(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089410
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
F23G5/00 109
F23G5/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201783
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】520478910
【氏名又は名称】施 天翔
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】施 天翔
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261AA06
3K261BA06
3K261BA17
3K261BA18
3K261BA19
3K261BA21
(57)【要約】
【課題】過酷な炉内環境においても廃棄物の焼却が適切に実施されるように、火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法を改良する。
【解決手段】火格子燃焼システム100は、供給ホッパ1と、供給火格子2と、火格子装置3と、炉4と、二次空気噴射装置5と、補助燃焼装置6と、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7と、鉄鋼支持構造8と、制御装置20と、を備える。供給ホッパ1は、炉4に供給すべき固形廃棄物を貯留する。供給火格子2は、供給ホッパ1の下方に設けられている。供給火格子2を前後往復駆動する駆動装置が設けられる。火格子装置3は、複数の火格子30、31を備える。火格子装置3は、供給火格子2から固形廃棄物を受けとる。炉4は、火格子装置3を収容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉と、
前記炉に設けられた火格子装置と、
を備え、
前記火格子装置は、
複数段の火格子グループを構築するように階段状に重ねられた複数の火格子を備え、
前記複数の火格子は、列方向に一体連続な形状の火格子板を有する列一体構造火格子を含む火格子燃焼システム。
【請求項2】
前記複数の火格子は、それぞれが複数の火格子を含む複数段の火格子グループを構築するように階段状に重ねられ、
前記複数段の火格子グループそれぞれの下方に設けられた複数の風室と、
前記複数の風室それぞれと連通し、前記複数の風室それぞれへの送風量を互いに相違させるように前記送風量を調整可能に構築された送風装置と、
をさらに備える請求項1に記載の火格子燃焼システム。
【請求項3】
前記複数の火格子は、前記列一体構造火格子と重ねられそれぞれが往復変位する複数の滑動火格子を含み、
前記火格子装置は、
前端部および後端部と、
前記複数の滑動火格子それぞれを前後往復駆動する複数の液圧シリンダと、
前記複数の液圧シリンダと接続する液圧タンクと、
を備え、
前記液圧タンクを前記火格子装置における前記前端部の側のみに配置するように構築された請求項1または2に記載の火格子燃焼システム。
【請求項4】
前記列一体構造火格子は、少なくとも水冷式で冷却される固定火格子として設置され、
前記火格子装置は、前記固定火格子に重ねられ前後往復変位する滑動式に構築され且つ空気と冷却水とのうち空気のみで冷却される純粋空冷式滑動火格子を、さらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項5】
前記純粋空冷式滑動火格子が前後往復変位するときのストローク距離は、200mm~450mmである請求項4に記載の火格子燃焼システム。
【請求項6】
前記列一体構造火格子は、内部に冷却水路を持ち水冷と空冷とで二重冷却される空気・水冷混合二重冷却式の火格子として構築され、
前記火格子装置は、複数の火格子グループを備え、
前記複数の火格子グループそれぞれは、階段状に並べられた複数の火格子モジュールを含み、
前記複数の火格子モジュールそれぞれは、
前記空気・水冷混合二重冷却式である前記列一体構造火格子と、
前記列一体構造火格子に重ねられ水冷と空冷とのうち空気のみで冷却される純粋空冷火格子と、
を含む請求項1に記載の火格子燃焼システム。
【請求項7】
前記複数の火格子モジュールそれぞれにおいて、前記列一体構造火格子は前記純粋空冷火格子の直上に重ねられた請求項6に記載の火格子燃焼システム。
【請求項8】
前記複数の火格子は互いに直接重ねられており、
前記複数の火格子における材料転がり案内壁の高さは、400mm~800mmである請求項1~7のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項9】
前記複数の火格子それぞれが水平面に対してなす角度が、18~29度である請求項1~8のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項10】
前記複数の火格子それぞれの刃先角は、0~5度である請求項1~9のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項11】
