵襲的検査には、心電図、血液検査からのバイオマーカー評価、トレッドミル試験、心エコー検査、単一ポジトロン放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、およびポジトロン放出断層撮影法(PET)が含まれるであろう。しかしこれらの非侵襲的検査は、通常は、冠動脈病変の直接的評価を提供しない、または血流量を評価しない。非侵襲的検査は、心臓の電気的活動の変化(例えば、心電図記録法(ECG)を用いて)、心筋の動作(例えば、負荷心エコー法を用いて)、心筋の灌流(例えば、PETまたはSPECTを用いて)、または代謝変化(例えば、バイオマーカーを用いて)を探ることによって冠動脈病変の間接的な証拠を提供することができる。
【0005】
例えば、解剖学的データは、冠動脈コンピュータ断層血管造影(CCTA)によって非侵襲的に取得することができる。CCTAは、胸痛を有する患者の画像化に使用することができ、造影剤の静脈内注入後に心臓および冠動脈を画像化するためのコンピュータ断層撮影(CT)技術の使用を伴う。しかしながら、CCTAは、冠動脈病変の機能的重要性、例えばその病変が血流に影響を及ぼすかどうかについての直接的情報を提供することはできない。さらに、CCTAは単に診断的検査であることから、他の生理学的状態下、例えば運動下での冠状動脈の血流、血圧、または心筋灌流の変化を予想するために使用することはできず、またインターベンションの結果を予想するために使用することもできない。
【0006】
したがって、患者は、冠動脈病変を可視化するために診断的心臓カテーテル検査などの侵襲的検査を要することもある。診断的心臓カテーテル検査は、従来の冠動脈造(CCA)を実施して、動脈のサイズおよび形状の画像を医師に提供することによって、冠動脈病変の解剖学的データを収集することを含み得る。しかしながら、CCAは、冠動脈病変の機能的重要性を評価するためのデータは提供しない。例えば、医師は、その病変が機能的に重要であるかどうかを特定せずに、冠動脈病変が有害であるかどうかを診断することはできないかもしれない。したがって、CCAは、病変が機能的に重要であるか否かにかかわらず、CCAで発見されたあらゆる病変にステントを挿入する、一部のインターベンション心臓専門医の「oculostenotic reflex(発見した狭窄に対する反射)」と呼ばれる行為につながっている。結果として、CCAは、患者に対する不必要な手術につながる可能性があり、これは患者に副次的なリスクを与える可能性があり、また患者に不必要な医療費をもたらし得る。
【0007】
診断的心臓カテーテル検査において、観察される病変の冠血流予備量比(FFR)を測定することによって、冠動脈病変の機能的重要性を侵襲的に評価することができる。FFRは、例えばアデノシンの静脈内投与によって誘発される冠動脈血流増加条件下での、病変下流の平均血圧を病変上流の平均血圧、例えば大動脈圧で除算した比として定義される。この血圧は、患者にプレッシャーワイヤーを挿入することによって測定することができる。したがって、特定されたFFRに基づく病変の治療の決定は初期費用後になされ、また診断的心臓カテーテル検査のリスクは既に生じている。
【0008】
したがって、冠動脈の解剖学的形態、心筋灌流、および冠動脈血流を非侵襲的に評価する方法に対する必要性が存在する。そのような方法およびシステムは、冠動脈疾患が疑われる患者を診断し、治療を計画する心臓専門医に利益をもたらし得る。さらに、直接測定できない条件下、例えば運動下での冠動脈血流および心筋灌流を予測し、冠動脈血流および心筋灌流に対する薬物治療、インターベンション治療、および外科治療の結果を予測する方法に対する必要性も存在する。
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的および説明的なものにすぎず、本開示を制限するものではないことを理解すべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成し、前記三次元モデルとこの物理学に基づくモデルに基づいて、患者の心臓内の冠血流予備量比を特定するようにさらに構成される。
【0011】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いる患者固有の心血管情報を明らかにするための方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムに、患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、三次元モデルおよび物理学に基づくモデルに基づいて患者の心臓内の冠血流予備量比を明らかにすることとをさらに含む。
【0012】
別の実施形態によると、患者固有の心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、少なくとも1つのコンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づいて、患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデル作成することを含む。本方法は、患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成することと、三次元モデルおよび物理学に基づくモデルに基づいて、患者の心臓内の冠血流予備量比を明らかにすることをさらに含む。
【0013】
別の実施形態によると、患者の治療を計画するためのシステムは、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにし、三次元モデルを修正し、その修正三次元モデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにするようにさらに構成される。
【0014】
別の実施形態によると、患者の治療を計画するための方法を実行するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。本方法は、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状の所望の変化に基づく、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることをさらに含む。
【0015】
別の実施形態によると、コンピュータシステムを用いて患者の治療を計画するための方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムに、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることをさらに含む。また本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて三次元モデルを修正することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この修正された三次元モデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることとも含む。
【0016】
別の実施形態によると、患者の治療を計画するためのシステムは、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。また、この少なくとも1つのコンピュータシステムは、三次元モデルおよび患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにし、患者の生理学的状態を修正し、この修正された患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにするようにも構成される。
【0017】
別の実施形態によると、患者の治療を計画するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。本方法は、三次元モデルおよび患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、患者の生理学的状態の所望の変化に基づく、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることとをさらに含む。
【0018】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いる患者の治療を計画するための方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムに、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。また本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、三次元モデルおよび患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることも含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の生理学的状態を修正し、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この修正された患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることをさらに含む。
【0019】
別の実施形態によると、患者固有の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。また、この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者の解剖学的構造体の一部を通る全ての流動に関連する全抵抗を特定し、三次元モデル、患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および特定された全抵抗に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにするようにも構成される。
【0020】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いる患者固有の心血管情報を明らかにするための方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムに、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力し、この少なくとも1つのコンピュータを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することを含む。また、本方法は、少なくとも1つのコンピュータを用いて、患者の解剖学的構造体の一部を通る全ての流動と関連する全抵抗を特定することと、少なくとも1つのコンピュータを用いて、三次元モデル、患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および特定された全抵抗に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることも含む。
【0021】
別の実施形態によると、患者固有の心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。また、本方法は、患者の解剖学的構造体の一部を通る全ての流動に関連する全抵抗を特定することと、三次元モデル、患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および特定された全抵抗に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることを含む。
【0022】
別の実施形態によると、ウェブサイトを用いて患者固有の心血管情報を提供するためのシステムは、遠隔のユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にし、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状の少なくとも一部に関する患者固有のデータを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、その三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。また、この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の第1の三次元シミュレーションに関する表示情報をウェブサイトを用いて遠隔のユーザに伝達するようにも構成される。この三次元シミュレーションは、血流の特徴に関する決定された情報を含む。
【0023】
別の実施形態によると、ウェブサイトを用いて患者固有の心血管情報を提供するための方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、遠隔のユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にすることと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することとを含む。また、本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることも含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の第1の三次元シミュレーションに関する表示情報をウェブサイトを用いて遠隔のユーザに伝達することをさらに含む。この三次元シミュレーションは、血流の特徴に関する明らかにされた情報を含む。
【0024】
別の実施形態によると、ウェブサイトを用いて患者固有の心血管情報を提供するための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、遠隔のユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にすることと、患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することとを含む。また、本方法は、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の第1の三次元シミュレーションに関する表示情報をウェブサイトを用いて遠隔のユーザに伝達することも含む。この三次元シミュレーションは、血流の特徴に関する明らかにされた情報を含む。
【0025】
別の実施形態によると、患者固有の時変心血管情報を明らかにするためのシステムは、異なる時点の患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する時変患者固有データを受信し、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。また、この少なくとも1つのコンピュータシステムは、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関する情報を明らかにするようにも構成される。
【0026】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者固有の時変心血管情報明らかにするための方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、異なる時点の患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する時変患者固有データを受信することを含む。また、本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することも含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに関する情報に基づいて、患者の解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関する情報を明らかにすることをさらに含む。
【0027】
別の実施形態によると、患者固有の時変心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、異なる時点の患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する時変患者固有データを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、三次元モデルおよび患者の解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに関する情報に基づいて、患者の解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関連する情報を明らかにすることとを含む。
【0028】
別の実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この解剖学的構造体は、血管の少なくとも一部を含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデル作成し、その三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報明らかにするようにさらに構成される。また、この少なくとも1つのコンピュータシステムは、血管内のプラークの位置を特定するようにも構成される。
【0029】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者の心血管情報を明らかにするための方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信することを含む。この解剖学的構造体は、血管の少なくとも一部を含む。また、本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることも含む。本方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、血管内のプラークを特定することをさらに含む。
【0030】
別の実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信することを含む。この解剖学的構造体は、血管の少なくとも一部を含む。また、本方法は、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、その三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、患者の解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、血管内のプラークの位置を特定することも含む。
【0031】
別の実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この解剖学的構造体は、複数の動脈の少なくとも一部と、その複数の動脈の少なくとも一部に連結する組織とを含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成し、組織を表す三次元モデルの少なくとも一部をセグメントに分割し、その三次元モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、それらのセグメントのうちの少なくとも1つに関連する血流の特徴に関する情報を明らかにするようにさらに構成される。
【0032】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者の心血管情報を明らかにするための方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することを含む。この解剖学的構造体は、複数の動脈の少なくとも一部と、その複数の動脈の少なくとも一部に連結する組織とを含む。また、本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この三次元モデルを拡張して拡大モデルにすることも含む。本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、組織を表す拡大モデルの少なくとも一部をセグメントに分割することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この拡大モデルおよび患者の生理学的状態に基づいて、これらのセグメントのうちの少なくとも1つに関連する血流の特徴に関する情報を明らかにすることをさらに含む。
【0033】
別の実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することを含む。この解剖学的構造体は、複数の動脈の少なくとも一部と、その複数の動脈の少なくとも一部に連結する組織とを含む。また、本方法は、患者固有のデータに基づく患者の解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、組織を表すその三次元モデルの少なくとも一部をセグメントに分割することと、三次元モデルおよび解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、それらのセグメントのうちの少なくとも1つに関連する血流の特徴に関する情報を明らかにすることも含む。
【0034】
別の実施形態によると、患者の心血管情報を明らかにするためのシステムは、患者の脳の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む。この少なくとも1つのコンピュータシステムは、患者固有のデータに基づく患者の脳の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、その三次元モデルおよび患者の脳に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の脳内の血流の特徴に関する情報を明らかにするようにさらに構成される。
【0035】
別の実施形態によると、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いる患者固有の心血管情報を明らかにするための方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムに、患者の複数の大脳動脈の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することを含む。また、本方法は、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、患者固有のデータに基づく患者の大脳動脈の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、この少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、この三次元モデルおよび患者の大脳動脈に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の大脳動脈内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることも含む。
【0036】
別の実施形態によると、患者固有の心血管情報を明らかにするための方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、少なくとも1つのコンピュータシステム上で使用するための非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。本方法は、患者の脳の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、その患者固有のデータに基づく患者の脳の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、この三次元モデルおよび患者の脳に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、患者の脳内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることとを含む。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
患者の心血管情報を明らかにするためのシステムであって、前記患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づいて前記患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、
前記患者の心臓の血流の特徴の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成し、および
前記三次元モデルおよび前記物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の心臓内の冠血流予備量比を特定するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目2)
前記患者の心臓の少なくとも前記一部を表す前記三次元モデルが、大動脈の少なくとも一部と、前記大動脈の一部から発する複数の冠動脈の少なくとも一部とを含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記冠血流予備量比が、前記大動脈内の圧力と前記複数の冠動脈内のある位置における圧力との比を示し、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記複数の冠動脈内の複数の位置における前記冠血流予備量比を特定するように構成される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記患者固有のデータが画像データを含む、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記画像データが、コンピュータ断層撮影または磁気共鳴画像化技術によって提供される、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記画像データを用いて前記患者の心臓の冠動脈内腔の境界の位置を特定することによって、前記画像データに基づく前記三次元モデルを作成するように構成される、項目4に記載のシステム。
(項目7)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記画像データにおける輝度値の変化に基づいて前記境界の位置を特定するように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記物理学に基づくモデルが、前記三次元モデルの境界を通る血流を表す少なくとも1つの集中パラメータモデルを含む、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、充血のレベル、運動のレベル、または薬物のうちの少なくとも1つに関連するパラメータを用いて前記冠血流予備量比を特定するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記充血のレベルに関連するパラメータを用いて前記冠血流予備量比を特定するように構成され、前記パラメータが、前記患者の冠動脈抵抗、前記患者の大動脈血圧、または前記患者の心拍数に関連する、項目9に記載のシステム。
(項目11)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者固有の心血管情報を明らかにする方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムに、前記患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記物理学に基づくモデルに基づいて前記患者の心臓内の冠血流予備量比を特定することと、を含む、方法。
(項目12)
前記決定された冠血流予備量比に基づいて、前記患者の心臓の冠動脈における機能的に重要な狭窄の位置を特定することをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記患者の心臓の少なくとも一部を表す前記三次元モデルが、大動脈の少なくとも一部と、前記大動脈の一部から発する複数の冠動脈の少なくとも一部とを含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記冠血流予備量比が、前記大動脈内の圧力と前記複数の冠動脈内のある位置における圧力との比を示し、
前記冠血流予備量比が、前記複数の冠動脈内の複数の位置において特定される、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記患者固有のデータが、前記患者の心臓の画像データを含み、前記三次元モデルを作成することが、前記画像データを用いて前記患者の心臓の前記複数の冠動脈内腔の境界の位置を特定することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記境界が、前記画像データにおける輝度値の変化に基づいて位置特定される、項目15に記載の方法。
(項目17)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者固有の心血管情報を特定するための方法であって、
前記患者の心臓の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の心臓の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記患者の心臓の血流の特徴に関連する物理学に基づくモデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の心臓内の冠血流予備量比を特定することと、を含む方法を実行するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、少なくとも1つのコンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目18)
前記方法が、
3つの次元に沿って前記心臓の冠動脈中の複数の位置における前記冠血流予備量比を示す前記患者の心臓の三次元シミュレーションを作製することをさらに含む、項目17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
(項目19)
前記冠血流予備量比が、色または陰影を用いて前記三次元シミュレーション上に示され、前記冠血流予備量比の変化が色または陰影の変化によって示される、項目18に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目20)
前記患者の心臓の少なくとも一部を表す前記三次元モデルが、大動脈の少なくとも一部と、前記大動脈の一部から発する複数の冠動脈の少なくとも一部とを含み、
前記三次元シミュレーションが、前記冠動脈中の複数の位置における前記冠血流予備量比を含む、項目19に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目21)
患者の治療を計画するためのシステムであって、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、
前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにし、
前記三次元モデルを修正し、
前記修正された三次元モデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む、システム。
(項目22)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、ユーザから受信した入力であって、前記患者の治療計画の選択を含む入力に基づいて、前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目21に記載のシステム。
(項目23)
前記選択された治療計画が、前記患者の前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状の変化に関連し、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記選択された治療計画に基づいて、前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記受信される入力が、前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状を変化させるための前記患者の前記解剖学的構造体における位置を含み、前記位置は前記ユーザによって選択され、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記選択された治療計画および前記選択された位置に基づいて、前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目23に記載のシステム。
(項目25)
前記選択された治療計画が、前記患者の前記選択された位置にステントを挿入する計画を含み、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記三次元モデルによって表される内腔を拡大することによって前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記選択された治療計画が、前記患者の前記選択された位置にバイパスを追加する計画を含み、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記三次元モデルにおいて内腔に向かって第1のバイパスを追加することによって前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目24に記載のシステム。
(項目27)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記患者の前記解剖学的構造体内の複数の位置において前記第1の情報と前記第2の情報との差を明らかにするようにさらに構成される、項目21に記載のシステム。
(項目28)
前記第1の情報および前記第2の情報がそれぞれ、前記患者の前記解剖学的構造体内の血圧、血液速度、血流量、または冠血流予備量比うちの少なくとも1つを含む、項目21に記載のシステム。
(項目29)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目21に記載のシステム。
(項目30)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者の治療を計画するための方法であって、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、前記患者固有のデータに基づく前記患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかに明らかにすることと、前記患者の前記解剖学的構造体の幾何学的形状の所望の変化に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることと、を含む方法を実行するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目31)
前記方法が、
治療計画を選択するユーザから受信する入力に基づいて、前記三次元モデルを修正することと、
前記修正に基づいて、前記第2の情報を明らかにすることをさらに含む、項目30に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目32)
前記選択された治療計画が、前記患者の前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状の変化と関連し、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記選択された治療計画に基づいて前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目31に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目33)
前記受信された入力が、前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状を変化させるための前記患者の前記解剖学的構造体における位置を含み、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記選択された治療計画および前記選択された位置に基づいて前記三次元モデルを修正するようにさらに構成される、項目32に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
(項目34)
前記方法が、
前記患者の前記解剖学的構造体内の複数の位置における前記第1の情報と前記第2の情報との差を明らかにすることをさらに含む、項目30に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目35)
前記第1の情報および前記第2の情報がそれぞれ、前記患者の前記解剖学的構造体内の血圧、血液速度、血流量、または冠血流予備量比を含む、項目30に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目36)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目30に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目37)
コンピュータシステムを用いて患者の治療を計画するための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムに、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルを修正することと、および前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記修正三次元モデルに基づいて前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目38)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第1の情報を含む三次元シミュレーションを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元シミュレーションに基づく次数低減モデルを作成することをさらに含み、
前記第2の情報が前記次数低減モデルを用いて明らかにされる、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記次数低減モデルが集中パラメータモデルである、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記三次元モデルが、ユーザから受信する第1の入力であって、前記ユーザによって選択された第1の治療計画を示す第1の入力に基づいて修正される、項目37に記載の方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第1の入力とは別に、前記ユーザから受信する第2の入力であって、前記ユーザによって選択された第2の治療計画を示す第2の入力に基づいて前記三次元モデルを修正することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第2の入力に基づいて修正された前記三次元モデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第3の情報を明らかにすることと、および
前記第2の情報を前記第3の情報と比較することによって、前記第1および第2の治療計画を比較することと、をさらに含む、方法。
(項目41)
患者の治療を計画するためのシステムであって、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、
前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにし、
前記患者の前記生理学的状態を修正し、
前記患者の前記修正された生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目42)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、ユーザから受信する入力であって、前記患者のための治療計画の選択を含む入力に基づいて、前記患者の前記生理学的状態を修正するようにさらに構成される、項目41に記載のシステム。
(項目43)
前記選択された治療計画が、前記患者の心拍出量、運動のレベル、充血のレベル、または薬物療法のうちの少なくとも1つの変化に関連し、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記選択された治療計画に基づいて前記患者の前記生理学的状態を修正するようにさらに構成される、項目42に記載のシステム。
(項目44)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記患者の前記解剖学的構造体を通る血流に関連するパラメータを変化させることによって、前記患者の前記生理学的状態を修正するようにさらに構成される、項目43に記載のシステム。
(項目45)
前記変化させた血流に関するパラメータが、冠動脈抵抗、大動脈血圧、または心拍数のうちの少なくとも1つを含む、項目44に記載のシステム。
(項目46)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記患者の前記解剖学的構造体内の複数の位置における前記第1の情報と前記第2の情報との差を明らかにするようにさらに構成される、項目41に記載のシステム。
(項目47)
前記第1の情報および前記第2の情報がそれぞれ、前記患者の前記解剖学的構造体内の血圧、血液速度、血流量、または冠血流予備量比のうちの少なくとも1つを含む、項目41に記載のシステム。
(項目48)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目41に記載のシステム。
(項目49)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者の治療を計画するための方法であって、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、前記患者固有のデータに基づく前記患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、および
前記患者の前記生理学的状態の変化に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることと、を含む、方法を実行するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含むコンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目50)
前記第2の情報が、前記患者の心拍出量、心拍数、一回拍出量、血圧、労作または運動のレベル、充血のレベル、または薬物療法のうちの少なくとも1つの変化に関連する選択された治療計画に基づいて明らかにされる、項目49に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目51)
前記方法が、前記患者の前記解剖学的構造体を通る血流に関連するパラメータを変化させることによって、前記患者の前記生理学的状態を修正することをさらに含む、項目50に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目52)
前記変化させた血流に関するパラメータが、冠動脈抵抗、大動脈血圧、または心拍数のうちの少なくとも1つを含む、項目51に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目53)
