(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089371
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】電子部品接着用ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20220609BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220609BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220609BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B05B1/02
B05C11/10
B05C5/00 101
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201715
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】510193430
【氏名又は名称】株式会社ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】三重野 計滋
【テーマコード(参考)】
4F033
4F041
4F042
5E353
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033AA14
4F033BA03
4F033DA01
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4F033FA00
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4F033LA13
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4F033NA01
4F041AA05
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4F041BA34
4F042AA06
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
5E353EE43
5E353JJ48
5E353JJ56
5E353MM02
5E353MM08
5E353QQ08
5E353QQ09
5E353QQ12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い精度で狭小領域に最適量の接着剤を吐出できる電子部品接着用ノズルを提供する。
【解決手段】電子部品接着用ノズル1は、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、本体部2と、本体部の内部に設けられて、接着剤が供給される内部空間3と、内部空間から本体部の先端に向けて設けられた吐出用貫通孔4と、を備え、吐出用貫通孔は、内部空間からの接着剤が注入される注入入口と、内部空間からの接着剤を外部に吐出する吐出出口とを有し、吐出出口の直径は、50μm以下であり、内部空間に供給される接着剤は、吐出圧力を受けて、注入入口に注入されて吐出用貫通孔を通過し、吐出出口から吐出され、吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の内部に設けられて、前記接着剤が供給される内部空間と、
前記内部空間から前記本体部の先端に向けて設けられた吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間からの接着剤が注入される注入入口と、前記内部空間からの接着剤を外部に吐出する吐出出口とを有し、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されている、電子部品接着用ノズル。
【請求項2】
前記表面処理は、前記吐出用貫通孔の内部表面の研磨処理を含む、請求項1記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項3】
前記研磨処理は、放電加工を含む、請求項2記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項4】
前記吐出用貫通孔の表面粗さにおいて、「JIS B 0601:2001」の基準に基づいて、最大高さが0.8μm以下である、請求項1から3のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項5】
前記吐出用貫通孔の表面粗さにおいて、「JIS B 0601:2001」の基準に基づいて、算術平均高さが0.09μm以下である、請求項1から4のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項6】
前記本体部は、超硬合金により形成される、請求項1から5のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項7】
前記本体部は、金属紛体の焼結体で形成される、請求項1から6のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項8】
前記吐出用貫通孔において、前記吐出出口の直径は、前記注入入口の直径より小さい、請求項1から7のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項9】
前記注入入口の直径は、前記吐出出口の直径よりも10%以上大きい、請求項8記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項10】
前記吐出用貫通孔は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて次第に内径が小さくなっていく、請求項1から9のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項11】
前記吐出出口の直径は、40μm以下である、請求項1から10のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項12】
前記吐出出口の直径は、30μm以下である、請求項1から10のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項13】