前記列一体構造火格子は、内部に冷却水路を持ち水冷と空冷とで二重冷却される空気・水冷混合二重冷却式の火格子として構築され、
前記列一体構造火格子の高さ寸法が100mm~150mmである請求項1、9および10のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項12】
前記複数の火格子は、前記列一体構造火格子に重ねられ水冷と空冷とのうち空気のみで冷却される純粋空冷火格子を、さらに含み、
前記純粋空冷火格子の高さ寸法が120mm~200mmである請求項1、9~11のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項13】
前記火格子装置は、前記複数の火格子のうち一部の火格子で構成され、前記火格子装置の最も前端部に近い初段火格子グループを含み、
前記初段火格子グループの下方に設けられた風室と、
前記風室に連通し、空気と循環煙道ガスとの混合ガスを前記風室に供給するノズルと、
をさらに備える請求項1~12のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項14】
前記火格子装置は、前記複数の火格子のうち一部の火格子で構成され、前記火格子装置の最も前端部に近い初段火格子グループを含み、
前記初段火格子グループの上方に、蒸気を噴射する蒸気噴射口が設置された請求項1~12のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項15】
前記火格子装置は、前記複数の火格子のうち一部の火格子で構成され、前記火格子装置の最も前端部に近い初段火格子グループを含み、
前記初段火格子グループの上方に、循環煙道ガス噴射口が設置された請求項1~12のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項16】
前記炉の尾端部に設けられた補助燃焼装置をさらに備える請求項1~15のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項17】
前記炉の側壁に、断熱路と空冷炉と水冷炉との少なくとも一つが設けられ、
前記炉で処理される固形廃棄物の発熱量範囲が1000kcal/kg~1800kcal/kgである場合には断熱炉が設けられ、
前記炉で処理される固形廃棄物の発熱量範囲が1801kcal/kg~2500kcal/kgである場合には空冷炉が設けられ、
前記炉で処理される固形廃棄物の発熱量範囲が2501kcal/kg~7000kcal/kgである場合には水冷炉が設けられる、
請求項1~15のいずれか1項に記載の火格子燃焼システム。
【請求項18】
炉の中で、列方向に一体連続な形状の火格子板を有する列一体構造固定火格子を、複数個、互いに上下間隔をおきつつ階段状に重ねて配置した状態で、各々の前記上下間隔に配置した滑動火格子を前後往復変位させることで、前記列一体構造固定火格子の上の固形廃棄物を撹拌しながら燃焼させる燃焼ステップと、
前記燃焼ステップで前記固形廃棄物を燃焼させるときに、前記列一体構造固定火格子を水冷式で冷却しつつ、前記列一体構造固定火格子および前記滑動火格子の裏面の側から空気を送り込むことで前記列一体構造固定火格子および前記滑動火格子を空冷式で冷却する冷却ステップと、
を備える火格子燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-078534号公報には、耐火物被覆火格子を備える廃棄物焼却システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人々の生活水準の向上と文明の発展の加速に伴い、廃棄物の分類はますます詳細になり、可燃廃棄物の発熱量も増加し続けている。可燃廃棄物の変化に起因して、焼却炉内の環境もより過酷になりやすい。過酷な炉内環境においても廃棄物の焼却を適切に実施できるように、火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
火格子燃焼システムの一態様は、炉と、前記炉に設けられた火格子装置と、を備える。本開示により火格子燃焼システムについてのいくつかの改良が提供され、その中には例えば下記に列挙される改良構造が含まれる。各々の改良構造は互いに独立して別々に利用されてもよく、互いに組み合わせて利用されてもよい。
【0006】
火格子燃焼システムの上記一態様における改良構造の一つとして、前記火格子装置は、複数段の火格子グループを構築するように階段状に重ねられた複数の火格子を備え、前記複数の火格子は、列方向に一体連続な形状の火格子板を有する列一体構造火格子を含んでもよい。このような列一体構造によれば、火格子が列方向の途中に隙間を持たない一体連続な構造を持つので、火格子の下方に灰、ゴミ残留物、あるいは水分が漏れることを抑制できる利点がある。
【0007】
火格子燃焼システムの上記一態様における改良構造の他の一つとして、前記複数の火格子は、それぞれが複数の火格子を含む複数段の火格子グループを構築するように階段状に重ねられてもよい。上記一態様は、前記複数段の火格子グループそれぞれの下方に設けられた複数の風室と、前記複数の風室それぞれと連通し、前記複数の風室それぞれへの送風量を互いに相違させるように前記送風量を調整可能に構築された送風装置と、をさらに備えてもよい。これにより各風室への送風量を調節できるので、燃焼温度を高い自由度で調節できる利点がある。
