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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089415
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】喫煙用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/20 20200101AFI20220609BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20220609BHJP
【FI】
A24D1/20
A24F40/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201792
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】深井 昭匡
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045AA50
4B045AB17
4B162AA03
4B162AA21
4B162AB12
4B162AC13
4B162AC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】喫煙用カートリッジを、加熱により生じるエアロゾルを、従来品と同様に或いはそれ以上に良好な状態で喫煙できることに加えて、より簡便に製造できる構成にすること。
【解決手段】喫煙の際の口元側にフィルター部材3が配置され、他端側にエアロゾル生成部材4が配置されており、フィルター部材の口元側ではない端部と、エアロゾル生成部材のフィルター部材側の端部との間に、エアロゾルを冷却するための冷却部材1が配置されており、該冷却部材は、少なくとも一つの面に、山部と谷部とを有する複数の凹凸を有してなり、該凹凸によって、エアロゾル生成部材側からフィルター部材側へ、エアロゾルが流れる流路が複数形成されるように構成されており、各流路は、該流路の軸線と、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線とのなす角θがθ=10°~70°となる角度で、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線に対して傾斜している喫煙用カートリッジ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙時に、加熱式喫煙具内に挿入されて加熱して使用される、少なくとも、喫煙の際に口元側となる一端側にフィルター部材が配置され、他端側に、前記加熱によってエアロゾルが生じるエアロゾル生成部材が配置されている喫煙用カートリッジであって、
前記フィルター部材の口元側ではない端部と、エアロゾル生成部材の前記フィルター部材側の端部との間に、少なくとも、加熱によって発生するエアロゾルを冷却するための冷却部材が配置されており、
該冷却部材は、その少なくとも一つの面に、山部と谷部とを有する複数の凹凸を有してなり、該凹凸によって、前記エアロゾル生成部材側から前記フィルター部材側へ、前記加熱により発生するエアロゾルが流れる流路が複数形成されるように構成されており、
前記各流路は、該流路の軸線と、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線とのなす角θがθ=10°~70°となる角度で、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線に対して傾斜していることを特徴とする喫煙用カートリッジ。
【請求項2】
前記θが、θ=10°~30°である請求項1に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項3】
前記θが、θ=45°~70°である請求項1に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項4】
前記山部と谷部とを有する複数の凹凸によって形成された、前記エアロゾルが流れる流路の空間の断面形状がV字状である請求項1~3のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項5】
前記冷却部材の複数の流路が、互いに平行で、且つ、それぞれの流路の深さが全長にわたってほぼ同一になるように配置されているか、或いは、それぞれの流路が、フィルター部材側の端部に形成される流路の深さに対してエアロゾル生成部材側に向かって漸次流路の深さが深くなるように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項6】
