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特開2022-89380圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法
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  • 特開-圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089380
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/10 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201740
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(72)【発明者】
【氏名】中山 栄二
(72)【発明者】
【氏名】福島 英彦
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AH36
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CM72
4F202CP01
4F202CP06
4F202CP10
4F202CQ01
(57)【要約】
【課題】成形不良の発生を抑制できる圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法を提供する。
【解決手段】圧力監視装置(100)は、キャビティ(201)にリリースフィルム(RF)を吸着させる排気孔(322)の吸着圧を検知する吸着圧力センサ(122)と、キャビティ(201)内のエアを排気する排気孔(311)の脱気圧を検知する脱気圧力センサ(111)と、吸着圧力センサ(122)及び脱気圧力センサ(111)に接続された監視部(110)と、を備え、監視部(110)は、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視し、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が増大する減圧期の後であって吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期において変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の金型及び他方の金型を有する樹脂封止金型からの排気圧を監視する、前記樹脂封止金型の圧力監視装置であって、
前記樹脂封止金型の一方の金型に設けられたキャビティにリリースフィルムを吸着させる排気孔の吸着圧を検知する吸着圧力センサと、
前記樹脂封止金型の他方の金型に設けられた前記キャビティを脱気する排気孔の脱気圧を検知する脱気圧力センサと、
前記吸着圧力センサ及び前記脱気圧力センサに接続された監視部と、
を備え、
前記監視部は、前記吸着圧及び前記脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視し、前記吸着圧及び前記脱気圧の単位期間当たりの変化量が増大する減圧期の後であって前記吸着圧及び前記脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期において前記変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断する、圧力監視装置。
【請求項2】
前記監視部は、前記吸着圧及び前記脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回以上連続して所定量を超えた場合にエラーと判断する、
請求項1に記載の圧力監視装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記吸着圧及び前記脱気圧の少なくとも一方の圧力値が所定値を超えた場合にエラーと判断する、
請求項1又は2に記載の圧力監視装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記吸着圧及び前記脱気圧の少なくとも一方の圧力値が所定値以下において、前記吸着圧及び前記脱気圧の少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視する、
請求項3に記載の圧力監視装置。
【請求項5】
前記樹脂封止金型の一方の金型は上型であり、前記樹脂封止金型の他方の金型は下型である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力監視装置。
【請求項6】
前記監視部は、前記キャビティの脱気中において前記吸着圧の単位期間当たりの変化量を監視する、
請求項5に記載の圧力監視装置。
【請求項7】
前記監視部は、前記キャビティの脱気後において前記脱気圧の単位期間当たりの変化量を監視する、
請求項5又は6に記載の圧力監視装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧力監視装置と、
前記樹脂封止金型と、
前記樹脂封止金型の一方の金型に接続された吸着ポンプと、
前記樹脂封止金型の他方の金型に接続された脱気ポンプと、
前記吸着ポンプ及び前記脱気ポンプを制御する制御部と、
を備える、樹脂封止装置。
【請求項9】