前記吐出用貫通孔は、機械加工で穿孔されて形成される、請求項1から12のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項14】
電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ディスペンサーであって、
接着剤を収容する接着剤収容容器と、
前記接着剤収容容器の先端に備わり、請求項1から13のいずれかの電子部品接着用ノズルと、
前記接着剤収容容器内部において上下移動可能な押出しピンと、
前記押出しピンに押出し圧力を加える圧力部材と、を備え、 前記内部空間と
前記接着剤収容容器の内部空間とは連通しており、前記接着剤収容容器に収容されている前記接着剤が、前記内部空間に供給され、
前記押出しピンの押し出しが、前記吐出圧力を生じさせる、電子部品接着用ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装基板などの接着する際に接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、精密機器、輸送機器、工作機械などの機器や機械においては、様々な電子部品が多数用いられる。あるいは、組み込まれる部品だけでなく、必要に応じて取り付けられたり組み合わされたりする多種多様な部品が必要である。このような電子部品は、電子機器や精密機器に装着される実装基板に実装される。
【0003】
ここで、実装基板に実装される電子部品は、半導体素子、LSI、光学素子、ディスクリートの電子部品や電子素子など様々である。これらの電子部品は、きわめて小型化・高性能化している現状がある。特に、近年の電子機器には多くのセンサー素子が実装される。これは電子機器だけでなく自動車のような輸送機器であったり、工場などで使用される工作機械などであったりしても同様である。近年の様々な機械や機器は、このような多くのセンサー素子を実装している。自動運転や遠隔操作などを実現するために、多くの部位に多くのセンサー素子を必要とするからである。
【0004】
また、センサー素子だけでなく、これらの機械や機器は、電子的動作を行うために多くの電子部品を備えている。これらの電子部品の多くは、機械や機器に装着される実装基板に実装される。電子部品は、半田のような導電性ペーストや各種の接着剤で実装基板に実装される。このとき、実装のための導電性ペーストや接着剤(以下、必要に応じて「接着剤」として総称する)を、実装基板に塗布する必要がある。
【0005】
このような接着剤を塗布するには、様々なやり方がある。このような電子部品の実装に必要となる接着剤の塗布について、いくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-101815号公報
【特許文献2】特開2019-58886号公報
【特許文献3】特開2005-334733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、部品供給部のフィーダベースに他のパーツフィーダとともに装着された清掃部材フィーダから、搭載ヘッド9によって清掃用部材22を取り出して保持した状態でディスペンサユニット6の吐出ノズル46と接する位置に移動させ、清掃用部材22を水平往復動させる所定パターンの清掃動作を搭載ヘッド9に実行させて吐出ノズル46の清掃を行う。これにより、ディスペンサユニット6によるペーストPの塗布を安定させるために必要とされる保守清掃作業を、効率よく適切に行うことができる電子部品実装装置を開示する。
【0008】
特許文献1は、ディスペンサーによって接着剤を吐出して、電子部品の実装を可能とする技術を開示している。
【0009】
しかしながら、近年の電子機器や輸送機器においては、非常に多くの電子部品が実装される。また、電子部品の大きさも非常に小型化や微細化しており、実装基板に吐出するべき接着剤も非常に少量である。また、非常にピンポイントな狭小領域に正確に接着剤を吐出する必要がある。この吐出する領域、吐出量、隣接する吐出領域との間隔の確保などについて、よりシビアな精度が求められるようになっている。
【0010】
特許文献1では、このようなシビアな精度に対する対応力を有していない問題がある。
【0011】
特許文献2は、ノズルユニット(100)であって、先端(10a)から液体(L)を吐出するセラミック材からなるノズル(10)と、ノズルをはめあい寸法にて保持する保持部品(20)と、ノズルのテーパ部(31)を利用して、ノズルの先端が出るように固定するための固定部品(30)と、を備え、保持部品と固定部品を螺合することでノズルを固定することを特徴とするノズルユニットを、開示する。
【0012】
特許文献3は、ノズル孔1が、軸心直交方向のノズル先端面2に開口する開口部3に向かって、孔横断面積がしだいに減少するテーパ状吐出孔部4を有し、ストレート状孔部を介さずにテーパ状吐出孔部4の最先端が開口部3に連続している。また、テーパ状吐出孔部4の縦断面の傾斜角度θが、60度以上 100度以下になるように設定されているノズルを開示する。
【0013】
特許文献2、3は、特許文献2と同じ問題を有している。
【0014】
接着剤ディスペンサーは、その先端に接着剤を吐出するノズルを備えている。このノズルに接着剤を送り出して、圧力によって、ノズルの先端から接着剤を吐出させる。吐出させることで電子基板において電子部品が接着される場所に接着剤を設置することができる。
【0015】
上述したように現在では小型で多数の電子部品を高速に実装することが求められている。一つの電子基板に多数のセンサーなどの電子部品が実装される必要があったり、電子基板の様々な場所に複数の電子部品が実装される必要があったりする。
【0016】
また、自動での実装装置において、非常に高速かつ確実に電子部品の実装(接着)が行われる必要がある。このため、接着剤を吐出するノズルには、非常に大きな圧力が加わる。このとき、ノズル内部で接着剤の吐出を行う孔の表面に凸凹や粗さなどが大きく残っていると、正確な吐出ができなくなる。大きな圧力を付与してノズルの孔から接着剤を吐出させるので、この圧力を受けた接着剤が、穴の中の凸凹や粗さに引っかかるようになり、吐出方向の正確性に悪影響を与えるからである。
【0017】
特に、より微細な位置に微量の接着剤を連続的に吐出することが求められるので、ノズルには高い圧力が連続的に付与される。この圧力を受けて接着剤が吐出される場合には、吐出用の孔内部の凸凹などが邪魔となり、接着剤の吐出方向がずれたり、目詰まりで吐出が不十分となったりする問題がある。