前記方法が、
前記患者の前記解剖学的構造体内の複数の位置において前記第1の情報と前記第2の情報との差を明らかにすることをさらに含む、項目49に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目54)
前記第1の情報および前記第2の情報がそれぞれ、前記患者の前記解剖学的構造体内の血圧、血液速度、血流量、または冠血流予備量比のうちの少なくとも1つを含む、項目49に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目55)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目49に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目56)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者の治療を計画するための方法であって、少なくとも1つのコンピュータシステムに、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に関する情報に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の前記生理学的状態を修正することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の前記修正された生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目57)
前記患者の前記生理学的状態を修正することが、前記患者の前記解剖学的構造体を通る血流に関するパラメータを変更することを含み、
前記変更されたパラメータが、冠動脈抵抗、大動脈血圧、または心拍数のうちの少なくとも1つを含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第1の情報を含む三次元シミュレーションを作成することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元シミュレーションに基づく次数低減モデルを作成することをさらに含み、
前記第2の情報が前記次数低減モデルを用いて明らかにされる、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記次数低減モデルが集中パラメータモデルである、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記患者の前記生理学的状態を修正することが、前記ユーザから受信した第1の入力のであって、前記ユーザによって選択された第1の治療計画を示す第1の入力に基づく項目56に記載の方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第1の入力とは別に、前記ユーザから受信する第2の入力であって、前記ユーザによって選択された第2の治療計画を示す第2の入力に基づいて前記患者の前記生理学的状態を修正することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記第2の入力に基づいて修正された前記生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第3の情報を明らかにすることと、および
前記第2の情報と前記第3の情報とを比較することによって、前記第1および第2の治療計画を比較することと、をさらに含む、方法。
(項目61)
患者固有の心血管情報を明らかに明らかにするためのシステムであって、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、
前記患者の前記解剖学的構造体の前記一部を通る全流量に関連する全抵抗を特定し、
前記三次元モデル、前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および前記特定された全抵抗に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目62)
前記患者の前記解剖学的構造体が、大動脈の少なくとも一部と、前記大動脈の一部から発する複数の冠動脈の少なくとも一部とを含み、および前記全抵抗が前記複数の冠動脈を通る全流出量に関連する、項目61に記載のシステム。(項目63)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記決定された全抵抗に基づいて前記複数の冠動脈それぞれの個々の抵抗を特定し、および
前記個々の抵抗を前記物理学に基づくモデルに組込むことによって、前記特定された個々の抵抗に基づいて前記血流の特徴に関する前記情報を明らかにするようにさらに構成される、項目62に記載のシステム。
(項目64)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記患者の測定された血圧を受信し、
前記測定された血圧に基づいて前記全抵抗を特定するようにさらに構成される、項目63に記載のシステム。
(項目65)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記解剖学的構造体の少なくとも一部の特定された質量または体積に基づいて、前記解剖学的構造体の前記一部を通る前記全流量を特定するようにさらに構成される、項目61に記載のシステム。
(項目66)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記患者固有のデータを用いて、前記解剖学的構造体の少なくとも一部の前記質量または体積を特定するようにさらに構成される、項目65に記載のシステム。
(項目67)
前記患者固有のデータが画像データを含み、前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記画像データを用いて、前記解剖学的構造体の少なくとも一部の前記質量または体積を特定するようにさらに構成される、項目66に記載のシステム。
(項目68)
前記情報が、前記患者の解剖学的構造体内の血圧、血液速度、または血流量を含む、項目61に記載のシステム。
(項目69)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目61に記載のシステム。
(項目70)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者固有の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムに、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
少なくとも1つのコンピュータを用いて、前記患者の前記解剖学的構造体の前記一部を通る全流量に関連する全抵抗を特定することと、および
少なくとも1つのコンピュータを用いて、前記三次元モデル、前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および前記決定された全抵抗に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目71)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータを使用して、前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部の質量または体積を特定することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記特定された質量または体積に基づく前記全流量を特定することをさらに含む、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心筋または脳である、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記患者の血圧を測定することをさらに含み、前記全抵抗が前記測定された血圧に基づいて特定される、項目71に記載の方法。
(項目74)
前記患者の前記解剖学的構造体が、複数の連結する動脈の少なくとも一部を含む項目73に記載の方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記特定された全抵抗に基づいて、前記複数の動脈それぞれの個々の抵抗を特定することをさらに含む、方法。
(項目75)
前記情報が、前記患者の解剖学的構造体内の血圧、血液速度、または血流量を含む、項目70に記載の方法。
(項目76)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目70に記載の方法。
(項目77)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者固有の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、前記患者固有のデータに基づく前記患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記患者の前記解剖学的構造体の前記一部を通る全流量に関連する全抵抗を特定することと、および
前記三次元モデル、前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデル、および前記特定された全抵抗に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることを含む方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目78)
前記患者の前記解剖学的構造体が、大動脈の少なくとも一部と、前記大動脈の前記一部から発する複数の冠動脈の少なくとも一部とを含み、
前記全抵抗が、前記複数の冠動脈を通る全流出量に関連する、項目77に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目79)
前記方法が、
前記解剖学的構造体の少なくとも一部の特定された質量または体積に基づいて、前記解剖学的構造体の一部を通る前記全流量を特定することをさらに含む、項目77に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目80)
前記患者固有のデータが画像データを含み、前記方法が、
前記画像データを用いて、前記解剖学的構造体の少なくとも一部の前記質量または体積を特定することをさらに含む、項目79に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目81)
ウェブサイトを用いて患者固有の心血管情報を提供するためのシステムであって、
遠隔ユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にし、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状の少なくとも一部に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにし、前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の第1の三次元シミュレーションであって、前記血流の特徴に関する前記明らかにされた情報を含む三次元シミュレーションに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達するように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目82)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記ウェブサイトを介して、前記患者の治療計画を選択する前記遠隔ユーザからの入力を受信するようにさらに構成される、項目81に記載のシステム。
(項目83)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記受信された入力に基づいて、前記三次元モデルまたは前記患者の前記生理学的状態のうちの少なくとも1つを修正し、
前記受信された入力に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにするようにさらに構成される、項目82に記載のシステム。
(項目84)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の第2の三次元シミュレーションであって、前記血流の特徴に関する前記明らかにされた第2の情報を含む第2の三次元シミュレーションに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達するようにさらに構成される、項目83に記載のシステム。
(項目85)
前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する前記情報が、前記患者の前記解剖学的構造体に関連する保存された物理学に基づくモデルに基づいてさらに明らかにされる、項目81に記載のシステム。
(項目86)
前記患者の前記解剖学的構造体が、心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目81に記載のシステム。
(項目87)
前記情報が、前記患者の解剖学的構造体内の血圧、血液速度、または血流量を含む、項目81に記載のシステム。
(項目88)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
複数の患者に関する患者固有のデータを受信し、および
前記複数の患者の前記血流の特徴に関する前記情報を明らかにするようにさらに構成される、項目81に記載のシステム。
(項目89)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、複数の遠隔ユーザが前記ウェブサイトに安全にアクセスすることを可能にするように構成される、項目81に記載のシステム。
(項目90)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記三次元モデルに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達するように構成される、項目81に記載のシステム。
(項目91)
ウェブサイトを用いて患者固有の心血管情報を提供するための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、遠隔ユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にすることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の第1の三次元シミュレーションであって、前記血流の特徴に関する前記明らかにされた情報を含む三次元シミュレーションに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達することと、を含む、方法。
(項目92)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記ウェブサイトを使用して、前記患者の治療計画を選択する前記遠隔ユーザからの入力を受信することをさらに含む、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記受信された入力に基づいて、前記三次元モデルまたは前記患者の前記生理学的状態のうちの少なくとも1つを修正することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記受信された入力に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることをさらに含む、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の前記解剖学的構造体の第2の三次元シミュレーションであって、前記血流の特徴に関する前記明らかにされた第2の情報を含む第2の三次元シミュレーションに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達することをさらに含む、項目93に記載の方法。
(項目95)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者固有の心血管情報をウェブサイトを用いて提供するための方法であって、
遠隔ユーザがウェブサイトにアクセスすることを可能にすることと、
前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、前記患者固有のデータに基づく前記患者の解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する第1の情報を明らかにすることと、および
前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の第1の三次元シミュレーションであって、前記血流の特徴に関する前記明らかにされた情報を含む三次元シミュレーションに関する表示情報を前記ウェブサイトを用いて前記遠隔ユーザに伝達することと、を含む方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目96)
前記方法が、
前記ウェブサイトを用いて、前記患者の治療計画を選択する前記遠隔ユーザからの入力を受信することをさらに含む、項目95に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目97)
前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも前記一部の前記血流の特徴に関する前記情報が、前記患者の前記解剖学的構造体に関連する保存された物理学に基づくモデルに基づいてさらに明らかにされる、項目95に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目98)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目95に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目99)
前記方法が、
複数の患者に関する患者固有のデータを受信することと、および
前記複数の患者の前記血流の特徴に関する前記情報を明らかにすることをさらに含む、項目95に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目100)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、複数の遠隔ユーザが前記ウェブサイトに安全にアクセスすることを可能にするように構成される、項目95に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目101)
患者固有の時変心血管情報を明らかにするためのシステムであって、
異なる時点の前記患者の解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する時変患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、および
前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関する情報を明らかにするように構成される少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目102)
前記時変患者固有のデータが、異なる時点の前記患者の前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状に関するものである、項目101に記載のシステム。
(項目103)
前記患者固有のデータが、心周期にわたる異なる時点の画像データを含む、項目101に記載のシステム。
(項目104)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の複数の連結する動脈の少なくとも一部を含み、
前記患者固有のデータが、前記複数の動脈血管形状の変化に関する情報を含む、項目101に記載のシステム。
(項目105)
前記複数の動脈が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚に位置する、項目104に記載のシステム。
(項目106)
前記血流の特徴が、血圧、血液速度、または血流量のうちの少なくとも1つを含む、項目101に記載のシステム。
(項目107)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、
前記患者の前記解剖学的構造体内の3つの次元に沿った複数の位置における経時的な前記血流の特徴の変化に関する情報を明らかにするようにさらに構成される、項目101に記載のシステム。
(項目108)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者固有の時変心血管情報を明らかにするための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、異なる時点の前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する時変患者固有のデータを受信することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに関する前記情報に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関する情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目109)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて前記物理学に基づくモデルを保存することをさらに含む、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚の複数の動脈の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目108に記載の方法。
(項目111)
前記時変患者固有のデータが、異なる時点の前記患者の前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状に関連する、項目108に記載の方法。
(項目112)
前記患者固有のデータが、心周期にわたる異なる時点の画像データを含む、項目108に記載の方法。
(項目113)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の複数の連結する動脈の少なくとも一部を含み、および
前記患者固有のデータが、前記複数の動脈の血管形状の変化に関する情報を含む、項目108に記載の方法。
(項目114)
前記複数の動脈が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚に位置する、項目113に記載の方法。
(項目115)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者固有の時変心血管情報を明らかにするための方法であって、
異なる時点の前記患者の解剖学的構造体の幾何学的形状に関する時変患者固有のデータを受信することと、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記患者の前記解剖学的構造に関連する物理学に基づくモデルに関する情報に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の経時的な血流の特徴の変化に関する情報を明らかに明らかにすることを含む方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目116)
前記時変患者固有のデータが、異なる時点の前記患者の前記解剖学的構造体の前記幾何学的形状に関連する、項目115に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目117)
前記患者固有のデータが、心周期にわたる異なる時点の画像データを含む、項目115に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目118)
前記患者の前記解剖学的構造体が、前記患者の複数の連結する動脈の少なくとも一部を含み、および
前記患者固有のデータが、前記複数の動脈の血管形状の変化に関する情報を含む、項目115に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目119)
前記複数の動脈が、前記患者の心臓、頸部、頭部、胸部、腹部、腕、または脚に位置する、項目118に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目120)
前記血流の特徴が、血圧、血液速度、または血流量のうちの少なくとも1つを含む、項目115に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目121)
患者の心血管情報を明らかにするためのシステムであって、
前記患者の解剖学的構造体であって、血管の少なくとも一部を含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成し、
前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにし、
前記血管内のプラークの位置を特定するように構成される少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目122)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記プラークに対する応力、圧力、力、またはひずみのうちの少なくとも1つを特定するようにさらに構成される、項目121に記載のシステム。
(項目123)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記プラークの破裂に対する脆弱性を評価するようにさらに構成される、項目121に記載のシステム。
(項目124)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記プラークの力の前記プラークの応力に対する比に基づいて、前記プラークの破裂に対する脆弱性を評価するようにさらに構成される、項目123に記載のシステム。
(項目125)
前記強度が、前記プラークの材料特性に基づいて明らかにされ、
前記応力は、前記プラークに対する血流力または心臓運動によって誘発されるひずみによる、急激または累積的な応力を含む、項目124に記載のシステム。
(項目126)
前記患者の前記生理学的状態が、前記患者の心拍出量、心拍数、一回拍出量、血圧、労作または運動のレベル、充血のレベル、または薬物療法のうちの少なくとも1つを含む、項目121に記載のシステム。
(項目127)
前記位置が、前記少なくとも1つのコンピュータシステムによって、またはユーザからの入力に基づいて特定される、項目121に記載のシステム。
(項目128)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者の心血管情報を明らかにするための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の解剖学的構造体であって、血管の少なくとも一部を含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記血管内のプラークを特定することと、を含む、方法。
(項目129)
前記プラークが、前記少なくとも1つのコンピュータシステムによって、またはユーザからの入力に基づいて特定される、項目128に記載の方法。
(項目130)
前記プラークの表面に作用する圧力、力、またはせん断応力のうちの少なくとも1つを計算することをさらに含む、項目128に記載の方法。
(項目131)
圧力、力、またはせん断応力のうちの前記少なくとも1つが、前記血流の特徴に関する前記決定された情報に基づいて計算される、項目130に記載の方法。
(項目132)
前記血流の特徴が、血圧、血液速度、または血流量のうちの少なくとも1つを含む、項目128に記載の方法。
(項目133)
前記患者固有のデータが、異なる時点における前記患者の前記解剖学的構造体の少なくとも一部の前記幾何学的形状に関する時変データを含む、項目128に記載の方法であって、
経時的な前記プラークの変形に関する情報を明らかにすることをさらに含む、方法。
(項目134)
経時的な前記プラークの変形に関する前記情報が、
長手方向の延長、長手方向の短縮、ねじれ、半径方向の拡張、半径方向の圧縮、または屈曲のうちの少なくとも1つを含む、項目133に記載の方法。
(項目135)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記患者の解剖学的構造体であって、血管の少なくとも一部を含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状および少なくとも1つの材料特性に関する患者固有のデータを受信することと、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、
前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、および
前記血管内のプラークの位置を特定することと、を含む方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目136)
前記解剖学的構造体が、複数の動脈および前記複数の動脈の少なくとも一部と連結する組織の少なくとも一部を含み、前記方法が、前記プラークの潜在的な破裂の影響を受ける前記解剖学的構造体の組織セグメントを特定することをさらに含む、項目135に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
(項目137)
前記方法が、前記プラークの前記潜在的破裂後の潜在的な経路を明らかにすることをさらに含む、項目136に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目138)
前記方法が、前記プラークのサイズ、または前記プラークの下流の前記血管の少なくとも一部のサイズのうちの少なくとも1つに基づいて、前記組織セグメントが前記プラークの前記潜在的な破裂の影響を受け得るか否かを明らかにすることをさらに含む、項目136に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目139)
前記方法が、複数の組織セグメントの1つ1つに視覚的指標を提供することをさらに含み、各視覚的指標が、前記プラークの前記潜在的な破裂により前記それぞれの組織セグメントに影響を与える可能性を示す、項目136に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目140)
前記解剖学的構造体が、複数の動脈の少なくとも一部と、前記複数の動脈の少なくとも一部に連結する組織とを含み、前記方法が、
前記プラークの潜在的な破裂による前記組織の少なくとも一部への血流の変化を明らかにすることをさらに含む、項目135に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目141)
患者の心血管情報を明らかにするためのシステムであって、
前記患者の解剖学的構造体であって、複数の動脈の少なくとも一部と、前記複数の動脈の少なくとも一部と連結する組織とを含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成し、
前記組織を表す前記三次元モデルの少なくとも一部をセグメントに分割し、
前記三次元モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記セグメントのうちの少なくとも1つと関連する血流の特徴に関する情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを備える、システム。
(項目142)
前記血流の特徴が、前記少なくとも1つのセグメントに入る血流を含む、項目141に記載のシステム。
(項目143)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記セグメントのうちの少なくとも1つをサブセグメントにさらに分割するようにさらに構成され、および
前記血流の特徴が、前記サブセグメントのうちの少なくとも1つに入る血流を含む、項目141に記載のシステム。
(項目144)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、所望の分解能が得られるまで前記セグメントをさらに分割するようにさらに構成される、項目141に記載のシステム。
(項目145)
前記組織が前記複数の動脈の下流にある、項目141に記載のシステム。
(項目146)
前記複数の動脈が、前記患者の頭部または心臓に少なくとも部分的に位置し、
前記組織が心筋組織または脳組織を含む、項目141に記載のシステム。
(項目147)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記それぞれのセグメントに連結する前記複数の動脈のうちの少なくとも1つの動脈のサイズに基づいて、前記セグメントのサイズを特定明らかにするようにさらに構成される、項目141に記載のシステム。
(項目148)
前記患者の前記生理学的状態が、前記患者の心拍出量、心拍数、一回拍出量、血圧、労作または運動のレベル、充血のレベル、または薬物療法のうちの少なくとも1つを含む、項目141に記載のシステム。
(項目149)
前記少なくとも1つのコンピュータが、複数の前記セグメントに関連する前記血流の特徴に関する前記情報を示す前記解剖学的構造体の三次元シミュレーションを作製するようにさらに構成される、項目141に記載のシステム。
(項目150)
前記血流の特徴が前記それぞれのセグメントに入る血流を含み、前記それぞれのセグメントに入る前記血流の変動が色または陰影の変動によって示される、項目149に記載のシステム。
(項目151)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者の心血管情報を明らかにするための方法であって、少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者の解剖学的構造体であって、複数の動脈の少なくとも一部と、前記複数の動脈の少なくとも一部に連結する組織とを含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルを拡張して拡大モデルを形成することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記組織を表す前記拡大モデルの少なくとも一部をセグメントに分割することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記拡大モデルおよび前記患者の生理学的状態に基づいて、前記セグメントのうちの少なくとも1つに関連する血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目152)
前記三次元モデルを拡張することが、前記三次元モデルに含まれる前記動脈のうちの少なくとも1つを拡張することを含み、
前記拡大モデルの前記少なくとも1つの部分を分割することが、前記少なくとも1つの動脈の拡張された部分をセグメントに分割することを含み、および
前記血流の特徴に関する前記情報が、前記拡張された部分の前記セグメントのうちの少なくとも1つに関連する、項目151に記載の方法。
(項目153)
前記三次元モデルを拡張することが、前記三次元モデルに含まれる前記動脈のうちの少なくとも1つに連結する動脈の追加の分枝を作成することを含み、
前記拡大モデルの前記少なくとも1つの部分を分割することが、前記追加の分枝のうちの少なくとも1つをセグメントに分割することを含み、および
前記血流の特徴に関する前記情報が、前記少なくとも1つの追加の分枝の前記セグメントのうちの少なくとも1つに関連する、項目151に記載の方法。
(項目154)
前記それぞれのセグメントに連結する前記複数の動脈のうちの少なくとも1つの動脈のサイズに基づいて、前記セグメントのサイズを特定することをさらに含む、項目151に記載の方法。
(項目155)
前記それぞれのセグメントに連結する複数の隣接する動脈のサイズに基づいて、前記セグメントのサイズを特定することをさらに含む、項目151に記載の方法。
(項目156)
前記複数の動脈が、前記患者の頭部または心臓に少なくとも部分的に位置し、
前記組織が心臓組織または脳組織を含み、
前記三次元モデルに含まれる前記複数の動脈のうちの少なくとも1つの動脈が、前記心臓組織または前記脳組織に沿って、または前記心臓組織または前記脳組織内で拡張されるように、前記三次元モデルが拡張される、項目151に記載の方法。
(項目157)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記患者の解剖学的構造体であって、複数の動脈の少なくとも一部と、前記複数の動脈の少なくとも一部と連結する組織とを含む解剖学的構造体の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、
前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記解剖学的構造体を表す三次元モデルを作成することと、前記組織を表す前記三次元モデルの少なくとも一部をセグメントに分割することと、および前記三次元モデルおよび前記解剖学的構造体に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記セグメントのうちの少なくとも1つに関連する血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、を含む方法を実施するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、コンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目158)
前記方法が、
前記明らかにされた情報を前記解剖学的構造体中の複数の位置における前記血流の特徴に関する測定された情報と比較することと、および
前記比較に応じて、前記三次元モデルまたは前記物理学に基づくモデルを調整することを含む、項目157に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目159)
前記物理学に基づくモデルが、前記三次元モデルの境界を通る血流を表す少なくとも1つの集中パラメータモデルを含み、および
前記少なくとも1つの集中パラメータモデルが前記比較に基づいて調整される、項目158に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目160)
前記三次元モデルまたは前記物理学に基づくモデルが、前記明らかにされた情報と前記測定された情報との差が閾値を下回るまで調整される、項目158に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目161)
前記三次元モデルが、前記明らかにされた情報と前記測定された情報との差が閾値を下回るまで前記三次元モデルを拡張することによって調節される、項目158に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目162)
患者の心血管情報を明らかにするためのシステムであって、
前記患者の脳の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信し、
前記患者固有のデータに基づいて前記患者の脳の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成し、および
前記三次元モデルおよび前記患者の脳に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の脳内の血流の特徴に関する情報を明らかにするように構成された少なくとも1つのコンピュータシステムを含む、システム。
(項目163)
前記患者の脳の少なくとも前記一部を表す前記三次元モデルが、複数の大脳動脈の少なくとも一部を含む、項目162に記載のシステム。
(項目164)
前記血流の特徴が、前記複数の大脳動脈内の複数の位置における血流、血圧、または血液速度のうちの少なくとも1つを含む、項目163に記載のシステム。
(項目165)
前記患者固有のデータが画像データを含む、項目162に記載のシステム。
(項目166)
頭蓋外動脈の少なくとも一部、頭蓋内動脈の少なくとも一部、または脳組織のうちの少なくとも1つの前記画像データが提供される、項目165に記載のシステム。
(項目167)
前記画像データが、コンピュータ断層撮影または磁気共鳴画像化技術によって提供される、項目165に記載のシステム。
(項目168)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記画像データを用いて複数の大脳動脈内腔の境界の位置を特定することによって、前記画像データに基づく前記三次元モデルを作成するように構成される、項目165に記載のシステム。
(項目169)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記画像データにおける輝度値の変化に基づいて前記境界の位置を特定するように構成される、項目168に記載のシステム。
(項目170)
前記物理学に基づくモデルが、前記三次元モデルの境界を通る血流を表す少なくとも1つの集中パラメータモデルを含む、項目162に記載のシステム。
(項目171)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、運動のレベル、労作、ストレス、高血圧、または低血圧、あるいは薬物療法のうちの少なくとも1つに関連するパラメータを用いて、前記血流の特徴の関する前記情報を明らかにするように構成される、項目162に記載のシステム。
(項目172)
前記少なくとも1つのコンピュータシステムが、前記運動のレベル、労作、ストレス、高血圧、または低血圧に関連するパラメータを用いて、前記血流の特徴に関する前記情報を明らかにするように構成され、前記パラメータが、前記患者の大脳動脈抵抗、前記患者の大動脈血圧、または前記患者の心拍数に関連する、項目171に記載のシステム。
(項目173)
少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて患者固有の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムに、前記患者の複数の大脳動脈の少なくとも一部の幾何学的形状に関する患者固有のデータを入力することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記患者固有のデータに基づく前記患者の前記大脳動脈の少なくとも前記一部を表す三次元モデルを作成することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて、前記三次元モデルおよび前記患者の前記大脳動脈に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の前記大脳動脈内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることと、を含む、方法。
(項目174)
前記血流の特徴が、前記患者の前記大脳動脈内の複数の位置における、血流、血圧、または血液速度のうちの少なくとも1つを含む、項目173に記載の方法。
(項目175)
前記大脳動脈が、頭蓋外動脈または頭蓋内動脈のうちの少なくとも1つを含む、項目173に記載の方法。
(項目176)
前記三次元モデルが、大動脈の一部、頸動脈の一部、椎骨動脈の一部、または脳組織の一部のうちの少なくとも1つを含む、項目173に記載の方法。