前記エアロゾルが流れる流路の深さが、1mm~6mmである請求項1~5のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項7】
前記冷却部材が、紙、合成紙、合成樹脂、ゴム、陶器、セラミック及び金属からなる群から選択されるいずれかの材料からなる請求項1~6のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項8】
前記冷却部材が、少なくとも一方の面に山部と谷部とを有する複数の凹凸が形成されているシート状である請求項1~7のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項9】
前記冷却部材がシート状であり、少なくともシートの一方の面に、折りたたまれてなる山部と谷部とを有する複数の凹凸が形成されてなり、該凹凸によって、空間の断面形状がV字状である前記エアロゾルが流れる流路が形成されている請求項1~7のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項10】
前記シート状の冷却部材が、前記複数の凹凸が形成されているシートの片面に、さらに、平坦面状のシートが、前記エアロゾルが流れる流路が形成されるようにして積層されて、2枚のシートが一体化した構造を有する請求項8又は9に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項11】
前記シート状の冷却部材が、前記複数の凹凸が形成されている面の少なくとも一部に、さらに、微細な凹凸が設けられている請求項8~10の何れか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項12】
前記シート状の冷却部材が、2以上配置されている請求項8~11のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項13】
前記シート状の冷却部材が2以上配置されており、少なくとも、2つのシートにおける前記流路の深さが互いに異なる請求項8~12のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項14】
前記シート状の冷却部材が2以上配置されており、該配置された2以上のシートが、前記なす角θの角度が互いに異なる組合せのものであるか、及び/又は、前記なす角θの方向が互いに異なるように組合せて配置されたものである請求項8~13のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項15】
前記シート状の冷却部材が、一重以上に巻回された状態で配置されている請求項8~14のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。
【請求項16】
さらに、前記エアロゾル生成部材と前記冷却部材との間に、エアロゾル生成部材を支持するための支持部材が配置されてなる請求項1~15のいずれか1項に記載の喫煙用カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱することで生じるエアロゾル(気体)を吸うタイプの喫煙用カートリッジに関し、詳しくは、特有の構成の、エアロゾルを冷却するための冷却部材を有する喫煙用カートリッジ製品を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向もあって、従来の紙巻タバコに替わって喫煙の楽しみを与えるものとして、加熱式のタバコの開発及び利用が進んでいる。加熱式のタバコは、タバコの葉や非タバコ植物等を含むエアロゾル生成部材に、専用の加熱式喫煙具内の加熱要素で熱を加え、発生するエアロゾル(気体)を吸う方式のものである。本明細書では、専用の加熱器具のことを加熱式喫煙具と呼び、該加熱式喫煙具内に挿入して使用される、加熱によってエアロゾルを発生させる喫煙具のことを「喫煙用カートリッジ」と呼ぶ。喫煙用カートリッジは、加熱式喫煙具に必須の消耗品である。なお、喫煙用カートリッジは、紙巻タバコのように燃焼させた際の煙を吸うのではなく、加熱により生じたエアロゾルを吸うものであるが、本明細書では「喫煙」と呼ぶ。
【0003】
上記のように、加熱式のタバコは、従来の紙巻タバコとは全く異なる方式の喫煙具であり、近年、エアロゾル生成部材に種々の材料を用いることで、従来の紙巻タバコの代替品としての役割を超えて、健康志向に合致し、しかも従来にない嗜好性に富んだ喫煙用カートリッジ製品が種々開発されており(特許文献1等参照)、利用もされている。
【0004】