一方の金型及び他方の金型を有する樹脂封止金型からの排気圧を監視する、樹脂封止金型の圧力監視方法であって、
前記樹脂封止金型の一方の金型に設けられたキャビティにリリースフィルムを吸着させる排気孔の吸着圧を検知することと、
前記樹脂封止金型の他方の金型に設けられた前記キャビティ内のエアを排気する排気孔の脱気圧を検知することと、
前記吸着圧及び前記脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視し、前記吸着圧及び前記脱気圧の単位期間当たりの変化量が増大する減圧期の後であって前記吸着圧及び前記脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期において前記変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断することと、
を含む、圧力監視方法。
【請求項10】
前記エラーと判断することは、前記吸着圧及び前記脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回以上連続して所定量を超えた場合にエラーと判断する、
請求項9に記載の圧力監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止装置の樹脂封止金型には、リリースフィルムの吸着や内部空間の脱気のための排気孔が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内部空間を脱気するための排気孔及びワークを固定するための排気孔が設けられた下型と、リリースフィルムを固定するための排気孔が設けられた上型とを有する樹脂封止金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-51841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された樹脂封止装置の場合、リリースフィルムの脱落や脱気不良といった現象が発生すると成形不良が発生するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、成形不良の発生を抑制できる圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧力監視装置は、一方の金型及び他方の金型を有する樹脂封止金型からの排気圧を監視する、樹脂封止金型の圧力監視装置であって、樹脂封止金型の一方の金型に設けられたキャビティにリリースフィルムを吸着させる排気孔の吸着圧を検知する吸着圧力センサと、樹脂封止金型の他方の金型に設けられたキャビティを脱気する排気孔の脱気圧を検知する脱気圧力センサと、吸着圧力センサ及び脱気圧力センサに接続された監視部と、を備え、監視部は、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視し、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が増大する減圧期の後であって吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期において変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断する。
【0008】
この態様によれば、吸着圧又は脱気圧の微小な圧力変化を伴う不具合を検出することができる。例えば、リリースフィルムの一時的な金型からの離間を検出しリリースフィルムとワークとの接触を警告することで、ワークの素子特性が変動した不良品の流出を抑制できる。また、樹脂封止金型の劣化による真空漏れを検出しメンテナンスを促すことで、封止用の樹脂にエアが抱き込まれて発生するボイドを抑制できる。
【0009】
上記態様において、監視部は、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回以上連続して所定量を超えた場合にエラーと判断してもよい。
【0010】
上記態様において、監視部は、吸着圧及び脱気圧の少なくとも一方の圧力値が所定値を超えた場合にエラーと判断してもよい。
【0011】
上記態様において、監視部は、吸着圧及び脱気圧の少なくとも一方の圧力値が所定値以下において、吸着圧及び脱気圧の少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視してもよい。
【0012】
上記態様において、樹脂封止金型の一方の金型は上型であり、樹脂封止金型の他方の金型は下型であってもよい。
【0013】
上記態様において、監視部は、キャビティの脱気中において吸着圧の単位期間当たりの変化量を監視してもよい。
【0014】
上記態様において、監視部は、キャビティの脱気後において脱気圧の単位期間当たりの変化量を監視してもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る樹脂封止装置は、上記態様のいずれかの圧力監視装置と、樹脂封止金型と、樹脂封止金型の一方の金型に接続された吸着ポンプと、樹脂封止金型の他方の金型に接続された脱気ポンプと、吸着ポンプ及び脱気ポンプを制御する制御部と、を備えている。
【0016】