(項目177)
前記患者固有のデータが、前記大脳動脈の少なくとも前記一部の画像データを含み、および前記三次元モデルを作成することが、前記画像データを用いて、前記大脳動脈の少なくとも前記一部の境界を配置することを含む、項目173に記載の方法。
(項目178)
前記境界の位置が、前記画像データにおける輝度値の変化に基づいて特定される、項目177に記載の方法。
(項目179)
前記大脳動脈が少なくとも1つの頭蓋外動脈を含む項目173に記載の方法であって、前記少なくとも1つの頭蓋外動脈内のプラークを特定することと、および
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを用いて前記プラークの破裂に対する脆弱性を評価することと、をさらに含む、方法。
(項目180)
前記血流の特徴に関する前記明らかにされた情報が第1の情報である項目173に記載の方法であって、
前記三次元モデルを修正することと、前記修正三次元モデルに基づいて、前記患者の前記解剖学的構造体内の前記血流の特徴に関する第2の情報を明らかにすることと、をさらに含む、方法。
(項目181)
前記三次元モデルが、少なくとも1つの血管の閉塞、または前記閉塞の修復のうちの少なくとも1つを模擬するように修正される、項目180に記載の方法。
(項目182)
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、患者固有の心血管情報を明らかにするための方法であって、
前記患者の脳の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受信することと、
前記患者固有のデータに基づいて前記患者の脳の少なくとも一部を表す三次元モデルを作成することと、および
前記三次元モデルおよび前記患者の脳に関連する物理学に基づくモデルに基づいて、前記患者の脳内の血流の特徴に関する情報を明らかにすることを含む、方法を実行するためのコンピュータ実行可能なプログラミング命令を含む、少なくとも1つのコンピュータシステム上で使用するための、非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目183)
前記方法が、
3つの次元に沿った前記患者の複数の大脳動脈の少なくとも一部の複数の位置における前記血流の特徴に関する前記情報を表す前記患者の脳の三次元シミュレーションを作製することをさらに含む、項目182に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(項目184)
前記血流の特徴に関する前記情報が、前記三次元シミュレーション上に色または陰影を用いて示され、前記血流の特徴に関する前記情報の変動が、色または陰影の変動によって示される、項目183に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0037】
その他の実施形態および利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的にその説明から明らかになるか、または本開示を実施することによって知ることができる。それらの実施形態および利点は、以下に特に指摘される要素および組み合わせによって実現および達成されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本明細書に組込まれ、その一部をなす添付の図面は、いくつかの実施形態を図解し、記述とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【
図1】例示的実施形態による、特定の患者における冠動脈血流に関連する様々な情報を提供するためのシステムの概略図である。
【
図2】例示的実施形態による、特定の患者における血流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図2の方法のサブステップを示すフローチャートである。
【
図4】例示的実施形態による、患者から非侵襲的に取得した画像データを示す。
【
図5】
図4の画像データを用いて作成された例示的三次元モデルを示す。
【
図6】第1の初期モデルを形成するためのシードを含む、一片の
図4の画像データを示す。
【
図7】
図6のシードを拡張することによって形成された一部の第1の初期モデルを示す。
【
図8】例示的実施形態によるトリミングしたソリッドモデルを示す。
【
図9】患者の安静時の例示的算出FFR(cFFR)モデルを示す。
【
図10】患者の最大充血下での例示的cFFRモデルを示す。
【
図11】患者の最大運動下での例示的cFFRモデルを示す。
【
図12】例示的実施形態による、集中パラメータモデルを形成するために提供されるトリミングした一部のソリッドモデルを示す。
【
図13】集中パラメータモデルを形成するために提供される、
図12のトリミングしたソリッドモデルの中心線の一部を示す。
【
図14】集中パラメータモデルを形成するために提供される、
図12のトリミングしたソリッドモデルに基づいて形成されたセグメントを示す。
【
図15】集中パラメータモデルを形成するために提供される、抵抗器に置き換えられた
図14のセグメントを示す。
【
図16】例示的実施形態による、ソリッドモデルの流入境界および流出境界における上流および下流の構造体を表す例示的な集中パラメータモデルを示す。
【
図17】
図8のソリッドモデルに基づいて作製された三次元メッシュを示す。
【
図20】血流情報を含む患者の解剖学的形態のモデルを示し、このモデル上の特定の地点は、個々の参照ラベルで特定される。
【
図21】大動脈内の
図20で特定されるいくつかの地点における経時的な模擬血圧のグラフであり、いくつかのの地点は
図20において特定される。
【
図22】
図20で特定される各地点における経時的な模擬の血流のグラフである。
【
図23】例示的実施形態による最終レポートである。
【
図24】例示的実施形態による、特定の患者における冠動脈血流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図25】例示的実施形態による、左前下行枝(LAD)枝の一部およびLCX動脈の一部を拡大することによって作成されたソリッドモデルに基づいて特定された修正cFFRモデルを示す。
【
図26】例示的実施形態による、一部のLAD動脈および一部の左回旋枝(LCX)枝を拡大した後の修正された模擬の血流モデルの例を示す。
【
図27】例示的実施形態による、次数低減モデルを用いて様々な治療選択肢を模擬するための方法のフローチャートである。
【
図28】別の例示的実施形態による、次数低減モデルを用いて様々な治療選択肢を模擬するための方法のフローチャートである。
【
図29】例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図30】別の例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供する方法のフローチャートである。
【
図31】例示的実施形態による、心筋灌流に関連する様々な情報を提供する患者固有モデルを示す。
【
図32】さらなる例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図33】血管壁に沿って蓄積したプラークの断面図である。
【
図34】例示的実施形態による、プラーク脆弱性に関連する様々な情報を提供する患者固有のモデルを示す。
【
図35】例示的実施形態による、特定の患者におけるプラーク脆弱性、心筋体積リスク、および心筋灌流リスクの評価に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図36】例示的実施形態による、
図35の方法から取得される情報を示す概略図である。
【
図38】例示的実施形態による、特定の患者における頭蓋内血流および頭蓋外血流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図39】例示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図40】別の示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図41】さらなる例示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【
図42】例示的実施形態による、特定の患者におけるプラークの脆弱性、脳体積リスク、脳灌流リスクの評価に関連する様々な情報を提供するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、例示的実施形態を詳細に参照するが、それらの例は添付の図面で図解する。可能な限り、これらの図面を通して、同じ参照番号を使用して同じまたは類似する部分に言及する。本説明は、以下の概要に従ってまとめる。
I.概説
II.患者固有の解剖学的データの取得および前処理
III.取得した解剖学的データに基づく三次元モデルの作成
IV.分析のためのモデルの作製および境界条件の決定
A.分析のためのモデルの作製
B.境界条件の特定
i.次数低減モデルの特定
ii.例示的な集中パラメータモデル
C.三次元メッシュの作成
V.コンピュータ分析の実施および結果の出力
A.コンピュータ分析の実施
B.血圧、血流、およびcFFRの結果の表示
C.結果の検証
D.冠動脈血流の情報を提供するためのシステムおよび方法の別の実施形態
VI.患者固有の治療計画の提供
A.異なる治療選択肢を比較するための次数低減モデルの使用
VII.他の結果
A.心筋灌流の評価
B.プラーク脆弱性の評価
VIII.他の用途
A.頭蓋内血流および頭蓋外血流のモデリング
i.脳灌流の評価
ii.プラーク脆弱性の評価
I.概説
【0040】
例示的実施形態において、方法およびシステムは、患者から非侵襲的に入手した情報を用いて、特定の患者における血流に関連する様々な情報を明らかにする。この明らかとされる情報は、患者の冠動脈の脈管構造における血流に関連してもよい。あるいは、さらに詳細に後述するように、明らかとされる情報は、患者の脈管構造の他の部分、例えば頸動脈、末梢、腹部、腎臓、および脳の脈管構造における血流に関連してもよい。冠動脈の脈管構造は、大動脈から、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈などに及ぶ複雑な血管網を含む。冠動脈の脈管構造は、血液を心臓に、また心臓内で循環させ、大動脈2および主冠状動脈4の下流の動脈の分枝または他の種類の血管にさらに分かれ得る、複数の主冠状動脈4(
図5)(例えば、左前下行(LAD)枝、左回旋(LCX)枝、右冠状(RCA)動脈など)に血液を供給する大動脈2(
図5)を含む。したがって、例示的方法およびシステムは、大動脈、主冠状動脈、および/または主冠状動脈の下流の他の冠状動脈もしくは血管内の血流に関連する様々な情報を明らかにしてもよい。下記において大動脈および冠状動脈(ならびにそこから延びる分枝)について説明するが、開示される方法およびシステムは、他の種類の血管にも適用することができる。
【0041】
例示的実施形態において、開示される方法およびシステムによって明らかにされる情報は、大動脈、主冠状動脈、および/または主冠状動脈の下流の他の冠状動脈または血管の様々な位置における様々な血流の特徴またはパラメータ、例えば血流速度、圧力(またはその比)、流量、およびFFRを含んでもよいが、これらに限定されない。この情報は、病変が機能的に重要であるかどうか、および/またはその病変を治療するかどうかを決定するために使用することができる。この情報は、患者から非侵襲的に取得した情報を用いて明らかにすることができる。その結果、侵襲的手法に付随する費用およびリスクを伴わずに、病変を治療するかどうかの決定を下すことができる。
【0042】
図1は、例示的実施形態による、特定の患者における冠動脈血流に関連する様々な情報を提供するためのシステムの態様を示している。患者の解剖学的形態の三次元モデル10は、より詳細に後述するように、患者から非侵襲的に取得したデータを用いて作成することができる。また、他の患者固有の情報を非侵襲的に取得することもできる。例示的実施形態において、三次元モデル10によって表される患者の解剖学的形態の一部は、大動脈の少なくとも一部およびその大動脈に連結する主冠状動脈(およびそこから延びるまたは発する分枝)の近位部を含んでもよい。
【0043】
冠動脈血流に関連する様々な生理学的法則および関係20は、例えばより詳細に後述するように、実験データから推定することができる。この三次元の解剖学的モデル10および推定される生理学的法則20を用いて、より詳細に後述するように、冠動脈血流に関連する複数の方程式30を明らかにすることができる。例えば、方程式30は、任意の数値法、例えば、有限差分法、有限体積法、スペクトル法、格子ボルツマン法、粒子ベース法、レベルセット法、有限要素法などを用いて明らかにし、解くことができる。方程式30は、モデル10によって表される解剖学的形態の様々な地点における患者の解剖学的形態における冠動脈血流に関する情報(例えば、圧力、速度、FFRなど)を明らかにするように、可解であってもよい。
【0044】
方程式30は、コンピュータ40を用いて解いてもよい。その解いた方程式に基づいて、コンピュータ40は、モデル10によって表される患者の解剖学的形態における血流に関連する情報を示す1つまたは複数の画像またはシミュレーションを出力してもよい。例えば、画像(複数可)は、より詳細に後述するように、模擬の血圧モデル50、模の擬血流もしくは速度モデル52、計算されたFFR(cFFR)モデル54などを含んでもよい。模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、およびcFFRモデル54は、モデル10によって表される患者の解剖学的形態の3つの次元に沿った様々な位置における、それぞれの圧力、速度、およびcFFRに関する情報を提供する。cFFRは、例えばアデノシンの静脈内投与によって従来誘発される冠動脈血流が増加する条件下で、モデル10の特定の位置の血圧を大動脈の例えばモデル10の流入境界の血圧で除算した比として算出することができる。
【0045】
例示的実施形態において、コンピュータ40は、プロセッサやコンピュータシステムなどによって実行されたときに、患者の血流に関連する様々な情報を提供するための本明細書に記載される行為のいずれかを実施し得る命令を保存する1つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読記憶装置を含んでもよい。コンピュータ40は、デスクトップコンピュータもしくはポータブルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、携帯情報端末、または任意の他のコンピュータシステムを含んでもよい。コンピュータ40は、プロセッサ、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、周辺装置(例えば、入力装置、出力装置、記憶装置など)を接続するための出入力(I/O)アダプタ、入力装置、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、音声入力、および/または他の装置を接続するためのユーザインターフェースアダプタ、コンピュータ40をネットワークに接続するための通信アダプタ、コンピュータ40をディスプレイに接続するためのディスプレイアタプタなどを含んでもよい。例えば、このディスプレイは、三次元モデル10および/または方程式30を解くことによって生成される任意の画像、例えば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を表示するために使用することができる。
【0046】
図2は、別の例示的実施形態による、特定の患者における血流に関連する様々な情報を提供するための方法の態様を示している。本方法は、患者固有の解剖学的データ、例えば患者の解剖学的形態(例えば、少なくとも一部の大動脈、およびその大動脈に連結する主冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の近位部)に関する情報を取得することと、そのデータを前処理することと(ステップ100)を含んでもよい。患者固有の解剖学的データは、例えばCCTAによって、後述のように非侵襲的に取得することができる。
【0047】
患者の解剖学的形態の三次元モデルは、取得した解剖学的データに基づいて作成することができる(ステップ200)。例えば、この三次元モデルは、
図1に関連して上記で説明した患者の解剖学的形態の三次元モデル10であってもよい。
【0048】
この三次元モデルは分析のために作製してもよく、境界条件を特定してもよい(ステップ300)。例えば、
図1に関連して上記で説明した患者の解剖学的形態の三次元モデル10は、トリミングおよび離散化して、体積メッシュ、例えば有限要素メッシュまたは有限体積メッシュにしてもよい。体積メッシュは、
図1に関連して上記で説明した方程式30を生成するために使用してもよい。
【0049】
また、境界条件を指定して、
図1に関連して上記で説明した方程式30に組込んでもよい。境界条件は、三次元モデル10に関する、その境界、例えば流入境界322(
図8)、流出境界324(
図8)、血管壁境界326(
図8)などにおける情報を提供する。流入境界322は、大動脈根の近傍の大動脈の端部(例えば、
図16に示す端部A)など、その境界を通って流れが三次元モデルの解剖学的形態内へと向かう境界を含んでもよい。各流入境界322に、例えば、心臓モデルおよび/または集中パラメータモデルをその境界に結合することによって、速度、流量、圧力、または他の特性に対する規定の値またはフィールドを指定してもよい。流出境界324は、大動脈弓の近傍の大動脈の端部(例えば、
図16に示す端部B)、ならびに主冠状動脈およびそこから延びる分枝の下流端部(例えば、
図16に示す端部a~m)など、その境界を通って流れが三次元モデルの解剖学的形態から外に向かう境界を含んでもよい。各流出境界は、例えば、詳細に後述するように、集中パラメータモデルまたは分散(例えば、一次元波動伝播)モデルを結合することによって指定することができる。流入および/または流出境界条件の規定値は、心拍出量(心臓からの血流の体積)、血圧、心筋質量などであるがこれらに限定されない患者の生理学的特徴を非侵襲的に測定することによって明らかにすることができる。血管壁境界は、三次元モデル10の大動脈、主冠状動脈、および/または他の冠状動脈もしくは血管の物理的境界を含んでもよい。
【0050】
作製された三次元モデルおよび明らかにされた境界条件を用いて、コンピュータ分析を実施して(ステップ400)、患者の血流情報を明らかにしてもよい。例えば、方程式30を用いて、
図1に関連して上記で説明したコンピュータ40を使用してコンピュータ分析を実施し、
図1に関連して上記で説明した画像、例えば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成してもよい。
【0051】
また、本方法は、この結果を用いて、患者固有の治療選択肢を提供することも含む(ステップ500)。例えば、ステップ200で作成された三次元モデル10および/またはステップ300で指定された境界条件を調整して、1つまたは複数の治療、例えば、三次元モデル10に表される冠状動脈のうちの1つへの冠動脈ステントの設置、または他の治療選択肢をモデリングしてもよい。次いで、上記のステップ400で説明したようにコンピュータ分析を実施して、新しい画像、例えば更新版の血圧モデル50、血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成してもよい。これらの新しい画像を用いて、その治療選択肢(複数可)を採用した場合の血流速度および血圧を明らかにすることができる。
【0052】
本明細書において開示されるシステムおよび方法は、医師がアクセスするソフトウェアツールに組込んで、冠状動脈内の血流を定量化し、冠動脈疾患の機能的重要性を評価するための非侵襲的手段を提供することができる。さらに、医師は、このソフトウェアツール使用して、冠動脈血流に対する薬物治療、インターベンション治療、および/または外科治療の効果を予測することもできる。このソフトウェアツールは、頸部の動脈(例えば、頸動脈)、頭部の動脈(例えば、大脳動脈)、胸部の動脈、腹部の動脈(例えば、腹部大動脈およびその分枝)、腕の動脈、または脚の動脈(例えば、大腿動脈および膝窩動脈)を含む心血管系の他の部分の疾患を予防、診断、管理、および/または治療することもできる。このソフトウェアツールは、医師が患者のための最適な個別療法を作成できるように対話式であってもよい。
【0053】
例えば、このソフトウェアツールは、医師または他のユーザが使用する、コンピュータシステム、例えば
図1に示すコンピュータ40に、少なくとも部分的に組込まれていてもよい。このコンピュータシステムは、患者から非侵襲的に取得したデータ(例えば、三次元モデル10を作成するために使用するデータ、境界条件を適用するため、またはコンピュータ分析を実施するために使用するデータなど)を受信することができる。例えば、データは医師が入力してもよく、またはかかるデータにアクセスし、それを提供することができる別の供給源、例えば放射線もしくは医学研究室から受信してもよい。7データは、ネットワークまたはデータを伝達するための他のシステムを介して、または直接コンピュータシステムに送信してもよい。ソフトウェアツールは、このデータを使用して、三次元モデル10もしくは他のモデル/メッシュ、および/または
図1に関連して上記で説明した方程式30を解くことによって特定された任意のシミュレーションもしくは他の結果、例えば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成および表示してもよい。このように、ソフトウェアツールは、ステップ100~500を実施することができる。ステップ500において、医師は、コンピュータシステムにさらなる入力を提供して可能な治療選択肢を選択してもよく、またコンピュータシステムは、選択された可能な治療選択肢に基づいて、新しいシミュレーションを医師に対して表示してもよい。さらに、
図2に示す各ステップ100~500は、別々のソフトウェアパッケージもしくはモジュールを用いて実施してもよい。
【0054】
あるいは、ソフトウェアツールは、ウェブベースのサービスまたは他のサービス、例えば医師とは別の実体が提供するサービスの一部として提供されてもよい。このサービス提供者は、例えば、ウェブベースのサービスを運営していてもよく、またネットワークまたはコンピュータシステム間でデータを伝達する他の方法を介して医師または他のユーザがアクセスしやすいウェブポータルまたはウェブベースのアプリケーション(例えば、そのサービス提供者が運営するサーバまたは他のコンピュータシステム上で実行される)を提供してもよい。例えば、患者から非侵襲的に取得したデータは、サービス提供者に提供されてもよく、サービス提供者はこのデータを用いて三次元モデル10もしくは他のモデル/メッシュ、および/または
図1に関連して上記で説明した方程式30を解くことによって明らかにされた任意のシミュレーションもしくは他の結果、例えば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を生成してもよい。次いで、ウェブベースのサービスは、三次元モデル10もしくは他のモデル/メッシュ、および/またはシミュレーションに関連する情報を送信してもよく、それによって三次元モデル10および/またはシミュレーションを医師に対して、または医師のコンピュータシステム上に表示してもよい。このようにして、ウェブベースのサービスは、ステップ100~500および患者固有の情報を提供するための後述の任意の他のステップを実施することができる。ステップ500において、医師はさらなる入力を提供して、例えば、可能な治療選択肢を選択しても、またはコンピュータ分析に他の調整を行ってもよく、この入力は、サービス提供者によって運営されるコンピュータシステムに送信してもよい(例えば、ウェブポータルを介して)。ウェブベースのサービスは、選択された可能な治療選択肢に基づいて、新しいシミュレーションまたは他の結果を生成してもよく、またその新しいシミュレーションに関連する情報を再び医師に伝達してもよく、それによってその新しいシミュレーションが医師に対して表示されてもよい。
【0055】
本明細書に記載するステップのうちの1つまたは複数が、1人または複数の人間のオペレータ(例えば、心臓専門医または他の医師、患者、サード・パーティーによって提供されるウェブベースのサービスまたは他のサービスを提供するサービス提供者の従業員、他のユーザなど)、あるいはかかる人間のオペレータ(複数可)によって使用される1つまたは複数のコンピュータシステム、例えばデスクトップコンピュータもしくはポータブルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、携帯情報端末などによって実施されてもよいことは理解すべきである。コンピュータシステム(複数可)は、ネットワークまたはデータを伝達する他の方法を介して接続することができる。
【0056】
図3は、特定の患者における血流に関連する様々な情報を提供するための例示的方法のさらなる態様を示している。
図3に示す態様は、コンピュータシステムに少なくとも部分的に組込まれていてもよい、および/またはウェブベースのサービスの一部としてのソフトウェアツールに組込まれていてもよい。
II.
患者固有の解剖学的データの取得および前処理
【0057】
図2に示すステップ100に関連して上記で説明したように、例示的方法は、患者固有の解剖学的データ、例えば患者の心臓に関する情報を取得することと、そのデータを前処理することとを含んでもよい。例示的実施形態において、ステップ100は、以下のステップを含んでもよい。
【0058】
最初に、患者を選択してもよい。例えば、患者が胸痛や心臓発作などの冠動脈疾患に関連する症状を経験している場合に、医師が患者の冠動脈血流に関する情報が所望されると判断したとき、医師が患者を選択してもよい。
【0059】
患者固有の解剖学的データ、例えば患者の心臓の幾何学的形状、例えば少なくとも一部の患者の大動脈、その大動脈に連結する主冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の近位部、および心筋に関するデータを取得することができる。患者固有の解剖学的データは、例えば非侵襲的な画像化方法を用いて、非侵襲的に取得することができる。例えば、CCTAは、ユーザがコンピュータ断層撮影(CT)スキャナを操作して、構造体、例えば心筋、大動脈、主冠状動脈、およびそれらに連結する他の血管の画像を観察または作成する画像化方法である。CCTAデータは、時変であって、例えば、心周期にわたって血管形状の変化を示してもよい。CCTAを用いて、患者の心臓の画像を生成してもよい。例えば、64スライスのCCTAデータ、例えば患者の心臓の64枚の切片に関連するデータを取得し、三次元画像を構築することができる。
図4は、64スライスのCCTAデータによって生成される三次元画像120の例を示している。
【0060】
代替的に、他の非侵襲的な画像化方法、例えば磁気共鳴画像化(MRI)または超音波(US)、あるいは侵襲的な画像化方法、例えばデジタルサブトラクション血管造影(DSA)を用いて、患者の解剖学的形態の構造体の画像を生成してもよい。画像化方法は、解剖学的形態の構造体の特定を可能にするために、患者への造影剤を静脈投与することを含んでもよい。得られた画像データ(例えば、CCTAやMRIなどによって提供される)は、放射線研究室または心臓専門医などのサード・パーティーベンダー、あるいは患者の医師などが提供してもよい。
【0061】
また、他の患者固有の解剖学的データも患者から非侵襲的に明らかにすることができる。例えば、患者の血圧、ベースライン心拍数、身長、体重、ヘマトクリット値、一回拍出量などの生理学的データを測定してもよい。血圧は、患者の上腕動脈の血圧(例えば、血圧測定用カフを用いる)、例えば最高(収縮期)血圧および最低(拡張期)血圧であってもよい。
【0062】
上述のように取得した患者固有の解剖学的データは、安全な通信回線上で送信される(例えば、ネットワークを介して)。例えば、データは、コンピュータ分析、例えば上記のステップ400で説明したコンピュータ分析を実施するために、サーバまたは他のコンピュータシステムに送信してもよい。例示的実施形態において、データは、ウェブベースのサービスを提供するサービス提供者によって運営されるサーバまたは他のコンピュータシステムに送信してもよい。あるいは、データは、患者の医師または他のユーザによって操作されるコンピュータシステムに送信してもよい。
【0063】
再び
図3を参照すると、送信されたデータを検討して、そのデータが許容可能かどうかを決定することができる(ステップ102)。この決定は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してもよい。例えば、送信されたデータ(例えば、CCTAデータおよび他のデータ)をユーザおよび/またはコンピュータシステムが検証して、例えば、そのCCTAデータが完全である(例えば、大動脈および主冠状動脈の十分な部分を含む)かどうか、また正しい患者に対応しているかどうかを決定してもよい。
【0064】
また、送信されたデータ(例えば、CCTAデータおよび他のデータ)を前処理および評価してもよい。前処理および/または評価は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してもよく、またこれは、例えば、位置ずれ、不一致、またはCCTAデータの不鮮明の確認、CCTAデータに示されるステントの確認、血管内腔の可視性を妨げる可能性がある他の人工物の確認、構造体(例えば、大動脈、主冠状動脈、および他の血管)と患者の他の部分と間の十分なコントラストの確認などを含んでもよい。
【0065】
送信されたデータを判定して、上述の検証、前処理、および/または評価に基づいて、そのデータが許容可能であるかを決定してもよい。上述の検証、前処理、および/または評価において、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、データの一部のエラーまたは問題を修正することができるかもしれない。しかしながら、エラーまたは問題が多すぎる場合には、そのデータは許容不可であると決定することができ、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、それらのエラーまたは問題が送信されたデータの拒否を余儀なくする旨を説明する拒否レポートを生成してもよい。場合によっては、新しいCCTAスキャンを実施してもよく、および/または上述の生理学的データを再度患者から測定してもよい。送信されたデータが許容可能であると決定された場合、本方法は、後述のステップ202に進んでもよい。
【0066】
したがって、
図3に示す上述のステップ102は、
図2のステップ100のサブステップとみなすことができる。
III.
取得した解剖学的データに基づく三次元モデルの作成
【0067】
図2に示すステップ200に関連して上記で説明したように、例示的方法は、取得した解剖学的データに基づいて、三次元モデルを作成することを含んでもよい。例示的実施形態において、ステップ200は、以下のステップを含んでもよい。
【0068】
CCTAデータを用いて、冠血管の三次元モデルを生成することができる。
図5は、CCTAデータを用いて生成される三次元モデル220の表面の例を示している。例えば、モデル220は、例えば、少なくとも一部の大動脈、その大動脈のその部分に連結する少なくとも1つの近位部の1つまたは複数の主冠状動脈の、その主冠状動脈に連結する少なくとも1つの近位部の1つまたは複数の分枝などを含んでもよい。大動脈、主冠状動脈、および/または分枝のモデリングされた部分は、相互に連結した樹状であってもよく、どの部分もモデル220の残りの部分から分離していない。モデル220を形成するプロセスは、セグメント化と称される。
【0069】
再び
図3を参照すると、コンピュータシステムは、大動脈(ステップ202)および心筋(または他の心臓組織、もしくはモデリングされる動脈に連結する他の組織)(ステップ204)の少なくとも一部を自動的にセグメント化してもよい。また、コンピュータシステムは、大動脈に連結する少なくとも一部の主冠状動脈をセグメント化してもよい。例示的実施形態において、コンピュータシステムは、ユーザが1つまたは複数の冠動脈の根元または始点を選択して(ステップ206)、主冠状動脈をセグメント化することを可能にしてもよい。
【0070】
セグメント化は、様々な方法を用いて実施することができる。
セグメント化は、ユーザの入力に基づいて、またはユーザの入力を伴わずに、コンピュータシステムによって自動的に実施されてもよい。例えば、例示的実施形態において、ユーザは、第1の初期モデルを生成するために、コンピュータシステムに入力を提供してもよい。例えば、コンピュータシステムは、ユーザに対して、CCTAデータから生成された三次元画像120(
図4)またはその切片を表示してもよい。三次元画像120は、様々な輝度の明度を有する部分を含んでもよい。例えば、より明るい部分は、大動脈、主冠状動脈、および/または分枝の内腔を示し得る。より暗い部分は、患者の心臓の心筋および他の組織を示し得る。
【0071】
図6は、ユーザに対して表示することができる三次元画像120の切片222の一部を示し、この切片222は、相対明度を有する部分224を含んでもよい。このコンピュータシステムは、1つまたは複数のシード226を選択することによって、ユーザが相対明度を有する部分224を選択することを可能にしてもよく、またシード226は、主冠状動脈のセグメント化のための冠動脈の根元または始点としての役割を果たしてもよい。ユーザの命令で、コンピュータシステムは、次いで第1の初期モデルを形成するための始点としてシード226を使用してもよい。ユーザは、大動脈および/または個々の主冠状動脈のうちの1つまたは複数に、シード226を追加してもよい。場合によって、ユーザは、主冠状動脈に連結する分枝のうちの1つまたは複数に、シード226を追加してもよい。あるいは、コンピュータシステムは、例えば抽出した中央線の情報を用いて、自動的にシードを配置してもよい。このコンピュータシステムは、シード226が配置された画像120の輝度値を決定してもよく、同じ輝度値を有する(または、選択された輝度値を中心とする輝度値の範囲または閾値内の)画像120の部分に沿ってシード226を拡張することによって、第1の初期モデルを形成してもよい。したがって、このセグメント化方法は、「閾値に基づくセグメント化」と称することができる。
【0072】
図7は、
図6のシード226を拡張することによって形成される第1の初期モデルの一部230を示している。したがって、ユーザは、コンピュータシステムが第1の初期モデルの形成を開始するための始点として、シード226を入力する。このプロセスは、全ての関心部分、例えば大動脈および/または主冠状動脈の部分がセグメント化されるまで繰り返してもよい。あるいは、第1の初期モデルは、ユーザ入力を伴わずに、コンピュータシステムによって生成されてもよい。
【0073】
あるいは、セグメント化は、「エッジに基づくセグメント化」と称される方法を用いて実施してもよい。例示的実施形態において、後述のように、閾値に基づくセグメント化およびエッジに基づくセグメント化の両方法を実施して、モデル220を形成してもよい。
【0074】
第2の初期モデルは、エッジに基づくセグメント化方法を用いて形成してもよい。この方法では、大動脈および/または主冠状動脈の内腔エッジを位置を特定することができる。例えば、例示的実施形態において、ユーザは、第2の初期モデルを生成するために、入力、例えば上述のようなシード226をコンピュータシステムに提供してもよい。コンピュータシステムは、エッジに達するまで、画像120の部分に沿ってシード226を拡張してもよい。内腔のエッジは、例えば、ユーザによって視覚的に、および/またはコンピュータシステムによって(例えば、設定閾値を上回る輝度値の変化がある位置)、位置を特定することができる。エッジに基づくセグメント化方法は、コンピュータシステムおよび/またはユーザによって実施することができる。
【0075】
また、ステップ204において、CCTAデータに基づいて、心筋または他の組織をセグメント化してもよい。例えば、CCTAデータを分析して、心筋、例えば、左心室および/または右心室の内面および外面の位置を明らかにすることができる。これらの面の位置は、CCTAデータにおける心筋の心臓の他の構造体と比較したコントラスト(例えば、相対暗度および明度)に基づいて特定することができる。このようにして、心筋の幾何学的形状を特定することができる。
【0076】
大動脈、心筋、および/または主冠状動脈のセグメント化は、必要な場合には再検討および/または修正してもよい(ステップ208)。この再検討および/または修正は、コンピュータシステムおよび/またはユーザが実施してよい。例えば、例示的実施形態において、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を再検討し、エラーがある場合、例えばモデル220の大動脈、心筋、および/または主冠状動脈のいずれかの部分が欠けている、または不正確である場合、ユーザが手動でそのセグメント化を修正してもよい。
【0077】
例えば、上述の第1の初期モデルおよび第2の初期モデルを比較して、大動脈および/または主冠状動脈のセグメント化が正確であることを確認してもよい。第1の初期モデルと第2の初期モデルとの間のあらゆる矛盾する部分を比較して、セグメント化を修正し、モデル220形成してもよい。例えば、モデル220は、第1の初期モデルと第2の初期モデルとの平均であってもよい。あるいは、上述のセグメント化方法のうちの1つのみを実施してもよく、その方法によって形成された初期モデルをモデル220として使用してもよい。
【0078】
心筋質量を算出することができる(ステップ240)。この計算は、コンピュータシステムによって実施されてもよい。例えば、上述のように特定した心筋の表面の位置に基づいて心筋体積を算出することができ、算出された心筋体積に心筋の密度を乗じて、心筋質量を算出することができる。心筋の密度は、事前設定してもよい。
【0079】
モデル220(
図5)の様々な血管(例えば、大動脈、主冠状動脈など)の中央線を特定することができる(ステップ242)。例示的実施形態において、この特定は、コンピュータシステムによって自動的に実施することができる。
【0080】
ステップ242で特定された中央線は、必要な場合には再検討および/または修正してもよい(ステップ244)。この検討および/または修正は、コンピュータシステムおよび/またはユーザが実施してよい。例えば、例示的実施形態において、コンピュータシステムが自動的に中央線を再検討し、エラーがある場合、例えばいずれかの中央線が欠けている、または不正確である場合、ユーザが手動でその中央線を修正してもよい。
【0081】
カルシウムまたはプラーク(血管の狭窄の原因となる)を検出することができる(ステップ246)。例示的実施形態において、コンピュータシステムは、自動的にプラークを検出することができる、例えば、プラークを三次元画像120で検出し、モデル220から除去することができる。プラークは大動脈、主冠状動脈、および/または分枝の内腔よりもさらに明るい部分として表示されることから、三次元画像120でプラークを特定することができる。したがって、プラークは、設定値を下回る輝度値を有するとしてコンピュータシステムによって検出することができ、またはユーザが視覚的に検出することもできる。プラークの検出後、コンピュータシステムは、モデル220からそのプラークを除去して、そのプラークが内腔の一部または血管内の空間とみなされないようにすることができる。あるいは、コンピュータシステムは、大動脈、主冠状動脈、および/または分枝と異なる色、陰影、または他の視覚的指標を用いて、モデル220上にプラークを示すこともできる。
【0082】
また、コンピュータシステムは、検出されたプラークを自動的にセグメント化することもできる(ステップ248)。例えば、プラークは、CCTAデータに基づいてセグメント化してもよい。CCTAデータを分析して、CCTAデータにおけるプラークの心臓の他の構造体と比較したコントラスト(例えば、相対暗度および明度)に基づいて、プラーク(またはその表面)の位置特定をすることができる。このようにして、プラークの幾何学的形状を明らかにすることができる。
【0083】
プラークのセグメント化は、必要な場合には再検討および/または修正してもよい(ステップ250)。この検討および/または修正は、コンピュータシステムおよび/またはユーザが実施してよい。例えば、例示的実施形態において、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を再検討し、エラーがある場合、例えばいずれかのプラークが欠けている、または不正確に示されている場合、ユーザが手動でそのセグメント化を修正してもよい。
【0084】
コンピュータシステムは、主冠状動脈と連結する分枝を自動的にセグメント化してもよい(ステップ252)。例えば、分枝は、例えば、
図6および
図7に示し、ステップ206に関連して上記で説明したような主冠状動脈をセグメント化するための方法と類似する方法を用いて、セグメント化することができる。また、コンピュータシステムは、ステップ248および250に関連して上記で説明した方法と類似する方法を用いて、セグメント化された分枝中のプラークを自動的にセグメント化してもよい。あるいは、分枝(およびその中に含まれるあらゆるプラーク)は、主冠状動脈と同時に(例えば、ステップ206で)セグメント化してもよい。
【0085】
分枝のセグメント化は、必要な場合には再検討および/または修正してもよい(ステップ254)。この検討および/または修正は、コンピュータシステムおよび/またはユーザが実施してよい。例えば、例示的実施形態において、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を再検討し、エラーがある場合、例えばモデル220の分枝のいずれかの部分が欠けている、または不正確である場合、ユーザが手動でそのセグメント化を修正してもよい。
【0086】
モデル220は、位置ずれ、ステント、または他の人工物の位置が特定された場合(例えば、ステップ102におけるCCTAデータの再検討において)、修正してもよい(ステップ256)。この修正は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してよい。例えば、位置ずれまたは他の人工物(例えば、不一致、内腔可視性に影響を及ぼす人工物など)の位置が特定された場合、モデル220を再検討および/または修正して、血管の断面積の人為的変化または見せかけの変化を回避することができる。ステントの位置が特定された場合、モデル220を再検討および/または修正して、そのステントの位置を示し、および/または例えばステントのサイズに基づいて、そのステントが位置する血管の断面積を修正してもよい。
【0087】
また、モデル220のセグメント化は、独立して再検討することもできる(ステップ258)。この再検討は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してよい。例えば、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、モデル220の特定のエラー、例えば修正可能なエラーおよび/またはモデル220の少なくとも部分的な再構成または再セグメント化を必要とし得るエラーを特定することができ得る。そのようなエラーが特定された場合、そのセグメント化は許容不可であると決定してもよく、エラー(複数可)に応じて特定のステップ、例えばステップ202~208、240~256のうちの1つまたは複数を繰り返してもよい。
【0088】
モデル220のセグメント化が許容可能として独立して検証された場合、場合によっては、モデル220を出力し、平滑化してもよい(ステップ260)。この平滑化は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してもよい。例えば、隆起部、先端部、または他の不連続部分を平滑化してもよい。モデル220は、別個のソフトウェアモジュールに出力して、コンピュータ分析などに備えてもよい。
【0089】
したがって、
図3に示す上述のステップ202~208および240~260は、
図2のステップ200のサブステップとみなすことができる。
IV.
