(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089441
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20220609BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F16H19/04 J
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201838
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲
(72)【発明者】
【氏名】小山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】陳 ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】横塚 力
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB05
3J062AC07
3J062BA12
3J062CG18
3J062CG83
5H607BB01
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薄型の駆動装置において、駆動力が高い駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明の駆動装置1は、モータ本体および前記モータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤ5を有する2つのギヤドモータと、2つの前記ピニオンギヤに噛み合い第1方向に動作するラックギヤ3と、2つの前記ギヤドモータおよび前記ラックギヤを保持するフレーム10と、を備える。nを自然数として、前記ラックギヤのギヤピッチに対する2つの前記ピニオンギヤの軸間距離の比率が、n±0.2の範囲内である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体および前記モータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤを有する2つのギヤドモータと、
2つの前記ピニオンギヤに噛み合い第1方向に動作するラックギヤと、
2つの前記ギヤドモータおよび前記ラックギヤを保持するフレームと、を備え、
nを自然数として、前記ラックギヤのギヤピッチに対する2つの前記ピニオンギヤの軸間距離の比率が、n±0.2の範囲内である、
駆動装置。
【請求項2】
nを自然数として、前記ラックギヤのギヤピッチに対する2つの前記ピニオンギヤの軸間距離の比率が、n±0.1の範囲内である、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
2つの前記モータ本体は、ステップ角が互いに等しいステッピングモータである、
請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
2つの前記ギヤドモータのうち一方又は両方は、前記フレームに対し前記第1方向又は中心軸線周りの回転方向に移動可能な可動代を有する、
請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
2つの前記ギヤドモータは、前記第1方向の前記可動代を有し、
2つの前記ギヤドモータの前記可動代の和は、前記ステップ角に相当する前記ラックギヤの動作距離と、2つの前記ギヤドモータの前記モータ本体から前記ラックギヤまでの動力伝達経路におけるバックラッシとの差分と、の和より大きい、
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
2つの前記ギヤドモータは、中心軸線周りの回転方向の可動代を有し、
2つの前記ギヤドモータの前記可動代の和は、前記ステップ角に相当する前記ピニオンギヤの回転角と、2つの前記ギヤドモータの前記モータ本体から前記ラックギヤまでの動力伝達経路におけるバックラッシに相当する前記ピニオンギヤの回転角の差分と、の和より大きい、
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項7】
それぞれの前記ギヤドモータは、前記モータ本体の動力を減速して前記ピニオンギヤに伝える伝達機構を有する、
請求項1~6の何れか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の薄型化が進む一方で、搭載されるギヤドモータにも薄型化が求められている。特許文献1には、このような薄型の電子機器に搭載するギヤボックス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薄型の駆動装置において更なる高出力化が求められる場合がある。本発明者らは、並行して並べた複数個のモータを用いて1つのラックギヤを駆動させることで駆動装置の薄型化と高出力化を実現する駆動装置を想到した。このような構成において、さらなる駆動力の向上が求められている。
【0005】
本発明の一つの態様は、駆動力が高い駆動装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の駆動装置は、モータ本体および前記モータ本体によって中心軸線周りに回転させられるピニオンギヤを有する2つのギヤドモータと、2つの前記ピニオンギヤに噛み合い第1方向に動作するラックギヤと、2つの前記ギヤドモータおよび前記ラックギヤを保持するフレームと、を備える。nを自然数として、前記ラックギヤのギヤピッチに対する2つの前記ピニオンギヤの軸間距離の比率が、n±0.2の範囲内である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動力が高い駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の駆動装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態のギヤドモータの一部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、サンプルNo.1~No.3の駆動装置においてピニオンギヤの軸間距離とラックギヤの推力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る駆動装置1について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において特に断りのない限り、各中心軸線Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、+Z側を単に「軸方向一方側」と呼び、-Z側を単に「軸方向他方側」と呼ぶ。また、各中心軸線J周りの周方向を単に「周方向」とよび、各中心軸線Jに対する径方向を単に「径方向」と呼ぶ。
【0011】
さらに、本明細書の説明の簡易のために、Y軸方向を単に上下方向と呼び、+Y軸方向を単に上側とよび、-Y方向を単に下側と呼ぶ。なお、本明細書における上下方向は、説明の便宜のために設定する方向であって、駆動装置1の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
<第1実施形態>
