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  • 特開-エイのオイル漬け及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089427
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】エイのオイル漬け及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20220609BHJP
【FI】
A23L17/00 E
A23L17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201811
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】304059890
【氏名又は名称】金▲高▼ 武夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】金▲高▼ 武夫
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC01
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG23
4B042AH01
4B042AH02
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK11
4B042AP05
4B042AP07
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】臭みが少なく長期保存が可能なエイを食材に用いた料理、具体的にはエイのオイル漬け、更にはこの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一観点に係るエイのオイル漬けは、油で揚げられかつ燻煙されたエイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込んだものである。また、本発明の他の一観点に係るエイのオイル漬けの製造方法は、エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程、エイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込む工程、を有するものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油で揚げられかつ燻煙されたエイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込んだエイのオイル漬け。
【請求項2】
トマト、唐辛子、塩及び胡椒を含む請求項1記載のエイのオイル漬け。
【請求項3】
瓶詰めにより密封された請求項1記載のエイのオイル漬け。
【請求項4】
総重量100gに対し、前記オリーブオイルを25g以上45g以下の範囲で含む請求項1記載のエイのオイル漬け。
【請求項5】
エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程、
前記エイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込む工程、を有するエイのオイル漬けの製造方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エイのオイル漬け及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エイは、顎口上綱軟骨魚綱板鰓亜綱に属し、日本近海だけでなく世界中において広く分布する軟膏魚類である。なおエイは、近年の水温上昇による活動の活発化や捕食者の減少等によりその個体数が増加傾向にある。
【0003】
ところで、エイにはアカエイ等毒針を有する種が存在し、漁や釣りにおいてアカエイを捕獲した際や、潮干狩り等で海岸を歩いているときに踏んでしまった際等、この毒針が刺さってしまうと激しい痛みに襲われ、場合によっては死に至ることさえある。
【0004】
また、エイは貝類を餌としており、個体数の増加は貝類に対する被害が増加することにつながる。実際、エイによる貝類に対する食害は年々増加傾向にある。
【0005】
以上の観点から、エイの個体数の増加を抑えることは極めて重要である。
【0006】
一方で、エイは日本においても食用として用いられることがあり、煮物、刺身、汁物等にして食されることがある。エイを一般的な食材として活用することができれば、エイの生息数を調整することが可能となり、上記エイによる被害を抑えることが可能となる。
【0007】
エイを食材として用いた料理の例としては、例えば、下記非特許文献1に、アカエイの煮つけについての開示がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】https://cookpad.com/recipe/6094480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エイは尿素を体内の浸透圧調整に用いているため、その死後、時間とともに鮮度が下がると、体内の尿素がアンモニアに分解されていく。このアンモニアが異臭のもととなり、他の一般的な魚のように好まれず、異臭を抑えるためには他の一般的な魚よりも非常に短い時間で処理しなければならない(消費期限が極めて短い)といった課題がある。特に、上記煮つけ等煮つけにした後でも長期保存は難しく、エイの個体数増加を調整できるほどの消費を担うことが難しいといった課題もある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、臭みが少なく長期保存が可能なエイを食材に用いた料理、具体的にはエイのオイル漬け、更にはこの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の一観点に係るエイのオイル漬けは、油で揚げられかつ燻煙されたエイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込んだものである。