分析のためのモデルの作製および境界条件の特定
【0090】
図2に示すステップ300に関連して上記で説明したように、例示的方法は、分析のためのモデルを作製することと、境界条件を明らかにすることとを含んでもよい。例示的実施形態において、ステップ300は以下のステップを含んでもよい。
A.
分析のためのモデルの作製
【0091】
再び
図3を参照すると、モデル220(
図5)の様々な血管(例えば、大動脈、主冠状動脈、および/または分枝)の断面積も明らかにすることができる(ステップ304)。例示的実施形態において、この特定はコンピュータシステムが実施してもよい。
【0092】
モデル220(
図5)をトリミングしてもよく(ステップ306)、ソリッドモデルを生成してもよい。
図8は、
図5に示すモデル220に類似するモデルに基づいて作製されたトリミングしたソリッドモデル320の例を示している。ソリッドモデル320は、三次元の患者固有の幾何モデルである。例示的実施形態において、トリミングは、場合によってはユーザの入力を伴って、コンピュータシステムにより実施されてもよい。それぞれの流入境界322および流出境界324は、それぞれの境界を形成する面がステップ242で特定された中央線に対して垂直になるようにトリミングしてもよい。流入境界322は、
図8に示すような大動脈の上流端など、その境界を通って流れがモデル320の解剖学的形態内へと向かう境界を含んでもよい。流出境界324は、大動脈の下流端ならびに主冠状動脈および/または分枝の下流端など、その境界を通って流れが320の解剖学的形態から外に向かう境界を含んでもよい。
B.
境界条件の特定
【0093】
境界条件を提供して、モデル、例えば
図8の三次元ソリッドモデル320の境界で起きていることを表現することができる。例えば、境界条件は、例えばモデリングされた解剖学的形態の境界における、患者のモデリングされた解剖学的形態に関連する少なくとも1つの血流の特徴に関連していてもよく、この血流の特徴(複数可)は、血流速度、圧力、流量、FFRなどを含んでもよい。境界条件を適切に特定することによって、コンピュータ分析を実施して、モデル内の様々な位置における情報を明らかにすることができる。境界条件の例およびかかる境界条件を特定するための方法について、ここで説明する。
【0094】
例示的実施形態において、決定された境界条件は、ソリッドモデル320によって表される血管の一部の上流および下流の構造体を単純化して、一次元または二次元の次数低減モデルにすることができる。境界条件を特定するための例示的な一連の方程式および他の詳細は、例えば、米国特許出願公開第2010/0241404号および米国仮出願第61/210,401号に記載され、これらはともに「Patient-Specific Hemodynamics of the Cardiovascular System」と題され、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0095】
境界条件は、患者の生理学的状態に応じて異なってもよいが、これは心臓を通る血流が患者の生理学的状態に応じて異なり得るためである。例えば、FFRは、通常は、患者が例えばストレスなどによる心臓の血流の増加を経験しているときに一般に生じる、生理学的充血条件下で測定される。FFRは、最大ストレス下での冠動脈圧の大動脈圧に対する比である。充血は、薬理学的に、例えばアデノシンを用いて誘発してもよい。
図9~11は、患者の生理学的状態(安静時、最大充血下、または最大運動下)に応じた、モデル320における冠動脈圧の大動脈圧に対する比の変化を示す、算出されたFFR(cFFR)モデルの例を示している。
図9は、患者の安静時のモデル320全体の冠動脈圧の大動脈圧に対する比が最小の形態を示す。
図10は、患者の最大充血時のモデル320全体の冠動脈圧の大動脈圧に対する比がより大きい形態を示す。
図11は、患者の最大運動時のモデル320全体の冠動脈圧の大動脈圧に対する比がさらに大きい形態を示す。
【0096】
再び
図3を参照すると、充血条件の境界条件を明らかにすることができる(ステップ310)。例示的実施形態において、冠動脈の抵抗の1~5分の1までの減少、大動脈血圧およそ0~20%の減少、心拍数のおよそ0~20%の増加を用いて、アデノシンの効果をモデリングすることができる。例えば、アデノシンの効果は、冠動脈抵抗の4分の1までの減少、大動脈血圧のおよそ10%の減少、心拍数のおよそ10%の増加を用いてモデリングすることができる。例示的実施形態では充血条件の境界条件が特定されるが、他の生理学的状態、例えば安静、異なる程度の充血、異なる程度の運動、労作、ストレス、または他の条件で境界条件を特定してもよいことは理解される。
【0097】
境界条件は、三次元ソリッドモデル320に関するその境界、例えば
図8に示される流入境界322、流出境界324、血管壁境界326などにおける情報を提供する。血管壁境界326は、モデル320の大動脈、主冠状動脈、および/または他の冠状動脈または血管の物理的境界を含んでもよい。
【0098】
各流入または流出境界322、324に、速度、流量、圧力、または他の血流の特徴に対する規定の値または値のフィールドを指定してもよい。あるいは、各流入または流出境界322、324は、その境界に心臓モデル、集中パラメータモデルもしくは分散(例えば、一次元波動伝播)モデル、別のタイプの一次元もしくは二次元モデル、または他のタイプのモデルを結合することによって指定してもよい。具体的な境界条件は、例えば、取得した患者固有の情報、または他の測定されたパラメータ、例えば心拍出量、血圧、ステップ240で算出された心筋質量などから特定された流入または流出境界322、324の幾何学的形状に基づいて明らかにすることができる。
i.次数低減モデルの特定
【0099】
ソリッドモデル320に連結する上流および下流の構造体は、上流および下流の構造体を表す次数低減モデルとして表してもよい。例えば、
図12~15は、例示的実施形態による、流出境界324のうちの1つにおける三次元の患者固有の解剖学的データから集中パラメータモデルを作製するための方法の態様を示している。本方法は、
図2および
図3に示される方法とは別に、その前に実施することができる。
【0100】
図12は、主冠状動脈またはそこから延びる分枝のうちの1つのソリッドモデル320の部分330を示し、
図13は、
図12に示される部分330のステップ242で決定される中央線の一部を示している。
【0101】
部分330は、セグメント332に分割することができる。
図14は、部分330から形成することができるセグメント332の例を示している。セグメント332の長さの選択は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムによって実施することができる。セグメント332は、例えばセグメント332の幾何学的形状に応じて長さが変化し得る。様々な技法を用いて、部分330をセグメント化することができる。例えば、罹患部分、例えば、断面が比較的狭い部分、病変、および/または狭窄(血管の異常な狭小化)に1つまたは複数の別個のセグメント332は備えることができる。この罹患部分および狭窄は、例えば、中央線の全長に沿って断面積を測定し、最小断面積を局所的に算出することによって特定することができる。
【0102】
セグメント332は、1つまたは複数の(線形または非線形)抵抗器334および/または他の回路要素(例えば、コンデンサ、インダクタなど)を含む回路図によって近似することができる。
図15は、一連の線形および非線形抵抗器334で置き換えたセグメント332の例を示している。抵抗器334の個々の抵抗は、例えば、対応するセグメント332にわたる推定される流動および/または圧力に基づいて特定することができる。
【0103】
この抵抗は、例えば対応するセグメント332を通した推定された流量に応じて、定抵抗、線形抵抗、または非線形抵抗であってよい。狭窄などのより複雑な幾何学的形状の場合、抵抗は流量によって変化し得る。様々な幾何学的形状の抵抗は、コンピュータ分析(例えば、有限差分法、有限体積法、スペクトル法、格子ボルツマン法、粒子ベース法、レベルセット法、等幾何学法、または有限要素法、あるいは他の計算流体力学(CFD)分析技術)に基づいて明らかにすることができ、様々な流動および圧力条件下で実施されるコンピュータ分析からの複数の解を用いて、患者固有、血管固有、および/または病変固有の抵抗を導くことができる。この結果を用いて、モデリングすることができる任意のセグメントの各種の特徴および幾何学的形状の抵抗を明らかにすることができる。結果として、上述のように患者固有、血管固有、および/または病変固有の抵抗を導くことは、コンピュータシステムが、より複雑な幾何学的形状、例えば非対称狭窄、複数の病変、分岐および分枝の病変、および蛇行血管などを認識し、評価することを可能にし得る。
【0104】
また、コンデンサも含まれていてよく、キャパシタンスは、例えば、対応するセグメントの血管壁の弾力性に応じて測定ことができる。インダクタが含まれていてもよく、インダクタンスは、例えば、対応するセグメントを貫流する血液量の加速または減速に関連する慣性効果に応じて測定することができる。
【0105】
抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、および集中パラメータモデルに使用される他の電気要素に関連する他の変数の個々の値は、多数の患者からのデータに基づいて導くことができ、類似する血管形状はほぼ同じ値を有しうる。したがって、大きな集団の患者固有のデータから経験モデルを開発し、将来の分析に類似する患者に適用することができる特定の幾何学的特徴に対応する値のライブラリを作成することができる。幾何学的形状を2つの異なる血管セグメント間で一致させて、以前のシミュレーションから患者のセグメント332の値を自動的に選択することができる。
ii.例示的集中パラメータモデル
【0106】
あるいは、
図12~15に関連して上記で説明したステップを実施する代わりに、集中パラメータモデルを事前設定してもよい。例えば、
図16は、ソリッドモデル320の流入および流出境界322、324における上流および下流の構造体を表す集中パラメータモデル340、350、360の例を示している。端部Aは、流入境界322に位置し、端部a~mおよびBは、流出境界に位置する。
【0107】
集中パラメータ心臓モデル340を使用して、ソリッドモデル320の流入境界322の端部Aにおける境界条件を明らかにすることができる。
集中パラメータ心臓モデル340を用いて、充血条件下での心臓からの血流を表すことができる。集中パラメータ心臓モデル340は、様々なパラメータ(例えば、PLA、RAV、LAV、RV-Art、LV-Art、およびE(t))を含み、これらは患者に関する既知の情報、例えば、大動脈圧、患者の収縮期および拡張期血圧(例えば、ステップ100で測定される)、患者の心拍出量(例えば、ステップ100で測定される患者の一回拍出量および心拍数に基づいて算出される、心臓からの血液量)、および/または実験的に特定された定数に基づいて明らかにすることができる。
【0108】
集中パラメータ冠動脈モデル350を使用して、主冠状動脈および/またはそこから延びる分枝の下流端に位置する、ソリッドモデル320の流出境界324の端部a~mにおける境界条件を明らかにすることができる。集中パラメータ冠動脈モデル350を使用して、充血条件下で、モデリングされた血管から端部a~mを通って流出する血流を表すことができる。集中パラメータ冠動脈モデル350は、様々なパラメータ(例えば、Ra、Ca、Ra-micro、Cim、およびRV)を含み、これらは患者に関する既知の情報、例えば、算出された心筋質量(例えば、ステップ240で測定される)、および端部a~mにおける終端インピーダンス(例えば、ステップ304で測定される端部a~mにおける血管の断面積)に基づいて明らかにすることができる。
【0109】
例えば、算出された心筋質量を用いて、複数の流出境界324を通るベースライン(安静時)の平均冠血流を推定することができる。この関係は、Q∝Q
0M
α(式中、αは既定のスケーリング指数であり、Q
0は既定の定数である)として平均冠血流Qを心筋質量M(例えば、ステップ240で測定される)と相関させる、実験的に導かれた生理学的法則(例えば、
図1の生理学的法則20)に基づいてもよい。次いで、ベースライン(安静時)条件下での流出境界324における全冠血流Q、および患者の血圧(例えば、ステップ100で測定される)を使用して、既定の実験的に導かれた方程式に基づいて、流出境界324における全抵抗Rを特定することができる。
【0110】
全抵抗Rは、端部a~mのそれぞれの断面積(例えば、ステップ304で測定される)に基づいて、端部a~mに分布してもよい。この関係は、R
i∝R
i,0di
β(R
iはi番目の流出口における流動抵抗であり、R
i,0は既定の定数であり、d
iはその流出口の直径であり、βは既定のベキ乗指数、例えば-3~-2、冠血流では-2.7、脳血流では-2.9などである)として端部a~mのそれぞれの抵抗を相関させる、実験的に導かれた生理学的法則(例えば、
図1の生理学的法則20)に基づいてもよい。個々の端部a~mを通る冠血流および個々の端部a~mにおける平均圧(例えば、ステップ304で測定される血管の端部a~mの個々の断面積に基づいて特定される)を用いて、対応する端部a~mにおける集中パラメータ冠動脈モデル350の抵抗の合計を明らかにすることができる(例えば、R
a+R
a-micro+R
V)。他のパラメータ(例えば、R
a/R
a-micro、C
a、C
im)は、実験的に特定された定数であってもよい。
【0111】
Windkesselモデル360を用いて、大動脈弓に向かう大動脈の下流端に位置する、ソリッドモデル320の流出境界324の端部Bにおける境界条件を明らかにすることができる。Windkesselモデル360を用いて、充血条件下で、モデリングされた大動脈から端部Bを通って流出する血流を表すことができる。Windkesselモデル360は、様々なパラメータ(例えば、Rp、Rd、およびC)を含み、これらは患者に関する既知の情報、例えば、集中パラメータ心臓モデル340に関連して上記で説明した患者の心拍出量、集中パラメータ冠動脈モデル350に関連して上記で説明したベースライン平均冠血流、大動脈圧(例えば、ステップ304で測定される端部Bにおける大動脈の断面積に基づいて特定される)、および/または実験的に特定された定数に基づいて明らかにすることができる。
【0112】
境界条件、例えば、集中パラメータモデル340、350、360(または、これらに含まれるあらゆる定数)、あるいは他の次数低減モデルは、他の因子に基づいて調整することができる。例えば、生理的ストレス下で比較的減少した血管を拡張する能力により、患者が低い血流対血管サイズ比を有する場合、抵抗値を調整(例えば増加)することができる。また、抵抗値は、患者が糖尿病を有する、薬物治療を受けている、過去に心イベントを経験している場合などにも調整することができる。
【0113】
代替的な集中パラメータまたは分散一次元ネットワークモデルを用いて、ソリッドモデル320の下流の冠血管を表してもよい。MRI、CT、PET、またはSPECTを用いた心筋灌流の画像化を用いて、かかるモデルのパラメータを指定することができる。また、代替的な画像化源、例えば、磁気共鳴血管造影(MRA)、レトロスペクティブシネゲーティングまたはプロスペクティブシネゲーティングコンピュータ断層血管造影(CTA)などを用いて、かかるモデルのパラメータを指定することもできる。レトロスペクティブシネゲーティングを画像処理方法と併用して、心周期にわたる心室の体積変化を取得し、集中パラメータ心臓モデルのパラメータを指定してもよい。
【0114】
集中パラメータモデル340、350、360、または他の次数低減一次元または二次元モデルを用いた患者の解剖学的形態の一部の単純化は、特に、未治療状態(例えば、
図2および
図3のステップ400)の他に、可能な治療選択肢を評価するとき(例えば、
図2のステップ500)など、コンピュータ分析を複数回実施する場合に、コンピュータ分析(例えば、後述の
図3のステップ402)をより迅速に実施できるようにしながら、最終結果を高精度に維持する。
【0115】
例示的実施形態において、境界条件の特定は、ユーザの入力、例えば、ステップ100で取得した患者固有の生理学的データに基づいて、コンピュータシステムによって実施することができる。
C.三次元メッシュの作成
【0116】
再び
図3を参照すると、ステップ306で生成されたソリッドモデル320に基づいて、三次元メッシュを生成することができる(ステップ312)。
図17~19は、ステップ306で生成されたソリッドモデル320に基づいて作製された三次元メッシュ380の例を示している。メッシュ380は、ソリッドモデル320の表面に沿って、およびソリッドモデル320の内部全体に複数の節点382(格子点またはメッシュ点)を含む。メッシュ380は、
図18および
図19に示すように、4面体要素を用いて作成してもよい(節点382を形成する点を有する)。あるいは、他の形状を有する要素、例えば6面体要素または他の多面体要素、曲線要素などを用いてもよい。例示的実施形態において、節点382の数は、百万個単位、例えば5百万個~5千万個であってもよい。節点382の数は、メッシュ380が微細になるに伴って増加する。節点382の数が多くなるにつれ、モデル320内のより多くの地点で情報を提供することができるが、節点382の数が増加すると、解くべき方程式(例えば
図1の方程式30)の数が増えるため、コンピュータ分析の実行により時間がかかる可能性がある。例示的実施形態において、メッシュ380の生成は、場合によってユーザの入力(例えば、節点382の数、要素の形状などを指定する)を伴って、コンピュータシステムによって実施することができる。
【0117】
再び
図3を参照すると、メッシュ380および特定された境界条件を検証することができる(ステップ314)。この検証は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムが実施してよい。例えば、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、例えば、メッシュ380が変形している、または十分な空間分解能を有さない場合、境界条件がコンピュータ分析を実施するのに十分でない場合、ステップ310で特定した抵抗が不正確であると思われる場合など、メッシュ380および/または境界条件の再構成を必要とし得る、メッシュ380および/または境界条件の特定のエラーを特定することができ得る。その場合、メッシュ380および/または境界条件は許容不可であると決定することができ、ステップ304~314のうちの1つまたは複数のを繰り返してもよい。メッシュ380および/または境界条件が許容可能であると決定された場合、本方法は、後述のステップ402に進んでもよい。
【0118】
さらに、ユーザは、取得した患者固有の情報、または他の測定されたパラメータ、例えば心拍出量、血圧、身長、体重、ステップ240で算出した心筋質量が正しく入力され、および/または正しく計算されていることを確認することができる。
【0119】
したがって、
図3に示す上述のステップ304~314は、
図2のステップ300のサブステップとみなすことができる。
V.
コンピュータ分析の実施および結果の出力
【0120】
図2に示すステップ400に関連して上記で説明したように、例示的方法は、コンピュータ分析を実施することと、結果を出力することとを含んでもよい。例示的実施形態において、ステップ400は以下のステップを含んでもよい。A.