200℃~350℃程度の高温で加熱する加熱式のタバコ用の喫煙用カートリッジは、加熱によりエアロゾルを発生させるための部材を必須とし、また、喫煙(吸引)することで、発生させたエアロゾルを良好な状態で口元に移動させる必要があるため、この点についても種々の提案がされている。例えば、特許文献2には、加熱によってエアロゾルを発生させるエアロゾル形成基材と、これを支持するための支持要素とを必須の構成とし、さらに、該支持要素の下流にエアロゾルの冷却要素を含むことができるとした構成の喫煙物品についての提案がされている。また、特許文献2には、エアロゾルの冷却要素に、生物分解性ポリマー材料のギャザー付きシートを用いることが提案されている。特許文献2で提案されていることは、具体的には、エアロゾル冷却要素の構成について、長さ方向に平行な複数の直線からなるギャザー付きシートを用いることである(特許文献2の図1及び段落[0107]等参照)。
【0005】
特許文献3には、複数の貫通孔を有するモノシックロッドで構成されたエアロゾル冷却部材についての提案がされている。上記複数の貫通孔を有するモノシックロッドは、セラミックス材やポリマーなどで形成されている。特許文献4には、エアロゾル生成部材を良好な状態に支持でき、しかも、エアロゾルの流れ(移動)を安定化させることを可能にした、特有な構成の電子タバコ互換カートリッジ用の支持部材について、種々の提案がされている。特許文献4では、例えば、エアロゾルの通過流の流路と、エアロゾルの通過流を交流させる交流空間部とを有する特有の形態の支持部材についての提案がされている。具体的には、エアロゾルの流れ(移動)を安定化させるための特有の形態の支持部材から、エアロゾルを冷却する機能を有する移送部材を介して、エアロゾルを、マウスピースを兼ねるフィルター部材へと移送させることや、移送部材を設けることなく、上記特有の形態の支持部材を長くすることで、支持部材に、エアロゾルの冷却機能を持たせることなどについての提案がされている。上記の従来例では、支持部材は、シリコーンを使用して形成するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6371928号公報
【特許文献2】特許第6000451号公報
【特許文献3】特表2017-518041号公報
【特許文献4】特開2020-167990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、加熱式のタバコは、従来の紙巻タバコとは全く異なる方式の喫煙具であり、紙巻タバコの代替品として、さらには、従来にない喫味を提供する新たな嗜好品として広く認知されてきている。そして、近年、加熱式のタバコに使用される喫煙用カートリッジに対して、上記したように、様々な視点からの開発が進められており、製品の品質が向上し、多様な喫味の実現を可能にしたことで、加熱式のタバコの喫煙用カートリッジを利用する喫煙者が多くなっている。このような現状に対し、本発明者は、喫煙用カートリッジは、喫煙者が日々嗜む消耗品であり、喫煙者の増加に応じて消費量が増大する製品であり、この点から下記の課題があることを認識した。
【0008】
まず、通常の喫煙者は、毎日、5~20本程度の喫煙用カートリッジを消費するため、喫煙者の嗜好性に適した製品開発が必要であることに加えて、できるだけ安価な製品の提供が望まれる。また、加熱式タバコに使用される喫煙用カートリッジは、従来の紙巻タバコと異なり、製品の一部が燃焼して消失することがないため、製品の小型化が進んでいるものの、喫煙者が増えるのに応じて廃棄物の処理量が増大することが懸念され、この点も留意する必要がある。
【0009】
上記の状況に対し、本発明者は、喫煙用カートリッジ製品の開発においては、最終的な製品に影響する、製造にかかるコストの低減、製品の材料についての検討が重要な技術課題となることを認識した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、加熱式のタバコに使用される喫煙用カートリッジの構成を、加熱により生じるエアロゾルを、従来品と同様に或いはそれ以上に良好な状態で喫煙できることに加えて、より簡便に製造することができるものに改良することである。また、本発明の目的は、喫煙用カートリッジの構成部材を、加工し易く、廃棄処理の問題にも寄与できるものにすることで、安価で、品質に優れる喫煙用カートリッジ製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、下記の構成の本発明の喫煙用カートリッジによって達成される。
[1]喫煙時に、加熱式喫煙具内に挿入されて加熱して使用される、少なくとも、喫煙の際に口元側となる一端側にフィルター部材が配置され、他端側に、前記加熱によってエアロゾルが生じるエアロゾル生成部材が配置されている喫煙用カートリッジであって、前記フィルター部材の口元側ではない端部と、エアロゾル生成部材の前記フィルター部材側の端部との間に、少なくとも、加熱によって発生するエアロゾルを冷却するための冷却部材が配置されており、該冷却部材は、その少なくとも一つの面に、山部と谷部とを有する複数の凹凸を有してなり、該凹凸によって、前記エアロゾル生成部材側から前記フィルター部材側へ、前記加熱により発生するエアロゾルが流れる流路が複数形成されるように構成されており、前記各流路は、該流路の軸線と、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線とのなす角θがθ=10°~70°となる角度で、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線に対して傾斜していることを特徴とする喫煙用カートリッジ。