【0018】
また、吐出の正確性の不十分さにより、ノズルの耐久性が不足することになり、耐用期間が短くなって交換やメンテナンスコストが増加することにもつながりかねない。
【0019】
これらにより、ノズルでの接着剤の吐出に基づく実装での歩留まりの低下などの問題にもつながる。正確な位置への接着剤の吐出が不十分となることで、実装すべき位置に電子部品が実装できなくなったり、他の電子部品に接着剤が付着して、電子基板として使用不能な状態となったりすることもあるからである。
【0020】
この結果、実装装置による実装能力が低減することにもつながりかねない。
【0021】
本発明は、以上の問題に鑑み、高い精度で狭小領域に最適量の接着剤を吐出できる電子部品接着用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の電子部品接着用ノズルは、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の内部に設けられて、前記接着剤が供給される内部空間と、
前記内部空間から前記本体部の先端に向けて設けられた吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間からの接着剤が注入される注入入口と、前記内部空間からの接着剤を外部に吐出する吐出出口とを有し、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子部品接着用ノズルは、非常に小型の電子部品に対応する狭小領域に、高い精度で接着剤を吐出できる。このとき、吐出すべき位置、領域、量において最適なレベルで、接着剤を吐出できる。
【0024】
また、高い耐久性を有しているので、繰り返しの使用にも対応できる。結果として、電子部品実装のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズル(以下、必要に応じて「ノズル」と略す)の写真である。
【
図2】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの横断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるロングタイプの電子部品接着用ノズルの側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの断面図である。
【
図6】表面処理前の吐出用貫通孔の内部表面の表面形状を測定した結果のグラフである。
【
図7】
図6の測定結果に基づいて算出された表面粗さの各種指標結果を示す表である。
【
図8】作成したノズル1の表面処理後の吐出用貫通孔の内部表面の表面形状を測定した結果のグラフである。
【
図9】
図8の測定閣下に基づいて算出された表面粗さの各種指標結果を示している。
【
図10】表面処理が施されていない他社ノズルでの吐出実験結果を示す説明図である。
【
図11】本発明のノズルを用いた吐出実験閣下を示す説明図である。
【
図12】、本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの側面図である。
【
図13】、本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の発明に係る電子部品接着用ノズルは、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の内部に設けられて、前記接着剤が供給される内部空間と、
前記内部空間から前記本体部の先端に向けて設けられた吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間からの接着剤が注入される注入入口と、前記内部空間からの接着剤を外部に吐出する吐出出口とを有し、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されている。
【0027】
この構成により、吐出時に抵抗や摩擦を強く受けることが軽減されて、吐出がスムーズとなる。スムーズとなる結果、吐出先の命中精度が向上する。
【0028】
本発明の第2の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1の発明に加えて、前記表面処理は、前記吐出用貫通孔の内部表面の研磨処理を含む、
【0029】
この構成により、表面粗さを低下させることができる。
【0030】
本発明の第3の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第2の発明に加えて、前記研磨処理は、放電加工を含む。
【0031】
この構成により、効率的に研磨処理を行える。
【0032】
本発明の第4の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔の表面粗さにおいて、「JIS B 0601:2001」の基準に基づいて、最大高さが0.8μm以下である。
【0033】
この構成により、表面粗さが十分に低く、吐出におけるスムーズ性と吐出の命中精度が高まる。
【0034】
本発明の第5の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔の表面粗さにおいて、「JIS B 0601:2001」の基準に基づいて、算術平均高さが0.09μm以下である。
【0035】
この構成により、表面粗さが十分に低く、吐出におけるスムーズ性と吐出の命中精度が高まる。
【0036】
本発明の第6の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記本体部は、超硬合金により形成される。
【0037】
この構成により、高い耐久性を実現できる。加えて、吐出用貫通孔の吐出軸の精度も高まり、吐出される接着剤の量や吐出直径の最適化が図られる。
【0038】
本発明の第7の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記本体部は、金属紛体の焼結体で形成される。
【0039】
この構成により、本体部の形成が容易となる。また、形成精度も上げることができる。
【0040】
本発明の第8の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔において、前記吐出出口の直径は、前記注入入口の直径より小さい。
【0041】
