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  • 特開-包装容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089429
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B65D65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201813
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD02
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB85
(57)【要約】
【課題】箱形状態及び平坦な状態に変形可能であり、シート材の割れが抑制された包装容器を提供する。
【解決手段】紙を含むシート材により形成され、シート材を折り曲げることにより、箱形の状態と平坦な状態とに変形可能な包装容器であって、JIS P 8113:2006に準拠して測定した、紙の縦方向における引張破断伸びが2.2%以上であり、JIS P 8127:2010に準拠して測定した紙の水分率が6.4%以上である、包装容器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を含むシート材により形成され、前記シート材を折り曲げることにより、平坦な状態と箱形の状態とに変形可能な包装容器であって、
JIS P 8113:2006に準拠して測定した、前記紙の縦方向における引張破断伸びが2.2%以上であり、
JIS P 8127:2010に準拠して測定した前記紙の水分率が6.4%以上である、包装容器。
【請求項2】
前記紙の縦方向における引張破断伸びが2.6%以上である、請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記紙の水分率が7.0%以上である、請求項1または2に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材により成形される折り畳み可能な包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙を含むシート材を重ね合わせて周縁部をシールし、シート材に設けられた罫線に沿ってシート材を折り曲げることにより、箱形の状態と平坦な状態とに変形可能な包装容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-26275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の包装容器において、罫線に沿ってシート材を折り曲げることによって、シート材の折り曲げ部に割れが発生する場合があり、改善の余地があった。
【0005】
それ故に、本発明は、箱形状態及び平坦な状態に変形可能であり、シート材の割れが抑制された包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る包装容器は、紙を含むシート材により形成され、シート材を折り曲げることにより、箱形の状態と平坦な状態とに変形可能であり、JIS P 8113:2006に準拠して測定した、紙の縦方向における引張破断伸びが2.2%以上であり、JIS P 8127:2010に準拠して測定した紙の水分率が6.4%以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、箱形状態及び平坦な状態に変形可能であり、シート材の割れが抑制された包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る包装容器の箱形の状態を示す斜視図
図2】実施形態に係る包装容器の平坦な状態を示す斜視図
図3】実施形態に係る包装容器の変形方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
実施形態に係る包装容器100は、シート材を所定の形状に裁断したブランクの端部を重ね合わせてシールすることにより形成されたものであり、箱型の状態と平坦な状態との間で変形可能である。
【0010】
図1は、実施形態に係る包装容器の箱形の状態を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、箱型の状態にある包装容器100は、開口111が形成された上面110と、下面130と、対向する一対の第1の側面121と、対向する一対の第2の側面122とを有する。
【0012】
第1の側面121には、重ね合わせたシート材をシールしたサイドシール部140の一部が重ねられている。また、第2の側面122には、重ね合わせてシールしたシールしたサイドシール部140の他の一部と、三角形状に折り曲げられた折り曲げ片150とが重ね合わされている。上面110に設けられた開口111は、包装容器100の内容物を注出するための注出口栓等を取り付けるために設けられているが、包装容器100の用途や形態に応じて開口111を上面110以外の部分に設けても良いし、開口111はなくても良い。
【0013】
図2は、実施形態に係る包装容器の平坦な状態を示す斜視図である。
【0014】
図2に示す包装容器100は、矩形状の1枚のシート材を折り畳んで筒状とし、図2に示す裏面側において、対向する一対の端縁に沿う帯状部分を重ね合わせてシールすると共に、他の一対の端縁から所定範囲の部分(図2のハッチングで示す部分)を互いにシールして構成される。図2のハッチングで示す部分は、図1に示したサイドシール部140となる部分である。