この態様によれば、吸着圧又は脱気圧の微小な圧力変化を伴う不具合を検出することができる。例えば、リリースフィルムの一時的な金型からの離間を検出しリリースフィルムとワークとの接触を警告することで、ワークの素子特性が変動した不良品の流出を抑制できる。また、樹脂封止金型の劣化による真空漏れを検出しメンテナンスを促すことで、封止用の樹脂にエアが抱き込まれて発生するボイドを抑制できる。
【0017】
本発明の一態様に係る圧力監視方法は、一方の金型及び他方の金型を有する樹脂封止金型からの排気圧を監視する、樹脂封止金型の圧力監視方法であって、樹脂封止金型の一方の金型に設けられたキャビティにリリースフィルムを吸着させる排気孔の吸着圧を検知することと、樹脂封止金型の他方の金型に設けられたキャビティ内のエアを排気する排気孔の脱気圧を検知することと、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視し、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が増大する減圧期の後であって吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期において変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断することと、を含む。
【0018】
この態様によれば、吸着圧又は脱気圧の微小な圧力変化を伴う不具合を検出することができる。例えば、リリースフィルムの一時的な金型からの離間を検出しリリースフィルムとワークとの接触を警告することで、ワークの素子特性が変動した不良品の流出を抑制できる。また、樹脂封止金型の劣化による真空漏れを検出しメンテナンスを促すことで、封止用の樹脂にエアが抱き込まれて発生するボイドを抑制できる。
【0019】
上記態様において、エラーと判断することは、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回以上連続して所定量を超えた場合にエラーと判断してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形不良の発生を抑制できる圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
図2】正常な吸着圧、脱気圧及びクランプ位置の変化を示すグラフである。
図3】リリースフィルムの剥離が生じた場合の吸着圧及び脱気圧の変化を示すグラフである。
図4】樹脂封止金型の真空漏れが生じた場合の吸着圧及び脱気圧の変化を示すグラフである。
図5】実施形態に係る樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0023】
<実施形態>
図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置1の構成について説明する。図1は、実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
【0024】
樹脂封止装置1は、ワークWを樹脂Pで樹脂封止(モールド成形)するために用いられる装置である。樹脂封止装置1は、樹脂封止金型200と、真空ポンプ411,412,421,422と、圧力監視装置100とを備えている。樹脂封止装置1は、樹脂Pを押し出す圧力によって加圧するトランスファ方式の成形機であるが、これに限定されるものではない。樹脂封止装置はトランスファ方式の成形機に限定されるものではなく、樹脂を樹脂封止金型で押圧する圧力によって加圧するコンプレッション方式の成形機であってもよい。
【0025】
ワークWは、基板と素子を有し、素子は基板上に固定されている。例えば、素子は、基板にワイヤボンディング実装されている。一例として、基板は樹脂基板、素子は半導体チップであるが、基板及び素子はこれに限定されるものではない。例えば、基板は、ガラス基板でもよく、インタポーザ基板、リードフレーム、粘着シート付きキャリアプレート、半導体ウェハなどでもよい。素子は、MEMSデバイス、電子デバイスなどでもよい。素子は基板にフリップチップ実装されてもよく、着脱可能に接着されてもよい。
【0026】
樹脂封止金型200は、下型210と上型220とを備えている。上型220は一方の金型に相当し、下型210は他方の金型に相当する。樹脂封止金型200は、上型220にキャビティ201を有する上型キャビティ構造である。型締めされた下型210と上型220との間には、キャビティ201によって内部空間が形成される。樹脂封止金型200は、樹脂封止金型200の内部空間をシールするシールリング203(例えばOリング)を備えている。なお、図1には、下型210のうちチェイス構造(下型チェイス)が図示されているが、下型210は、図示した下型チェイスを収容する、図示しないベース構造(下型ベース)を備えてもよい。同様に、図1には、上型220のうちチェイス構造(上型チェイス)が図示されているが、上型220は、図示した上型チェイスを収容する、図示しないベース構造(上型ベース)を備えてもよい。樹脂封止金型200は、チェイス構造を交換可能なチェイスチェンジ構造であってもよい。図示しないが、樹脂封止装置1は、樹脂封止金型200の内部温度(成形温度)を調節する温度調節部(例えばヒータ)を備えている。ヒータは、例えば、ベース構造に設けられ、チェイス構造全体を加熱してもよい。
【0027】