(駆動装置)
図1は、第1実施形態の駆動装置1の分解斜視図である。
図2は、駆動装置1の断面図である。本実施形態の駆動装置1は、Y軸方向に沿う寸法が抑制された薄型の電子機器に搭載される。
【0013】
図1に示すように、駆動装置1は、2つのギヤドモータ2と、ラックギヤ3と、フレーム10と、を備える。
【0014】
(ギヤドモータ)
ギヤドモータ2は、Z軸方向に沿って延びる円柱状である。2つのギヤドモータ2は、X軸方向に隣り合って配置される。以下の説明において、2つのギヤドモータ2を区別する場合、一方を第1のギヤドモータ2Aと呼び、他方を第2のギヤドモータ2Bと呼ぶ。
【0015】
図2に示すように、第1のギヤドモータ2Aは、第1の中心軸線J1に沿って延びる。また、第2のギヤドモータ2Bは、第2の中心軸線J2に沿って延びる。第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2とは、互いに平行に延びる。以下の説明において、第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2とを区別しない場合、これらをまとめて、単に中心軸線Jと呼ぶ。
【0016】
ギヤドモータ2は、モータ本体20と、モータ本体20に接続される遊星歯車機構(伝達機構)30と、遊星歯車機構30に接続されるピニオンギヤ5と、枠部材40と、を有する。
【0017】
なお、以下の説明で、第1のギヤドモータ2Aと第2のギヤドモータ2Bとを区別する場合、モータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および枠部材40についても、互いに区別する。この場合、第1のギヤドモータ2Aのモータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および枠部材40を、それぞれ、第1のモータ本体20A、第1の遊星歯車機構30A、第1のピニオンギヤ5A、および第1の枠部材40Aと呼ぶ。また、第2のギヤドモータ2Bのモータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および枠部材40を、それぞれ、第2のモータ本体20B、第2の遊星歯車機構30B、第2のピニオンギヤ5B、および第2の枠部材40Bと呼ぶ。
【0018】
第1のモータ本体20Aのモータシャフト29、第1の遊星歯車機構30Aおよび第1のピニオンギヤ5Aは、第1の中心軸線J1周りを回転する。一方で、第2のモータ本体20Bのモータシャフト29、第2の遊星歯車機構30Bおよび第2のピニオンギヤ5Bは、第2の中心軸線J2周りを回転する。
【0019】
モータ本体20は、中心軸線Jに沿って延びる。モータ本体20は、全体として各中心軸線Jを中心とする円柱状である。2つのモータ本体20は、ステップ角が互いに等しいステッピングモータである。なお、ステップ角とは、ステッピングモータにおいて、1パルスで動作するモータ本体20の回転角である。
【0020】
モータ本体20は、各中心軸線J周りに回転するロータ21と、ロータ21を径方向外側から囲むステータ22と、さらにステータ22を径方向外側から囲むモータケース23と、を有する。ロータ21は、各中心軸線Jに沿って延びるモータシャフト29を有する。
【0021】
遊星歯車機構30は、それぞれモータ本体20のモータシャフト29に接続される。遊星歯車機構30は、それぞれモータ本体20の動力を減速してピニオンギヤ5に伝える減速機構である。本実施形態において、第1の遊星歯車機構30Aの減速比と、第2の遊星歯車機構30Bの減速比とは、互いに等しい。
【0022】
遊星歯車機構30は、それぞれ、ギヤハウジング39と、第1太陽ギヤ33aと、3つの第1遊星ギヤ33bと、第1キャリア31と、3つの第2遊星ギヤ34bと、第2キャリア32と、3つの第3遊星ギヤ35bと、第3キャリア36と、を有する。
【0023】
ギヤハウジング39は、フレーム10に固定される。すなわち、遊星歯車機構30は、ギヤハウジング39においてフレーム10に支持される。ギヤハウジング39は、内歯ギヤ39aと、軸受支持部39dと、を有する。
【0024】
内歯ギヤ39aは、各中心軸線Jを中心として軸方向に延びる筒状である。内歯ギヤ39aは、第1遊星ギヤ33b、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ35bに噛み合う。軸受支持部39dは、内歯ギヤ39aの軸方向他方側(-Z側)の端部に位置する。軸受支持部39dは、中心軸線Jを中心として筒状に延びる。軸受支持部39dの内周面には滑り軸受が装着される。軸受支持部39dは、第2軸受7を保持する。軸受支持部39dは、第2軸受7を介して後述する円柱部36fを回転可能に支持する。
【0025】
第1太陽ギヤ33aは、モータシャフト29に固定され、モータシャフト29とともに各中心軸線Jを中心として回転する。3つの第1遊星ギヤ33bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aに噛み合う。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aの回転に伴い、各中心軸線Jの周りを公転回転する。
【0026】
第1キャリア31は、第1円盤部31bと、3本の第1サブシャフト31aと、第2太陽ギヤ31cと、を有する。第1円盤部31bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第1サブシャフト31aは、第1円盤部31bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。第2太陽ギヤ31cは、各中心軸線Jを中心として第1円盤部31bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。
【0027】
3本の第1サブシャフト31aは、それぞれ第1遊星ギヤ33bを回転可能に支持する。第1キャリア31は、3つの第1遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0028】
第2太陽ギヤ31cは、第1キャリア31の一部であるため、第1遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0029】
3つの第2遊星ギヤ34bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。
3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cに噛み合う。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cの回転に伴い、各中心軸線Jの周方向に公転回転する。
【0030】
第2キャリア32は、第2円盤部32bと、3本の第2サブシャフト32aと、第3太陽ギヤ32cと、を有する。第2円盤部32bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第2サブシャフト32aは、第2円盤部32bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。第3太陽ギヤ32cは、各中心軸線Jを中心として第2円盤部32bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。