【0012】
上記の本発明の喫煙用カートリッジの好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[2]前記θが、θ=10°~30°である上記[1]に記載の喫煙用カートリッジ。
[3]前記θが、θ=45°~70°である上記[1]に記載の喫煙用カートリッジ。
[4]前記山部と谷部とを有する複数の凹凸によって形成された、前記エアロゾルが流れる流路の空間の断面形状がV字状である上記[1]~[3]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[5]前記冷却部材の複数の流路が、互いに平行で、且つ、それぞれの流路の深さが全長にわたってほぼ同一になるように配置されているか、或いは、それぞれの流路が、フィルター部材側の端部に形成される流路の深さに対してエアロゾル生成部材側に向かって漸次流路の深さが深くなるように構成されている上記[1]~[4]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[6]前記エアロゾルが流れる流路の深さが、1mm~6mmである上記[1]~[5]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[7]前記冷却部材が、紙、合成紙、合成樹脂、ゴム、陶器、セラミック及び金属からなる群から選択されるいずれかの材料からなる上記[1]~[6]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[8]前記冷却部材が、少なくとも一方の面に山部と谷部とを有する複数の凹凸が形成されているシート状である上記[1]~[7]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[9]前記冷却部材がシート状であり、少なくともシートの一方の面に、折りたたまれてなる山部と谷部とを有する複数の凹凸が形成されてなり、該凹凸によって、空間の断面形状がV字状である前記エアロゾルが流れる流路が形成されている上記[1]~[7]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
【0013】
[10]前記シート状の冷却部材が、前記複数の凹凸が形成されているシートの片面に、さらに、平坦面状のシートが、前記エアロゾルが流れる流路が形成されるようにして積層されて、2枚のシートが一体化した構造を有する上記[8]又は[9]に記載の喫煙用カートリッジ。
[11]前記シート状の冷却部材が、前記複数の凹凸が形成されている面の少なくとも一部に、さらに、微細な凹凸が設けられている上記[8]~[10]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[12]前記シート状の冷却部材が、2以上配置されている上記[8]~[11]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[13]前記シート状の冷却部材が2以上配置されており、少なくとも、2つのシートにおける前記流路の深さが互いに異なる上記[8]~[12]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[14]前記シート状の冷却部材が2以上配置されており、該配置された2以上のシートが、前記なす角θの角度が互いに異なる組合せのものであるか、及び/又は、前記なす角θの方向が互いに異なるように組合せて配置されたものである上記[8]~[13]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[15]前記シート状の冷却部材が、一重以上に巻回された状態で配置されている上記[8]~[14]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