下型210には、排気孔311,312が設けられている。排気孔311はキャビティ201(型締めされた樹脂封止金型200の内部空間)を脱気するための負圧(脱気圧)が印加され、排気孔312はワークWを下型210に固定するための負圧(ワーク固定圧)が印加される。また、下型210には、樹脂Pを加熱し軟化させるポットと、樹脂Pを押し出すプランジャJとが備えられている。
【0028】
上型220は、チェイスブロック221と、キャビティ駒223と、キャビティ駒223に摺接するクランパ225と、クランパ225の外側に間隔を空けて設けられたチャンバブロック227とを備えている。なお、これらの部材を合わせて上型チェイスという場合もある。キャビティ駒223はチェイスブロック221に固定されている。クランパ225は、キャビティ駒223よりも下型210に向かって突出し、キャビティ駒223とともにキャビティ201を構成している。型締めしたとき、クランパ225と下型210との間に、ワークWの外縁部が挟まれる。型締めしたとき、チャンバブロック227と下型210との間に、シールリング203が挟まれる。
【0029】
上型220には、排気孔321,322が設けられている。排気孔321は上型220にリリースフィルムRFを吸着させる負圧(フィルム吸着圧)が印加され、排気孔322はキャビティ201の壁面に沿ってリリースフィルムRFを吸着させる負圧(フィルムキャビティ吸着圧)が印加される。排気孔321はクランパ225に設けられ、排気孔322はキャビティ駒223とクランパ225との間に設けられている。
【0030】
樹脂封止装置1には、複数の真空ポンプが設けられて、ワークWの吸着、キャビティ201の減圧、リリースフィルムRFの吸着が行われる。真空ポンプ411は、下型210の排気孔311に接続され、脱気圧を印加する脱気ポンプである。真空ポンプ412は、下型210の排気孔312に接続され、ワーク固定圧を印加する固定ポンプである。真空ポンプ421は、上型220の排気孔321に接続され、フィルム吸着圧を印加する吸着ポンプである。真空ポンプ422は、上型220の排気孔322に接続され、フィルムキャビティ吸着圧を印加する吸着ポンプである。以下、真空ポンプ421,422をまとめて「吸着ポンプ」とし、フィルム吸着圧及びフィルムキャビティ吸着圧をまとめて「吸着圧」とする。
【0031】
なお、真空ポンプ411,412,421,422の構成は上記に限定されるものではない。例えば、排気孔311,312が共通の真空ポンプに接続されてもよい。すなわち、脱気圧とワーク固定圧とが同等であってもよい。同様に、排気孔321,322が共通の真空ポンプに接続され、フィルム吸着圧とフィルムキャビティ吸着圧とが同等であってもよい。
【0032】
圧力監視装置100は、圧力計111,112,121,122と、監視部110と、制御部130とを備えている。
【0033】
圧力計111は、真空ポンプ411に接続され、脱気圧を検知する脱気圧力センサである。圧力計112は、真空ポンプ412に接続され、ワーク固定圧を検知する吸着圧力センサである。圧力計121は、真空ポンプ421に接続され、フィルム吸着圧を検知する吸着圧力センサである。圧力計122は、真空ポンプ422に接続され、フィルムキャビティ吸着圧を検知する吸着圧力センサである。
【0034】
監視部110は、圧力計111,112,121,122に接続され、脱気圧、ワーク固定圧、フィルム吸着圧及びフィルムキャビティ吸着圧の圧力値、並びにこれらの圧力の単位期間当たりの変化量を監視する。当該変化量の監視は、真空ポンプ411,412,421,422の始動直後の当該変化量が増大する減圧期の後であって、当該変化量が0に漸近した均衡期に行われる。監視部110は、当該変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断し、エラー処理を行う。監視部110は、例えば、不良品の発生を警告する、樹脂封止装置1の運転を停止する、樹脂封止金型200のメンテナンスを要求する、などのエラー処理を図示しない表示部に表示することができる。
【0035】
制御部130は、真空ポンプ411,412,421,422の運転を制御する。また、制御部130は、クランプ位置(下型210の上型220に対する相対的な位置)を制御し、樹脂封止金型200の型締め状態と型開き状態とを切り替える。制御部130は、監視部110に接続され、監視部110から送られる監視データに基づいて、真空ポンプ411,412,421,422の運転を変更する。例えば、制御部130は、クランプ位置に連動した真空ポンプ411,412,421,422の始動や停止等を含む通常時の動作制御や、エラー処理に基づいた真空ポンプ411,412,421,422の出力の調整や停止等を含む非常時の動作制御を行う。なお、通常時の動作制御を行う制御部と、非常時の動作制御を行う制御部とは、別々に設けられてもよい。
【0036】
次に、図2を参照しつつ、監視部110及び制御部130の動作の一例について説明する。図2は、正常な吸着圧、脱気圧及びクランプ位置の変化を示すグラフである。グラフの横軸は時間を示し、単位はsec(秒)である。グラフの左縦軸は吸着圧及び脱気圧を示し、単位はkPaである。グラフの右縦軸はクランプ位置を示し、単位はmmである。ここで、フィルム吸着圧とフィルムキャビティ吸着圧は同時に同等の負圧が印加されているので、まとめて吸着圧としている。クランプ位置は、型開きした状態での下型210の位置を基準(0mm)とし、上型220に対して下型210が接近したとき増加する。例えば、クランプ位置170mmのとき、型締めした状態となる。
【0037】