この構成により、吐出される接着剤をよりピンポイントな位置に適切な量で吐出することができる。
【0042】
本発明の第9の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第8の発明に加えて、前記注入入口の直径は、前記吐出出口の直径よりも10%以上大きい。
【0043】
この構成により、より微細な部位に接着剤を吐出することができる。
【0044】
本発明の第10の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて次第に内径が小さくなっていく。
【0045】
この構成により、最適な微小位置に確実に接着剤を吐出できる。
【0046】
本発明の第11の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記吐出出口の直径は、40μm以下である。
【0047】
この構成により、非常に微細な量の接着剤を吐出できる。
【0048】
本発明の第12の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記吐出出口の直径は、30μm以下である。
【0049】
この構成により、非常に微細な量の接着剤を吐出できる。
【0050】
本発明の第13の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第12のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔は、機械加工で穿孔されて形成される。
【0051】
この構成により、精度の高い吐出用貫通孔を形成できる。
【0052】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0053】
(実施の形態)
【0054】
実施の形態について説明する。
【0055】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズル(以下、必要に応じて「ノズル」と略す)の写真である。
図1は、電子部品接着用ノズル1を斜め上から見た状態を示している。すなわち、本体部2の内部に設けられる内部空間3の方向から見た状態を示している。
【0056】
図2は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの横断面図である。電子部品接着用ノズル1を後述する吐出量貫通孔4などの内部を透視状態として示している。
【0057】
電子部品接着用ノズル1は、本体部2、内部空間3、吐出用貫通孔4を備える。本体部2は、電子部品接着用ノズル1の外形を形成する。この外形によって、他の要素を付随させることで、本体部2は、電子部品接着用ノズル1を構成できる。
【0058】
内部空間3は、本体部2の内部に設けられた空間である。電子部品接着用ノズル1は、接着剤の供給を受けてこれを吐出して、電子基板への電子部品の接着(実装)を実現する。この内部空間3は、接着剤の供給を受ける。すなわち、内部空間3に接着剤が供給(充填)される。内部空間3は、接着剤を受ける空間である。
【0059】
吐出用貫通孔4は、内部空間3から本体部2の先端に向けて設けられた貫通孔である。吐出用貫通孔4は、内部空間3からの接着剤を吐出する。このとき、吐出用貫通孔4は、内部空間3からの接着剤が注入される注入入口41と、この接着剤を外部に吐出する吐出出口42を有している。
【0060】
吐出出口42の直径は50μm以下である。
【0061】
ここで、吐出用貫通孔4の内部表面は、摩擦力低下のための表面処理が施されている。この表面処理は、例えば内部表面の凸凹や表面粗さを低下させる。表面粗さが低下されることで、摩擦力や接着剤の吐出における抵抗力を低減させることにも繋がる。
【0062】
このように、摩擦力低下のための表面処理(凸凹や表面粗さを低下させる表面処理)が施されると、吐出圧力を受けて吐出される接着剤の吐出がスムーズとなる。吐出の際に抵抗力を受けたり反発を受けたりすることが低減して、吐出圧力および吐出用貫通孔4のベクトル方向に沿った正確な接着剤の吐出がなされる。すなわち、電子部品接着用ノズル1(すなわち、これを備える電子部品接着用ディスペンサー)は、狙った位置に対して正確に接着剤を吐出できる。
【0063】
吐出の際に、摩擦力、抵抗力、反発力などを受けることが低減して、吐出圧力および吐出用貫通孔4のベクトル方向からずれた方向への吐出が生じにくいからである。これに対して、摩擦力低下のための表面処理がされていないと、凸凹や表面の粗さによって、吐出方向がずれてしまい、狙った位置に吐出されないこともあり得る。
【0064】
本発明の電子部品接着用ノズル1は、吐出用貫通孔4の内部表面の摩擦力低下のための表面処理がなされていることで、このような吐出方向がずれてしまうなどの従来技術の課題を解決できる。
【0065】
もちろん、これにより、実装不備などを防止でき、電子部品接着用ノズル1を用いた電子部品の電子基板への実装での歩留まりの向上につながる。すなわち、実装装置での実装能力を高めることができる。
【0066】
また、吐出用貫通孔4の内部表面の表面処理によって接着剤の吐出がより容易となる。吐出用貫通孔4内部で接着剤が詰まりにくくなり、最適な量と吐出直径での接着剤の吐出が確実に行える。また、目詰まりなどが生じにくいことで、電子部品接着用ノズル1の耐久性や寿命延長に効果的である。
【0067】
後述するように、本体部2が超硬合金で形成されていることと併せて、表面処理がなされていることで、電子部品接着用ノズル1の耐久性や寿命延長に効果的である。この結果、ノズル1やこれを備える電子部品接着用ディスペンサーの耐久性を向上させ、交換コストやメンテナンスコストを低下させる。また、実装装置での実装における作業効率を向上させ、メンテナンス時間の削減による作業コストの削減もできる。
【0068】
摩擦低下の表面処理は、コーティング処理や磨き処理(研磨処理)など様々な手段で実現されればよい。研磨処理は、放電加工での研磨処理でもよい。表面処理により、吐出用貫通孔4の内部表面の表面粗さが低下する。この低下が上述のようなメリットを生じさせる。
【0069】
電子部品接着用ノズル1は、電子部品接着用ディスペンサーに取り付けられる。電子部品接着用ディスペンサーは、実際に接着剤を供給してノズル1を通じて電子基板の接着剤塗布位置に、接着剤を吐出する。この電子部品接着用ディスペンサーは、電子部品を電子基板に実装する実装装置に組み込まれる。
【0070】