【0008】
火格子燃焼システムの上記一態様における改良構造の更に他の一つとして、前記複数の火格子は、前記列一体構造火格子と重ねられそれぞれが往復変位する複数の滑動火格子を含み、前記火格子装置は、前端部および後端部と、前記複数の滑動火格子それぞれを前後往復駆動する複数の液圧シリンダと、前記複数の液圧シリンダと接続する液圧タンクと、を備え、前記液圧タンクを前記火格子装置における前記前端部の側のみに配置するように構築されてもよい。これにより油圧タンクをより常温に近い側へ統一的に配置できるので、液漏れのリスクを抑制できる利点がある。
【0009】
火格子燃焼システムの上記一態様における改良構造の更に他の一つとして、前記火格子装置は、少なくとも水冷式で冷却される固定火格子と、前記固定火格子に重ねられ前後往復変位する滑動式に構築され且つ空気と冷却水とのうち空気のみで冷却される純粋空冷式滑動火格子と、を備えてもよい。水冷式の火格子に固定火格子の役割を担わせることで、水冷式火格子を滑動させなくともよいので、冷却水漏れのリスクを抑制できる利点がある。
【0010】
火格子燃焼方法の一態様は、燃焼ステップと、冷却ステップと、を備える。本開示により火格子燃焼方法についてのいくつかの改良が提供され、その中には例えば下記に列挙される改良された方法が含まれる。
【0011】
火格子燃焼方法の上記一態様における改良された方法の一つとして、燃焼ステップは、炉の中で、列方向に一体連続な形状の火格子板を有する列一体構造固定火格子を、複数個、互いに上下間隔をおきつつ階段状に重ねて配置した状態で、各々の前記上下間隔に配置した滑動火格子を前後往復変位させることで、前記列一体構造固定火格子の上の固形廃棄物を撹拌しながら燃焼させるステップであってもよい。さらに、冷却ステップは、前記燃焼ステップで前記固形廃棄物を燃焼させるときに、前記列一体構造固定火格子を水冷式で冷却しつつ、前記列一体構造固定火格子および前記滑動火格子の裏面の側から空気を送り込むことで前記列一体構造固定火格子および前記滑動火格子を空冷式で冷却するステップであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
過酷な炉内環境でも適切に作動できる火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態の火格子燃焼システムのシステム構成図である。
【
図2】実施の形態の火格子燃焼システムを説明するための模式的なブロック構成図である。
【
図3】実施の形態の火格子装置の構成を表す断面図である。
【
図4】実施の形態の火格子装置をその前方側から見た模式的な前面図である。
【
図5】実施の形態の火格子装置の火格子周辺部分を拡大した断面図である。
【
図6】実施の形態の火格子装置の火格子周辺を表した斜視図である。
【
図7】実施の形態の変形例の火格子燃焼システムのシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態では、いくつかの図にXYZ直交座標軸が図示される。このXYZ方向は、実施の形態を説明するために便宜上定義されている。X方向は、火格子燃焼システム100の長さ方向を表している。X方向は、火格子燃焼システム100において火格子装置3が固形廃棄物を送り出す方向である。Y方向は、火格子燃焼システム100の幅方向を表しており、火格子装置3および炉4の幅方向にも相当している。Z方向は、便宜上、火格子燃焼システム100の高さ方向を表すものとする。いくつかの図で図示されるように、実施の形態では、便宜上、X軸における正の向きを、火格子燃焼システム100における後方側(rear side)とする。実施の形態では、便宜上、X軸における負の向きを、火格子燃焼システム100における前方側(front side)とする。
【0015】
図1は、実施の形態の火格子燃焼システム100のシステム構成図である。
図1に示すように、火格子燃焼システム100は、供給ホッパ1と、供給火格子2と、火格子装置3と、炉4と、二次空気噴射装置5と、補助燃焼装置6と、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7と、鉄鋼支持構造8と、制御装置20と、を備える。
【0016】
供給ホッパ1は、炉4に供給すべき固形廃棄物を貯留する。供給火格子2は、供給ホッパ1の下方に設けられている。供給火格子2を前後往復駆動する駆動装置(図示せず)が設けられる。火格子装置3は、複数の火格子30、31を備える。火格子装置3は、供給火格子2から固形廃棄物を受けとる。炉4は、火格子装置3を収容する。二次空気噴射装置5は、炉4の上方の喉に設けられた複数の二次空気ノズルを含む。
【0017】
補助燃焼装置6は、炉4の最後尾の尾端部4cに設けられている。一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7は、火格子装置3の下方に設けられている。鉄鋼支持構造8は、供給火格子2を支持する。制御装置20は、火格子燃焼システム100が含む各々構成要素の作動を制御する。