[16]さらに、前記エアロゾル生成部材と前記冷却部材との間に、エアロゾル生成部材を支持するための支持部材が配置されてなる上記[1]~[15]のいずれかに記載の喫煙用カートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全長が短く作られている喫煙用カートリッジにおいても、エアロゾル生成部材の加熱により発生したエアロゾルを、良好な状態に冷却して、口元に移動させることができる喫煙用カートリッジ製品の実現が可能になる。本発明の喫煙用カートリッジは、加熱された状態のエアロゾルを冷却するための冷却部材を構成するエアロゾルの流路が、喫煙用カートリッジの長手方向の軸に対し傾斜させたものであるため、エアロゾルの通過する流路が従来の製品よりも延長されており、流路を延長したことによってエアロゾルが冷却部材に接触している時間を長くすることができ、接触時間を長くしたことでエアロゾルの冷却効果の向上が期待できる。
【0015】
本発明の喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状とした好ましい形態によれば、喫煙用カートリッジ製品を製造する際に、冷却部材の製品内への配置を、シートを折りたたむことで細い筒状の喫煙用カートリッジ内に容易に差し入れることができ、さらに、収縮した状態のシート状の冷却部材は、収縮した状態が自然に解放されて、喫煙用カートリッジ内に設けられた狭い空間内の所望の位置に安定して収納された状態になるため、製品の狭い空間内の所望の位置に、小型化している冷却部材を配置させることが簡便にできる。すなわち、本発明の好ましい形態によれば、喫煙用カートリッジ製品の製造の際の作業性を高めることができ、製造効率が向上し、製造効率の向上は製品コストの低減に寄与できるので、安価な製品の提供が可能になる。
【0016】
また、本発明の喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状とした場合、目的に合わせた多様な製品の提供が可能になる。本発明の喫煙用カートリッジ製品の好ましい形態によれば、強度を向上させた製品の提供を可能にできる。
【0017】
本発明の喫煙用カートリッジは、冷却部材に形成されるエアロゾルの流路の特有の傾斜を適宜に調整することで、多様な製品を適宜に設計することが可能になる。また、本発明の喫煙用カートリッジによれば、加熱によって生じたエアロゾルの一部が冷却されて、冷却部材を構成するシートに結露し、このことによって、エアロゾルに含まれる不純物の削減効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の喫煙用カートリッジの一例を説明するための模式断面図である。下段は、比較のための従来の喫煙用カートリッジにおけるエアロゾルの流路の方向を示す模式断面図である。
図2】上段は、フィルター部材3とエアロゾル生成部材4との間に、複数の凹凸を有する1枚のシートからなるエアロゾルの冷却部材1が配置されてなる、本発明の喫煙用カートリッジの一例を説明するための模式分解図である。下段の(a)~(f)は、B-Bの模式断面図であり、上記複数の凹凸によって形成されるエアロゾルが流れる流路となる空間の断面形状の例示を、模式的に記載した図である。
図3】上段は、フィルター部材3とエアロゾル生成部材4との間に、複数の凹凸を有する複数のシートからなるエアロゾルの冷却部材1が配置されてなる、本発明の喫煙用カートリッジの一例を説明するための模式分解図である。下段の(a)~(e)は、B-Bの模式断面図である。下段の(a)~(d)は、2枚のシートからなる冷却部材を喫煙用カートリッジの空間内に収容させた場合の、エアロゾルが流れる流路の空間の断面形状の例示を、模式的に記載した図である。下段の(e)は、シート状の冷却部材を3枚、喫煙用カートリッジ内に収納させた例の、エアロゾルが流れる流路の空間の断面形状の模式図である。
図4】上段は、フィルター部材3とエアロゾル生成部材4との間に、複数の凹凸を有する1枚のシートを巻き回した状態のエアロゾルの冷却部材1が配置されてなる、本発明の喫煙用カートリッジの一例を説明するための模式分解図である。下段は、B-Bの模式断面図であり、上記複数の凹凸によって形成されるエアロゾルが流れる流路の空間の断面形状の例示を、模式的に記載した図である。
図5】本発明の喫煙用カートリッジを製造する際に、シート状の冷却部材を折りたたんで収縮した状態で喫煙用カートリッジの空間内に差し入れ、空間内で収縮した状態が自然に解放され、適度に拡がった状態で上記空間内に冷却部材が収容された一例を説明するための模式図である。
図6】本発明の喫煙用カートリッジを構成するシート状の冷却部材を、屏風たたみにして作製して複数の流路を形成する場合の、たたみ方の例を説明するための模式図である。太線が山折りを示し、細線が谷折りを示し、(a)は、断面がV字状の流路が、互いに平行で、且つ、それぞれの流路の深さが全長にわたってほぼ同一になるたたみ方の例であり、(b)は、それぞれの流路が、一方の端部側に形成される流路の深さに対して他方の端部に向かって漸次流路の深さが深くなるたたみ方の例の模式図である。(c)は、上記(a)のように折りたたんだ後、点線部分に切り込みを入れて、一部を裏面側に山折りして、形成される流路内に、部分的に深さの異なるV字状の流路を形成した例の模式図である。