このような構成とされた上で、内部空間3に接着剤が供給される。電子部品接着用ディスペンサーは、ノズル1の内部空間3に接着剤を供給する。また、接着剤の供給に合わせてこれを吐出させる吐出圧力を付与する。この吐出圧力を受けた接着剤は、内部空間3から吐出用貫通孔4を通じて外部に吐出される。このとき、内部空間3の接着剤が、注入入口41に注入されて吐出用貫通孔4を通過する。通過した接着剤は、吐出出口42から外部に吐出される。
【0071】
ここで、電子基板に設定された電子部品の実装位置が存在し、吐出出口42は、この実装位置に接着剤を吐出する。そのあとで、接着剤の上に電子部品が載せられて電子部品の実装が完了する。このとき、接着剤は、いわゆる樹脂や高分子素材の接着剤でもよいし、導電性の金属ペーストでもよい。これらは、電子部品の電子基板への実装の仕様によって定められれば良い。
【0072】
吐出用貫通孔4を通じて吐出される接着剤は、吐出出口42から最終的に吐出される。このとき、上述したように、吐出出口42の直径は50μm以下である。このため、非常に微細な量および吐出直径での接着剤を吐出できる。近年の電子部品は、非常に小型化している。半導体集積回路などの電子部品はもとより、各種機能を有するセンサーが小型化している。特に、自動車や輸送機器などは、自動運転などを目的とした様々かつ大量のセンサーを実装する傾向がある。
【0073】
このような状況では、微細な量および吐出直径の接着剤の吐出が求められる。
【0074】
吐出出口42の直径が、50μm以下であることで、求められる微細な量および吐出直径の接着剤の吐出を行うことができる。本発明の電子部品接着用ノズル1を用いることで、微細化している電子部品の実装を実現することができるようになる。
【0075】
また、既述したように、吐出用貫通孔4の内部表面は、摩擦力低下の表面処理が施されている。この表面処理により、吐出方向の正確性を向上させると共に、吐出すべき接着剤の吐出量の正確性も高める。加えて、耐久性も高まって、実装コストやメンテナンスコストを低下させる。
【0076】
次に、各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0077】
(本体部)
本体部2は、超硬合金によって形成されることが好適である。例えば、タングステンを主原料とする超硬合金などが用いられる。タングステンカーバイドがバインダで結合された合金であったり、炭化チタンなどが混合された合金であったりする。
【0078】
本体部2が超硬合金で形成されていることにより、電子部品接着用ノズル1の強度および耐久性が高まる。電子部品接着用ノズル1は、大量の電子部品を接着するために、非常に多くの回数の繰り返し使用を受ける。また、動作間隔も非常に短い。このため、非常な負荷が加わる。接着剤の供給と吐出に加えて、吐出圧力も短間隔で次々と付与される。
【0079】
本体部2が、超硬合金であることで、このような大きな負荷に対しても対応できるようになる。高い耐久性により、負荷の大きな使用に対応できる。
【0080】
特に、超硬合金で形成されていることにより、ノズル1の強度や耐久性が向上する。この向上によって、連続的かつ多数の回数に渡って、接着剤が吐出される場合でも、ノズル1の破損や損傷が生じにくい。このため、メンテナンスコストを低減させることができる。勿論、交換までの必要期間を下げるメリットもある。
【0081】
また、ノズル1の耐久性が高いことで、高い精度(特に微細な領域への接着剤の吐出)での接着剤の吐出を、維持することができる。このため、ある程度の期間において、正確な接着剤の吐出を継続でき、電子基板への電子部品の実装効率を向上・継続させることができる。
【0082】
上述したように、非常に小型の電子部品を、実装装置において連続的に高速に実装する必要が生じている。実装される部品の電子基板での実装位置も様々であったり、実装装置での実装速度も向上させることが求められたりしている。
【0083】
このような要求に対しては、非常に微細な量の接着剤を、正確な位置に吐出することが求められる。更に、連続的かつ高速な時間間隔で吐出することも求められる。結果として、吐出出口42の直径が50μm以下のように微細にされる必要がある。吐出出口42の直径が微細になると、高い吐出圧力が必要となり、それだけノズル1の本体部2に負荷がかかる。これは、高速の連続吐出に基づいても同様である。
【0084】
ノズル1の本体部2が超硬合金で形成されていることで、これらに対応できる。すなわち、高い負荷に対する耐久性が高まり、精度の高い吐出を、より長い期間で継続しやすくなる。結果として、メンテナンスコストを低下させ、実装そのものの歩留まりも向上させることができる。
【0085】
従来技術では、ノズルの強度や耐久性についての開示や示唆がなく、またその課題解決の開示もなかった。これに対して、ノズル1が超硬合金であることで、従来技術では開示されていなかった技術的課題にも、本発明の電子部品接着用ノズル100は、上述のように対応できる。
【0086】
この本体部2が超硬合金で形成されていることは既述した吐出用貫通孔4の内部表面の表面処理と相まって、吐出のスムーズ性を高める。更に耐久性も高める。これらによって、ノズル1やこれを備える電子部品接着用ディスペンサーのメンテナンスコストなどを低減できる。
【0087】
また、上述したように、電子部品接着用ノズル1は、微細な量と吐出直径の接着剤を吐出することが求められる。このため、吐出用貫通孔4の内径、吐出軸の高い精度が求められる。吐出用貫通孔4は、本体部2の所定位置を穿孔されて形成されるかあるいは、張り合わせなどで形成されるか、型加工で形成されるかする。
【0088】
このようにして形成される吐出用貫通孔4は、本体部2が超硬合金であることで、高い精度で形成されやすくなる。加えて、超硬合金であることで、形成された後でも、その形状や吐出軸が変形しにくいメリットもある。特に、高い負荷で繰り返し使用される状況では、吐出用貫通孔4の変形などの懸念がある。このような場合でも、本体部2が超硬合金で形成されている場合には、このような変形のリスクを大きく低減できるメリットがある。
【0089】
また、本体部2は、金属紛体の焼結体で形成されることも好適である。このとき、タングステンカーバイドなどの超鋼金属素材の粉末が、他の粉末素材と混合された上で、焼結されて焼結体とされればよい。もちろん、他の金属素材が用いられてもよい。
【0090】
このような金属紛体の焼結体で本体部2が形成されることで、本体部2を高い精度で製造することができる。また、焼結体とする際に、吐出用貫通孔4を設けてもよいし、焼結体となった後で、穿孔などにより吐出用貫通孔4を形成してもよい。いずれの場合でも、焼結体で本体部2が形成されることで、容易な形成ができるようになる。