【0018】
より具体的には、実施の形態では、一例として、火格子燃焼システム100の各構成が下記のように構築されている。供給ホッパ1は、耐摩耗性鋼と炭素鋼とで構成された漏斗である。漏斗の下側は、材料の架橋と塞ぎを防ぐためのフレア形に構築されている。
【0019】
後ほど
図3~
図5に示すように、実施の形態の火格子30、31は、一例として空気・水混合冷却式の固定火格子30と、純粋空冷式の滑動火格子31とを含む。材料を押す滑動火格子31は、一例としてロングストロークローラータイプの材料駆動装置である。
【0020】
火格子装置3の下部には、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7が設けられる。一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7は、「一次空気吸気装置」と「灰およびスラグの収集装置(ホッパ)」とを備える。一次空気室の灰スラグ収集ホッパには、日常のメンテナンスサポートプラットフォームが提供される。灰スラグ収集ホッパには、グリル装置が設けられる。グリル装置は、粗いゴミを阻止するための装置である。
【0021】
なお、図中に明記しないが、実施の形態の火格子燃焼システム100には、スラグ排出ホッパも設けられる。スラグ排出ホッパには、水冷却装置が装備されている。水冷却装置は、未燃物がスラグ排出装置に入ることで局所的に高温になるのを防ぐための装置である。スラグ排出ホッパには、水封式スラグ排出装置が設けられている。水封式スラグ排出装置は、消火あるいは炉4内の空気漏れを防止するための装置である。
【0022】
二次空気噴射装置5の二次空気ノズルは、炉4の喉部における前壁4aと後壁4bとにそれぞれ設置されている。二次空気噴射装置5は、二次空気を供給する複数の二次空気ノズルを含む。二次空気ノズルは、いくつかの分岐管を介して二次空気を分割噴射するように構築されている。
【0023】
補助燃焼装置6には、必要に応じてオイルバーナーまたはガスバーナーが装備されてもよい。
【0024】
図2は、実施の形態の火格子燃焼システム100を説明するための模式的なブロック構成図である。実施の形態の火格子燃焼システム100は、空気と水との混合による二重冷却式のシステムである。供給ホッパ1および供給火格子2を介して、炉4内における火格子装置3に固形廃棄物が供給される。火格子装置3には、一次空気71が供給される。これとともに、火格子装置3からは、「漏れた灰とスラグ72」および「燃焼後のスラグ73」が排出される。
【0025】
一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7は、一次空気71を送り込むための一次空気室を備える。この一次空気室には、灰とスラグとを収集するホッパ機能も設けられる。固形廃棄物の燃焼と同時に、主燃焼空気である一次空気71が一次空気室を介して火格子装置3へと均一に送り込まれる。一次空気71と燃焼材料は互いに十分に混合させられる。実施の形態によれば、一次および二次空気供給および炉4内の特別な設計により、固形廃棄物の完全かつ効果的な燃焼が実現される。固形廃棄物の減量化、安定化、および無害化を実現し、外部に熱エネルギーを提供することもできる。
【0026】
図3~
図6は、実施の形態の火格子装置3の詳細構造を説明するための図である。
図3は、実施の形態の火格子装置3の構成を表す断面図である。
【0027】
図3に示すように、火格子装置3は、固定火格子30と滑動火格子31と駆動装置40とを備える。実施の形態では、固定火格子30が空気・水混合二重冷却式の火格子であり、滑動火格子31が純粋空冷式の火格子である。
【0028】
このような使い分けをしつつ水冷式と空冷式とを混用することで、水漏れ抑制の利点がある。すなわち、もし仮に水冷式火格子が滑動火格子として用いられるとする。この場合、水冷式火格子の滑動を実現するために、種々の駆動構造とともに、水冷式火格子の各部に冷却水を導く連接パーツが設けられる。連接パーツを設ける各部とは、例えば冷却水供給管路の進水口と滑動火格子に設けた冷却水路の進水口との間などである。滑動火格子が繰り返し前後往復変位させられることで、滑動火格子と連結パーツとの連結部などに経時的負担がかかるなどして、冷却水の漏れが起きやすい欠点がある。この点、実施の形態では、空気・水混合二重冷却式である固定火格子30は定位置に固定されており、その一方で純粋空冷式である滑動火格子31は水冷機構を含まない。したがって、水冷火格子が往復滑動することに起因する水漏れの心配を減らすことができる。
【0029】
図4は火格子装置3をその前方側から見た模式的な前面図である。
図3および
図4からわかるように、駆動装置40は、火格子装置3の前端部3fのみに設けられている。
【0030】
図3および
図4のように、駆動装置40を火格子装置3の前端部3fのみに集中設置することで、次の利点がある。液圧式の駆動装置40は、液圧タンク(より具体的には、実施の形態では油圧タンク)を含んでいる。液圧タンクを常温エリアに設置すると、高温の影響を受けない利点や、水漏れのリスクを抑制できる利点もある。設置場所が統一されることで、液圧タンクの点検および修理をしやすい利点もある。