図7】上段は、フィルター部材3とエアロゾル生成部材4との間に、複数の凹凸を有する1枚のシートからなるエアロゾルの冷却部材1が、なす角θ=90°となるようにして配置されてなる、参考例の喫煙用カートリッジの一例を説明するための模式分解図である。下段は、冷却部材1のC-Cの模式断面図であり、上記複数の凹凸によって形成されるエアロゾルが流れる流路の空間の断面形状の例示を、模式的に記載した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の喫煙用カートリッジの好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の喫煙用カートリッジは、図1に示したように、図1の下段に示した従来の製品との比較から理解できるように、全長が短く作られている喫煙用カートリッジにおいてもエアロゾルの流路が長くなり、また、その流路は、喫煙者がエアロゾルを吸引する、喫煙用カートリッジの長手方向の軸線に対して特定の角度で傾斜したものであるため、エアロゾルの流れを複雑なものにしている。また、喫煙者の吸引に対し、エアロゾルの流路は、傾斜した壁を有するものになるため、エアロゾルが口元に移動してくる際に、エアロゾルを構成している粒子が流路の壁面に衝突し易くなると考えられる。
【0021】
本発明の喫煙用カートリッジは、喫煙時に、上記したようにしてエアロゾルが口元に移動してくる構成を有することで、本発明の喫煙用カートリッジによれば、エアロゾル生成部材の加熱により発生したエアロゾルが良好な状態に冷却され、しかも、多様な成分からなる多種の粒径を有するエアロゾルが複雑な流れで移動するため、喫味に変化が生じて、嗜好性に優れたものになったと考えられる。本発明の喫煙用カートリッジは、加熱された状態のエアロゾルを冷却するための冷却部材を構成するエアロゾルの流路が、喫煙用カートリッジの長手方向の軸に対し傾斜しているため、エアロゾルの通過する流路が従来の製品よりも延長されており、流路を延長したことでエアロゾルが冷却部材に接触している時間が長くなり、しかも、先に述べたように、エアロゾルを構成する粒子が、多様な状態で冷却部材の流路の壁に接触すると考えられ、エアロゾルの冷却効果の向上と、喫味に変化を生じさせることができたと考えられる。
【0022】
本発明者らの検討によれば、図2~6に示したように、本発明の喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状とし、シートを折りたたむことで、山部と谷部とを有する複数の凹凸を有し、該凹凸によって、エアロゾル生成部材を加熱することにより発生したエアロゾルが流れる流路を複数形成されるようにする好ましい形態としたことで、下記の種々の効果が得られる。特に、冷却部材を形成するためのシートに、放熱性のよい材料を用いることで、より高い効果を得ることが可能になる。
【0023】
喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状としたことで、製品の製造において、下記に挙げる利点が得られる。図5の模式図に示したように、喫煙用カートリッジ製品の製造時の、構成するシート状の冷却部材の製品内へ配置する際に、シートを、折りたたむことで小さく収縮した状態にすることができるので、細い筒状の喫煙用カートリッジ内に容易に差し入れることができる。さらに、折りたたまれて収縮した状態のシート状の冷却部材は、筒状の喫煙用カートリッジの空間内に配置されると、折りたたまれて収縮していた状態が自然に解放されて、その結果、喫煙用カートリッジ内に設けられた狭い空間内の所望の位置に安定して収納された状態になる。このため、製品の小型化に伴って、より小型化が求められている冷却部材を、製品の狭い空間内の所望の位置に配置させる際の作業性の低下の問題を解決することが可能になる。すなわち、上記したように、本発明の好ましい形態によれば、筒状の喫煙用カートリッジ製品の狭い空間内に収容される冷却部材の設置作業が簡便にできるようになるので、喫煙用カートリッジ製品の製造効率を高めることができる。製造効率の向上は、製品コストの低減に寄与でき、安価な製品の提供を可能にする。
【0024】
また、本発明の好ましい実施形態で、喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状としたことで、目的に合わせた多様な製品の提供が可能になる。冷却部材を構成するシートは、表面積の大きいものも、小さいものも、いずれも、折りたたむことで、筒状の喫煙用カートリッジ内の狭い空間内に容易に差し入れることができる。そして、差し入れた後に、折りたたんで収縮された状態が、空間内の形状に応じて適宜に解放されて、所望の位置に安定して収納されるので、エアロゾルの流通路の密度を、製造するカートリッジ製品毎に変更することも容易であり、多様な製品を簡便に得ることが可能になる。
【0025】