【0031】
3本の第2サブシャフト32aは、それぞれ第2遊星ギヤ34bを回転可能に支持する。第2キャリア32は、3つの第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0032】
第3太陽ギヤ32cは、第2キャリア32の一部であるため、第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0033】
3つの第3遊星ギヤ35bは、各中心軸線Jの周方向に等間隔に配置される。3つの第3遊星ギヤ35bは、第3太陽ギヤ32cに噛み合う。3つの第3遊星ギヤ35bは、第3太陽ギヤ32cの回転に伴い、各中心軸線Jの周方向に公転回転する。
【0034】
第3キャリア36は、第3円盤部36bと、3本の第3サブシャフト36aと、出力部36cと、を有する。第3円盤部36bは、各中心軸線Jを中心として径方向に延びる。3本の第3サブシャフト36aは、第3円盤部36bから軸方向一方側(+Z側)に延びる。出力部36cは、各中心軸線Jを中心として第3円盤部36bから軸方向他方側(-Z側)に延びる。
【0035】
3本の第3サブシャフト36aは、それぞれ第3遊星ギヤ35bを回転可能に支持する。第3サブシャフト36aは、3つの第3遊星ギヤ35bの公転回転に伴い、各中心軸線Jを中心として回転する。
【0036】
出力部36cは、各中心軸線Jを中心として延びる円柱部36fと、円柱部36fの先端面から軸方向に沿って延びる嵌合軸部37と、を有する。円柱部36fは、第2軸受7によって回転可能に支持される。また、出力部36cの軸方向他方側(-Z側)を向く端面には、保持穴36dが設けられる。保持穴36dには、シャフト36pが挿入される。
【0037】
ピニオンギヤ5は、各中心軸線Jを中心として配置される。ピニオンギヤ5は、モータ本体20によって各中心軸線J周りに回転させられる。ピニオンギヤ5には、軸方向に貫通する貫通孔5hが設けられる。貫通孔5hには、シャフト36pが挿入される。
【0038】
ピニオンギヤ5の軸方向一方側(+Z側)を向く面には、嵌合凹部38が設けられる。嵌合凹部38には、出力部36cの嵌合軸部37が嵌合する。これにより、第1のピニオンギヤ5Aは、第1の遊星歯車機構30Aを介して、第1のモータ本体20Aに回転させられる。同様に、第2のピニオンギヤ5Bは、第2の遊星歯車機構30Bを介して、第2のモータ本体20Bに回転させられる。
【0039】
図3は、2つのピニオンギヤ5、並びにラックギヤ3を含む駆動装置1の断面図である。
2つのピニオンギヤ5は、軸間距離dで互いに離間して配置される。2つのピニオンギヤ5は、第1方向D1に沿って並ぶ。したがって、2つのピニオンギヤ5の軸間距離dは、第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2の第1方向D1に沿う距離寸法である。
【0040】
図2に示すように、シャフト36pは、各中心軸線Jを中心として延びる。シャフト36pの軸方向一方側(+Z側)の端部は、出力部36cに支持され、軸方向他方側(-Z側)の端部は、第1軸受6を介してそれぞれ枠部材40に支持される。シャフト36pは、ピニオンギヤ5の各中心軸線J周りの回転を補助する。
【0041】
図1に示すように、枠部材40は、それぞれ遊星歯車機構30の軸方向他方側(-Z側)の端部に固定される。枠部材40は、上下方向(Y軸方向)に開口する枠状である。枠部材40は、1つピニオンギヤ5を囲む。
【0042】
枠部材40は、第1支持壁部41と、第2支持壁部42と、一対の側壁部43と、第1のラックガイド部44と、第2のラックガイド部45と、を有する。第1支持壁部41、第2支持壁部42、および一対の側壁部43は、上側から見て矩形状に配置される。
【0043】
第1支持壁部41および第2支持壁部42は、中心軸線Jと直交する板状である。第1支持壁部41は、ピニオンギヤ5の軸方向一方側(+Z側)に位置する。
【0044】
第1支持壁部41には、遊星歯車機構30の出力部36cが挿通する挿通孔41hが設けられる。また、第1支持壁部41は、遊星歯車機構30のギヤハウジング39に固定される。
【0045】
第2支持壁部42は、ピニオンギヤ5の軸方向他方側(-Z側)に位置する。第2支持壁部42は、第1軸受6を保持する保持孔42hを有する。これにより、枠部材40は、第1軸受6を介してシャフト36pを回転可能に支持する。
【0046】
一対の側壁部43は、第1支持壁部41および第2支持壁部42を繋ぐ。一対の側壁部43は、第1支持壁部41および第2支持壁部42に直交し、中心軸線Jに沿って延びる板状である。
【0047】
第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45は、一様な断面でラックギヤ3の延びる方向(後述する第1方向D1)に沿って並行して延びる。第1のラックガイド部44は、第1支持壁部41の下端部から軸方向他方側(-Z側)に突出する。一方で、第2のラックガイド部45は、第2支持壁部42の下端部から軸方向一方側(+Z側)に突出する。すなわち、第1のラックガイド部44と第2のラックガイド部45とは、それぞれ互いに向き合う方向に突出する。
【0048】
図3に示すように、第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45は、ラックギヤ3に対し下側に位置する。第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45は、それぞれ、ラックギヤ3を下側から摺動可能に支持する支持する摺動面46を有する。第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45の摺動面46は、同一平面上に配置される。
【0049】
なお、
図1に示す駆動装置1の分解図では、ラックギヤ3がフレーム本体11に組み付けられ、かつギヤドモータ2が、フレーム本体11から分離された状態が図示されている。しかしながら、
図1は、全体を適当な大きさで表示するために仮想的に一部を組み付けて表示したものであって、実際の組み立て工程では、
図1に図示される状態は再現されない。実際の組み立て工程では、ギヤドモータ2をフレーム本体11に組み付けた後に、ラックギヤ3がフレーム本体11およびギヤドモータ2に組み付けられる。
【0050】
(ラックギヤ)
図1に示すように、ラックギヤ3は、上下方向を板厚方向とする板状である。ラックギヤ3は、MIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成形)によって成形される。2つのピニオンギヤ5は、各中心軸線Jと直交する方向(本実施形態においてX軸方向)に隣り合って配置される。ラックギヤ3は、2つのピニオンギヤ5が並ぶ方向に沿って直線状に延びる。ラックギヤ3は、一対のシャフト36p並びに2つのピニオンギヤ5に対し下側に位置する。
【0051】
ラックギヤ3は、X軸方向に沿って並ぶ複数の歯面を有するギヤ本体部3bと、ギヤ本体部3bのZ軸方向の両側からそれぞれ突出する一対のレール部3aと、を有する。レール部3aは、ラックギヤ3の延在方向(X軸方向)に沿って延びる。
【0052】