【0031】
もし仮に、液圧式の駆動装置40が火格子装置3の側面部あるいは下面部に設置されたとする。そうすると、駆動装置40の液圧タンクが高温燃焼エリアの近くに設置されてしまう。高温の影響で水漏れや部品の故障などの原因になる。また、もし仮に、駆動装置40が火格子装置3の複数の箇所に分散配置されたとする。そうすると、設置場所が統一されてないため、点検および修理が難しくなる欠点がある。この点、実施の形態によれば、駆動装置40を火格子装置3の前端部3fのみに集中設置することで、これらの問題を抑制することができる。
【0032】
駆動装置40は、複数の油圧シリンダ41を前後方向へ往復駆動する。駆動装置40は、滑動火格子31を火格子装置3の前後方向に往復運動させる。この往復運動により、廃棄物を完全に回転し、均一に撹拌混合させる。各レベルの火格子30、31には、落差が設けられている。この落差によって、火格子装置3の前端部3fから後端部3rのスラグ収集ホッパへ至るまで、固形廃棄物を均一かつ徐々に燃焼させることができる。
【0033】
油圧シリンダ41は、高温および耐腐食性の材料で作られている。駆動装置40は、一例として油圧駆動式である。ただし、これに限定されず、変形例として駆動装置40が例えば電動駆動式であってもよく、油圧シリンダ41が電動シリンダであってもよい。
【0034】
一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7は、火格子装置3の下方から一次空気71を送り込む。
図3には、一次空気71が矢印で模式的に図示されている。一次空気71は、火格子装置3の下方つまり火格子30、31の裏面側から供給される。
【0035】
図5は、実施の形態の火格子装置3の火格子周辺部分を拡大した断面図である。
図5は
図3の破線枠Pで示す部位を拡大したものである。
図6は、実施の形態の火格子装置3の火格子周辺を表した斜視図である。
図5および
図6に示すように、固定火格子30と滑動火格子31は、間隔をおきつつ交互に配置される。
【0036】
図6に示すように、実施の形態の固定火格子30は、一例として、一体化設計がされた火格子板30aを備えている。一体化設計がされることで、火格子板30aは一列(枚)の連続した部材として構築されている。火格子板30aは、長さ寸法Lと幅寸法Wとを備える。火格子板30aは、「列方向の途中に切れ目、途切れ、あるいは隙間のない連続した一枚板構造(すなわち「列一体構造」)」を備える。「列方向」とは、
図6の紙面奥行き方向であり、火格子板30aの長さ寸法Lに沿う方向である。実施の形態では、火格子板30aが、空気・水混合二重冷却方式で冷却される。つまり、火格子板30aは、その面方向にのびる冷却水路を備えている。
【0037】
一体化設計の火格子板30aは、列方向に切れ目(言い換えれば、途切れ、あるいは隙間)を持たない。このため、火格子板30aの裏側へと灰、ゴミ残留物あるいは水などが漏れることを抑制できる利点がある。
【0038】
空気・水混合二重冷却式の固定火格子30は、その溶接品質に厳しい要件が求められる。そこで、固定火格子30を溶接により構築した後に、水圧試験と熱処理とが全体として実行されてもよい。この水圧試験と熱処理とが、専門溶接作業員と製造メーカとで実施されてもよい。
【0039】
実施の形態の滑動火格子31は、一例として、「複数枚並列構造」を備える。複数枚並列構造とは、
図5の紙面貫通方向へと数枚の火格子片(あるいは火格子塊)が一列に並べられる構造である。このため、実施の形態の滑動火格子31は、列方向の途中に切れ目(言い換えると途切れ、あるいは微小隙間)を有する。また、既に述べた通り、滑動火格子31は純粋空冷式である。純粋空冷式とは、水冷が施されず空冷のみで冷却される方式である。したがって、滑動火格子31の火格子板には、冷却水路が設けられない。
【0040】
図5に示すように、実施の形態では、一枚の固定火格子30と複数枚並列構造の滑動火格子31とにより、一つの火格子グループが形成される。通常の燃焼条件下では、純粋空冷式の滑動火格子31の約4/5が、空気・水混合二重冷却式の固定火格子30の下に完全に収縮される。これにより、二種類の火格子30、31が両方とも保護される。
【0041】
図5の傾斜角度θ1は、固定火格子30と滑動火格子31それぞれが水平面に対してなす角度である。一例として、傾斜角度θ1は、18~29度に設定されてもよい。
図5において、各段の火格子30、31の刃先が水平方向に対してなす角度を、刃先角(included angle)θ2とする。刃先角θ2が、0~5度であってもよい。
図5において、固定火格子30の高さを、高さh1とする。この高さh1は、一例として100mm~150mmであってもよい。
図5において、滑動火格子31の高さ寸法を、高さh2とする。高さ2は、一例として120mm~200mmであってもよく、h1<h2であってもよい。
【0042】
図5には、油圧シリンダ41aと油圧シリンダ41bとが図示されている。第一グループの油圧シリンダ41aは、第一列の滑動火格子31aと第三列の滑動火格子31cとに接続されており、これらを往復駆動する。第二グループの油圧シリンダ41bは、第二列の滑動火格子31bと第四列の滑動火格子31dとに接続されており、これらを往復駆動する。