また、喫煙用カートリッジを構成する冷却部材をシート状とした形態とすることで、筒状の喫煙用カートリッジの中央領域に位置する狭い空間内に差し入れた、折りたたんで収縮させた状態の冷却部材が、空間内で適宜に解放されて、該空間の形状に応じてシートが充填した状態になるので、筒状の喫煙用カートリッジ製品は、その形状が強固に維持された、強度を向上させた製品の提供が可能になる。
【0026】
本発明の喫煙用カートリッジを構成する冷却部材は、その少なくとも一つの面に、山部と谷部とを有する複数の凹凸を有してなり、該凹凸によって、エアロゾル生成部材側からフィルター部材側へ、加熱により発生するエアロゾルが流れる流路が複数形成された構成を有する。そして、該冷却部材の好ましい形態としては、前記エアロゾルが流れる流路の深さが、1mm~6mmであることが挙げられ、より好ましくは、流路の深さを2mm~4mmとすることが挙げられる。
【0027】
上記の本発明で規定する構成を満足する冷却部材としては、例えば、図2(a)及び(b)に示したように、シートを、山折りと谷折りを繰り返す屏風たたみにすることで、シートに、断面形状がV字状の複数の流路を容易に形成できる。また、その際に、所望の幅に折りたたむことで、異なる深さの複数の流路を有する多種類の冷却部材を容易に得ることができる。さらに、例えば、折りたたみ方を変えることで、図2(c)及び(f)に示したような、流路の断面形状が台形になるようにシートを折りたたんだ構成の冷却部材や、或いは、図2(d)及び(e)に示したような、段ボールなどを製造する際に用いられているシートにコルゲート加工を施した、断面形状が波型になる構成の冷却部材など、多様な断面形状の流路を有する冷却部材を簡便に得ることができる。
【0028】
上記した多様な断面形状の流路を複数有するシート状の冷却部材の形成材料としては、例えば、紙、合成紙、合成樹脂、ゴム、陶器、セラミック及び金属等が挙げられる。中でも、紙や合成紙、或いは、樹脂製シートは、先に挙げたような山部と谷部とを有する複数の凹凸を容易に形成できるので、好ましい。また、紙や合成紙の材料は、表面に細かい凹凸が形成されているので、エアロゾルを構成する様々な粒径の粒子が多様な状態で、これらの材料からなる流路の壁に留まるなどして、エアロゾルが、より複雑で多彩な状態で口元に移動すると考えられる。
【0029】
本発明の喫煙カートリッジを構成するシート状の冷却部材は、先に述べたように、シートを折りたたむことや、コルゲート加工することで、多様な断面形状を有する複数の流路が形成されたシート状の冷却部材を簡便に製造することが可能である。そして、このようなシート状の冷却部材は、図2に示したように、喫煙カートリッジ内の空間内に、少なくとも1枚収容することで本発明の効果を得ることができる。また、図3に示したように、喫煙用カートリッジの空間内に、複数枚のシート状の冷却部材を一緒に収容してもよい。この場合、シート状の冷却部材を使用すれば、先に述べたように、シート状の冷却部材を縮めた状態で、喫煙用カートリッジの狭い空間内に差し入れるだけで、複数の冷却部材を、簡便に、所望の位置に安定して収納させることができる。このため、複雑な構成の冷却部材を有する喫煙用カートリッジ製品を、作業性よく、容易に製造できるという効果も得られる。
【0030】
図3に示した例では、流路の深さが同一のシート状の冷却部材を複数収容しているが、本発明はこれに限定されず、流路の深さがそれぞれに異なるシート状の冷却部材を製造し、これらを組み合わせて収容させた構成としてもよい(不図示)。また、図6(b)に示したように、流路の深さが次第に変化するように構成したシート状の冷却部材を使用することも有効である。例えば、加熱によりエアロゾルが発生する側の流路の深さを浅くし、口元側に向かって流路の深さが深くなるように構成にしたものや、逆に、口元側に向かって流路の深さが浅くなるように構成したものなどを使用することができる。このように構成することで、流路内を流れるエアロゾルの速度を変化させることが可能になる。
【0031】
本発明の喫煙カートリッジを構成するシート状の冷却部材は、上記したものに限定されず、例えば、流路内に大小の多様な凹凸を設けた構成のものであってもよい。図6(c)に示した例では、流路内に大きな凹凸を設け、流路が不連続になる部分を形成した構成のものである。具体的には、図6(c)に示したように、シートを屏風たたみにした後、点線で示した部分に切り込みを入れて、凸部となる部分を反対側に押し込んで凹部として、流路内に、屏風たたみで形成したよりも深さの深い流路部分を断続的に形成したものである。図示していないが、冷却部材の形成材料として、表面に微細な凹凸があるシートを用いることで、流路を形成している壁面に小さい凹凸が複数形成される構成としてもよい。
【0032】