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、トマト、唐辛子、塩及び胡椒を含むことが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、瓶詰めにより密封されたものであることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、」総重量100gに対し、オリーブオイルを25g以上45g以下の範囲で含むものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係るエイのオイル漬けの製造方法は、エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程、エイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込む工程、を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によって、臭みが少なく長期保存が可能なエイを食材に用いた料理、具体的にはエイのオイル漬け、更にはこの製造方法を提供することを目的とする。このエイの料理は、長期保存が可能であり、エイの個体数増加を調整できるほどの消費を担うことが容易であり、しかもコンドロイチン硫酸やコラーゲンといった人体に有用な成分を多く含んでおり、その価値が高いといった効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実際に作製したエイ料理の写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0019】
(エイ料理)
本実施形態に係るエイを食材に用いた料理(以下「本エイ料理」という。)は、エイのオイル漬けであって、油で揚げられかつ燻煙されたエイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込んだものである。
【0020】
本エイ料理は、長期保存が可能であるため、エイの個体数増加を調整できるほどの消費を担うことが期待でき、しかもコンドロイチン硫酸やコラーゲンといった人体に有用な成分を多く含んでおり、その価値が高い。特に、油で揚げて燻煙を行っていることもあり臭みが少なく非常に美味である。
【0021】
(製造方法)
ここで、本エイ料理の製造方法(以下「本製造方法」という。)について説明する。本製造方法では、(S1)エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程、(S2)エイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込む工程、を有する。
【0022】
まず、本製造方法では、上記の通り(S1)エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程を備える。ここで「エイ」とは、顎口上綱軟骨魚綱板鰓亜綱エイ上目に属する魚類の総称であって、鰓孔が体の腹面にあり、目の上部眼瞼が眼球と接続している等の特徴を備える。エイの具体的な種類としては、本エイ料理の特徴を備えることができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばアカエイ、ツバクロエイ、トビエイ、シビレエイ、カラスエイ等を例示することができるが、その中でもアカエイは日本全国に広く分布し、個体差は大きいものの、凡そ1m程度の大きさのものが多く、料理の素材としては十分な大きさであるため好ましい。
【0023】
またここで「エイ小片」とは、エイを包丁等により食べやすいよう小片に切ったものをいい、大きさとしては特に限定されるわけではないが、2~3cm角程度にいわゆるぶつ切りにされたものであることが好ましい。すなわち、改めて後述するが、本方法では本ステップの前に、エイを適度な大きさであるエイ小片に切るステップを備える。
【0024】
本エイ料理に用いられるエイの部分としては、食用とすることができる限りにおいて限定されるわけではないが、鰭(ヒレ)の部分であることが好ましい。エイは鰭が大きく、一個体から比較的多くとることができ、料理の素材として安定的な量の確保が可能である。
【0025】
本エイ料理のエイ小片は、皮がついた状態であっても、皮を取り除いた(除去した)状態であってもよい。皮を取り除いた状態であれば身がほぐれやすくなり口当たりが滑らかになるといった利点があるが、皮がそのままついた状態であっても、油で揚げることで皮が気になることはなく、むしろコンドロイチン硫酸等の栄養成分を多く含ませることができるとともに、下処理の際皮を取り除く手間が省けるため本エイ料理の製造効率を向上させることができる。
【0026】
また、本ステップにおいて、エイ小片は、油で揚げられる。油は、特に限定されるわけではないが、後述のステップでオリーブオイルを用いるため、オリーブオイルで揚げられていることが好ましいが、菜種油、ごま油、サラダ油等の他の食用油で代用してもよい。エイ小片は油で揚げられるため、水分を十分に抜くことが可能となるとともに、エイの軟骨を食べやすくすることが可能となる。また、油で揚げることで油をエイ小片に浸み込みやすくし、味を良くする。更に、エイの劣化を防ぐことで、この劣化とともに発生しやすいアンモニア臭を十分に抑えることができる。
【0027】
この場合において、エイ小片は、十分に水分を除去しておくことが重要である一方、硬くなりすぎないよう高温になりすぎないことが重要である。このバランスを維持することにより、水分を十分に除去して品質劣化を防ぎつつ十分な食感を保ち、油を十分にエイ小片にしみこませることが可能となる。
【0028】
また、本ステップにおいて、油で揚げられたエイ小片は、燻製される。油で揚げたのち燻製することは、エイ小片の表面を粗化した状態で乾燥させ、その後燻製することになるため、より強く燻煙をエイ小片に纏わせることが可能となる。この結果、より保存性が高まり、風味が増すといった効果があり、エイの劣化防止、アンモニア臭の発生防止、風味付けによる味の向上を図ることができるといった利点がある。
【0029】