コンピュータ分析の実施
【0121】
図3を参照すると、コンピュータシステムによってコンピュータ分析を実施することができる(ステップ402)。例示的実施形態において、ステップ402は、例えばメッシュ380(
図17~19)中の節点382の数などに応じて、数分から数時間かかり得る。
【0122】
この分析は、メッシュ380が生成されたモデル320における血流を表す一連の方程式を生成することを含む。上述のように、例示的実施形態において、所望の情報は、充血条件下のモデル320を通る血流のシミュレーションに関連する。
【0123】
また、分析は、数値法を用いて、コンピュータシステムを使用して血流の三次元方程式を解くことを含む。例えば、数値法は、既知の方法、例えば、有限差分法、有限体積法、スペクトル法、格子ボルツマン法、粒子ベース法、レベルセット法、等幾何学法、または有限要素法、あるいは他の計算流体力学(CFD)数値手法であってよい。
【0124】
これらの数値法を用いて、血液をニュートン流体、非ニュートン流体、または多相流体としてモデリングすることができる。患者のヘマトクリット値またはステップ100で測定した他の因子を用いて、分析に取り込むための血液粘度を特定してもよい。血管壁は、剛性または柔軟であると仮定することができる。後者の場合、血管壁力学の方程式、例えば弾性力学方程式を血流の方程式と一緒に解いてもよい。ステップ100で取得した時変三次元画像データを入力として用いて、心周期にわたる血管形状の変化をモデリングすることができる。コンピュータ分析を実施するための例示的な一連の方程式およびステップは、例えば、「Method for Predictive Modeling for
Planning Medical Interventions and Simulating Physiological Conditions」と題される米国特許第6,236,878号、ならびにともに「Patient-Specific Hemodynamics of the Cardiovascular System」と題される米国特許出願公開第2010/0241404号および米国仮出願第61/210,401号に、より詳細に開示されており、これら全ては参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0125】
作製したモデルおよび境界条件を使用するコンピュータ分析は、三次元ソリッドモデル320を表すメッシュ380のそれぞれの節点382における血流および圧力を測定することができる。例えば、コンピュータ分析の結果は、それぞれの節点382における様々なパラメータの値を含んでもよく、これには例えば、後述のように、血流速度、圧力、流量、または算出されたパラメータ、例えばcFFRがあるが、これらに限定されない。また、パラメータは、三次元ソリッドモデル320に組込んでもよい。その結果、コンピュータ分析の結果は、通常は侵襲的に特定され得る情報をユーザに提供することができる。
【0126】
再び
図3を参照すると、コンピュータ分析の結果を検証することができる(ステップ404)。この検証は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムで実施してよい。例えば、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、例えば、節点382の数が不十分なため情報が不十分な場合、過剰な数の節点382により、分析に時間がかかりすぎる場合など、メッシュ380および/または境界条件の再構成または改定を必要とし得る、結果の特定のエラーを特定することができ得る。
【0127】
コンピュータ分析の結果が、ステップ404で許容不可であると決定された場合、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、例えば、ステップ306で生成されたソリッドモデル320および/またはステップ312で生成されたメッシュ380を改定または改良するかどうか、またどのように改定または改良するか、ステップ310で明らかにされた境界条件を改定するかどうか、またどのように改定するか、あるいはコンピュータ分析のための入力のうちのいずれかに他の改定を行うかどうかを明らかにすることができる。次いで、上述の1つまたは複数のステップ、例えば、ステップ306~314、402、および404を決定した改定または改良に基づいて繰り返してもよい。
B.血圧、血流、およびcFFRの結果の表示
【0128】
再び
図3を参照すると、コンピュータ分析の結果がステップ404で許容可能であると決定された場合、コンピュータシステムは、コンピュータ分析の特定の結果を出力してもよい。例えば、コンピュータシステムは、コンピュータ分析の結果に基づいて生成された画像、例えば
図1に関連して上記で説明した画像、例えば模擬の血圧モデル50、模擬の血流モデル52、および/またはcFFRモデル54を表示してもよい。上述のように、これらの画像は、例えば、ステップ310で明らかにされた境界条件が充血条件に対して特定されたことから、模擬の充血条件下の模擬の血圧、血流、およびcFFRを示す。
【0129】
模擬血圧モデル50(
図1)は、模擬の充血条件下の
図17~19のメッシュ380によって表される患者の解剖学的形態全体の局所血圧を(例えば、水銀柱ミリメートルまたはmmHgで)示している。コンピュータ分析は、メッシュ380の各節点382の局所血圧を測定することができ、模擬の血圧モデル50は、それぞれの圧力に対応する色、陰影、または他の視覚的指標を指定してもよく、それにより模擬の血圧モデル50は、モデル50全体の圧力の変動を視覚的に示すことができ、各節点382の個々の値を指定する必要がない。例えば、
図1に示す模擬の血圧モデル50は、この特定の患者に関して、模擬の充血条件下で、圧力が概して均一であり、大動脈がより高い(より暗い陰影によって示される)であろうこと、また血液が主冠状動脈内へ、そして分枝内へと下流に流れるにつれて、圧力が徐々に、かつ連続的に減少している(分枝の下流端に向かって陰影が徐々に、かつ連続的に明るくなっていくことにより示される)ことを示している。模擬の血圧モデル50は、
図1に示すように、血圧の具体的な数値を示す目盛りを伴ってもよい。
【0130】
例示的実施形態において、模擬の血圧モデル50は、カラーで提供してもよく、カラースペクトルを用いて、モデル50全体の圧力の変動を示してもよい。このカラースペクトルは、最高圧から最低圧まで順番に、赤、橙、黄、緑、青、藍、および紫を含んでもよい。例えば、上限(赤)は、およそ110mmHg以上(または80mmHg、90mmHg、100mmHgなど)を示してもよく、下限(紫)は、およそ50mmHg以下(または20mmHg、30mmHg、40mmHgなど)を示してもよく、このとき緑は、およそ80mmHg(または上限と下限とのほぼ中間の他の値)を示す。したがって、患者のなかには、模擬血圧モデル50は、大動脈の大部分または全てを赤またはスペクトルの上端に向かう他の色として示してもよく、色は、冠状動脈およびそこから延びる分枝の遠位端に向かって、スペクトルによって徐々に変化してもよい(紫まで)。特定の患者の冠状動脈の遠位端は、それぞれの遠位端について測定された局所血圧に応じて、様々な色、例えば赤から紫までのいずれかを有し得る。
【0131】
模擬の血流モデル52(
図1)は、模擬の充血条件下の
図17~19のメッシュ380によって表される患者の解剖学的形態全体の局所血液速度を(例えば、センチメートル毎秒またはcm/秒で)示している。コンピュータ分析は、メッシュ380の各節点382の局所血液速度を測定することができ、模擬の血流モデル52は、それぞれの速度に対応する色、陰影、または他の視覚的指標を指定してもよく、それにより模擬の血流モデル52は、モデル52の速度の変動を視覚的に示すことができ、各節点382の個々の値を指定する必要がない。例えば、
図1に示す模擬の血流モデル52は、この特定の患者に関して、模擬の充血条件下で、主冠状動脈および分枝の特定の部分において速度が概して高い(
図1の部分53のより暗い陰影によって示される)ことを示している。模擬の血流モデル52は、
図1に示すように、血液速度の具体的な数値を示す目盛りを伴ってもよい。
【0132】
例示的実施形態において、模擬の血流モデル52は、カラーで提供してもよく、カラースペクトルを用いて、モデル52全体の速度の変動を示してもよい。このカラースペクトルは、最高速度から最低速度まで順番に、赤、橙、黄、緑、青、藍、および紫を含んでもよい。例えば、上限(赤)は、およそ100(または150)cm/秒以上を示してもよく、下限(紫)は、およそ0cm/秒を示してもよく、このとき緑は、およそ50cm/秒(または上限と下限とのほぼ中間の他の値)を示す。したがって、患者のなかには、模擬血流モデル52は、大動脈の大部分または全てをスペクトルの下端に向かう色の混合として示してもよく(例えば、緑から紫)、色は、測定された血液速度が増加する特定の位置において、スペクトルを通して徐々に変化してもよい(例えば、スペクトルの上端に向かって(赤まで))。
【0133】
cFFRモデル54(
図1)は、模擬の充血条件下の
図17~19のメッシュ380によって表される患者の解剖学的形態全体の局所cFFRを示している。上述のように、cFFRは、特定の節点382におけるコンピュータ分析によって明らかにされた局所血圧(例えば、模擬の血圧モデル50に示される)を例えば流入境界322(
図8)における大動脈の血圧で除した比として算出することができる。コンピュータ分析は、メッシュ380の各節点382のcFFRを明らかにすることができ、cFFRモデル54は、それぞれのcFFRに対応する色、陰影、または他の視覚的指標を指定してもよく、それによりcFFRモデル54は、モデル54全体のcFFRの変動を視覚的に示すことができ、各節点382の個々の値を指定する必要がない。例えば、
図1に示すcFFRモデル54は、この特定の患者に関して、模擬の充血条件下で、cFFRが概して均一であり、大動脈でおよそ1.0であろうこと、血液が主冠状動脈内へ、そして分枝内へと下流に流れるにつれて、cFFRが徐々に、かつ連続的に減少していることを示している。また、cFFRモデル54は、
図1に示すように、cFFRモデル54全体の特定の地点のcFFR値も示すことができる。cFFRモデル54は、
図1に示すように、cFFRの具体的な数値を示す目盛りを伴ってもよい。
【0134】
例示的実施形態において、cFFRモデル54は、カラーで提供してもよく、カラースペクトルを用いて、モデル54全体の圧力の変動を示してもよい。このカラースペクトルは、最低cFFR(機能的に重要な病変を示す)から最高cFFRまで順番に、赤、橙、黄、緑、青、藍、および紫を含んでもよい。例えば、上限(紫)は、1.0のcFFRを示してもよく、下限(赤)は、およそ0.7(または0.75もしくは0.8)以下を示してもよく、このとき緑は、およそ0.85(または上限と下限とのほぼ中間の他の値)を示す。例えば、下限は、cFFR測定が機能的に重要な病変、またはインターベンションを必要とし得る他の特徴を示すかどうかを明らかにするために使用する下限(例えば、0.7、0.75、または0.8)に基づいて明らかにすることができる。したがって、患者の中には、cFFRモデル54は、大動脈の大部分または全てを紫またはスペクトルの上端に向かう他の色として示してもよく、色は、冠状動脈およびそこから延びる分枝の遠位端に向かって、スペクトルを通して徐々に変化してもよい(例えば、赤から紫までのいずれか)。特定の患者の冠状動脈の遠位端は、それぞれの遠位端について測定されたcFFRの局所値に応じて、様々な色、例えば赤から紫までのいずれかを有してもよい。
【0135】
cFFRが、機能的に重要な病変、またはインターベンションを必要とし得る他の特徴の存在を明らかにするために使用される下限未満に低下したことを特定した後、動脈または分枝を評価して、機能的に重要な病変(複数可)の位置を特定することができる。コンピュータシステムまたはユーザは、動脈または分枝の幾何学的形状に基づいて(例えば、cFFRモデル54を用いて)、機能的に重要な病変(複数可)の位置を特定することができる。例えば、機能的に重要な病変(複数可)は、局所の最低cFFR値を有するcFFRモデル54の位置の近傍(例えば、上流)に位置する狭小化または狭窄を発見することによって、位置を特定することができる。コンピュータシステムは、ユーザに対して、機能的に重要な病変(複数可)を含むcFFRモデル54(または他のモデル)の部分(複数可)を示してもよく、または表示してもよい。
【0136】
また、コンピュータ分析の結果に基づいて、他の画像を生成することもできる。例えば、コンピュータシステムは、例えば、
図20~22に示すように、主冠状動脈に関する追加情報を提供し得る。冠動脈は、例えば、その特定の冠動脈が最低cFFRを含む場合、コンピュータシステムによって選択することができる。あるいは、ユーザが、特定の冠動脈を選択してもよい。
【0137】
図20は、コンピュータ分析の結果を含む、患者の解剖学的形態のモデルを示し、このモデル上の特定の地点は、個々の参照ラベル(例えば、LM、LAD1、LAD2、LAD3など)で特定される。
図21に示される例示的実施形態において、LAD動脈における地点が提供されるが、これは模擬の充血条件下でこの特定の患者の最低cFFRを有する主冠動脈である。
【0138】
図21および
図22は、これらの地点(例えば、LM、LAD1、LAD2、AD3など)のうちの一部もしくは全てにおける、および/またはこのモデル上の特定の他の位置(例えば、大動脈中など)における、特定の経時的な変数のグラフを示す。
図21は、
図20に示される大動脈ならびに地点LAD1、LAD2、およびLAD3における経時的な圧力(例えば、水銀柱ミリメートルまたはmmHg)のグラフである。グラフ上の一番上のプロットは、大動脈中の圧力を示し、上から2番目のプロットは、地点LAD1の圧力を示し、上から3番目のプロットは、地点LAD2の圧力を示し、一番下のプロットは、地点LAD3の圧力を示す。
図22は、
図20に示される地点LM、LAD1、LAD2、およびLAD3における経時的な流量(例えば、立方センチメートル毎秒またはcc/秒)のグラフである。さらに、他のグラフ、例えば、これらの地点の一部もしくは全ておよび/または他の地点における、経時的なせん断応力のグラフを提供することもできる。グラフ上の一番上のプロットは、地点LMの流量を示し、上から2番目のプロットは、地点LAD1の流量を示し、上から3番目のプロットは、地点LAD2の流量を示し、一番下のプロットは、地点LAD3の流量を示す。また、特定の主冠動脈および/またはそこから延びる分枝の全長に沿って、これらの変数、例えば、血圧、血流、速度、またはcFFRの変化を示すグラフを提供することもできる。
【0139】
場合によっては、上述の様々なグラフおよび他の結果をレポートにまとめることもできる(ステップ406)。例えば、上述の画像または他の情報を規定のテンプレートを有する文書に挿入してもよい。このテンプレートは、事前設定された複数の患者に対して包括的なものでもよく、またコンピュータ分析の結果を医師および/または患者に報告するために使用することもできる。この文書またはレポートは、コンピュータ分析の完了後、コンピュータシステムによって自動的に完了されてもよい。
【0140】
例えば、最終レポートは、
図23に示す情報を含んでもよい。
図23は、
図1のcFFRモデル54を含み、また要約情報、例えば、主冠状動脈およびそこから延びる分枝それぞれにおける最低cFFR値も含む。例えば、
図23は、LAD動脈の最低cFFR値が0.66であり、LCX動脈の最低cFFR値が0.72であり、RCA動脈の最低cFFR値が0.80であることを示す。他の要約情報には、患者の名前、患者の年齢、患者の血圧(BP)(例えば、ステップ100で取得される)、患者の心拍数(HR)(例えば、ステップ100で取得される)などを含み得る。また、最終レポートは、医師または他のユーザがさらなる情報を明らかにするためにアクセスすることができる、上述のように生成された画像および他の情報のバージョンも含んでよい。コンピュータシステムによって生成された画像は、医師または他のユーザが任意の地点にカーソルを置いて、その地点における上述の変数、例えば、血圧、速度、流量、cFFRなどを特定できるようにフォーマットされていてもよい。
【0141】
最終レポートは、医師および/または患者に送信することもできる。最終レポートは、任意の既知の通信方法、例えば、無線もしくは有線ネットワーク、郵便などを用いて送信することができる。あるいは、医師および/または患者は、最終レポートがダウンロードまたは受け取り可能であることを通知されてもよい。次いで、医師および/または患者は、ウェブベースのサービスにログインして、安全な通信回線を介して最終レポートをダウンロードすることができる。
C.結果の検証
【0142】
再び
図3を参照すると、コンピュータ分析の結果を個別に検証することができる(ステップ408)。例えば、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、コンピュータ分析の結果、例えばステップ406で生成された画像および他の情報の上述のステップのうちのいずれかの再実施を要求する特定のエラーを特定することができる。そのようなエラーが特定された場合、そのコンピュータ分析の結果は許容不可であると決定してもよく、特定のステップ、例えば、ステップ100、200、300、400、サブステップ102、202~208、240~260、304~314、および402~408などを繰り返してもよい。
【0143】
したがって、
図3に示す上述のステップ402~408は、
図2のステップ400のサブステップとみなすことができる。
【0144】
コンピュータ分析の結果を検証するための別の方法は、結果に含まれるいずれかの変数、例えば、血圧、速度、流量、cFFRなどを患者から別の方法を用いて測定することを含んでもよい。例示的実施形態において、変数を測定して(例えば、侵襲的に)、次いでコンピュータ分析によって明らかにされた結果と比較してもよい。例えば、FFRは、ソリッドモデル320およびメッシュ380によって表される患者の解剖学的形態内の1つまたは複数の地点において、例えば上述のように患者に挿入したプレッシャーワイヤーを用いて明らかにすることができる。ある位置で測定したFFRを同じ位置のcFFRと比較してもよく、この比較は複数の位置で実施してもよい。場合によっては、その比較に基づいて、コンピュータ分析および/または境界条件を調整してもよい。
D.冠動脈血流情報を提供するためのシステムおよび方法の別の実施形態
【0145】
特定の患者における冠動脈血流に関連する様々な情報を提供するための方法600の別の実施形態を
図24に示す。方法600は、上述のコンピュータシステム、例えば、上述の
図3に示されるステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用するコンピュータシステムで実施することができる。方法600は、1つまたは複数の入力610を用いて実施してもよく、また入力610に基づいて1つまたは複数のモデル620を生成することと、入力610および/またはモデル620に基づいて1つまたは複数の条件630を指定することと、モデル620および条件630に基づいて1つまたは複数の解640を導くことを含んでもよい。
【0146】
入力610は、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、ならびに心臓の医療画像データ611、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100で取得される)を含んでもよい。また、入力610は、患者の上腕の血圧の測定値612および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100で取得される)も含んでよい。測定値612は、非侵襲的に取得してもよい。入力610を用いて、モデル(複数可)620を生成してもよく、および/または後述の条件(複数可)630を決定してもよい。
【0147】
上記のように、入力610に基づいて、1つまたは複数のモデル620を生成してもよい。例えば、方法600は、画像データ611に基づいて、患者の解剖学的形態(例えば、大動脈、冠状動脈、およびそこから延びる分枝)の1つまたは複数の患者固有の三次元幾何モデルを生成すること(ステップ621)を含んでもよい。例えば、幾何モデルは、
図3のステップ306で生成される
図8のソリッドモデル320、および/または
図3のステップ312で生成される
図17~19のメッシュ380であってもよい。
【0148】
再び
図24を参照すると、方法600は、1つまたは複数の物理学に基づく血流モデルを生成すること(ステップ622)も含んでよい。この血流モデルは、ステップ621で生成された患者固有の幾何モデルを通る血流、心臓および大動脈の循環、遠位冠循環などに関連するモデルを含んでもよい。血流モデルは、患者のモデリングされた解剖学的形態に関連する少なくとも1つの血流の特徴、例えば血流速度、圧力、流量、FFRなどに関連してもよい。血流モデルは、三次元幾何モデルの流入および流出境界322、324における境界条件として指定してもよい。血流モデルは、次数低減モデル、または
図3のステップ310に関連して上記で説明した他の境界条件、例えば集中パラメータ心臓モデル340、集中パラメータ冠動脈モデル350、Windkesselモデル360などを含んでもよい。
【0149】
上記のように、入力610および/またはモデル620に基づいて、1つまたは複数の条件630を明らかにすることができる。条件630は、ステップ622(および
図3のステップ310)で特定された境界条件について算出されたパラメータを含む。例えば、方法600は、画像データ611(例えば、
図3のステップ240で明らかにされる)に基づいて、患者固有の心室または心筋質量を算出することによって、条件を明らかにすること(ステップ631)を含んでもよい。
【0150】
方法600は、ステップ631で算出した心室または心筋質量を用いて、関係Q=Q
0M
α(式中、αは既定のスケーリング指数であり、Mは心室または心筋質量であり、Q
0は既定の定数である)に基づいて、安静時の冠血流を算出することによって条件を明らかにすること(例えば、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように)(ステップ632)を含んでもよい。あるいは、この関係は、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように、Q∝Q
0M
αの形式を有してもよい。
【0151】
また、方法600は、ステップ632で算出して得られた冠血流および患者の測定された血圧612を用いて、安静時の全冠動脈抵抗を算出することによって条件を明らかにすること(例えば、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように)(ステップ633)も含んでよい。
【0152】
また、方法600は、ステップ633で算出した安静時の全冠動脈抵抗およびモデル620を用いて、個々の冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の個々の抵抗を算出することによって条件を明らかにすること(ステップ634)も含んでよい。例えば、
図3のステップ310に関連して上述したように、ステップ633で算出された安静時の全冠動脈抵抗は、個々の冠状動脈および分枝の遠位端のサイズ(例えば、ステップ621で生成された幾何モデルから特定される)に基づいて、また関係R=R
0d
β(式中、Rは特定の遠位端における流動抵抗であり、R
0は既定の定数であり、dはサイズ(例えば、その遠位端の直径)であり、βは既定のベキ乗指数である)に基づいて、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように、個々の冠状動脈および分枝に分布してもよい。
【0153】
再び
図24を参照すると、方法600は、1つまたは複数の患者の身体的条件に基づいて、境界条件を調整すること(ステップ635)を含んでもよい。例えば、ステップ631~634で特定されたパラメータは、解640が、安静、様々なレベルの充血、様々なレベルの運動もしくは労作、異なる薬物治療などを模擬することを意図しているかどうかに基づいて修正してもよい。入力610、モデル620、および条件630に基づいて、例えば、
図3のステップ402に関連して上述するように、コンピュータ分析を実施して、ステップ635で選択した身体的条件下の患者の冠動脈血流に関する情報を含む解640を明らかにすることができる(ステップ641)。解640から提供され得る情報の例を次に記載する。
【0154】
この複合された患者固有の解剖学的(幾何学的)および生理学的(物理学ベース)モデルを用いて、冠動脈血流に対する、心拍数、一回拍出量、血圧、または冠微小循環機能が変化する、異なる薬物治療または生活様式の変化(例えば、喫煙の中止、食事の変化、または身体活動の増加)の効果を明らかにすることができる。このような情報は、薬物療法を最適化するため、または薬物治療の危険な影響の可能性を回避するために使用することができる。また、この複合モデルを用いて、代替的な形態および/または様々なレベルの身体活動または潜在的な外部力への暴露の危険性(例えば、サッカーのプレイ時、宇宙飛行中、スキューバダイビング時、航空機飛行中など)の冠動脈血流に対する影響を明らかにしてもよい。このような情報を用いて、特定の患者に対して安全かつ効果的であり得る身体活動のタイプおよびレベルを特定することができる。また、最適なインターベンション戦略を選択するために、この複合モデルを用いて、冠動脈血流に対する経皮冠動脈インターベンションの潜在的利益を予測し、および/または最適な手術戦略を選択するために、冠動脈血流に対する冠動脈バイパス術の潜在的利益を予測することもできる。
【0155】
また、この複合モデルを用いて、冠動脈血流に対する動脈疾患の負担の増加の潜在的な有害効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、進行中の疾患が心筋への血流にいつ障害を引き起こし得るかを予測することもできる。このような情報は、初期に非侵襲的な画像化を用いて血行動態的に重要な疾患を有さないと観察された患者が、薬物療法、インターベンション療法、または手術療法を要すると見込まれないであろう「保証期間」、あるいは有害因子が継続した場合に進行が発生し得る速度の特定を可能にし得る。
【0156】
また、この複合モデルを用いて、冠動脈疾患の負担の減少から生じる冠動脈血流に対する潜在的な有益効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、疾患の退行が冠状動脈を通る心筋への血流の増加をいつもたらし得るかを予測することもできる。このような情報を用いて、食事の変更、身体活動の増加、スタチンまたは他の薬物治療の処方などを含むが、これらに限定されない医学的管理プログラムの指針とすることができる。
VI.患者固有の治療プランの提供
【0157】
図2に示すステップ500に関連して上述したように、例示的方法は、患者固有の治療計画を提供することを含んでもよい。例示的実施形態において、ステップ500は、以下のステップを含んでもよい。
図3には以下のステップを示さないが、
図3に示すステップと併せて、例えばステップ406または408の後に、これらのステップを実施してもよいことは理解される。
【0158】
上述のように、
図1および
図23に示すcFFRモデル54は、未治療状態および模擬の充血条件下の
図17~19のメッシュ380によって表される患者の解剖学的形態全体のcFFR値を示している。この情報を用いて、医師は、患者に、運動の増加、食事の変更、薬物治療の処方、モデリングされた解剖学的形態の任意の部分または心臓の他の部分の手術(例えば、冠動脈バイパス術、1つまたは複数の冠動脈ステントの挿入など)など、治療を処方することができる。
【0159】
どの治療(複数可)を処方するかを明らかにする目的で、コンピュータシステムを用いて、そのような治療(複数可)によって、コンピュータ分析から明らかにされた情報がどのように変化するかを予測することができる。例えば、ステント(複数可)の挿入または他の手術などの特定の治療は、モデリングされた解剖学的形態の幾何学的形状に変化をもたらし得る。したがって、例示的実施形態において、ステップ306で生成されたソリッドモデル320を改定して、ステントが挿入されている1つまたは複数の内腔の拡大を示すことができる。
【0160】
例えば、
図1および
図23に示すcFFRモデル54は、LAD動脈の最低cFFR値が0.66であり、LCX動脈の最低cFFR値が0.72であり、RCA動脈の最低cFFR値が0.80であることを示す。cFFR値が、例えば0.75未満である場合に、治療を提案してもよい。したがって、コンピュータシステムは、ソリッドモデル320を改定するユーザに、LAD動脈およびLCX動脈の拡大を示して、これらの冠状動脈へのステントの挿入を模擬するよう提案してもよい。ユーザは、模擬ステントの位置およびサイズに対応する、拡大の位置および量(例えば、長さおよび直径)を選択するよう指示される。あるいは、拡大の位置および量は、様々な因子、例えば0.75未満のcFFR値を有する節点(複数可)の位置、重大な欠陥狭窄の位置、従来のステントのサイズなどに基づいて、コンピュータシステムが自動的に決定してもよい。
【0161】
図25は、位置512の一部のLAD動脈および位置514のLCX動脈を拡大することによって作成されたソリッドモデルに基づいて明らかにされた、修正cFFRモデル510の例を示している。例示的実施形態において、上述の任意のステップ、例えばステップ310~314および402~408を修正ソリッドモデルを用いて繰り返してもよい。ステップ406において、最終レポートは、未治療の患者(例えば、ステントを使用していない)に関連する情報、例えば
図23に示す情報、ならびに患者の模擬治療に関連する情報、例えば
図25および
図26に示す情報を含んでもよい。
【0162】
図25は、修正cFFRモデル510を含み、また要約情報、例えば、提案される治療に関連する修正ソリッドモデルの主冠状動脈およびそこから延びる分枝の最低cFFR値も含む。例えば、
図25は、LAD動脈(およびその下流分枝)の最低cFFR値が0.78であり、LCX動脈(およびその下流分枝)の最低cFFR値が0.78であり、RCA動脈(およびその下流分枝)の最低cFFR値が0.79であることを示す。したがって、未治療の患者(ステント不使用)のcFFRモデル54と提案される治療(ステント挿入)のcFFRモデル510との比較は、提案される治療が、LAD動脈の最低cFFRを0.66から0.78に増加させ得、またLCX動脈の最低cFFRを0.72から0.76に増加させるであろうこと、一方RCA動脈の最低cFFRでは0.80から0.79のわずかな減少があるであろうことを示す。
【0163】
図26は、上述のように、LAD動脈の位置512およびLCX動脈の位置514の部分の拡大後に明らかにされた、修正された模擬の血流モデル520の例を示している。また、
図26は、要約情報、例えば、提案される治療に関連する修正されたソリッドモデルの主冠状動脈およびそこから延びる分枝の様々な位置における血流値も含む。例えば、
図26は、未治療の患者(ステント不使用)および治療を受けた患者(ステント挿入)について、LAD動脈中の4つの位置LAD1、LAD2、AD3、およびLAD4ならびにLCX動脈中の2つの位置LCX1およびLCX2の血流値を示している。また、
図26は、未治療の状態と治療を受けた状態との間の血流値の変化率も示している。したがって、未治療の患者の模擬血流モデル52と提案される治療の模擬の血流モデル520との比較は、提案される治療が、LAD動脈およびLCX動脈を通る流量をLAD1-LAD4、LCX1、およびLCX2の全ての位置で、位置によって9%~19%増加させ得ることを示している。
【0164】
また、未治療の状態と治療を受けた状態との間で他の情報、例えば冠動脈血圧を比較してもよい。この情報に基づいて、医師は、提案される治療選択肢を進めるかどうかを患者と話し合うことができる。
【0165】
また、他の治療選択肢もソリッドモデル320を様々な形で修正することになり得る。例えば、冠動脈バイパス術は、ソリッドモデル320に新しい内腔または通路を作成することになり得、また病変の除去も内腔または通路の拡大することになり得る。他の治療選択肢は、ソリッドモデル320を修正することにならないこともある。例えば、運動もしくは労作の増加、食事もしくは他の生活様式の変化、薬物治療の処方などは、例えば、血管収縮、拡張、心拍数の減少などにより、ステップ310で特定した境界条件を変更することになり得る。例えば、患者の心拍数、心拍出量、一回拍出量、血圧、冠微小循環機能、集中パラメータモデルの構成などは、処方される薬物治療、採用された運動(または他の労作)の種類および頻度、採用された生活様式の変化の種類(例えば、喫煙の中止、食事の変化など)によって異なり得、それによってステップ310で特定した境界条件に様々な形で影響を与える。