樹脂封止を行うときには、まず、制御部130は真空ポンプ(吸着ポンプ)421,422を始動する。真空ポンプ421,422の始動直後の減圧期は、吸着圧の変化量が負に増大し、大気圧と略同等であった吸着圧が急激に低下する。その後の均衡期では、真空ポンプ421,422の性能限界に到達し、吸着圧が0に漸近する。吸着圧が充分に低下したタイミング、例えば吸着圧が所定値(閾値)を下回った後、制御部130は、クランプ位置を上昇させて型締めを開始する。
【0038】
クランプ位置の上昇が終了し樹脂封止金型200の型締めが完了した後、制御部130は、真空ポンプ(脱気ポンプ)411を始動し、脱気を開始する。真空ポンプ411の始動直後の減圧期は、脱気圧の変化量が負に増大し、大気圧と略同等であった脱気圧が急激に低下する。その後の均衡期S1では、真空ポンプ411の性能限界に到達し、脱気圧が0に漸近する。脱気圧の下限は、排気圧の下限を下回る。なお、ここでいう真空ポンプの性能限界とは所定の減圧・吸着力を想定して動作させる場合のマージンを持たせた最大の出力を指し、ポンプそのものの性能の限界を指すものではない。
【0039】
脱気圧の均衡期S1のうち、樹脂Pが樹脂封止金型200の内部で加熱加圧されて硬化するまでの前期S2において、制御部130は、真空ポンプ(吸着ポンプ)421,422と真空ポンプ(脱気ポンプ)411を稼働させ続ける。脱気圧の均衡期S1のうち、樹脂Pが硬化しワークWが樹脂封止された後の後期S3において、制御部130は、真空ポンプ421,422と真空ポンプ411とを停止させる。この後期S3において、制御部130はクランプ位置を下降させておらず、吸着圧及び脱気圧は維持される。つまり、不具合が生じていない場合、均衡期S1における脱気圧の単位期間当たりの変化量は、前期S2から後期S3までを通して略0である。
【0040】
監視部110は、均衡期S1において、吸着圧及び脱気圧の圧力値が閾値を超えた場合にエラーと判断する。監視部110は、均衡期S1において、吸着圧及び脱気圧の圧力値が監視圧力を下回っているときに、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量を監視し、当該変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断する。監視圧力は例えば閾値であるが、監視圧力は閾値よりも低くてもよい。したがって、監視部110は、閾値よりも低い圧力範囲での異常であっても、変化量として検出する。
【0041】
なお、監視部110が吸着圧及び脱気圧の変化量の監視を開始する均衡期S1の始期は、例えば脱気圧が閾値を下回ったタイミングであるが、これに限定されるものではない。例えば、均衡期S1の始期は、脱気圧が吸着圧を下回ったタイミングでもよい。
【0042】
次に、図3及び図4を参照しつつ、監視部110がエラーと判断する吸着圧及び脱気圧の変化について説明する。図3は、リリースフィルムの剥離が生じた場合の吸着圧及び脱気圧の変化を示すグラフである。図4は、樹脂封止金型の真空漏れが生じた場合の吸着圧及び脱気圧の変化を示すグラフである。
【0043】
図3に示す前期S2において、リリースフィルムRFには、吸着圧と脱気圧との両方が印加されている。吸着圧に起因する力が脱気圧に起因する力よりも強いため、リリースフィルムRFは上型220に吸着されている。これに対し、局所的かつ一時的に脱気圧が吸着圧よりも優勢になった場合、リリースフィルムRFの一部が上型220から一時的に離間する。このとき、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量は、略同じタイミングで正に増加する。その後、一時的に離間したリリースフィルムRFが再び上型220に吸着される過程で、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量は、負に増加した後、0に漸近する。このように、リリースフィルムRFの異常が、閾値を超えるほど吸着圧及び脱気圧を変化させないものであったとしても、監視部110は、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量として検出できる。
【0044】
図4に示す後期S3において、脱気ポンプを停止させた後、型開きしていないのに脱気圧が時間とともに上昇している。これは、樹脂封止金型200における構成における経時的な変化が生じたときなど気密性が低下していることを示している。例えばシールリング203やその他の金型内に設けた気密保持用のパッキン等の劣化が発生し得る。このような樹脂封止金型200の変化は徐々に進行するが、監視部110は、当該異常を脱気圧の単位期間当たりの変化量として、早期に検出できる。したがって、監視部110は、樹脂封止金型200の劣化部分から侵入したエアが樹脂に抱き込まれてボイドなどを生じさせる前に、樹脂封止金型200のメンテナンスが必要であることを判断し、警告を発することができる。
【0045】
次に、図5を参照しつつ、樹脂封止金型200の圧力監視方法を含む樹脂封止品の製造方法の一例について説明する。図5は、実施形態に係る樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【0046】
まず、吸着ポンプを始動させ(S11)、吸着圧を検知する(S12)。次に、脱気ポンプを始動させ(S13)、脱気圧を検知する(S14)。
【0047】