【0091】
また、焼結体であることで、本体部2の強度や耐久性が高まり、上述のような負荷の高い繰り返し使用に対する耐久性が高まるようになる。加えて、焼結体であることで、本体部2を適切な形状として形成することができる。例えば、
図3のように、先端部が伸びている形状の電子部品接着用ノズル1を製造する必要があることもある。このような場合には、焼結体であることで、形状を高い精度で形成することが可能となる。もちろん、焼結体でなくともこのような形状の本体部2を形成することも可能である。
【0092】
図3は、本発明の実施の形態におけるロングタイプの電子部品接着用ノズルの側面図である。
図3の右側は、ロングタイプの電子部品接着用ノズル1の側面の外形図を示している。
図3の左側は、この内部が分かるような断面図を示している。
図3の左右から分かるとおり、ロングタイプの電子部品接着用ノズル1も、
内部空間3と吐出用貫通孔4が備わり、接着剤を吐出することができる。
【0093】
このようなロングタイプの電子部品接着用ノズル1であることで、より正確かつ高い精度で接着剤を吐出することができる。また、より高密度実装をしなければならない場合に、先端部が伸びていることで、高密度実装に対応して接着剤を吐出することができる。
【0094】
(内部空間)
内部空間3は、本体部2の内部に設けられた空間である。本体部2が形成される際に同時に内部空間3が形成されてもよい。あるいは、本体部2の内部が切削等されることで、内部空間3が形成されてもよい。
【0095】
電子部品接着用ノズル1は、接着剤を供給して吐出圧力を付与する装置に組み合されて使用される。この装置に組み合されると、装置から接着剤がこの内部空間3に供給される。また、この供給に合わせて、装置が内部空間3に吐出圧力を付与する。この付与を受けて、内部空間3は供給された接着剤を、内部空間3に連通する吐出用貫通孔4を通じて吐出する。
【0096】
このとき、内部空間3に連通する吐出用貫通孔4は、内部空間3と注入入口41がつながっている。この注入入口41は、吐出用貫通孔4を通じて、吐出出口42に繋がっている。
【0097】
内部空間3は、本体部2の大きさに合わせた容積を有していればよい。また、吐出する接着剤の量や、その回数に合わせた容積を有していればよい。あるいは、吐出圧力を付与する装置との関係で決定されればよい。
【0098】
また吐出用貫通孔4と同様に、内部空間3の内部表面も、摩擦力低下のための表面処理がなされていることも好適である。表面処理の方法やレベルは、吐出用貫通孔4の内部表面の表面処理と同様である。表面粗さを低下させることで、摩擦力や抵抗力を低下させる。これにより、接着剤が供給された後で、内部区間3から吐出用貫通孔4への接着剤の移動を、よりスムーズにできる。
【0099】
(吐出用貫通孔)
吐出用貫通孔4は、内部空間から圧力を受けて入り込む接着剤を、実際に吐出する。吐出する先は、電子部品を実装する電子基板の実装部位である。吐出用貫通孔4は、内部空間4からの接着剤が注入される注入入口41と接着剤が吐出される吐出出口42を備える。
【0100】
内部空間3に供給される接着剤は、吐出圧力を受けて注入入口41に入る。そのまま吐出圧力を受けて接着剤は、吐出出口42から吐出される。この吐出によって接着剤が、実装可能な状態として塗布される。
【0101】
吐出用貫通孔4の内部表面の表面処理は既述した通りである。
【0102】
ここで、
図4のように、吐出用貫通孔4において、吐出出口42の直径が注入入口41の直径より小さいことも好適である。
図4は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの断面図である。吐出用貫通孔4の内部構造が分かるように示している。
【0103】
このとき、
図5に示すように、吐出用貫通孔が段階的に吐出出口42に向かうにつれて小さくなっていくことでもよい。
図5は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの断面図である。
図5では、吐出用貫通孔4が2段階の形状を有して、吐出出口42の直径が注入入口41の直径よりも小さい。
【0104】
吐出出口42の直径が、注入入口41の直径より小さいことで、吐出用貫通孔4を通過して吐出される接着剤は、微細な量および吐出直径で吐出されやすくなる。特に、微細な吐出直径で吐出する際に、より高い精度で吐出させることができる。また、吐出する部位へ、より正しく吐出させることができる。
【0105】
また、吐出用貫通孔4は、注入入口41から吐出出口42に向けて次第に内径が小さくなっていく構造を有する。このような構造により、吐出用貫通孔4を移動する過程で、接着剤はより吐出すべき位置に正確に吐出されるようになる。すなわち、狙い通りの位置に吐出されるようになる。
【0106】
加えて、先端にかけて内径が次第に小さくなっていくことで、より微細な量と吐出直径での吐出も可能となる。
【0107】
ここで、注入入口41の直径は、吐出出口42の直径よりも10%以上大きいことも好適である。例えば、注入入口41の直径が50μmであるときに吐出出口42の直径が40μmである。あるいは、注入入口42の直径が40μmであるときに、吐出出口42の直径が30μmである。
【0108】
このような大きさの差があることで、注入入口41から吐出出口42へ移動して吐出される接着剤は、微細な吐出直径で確実に吐出されるようになる。特に、微細な位置に確実に接着剤を吐出することができるようになる。接着剤が入る注入入口41よりも吐出出口42が小さいことで、吐出用貫通孔4を移動する際に、接着剤はより目標となる位置に吐出されやすくなるからである。
【0109】
ここで、吐出出口42の直径は、40μm以下であることも好適である。近年の電子部品の小型化は非常に進んでおり、このような小型の電子部品を電子基板に実装するには、40μm以下の直径の吐出出口42から接着剤が吐出されることが好ましい。
【0110】
吐出出口42の直径が40μm以下であることで、非常に小さな面積の部位に対応する接着剤を吐出できる。
【0111】
さらには、吐出出口42の直径は、30μm以下であることも好適である。更に小型の電子部品の実装において必要となる最適な量と部位への接着剤の吐出を可能とするからである。吐出出口42の直径が30μm以下であることで、より小型の電子部品の実装に適した接着剤の吐出を可能とできる。あるいは、より高密度実装に適した接着剤の吐出が可能である。