【0166】
例示的実施形態において、多数の患者からのデータを用いて、修正された境界条件を実験的に明らかにしてもよく、また類似する治療選択肢は、ほとんど同じ形で境界条件を修正することを必要とし得る。経験モデルは、大集団の患者固有のデータから開発し、将来の分析で類似する患者に適用することができる特定の治療選択肢に対応する、境界条件のライブラリまたは境界条件を算出するための関数を作成することができる。
【0167】
境界条件の修正後、上述のステップ、例えば、ステップ312、314、および402~408を修正された境界条件を用いて繰り返してもよく、またステップ406において、最終レポートは、未治療の患者に関連する情報、例えば
図23に示す情報、ならびに患者の模擬治療に関する情報、例えば
図25および
図26に示す情報を含んでもよい。
【0168】
あるいは、医師、患者、または他のユーザに、三次元モデル(例えば、
図8のソリッドモデル320)との対話を可能にするユーザインターフェースを提供してもよい。モデル320は、1つまたは複数の治療選択肢を反映するためにユーザが編集することができる、ユーザが選択可能なセグメントに分割してもよい。例えば、ユーザは、狭窄(または閉塞、例えば、急性閉塞)を含むセグメントを選択し、そのセグメントを調整して狭窄を除去してもよく、ユーザは、モデル320に、バイパスとするためのセグメントを追加してもよい。また、ユーザは、上記で明らかにされた境界条件を変更し得る他の治療選択肢および/または生理的パラメータ、例えば、心拍出量、心拍数、一回拍出量、血圧、運動もしくは労作レベル、充血レベル、薬物治療などの変化を指定するように指示されてもよい。代替の実施形態では、コンピュータシステムが治療選択肢を決定しまたは提案してもよい。
【0169】
ユーザインターフェースは、三次元モデル320との対話を可能にして、ユーザが狭窄(または閉塞、例えば、急性閉塞)を模擬することを可能にし得る。例えば、ユーザは、狭窄を含めるセグメントを選択してもよく、コンピュータシステムを用いて、狭窄の追加によって、コンピュータ分析から決定された情報がどのように変化するかを予測することができる。したがって、本明細書に記載する方法は、動脈を閉塞させることの影響を予測するために使用することができる。
【0170】
また、ユーザインターフェースは、三次元モデル320との対話により、癌性腫瘍の除去時など、特定の外科手術で発生し得る損傷した動脈または動脈の除去を模擬することを可能にし得る。また、このモデルは特定の動脈を通る血流を妨げることの影響を模擬するように修正して、患者に十分な血流を供給するための側副路の可能性を予測することもできる。
A.様々な治療選択肢を比較するための次数低減モデルの使用
【0171】
例示的実施形態において、コンピュータシステムは、ユーザが、三次元ソリッドモデル320またはメッシュ380を次数低減モデルに置き換えることによって、より迅速に様々な治療選択肢を模擬することを可能にし得る。
図27は、例示的実施形態による、次数低減モデルを用いて様々な治療選択肢を模擬するための方法700に関連する概略図を示している。方法700は、上述のコンピュータシステムで実施してもよい。
【0172】
血流または他のパラメータを表す1つまたは複数の患者固有の模擬の血流モデルは、上述のコンピュータ分析からの出力であってもよい(ステップ701)。例えば、模擬の血流モデルは、
図1の模擬の血圧モデル50、
図1の模擬の血流モデル52、
図1のcFFRモデル54などを含んでもよいが、ただし上述の
図2および
図3に示す方法を用いる。上述のように、模擬の血流モデルは、患者の解剖学的形態の三次元幾何モデルを含んでもよい。
【0173】
次数低減モデルの条件を指定するために、機能情報を模擬の血流モデルから抽出することができる(ステップ702)。例えば、機能情報には、上述のコンピュータ分析を用いて明らかにした、血液の圧力、流量、または速度の情報を含んでよい。
【0174】
次数低減(例えば、0次元または一次元)モデルを提供して、ステップ701で生成した患者固有の模擬の血流モデルを生成するために使用した三次元ソリッドモデル320を置き換えてもよく、この次数低減モデルを用いて、患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにしてもよい(ステップ703)。例えば、次数低減モデルは、
図3のステップ310に関連して上述したように生成された集中パラメータモデルであってもよい。したがって、この集中パラメータモデルは、患者の解剖学的形態の単純化モデルであり、
図17~19のメッシュ380に関連するより複雑な連立方程式を解く必要なく、患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにするために使用することができる。
【0175】
ステップ703で次数低減モデルを解くことから明らかにされた情報は、次いで、患者の解剖学的形態の三次元ソリッドモデル(例えば、ソリッドモデル320)にマッピングまたは外挿してもよく(ステップ704)、ユーザは、要望に応じて次数低減モデルに変更を加えて、ユーザが選択してもよい様々な治療選択肢および/または患者の生理的パラメータの変更を模擬することができる(ステップ705)。選択可能な生理的パラメータには、心拍出量、運動もしくは労作レベル、充血のレベル、薬物治療の種類などを含み得る。選択可能な治療選択肢には、狭窄の除去、バイパスの追加などを含み得る。
【0176】
次いで、ユーザが選択した治療選択肢および/または生理的パラメータに基づいて次数低減モデルを修正してもよく、その修正された次数低減モデルを用いて、選択した治療選択肢および/または生理的パラメータに関連する、患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにすることができる(ステップ703)。ステップ703で次数低減モデルを解くことから明らかにされた情報を、次いで患者の解剖学的形態の三次元ソリッドモデル320にマッピングまたは外挿して、患者の解剖学的形態の冠動脈血流に対する、選択した治療選択肢および/または生理的パラメータの効果を予測することができる(ステップ704)。
【0177】
ステップ703~705は、様々な異なる治療選択肢および/または生理的パラメータについて繰り返して、様々な治療選択肢の予測される効果を互いに、また未治療の患者の冠動脈血流に関する情報と比較してもよい。その結果、三次元メッシュ380を用いたより複雑な分析を再び実行する必要なく、様々な治療選択肢および/または生理的パラメータについての予測される結果を互いに、また未治療の患者に関する情報と比較して評価することができる。代替的に、次数低減モデルを用いてもよく、これはユーザが、異なる治療選択肢および/または生理的パラメータをより簡単かつ迅速に分析および比較することを可能にし得る。
【0178】
図28は、例示的実施形態による、次数低減モデルを用いて様々な治療選択肢を模擬するための例示的方法のさらなる態様を示している。方法700は、上述のコンピュータシステムで実施してもよい。
【0179】
図3のステップ306に関連して上述したように、患者の画像データに基づいて、患者固有の幾何モデルを生成することができる(ステップ711)。例えば、画像データには、
図2のステップ100で取得されるCCTAデータを含んでもよく、幾何モデルは、
図3のステップ306で生成される
図8のソリッドモデル320、および/または
図3のステップ312で生成される
図17~19のメッシュ380であってもよい。
【0180】
この患者固有の三次元幾何モデルを用いて、例えば
図3のステップ402に関連して上述したように、コンピュータ分析を実施して、患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにしてもよい(ステップ712)。このコンピュータ分析は、血流または他のパラメータを表す1つまたは複数の三次元の患者固有の模擬の血流モデル、例えば、
図1の模擬の血圧モデル50、
図1の模擬の血流モデル52、
図1のcFFRモデル54などを出力してもよい。
【0181】
模擬血流モデルは、モデルの解剖学的特徴に基づいて、セグメント化してもよい(例えば、
図14に関連して上述したように)(ステップ713)。例えば、主冠状動脈から延びる分枝は、別個のセグメントとして提供してもよく(ステップ714)、狭窄または疾患部を含む部分はセグメントとして提供してもよく(ステップ716)、分枝と狭窄または疾患部を含む部分との間の部分は、別個のセグメントとして提供してもよい(ステップ715)。模擬の血流モデルをセグメント化する際に、様々な程度の分解能を提供してもよく、それにより各血管は、複数の短い分離したセグメント、または例えば血管全体を含むより長いセグメントを含んでもよい。また、模擬の血流モデルをセグメント化するための様々な技法を提供してもよく、これには中央線を生成し、生成された中央線に基づいて区切ること、または分枝点を検出し、検出された分枝点に基づいて区切ることが含まれる。疾患部分および狭窄は、例えば、中央線の全長に沿って断面積を測定し、局所的に最小の断面積を算出することによって特定することができる。ステップ711~716は、
図27のステップ701のサブステップとみなすことができる。
【0182】
セグメントは、
図15に関連して上述したように、集中パラメータモデルの要素、例えば抵抗器、コンデンサ、インダクタなどで置き換えることができる。抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、および集中パラメータモデルに使用される他の電気要素に関連する他の変数の個々の値は、ステップ712で提供される模擬の血流モデルから導くことができる。例えば、分枝および分枝と狭窄または疾患部を含む部分との間の部分に関して、模擬の血流モデルから導かれた情報を用いて、対応するセグメントに線形抵抗を指定してもよい(ステップ717)。狭窄または疾患部など、複雑な幾何学的形状を有する部分の場合、抵抗は流量によって異なり得る。したがって、
図15に関連して上述したように、複数のコンピュータ分析を用いて、様々な流量および圧力条件で模擬の血流モデルを取得して、これらの複雑な幾何学的形状に対する患者固有、血管固有、および病変固有の抵抗関数を導くことができる。したがって、狭窄または疾患部を含む部分について、これらの複数のコンピュータ分析から導かれた情報、または以前のデータから導かれたモデルを用いて、対応するセグメントに非線形の流量依存的な抵抗を指定してもよい(ステップ718)。ステップ717および718は、
図27のステップ702のサブステップとみなすことができる。
【0183】
ステップ717および718で測定された抵抗を用いて、次数低減(例えば、0次元または一次元)モデルを生成することができる(ステップ719)。例えば、次数低減モデルは、
図3のステップ310に関連して上述したように生成された集中パラメータモデルであってもよい。したがって、この集中パラメータモデルは、患者の解剖学的形態の単純化モデルであり、
図17~19のメッシュ380に関連するより複雑な連立方程式を解く必要なく、患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにするために使用することができる。
【0184】
ユーザがステップ719で作成された次数低減モデルと対話することを可能にするユーザインターフェースを提供してもよい(ステップ720)。例えば、ユーザは、次数低減モデルの異なるセグメントを選択および編集して、異なる治療選択肢を模擬してもよく、および/または様々な生理的パラメータを編集してもよい。例えば、疾患領域の修復のためのステントの挿入などのインターベンションは、ステントが挿入されるセグメントの抵抗を減少させることによってモデリングすることができる。バイパスの形成は、疾患セグメントと平行して低い抵抗を有するセグメントを追加することによってモデリングすることができる。
【0185】
モデリングされた次数低減モデルを解いて、ステップ720で選択された治療および/または生理的パラメータの変化の下の患者の冠動脈血流に関する情報を明らかにすることができる(ステップ721)。ステップ721で特定された各セグメントにおける流量および圧力の解の値は、次いで、ステップ712で特定された三次元解と比較してもよく、それらのセグメントの抵抗関数(例えば、ステップ717および718で明らかにされる)を調整し、解が一致するまで次数低減モデルを解く(例えば、ステップ721)ことによって、いずれの差も最小化することができる。結果として、次数低減モデルを作成し、次いで比較的迅速な計算(例えば、完全三次元モデルと比較して)を可能にする単純化した1組の方程式を用いて解いてもよく、これを使用して、完全三次元計算解の結果と極めて近似し得る流量および圧力を求めることができる。次数低減モデルは、様々な異なる治療選択肢をモデリングするための比較的迅速な反復を可能にする。
【0186】
ステップ721で次数低減モデルを解くことから明らかにされる情報は、次いで、患者の解剖学的形態の三次元ソリッドモデル(例えば、ソリッドモデル320)にマッピングまたは外挿してもよい(ステップ722)。ステップ719~722は、
図27のステップ703~705と類似していてもよく、ユーザの所望に応じて繰り返して、治療選択肢および/または生理的パラメータの様々な組み合わせを模擬してもよい。
【0187】
あるいは、三次元モデルからセグメントに沿った抵抗を算出する(例えば、ステップ717および718について上述したように)よりもむしろ、中央線に沿って間隔を置いた流量および圧力を集中パラメータまたは一次元モデルに規定してもよい。実効抵抗または損失係数は、境界条件ならびに規定された流量および圧力の制約下で求めることができる。
【0188】
また、個々のセグメントにわたる流量および圧力の勾配を用いて、次数低減モデルから導かれた解(例えば、ステップ721について上述したように)を使用して心外膜冠動脈の抵抗を計算することができる。心外膜冠動脈の抵抗は、心外膜冠状動脈(医療用画像データから再構成された患者固有のモデルに含まれる冠状動脈およびそこから延びる分枝の部分)の等価抵抗として算出することができる。これは、冠状動脈にびまん性アテローム性動脈硬化症を有する患者が、なぜ虚血(血液供給の制約)の症状を示し得るのかを説明する際に、臨床的意義を有し得る。また、模擬された薬理学的に誘導した充血または様々な運動強度条件下の心筋組織体積(または質量)単位当たりの流量および/または心仕事量単位当たりの流量は、次数低減モデルからのデータから算出することができる。
【0189】
結果として、三次元血流モデリングの精度を一次元および集中パラメータモデリング技術が本来備える計算の簡易性および相対速度と兼ね備えることができる。三次元計算法は、正常セグメント、狭窄、分岐点、および他の解剖学的特徴の圧力損失の数値的に導かれた経験モデルを組込む、患者固有の一次元モデルまたは集中パラメータモデルを数値的に導くために使用することができる。心臓血管疾患を有する患者の改善された診断を提供することができ、薬物治療、インターベンション治療、および外科治療の計画をより迅速に実施することができる。
【0190】
また、三次元計算流体力学技術の精度は血流の集中パラメータおよび一次元モデルの計算の簡易性および実効能力と組み合わせることができる。三次元幾何学的・生理学的モデルは、次数低減一次元モデルまたは集中パラメータモデルに自動的に分解することができる。三次元モデルは、正常セグメント、狭窄、および/または分枝を通る血流の線形もしくは非線形の血行動態効果を計算するため、および経験モデルのパラメータを設定するために使用することができる。一次元モデルまたは集中パラメータモデルは、患者固有モデルの血流および圧力をより効率的かつ迅速に求め、集中パラメータまたは一次元解の結果を表示することができる。
【0191】
患者固有の解剖学的・生理学的次数低減モデルは、心拍数、一回拍出量、血圧、または冠微小循環機能を変更する異なる薬物治療または生活様式の変化(例えば、喫煙の中止、食事の変化、または身体活動の増加)の冠動脈血流に対する影響を明らかにするために使用することができる。このような情報は、薬物療法を最適化するため、または薬物治療の危険な影響の可能性を回避するために使用することができる。また、次数低減モデルを用いて、代替的な形態および/または様々なレベルの身体活動または潜在的な外部力への暴露の危険性(例えば、サッカーのプレイ時、宇宙飛行中、スキューバダイビング時、航空機飛行中など)の冠動脈血流に対する影響を明らかにしてもよい。このような情報を用いて、特定の患者に対して安全かつ効果的であり得る身体活動のタイプおよびレベルを特定することができる。また、次数低減モデルを用いて、最適なインターベンション戦略を選択するために、冠動脈血流に対する経皮冠動脈インターベンションの潜在的な利益を予測して、最適なインターベンション戦略を選択する、および/または冠動脈血流に対する冠動脈バイパス術の潜在的な利益を予測して、最適な手術戦略を選択することもできる。
【0192】
また、次数低減モデルを用いて、冠動脈血流に対する動脈疾患の負担の増加の潜在的な有害効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、進行中の疾患が心筋への血流にいつ障害を引き起こし得るかを予測することもできる。このような情報は、初期に非侵襲的な画像化を用いて血行動態的に重要な疾患を有さないと観察された患者が、薬物療法、インターベンション療法、または手術療法を要すると見込まれないであろう「保証期間」、あるいは有害因子が継続した場合に進行が発生し得る速度の特定を可能にし得る。
【0193】
また、次数低減モデルを用いて、冠動脈疾患の負担の減少から生じる冠動脈血流に対する潜在的な有益効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、疾患の退行が、冠状動脈を通る心筋への血流の増加をいつもたらし得るかを予測することもできる。このような情報を用いて、食事の変更、身体活動の増加、スタチンまたは他の薬物治療の処方などを含むが、これらに限定されない医学的管理プログラムの指針とすることができる。
【0194】
また、次数低減モデルを血管造影システムに組込んで、医師が心臓カテーテル検査室で患者を診察している間に、治療選択肢の実況での計算を可能にすることもできる。このモデルは、血管造影表示と同じ配向で位置合わせして、冠状動脈の実況での血管造影像と模擬血流の解との並列または重複での結果を可能にしてもよい。医師は、処置中に観察がなされるため、治療計画を計画および変更することができ、医療上の決定がなされる前に、比較的迅速なフィードバックを可能にする。医師は、侵襲的に圧力、FFR、または血流を測定してもよく、その測定値を使用して、予測シミュレーションを実施する前に、モデルをさらに改良してもよい。
【0195】
また、次数低減モデルは、医療画像化システムまたはワークステーションに組込んでもよい。以前の患者固有のシミュレーション結果のライブラリから導かれた場合、その次数低減モデルを幾何学的セグメンテーションアルゴリズムと併用して、画像スキャン完了後に血流情報を比較的迅速に解くことができる。
【0196】
また、次数低減モデルを用いて、新しい薬物療法の有効性、または治療選択肢の費用/利益を大集団の患者でモデリングすることもできる。複数の患者固有の集中パラメータモデル(例えば、数百、数千、またはそれ以上)のデータベースは、比較的短時間で解くためのモデルを提供することができる。比較的迅速な反復および最適化が、薬物、療法、または臨床試験のシミュレーションのために提供される。治療、患者の薬物反応、または外科的インターベンションを表すようにモデルを適合させることにより、高い費用がかかる可能性があり、かつ危険を伴う可能性がある大規模な臨床試験を実施する必要なく、有効性の予測を得ることができる。
VII.他の結果
A.心筋灌流の評価
【0197】
他の結果を算出することもできる。例えば、コンピュータ分析は、心筋灌流(心筋を通る血流)を定量化する結果を提供することができる。心筋灌流の定量化は、例えば虚血(血液供給の制約)、瘢痕化、または他の心臓障害に起因する心筋血流の減少範囲を特定するのに役立ち得る。
【0198】
図29は、例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供するための方法800に関連する概略図を示す。方法800は、上述のコンピュータシステム、例えば、上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムで実施してもよい。
【0199】
方法800は、1つまたは複数の入力802を用いて実施してもよい。入力802は、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、ならびに心臓の医療画像データ803、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100で取得される)を含んでもよい。また、入力802は、患者から測定された追加の生理学的データ804、例えば、患者の上腕の血圧804、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ804は、非侵襲的に取得してもよい。入力802を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0200】
患者の心筋組織の三次元幾何モデルを画像データ803に基づいて作成してもよく(ステップ810)、この幾何モデルをセグメントまたは体積に分割してもよい(ステップ812)。例えば、
図31は、セグメント842に分割した患者の心筋組織の三次元幾何モデル838を含む三次元幾何モデル846を示している。個々のセグメント842のサイズおよび位置は、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の流出境界324(
図8)の位置、それぞれのセグメント842の中、またはに連結する血管(例えば、隣接血管)のサイズなどに基づいて明らかにすることができる。幾何心筋モデル838のセグメント842への分割は、様々な既知の方法、例えば高速マーチング法、一般化高速マーチング法、レベルセット法、拡散方程式、多孔質媒体中の流れを支配する方程式などを用いて実施することができる。
【0201】
また、三次元幾何モデルは、患者の一部の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)も含んでよく、これは画像データ803に基づいてモデリングすることができる(ステップ814)。例えば、
図31の三次元幾何モデル846は、患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の三次元幾何モデル837と、ステップ810で作成される患者の心筋組織の三次元幾何モデル838とを含む。
【0202】
図29を再び参照すると、例えば
図3のステップ402に関連して上述したように、コンピュータ分析を実施して、ユーザによって明らかにされる身体的条件下で、患者の冠動脈血流に関する情報を含む解を明らかにすることができる(ステップ816)。例えば、身体的条件は、安静、選択されたレベルの充血、選択されたレベルの運動もしくは労作、または他の条件を含んでもよい。この解は、ステップ814でモデリングされた患者の解剖学的形態中の様々な位置において、特定の身体的条件下で、血流および圧力などの情報を提供することができる。コンピュータ分析は、集中パラメータモデルまたは一次元モデルから導かれる流出境界324(
図8)の境界条件を用いて実施してもよい。
図30に関連して後述するように、一次元モデルを作成して、セグメント842を埋めてもよい。
【0203】
ステップ816で明らかにされた血流情報に基づいて、ステップ812で作成される心筋のそれぞれのセグメント842に入る血流の灌流を算出することができる(ステップ818)。例えば、この灌流は、流出境界324(
図8)の各流出口からの流量をその流出口が灌流するセグメント化された心筋の体積で除するによって算出することができる。
【0204】
ステップ818で明らかにされる心筋のそれぞれのセグメントの灌流は、ステップ810または812で生成される心筋の幾何モデル(例えば、
図31に示す患者の心筋組織の三次元幾何モデル838)上に表示することができる(ステップ820)。例えば、
図31は、幾何モデル838の心筋のセグメント842を異なる陰影または色で図示して、それぞれのセグメント842に入る血流の灌流を示すことができることを示している。
【0205】
図30は、例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供するための方法820に関連する別の概略図を示している。方法820は、上述のコンピュータシステム、例えば、上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムで実施してもよい。
【0206】
方法820は、1つまたは複数の入力832を用いて実施してもよく、これは、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、ならびに心臓の医療用画像データ833、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100で取得される)を含んでもよい。入力832を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0207】
患者の心筋組織の三次元幾何モデルは、画像データ833に基づいて作成することができる(ステップ835)。また、モデルは、患者の一部の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)も含んでよく、これは画像データ803に基づいて作成してもよい。例えば、上述のように、
図31は、患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の幾何モデル837と、患者の心筋組織の幾何モデル838を含む三次元幾何モデル836を示している。ステップ835は、上述の
図29のステップ810および814を含んでもよい。
【0208】
図30を再び参照すると、幾何心筋モデル838は、体積またはセグメント842に分割することができる(ステップ840)。ステップ840は、上述の
図29のステップ812を含んでもよい。上述のように、
図31は、セグメント842に分割された患者の心筋組織の幾何モデル838を含む三次元幾何モデル846を示している。
【0209】
図30を再び参照すると、幾何モデル846を修正して、冠動脈ツリーに次世代の分枝857を含めるようにしてもよい(ステップ855)。分枝857(
図31に点線で示される)の位置およびサイズは、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の中央線に基づいて明らかにすることができる。この中央線は、例えば画像データ833に基づいて明らかにすることができる(ステップ845)。また、アルゴリズムを用いて、形態計測モデル(流出境界324(
図8)の既知の流出口の下流の血管の位置およびサイズを予測するために使用されるモデル)および/または血管サイズに関連する生理学的分枝の法則に基づいて、分枝857の位置およびサイズを特定してもよい(ステップ850)。この形態計測モデルは、幾何モデル837に含まれる冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の下流端まで拡大し、心外膜面(心臓組織の外層)上に提供しても、または心筋壁の幾何モデル838内に含めてもよい。
【0210】
心筋は、ステップ855で作成された分枝857に基づいて、さらにセグメント化してもよい(ステップ860)。例えば、
図31は、セグメント842が、サブ体積またはサブセグメント862に分割できることを示している。
【0211】
サブセグメント862中に追加の分枝857を作成してもよく、このサブセグメント862は、より小さいセグメント867にさらにセグメント化してもよい(ステップ865)。分枝を作成し、体積をサブセグメント化するステップは、所望の体積サイズおよび/または分枝サイズの分解能が得られるまで繰り返してもよい。ステップ855および865で新しい分枝857を含むように拡大されたモデル846は、次いで、サブセグメント、例えばステップ865で生成されるサブセグメント867に入る冠動脈血流および心筋灌流を計算するために使用することができる。
【0212】
したがって、拡大モデルを用いて、上述のコンピュータ分析を実施することができる。コンピュータ分析の結果は、患者固有の冠動脈モデル、例えば
図31のモデル837から、ステップ865で生成された各灌流サブセグメント867内にまで延長してもよい、生成された形態計測モデル(ステップ855および865で生成された分枝857を含む)に入る血流に関連する情報を提供することができる。コンピュータ分析は、静的な心筋灌流体積または結合した心臓力学モデルからのデータを組込んだ動的モデルを用いて実施することができる。
【0213】
図32は、例示的実施形態による、特定の患者における心筋灌流に関連する様々な情報を提供するための方法870に関連する別の概略図を示している。方法870は、上述のコンピュータシステム、例えば、上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムで実施してもよい。
【0214】
方法870は、1つまたは複数の入力872を用いて実施してもよい。入力872は、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、ならびに心臓の医療用画像データ873、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100で取得される)を含んでもよい。また、入力872は、患者から測定された追加の生理学的データ874、例えば、患者の上腕の血圧、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ874は、非侵襲的に取得してもよい。入力872は、患者から(例えば、CT、PET、SPECTなどを用いて)測定された心灌流データ875をさらに含んでもよい。入力872を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0215】
患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の三次元幾何モデルは、画像データ873に基づいて作成することができる(ステップ880)。例えば、
図31は、患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の三次元幾何モデル837を示している。ステップ880は、上述の
図29のステップ814と類似していてもよい。
【0216】
コンピュータ分析は、例えば
図3のステップ402に関連して上述したように実施して、ユーザによって明らかにされる身体的条件下で、患者の冠動脈血流に関する情報を含む解を明らかにするこができる(ステップ882)。例えば、身体的条件は、安静、選択されたレベルの充血、選択されたレベルの運動もしくは労作、または他の条件を含んでもよい。この解は、ステップ880でモデリングされた患者の解剖学的形態中の様々な位置において、特定の身体的条件下で、血流および圧力などの情報を提供することができる。ステップ882は、上述の
図29のステップ816と類似していてもよい。
【0217】
また、患者の心筋組織の三次元幾何モデルは、画像データ873に基づいて作成することができる(ステップ884)。例えば、上述のように、
図31は、患者の心筋組織の三次元幾何モデル838(例えば、ステップ884で作成されるような)と、患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の三次元幾何モデル837(例えば、ステップ880で作成されるような)とを含む三次元幾何モデル836を示している。ステップ884は、上述の
図29のステップ810と類似していてもよい。
【0218】
この幾何モデルは、セグメントまたはサブ体積に分割してもよい(ステップ886)。例えば、