燻製の種類は限定されず、熱燻・温燻・冷燻であってもよく、また通常の燻煙を用いる燻製であっても、液体を用いる液体燻製であってもよい。その燻煙材についても特に限定されない。燻煙材の一例としては、例えばサクラ、ナラ、ブナ、ハンノキ、シナノキ、カシワ、クルミ等の木を粉砕してチップ状にしたものを用いることができるがこれに限定されない。
【0030】
また、本方法では、(S1)エイ小片を油で揚げた後燻煙する工程の前に、(S0)下処理工程を備えていることが好ましい。下処理を行うことで、より臭みが少なく長期保存が可能なエイを食材に用いた料理となる。
【0031】
この下処理工程では、限定されるわけではないが、より具体的には、(S0-1)表面のぬめりを取るステップ、(S0-2)エイを小片に切るステップ、(S0-3)乾燥させるステップ、の少なくともいずれかを備えていることが好ましい。
【0032】
また本工程の(S0-1)表面のぬめりを取るステップは、文字通り、エイの身を揉む
ことで、エイの表面にある「ぬめり」を取るステップである。このぬめりは、スポンジや束子等でこすり取ることが好ましいが、塩等を振りこすりつけることで、このぬめりを取りやすくすることができるだけでなく、下味をつけやすくなるため好ましい。特に、皮を取り除かずそのまま用いようとする場合、小片に切り分ける前に塩とともに揉み込むことでぬめり除去を効率的に行うことができる。なお、この本工程は、下記(S0-2)エイを小片に切るステップ、の後にも行うこととしてもよい。
【0033】
(S0-2)エイを小片に切るステップは、上記の通り、エイを包丁等により食べやすいよう小片に切ること、より具体的には、2~3cm角程度の大きさ、いわゆるぶつ切りにするステップである。
【0034】
(S0-3)乾燥させるステップは、文字通り、切ったエイ小片を乾燥させる工程である。乾燥させることで、水を除去し、品質劣化及びこれによるアンモニア臭の防止を効果的に行うことが可能となる。この乾燥方法としては限定されるわけではないが、いわゆる天日干しであることが好ましい。また乾燥させた後のエイ小片としては、後で油による揚げを行う観点も含め、完全に乾燥させるのではなく、表面が十分に乾燥して水気が飛んだ状態程度でよい。乾燥させる時間としては、その日の天気、気温、風の有無等によって適宜調整可能であるが1時間以上10時間以下であることが好ましく、より好ましくは2時間以上5時間以下である。
【0035】
また、本方法では、上記の通り、(S2)エイ小片を、ニンニクを加えたオリーブオイルで煮込む工程を含む。本ステップでは、上記の通り、油で揚げて燻製されたエイ小片をオリーブオイルとニンニクで煮込む工程が含まれる。
【0036】
本ステップでは、ニンニクとオリーブオイルで煮込むことにより、オリーブオイルにニンニクの風味をつけるとともに、揚げたエイに十分ニンニクの風味がついたオリーブオイルを浸み込ませることができる。
【0037】
またこの場合において、オリーブオイルには、更に、予め又は事後的にトマト、唐辛子、塩及び胡椒を含ませることが好ましい。これら調味料を添加させることで、味を十分に調え味を良くすることが可能となる。
【0038】
またこの場合において、トマトは、ドライトマトであることが好ましい。本エイ料理において、水分が多いと品質の劣化につながるため、水分を少なくし味を十分に調えることが可能となる。
【0039】
以上の工程により、本エイ料理を製造することが可能となる。また、本エイ料理は、瓶などの密封容器内に充填し、封入することが好ましい。本エイ料理は瓶詰にすることで十分長期間にわたり品質を保持でき、アンモニア臭を十分に抑えることができる。瓶に保存させることで、6か月以上の保存期間を確保することが可能となる。
【0040】
またこの場合において、本エイ料理は、総重量100gに対し、オリーブオイルを25g以上45g以下の範囲で含むものであることが好ましい。この範囲にすることで油漬けとしての状態を維持することができ、味のバランスを保ちつつ、長期保存が可能となる。
【0041】
以上、本実施形態によって、臭みが少なく長期保存が可能なエイを食材に用いた料理、具体的にはエイのオイル漬け、更にはこの製造方法を提供することを目的とする。このエイの料理は、長期保存が可能であり、エイの個体数増加を調整できるほどの消費を担うことが容易であり、しかもコンドロイチン硫酸やコラーゲンといった人体に有用な成分を多く含んでおり、その価値が高いといった効果もある。
【0042】
(実施例)
ここで、上記実施形態に係るエイ料理について実際に製造し、その効果を確認した。以下説明する。
【0043】
まず、エイからヒレを切り出し、皮がついた状態で塩もみしてぬめりを取り除き、更に、皮がついた状態で2~3cm角の大きさにぶつ切りし、更に塩を振りかけながら揉み、更にぬめりを取り除いて、エイ小片を得た。なお、エイ小片はその後3~4時間ほど天日干しにより乾燥させて数百グラム程度の適度に乾燥したエイ小片を得た。
【0044】
次に、このエイ小片をオリーブオイルを張った鍋に投入して揚げ、更に揚げた後、サクラチップによる燻製を行い、香り付けを行った。
【0045】
そして、唐辛子及びニンニクを加えたオリーブオイルを加熱し、上記エイ小片を加えるとともに、ドライトマト適量を添加し、塩と胡椒により味を調えてエイのオイル漬けを完成させた。また、この完成したエイのオイル漬けは瓶に適量詰め、密封した。この完成したエイのオイル漬けについて図1に示しておく。なお、この完成した本エイ料理の重量100g当たり、オリーブオイルは35g程度、エイ小片はその残りの大部分であり、このエイ小片を含め、ニンニク、唐辛子及びドライトマト等その他の成分は65g程度であった。
【0046】
この完成したエイ料理に対し、コンドロイチン硫酸含有量を調べたところ、本エイ料理100g当たり474mgのコンドロイチン硫酸が含有されていることが確認された。また、コラーゲンについても調べたところ、100g当たり19000mgのコラーゲンが含まれていることが確認された。これら有効成分はオリーブオイル等の加熱によっても安定的に維持されており、栄養価が十分に高く維持できていることを確認した。
【0047】
以上、本実施例により、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、エイを含む料理及びこの製造方法として産業上の利用可能性がある。

図1