【0112】
(吐出用貫通孔のバリエーション)
吐出用貫通孔4は、本体部2において機械加工で穿孔されて形成されることも好適である。本体部2が形成された後で、内部空間3と吐出用貫通孔4が機械加工で形成されてもよい。機械加工によって穿孔されて吐出用貫通孔4が形成されることで、高い精度で吐出用貫通孔4が形成できる。
【0113】
また、上述したように、吐出用貫通孔4は、吐出出口42に向けて次第に細くなっていくことも好適である。このような形状の場合にも、吐出用貫通孔4が機械加工で穿孔されることで実現が容易となる。また、機械加工で形成されることで、耐久性の高い吐出用貫通孔4を実現できる。加えて、非常に微細な直径の吐出用貫通孔4を実現することもできる。
【0114】
(吐出用貫通孔の内部表面の表面処理)
上述したように、吐出用貫通孔4の内部表面は、表面処理が施されている。このとき、内部空間3の内部表面も同様に表面処理が施されていることも好適である。表面処理がなされていることのメリットは上述した通りである。すなわち、摩擦力や抵抗力が減って、吐出圧力を受けた接着剤の吐出がスムーズになると共に、直進性が高まり、狙った位置への吐出精度を上げることができる。
【0115】
(表面処理)
表面処理は、研磨処理を含む。研磨処理によって、内部表面の表面粗さを低下させることができる。また、研磨処理が放電加工によることでもよい。放電加工によって、研磨処理と同様の効果を生じる。すなわち、内部表面の表面粗さを低下させることができる。
【0116】
表面粗さは、ノズル1を成形製造する過程で、どうしても生じる凸凹やバリなどによって生じる。例えば、内部空間3や吐出用貫通孔4が研削加工などで形成される際には、凸凹やバリなどが生じる。あるいは、表面での微細な飛び出し部分なども生じる。これが、表面粗さとして生じる。
【0117】
研磨処理や放電加工による処理などで、この凸凹やバリなどを減らして表面粗さを低下させることができる。この表面粗さの低下により、上述のように摩擦力や抵抗力が低下する。
【0118】
(実験結果)
ここで、発明者が実際に作製したノズル1での表面処理の実験結果について説明する。発明者は、研磨処理などを行なうことにより、吐出用貫通孔4の表面粗さを低減させた。ここで、発明者は実際に作製したノズル1の表面粗さを測定した。表面粗さについては、「三鷹光機の超精密非接触三次元測定装置 NH-3SP」を用いて、内部表面の表面形状を計測した。この計測に基づいて、「JIS B 0601:2001」の規格に基づいて、表面粗さの指標である、「算術平均粗さ」、「最大高さ」を測定した。
【0119】
ここで、この規格に基づく「算術平均粗さ」は、次の通りに定義されている。
【0120】
「粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(χ)で表して所定の数式で求められる値をマイクロメートル(μm)で表したもの」。
【0121】
また、同様に「最大高さ」は、次の通りに定義されている。
【0122】
「粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したもの」
【0123】
(最大高さおよび算術平均高さ)
【0124】
図6は、表面処理前の吐出用貫通孔の内部表面の表面形状を測定した結果のグラフである。
図7は、
図6の測定結果に基づいて算出された表面粗さの各種指標結果を示す表である。
図8は、作成したノズル1の表面処理後の吐出用貫通孔の内部表面の表面形状を測定した結果のグラフである。
図9は、
図8の測定閣下に基づいて算出された表面粗さの各種指標結果を示している。
【0125】
すなわち、
図6、
図7は、表面処理前の表面粗さの結果を示し、
図8、
図9は、表面処理後の表面粗さの結果を示している。
【0126】
図9の結果から分かる通り、吐出用貫通孔4の内部表面の表面粗さにおいて、「JIS B 0601:2001」の規格に基づいて、最大高さが0.8μm以下である。
【0127】
また、
図9の結果から分かる通り、吐出用貫通孔4の内部表面の表面粗さにおいて「JIS B 0601:2001」の規格に基づいて、算術平均高さは、0.09μm以下である。
【0128】
図7の表面処理前の結果では、最大高さは、4.48μmであり、算術平均高さは、0.69μmであり、表面処理後に比較して非常に大きい。表面処理後の表面粗さは、上述のように最大高さおよび算術平均高さのいずれにおいても非常に小さくなっている。すなわち、表面粗さが低下している。この表面粗さの低下によって、摩擦力や抵抗力が低下している。結果として、吐出精度が向上する。
【0129】
(吐出実験結果)
発明者は、表面処理の効果を確認するために、実際に接着剤を吐出する吐出実験を行った。ノズル1を電子部品接着用ディスペンサーに装着し、接着剤を吐出する吐出実験を実施した。ノズル1の先に、吐出目標用紙を設置して、実際に接着剤を吐出して、吐出された実際の位置を測定した。
【0130】
図10は、表面処理が施されていない他社ノズルでの吐出実験結果を示す説明図である。
図11は、本発明のノズルを用いた吐出実験閣下を示す説明図である。
【0131】
図10から明らかなとおり、表面処理の施されていない他社ノズルでは、吐出位置にばらつきがある上に、正確な位置に吐出されている場合も少ない。多くの吐出実験において、不正確な位置に吐出されている。
【0132】
一方、
図11から明らかなとおり、表面処理の施された本発明のノズル1は、
図10と異なりばらつきが少ないことに加えて、吐出位置の正確性も高い。40回以上の吐出実験において、ほとんどの場合でほぼ正確な吐出を実現できている。また、ばらつきも小さい。
図10の吐出結果とは大きく相違する。
【0133】
以上のように、表面処理が施されることで、実際に表面粗さが低下されている。この表面粗さの低下によって、吐出精度が向上していることが実験からも確認された。
【0134】
(電子部品接着用ディスペンサー)
次に、ノズル1が電子部品接着用ディスペンサーに装着されて実装に使用される場合について説明する。
【0135】
(接着剤収容容器)
図12、
図13に示されるように、ノズル1が、電子部品接着用ディスペンサーに装着されて実装に使用される場合について説明する。
図12、
図13は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの側面図である。
【0136】