図31は、セグメント842に分割された患者の心筋組織のモデル838を含む幾何モデル846を示している。ステップ886は、上述の
図29のステップ812と類似していてもよい。
【0219】
ステップ882で明らかにされる血流情報に基づいて、ステップ886で作成される心筋のそれぞれのセグメント842に入る血流の灌流を算出することができる(ステップ888)。ステップ888は、上述の
図29のステップ818と類似していてもよい。
【0220】
心筋のそれぞれのセグメントの算出された灌流は、ステップ884または886で生成される心筋の幾何モデル(例えば、
図31に示す患者の心筋組織の三次元幾何モデル838)上に表示することができる(ステップ890)。例えば、
図31は、幾何モデル838の心筋のセグメント842を異なる陰影または色で図示して、それぞれのセグメント842に入る血流の灌流を示すことができることを示している。ステップ890は、上述の
図29のステップ820と類似していてもよい。
【0221】
ステップ890で心筋の三次元幾何モデル上にマッピングされた模擬灌流データは、測定された心灌流データ875と比較することができる(ステップ892)。この比較は、例えば、心筋のボクセルに基づく表示または心筋の異なる離散的表示上で実施することができる。この比較は、心筋の三次元表示上に様々な色および/または陰影を用いて、模擬の灌流データと測定された灌流データとの差を示すことができる。
【0222】
ステップ880で作成される三次元幾何モデルの流出口における境界条件を調整して、模擬の灌流データと測定された灌流データとの間の誤差を減少させてもよい(ステップ894)。例えば、誤差を減少させるために、模擬の灌流が測定された灌流よりも低い領域(例えば、セグメント842、862、または867)に供給する血管の規定の流動抵抗を減少させるように、境界条件を調整することができる。境界条件の他のパラメータを調整してもよい。
あるいは、モデルの分枝構造を修正してもよい。例えば、ステップ880で作成される幾何モデルは、
図30および31に関連して上述したように拡大して、形態計測モデルを作成することができる。境界条件および/または形態計測モデルのパラメータは、パラメータ推定法またはデータ同化法、例えば、米国特許出願公開第2010/0017171号に記載される、「Method for Tuning Patient-Specific Cardiovascular Simulations」と題される方法、または他の方法を用いて、経験的または系統的に調整してもよい。
【0223】
図32のステップ882、888、890、892、894、および/または他のステップは、例えば、模擬の灌流データと測定された灌流データとの誤差が、既定の閾値を下回るまで繰り返してもよい。その結果、解剖学的情報、冠動脈血流の情報、および心筋灌流の情報を関連付けるモデルを用いて、コンピュータ分析を実施することができる。かかるモデルは、診断目的で、または薬物療法、インターベンション療法、または手術療法の利益を予測するために有用となり得る。
【0224】
結果として、三次元医療用画像データから構築した患者固有の幾何モデルにおいて、安静および/またはストレス条件下の冠動脈血流および心筋灌流を模擬することができる。測定された心筋灌流データを模擬の心筋灌流結果と組み合わせて使用して、模擬の心筋灌流結果が測定された心筋灌流データと所定の許容差内で一致するまで(例えば、
図32に関連して上述したように)、境界条件を調整してもよい。より正確な患者固有の冠動脈血流計算を提供してもよく、心臓専門医が、最大運動または労作、模擬治療、または他の条件下の患者を模擬する場合など、測定データが入手できないかもしれない状況で、冠動脈血流および心筋灌流を予測できるようにしてもよい。
【0225】
左室および/または右室心筋の患者固有三次元モデルは、灌流セグメントまたはサブ体積に分割してもよい。また、医療用画像データから明らかにされた冠状動脈の患者固有の三次元幾何モデルは、灌流サブ体積によって表される心外膜面上あるいは左室および/または右室心筋壁に包含される一部の残りの冠状動脈ツリーの形態計測モデルと組み合わせて、拡大モデルを形成することができる。拡大モデルにおける所定の位置、例えば罹患位置の下流の全心筋体積の百分率を算出することができる。また、拡大モデルにおける所定の位置、例えば罹患位置の全心筋血流の百分率を算出することもできる。拡大モデルを用いて、冠動脈血流および心筋灌流を計算することができる。また、冠動脈血流モデルは、模擬の灌流が、測定された灌流データと規定の許容差内で一致するまで修正してもよい。
B.プラーク脆弱性の評価
【0226】
また、コンピュータ分析は、患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)中に蓄積し得るプラーク、例えば冠動脈のアテローム硬化性プラークに作用する患者固有の生体力学的力を定量化する結果を提供することができる。生体力学的力は、拍動性圧力、流動、および心臓運動によって生じ得る。
【0227】
図33は、血管壁902、例えば主冠状動脈のうちの1つまたはそこから延びる分枝のうちの1つの壁に沿って蓄積したプラーク900の例を示している。プラークの上流端と下流端との間の圧力および/または表面積の差は、例えば血管を貫流する血液に起因する、少なくとも血流の方向に沿ってプラーク900に作用する力904を生成し得る。別の力906は、少なくとも血管壁902に向かい、血管壁902に垂直な方向に沿って、プラーク900の表面に作用し得る。力906は、血管を貫流する血液の血圧に起因し得る。さらに別の力908は、少なくとも血流の方向に沿ってプラーク900の表面に作用し得、またこれは、安静時や運動時などの血流力に起因し得る。
【0228】
また、この結果は、プラーク破裂(例えば、血管壁に蓄積したプラークが、不安定になって破れるまたは裂ける)のリスクおよびそのような破裂の影響を受け得る心筋体積も評価する。結果は、安静時や運動時などの様々な模擬の生理学的状態下で評価することができる。プラーク破裂のリスクは、模擬のプラーク応力のCCTAまたはMRIから導かれた材料組成データ(例えば、
図2のステップ100で明らかにされる)を用いて推定されたプラーク強度に対する比として定義することができる。
【0229】
例えば、
図34は、コンピュータ分析が出力することができる結果の例を示している。この結果には、
図31の三次元幾何モデル846を含み得、これには患者の大動脈および冠状動脈(およびそこから延びる分枝)の三次元幾何モデル837、ならびにセグメント842に分割された患者の心筋組織の三次元幾何モデル838を含み得る。また、この結果は、冠状動脈(またはそこから延びる分枝)のうちの1つにおける、プラークが脆弱であることを明らかとする可能性がある位置910も示すことができ、この位置910は、より詳細に後述するようにプラーク破裂のリスクの評価に基づいて、および/またはユーザからの入力に基づいて特定することができる。また、
図34に示すように、心筋のセグメント912(複数のセグメント842のうちの)は、位置910で特定されたプラークの破裂に起因する低灌流の確率が高いと特定することができる。
【0230】
図35および36は、例示的実施形態により、特定の患者におけるプラーク脆弱性、心筋体積リスク、および心筋灌流リスクの評価に関連する様々な情報を提供するための方法920の態様を示す概略図である。方法920は、上述のコンピュータシステム、例えば上述の
図3に示されるステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用するコンピュータシステムで実施することができる。方法920は、1つまたは複数の入力922を用いて実施することができ、またこの方法は、入力922に基づいて1つまたは複数のモデル930を生成することと、モデル930のうちの1つまたは複数に基づいて1つまたは複数の生体力学的分析940を実施することと、モデル930および生体力学的分析940に基づいて様々な結果を提供することとを含み得る。
【0231】
入力922は、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、および心臓の医療用画像データ923、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100で取得される)を含み得る。また、入力922は、患者から測定された追加の生理学的データ924、例えば患者の上腕血圧、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ924は、非侵襲的に取得してもよい。入力922は、モデル930を生成するため、および/または後述の生体力学的分析940を実施するために使用することもできる。
【0232】
上記のように、1つまたは複数のモデル930は、入力922に基づいて生成することができる。例えば、方法920は、患者の解剖学的形態の三次元幾何モデル全体の様々な位置における計算された血流および圧力の情報を含む血行動態モデル932を生成することを含み得る。この患者の解剖学的形態のモデルは、医療用画像データ923、例えば、
図3のステップ306で生成される
図8のソリッドモデル320、および/または
図3のステップ312で生成される
図17~19のメッシュ380を用いて作成することができ、また、例示的実施形態において、血行動態モデル932は、模擬の血圧モデル50(
図1)、模擬の血流モデル52(
図1)、cFFRモデル54(
図1)、または例えば
図3のステップ402に関連して上述したようにコンピュータ分析の実施後に生成される他のシミュレーションであってよい。流体構造体の相互作用モデルを含むソリッド力学モデルは、既知の数値法を用いてコンピュータ分析により解いてもよい。プラークおよび血管の特性は、線形または非線形、等方性または異方性としてモデリングすることができる。この解は、プラークおよびプラークと血管との間の界面の応力およびひずみを提供し得る。
図36に示す例示的実施形態において、血行動態モデル932はcFFRモデル54である。
【0233】
方法920は、様々な生理学的状態、例えば安静時や様々なレベルの運動または労作時などに、血流力によってプラーク内腔表面に作用する圧力906(
図33)およびせん断応力908(
図33)を計算することによって、血行動態モデル932を用いて生体力学的分析940を実施すること(ステップ942)を含んでもよい。圧力906およびせん断応力908は、血行動態モデル932からの情報、例えば血圧および血流に基づいて算出することができる。
【0234】
場合によっては、方法920は、四次元画像データ、例えば、心周期の複数の相で、例えば収縮期および拡張期に取得した画像データから、血管の変形を定量化するための幾何学的分析モデル934を生成することも含んでよい。画像データは、様々な既知の画像化方法を用いて取得することができる。幾何学的分析モデル934は、例えば心臓運動に起因する、心周期の異なる相の血管の位置、変形、配向、およびサイズに関する情報を含んでもよい。例えば、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、およびプラークの様々なタイプの変形、例えば長手方向の延長(伸長)または短縮、ねじれ(捻転)、半径方向の拡張または圧縮、および屈曲は、幾何学的分析モデル934によって模擬することができる。
【0235】
方法920は、心臓による拍動性圧力に起因する、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、およびプラークの様々な変形の特徴、例えば長手方向の延長(伸長)または短縮、ねじれ(捻転)、半径方向の拡張または圧縮、および屈曲などを計算することによって、幾何学的分析モデル934を用いて生体力学的分析940を実施すること(ステップ944)を含んでもよい。このような変形の特徴は、幾何学的分析モデル934からの情報、例えば、心周期の複数の相にわたる血管の位置、配向、およびサイズの変化に基づいて算出することができる。
【0236】
変形の特徴の算出は、モデリングされた幾何学的形状(例えば、患者の大動脈、冠状動脈(およびそこから延びる分枝)、プラークなどの幾何学的形状)の中央線または表面メッシュを明らかにすることによって簡易化することができる。異なる相間のモデリングされた幾何学的形状の変化を明らかにするために、分枝口、石灰化病変、およびソフトプラークを目印として使用することができる。目印のない領域では、モデリングされた幾何学的形状の全長に沿った断面積の輪郭を用いて、2つの画像フレーム間の対応する位置を特定する(2つの画像フレームの「位置合わせ」をする)ことができる。未加工画像データに基づく変形可能な位置合わせアルゴリズムを用いて、三次元の変形場を抽出することができる。次いで、算出された三次元の変形場をモデリングされた幾何学的形状(例えば、血管全長)と位置を合わせた曲線軸に投影して、変形場の接線成分および法線成分を計算することができる。モデリングされた幾何学的形状(例えば、血管の長さ)、分枝分離の角度、および曲率の収縮期と拡張期との間の得られる差を用いて、血管に生じるひずみを明らかにすることができる。
【0237】
また、方法920は、医療用画像データ923からプラークの組成および特性を明らかにするためのプラークモデル936を生成することも含んでよい。例えば、プラークモデル936は、プラークの密度および他の材料特性に関する情報を含んでもよい。
【0238】
また、方法920は、プラーク、血管壁、および/またはプラークと血管壁との間の界面に関する情報を計算するための血管壁モデル938を生成することも含んでよい。例えば、血管壁モデル938は、応力およびひずみに関する情報を含んでいてもよく、これはプラークモデル936に含まれるプラークの組成および特性、ステップ942で算出される圧力906およびせん断応力908、および/またはステップ944で算出される変形の特徴に基づいて算出することができる。
【0239】
方法920は、血流力によるプラークに対する応力(例えば、急激または累積的な応力)および心臓運動によって誘発されるひずみを計算することによって、血管壁モデル938を用いて生体力学的分析940を実施すること(ステップ946)を含んでもよい。例えば、プラークに作用する流動によって誘発される力904(
図33)を計算することができる。血流力によるプラークに対する応力または力および心臓運動によって誘発されるひずみは、血管壁モデル938からの情報、例えばプラークに対する応力およびひずみに基づいて算出することができる。
【0240】
方法920は、モデル930のうちの1つまたは複数、および上述の生体力学的分析940のうちの1つまたは複数に基づいて、さらなる情報を明らかにすることを含んでもよい。
【0241】
プラーク破裂の脆弱性指標を算出してもよい(ステップ950)。プラーク破裂の脆弱性指標は、例えば、全血行力学的応力、応力頻度、応力方向、および/またはプラーク強度、または他の特性に基づいて算出することができる。例えば、当該プラーク周辺の領域は、プラークの三次元モデル930、例えばプラークモデル936から分離してもよい。プラークの強度は、プラークモデル936に提供される材料特性から明らかにすることができる。拍動性圧力、流動、および心臓運動に起因する当該プラークに対する血行力学的応力および組織応力は、ステップ946で既に計算された血行力学的応力および心臓運動によって誘発されるひずみを用いて、模擬のベースラインおよび運動(または労作)条件下で算出することができる。プラークの脆弱性は、プラーク応力のプラーク強度に対する比に基づいて評価することができる。
【0242】
また、心筋体積リスク指標(MVRI)も算出することもできる(ステップ952)。MVRIは、動脈ツリーにおける所定の位置の血管のプラーク破裂および閉塞(閉鎖または遮断)の影響を受ける全心筋体積の百分率として定義することができる。MVRIは、所定のプラークの下流の血管によって供給を受ける心筋の部分に基づいて算出することができ、これは下流血管のサイズに対するプラークのサイズ、および三次元血行動態の解に基づくそのプラークが異なる血管に流入する確率を考慮に入れることができる。
【0243】
心筋をモデリングし、血行動態シミュレーションにおいて各血管によって供給を受けるセグメント842に分割することができる(例えば、
図30のステップ835および840に関連して記載したように)。幾何モデルを修正して、冠動脈ツリーに次世代の分枝857を含めるようにしてもよく(例えば、
図30のステップ855に関連して記載するように)、心筋をさらにセグメント化してもよい(例えば、
図30のステップ860に関連して記載するように)。サブセグメント862中に追加の分枝857を作成してもよく、このサブセグメント862は、より小さいセグメント867にさらにセグメント化してもよい(例えば、
図30のステップ865に関連して記載するように)。前述のような生理学的関係を用いて、血管サイズと供給を受ける心筋の比例量と関連付けることができる。
【0244】
破裂したプラークがたどる潜在的経路を明らかにすることができる。血行動態の解を用いて、プラーク断片または塞栓が異なる下流血管に流入する確率を明らかにすることができる。
【0245】
破裂したプラークのサイズを下流血管のサイズと比較して、そのプラークが、最終的に血流への障害を生じ得るかどうかを明らかにすることができる。この情報を脆弱性指標と組み合わせて、破裂したプラークの影響を受ける可能性がある心筋の体積の確率分布図を提供することができる。MVRIは、影響を受ける可能性のある各セグメントに割り当てることができる。
図34は、遠位血管中の位置910における脆弱なプラークが、小面積の心筋に影響を与える高い確率を有するセグメント912の例を示している。
【0246】
また、心筋灌流リスク指標(MPRI)も算出することができる(ステップ954)。MPRIは、動脈ツリーにおける所定の位置の血管のプラーク破裂および閉塞の影響を受ける全心筋血流の百分率として定義することができる。例えば、LAD動脈の遠位部におけるプラークの破裂は、LAD動脈の近位部におけるプラークの破裂よりも低いMVRIとなるであろう。しかしながら、これらの指標は、栄養血管中の脆弱なプラークの影響を受ける一部の心筋の体積に生存能力がない(例えば、心筋梗塞後に形成し得る瘢痕組織により)場合には、異なる可能性がある。したがって、MPRIは、MVRIによって示されるような影響を受ける体積よりもむしろ、その心筋セグメントへの灌流の潜在的な損失を示す。
図31の各セグメント842、862、または867への灌流速度を算出することができ、脆弱性指標、血行動態の解、ならびにプラークおよび血管のサイズに基づいて、灌流の損失を算出することができる。
【0247】
その結果、拍動性血圧、拍動性血流、拍動性血液せん断応力、および/または拍動性心臓運動によるプラーク応力を算出することができ、医療用画像データに基づいてプラーク強度を推定することができ、プラーク脆弱性、心筋体積リスク、および心筋灌流リスクに関連する指標を定量化することができる。
VIII.他の用途
【0248】
上述の実施形態は、患者における冠動脈血流に関する情報を評価することに関連する。あるいは、これらの実施形態は、頸動脈、末梢動脈、腹部動脈、腎動脈、大腿動脈、膝窩動脈、および大脳動脈などであるがこれらに限定されない身体の他の部分における血流に適応してもよい。
A.頭蓋内血流および頭蓋外血流のモデリング
【0249】
次に大脳動脈に関する実施形態を説明する。数々の疾患が、頭蓋外動脈または頭蓋内動脈の血流および血圧に影響を与える、またはそれらの影響を受ける可能性がある。頭蓋外動脈、例えば頸動脈および椎骨動脈のアテローム性動脈硬化症は、脳への血流を制限する可能性がある。重症のアテローム性動脈硬化症は、一過性脳虚血発作または虚血性脳卒中につながる恐れがある。頭蓋内動脈または頭蓋外動脈における動脈瘤疾患は、虚血性脳卒中につながる塞栓形成または出血性脳卒中につながる動脈瘤破裂のリスクをもたらし得る。他の状態、例えば頭部外傷、高血圧、頭部および頸部の癌、動静脈奇形、起立不耐症なども脳血流に影響を与え得る。さらに、脳血流の減少は、失神などの症状を誘発する、またはアルツハイマー病またはパーキンソン病に続発する認知症などの慢性神経疾患に影響を及ぼす恐れがある。
【0250】
頭蓋外または頭蓋内の動脈疾患が既知または疑われる患者は、通常は、非侵襲的診断試験であるUS、MRI、CT、PETのうち1つまたは複数を受けることがある。しかしながら、これらの試験は、ほとんどの患者の頭蓋外動脈および頭蓋内動脈の解剖学的データおよび生理学的データを効率的に提供することができない場合がある。
【0251】
図37は、頭蓋内(頭蓋の内部)および頭蓋外(頭蓋の外部)の動脈を含む大脳動脈の略図である。患者固有の頭蓋内および頭蓋外血流に関する情報を明らかにするための方法は、上述の患者固有の冠動脈血流に関する情報を明らかにするための方法と概して類似していてよい。
【0252】
図38は、特定の患者における頭蓋内および頭蓋外血流に関連する様々な情報を提供するための方法1000の態様を示す概略図である。方法1000は、例えば上述の
図3に示されるステップのうちの1つまたは複数を実行するために使用するコンピュータシステムに類似するコンピュータシステムで実行することができる。方法1000は、1つまたは複数の入力1010を用いて実施してもよく、入力1010に基づいて1つまたは複数のモデル1020を生成することと、入力1010および/またはモデル1020に基づいて1つまたは複数の条件1030を指定することと、モデル1020および条件1030に基づいて1つまたは複数の解1040を導くこととを含んでもよい。
【0253】
入力1010は、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈、例えば、患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、椎骨動脈(
図37に示す)、および脳の医療用画像データ1011、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)を含んでもよい。また、入力1010は、患者の上腕血圧、頸動脈血圧(例えば、圧力測定法を用いて)、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)の測定値1012も含んでよい。測定値1012は、非侵襲的に取得してもよい。入力1010を用いて、モデル(複数可)1020を生成してもよく、および/または後述の条件(複数可)1030を特定してもよい。
【0254】
上記のように、1つまたは複数のモデル1020は、入力1010に基づいて生成してもよい。例えば、方法1000は、画像データ1011に基づいて、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の1つまたは複数の患者固有の三次元幾何モデルを生成することを含んでもよい(ステップ1021)。三次元幾何モデル1021は、
図8のソリッドモデル320および
図17~19のメッシュ380を生成するための上述の方法に類似する方法を用いて生成してもよい。例えば、
図3のステップ306および312に類似するステップを用いて、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈を表す三次元ソリッドモデルおよびメッシュを生成してもよい。
【0255】
再び
図38を参照すると、方法1000は、1つまたは複数の物理学に基づく血流モデルを生成することも含んでよい(ステップ1022)。例えば、この血流モデルは、ステップ1021で生成される患者固有の幾何モデルを通る流れ、心臓および動脈循環、遠位頭蓋内および頭蓋外循環などを表すモデルであってもよい。血流モデルは、
図3のステップ310に関連して上述したような次数低減モデル、例えば、三次元幾何モデル1021の流入境界および/または流出境界の集中パラメータモデルまたは分散(一次元波動伝播)モデルなどを含んでもよい。あるいは、流入境界および/または流出境界は、速度、流量、圧力、または他の特性などに対する規定の値またはフィールドを指定してもよい。あるいは、流入境界を例えば大動脈弓を含む心臓モデルと結合させてもよい。流入および/または流出境界のパラメータは、心拍出量および血圧を含むがこれらに限定されない、測定または選択された生理学的状態と一致するように調整してもよい。
【0256】
上述のように、1つまたは複数の条件1030は、入力1010および/またはモデル1020に基づいて明らかにすることができる。条件1030は、ステップ1022(および
図3のステップ310)で明らかにされる境界条件について算出されたパラメータを含む。例えば、方法1000は、画像データ1011(例えば、
図3のステップ240に関連して上述したものと類似する形で取得される)に基づいて、患者固有の脳または頭部の体積を算出することによって、条件を明らかにすることを含んでもよい(ステップ1031)。
【0257】
方法1000は、ステップ1031で算出された脳または頭部の体積を用いて、関係Q=Q
0M
α(式中、αは既定のスケーリング指数であり、Mは脳または頭部の体積から測定された脳質量であり、Q
0は、既定の定数である)(例えば、
図3のステップ310で集中パラメータモデルに関連して上述した生理学的関係と類似する)に基づく安静時脳血流Qを算出することによって、条件を明らかにすることを含んでもよい(ステップ1032)。あるいは、この関係は、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように、Q∝Q
0M
αの形式を有してもよい。
【0258】
また、方法1000は、ステップ1032で算出された結果の冠血流および患者の測定された血圧1012を用いて、全安静時脳抵抗を算出することによって、条件を明らかにすることも含んでよい(例えば、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述した方法と類似する)(ステップ1033)。例えば、ステップ1032で特定される三次元幾何モデル1021の流出境界におけるベースライン(安静)条件下の全脳血流Qおよび測定された血圧1012を用いて、既定の実験的に導かれた方程式に基づいて、流出境界における全抵抗Rを明らかにすることができる。抵抗、キャパシタンス、インダクタンス、および集中パラメータモデルに使用される様々な電気要素に関連する他の変数を境界条件に組込んでもよい(例えば、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように)。
【0259】
また、方法1000は、ステップ1033で算出される全安静時脳抵抗およびモデル1020を用いて、個々の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の個々の抵抗を算出することによって、条件を明らかにすることも含んでよい(ステップ1034)。例えば、
図3のステップ310に関連して上述した方法と同様に、ステップ1033で算出される全安静時脳抵抗Rは、その個々の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の遠位端のサイズ(例えば、ステップ1021で生成される幾何モデルから明らかにされる)に基づいて、および関係R=R
0d
β(式中、Rは特定の遠位端における流動抵抗であり、R
0は既定の定数であり、dはサイズ(例えば、遠位端の直径)であり、βは既定のベキ乗指数である)に基づいて、
図3のステップ310で集中パラメータモデルを明らかにすることに関連して上述したように、個々の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈に分布してもよい。
【0260】
再び
図38を参照すると、方法1000は、患者の1つまたは複数の身体的条件に基づいて、境界条件を調整すること(ステップ1035)を含んでもよい。例えば、ステップ1031~1034で特定されるパラメータは、解1040が、安静、様々なレベルのストレス、様々なレベルの圧受容器反応もしくは他の自律神経フィードバック制御、様々なレベルの充血、様々なレベルの運動、労作、高血圧もしくは低血圧、様々な薬物治療、姿勢の変化、および/または他の条件を模擬することを意図しているかどうかに基づいて修正してもよい。また、パラメータ(例えば、流出境界の境界条件に関連するパラメータ)は、例えば微小血管機能障害または内皮の健康状態に起因する、頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の血管拡張能(血管が拡大する能力)に基づいて調整してもよい。
【0261】
入力1010、モデル1020、および条件1030に基づいて、例えば
図3のステップ402に関連して上述したようにコンピュータ分析を実施して、ステップ1035で選択される身体的条件下で、患者の冠動脈血流に関する情報を含む解1040を明らかにすることができる(ステップ1041)。解1040から提供することができる情報の例は、
図1および21~24に関連して上記に示した例と類似していてよく、例えば、模擬の血圧モデル、模擬の血流モデルなどである。また、この結果は、例えば、流量、全脳血流、血管壁せん断応力、血管壁またはアテローム硬化性プラークまたは動脈瘤に作用するけん引力またはせん断力、粒子/血液滞留時間、血管壁の運動、血液せん断速度などを明らかにするためにも使用することができる。また、これらの結果を用いて、血管系における特定の領域から離れる塞栓が、血液循環によってどこを移動する可能性が最も高いかを分析することができる。
【0262】
コンピュータシステムは、ユーザが、幾何学的形状の様々な変化を模擬することを可能にし得る。例えば、モデル1020、例えば、ステップ1021で生成される患者固有の幾何モデルは、動脈を閉塞させること(例えば、急性閉塞)の影響を予測するために修正してもよい。癌性腫瘍の除去時など、外科手術のなかには、1つまたは複数の頭蓋外動脈が損傷を受ける、または除去される可能性がある。したがって、ステップ1021で生成される患者固有の幾何モデルは、頭蓋外動脈のうちの1つまたは複数への血流を妨げることの影響を模擬するように修正して、患者に十分な血流を供給するための側副路の可能性を予測することもできる。
【0263】
コンピュータシステムは、ユーザが様々な治療選択肢、例えば急性閉塞の例えばインターベンション修復または外科的修復の結果を模擬することを可能にし得る。このシミュレーションは、上述のような頭蓋内動脈および頭蓋外動脈を表す三次元ソリッドモデルまたはメッシュを、
図27および28に関連して上述したような次数低減モデルに置き換えることによって、より迅速に実施することができる。結果として、次数低減モデル、例えば一次元モデルまたは集中パラメータモデルは、より効率的かつ迅速に、患者固有のモデルの血流および血圧の値を求め、その解の結果を表示することができる。
【0264】
特定の患者による血管拡張剤/刺激に対する応答は、安静時の患者の血行動態情報に基づいて、または異なる病状の集団に基づくデータに基づいて予測することができる。例えば、ベースライン(安静時)では、シミュレーションは、ベキ乗則および脳質量に基づいて指定される流量分布(例えば、ステップ1032に関連して上述したように)を用いて実行される(例えば、ステップ1041に関連して上述したように)。抵抗値(例えば、ステップ1033および1034で決定される)は、十分な灌流を可能にするように調整してもよい。あるいは、糖尿病、薬物治療、および過去の心イベントなどの因子を有する患者集団からのデータを使用して、異なる抵抗を指定する。安静条件下の抵抗の調整は、単独で、または血行動態情報(例えば、血管壁せん断応力、または流量と血管サイズとの関係)と組み合わせて、遠位大脳血管が拡張する残存能力を明らかにするために使用することができる。安静時の流量要件を満たすために抵抗の減少が必要な患者、および流量の血管サイズに対する比が高い患者は、生理的ストレス下でその血管をさらに拡張する能力が低下している可能性がある。
【0265】
大脳動脈の個々のセグメントにわたる流量および圧力の勾配(例えば、ステップ1041で特定される)を用いて、大脳動脈抵抗を計算することができる。大脳抵抗は、医療用画像データから生成される患者固有の幾何モデル(例えば、ステップ1021で生成される)に含まれる頭蓋外動脈および頭蓋内動脈の一部の等価抵抗として算出することができる。大脳抵抗は、頭蓋外動脈および/または頭蓋内動脈にびまん性アテローム性動脈硬化症を有する患者が、なぜ失神(一時的な意識消失または姿勢喪失、例えば気絶)または虚血(血液供給の制約)の症状示し得るのかを説明する際に、臨床的意義を有し得る。
【0266】