図3に示すように、ラックギヤ3のギヤ本体部3bは、2つのピニオンギヤ5に噛み合う。ラックギヤ3は、2つのピニオンギヤ5から出力される動力が伝わることで一方向に動作する。ラックギヤ3は、2つのギヤドモータ2の中心軸線Jと直交する方向に動作する。
【0053】
本明細書において、ラックギヤ3が動作する方向を第1方向D1と呼ぶ。本実施形態において、第1方向D1は、X軸と平行な方向である。ギヤ本体部3bにおいて複数の歯は、第1方向D1に沿って一定のギヤピッチpで並ぶ。
【0054】
レール部3aは、枠部材40の第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45に下側から支持される。2つのピニオンギヤ5からラックギヤ3への動力伝達によって、ラックギヤ3は、ピニオンギヤ5から下側の力を受ける。本実施形態によれば、第1のラックガイド部44および第2のラックガイド部45は、摺動面46においてラックギヤ3のレール部3aを支持する。
【0055】
本実施形態において、ピニオンギヤ5は、シャフト36pおよび第1軸受6を介して、枠部材40に対して回転可能に支持される。また、ラックギヤ3は、枠部材40において下側から支持される。このため、ピニオンギヤ5とラックギヤ3との上下方向の相対的な位置精度は、枠部材40の寸法精度によって決まる。本実施形態によれば、ピニオンギヤ5とラックギヤ3とのバックラッシュ等の寸法管理を容易に行うことができる。
【0056】
(フレーム)
図1に示すように、フレーム10は、フレーム本体11と、ホルダ19と、を有する。フレーム10は、2つのギヤドモータ2およびラックギヤ3を保持する。フレーム本体11と、ホルダ19は、例えば、MIMによって成形される。
【0057】
フレーム本体11には、複数の固定部15が設けられる。固定部15は、上下方向と直交する平面(XZ平面)に沿う板状である。固定部15には、板厚方向に貫通する固定孔15aが設けられる。固定孔15aには、駆動装置1を外部部材(例えば、駆動装置1が格納される電子機器)に固定するためのネジが挿入される。フレーム本体11は、固定部15において、外部部材にネジ固定される。
【0058】
また、フレーム本体11は、第1側壁部13と第2側壁部14と区画壁部16とを有する。第1側壁部13、第2側壁部14、および区画壁部16は、中心軸線Jに沿って互いに並行して延びる。第1側壁部13、第2側壁部14、および区画壁部16は、ラックギヤ3の動作方向である第1方向D1と直交する板状である。第1側壁部13、区画壁部16、第2側壁部14は、第1方向D1に沿ってこの順に並ぶ。
【0059】
図3に示すように、第1側壁部13、第2側壁部14、および区画壁部16は、ラックギヤ3の上側に位置する。第1側壁部13および第2側壁部14の下端面13a、14aは、ラックギヤ3のレール部3aを上側から摺動可能に支持する。これにより、フレーム本体11は、ラックギヤ3の第1方向D1への移動をガイドする。なお、摺動効率の観点から、第1側壁部13および第2側壁部14の下端面13a、14aとラックギヤ3のレール部3aとの間には、若干の隙間が介在することが好ましい。また、本実施形態において、区画壁部16の下端面とレール部3aの上面との間には、十分な隙間が介在する。
【0060】
第1側壁部13と区画壁部16との間には、第1のギヤドモータ2Aが配置される。第1側壁部13と区画壁部16との間の第1方向D1に沿う距離寸法は、第1の枠部材40Aの第1方向D1に沿う幅寸法より若干大きい。第1の枠部材40Aの第1方向D1両側には、第1の弾性部材E1が配置される。第1の弾性部材E1は、第1の枠部材40Aとフレーム10との間の隙間を埋める。すなわち、第1側壁部13と一方の側壁部43との間、並びに区画壁部16と他方の側壁部43との間には、それぞれ第1の弾性部材E1が介在する。
【0061】
同様に区画壁部16と第2側壁部14との間には、第2のギヤドモータ2Bが配置される。区画壁部16と第2側壁部14との間の第1方向D1に沿う距離寸法は、第2の枠部材40Bの第1方向D1に沿う幅寸法より若干大きい。第2の枠部材40Bの第1方向D1両側には、第1の弾性部材E1が配置される。第1の弾性部材E1は、第2の枠部材40Bとフレーム10との間の隙間を埋める。すなわち、第2側壁部14と一方の側壁部43との間、並びに区画壁部16と他方の側壁部43との間には、それぞれ第1の弾性部材E1が介在する。
【0062】
第1の弾性部材E1は、第1方向D1を厚さ方向とする一様な厚さのシート状である。第1の弾性部材E1は、例えばゴム材料である。また、第1の弾性部材E1は、エラストマ樹脂部材、スポンジ部材等であってもよい。さらに、第1の弾性部材E1は、板バネなどのバネ部材であってもよい。
【0063】
第1の弾性部材E1は、第1方向D1に力を受けることで第1方向D1に圧縮される。また、圧縮された第1の弾性部材E1は、第1方向D1に復元力としての反力を生じる。
【0064】
第1のギヤドモータ2Aおよび第2のギヤドモータ2Bは、ラックギヤ3からの第1方向D1の反力を受けた場合に第1の弾性部材E1の圧縮代の範囲でフレーム10に対して移動可能である。また、第1のギヤドモータ2Aおよび第2のギヤドモータ2Bは、ラックギヤ3からの反力が解除された場合に、第1の弾性部材E1から受ける反力によって基に位置に戻る。
【0065】
図1に示すように、ホルダ19は、フレーム本体11並びに2つのギヤドモータ2の上側に位置する。また、ホルダ19は、フレーム本体11に固定される。ホルダ19とフレーム本体11とは、2つのギヤドモータ2の軸方向一方側(+Z側)の端部を、上下方向(Y軸方向)から挟む。これにより、フレーム10は、2つのギヤドモータ2を保持する。
【0066】
ホルダ19は、第1保持部19aと第2保持部19bと区画保持部19cと連結板部19dとを有する。第1保持部19a、第2保持部19b、および区画保持部19cは、連結板部19dに連結される。第1保持部19a、第2保持部19b、および区画保持部19cは、連結板部19dから軸方向他方側(-Z側)に向かって柱状に延びる。第1保持部19a、区画保持部19c、第2保持部19bは、第1方向D1に沿ってこの順に並ぶ。
【0067】
連結板部19dは、中心軸線Jと直交する板状である。連結板部19dは、2つのギヤドモータ2に対して軸方向一方側(+Z側)に位置する。
【0068】
第1保持部19aは、第1のギヤドモータ2Aの外周面に沿って延びる保持面19fを有する。同様に、第2保持部19bは、第2のギヤドモータ2Bの外周面に沿って延びる保持面19fを有する。
【0069】
区画保持部19cは、第1のギヤドモータ2Aの外周面、および第2のギヤドモータ2Bの外周面にそれぞれ沿って延びる一対の保持面19gを有する。第1保持部19aは、第1側壁部13に固定される。第2保持部19bは、第2側壁部14に固定される。
【0070】
ギヤドモータ2の軸方向一方側(+Z側)の端部の外周面には、第2の弾性部材E2が巻き付けられる。第2の弾性部材E2は、帯状であり、モータ本体20の外周面に、中心軸線J周りに一周に渡って貼り付けられる。第2の弾性部材E2は、例えばスポンジ部材である。また、第2の弾性部材E2は、ゴム材料、エラストマ樹脂部材等であってもよい。さらに、第2の弾性部材E2は、板バネなどのバネ部材であってもよい。
【0071】
第2の弾性部材E2は、ギヤドモータ2の軸方向一方側(+Z側)の端部において、ギヤドモータ2の外周面とフレーム10との間に介在する。ギヤドモータ2は、第2の弾性部材E2の圧縮代の範囲でフレーム10に対して移動可能である。