接着剤収容容器110は、電子部品接着用ディスペンサー100の本体部を構成する。加えて、その内部空間111に接着剤を収容する。接着剤収容容器110は、その先端に電子部品接着用ノズル1を備えており、接着剤収容容器110の内部空間111と電子部品接着用ノズル1の内部空間3とは連通している。この連通により、内部空間111に収容されている接着剤は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に移動する(内部空間3に供給される)。
【0137】
また、押出しピン120の上下移動の過程で、内部空間3には、内部空間111から接着剤が供給される。この供給によって、電子部品接着用ノズル1の内部空間2には、接着剤が充填される状態となる。
【0138】
(供給機構)
【0139】
接着剤収容容器110に接着剤を供給する供給機構115が、さらに備わっている。
図12には、この供給機構115が示されている。供給機構115は、例えば、内部空間111に接続する管路であって、この管路により外部から接着剤を内部空間111に供給できる。
【0140】
供給機構115が備わることで、接着剤収容容器110の内部空間111には、常に接着剤が収容された状態を維持できる。これにより、電子基板に電子部品を実装する実装作業の長時間での連続性を確保できる。
【0141】
(押出しピン)
押出しピン120は、圧力部材130の圧力の付与と開放との繰り返しに対応して、上下移動(接着剤の吐出方向に沿った方向の移動)可能である。圧力部材130による押出し圧力が付与されると、押出しピン120はこれに伴って押し出される。この押し出しによって、
図5のように、押出しピン120の先端は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3の中に入り込む。この入り込みによって、内部空間3に充填されている接着剤に吐出圧力を付与できる。
【0142】
図13では、押出しピン120が押し出されている状態を示している。圧力部材130が押し出した場合には、
図13のような状態となって、吐出出口42から接着剤が吐出されている。
【0143】
圧力部材130が押出し圧力を開放すると(停止すると)、押出しピン120は、引き戻される。引き戻されると、押出しピン120の先端が内部空間3への入り込みから外れて、内部空間3には内部空間111から接着剤が供給される。
【0144】
再び、圧力部材130が押出し圧力を付与すると、押出しピン120が内部空間3の接着剤に吐出圧力を付与する。これにより、再び接着剤が吐出出口42から吐出される。
【0145】
(圧力部材)
圧力部材130は、押出しピン120に押出し圧力の付与と開放を繰り返す。あるサイクル(一定サイクルだけでなく、不定サイクルも含む)で、圧力部材130は、押出しピン120に押出し圧力を付与するタイミングと押出し圧力の開放(解除)を、繰り返す。この繰り返しによって、押出しピン120が、内部空間3に対して入り込みと遠隔との移動を繰り返す。この移動の繰り返しにより、内部空間3にある接着剤への吐出圧力の付与と、吐出圧力付与のない状態(内部空間3に接着剤を供給する状態)を、繰り返すことができる。
【0146】
すなわち、圧力部材130は、最終的に、接着剤の吐出と非吐出の期間を繰り返すことができる。
【0147】
ここで、圧力部材130は、ピエゾ素子を含むことも好適である。ピエゾ素子は、電圧を受けて、押出し圧力の付与と解除とを繰り返すことができる。これにより、押出しピン120を押し出したり引き戻したりを繰り返すことができる。
【0148】
特に、ピエゾ素子は電圧の付与により動作を変化させることができる。このため、動作制御が容易かつ正確となる。この正確な動作によって、吐出すべきタイミングで、正確に、接着剤を吐出させることができる。結果として、電子部品接着用ディスペンサーによる接着剤吐出を正確に行わせることができる。
【0149】
もちろん、ピエゾ素子以外が、圧力部材130に用いられてもよい。
【0150】
圧力部材130を制御する圧力部材制御部150を更に備えることも好適である。
図13にあるように、圧力部材制御部150が、更に備わっている。圧力部材制御部150は、圧力部材130による押出し圧力の付与を、所定タイミングに基づいて行わせる。
【0151】
例えば、圧力部材130が、ピエゾ素子を含む場合には、圧力部材制御部150は、所定タイミングで電圧を付与する。この電圧付与によりピエゾ素子が動作して、押出しピン120に押出し圧力を付与できる。
【0152】
圧力部材制御部150は、あるタイミング(期間)での圧力部材130による押出し圧力の付与と、別のタイミング(期間)での圧力部材130による押出し圧力の付与の解除と、を切り替える。ピエゾ素子を圧力部材130が含む場合には、電圧の付与の期間で圧力部材130による押出し圧力の付与を行わせ、電圧付与をしない期間で圧力部材130による押出し圧力の付与を行わせない。
【0153】
圧力部材130は、圧力付与のタイミングでは、押出しピン120を押し出す。押出しピン120が押し出されている期間においては、押出しピン120は、内部空間3に入り込む。入り込んだ押出しピン120は、接着剤に吐出圧力を付与できる。
【0154】
圧力部材130は、圧力付与以外のタイミングでは、押出しピン120を引き戻す。引き戻された押出しピン120の先端は、内部空間3から抜ける(完全に抜ける場合や部分的に抜ける場合との両方がある)。押出しピン120が引き戻されている期間においては、接着剤収容容器110の内部空間111から、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に接着剤が供給される。この繰り返しにより、接着剤の吐出サイクルが実現される。
【0155】
なお、接着剤の供給は、押出しピン120の押出しに伴っても行われる。
【0156】
このように電子部品接着用ディスペンサー100にノズル1が備わる場合でも、ノズル1の吐出用貫通孔4の内部表面は表面処理されている。この表面処理により、電子部品接着用ディスペンサー100での吐出精度と吐出能力が高まる。
【0157】
以上、実施の形態で説明された電子部品接着用ノズルは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0158】
1 電子部品接着用ノズル
2 本体部
3 内部空間
4 吐出用貫通孔
41 注入入口
42 吐出出口
100 電子部品接着用ディスペンサー
110 接着剤収容容器
111 内部空間
120 押出しピン
130 圧力部材
150 圧力部材制御部