また、ベースラインまたは変更した生理学条件下の脳組織体積(または質量)単位当たりの流量は、例えばステップ1041で明らかにされる流量情報、およびステップ1031で算出される脳組織の体積または質量に基づいて算出することができる。この計算は、血流減少の慢性神経障害に対する影響を理解する際に有用となり得る。また、この計算は、薬物療法、例えば降圧剤の投与量を選択または改良する際にも有用となり得る。追加的な結果には、外傷、脳震盪、外的生理ストレス、過剰重力、無重力状態、宇宙飛行、深海減圧(例えば、潜水病)などの影響の定量化を含み得る。
【0267】
この複合された患者固有の解剖学的(幾何学的)および生理学的(物理学に基づく)モデルを用いて、大脳動脈血流に対する、心拍数、一回拍出量、血圧、または大脳動脈微小循環機能を変更する、様々な薬物治療または生活様式の変化(例えば、喫煙の中止、食事の変化、または身体活動の増加)の効果を明らかにすることができる。また、この複合モデルを用いて、代替的な形態および/または様々なレベルの身体活動または潜在的な外部力への暴露の危険性(例えば、サッカーのプレイ時、宇宙飛行中、スキューバダイビング時、航空機飛行中など)の大脳動脈血流に対する影響を明らかにしてもよい。このような情報を用いて、特定の患者に対して安全かつ効果的であり得る身体活動のタイプおよびレベルを特定することができる。また、この複合モデルを用いて、大脳動脈血流に対する経皮インターベンションの潜在的利益を予測して、最適なインターベンション戦略を選択する、および/または大脳動脈血流に対する頸動脈血管内膜切除術または外頸動脈から内頸動脈へのバイパス術の潜在的利益を予測して、最適な手術戦略を選択することもできる。
【0268】
また、この複合モデルを用いて、大脳動脈血流に対する動脈疾患の負担の増加の潜在的な有害効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、進行中の疾患が脳への血流にいつ障害を引き起こし得るかを予測することもできる。このような情報は、初期に非侵襲的画像化を用いて血行動態的に重要な疾患を有さないと観察された患者が、薬物療法、インターベンション療法、または手術療法を要すると見込まれないであろう「保証期間」、あるいは有害因子が継続した場合に進行が発生し得る速度の特定を可能にし得る。
【0269】
また、この複合モデルを用いて、疾患の負担の減少から生じる大脳動脈血流に対する潜在的な有益効果を例証し、機械論的もしくは現象論的な疾患進行モデルまたは経験データを用いて、疾患の退行が、脳への血流の増加をいつ引き起こし得るかを予測することもできる。このような情報を用いて、食事の変更、身体活動の増加、スタチンまたは他の薬物治療の処方などを含むが、これらに限定されない医学的管理プログラムの指針とすることができる。
【0270】
また、この複合モデルは、動脈を閉塞させることの影響を予測するために使用することもできる。癌性腫瘍の除去など、一部の外科手術において、一部の頭蓋外動脈が損傷を受ける、または除去される可能性がある。頭蓋外動脈のうちの1つへの血流を妨げることの影響を模擬することは、特定の患者に十分な血流を供給するための側副路の可能性の予測を可能とし得る。
i.脳灌流の評価
【0271】
他の結果を算出することもできる。例えば、コンピュータ分析は、脳灌流(大脳を通る血流)を定量化する結果を提供することができる。脳灌流の定量化は、減少した脳血流の領域を特定するのに役立ち得る。
【0272】
図39は、例示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法1050に関連する概略図を示す。方法1050は、例えば上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムと類似する、上述のコンピュータシステムで実施してもよい。
【0273】
方法1050は、1つまたは複数の入力1052を用いて実施することができる。入力1052は、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈、例えば患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、椎骨動脈(
図37に示す)、および脳の医療用画像データ1053、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したのものと類似する方式で取得される)を含んでもよい。また、入力1052は、患者から測定された追加の生理学的データ1054、例えば患者の上腕血圧、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ1054は、非侵襲的に取得してもよい。入力1052を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0274】
患者の脳組織の三次元幾何モデルを画像データ1053に基づいて作成してもよく(ステップ1060)、この幾何モデルをセグメントまたは体積に分割してもよい(ステップ1062)(例えば、
図29~32に関連して上述するものと類似する方式で)。個々のセグメントのサイズおよび位置は、頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の流出境界の位置、それぞれのセグメント内の血管またはそれぞれのセグメントに連結する血管(例えば、隣接血管)のサイズなどに基づいて明らかにすることができる。幾何モデルのセグメントへの分割は、様々な既知の方法、例えば高速マーチング法、一般化高速マーチング法、レベルセット法、拡散方程式、多孔質媒体中の流れを支配する方程式などを用いて実施することができる。
【0275】
また、三次元幾何モデルは、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の一部も含んでよく、これは画像データ1053に基づいてモデリングすることができる(ステップ1064)。例えば、ステップ1062および1064において、脳組織ならびに頭蓋内動脈および頭蓋外動脈を含む三次元幾何モデルを作成してもよい。
【0276】
コンピュータ分析は、例えば
図3のステップ402に関連して上述したように実施して、ユーザによって明らかにされる身体的条件下で、患者の大脳動脈血流に関する情報を含む解を明らかにするこができる(ステップ1066)。例えば、身体的条件は、安静、様々なレベルのストレス、様々なレベルの圧受容器反応または他の自律神経フィードバック制御、様々なレベルの充血、様々なレベルの運動または労作、異なる薬物治療、姿勢の変化、および/または他の条件を含んでもよい。この解は、ステップ1064でモデリングされた患者の解剖学的形態中の様々な位置において、特定の身体的条件下で、血流および圧力などの情報を提供することができる。コンピュータ分析は、集中パラメータモデルまたは一次元モデルから導かれる流出境界の境界条件を用いて実施してもよい。
図40に関連して後述するように、一次元モデルを作成して、脳組織のセグメントを埋めてもよい。
【0277】
ステップ1066で明らかにされる血流情報に基づいて、ステップ1062で作成される脳のそれぞれのセグメントに入る血流の灌流を算出することができる(ステップ1068)。例えば、この灌流は、流出境界の各流出口からの流量をその流出口が灌流するセグメント化された脳の体積で除するによって算出することができる。
【0278】
ステップ1068で明らかにされる脳のそれぞれのセグメントの灌流は、ステップ1060または1062で生成される脳の幾何モデル上に表示することができる(ステップ1070)。例えば、ステップ1060で作成された幾何モデル中に示される脳のセグメントを異なる陰影または色で図示して、それぞれのセグメントに入る血液の灌流を示すことができる。
【0279】
図40は、例示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法1100に関連する別の概略図を示している。方法1100は、例えば上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムと類似する、上述のコンピュータシステムで実施してもよい。
【0280】
方法1100は、1つまたは複数の入力1102を用いて実施することができ、この入力には患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、椎骨動脈(
図37に示す)、および脳の医療用画像データ1103、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)を含んでもよい。入力1102を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0281】
患者の脳組織の三次元幾何モデルは、画像データ1103に基づいて作成することができる(ステップ1110)。また、モデルは、患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、および椎骨動脈(
図37に示す)の一部も含んでよく、これは画像データ1103に基づいて作成してもよい。例えば、上述のように、脳組織ならびに頭蓋内動脈および頭蓋外動脈を含む三次元幾何モデルを作成することができる。ステップ1110は、上述の
図39のステップ1060および1064を含んでもよい。
【0282】
ステップ1110で作成される幾何脳組織モデルは、体積またはセグメントに分割することができる(ステップ1112)。ステップ1112は、上述の
図39のステップ1062を含んでもよい。また、幾何脳組織モデルをさらに修正して、脳のツリーに次世代の分枝を含めるようにしてもよい(ステップ1118)(例えば、
図29~32に関連して上述するものと類似する方式で)。分枝の位置およびサイズは、頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の中央線に基づいて明らかにすることができる。この中央線は、例えば画像データ1103に基づいて明らかにすることができる(ステップ1114)。また、アルゴリズムを用いて、形態計測モデル(流出境界の既知の流出口の下流の血管の位置およびサイズを予測するために使用されるモデル)および/または血管サイズに関連する生理学的分枝の法則に基づいて、分枝の位置およびサイズを特定してもよい(ステップ1116)。この形態計測モデルは、幾何モデルに含まれる頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の下流端まで拡大し、脳組織の外層上に提供しても、または脳組織の幾何モデル内に含めてもよい。
【0283】
ステップ1118で作成される分枝に基づいて、脳をさらにセグメント化してもよい(ステップ1120)(例えば、
図29~32に関連して上述したものと類似する方式で)。サブセグメント中に追加分枝を作成してもよく、このサブセグメントは、より小さいセグメントにさらにセグメント化してもよい(ステップ1122)(例えば、例えば、
図29~32に関連して上述したものと類似する方式で)。分枝を作成し、体積をサブセグメント化するステップは、所望の体積サイズおよび/または分枝サイズの分解能が得られるまで繰り返してもよい。ステップ1118および1122で新しい分枝を含むように拡大された幾何モデルは、次いで、サブセグメント、例えばステップ1122で生成されるサブセグメントに入る脳血流および脳灌流を計算するために使用することができる。
【0284】
したがって、拡大モデルを用いて、上述のコンピュータ分析を実施することができる。コンピュータ分析の結果は、患者固有の大脳動脈モデルから、ステップ1122で生成された各灌流サブセグメント内にまで延長してもよい、生成された形態計測モデル(ステップ1118および1122で生成される分枝を含む)に入る血流に関連する情報を提供することができる。
【0285】
図41は、例示的実施形態による、特定の患者における脳灌流に関連する様々な情報を提供するための方法1150に関連する別の概略図を示している。方法1150は、上述のコンピュータシステム、例えば、上述の
図3に示すステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用されるコンピュータシステムで実施してもよい。
【0286】
方法1150は、1つまたは複数の入力1152を用いて実施することができる。入力1152には患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、椎骨動脈(
図37に示す)、および脳の医療用画像データ1153、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)を含んでもよい。また、入力1152は、患者から測定された追加の生理学的データ1154、例えば患者の上腕血圧、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ1154は、非侵襲的に取得してもよい。入力1152は、患者から(例えば、CT、PET、SPECTなどを用いて)測定された脳灌流データ1155をさらに含んでもよい。入力1152を用いて、後述のステップを実施することができる。
【0287】
患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈の三次元幾何モデルは、画像データ1153に基づいて作成することができる(ステップ1160)。ステップ1160は、上述の
図39のステップ1064と類似していてもよい。
【0288】
コンピュータ分析は、例えば
図3のステップ402に関連して上述したように実施して、ユーザによって明らかにされる身体的条件下で、患者の脳血流に関する情報を含む解を明らかにするこができる(ステップ1162)。例えば、身体的条件は、安静、様々なレベルのストレス、様々なレベルの圧受容器反応または他の自律神経フィードバック制御、様々なレベルの充血、様々なレベルの運動または労作、異なる薬物治療、姿勢の変化、および/または他の条件を含んでもよい。この解は、ステップ1160でモデリングされた患者の解剖学的形態中の様々な位置において、特定の身体的条件下で、血流および圧力などの情報を提供することができる。ステップ1162は、上述の
図39のステップ1066と類似していてもよい。
【0289】
また、患者の脳組織の三次元幾何モデルは、画像データ1153に基づいて作成することができる(ステップ1164)。例えば、ステップ1160および1164において、脳組織ならびに頭蓋内動脈および頭蓋外動脈を含む三次元幾何モデルを作成してもよい。ステップ1164は、上述の
図39のステップ1060と類似していてもよい。
【0290】
この幾何モデルは、セグメントまたはサブ体積に分割してもよい(ステップ1166)。ステップ1166は、上述の
図39のステップ1062と類似していてもよい。
【0291】
ステップ1162で明らかにされる血流情報に基づいて、ステップ1166で作成される脳組織のそれぞれのセグメントに入る血流の灌流を算出することができる(ステップ1168)。ステップ1168は、上述の
図39のステップ1068と類似していてもよい。
【0292】
算出される脳組織のそれぞれのセグメントの灌流は、ステップ1164または1166で生成される脳組織の幾何モデル上に表示することができる(ステップ1170)。ステップ1170は、上述の
図39のステップ1070と類似していてもよい。
【0293】
ステップ1170で脳組織の三次元幾何モデル上にマッピングされた模擬の灌流データは、測定された脳灌流データ1155と比較することができる(ステップ1172)。この比較は、脳組織の三次元表示上に様々な色および/または陰影を用いて、模擬の灌流データと測定された灌流データとの差を示すことができる。
【0294】
ステップ1160で作成される三次元幾何モデルの流出口における境界条件を調整して、模擬の灌流データと測定された灌流データとの間の誤差を減少させてもよい(ステップ1174)。例えば、誤差を減少させるために、模擬の灌流が測定された灌流よりも低い領域(例えば、ステップ1166で作製されるセグメント)に供給する血管の規定の流動抵抗を減少させるように、境界条件を調整することができる。境界条件の他のパラメータを調節してもよい。あるいは、モデルの分枝構造を修正してもよい。例えば、ステップ1160で作成される幾何モデルは、
図40に関連して上述したように拡大して、形態計測モデルを作成することができる。境界条件および/または形態計測モデルのパラメータは、パラメータ推定法またはデータ同化法、例えば「Method for Tuning Patient-Specific Cardiovascular Simulations」と題される米国特許出願公開第2010/0017171号に記載されている方法、または他の方法を用いて、経験的または系統的に調整してもよい。
【0295】
図41のステップ1162、1168、1170、1172、1174、および/または他のステップは、例えば、模擬の灌流データと測定された灌流データとの誤差が、既定の閾値を下回るまで繰り返してもよい。その結果、解剖学的情報、脳血流情報、および脳灌流情報を関連付けるモデルを用いて、コンピュータ分析を実施することができる。かかるモデルは、診断目的で、または薬物療法、インターベンション療法、または手術療法の利益を予測するために有用となり得る。
【0296】
その結果、ベースライン条件または変更した生理的状態の下での頭蓋外および頭蓋内の動脈血流および脳灌流を計算することができる。脳灌流データを模擬の脳灌流結果と組み合わせて使用して、模擬の脳灌流結果が測定された脳灌流データと所定の許容差内で一致するまで、頭蓋内動脈血流計算の境界条件を調整してもよい。したがって、より正確な患者固有の頭蓋外および頭蓋内動脈血流計算を提供してもよく、医師は、特定の身体的条件、例えば、運動、労作、姿勢の変化、または模擬の治療時など、測定データが入手できないかもしれないときに、大脳動脈の血流および脳灌流を予測することができる。患者固有の脳の三次元モデルは、灌流セグメントまたはサブ体積に分割してもよく、患者が脳の様々な領域への十分な最低限の灌流を受けているかどうかを明らかにしてもよい。
【0297】
患者固有の頭蓋内動脈の三次元幾何モデルを医療用画像データから生成して、灌流セグメントまたはサブ体積によって表される残りの頭蓋内動脈ツリーの一部の形態計測モデル(例えば、
図40に関連して上述するような)と組み合わせて、拡大モデルを形成することができる。拡大モデルにおける所定の位置、例えば罹患位置の下流の全脳体積(または質量)の百分率を算出することができる。また、拡大モデルにおける所定の位置、例えば罹患位置の全脳血流の百分率を算出することもできる。さらに、機能的な画像化研究(例えば、機能的な磁気共鳴画像化(fMRI))、灌流CTまたはMRIで認められる欠陥から、栄養血管障害、解剖学的変異、自動調節機構障害、低血圧、または他の病態を突き止めることができ、これは虚血性脳卒中、失神、起立不耐症、外傷、または慢性神経疾患を有する患者に有用となり得る。
ii.
プラーク脆弱性の評価
【0298】
また、コンピュータ分析は、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動中に蓄積し得るプラーク、例えば頸動脈アテローム硬化性プラークに作用する患者固有の生体力学的力を定量化する果を提供することができる。生体力学的力は、拍動性圧力、流動、および頸部動作によって生じ得る。
【0299】
図42は、例示的実施形態による、特定の患者におけるプラーク脆弱性、脳体積リスク、脳灌流リスクの評価に関連する様々な情報を提供するための方法1200の態様を示す概略図である。方法1200は、例えば上述の
図3に示されるステップのうちの1つまたは複数を実施するために使用するコンピュータシステムに類似する、上述のコンピュータシステムで実施することができる。方法1200は、1つまたは複数の入力1202を用いて実施することができ、またこの方法は、入力1210に基づいて1つまたは複数のモデル1202を生成することと、モデル1210のうちの1つまたは複数に基づいて1つまたは複数の生体力学的分析1220を実施することと、モデル1210および生体力学的分析1220に基づいて様々な結果を提供することを含み得る。
【0300】
入力1202は、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈、例えば、患者の大動脈、頸動脈(
図37に示す)、椎骨動脈(
図37に示す)、および脳の医療画像データ1203、例えばCCTAデータ(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)を含んでもよい。また、入力1202は、患者から測定された追加の生理学的データ1204、例えば患者の上腕血圧、心拍数、および/または他の測定値(例えば、
図2のステップ100に関連して上述したものと類似する方式で取得される)も含んでよい。追加の生理学的データ1204は、非侵襲的に取得してもよい。入力1202は、モデル1210を生成するため、および/または後述の生体力学的分析1220を実施するために使用することもできる。
【0301】
上記のように、1つまたは複数のモデル1210は、入力1202に基づいて生成することができる。例えば、方法1200は、患者の解剖学的形態の三次元幾何モデル全体の様々な位置における計算された血流および圧力情報を含む血行動態モデル1212を生成することを含み得る。患者の解剖学的形態のモデルは、医療用画像データ1203を用いて作成することができ、また例示的実施形態において、血行動態モデル1212は、模擬の血圧モデル、模擬の血流モデル、または例えば
図3のステップ402に関連して上述したようにコンピュータ分析の実施後に生成される他のシミュレーションであってよい。流体構造体の相互作用モデルを含むソリッド力学モデルは、既知の数値法を用いてコンピュータ分析により解いてもよい。プラークおよび血管の特性は、線形または非線形、等方性または異方性としてモデリングすることができる。この解は、プラークおよびプラークと血管との間の界面の応力およびひずみを提供し得る。血行動態モデル1212を生成するためのステップは、上述の
図35の血行動態モデル932を生成するためのステップと類似していてもよい。
【0302】
方法1200は、様々な生理学的状態、例えば安静時や様々なレベルの運動または労作時などに、血流力によってプラーク内腔表面に作用する圧力およびせん断応力を計算することによって、血行動態モデル1212を用いて生体力学的分析1220を実施すること(ステップ1222)を含んでもよい。圧力およびせん断応力は、血行動態モデル1212からの情報、例えば血圧および血流に基づいて算出することができる。ステップ1222は、上述の
図35のステップ942と類似していてもよい。
【0303】
場合によっては、方法1200は、
図35の幾何学的分析モデル934について上述したものと類似する方式で、四次元画像データ、例えば、心周期の複数の相で、例えば収縮期および拡張期に取得した画像データから、血管の変形を定量化するための幾何学的分析モデルを生成することも含んでよい。また、方法1200は、
図35のステップ944について上述したものと類似する方式で、心臓による拍動性圧力に起因する、患者の頭蓋内動脈および頭蓋外動脈ならびにプラークの様々な変形の特徴、例えば長手方向の延長(伸長)または短縮、ねじれ(捻転)、半径方向の拡張または圧縮、および屈曲など計算することによって、幾何学的分析モデルを用いて生体力学的分析1220を実施することも含んでよい。
【0304】
また、方法1200は、医療用画像データ1203からプラークの組成および特性を明らかにするためのプラークモデル1214を生成することも含んでよい。例えば、プラークモデル1214は、プラークの密度および他の材料特性に関する情報を含んでもよい。
【0305】
また、方法1200は、プラーク、血管壁、および/またはプラークと血管壁との間の界面に関する情報を計算するための血管壁モデル1216を生成することも含んでよい。例えば、血管壁モデル1216は、応力およびひずみに関する情報を含んでもよく、これはプラークモデル1214に含まれるプラークの組成および特性、ならびにステップ1220で算出される圧力およびせん断応力に基づいて算出することができる。場合によっては、応力およびひずみは、上述のように、算出された変形の特徴を用いて算出してもよい。プラークモデル1214および/または血管壁モデル1216を生成するためのステップは、上述の
図35のプラークモデル936および/または血管壁モデル938を生成するためのステップと類似していてもよい。
【0306】
方法1200は、血流力によるプラークに対する応力および頸部動作によって誘発されるひずみを計算することによって、血管壁モデル1216を用いて生体力学的分析1220を実施すること(ステップ1224)を含んでもよい。例えば、プラークに作用する流動によって誘発される力904(
図33)を計算することができる。血流力によるプラークに対する応力または力、および頸部動作によって誘発されるひずみは、血管壁モデル1216からの情報、例えばプラークに対する応力およびひずみ基づいて算出することができる。ステップ1224は、上述の
図35のステップ946と類似していてもよい。
【0307】
方法1200は、モデル1210のうちの1つまたは複数、および上述の生体力学的分析1220のうちの1つまたは複数に基づいて、さらなる情報を明らかにすることを含んでもよい。
【0308】
プラーク破裂の脆弱性指標を算出してもよい(ステップ1230)。プラーク破裂の脆弱性指標は、例えば、全血行力学的応力、応力頻度、応力方向、および/またはプラーク強度、または他の特性に基づいて算出することができる。例えば、当該プラーク周辺の領域は、プラークの三次元モデル1210、例えばプラークモデル1214から分離してもよい。プラークの強度は、プラークモデル1214に提供される材料特性から明らかにすることができる。拍動性圧力、流動、および頸部動作に起因する当該プラークに対する血行力学的応力および組織応力は、ステップ1224で既に計算された血行力学的応力および動作によって誘発されるひずみを用いて、模擬ベースラインおよび運動(または労作)条件下で算出することができる。プラークの脆弱性は、プラーク応力のプラーク強度に対する比に基づいて評価することができる。ステップ1230は、上述の
図35のステップ950と類似していてもよい。例えば、脳卒中の評価のために、頭蓋外動脈内に位置するプラークのプラーク破裂の脆弱性指標を算出することができる。
【0309】
また、脳体積リスク指標(CVRI)も算出することができる(ステップ1232)。CVRIは、動脈ツリーにおける所定の位置の血管のプラーク破裂または塞栓形成および閉塞(閉鎖または遮断)の影響を受ける全脳体積の百分率として定義することができる。CVRIは、所定のプラークの下流の血管によって供給を受ける脳の部分に基づいて算出することができ、これは下流血管のサイズに対するプラークのサイズ、および三次元血行動態の解に基づく、そのプラークが異なる血管に流入する確率を考慮に入れることができる。CVRIは、疾患状態、またはインターベンションの前もしくは後に評価することができる。ステップ1232は、上述の
図35のステップ952と類似していてもよい。
【0310】
脳組織をモデリングし、血行動態シミュレーションにおいて各血管によって供給を受けるセグメントに分割することができる(例えば、
図40のステップ1110および1112に関連して記載したように)。幾何モデルを修正して、脳のツリーに次世代の分枝を含めるようにしてもよく(例えば、
図40のステップ1118に関連して記載するように)、脳組織をさらにセグメント化してもよい(例えば、
図40のステップ1120に関連して記載するように)。サブセグメント中に追加分枝を作成してもよく、このサブセグメントは、より小さいセグメントにさらにセグメント化してもよい(例えば、
図40のステップ1122に関連して記載するように)。前述のような生理学的関係を用いて、血管サイズと供給を受ける脳組織の比例量と関連付けることができる。
【0311】
破裂したプラークがたどる潜在的経路を明らかにすることができる。血行動態の解を用いて、プラーク断片または塞栓が異なる下流血管に流入する確率を明らかにすることができる。
【0312】
破裂したプラークのサイズを下流血管のサイズと比較して、そのプラークが、最終的に血流への障害を生じ得るかどうかを明らかにすることができる。この情報を脆弱性指標と組み合わせて、破裂したプラークの影響を受ける可能性がある脳組織の体積の確率分布図を提供することができる。CVRIは、影響を受ける可能性のある各セグメントに割り当てることができる。
【0313】
また、脳灌流リスク指標(CPRI)も算出することができる(ステップ1234)。CPRIは、動脈ツリーにおける所定の位置の血管のプラーク破裂および閉塞の影響を受ける全脳血流の百分率として定義することができる。CPRIは、CVRIによって示されるような影響を受ける体積よりもむしろ、その脳組織セグメントへの灌流の潜在的な損失を示す。例えば、頸動脈プラークの破裂または塞栓の影響は、患者のウィリス輪(
図37に示す)の幾何学的形状に応じて異なり得、このような解剖学的形態の違いによって、異なるCVRI値およびCPRI値をもたらし得る。脳組織の各セグメントへの灌流速度を算出することができ、脆弱性指標、血行動態の解、ならびにプラークおよび血管のサイズに基づいて、灌流の損失を算出することができる。CPRIは、疾患状態、またはインターベンションの前もしくは後に評価することができる。ステップ1234は、上述の
図35のステップ954と類似していてもよい。
【0314】
その結果、拍動性圧力、拍動性血流、および/または場合によっては頸部動作に起因する、頸動脈アテローム硬化性プラークに作用する生体力学的力を評価することができる。拍動性圧力、拍動性血流、および/または場合によっては頸部動作に起因する、プラークが受ける全応力は、定量化することもできる。この解は、プラークまたはプラークと血管壁との間の界面に作用する患者固有の血行力学的応力の複数の原因を考慮に入れることができる。また、医療用画像データ、ならびにプラーク脆弱性、脳体積リスク、および脳灌流リスクに関連する指標に基づいて、プラーク強度を推定することができ、頸動脈の潅流リスクを定量化することができる。
【0315】
後述のように頭蓋外動脈および頭蓋内動脈の解剖学的データおよび生理学的データを明らかにすることによって、様々な身体的条件の特定の患者について、動脈レベルまたは器官レベルで血流の変化を予測することができる。さらに、他の情報、例えば、一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、または動脈瘤破裂のリスク、アテローム硬化性プラークまたは動脈瘤に作用する力、頭蓋内または頭蓋外の血流、血圧、血管壁応力、または脳灌流に対する、薬物療法、インターベンション療法、または手術療法の予想される影響を提供してもよい。頭蓋内動脈または頭蓋外動脈中の血流、血圧、および血管壁応力、ならびに全脳灌流および局所脳灌流を定量化することもでき、疾患の機能的重要性を明らかにすることもできる。
【0316】
画像データから構築された三次元幾何モデルにおいて血流を定量化すること(例えば、ステップ1212で上述したように)に加え、このモデルを修正して、疾患の進行もしくは退行、または医学的、経皮的、もしくは外科的インターベンションの影響を模擬することもできる。例示的実施形態において、アテローム性動脈硬化症の進行は、経時的に解を反復するによって、例えば、せん断応力または粒子滞留時間の値を求め、血行動態因子および/または患者固有の生化学的測定値に基づいて、幾何モデルをアテローム硬化性プラークの発達を進行させるように適合させることによってモデリングすることができる。さらに、頭蓋外および/または頭蓋内の動脈血流または脳灌流に対する、血流、心拍数、血圧、および他の生理学的変数の変化の影響を境界条件の変更によってモデリングし、経時的なこれらの変数の累積的影響を算出するために使用してもよい。
【0317】
いかなる実施形態に記載されるいかなる態様も、本明細書に記載される他のいかなる実施形態で使用してもよい。本明細書に記載されるあらゆる装置および器具は、いかなる好適な医療手順において使用してもよく、好適な身体内腔および体腔によって前進させてもよく、またいかなる好適な身体部分を画像化するために使用してもよい。
【0318】
本開示の範囲から逸脱することなく、開示されるシステムおよびプロセスに様々な修正および変更を行うことが可能であることは、当業者には明らかであろう。本明細書を考慮し、本明細書の開示を実施することにより、他の実施形態が当業者に明らかとなるであろう。本明細書および実施例は、例示のみとしてみなされるよう意図され、本開示の実際の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。