【0072】
本実施形態において、ギヤドモータ2は、軸方向一方側(+Z側)の端部において、第2の弾性部材E2を介してフレーム10に保持され、軸方向他方側(-Z側)の端部において、第1の弾性部材E1を介してフレーム10に保持される。本実施形態において、第1の弾性部材E1の圧縮代と第2の弾性部材E2の圧縮代とは等しい。ギヤドモータ2は、第1の弾性部材E1および第2の弾性部材E2の圧縮代の範囲内でラックギヤ3から受けた反力に対し第1方向D1に平行移動可能である。
【0073】
(作用効果)
図3に示すように、本実施形態の駆動装置1によれば、2つのギヤドモータ2によって1つの駆動対象であるラックギヤ3を駆動する。このため、駆動装置1は、ラックギヤ3を高主力で駆動することができる。加えて、2つのギヤドモータ2の回転運動を平行運動に変換することができる。
【0074】
本実施形態の駆動装置1によれば、2つのギヤドモータ2は、第1方向D1に沿って並んで配置される円柱状である。このため、駆動装置1のY軸方向の寸法を抑制することができ、駆動装置1をY軸方向に薄型の電子機器に搭載しやすくなる。すなわち、本実施形態によれば、2つのモータ本体20を用いることで駆動装置1の出力を確保しつつ、Y軸方向の寸法を抑制できる。
【0075】
本実施形態において、2つのピニオンギヤ5の軸間距離dは、ラックギヤ3のギヤピッチpの整数倍に近づけられている。軸間距離dをギヤピッチpの整数倍とすることで、2つのピニオンギヤ5のラックギヤ3に対する噛み合いの状態を互いに一致させることができる。この場合、2つのピニオンギヤ5の位相は、互いに一致する。
【0076】
2つのピニオンギヤ5は、ラックギヤ3への動力の伝達に伴い、ラックギヤ3から第1方向D1に反力を受ける。このため、2つのピニオンギヤ5とラックギヤ3との噛み合いの状態が一致する場合、2つのピニオンギヤ5がラックギヤ3から受ける反力の大きさを互いに近づけることができる。これにより、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0077】
本実施形態の遊星歯車機構30の減速比は、例えば、約120である。また、本実施形態のモータ本体20のステップ角は、例えば、22.5°である。したがって、モータ本体20のステップ角は、ピニオンギヤ5の回転角において、約0.2°に相当する。ピニオンギヤ5がラックギヤ3から受ける反力が、十分に大きい場合、モータ本体20に送られるパルス波の信号に対してピニオンギヤ5の回転に遅延が生じる。ピニオンギヤ5の回転の遅延が、ステップ角に相当する約0.2°を超えると、モータ本体20に脱調が生じて、ギヤドモータ2がラックギヤ3に推力を伝えることができない。
【0078】
本実施形態によれば、2つのピニオンギヤ5の軸間距離dをラックギヤ3のギヤピッチpの整数倍に近づけることで、2つのピニオンギヤ5に加わるラックギヤ3からの反力の大きさを、互いに近づけることができる。これにより、モータ本体20の脱調が抑制され、2つのギヤドモータ2からラックギヤ3に安定的に動力を伝達できる。
【0079】
現実の駆動装置1において、各部品の寸法が公差の範囲でばらつくため、軸間距離dとギヤピッチpの整数倍とを、厳密に一致させることは困難である。このため、軸間距離dとギヤピッチpの整数倍に近づけることで、上述の効果を得ることができる。より具体的には、nを自然数として、ラックギヤ3のギヤピッチpに対する2つのピニオンギヤ5の軸間距離dの比率が、n±0.2の範囲内であることが好ましい。さらに、nを自然数として、ラックギヤ3のギヤピッチpに対する2つのピニオンギヤ5の軸間距離dの比率が、n±0.1の範囲内であることがより好ましい。
【0080】
本実施形態において、第1のギヤドモータ2Aは、フレーム10に対し第1方向D1に移動可能な可動代h1を有する。同様に、第2のギヤドモータ2Bは、フレーム10に対し第1方向D1に移動可能な可動代h2を有する。本実施形態において、可動代h1、h2は、第1の弾性部材E1および第2の弾性部材E2の圧縮代と一致する。第1のギヤドモータ2Aと第2のギヤドモータ2Bとは、それぞれの可動代h1、h2の和(すなわち、h1+h2)の範囲内で、近接、離間が可能である。
【0081】
本実施形態によれば、2つのギヤドモータ2のうち一方にラックギヤ3から過大な反力が加わった場合に、当該ギヤドモータ2は、反力によって可動代h1、h2の範囲内で第1方向D1に移動する。これによって、モータシャフト29の回転の遅延を抑制することができ、モータ本体20の脱調を抑制できる。さらに、一方のギヤドモータ2が第1方向D1に移動する間に他方のギヤドモータ2のピニオンギヤ5の回転が進んでラックギヤ3との面圧を高める。これにより、他方のピニオンギヤ5におけるラックギヤ3の反力の負担率が高まる。すなわち、2つのギヤドモータ2からラックギヤ3に伝達する応力を同程度とすることができ、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0082】
本実施形態では、第1のギヤドモータ2Aおよび第2のギヤドモータ2Bは、それぞれ、フレーム10に対し移動可能である場合について説明した。しかしながら、2つのギヤドモータ2の相対的な位置が変わればよいため、2つのギヤドモータ2のうち一方のみが、フレーム10に対し第1方向に移動可能であってもよい。すなわち、2つのギヤドモータ2のうち一方又は両方が、フレーム10に対し第1方向D1に移動可能な可動代h1、h2を有していれば、上述の効果を得ることができる。
【0083】
本実施形態において、2つのギヤドモータ2の第1方向D1の可動代h1、h2の和(すなわち、h1+h2)は、ステップ角に相当するラックギヤ3の動作距離と、2つのギヤドモータ2のモータ本体20からラックギヤ3までの動力伝達経路におけるバックラッシとの差分と、の和より大きいことが好ましい。可動代h1、h2の和をこのように構成することで、駆動装置1の動作時の、モータ本体20の脱調抑制の確実性を高めることができる。
【0084】
ステップ角に相当するラックギヤ3の動作距離とは、モータ本体20におけるステップ角の回転がラックギヤ3に伝達された際の、ラックギヤ3の動作距離を意味する。2つのギヤドモータ2のうち一方が、ラックギヤ3から大きな反力を受ける場合、当該ギヤドモータ2のモータシャフト29に、ステップ角以上の遅延が生じるとモータ本体20に脱調が生じる。したがって、モータ本体20に脱調が生じる前に、他方のギヤドモータ2によってラックギヤ3からの反力の一部を担わせる必要がある。上述したように、モータ本体20のステップ角は、ピニオンギヤ5の回転角において、約0.2°に相当する。例えば、ピニオンギヤ5のピッチ円直径を4mmとする場合、ステップ角に相当するラックギヤ3の動作距離は、4×π×0.2°/360°の式から約0.007mmであると求められる。
【0085】
ギヤドモータ2は、モータ本体20からラックギヤ3までの動力伝達経路においてバックラッシを有する。バックラッシは、第1方向D1に沿う距離寸法である。第1のギヤドモータ2Aと第2のギヤドモータ2Bとは、部品精度などに依存して、互いに異なるバックラッシを有する場合がある。この場合、一方のギヤドモータ2が可動代h1、h2の範囲内でバックラッシの差分以上動作しなければ、他方のギヤドモータ2に負荷を負担させることができない。