【0015】
図2において上面側の第1の部分は、箱形の状態に変形したときに、上面110になる部分と、一対の第1の側面121の上側部分になる部分と、一対の第2の側面122の上側部分になる部分と、折り曲げ片150になる部分と、サイドシール部140になる部分とを含む。図2に示す各部分は、罫線により区画されている。
【0016】
また、図示を省略するが、図2において裏面側の第2の部分は、箱形の状態に変形したときに、下面130になる部分と、一対の第1の側面121の下側部分になる部分と、一対の第2の側面122の下側部分になる部分と、折り曲げ片150になる部分と、サイドシール部140になる部分とを含む。これらの各部分も罫線によって区画されている。
【0017】
図3は、実施形態に係る包装容器の変形方法を示す図である。
【0018】
まず、図3の(a)に示すように、平坦な状態にある包装容器100のシート材を罫線171に沿って谷折りに折り曲げると共に、罫線172に沿って山折りになっているシート材の一部を伸展させる。第1の部分と第2の部分との間に空隙を形成しながら、第1の側面121及び第2の側面122を立ち上げることにより、図3の(b)の状態とする。
【0019】
次に、図3の(b)に黒矢印で示すように、サイドシール部140を罫線171に沿って下方に折り曲げ、図3の(c)の状態とする。
【0020】
次に、図3の(c)に黒矢印で示すように、サイドシール部140の両端部とこれに接続される折り曲げ片150(フィン状のパネル)とを第2の側面122側に折り込む。図3の(b)及び(c)の手順により、サイドシール部140を、第1の側面121と第2の側面122とに沿わせて重ねることができる。
【0021】
サイドシール部140の両端部及び/または折り曲げ片150は、第2の側面122の表面へ貼り付けてもよい。折り曲げ片150を第2の側面122へ貼り付ける方法としては、例えば、ヒートシール、ホットメルト接着剤等を用いる方法がある。また、面ファスナー、スナップボタン等の着脱可能な接合部材によって貼り付けることで、箱型の状態から平坦な状態へ変形させた包装容器100を再び箱型の状態として使用することができ、平坦な状態にした包装容器100の再使用が可能となる。
【0022】
以上の手順により、図3の(d)に示すように、包装容器100を平坦な状態から箱型の状態へ変形させることができる。また、図3に示した手順を逆行うことによって、包装容器100を箱形の状態から平坦な状態に変形させることができる。
【0023】
尚、図1図3に示した包装容器100の形態は一例であり、箱形の状態と平坦な状態とを相互に変形可能であれば、包装容器100の形態は特に限定されない。例えば、箱形の状態において、包装容器100は、直方体に限らず、円柱状や、上面及び下面が四角形以外の角柱状であっても良いし、各辺の面取りがなされた箱形形状であっても良く、上面、下面及び側面を備えたものであれば良い。また、平坦な状態において、包装容器100は、重ね合わされた2枚のシート材で構成されていても良いし、サイドシール部は4辺に設けられても良い。
【0024】
ここで、包装容器を構成するシート材について説明する。
【0025】
シート材として、紙の他の材料からなる1以上の層を積層した積層シートを使用する。シート材に用いる紙の坪量は、150~500g/mであることが好ましい。紙の坪量がこの範囲内であれば、シート材にコシがあり、包装容器100の剛性等の強度に優れる。
【0026】
シート材を構成する紙以外の層は特に限定されず、熱可塑性樹脂層、金属箔層、バリアフィルム等を適宜選択して積層することができる。シート材の最表面には、ポリエチレン(PE)等のヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなるシーラント層を設ける。シーラント層は、シート材の片面に設けられていても良いし、両面に設けられていても良い。
【0027】
図3で説明したように、本実施形態に係る包装容器100を平坦な状態から箱形の状態へと変形可能とするため、シート材には、罫線に沿って折り曲げられた折り曲げ部が設けられる。しかしながら、包装容器の製造時またはそれ以降の使用時等に、折り曲げ部に割れ(罫線割れ)が発生する場合があった。本願発明者が検討したところ、折り曲げ部の割れは、紙の割れに起因すること、シート材表面に樹脂層が積層されている場合、紙の割れが表面の樹脂層の割れを誘発すること、紙の流れ方向に対して直交または交差する方向に延びる罫線に沿う折り曲げ部で割れが発生しやすいこと、紙の割れは紙の物性により改善できることを見出した。
【0028】
具体的に、JIS P 8113:2006に準拠して測定した紙の縦方向における引張破断伸びが2.2%以上であり、JIS P 8127:2010に準拠して測定した紙の水分率(含有水分の割合)が6.4%以上であれば、折り曲げげにより変形可能な包装容器100を構成した場合に、折り曲げ部に生じるシート材の割れを抑制することができる。引張破断伸びまたは水分率のいずれかが上記の値を下回ると、シート材の折り曲げ部に割れが生じやすくなる。上述した範囲内でも、紙の縦方向の引張破断伸びが2.6%以上であることが好ましく、この場合、折り曲げ部に生じるシート材の割れを更に抑制することができる。また、紙の水分率が7.0%以上であることが好ましく、この場合、折り曲げ部に生じるシート材の割れを更に抑制することができる。紙の縦方向の引張破断伸びの上限は特に限定されないが、6%以下である。また、水分率の上限も特に限定されないが、通常10%以下である。
【0029】