【0043】
冷却水は、固定火格子30の前端(下部)から流入するとともに、固定火格子30の内部で熱交換をしながら流れ、固定火格子30の後端(下部)から温水として排出される。過酷な燃焼条件に置かれると、固定火格子30の内部で冷却水が蒸発することで、空気抵抗が発生する。そこで、排水配管における例えば相対的に高い部位に、空気抜き弁を設置してもよい。冷却効果に影響を与えることを防ぐためである。
【0044】
実施の形態の火格子燃焼システム100の動作は、一例として次のステップS1~S5のように実施されてもよい。各々のステップの動作のうちいくつか或いは全てが、制御装置20において統合的に実行されてもよい。
【0045】
(ステップS1)炉4を始動して点火する前に、供給ホッパ1に固形廃棄物が満杯まで充填される。
【0046】
(ステップS2)補助燃焼装置6が点火され、炉4が加熱され、炉4の温度が650度以上に高められる。
【0047】
(ステップS3)供給ホッパ1のドアが開かれる。固形廃棄物が重力により供給火格子2にむかって自由落下する。固形廃棄物が供給ホッパ1を介して供給火格子2に運ばれる。
【0048】
(ステップS4)供給火格子2が起動されると、供給火格子2が固形廃棄物を火格子装置3へ押し込む。火格子装置3に供給された固形廃棄物は、固定火格子30の上で燃焼する。その燃焼とともに、滑動火格子31の往復変位により、火格子装置3の前端部3fの側から後端部3rの側へと固形廃棄物が押されていく。滑動火格子31の往復変位によって固形廃棄物が完全に押されることで、固形廃棄物が撹拌され十分に燃焼させられる。同時に、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7のダンパーバッフルが開かれ、これにより燃焼空気と材料とが炉4で完全に混合させられる。炉4内の高温作用下で、反応が生ずる。燃焼用の空気は、火格子30、31の下方に設けられた一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7を介して、炉4内に送られる。二次空気は、炉4の上部の喉部を介して炉4内に送られる。
【0049】
(ステップS5)上記のステップS4における固形廃棄物の焼却中には、水冷および空冷により火格子30、31が冷却される。水冷による冷却は固定火格子30のみで行われる。固定火格子30が備える冷却水路への冷却水供給で水冷が実現される。空冷による冷却は、火格子30、31の両方で行われる。空冷は火格子30、31に対する任意の空気供給で実施できるが、例えば火格子30、31の裏面側への空気供給で空冷が実現されてもよい。
【0050】
(ステップS6)燃焼後のスラグ73(
図2参照)は、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7に備えられた灰およびスラグの収集機構を介して、外部へと排出される。
【0051】
以上説明した実施の形態の火格子燃焼システム100と火格子燃焼方法(ステップS1~S6)とによれば、炉内で常に高温にさらされる固定火格子30が空気・水混合二重冷却方式の列一体構造固定火格子として構築される。これにより、灰などの漏れの抑制と冷却水漏れリスク抑制とを同時に達成しつつ、高い冷却効果で過酷な炉内環境にも耐えることができる。その一方で、滑動火格子31の往復変位を組み合わせて固形廃棄物を十分に燃焼させることもできる。実施の形態によれば、固形廃棄物の供給と空気供給の調整とを的確に実施することで、例えば発熱量範囲1000kcal/kg~7000kcal/kgの固形廃棄物を処理・焼却が可能な、新規かつ実用的な火格子燃焼システムおよび火格子燃焼方法が提供される。
【0052】
上記の実施の形態において、各構成の設計値が様々に定められてもよく、あるいは各構成に様々な変形が施されてもよい。
【0053】
火格子装置3は、いくつかの「火格子グループ」で構成されてもよい。各々の火格子グループは、いくつかの火格子モジュールを含むものとする。「火格子モジュール」は、階段状に重ねられた各々の段の火格子のまとまりを指している。例えば、一つの火格子モジュールが、一つの固定火格子30と一つの滑動火格子31との積層体で構築されてもよい。例えば、
図5に示すように、四段の火格子モジュールで一つの「火格子グループ」が構築されてもよい。
図5に示す例では、四つの固定火格子30と四つの滑動火格子31とが階段状に重ねられており、異なる火格子が一枚ごとに交互にあらわれる。火格子グループに含まれる火格子モジュールの段数は、四段に限らず、二段、三段、五段、あるいは六段など任意の段数で一つの火格子グループが構築されてもよい。
【0054】
実施の形態では、
図5に示すように、一つの「火格子グループ」のなかで、空気・水混合二重冷却式の固定火格子30が相対的に上側に設置されており、純粋空冷式の滑動火格子31が相対的に下側に設置される。固定火格子30は、空気・水混合二重冷却式とされる。その一方で、滑動火格子31は純粋空冷式とされる。火格子30、31は二段に分けて配置されてもよい。初段と第二段の間の材料転がり案内壁(material rolling guide wall)について説明する。材料転がり案内壁とは、ゴミ処理量の高さを指す用語である。具体的には、例えば