【0086】
バックラッシの差分の最大値は、各部品の寸法精度の累積などによって算出される。一例として、第1のギヤドモータ2Aのバックラッシがピニオンギヤ5の回転角に換算して2°であり、第2のギヤドモータ2Bのバックラッシがピニオンギヤ5の回転角に換算して3°である場合について考える。この場合、1°の回転角の差分があるため、ピニオンギヤ5のピッチ円直径を4mmとして、ラックギヤの動作距離に換算したバックラッシの差分としては、4×π×1°/360°の式から約0.035mmであると求められる。
【0087】
上述したように、本実施形態において、ステップ角に相当するラックギヤ3の動作距離は、例えば、約0.007mmである。また、本実施形態において、2つのギヤドモータ2のモータ本体20からラックギヤ3までの動力伝達経路におけるバックラッシとの差分は、例えば、0.035mmである。したがって、したがってこの実施形態において、可動代の和は0.042mm(=0.007mm+0.035mm)より大きければよい(h1+h2>0.042mm)。
【0088】
また、本実施形態において、2つのギヤドモータ2の第1方向D1の可動代h1、h2の和は、ラックギヤ3のギヤピッチの10%以下とすることが好ましい。2つのギヤドモータ2の第1方向D1の可動代h1、h2を過剰に大きくすると、フレーム10に対するギヤドモータ2のがたつきが顕著となる。これにより、モータ本体20駆動時の振動に起因して、がたつきが騒音の原因となる虞がある。本実施形態によれば、2つのギヤドモータ2の第1方向D1の可動代h1、h2が大きくなりすぎることがなく、静音性に優れた駆動装置1を提供できる。
【0089】
なお、
図3に示す可動代h1、h2の大きさは、分かり易さのために強調して大きく図示されたものである。実際の可動代h1、h2の大きさは、
図3に示す大きさと比較して十分に小さい。
【0090】
本実施形態において、フレーム10と2つのギヤドモータ2との間には、弾性部材E1、E2が挟み込まれる。また、ギヤドモータ2は、弾性部材E1、E2の圧縮代の範囲内でフレーム10に対して移動可能である。このため、ギヤドモータ2は、フレーム10に対して移動すると、弾性部材E1、E2から反力を受けて、元の位置に戻る。本実施形態によれば、ギヤドモータ2がフレーム10に対する可動代の範囲内で、可動方向(本実施形態において、第1方向D1)の一方側に偏ることがない。ギヤドモータ2がラックギヤ3の反力から開放された状態で、フレーム10に対して可動方向の両側に移動可能となり、2つのギヤドモータ2でラックギヤ3からの反力を分担し易くなる。
【0091】
弾性部材E1、E2の反力は、ギヤドモータ2の出力に応じて適宜決定される。弾性部材E1、E2は、1つのギヤドモータが可動代の範囲内で移動した際に、1つのギヤドモータ2の駆動によるラックギヤ3の推力と同程度の反力をギヤドモータ2に付与することが好ましい。弾性部材E1、E2は、可動代の範囲内の圧縮によって、1つのギヤドモータ2によるラックギヤ3の推力と同じ反力を得る弾性係数を有するものであることが好ましい。一例として、1つのギヤドモータ2によるラックギヤ3の推力が1.5kgf程度である場合、弾性部材E1、E2は、第1方向D1に可動代の範囲内で圧縮されることで、1.5kgf以上の反力を付与するものであることが好ましい。
【0092】
また、本実施形態によれば、フレーム10と2つのギヤドモータ2との間に弾性部材E1、E2が挟み込まれることで、駆動装置1に振動が発生した場合であっても、フレーム10とギヤドモータ2とが互いに衝突することを抑制できる。
【0093】
なお、本実施形態においては、フレーム10とギヤドモータ2との間に弾性部材E1、E2を介在させる場合について説明した。しかしながら、フレーム10と2つのギヤドモータ2との間に可動方向(本実施形態において第1方向D1)の隙間を設け、ギヤドモータ2が隙間の範囲内でフレーム10に対して移動できる構成を採用してもよい。
【0094】
<変形例>
図4は、第1実施形態の変形例の駆動装置1Aを示す平面図である。
本変形例の駆動装置1Aは、上述の実施形態と比較して、主にフレーム10Aの構成が異なる。
【0095】
本変形例のフレーム10Aは、フレーム本体11のみを有し、ホルダ19を有してない。2つのギヤドモータ2は、フレーム本体11に対して接着材Bによって接着固定される。本変形例の接着材Bは、弾性を有する。
【0096】
本変形例によれば、2つのギヤドモータ2とフレーム10Aとは、弾性を有する接着材Bによって互いに固定される。このため、ギヤドモータ2を接着材Bの弾性変形の範囲内で移動可動である。さらに、弾性変形した接着材Bは、移動したギヤドモータ2に対して復元力を与えてギヤドモータ2を元の位置に戻させる。したがって、本変形例によれば、ギヤドモータ2が可動代の範囲内で可動方向の一方側に偏ったまま留まることがない。加えて、本変形例によれば、ホルダ19を用いて、ギヤドモータ2を保持する場合と比較して部品点数の削減を図ることができる。
【0097】
図4には、接着材Bの塗布範囲を示す。本変形例において、接着材Bは、モータ本体20の外周面とフレーム10Aとの間に配置される。すなわち、接着材Bの塗布範囲は、ギヤドモータ2の軸方向一方側(+Z側)の端部側の領域に限られる。このため、ギヤドモータ2は、ピニオンギヤ5がラックギヤ3から受ける反力によって、接着材Bにより固定される軸方向一方側の端部を起点として、第1方向D1に揺動する。
【0098】
本変形例によれば、接着材Bの塗布領域が、可動方向である第1方向D1と直交する軸方向において、ピニオンギヤ5から十分に離間している。このため、接着材Bがわずかなに弾性変形することでピニオンギヤ5が配置されるギヤドモータ2の軸方向他方側(-Z側)をフレーム10Aに対し十分に大きく移動させることができる。結果的に、接着材Bに加わる負荷を抑制し、接着材Bの損傷および剥離を抑制でき、ギヤドモータ2とフレーム10Aとの固定の確実性を高めることができる。
【0099】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の駆動装置101の断面図である。
以下
図5を基に、駆動装置101について説明する。本実施形態の駆動装置101は、上述の実施形態と比較して、フレーム10に対するギヤドモータ102の可動代の方向が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
本実施形態の駆動装置101は、上述の実施形態と同様に、2つのギヤドモータ102と、ラックギヤ3と、フレーム10と、を備える。ギヤドモータ102は、モータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および枠部材140と、を有する。
以下の説明において、2つのギヤドモータ102を区別する場合、一方を第1のギヤドモータ102Aと呼び、他方を第2のギヤドモータ102Bと呼ぶ。
【0101】
本実施形態の枠部材140は、上述の実施形態と比較して、側壁部143の第1方向D1外側を向く外側面143aの形状が異なる。なお、「第1方向D1の外側」とは、第1方向D1に沿ってギヤドモータ102の各中心軸線Jから離れる方向を意味する。
【0102】