このように、本実施形態に係る包装容器100は、シート材の折り曲げにより平坦な状態と箱形の状態との間で変形可能なものであるが、縦方向の引張破断伸び及び水分率が、それぞれ2.2%以上及び6.4%以上である紙をシート材に用いることにより、シート材の折り曲げ部に割れが生じることを抑制できる。したがって、本実施形態によれば、割れがないことにより見た目が良好な包装容器100を実現できる。また、包装容器100の用途によっては濡れやすい環境で使用されることが想定され、シート材の表面に割れがあると、シート材中の紙に水が染みこみ包装容器100の耐久性低下に繋がる。上述した物性の紙を含むシート材を用いることにより、折り曲げ部の割れが抑制されるため、水に濡れやすい環境で包装容器100が使用される場合にあっても、包装容器100の耐久性を維持することが可能となる。
【実施例0030】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0031】
(実施例1~5、比較例1及び2)
まず、水分率が6.8%、縦方向の引張破断伸びが表1に記載の値である紙を用い、包装容器の外面となる側から順に、「PE(25μm)/紙(250g/m)/PE(25μm)/アルミニウム箔(6μm)/ポリエチレンテレフタレート(PET、12μm)/PE(60μm)」の層構成を有するシート材を作製し、作製したシート材を用いて、図2に示した平坦な状態の包装容器を作製した。次に、平坦な状態の包装容器に空気を吹き込みながら罫線に沿ってシート材を折り曲げ、側面となる部分を立ち上げることによって箱形に成形し、サイドシール部及び折り曲げ片からなるフィン状のパネルを側面に沿う状態で貼り付けて(図3の(c)及び(d)参照)、図1に示した箱形の包装容器を得た。
【0032】
実施例1~5及び比較例1~2のそれぞれについて、10個ずつ包装容器のサンプルを作製し、各サンプルの表面の割れの有無及び長さを観察し、割れが発生したサンプルの個数と、10mm以上の長さの割れが発生したサンプルの個数とをカウントした。
【0033】
表1に、シート材に用いた紙(原紙)の縦方向(流れ方向)の引張破断伸び、割れ状態の評価結果及び総合結果を併せて示す。尚、表1に示す引張破断伸びは、JIS P 8113:2006に準拠して測定した値である。また、総合評価は、「○○:割れの発生したサンプル数が0、○:割れが発生したが、10mm以上の長さの割れが発生したサンプル数が0、×:10mm以上の長さの割れが発生したサンプル数が1以上」により評価した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、シート材を構成する紙の縦方向の引張破断伸びが2.2%以上であれば、10mm以上の長さの割れの発生が認められず、縦方向の引張破断伸びが2.6%以上であれば、10mm未満の割れの発生も認められなかった。一方、縦方向の引張破断伸びが2.2%未満の比較例1及び2においては、10mm以上の割れが複数発生した。実施例1及び2の結果から、シート材に用いる紙(原紙)の縦方向の引張破断伸びが2.2%以上であれば、割れが発生しても、割れの長さが10mm未満であり、比較例1及び2と比べて、割れが抑制されることが確認された。また、実施例3~5の結果から、シート材に用いる紙(原紙)の縦方向の引張破断伸びが2.6%以上であれば、割れの発生自体を十分に抑制できることが確認された。
【0036】
(実施例6~12、比較例3及び4)
まず、縦方向の引張破断伸びが2.4%、水分率が表2に記載の値を有する紙を用い、包装容器の外面となる側から順に、「PE(25μm)/紙(250g/m)/PE(25μm)/アルミニウム箔(6μm)/PET(12μm)/PE(60μm)」の層構成を有するシート材を作製し、作製したシート材を用いて、図2に示した平坦な状態の包装容器を作製した。次に、実施例1等と同様に、罫線に沿ってシート材を折り曲げることにより、平坦な状態の包装容器を図1に示す箱形の状態に変形させ、サイドシール部及び折り曲げ片からなるフィン状のパネルを側面に沿う状態で貼り付けて(図3の(c)及び(d)参照)、図1に示した箱形の包装容器を得た。
【0037】
実施例6~12及び比較例3~4のそれぞれについて、10個ずつ包装容器のサンプルを作製し、各サンプルの表面の割れの有無及び長さを観察し、割れが発生したサンプルの個数と、10mm以上の長さの割れが発生したサンプルの個数とをカウントした。
【0038】
表2に、シート材に用いた紙(原紙)の水分率、割れ状態の評価結果及び総合結果を併せて示す。尚、表2に示す水分率は、JIS P 8127:2010に準拠して測定した値である。また、総合評価は、実施例1等と同じ評価基準で評価した。
【0039】
【表2】
【0040】
表1に示すように、シート材を構成する紙の水分率が6.4%以上であれば、10mm以上の長さの割れの発生が認められず、水分率が7.0%以上であれば、10mm未満の割れの発生も認められなかった。一方、水分率が6.4%未満の比較例3及び4においては、10mm以上の割れが複数発生した。実施例6~8の結果から、シート材に用いる紙(原紙)の水分率が6.4%以上であれば、割れが発生しても、割れの長さが10mm未満であり、比較例3及び4と比べて、割れが抑制されることが確認された。また、実施例9~12の結果から、シート材に用いる紙(原紙)の水分率が7.0%以上であれば、割れの発生自体を十分に抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、包装容器として利用できる。
【符号の説明】
【0042】
100 包装容器
110 上面
121 第1の側面
122 第2の側面
130 下面
140 サイドシール部
150 折り曲げ片
171、172 罫線
図1
図2
図3