図5の例では、材料転がり案内壁の高さhgは、「滑動火格子31aについての高さh2と、火格子30の高さh1と、滑動火格子31bの高さh2との合計」である。材料転がり案内壁の高さhgは、一例として400mm~800mmであってもよい。
【0055】
実施の形態では、滑動火格子31を駆動する駆動装置40が、火格子装置3の前端部3fにまとめてつまり集中的に設置されている。ただし、変形例として、駆動装置40が火格子装置3の複数箇所に分散設置されてもよい。
【0056】
図5に示すように、滑動火格子31は、可動距離(ストローク距離)Dsを備える。可動距離(ストローク距離)Dsは、一例として200mm~450mmであってもよい。
【0057】
炉4の側壁には、処理する固形廃棄物の発熱量範囲に応じて、断熱路と空冷炉と水冷炉とが設けられてもよい。例えば発熱量範囲1000kcal/kg~1800kcal/kgに応じて、断熱炉が設けられてもよい。例えば発熱量範囲1801kcal/kg~2500kcal/kgに応じて、空冷炉が設けられてもよい。例えば発熱量範囲2501kcal/kg~7000kcal/kgに応じて、水冷炉が設けられてもよい。
【0058】
例えば、実施の形態において、個々の装置が既存の公知技術あるいは周知技術に適宜に置換されてもよい。例えば、上述した供給ホッパ1と、灰スラグ収集ホッパと、スラグ排出ホッパと、補助燃焼装置6のバーナーと、油圧シリンダ41と、二次空気噴射装置5の二次空気ノズルとが、それぞれ既存の公知技術あるいは周知技術によって構築されてもよい。
【0059】
図7は、実施の形態の変形例の火格子燃焼システム101のシステム構成図である。変形例の火格子燃焼システム101は、空気管路17と、複数の送風機(ファン)18と、循環煙道ガス流路19と循環煙道ガス噴射口19aと二重ノズル19qとをさらに備えている。制御装置20は、複数の送風機(ファン)18それぞれの作動(オンオフ制御、および送風量)を制御する。制御装置20は、循環煙道ガス噴射口19aおよび二重ノズル19qの作動も制御する。循環煙道ガス噴射口19aおよび二重ノズル19qの制御内容は、少なくともオンオフ制御を含み、これらを流量調整可能な機構とした場合は噴射量制御を含んでもよい。
【0060】
図7では、火格子装置3が備える複数の火格子30、31のうち、前端部3fの側に最も近くに位置するひとまとまりの火格子を、初段火格子グループ3aとして図示している。また、
図7では、一次空気吸気兼灰スラグ収集装置7が備える複数の風室(一次空気室)に、符合7a~7eを付している。風室7aは、初段火格子グループ3aの下方に設けられる。風室7b~7eは、二段目以降の火格子グループそれぞれの下方に設けられる。
【0061】
変形例の火格子燃焼システム101では、空気管路17がその途中で複数の分岐管路に分岐している。その分岐管路それぞれに、送風機18が設けられる。火格子装置3の下方に設けられた複数の風室(一次空気室)7a~7eそれぞれに対して、複数の送風機18それぞれの吐出口が個別に接続されている。複数の送風機18は、その一台一台について別々に風力調整制御が可能となるように構築されている。その制御は、制御装置20によって実施されてもよい。各々の一次空気室への送風空気量を調整することによって、より正確に燃焼温度を調節できる、また、汚染物(主にNOx)の発生を抑制することもできる。また、燃焼空気比率もより正確になり、燃焼効率が高くなる利点もある。
【0062】
変形例の火格子燃焼システム101には、循環煙道ガス流路19および循環煙道ガス噴射口19aが設けられる。循環煙道ガス流路19の一端は、炉4に接続されている。循環煙道ガス流路19の他端は、空気管路17が持つ複数の分岐管路のうち、所定分岐管路17aに接続されている。所定分岐管路17aは、初段火格子グループ3aの下方に設けられた一次空気室である風室7aに連通している。風室7aの内部において、所定分岐管路17aの先端には二重ノズル19qが設けられている。二重ノズル19qは、空気管路17からの一次空気71(
図2参照)と循環煙道ガス流路19からの循環煙道ガスとを混合させた混合ガスを風室7aに供給することができる。
【0063】
循環煙道ガス噴射口19aは、初段火格子グループ3aの火格子30、31の上方に設けられている。なお、
図7に示すように循環煙道ガス噴射口19aは初段火格子グループ3aの上方に設けられてもよいが、これに限られず、炉4内の任意の位置に循環煙道ガス噴射口19aが設けられてもよい。
【0064】
変形例では、火格子装置3における特に初段火格子グループ3aにして、空気に代えて又は空気とともに、循環煙道ガスが供給される。炉4の内部から取り出した既燃焼ガスを、循環煙道ガス流路19および二重ノズル19qを介して循環煙道ガスとして風室7aに循環させたり、あるいは循環煙道ガス噴射口19aを介して噴射したりすることができる。これにより、炉4の温度を下げないようにしながら、初段火格子グループ3aの火格子30、31が着火しないように、廃棄物の水分を蒸発させることができる。火炎中心が、設計要件に従って火格子30、31の中央および後段に制御される利点もある。