枠部材140の外側面143aは、第1傾斜面143bと第2傾斜面143cとを有する。第1傾斜面143bおよび第2傾斜面143cは、それぞれ平坦面である。第1傾斜面143bは、中心軸線Jより上側(すなわち、+Y側)の領域に設けられる。一方で、第2傾斜面143cは、中心軸線Jより下側(すなわち、-Y側)の領域に設けられる。
【0103】
第1傾斜面143bとフレーム10との間には、隙間が設けられる。第1傾斜面143bは、上側に向かうに従い対向するフレーム10の面(例えば第1側壁部13の面)から離間する。また、第2傾斜面143cとフレーム10との間には、隙間が設けられる。第2傾斜面143cは、下側に向かうに従い対向するフレーム10の面から離間する。ギヤドモータ102は、フレーム10に対して、回転方向θ1、θ2に移動可能である。
【0104】
本実施形態において、第1のギヤドモータ102Aは、フレーム10に対し第1の中心軸線J1周りの回転方向θ1に移動可能な可動代α1を有する。同様に、第2のギヤドモータ102Bは、フレーム10に対し第2の中心軸線J2周りの回転方向θ2に移動可能な可動代α2を有する。すなわち、ギヤドモータ102は、可動代α1、α2は、各中心軸線J周りに回転移動可能である。第1のギヤドモータ102Aと第2のギヤドモータ102Bとは、それぞれの可動代α1、α2の和(すなわち、α1+α2)の範囲内で、近接、離間が可能である。
【0105】
本実施形態によれば、2つのギヤドモータ102のうち一方にラックギヤ3から過大な反力が加わった場合に、当該ギヤドモータ102は、反力によって可動代α1、α2の範囲内で中心軸線J周りを回転移動する。これによって、モータシャフト29の回転の遅延を抑制することができ、モータ本体20の脱調を抑制できる。さらに、一方のギヤドモータ102が中心軸線J周りに回転移動する間に他方のギヤドモータ102のピニオンギヤ5の回転が進んでラックギヤ3との面圧を高める。これにより、他方のピニオンギヤ5におけるラックギヤ3の反力の負担率が高まる。すなわち、2つのギヤドモータ102からラックギヤ3に伝達する応力を同程度とすることができ、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0106】
本実施形態では、第1のギヤドモータ102Aおよび第2のギヤドモータ102Bは、それぞれ、フレーム10に対し移動可能である場合について説明した。しかしながら、2つのギヤドモータ102の相対的な位置が変わればよいため、2つのギヤドモータ102のうち一方のみが、フレーム10に対し中心軸線J周りの回転方向θ1、θ2に移動可能であってもよい。すなわち、2つのギヤドモータ102のうち一方又は両方が、フレーム10に対し中心軸線J周りの回転方向θ1、θ2に移動可能な可動代α1、α2を有していれば、上述の効果を得ることができる。
【0107】
本実施形態において、2つのギヤドモータ102の中心軸線J周りの回転方向θ1、θ2の可動代α1、α2の和(すなわち、α1+α2)は、ステップ角に相当するラックギヤ3の回転角と、2つのギヤドモータ102のモータ本体20からラックギヤ3までの動力伝達経路におけるバックラッシに相当するピニオンギヤ5の回転角の差分と、の和より大きい。このため、2つのギヤドモータ102のうちラックギヤ3から大きな反力を受ける一方が脱調する前に、バックラッシ分のガタを吸収し、さらに他方のギヤドモータ102にラックギヤ3からの反力の一部を担わせることができる。これにより、2つのモータ本体20の脱調を効果的に抑制できる。
【0108】
また、本実施形態において、2つのギヤドモータ102の中心軸線J周りの回転方向θ1、θ2の可動代α1、α2の和は、ピニオンギヤ5のギヤピッチ角の10%以下とすることが好ましい。2つのギヤドモータ102の回転方向θ1、θ2の可動代α1、α2を過剰に大きくすると、フレーム10に対するギヤドモータ102のがたつきが顕著となる。これにより、モータ本体20駆動時の振動に起因して、がたつきが騒音の原因となる虞がある。本実施形態によれば、2つのギヤドモータ102の回転方向θ1、θ2の可動代α1、α2が大きくなりすぎることがなく、静音性に優れた駆動装置101を提供できる。
【0109】
なお、
図3に示す可動代α1、α2の大きさは、分かり易さのために強調して大きく図示されたものである。実際の可動代α1、α2の大きさは、
図3に示す大きさと比較して十分に小さい。
【0110】
本実施形態においても、2つのピニオンギヤ5の軸間距離dは、ラックギヤ3のギヤピッチpの整数倍に一致するよう構成される。このため、2つのピニオンギヤ5に加わるラックギヤ3からの反力の大きさを近づけることができる。これにより、モータ本体20の脱調が抑制され、2つのギヤドモータ102からラックギヤ3に安定的に動力を伝達できる。これにより、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0111】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の駆動装置201の断面図である。
図7は、第3実施形態のギヤドモータ202の部分斜視図である。
以下
図6および
図7を基に、駆動装置201について説明する。本実施形態の駆動装置201は、第2実施形態と同様に、ギヤドモータ202の可動代の方向が回転可能であるが、その構造が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
本実施形態の駆動装置201は、上述の実施形態と同様に、2つのギヤドモータ202と、ラックギヤ3と、フレーム10と、を備える。ギヤドモータ202は、モータ本体20、遊星歯車機構30、ピニオンギヤ5、および枠部材240と、を有する。
【0113】
以下の説明において、2つのギヤドモータ202を区別する場合、一方を第1のギヤドモータ202Aと呼び、他方を第2のギヤドモータ202Bと呼ぶ。同様に、2つの枠部材240のうち、第1のギヤドモータ202Aに備えられる一方を第1の枠部材240Aと呼び、第2のギヤドモータ202Bに備えられる他方を第2の枠部材240Bと呼ぶ。
【0114】
図7に示すように、本実施形態の枠部材240は、第1支持壁部41と、第2支持壁部42と、一対の側壁部243と、を有する。第1支持壁部41、第2支持壁部42、および一対の側壁部243は、上側から見て矩形状に配置される。
【0115】
一対の側壁部243は、ピニオンギヤ5に対して第1方向D1の両側に位置する。それぞれの側壁部243は、ピニオンギヤ5の反対側を向く外側面243aを有する。
【0116】
外側面243aには、軸方向に沿って並ぶ2つの凸部243bが設けられる。凸部243bは、第1方向の外側(中心軸線Jから離れる方向)に突出する。凸部243bは、正面から見て矩形状である。
【0117】
2つの凸部243bのうち一方は、外側面243aの軸方向一方側の端部近傍に配置され、他方は、軸方向他方側の端部近傍に配置される。2つの凸部243bは、中心軸線Jより上側に配置される。凸部243bは、外側面243aにおいて、上側に偏った位置に配置される。
【0118】
図6に示すように、第1の枠部材240Aは、第1側壁部13と区画壁部16との間に配置される。第1の枠部材240Aの一方の外側面243aは第1側壁部13に対向し、他方の外側面243aは区画壁部16に対向する。また、一方の外側面243aの凸部243bは、第1側壁部13に接触し、他方の外側面243aの凸部243bは区画壁部16に接触する。
【0119】