本発明の喫煙用カートリッジは、冷却部材に形成されるエアロゾルの流路を、喫煙用カートリッジの長手方向の軸とのなす角θが、θ=10°~70°となるような角度で傾斜させてなることを特徴とするが、下記に挙げるように、なす角θを適宜に調整することで、本発明の効果を最適化できる。具体的には、本発明で規定するなす角θを適宜に調整することで、エアロゾルが流路を通過する際の抵抗を変えることができるので、喫煙者の吸い込み力が一定の場合に、喫煙用カートリッジの特性に変化を持たせることが可能になる。本発明者らの検討によれば、なす角θを変化させることで、例えば、吸いこみ力が増すが、その分、香りや喫味が感じられる喫煙用カートリッジや、吸い込み力が感じられず軽いが、エアロゾルの温度と量を感じることができる喫煙用カートリッジなど、異なる嗜好を満足させることができる多様な製品を適宜に設計することが可能になる。
【0033】
本発明の喫煙用カートリッジは、上記したように、冷却部材に形成されるエアロゾルの流路を、喫煙用カートリッジの長手方向の軸とのなす角θがθ=10°~70°となる角度の範囲内で傾斜させてなることを要する。なお、なす角θが70°を超えて、例えば、図7に参考例として示したように、θ=90°とした場合にも、程度の違いはあるものの、従来の製品に比較するとエアロゾルが冷却部材に接触している時間を長くすることができる。
【0034】
本発明者らは、本発明の喫煙用カートリッジについて、特有の構成の冷却部材によって形成されるエアロゾルの流路を、喫煙用カートリッジの長手方向の軸とのなす角θがθ=10°~70°となる範囲の角度で傾斜させたことによって、冷却効果を向上させることができたことに加えて、下記の効果も期待されると考えている。すなわち、加熱によって生じた多様な粒子からなるエアロゾルの一部が冷却されて、冷却部材を構成するシートに結露し、このことによって、エアロゾルに含まれる不純物の削減効果が期待される。また、冷却部材の形成材料に、例えば、活性炭素繊維のような、活性炭の性質を持ち合わせた吸着効果の高い材料を使用すれば、ガス状の不純物の削減効果を期待することもできる。エアロゾル中の不純物の除去をすることで、雑味のない爽快な喫煙が可能な喫煙用カートリッジの提供が可能になる。
【0035】
本発明の喫煙用カートリッジを構成する冷却部材は、例えば、形成材料のシート等に、香料や喫煙成分を含有又は塗布したものを用いることも有効である。このように構成すれば、喫味や香りを補完することができるので、より多様な嗜好性をもった製品の提供が可能になる。上記した不純物の削減効果や、喫味や香りの補完も期待できる良好な冷却効果の向上によって、本発明によれば、加熱によるエアロゾルの発生時には、高い温度を示すエアロゾルの温度を効率よく下げることができ、加えて、該エアロゾルを喫煙(吸引)することで、エアロゾル生成部材によって生じる多彩な喫味や香りを楽しむことができる喫煙用カートリッジ製品の提供が可能になる。
【0036】
本発明の喫煙用カートリッジを構成する、エアロゾル生成部材及びフィルター部材は、特に限定されず、従来公知の材料及び構成を利用することができる。本発明の喫煙用カートリッジは、上記した以外に、例えば、エアロゾル生成部材と冷却部材との間に、エアロゾル生成部材を支持するための支持部材が配置されてなるものであってもよい。その際に使用する支持部材は、特に限定されず、従来公知の支持部材の材料及び構成を利用することができる。
【0037】
本発明の喫煙用カートリッジは、先に述べたように、冷却部材の構成を新たな構造のものにしたことを技術的特徴にしており、喫煙(吸引)した際に、加熱により生じるエアロゾルを、従来品と同様に或いはそれ以上に良好な状態で喫煙できることに加え、消耗品において重要な要素である、より簡便に製造することができるという実用上の極めて重要な効果が得られるものである。近年の加熱式の喫煙用カートリッジは、その全長が短く作られているため、エアロゾル生成部材を加熱することで発生したエアロゾルを冷却する機能をカートリッジ内部に設ける際には、様々な要素を凝縮して構成する必要がある。すなわち、長さが短いカートリッジの限られた範囲内で、少なくとも他の機能を損なうことなく、エアロゾルの冷却効果をさらに高める工夫が求められる。加えて、加熱式のタバコに使用される喫煙用カートリッジは消耗品であることから、上記工夫に要するコストの上昇は避けなければならない。これに対し本発明の喫煙用カートリッジは、安価に製造可能な簡易な構造の物でありながら、加熱式の喫煙用カートリッジの喫煙の際に、加熱により生じるエアロゾルを良好な状態に冷却し、口元に移動させることができ、しかも、喫煙者の多様な嗜好性に合わせた製品の提供が期待される有用なものである。
【符号の説明】
【0038】
1:冷却部材
3:フィルター部材
4:エアロゾル生成部材
5:外装用の紙製シート
10:喫煙用カートリッジ
A、A’:エアロゾルが流れる流路の長さ
θ:なす角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7