【0065】
循環煙道ガスを使用する利点を詳しく述べる。水分含有量が低いため、高揮発性・低融点の固形廃棄物を焼却するときには、炉4の全体が高温領域にある。このため、固形廃棄物が供給火格子2を通過すると、その外部水分がほとんど蒸発する。高温状態の炉4に入った固形廃棄物は、高温で水素と反応しやすい。揮発性物質が急速に揮発して急速に燃焼されると、初段火格子グループ3aの火格子で燃焼が発生しやすい。さらに火が供給火格子2に広がり、供給ホッパ1で着火が起きることも懸念される。この点、実施の形態の変形例にかかる火格子燃焼システム101では、循環煙道ガス流路19を介して初段火格子グループ3aの火格子30、31に循環煙道ガスを供給することができる。これにより、初段火格子グループ3aの火格子30、31の着火を抑制することができる。
【0066】
なお、循環煙道ガス中には、硫黄および塩素が存在する。そこで、硫黄および塩素による金属腐食を克服するための対策が施されてもよい。循環煙道ガス流路19のガス接触面に、グレードの高い鋼が使用されてもよい。わずかなコスト増加によって高いアドバンテージが得られる利点がある。循環煙道ガス流路19のガス接触面に、例えば腐食防止用コーティングが塗布されてもよい。循環煙道ガス流路19に、硫黄と塩素の少なくとも一方をせき止めるフィルタあるいはそれらを分解するフィルタが設けられてもよい。
【0067】
図7に示すように、初段火格子グループ3aの上方に、蒸気噴射口21が設けられてもよい。
【0068】
変形例の火格子燃焼システム101では、複数の送風機18を設けることで風室7a~7eへの送風量を個別調整している。しかし本開示はこれに限定されず、例えば流量可変バルブなどの他の風量調整機構を設けることで、同様の風量調整が実現されてもよい。
【0069】
以上説明した実施の形態についてさらに補足すると、本願発明者は本技術分野の背景として下記のものに独自に着目している。固形廃棄物は、人々の生活や生産過程で発生し、生産資源として直接使用することはできない。固形廃棄物は、生活ゴミ、産業廃棄物、バイオマスなどを含む。固形廃棄物を適切に処理しないと、環境への二次汚染を引き起こす。それだけでなく、人間の健康にも大きな脅威をもたらす。人々の生活水準の向上と文明の発展の加速に伴い、廃棄物の分類はますます詳細になり、可燃廃棄物の発熱量は増加し続けている。国内外の主要な廃棄物処理方法には、埋め立て、嫌気性、ガス化、あるいは焼却などの方法がある。ただし、上記それぞれの廃棄物処理方法には欠点がある。例えば、埋め立てと嫌気性処理の欠点は、効率が悪く、多くの土地を占有し、下水や臭気などの二次汚染を引き起こすことである。例えば、ガス化の欠点は、爆発性ガスを発生しやすく、安全性が保証できず、ガス化効率が低いことである。例えば、焼却の欠点は、発熱量が2000kcal/kg以上に増加した後は、焼却用の純粋空冷火格子を使用できないことである。純粋空冷火格子は、火格子の焼却や炉4の焦げなどの面で改善が求められている。特に、2000kcal/kgを超える発熱量に耐えられるほどの、高耐熱に適した火格子構造および燃焼システムのニーズが高まっている。実施の形態の火格子燃焼システム100は、このようなニーズを満たすように様々な改良が施されたものである。
【0070】
加工対象物の低位発熱量が2000kcal/kgを超える場合、いくつかの問題があることに本願発明者は独自の着目をしている。例えば、既存の空冷火格子が正常に動作できず、既存の空冷火格子の材料が高発熱量燃焼下の高温に耐えられず、既存の火格子の熱膨張が効果的に制御されず、局所高温領域では熔融後の処理対象物が空気出口から漏れたときに冷やされて凝縮し、この凝縮体が滑動火格子の動きをブロックするなどといった一連の問題がある。これらの問題は、本願発明者の独自の着目で得られたものである。また、既存の水冷式火格子の可動水管と静止水管が密閉されず、運転中の熱水漏れによる水管の錆、運転環境の高い湿度などの問題を解決できる。高発熱量の固形廃棄物の低引火点、高揮発性、焼き戻しが容易であるという利点もある。実施の形態ではこれらの各種利点が提供される。
【符号の説明】
【0071】
1 供給ホッパ
2 供給火格子
3 火格子装置
3a 初段火格子グループ
3f 前端部
3r 後端部
4 炉
4a 前壁
4b 後壁
4c 尾端部
5 二次空気噴射装置
6 補助燃焼装置
7 一次空気吸気兼灰スラグ収集装置
7a~7e 風室(一次空気室)
8 鉄鋼支持構造
17 空気管路
17a 所定分岐管路
18 送風機(ファン)
19 循環煙道ガス流路
19a 循環煙道ガス噴射口
19q 二重ノズル
20 制御装置
21 蒸気噴射口
30 火格子(空気・水混合二重冷却式の固定火格子)
30a 火格子板
31 火格子(純粋空冷式の滑動火格子)
31a 第一列の滑動火格子
31b 第二列の滑動火格子
31c 第三列の滑動火格子
31d 第四列の滑動火格子
40 駆動装置
41、41a、41b 油圧シリンダ
71 一次空気
72 漏れた灰とスラグ
73 燃焼後のスラグ
100、101 火格子燃焼システム
Ds 可動距離(ストローク距離)
L 長さ寸法
W 幅寸法
θ1 傾斜角度
θ2 刃先角
hg 材料転がり案内壁の高さ