同様に、第2の枠部材240Bは、第2側壁部14と区画壁部16との間に配置される。第2の枠部材240Bの一方の外側面243aは第2側壁部14に対向し、他方の外側面243aは区画壁部16に対向する。また、一方の外側面243aの凸部243bは、第2側壁部14に接触し、他方の外側面243aの凸部243bは区画壁部16に接触する。
【0120】
枠部材240は、凸部243bの先端面において、フレーム10により支持される。また、枠部材240は、凸部243b以外の領域で、フレーム10から離間する。ピニオンギヤ5がラックギヤ3から第1方向D1の力を受けると、枠部材240は、凸部243bの先端面を支点として弾性変形する。このとき、一対の側壁部243は、互いに略平行な状態を維持しながら傾く方向に変位し、ギヤドモータ202が、フレーム10に対して移動する。より具体的には、ギヤドモータ202の中心軸線Jは、中心軸線Jと平行な揺動中心軸線C周りを回転移動する。
【0121】
揺動中心軸線Cは、軸方向から見て2つの凸部243bの間に配置される。また、軸方向から見て揺動中心軸線Cは、中心軸線Jに対し第1方向D1と直交する方向に離間して配置される。ギヤドモータ202は、揺動中心軸線C周りに回転移動することで、第1方向D1に移動する。ギヤドモータ202は、フレーム10に対し、揺動中心周りに回転移動する可動代β1、β2を有する。回転移動の可動代β1、β2は、第1方向D1成分を有するため、ギヤドモータ202は、第1方向D1に移動可能な可動代を有する。
【0122】
本実施形態によれば、2つのギヤドモータ202のうち一方にラックギヤ3から過大な反力が加わった場合に、当該ギヤドモータ202は、反力によって可動代β1、β2の範囲内で揺動中心軸線C周りを回転移動する。これによって、モータシャフト29の回転の遅延を抑制することができ、モータ本体20の脱調を抑制できる。さらに、一方のギヤドモータ202が揺動中心軸線C周りに回転移動する間に他方のギヤドモータ202のピニオンギヤ5の回転が進んでラックギヤ3との面圧を高める。これにより、他方のピニオンギヤ5におけるラックギヤ3の反力の負担率が高まる。すなわち、2つのギヤドモータ202からラックギヤ3に伝達する応力を同程度とすることができ、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0123】
本実施形態では、第1のギヤドモータ202Aおよび第2のギヤドモータ202Bは、それぞれ、フレーム10に対し揺動回転可能である場合について説明した。しかしながら、2つのギヤドモータ202の相対的な位置が変わればよいため、2つのギヤドモータ202のうち一方のみが、フレーム10に対し揺動回転可能であってもよい。すなわち、2つのギヤドモータ202のうち一方又は両方が、フレーム10に対し揺動中心軸線C周りに回転移動可能な可動代β1、β2を有していれば、上述の効果を得ることができる。
【0124】
上述したように、ギヤドモータ202は、第1方向D1成分を含む可動代β1、β2を有するため、結果的に第1方向D1の可動代を有する。本実施形態において、2つのギヤドモータ202の第1方向D1の可動代の和は、第1実施形態と同様に、ステップ角に相当するラックギヤ3の動作距離と、2つのギヤドモータ202のモータ本体20からラックギヤ3までの動力伝達経路におけるバックラッシとの差分と、の和より大きいことが好ましい。さらに、本実施形態において、2つのギヤドモータ202の第1方向D1の可動代の和は、第1実施形態と同様に、ラックギヤ3のギヤピッチの10%以下とすることが好ましい。
【0125】
なお、
図6に示す可動代β1、β2の大きさは、分かり易さのために強調して大きく図示されたものである。実際の可動代β1、β2の大きさは、
図6に示す大きさと比較して十分に小さい。
【0126】
本実施形態においても、2つのピニオンギヤ5の軸間距離dは、ラックギヤ3のギヤピッチpの整数倍に一致するよう構成される。このため、2つのピニオンギヤ5に加わるラックギヤ3からの反力の大きさを近づけることができる。これにより、モータ本体20の脱調が抑制され、2つのギヤドモータ202からラックギヤ3に安定的に動力を伝達できる。これにより、ラックギヤ3の推力を高めることができる。
【0127】
本実施形態において、ギヤドモータ202は、枠部材240が弾性変形することで、フレーム10に対して移動する。弾性変形した枠部材240は、ギヤドモータ202を基に位置に戻す方向に復元力としての反力を生じる。本実施形態によれば、ギヤドモータ202がフレーム10に対する可動代の範囲内で、可動方向の一方側に偏ることを抑制でき、2つのギヤドモータ202でラックギヤ3からの反力を分担し易くなる。
【実施例0128】
次に、2つのギヤドモータの各ピニオンギヤによって1つのラックギヤを駆動する駆動装置において、ピニオンギヤの軸間距離とラックギヤのギヤピッチとの関係を検証する検証試験について説明する。
【0129】
ここでは、駆動装置として、サンプルNo.1~No.3の駆動装置を用意した。駆動装置のサンプルは、第1実施形態と同様の構成を有するが、2つのギヤドモータの軸間距離が可変である点が主に異なる。なお、各サンプルは、全て同じ構成を有し、サンプルごとの個体差のみを内包する。
【0130】
各サンプルの駆動装置において、2つのギヤドモータの減速比は、ともに118.31(約120)である。また、各サンプルの駆動装置において、モータ本体は、2相のステッピングモータであり、ステップ角はともに22.5°である。各サンプルのラックギヤのギヤピッチは、1.1mmである。なお、以下の説明において、ラックギヤのギヤピッチの値を単にpとする場合がある。
【0131】
各サンプルにおいて、ピニオンギヤの軸間距離を、変化させてラックギヤの推力を測定した。各サンプルの試験では、軸間距離を、少なくとも6.05mm(すなわち、p×5.5)~6.6mm(すなわち、p×6.0)の範囲で変化させた。
【0132】
測定結果を
図8に示す。なお、
図8において縦軸は、ラックギヤの推力を示し、横軸は、2つのピニオンギヤの軸間距離を示す。
【0133】
図8に示すように、2つのピニオンギヤの軸間距離を調整することで、ラックギヤの推力がサインカーブを描くように変化することが確認された。また、ラックギヤの推力は、軸間距離をラックギヤのギヤピッチの整数倍(p×6.0)にした際に最大となり、整数倍の中間の値(p×5.5)にした際に最小になることが確認された。
なお、推力の絶対値の大小は、モータ本体の出力効率、遊星歯車機構の伝達効率などの個体差によるものであると考えられる。
【0134】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0135】
例えば、駆動装置は、第1および第2のギヤドモータに加えて、さらに第3のギヤドモータを備え、ラックギヤの動力をさらに高めてもよい。また、上述の実施形態では、モータ本体がステッピングモータである場合について説明した。しかしながら、上述の構成を有することで、モータ本体として他種のモータを採用した場合であっても駆動力を高める効果を得ることができる。
1,1A,101…駆動装置、2,102…ギヤドモータ、3…ラックギヤ、5…ピニオンギヤ、10,10A…フレーム、20…モータ本体、30…遊星歯車機構(伝達機構)、B…接着材、d…軸間距離、D1…第1方向、E1、E2…弾性部材、h1,h2,α1,α2…可動代、J…中心軸線、p…ギヤピッチ、θ1,θ2…回転方向