次に、樹脂Pの硬化時間が経過するまで、すなわち均衡期S1の前期S2における吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量を監視する。具体的には、まず、樹脂硬化時間が経過したか否かを判定する(S21)。未経過の場合、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の一期間の変化量が所定量を超えたか否かを判断する(S22)。所定量を超えない場合は、樹脂Pの樹脂硬化時間が経過したか否かを判定する工程S21に戻る。一期間の変化量が所定量を超えた場合、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の次期間の変化量が所定量を超えたか否かを判定する(S23)。所定量を超えない場合は、樹脂硬化時間が経過したか否かを判定する工程S21に戻る。次期間の変化量が所定量を超えた場合、すなわち、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回連続して所定量を超えた場合、エラーと判断する(S24)。
【0048】
工程S21で樹脂硬化時間が経過したと判定した場合、脱気ポンプを停止させる(S31)。次に、型開き時間が経過したか否かを判定する(S32)。未経過の場合、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の一期間の変化量が所定量を超えたか否かを判断する(S33)。所定量を超えない場合は、型開き時間が経過したか否かを判定する工程S32に戻る。一期間の変化量が所定量を超えた場合、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の次期間の変化量が所定量を超えたか否かを判定する(S34)。所定量を超えない場合は、型開き時間が経過したか否かを判定する工程S32に戻る。次期間の変化量が所定量を超えた場合、すなわち、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量が2回連続して所定量を超えた場合、エラーと判断する(S35)。
【0049】
工程S24及び工程S35でエラーと判断した後のエラー処理は特に限定されるものではない。工程S24の後のエラー処理では、例えば、樹脂封止装置1の運転を停止させてもよく、不良品の発生を警告するログを残して樹脂封止を続行してもよい。工程S35の後のエラー処理では、例えば、樹脂封止金型200のメンテナンスを要求してもよく、樹脂封止金型200の劣化レベルを通知してもよい。
【0050】
上記実施形態で説明した構成によれば、吸着圧及び脱気圧を監視する監視部110が、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が0に漸近した均衡期S1において当該変化量が所定量を超えた場合にエラーと判断する。監視部110は、吸着圧及び脱気圧のうち少なくとも一方の単位期間当たりの変化量を監視しており、吸着圧及び脱気圧の両方の単位期間当たりの変化量を監視してもよい。これによれば、吸着圧又は脱気圧の微小な圧力変化を伴う不具合を検出することができる。例えば、リリースフィルムRFの一時的な樹脂封止金型200からの離間を検出しリリースフィルムRFとワークWとの接触を警告することで、ワークWの素子特性が変動した不良品の流出を抑制できる。また、樹脂封止金型200の劣化による真空漏れを検出しメンテナンスを促すことで、封止用の樹脂Pにエアが抱き込まれて発生するボイドを抑制できる。
【0051】
監視部110は、吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量が2回連続して所定量を超えた場合にエラーと判断する。特に、減圧期の変化量を負とした場合、正の変化量が2回以上連続して所定量を超えた場合にエラーと判断する。これによれば、誤判断を低減し、監視精度が向上する。
【0052】
監視部110は、吸着圧及び脱気圧の少なくとも一方に閾値を設定し、閾値を超えた場合にエラーと判断してもよい。また、監視部110による吸着圧及び脱気圧の単位期間当たりの変化量の監視は、吸着圧及び脱気圧が監視圧力以下である場合に実施するものとしてもよく、当該監視圧力は吸着圧又は脱気圧の閾値であってもよい。これによれば、監視部110は、閾値以下の微細な圧力変化であっても異常を検出できる。
【0053】
監視部110がキャビティ201の脱気中における吸着圧の単位期間当たりの変化量を監視することで、リリースフィルムRFの局所的かつ一時的な樹脂封止金型200からの離間を検出できる。
【0054】
監視部110がキャビティ201の脱気後における脱気圧の単位期間当たりの変化量を監視することで、樹脂封止金型200の気密性の劣化について判断することができる。
【0055】
以上説明したように、成形不良の発生を抑制できる圧力監視装置、樹脂封止装置、及び圧力監視方法が提供できる。
【0056】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…樹脂封止装置、100…圧力監視装置、110…監視部、111,112,121,122…圧力計、130…制御部、200…樹脂封止金型、210…下型、220…上型、311,312,321,322…排気孔、411,412,421,422…真空ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5