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特開2022-89452乗客コンベアの消毒剤供給装置及び乗客コンベア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089452
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】乗客コンベアの消毒剤供給装置及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B31/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201859
(22)【出願日】2020-12-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321FB00
3F321HA31
(57)【要約】
【課題】乗客コンベア上での乗客の集中を効果的に防ぐことができる乗客コンベアの消毒剤供給装置及び乗客コンベアを提供する。
【解決手段】消毒剤供給装置4は、乗客コンベア1の乗り口3に設けられ、搬送部2に乗り込もうとする乗客の手指に消毒剤を供給するものであって、制御部と、消毒剤を吐出する吐出部41とを備え、制御部は、消毒剤の吐出後所定時間を次回の消毒剤の吐出までの待機状態として設定する設定手段を備える。これにより、乗客は、消毒剤供給装置4の前で立ち止まって待機することを余儀なくされ、この結果、必然的に先の乗客との間隔が広げられ、搬送部2上での乗客の集中が防止される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗り口に設けられ、搬送部に乗り込もうとする乗客の手指に消毒剤を供給する消毒剤供給装置であって、
制御部と、
消毒剤を吐出する吐出部とを備え、
制御部は、消毒剤の吐出後所定時間を次回の消毒剤の吐出までの待機状態として設定する設定手段を備える
乗客コンベアの消毒剤供給装置。
【請求項2】
状態表示部を備え、
制御部は、待機状態の設定に基づき、待機状態である旨の表示を行うように状態表示部を制御する
請求項1に記載の乗客コンベアの消毒剤供給装置。
【請求項3】
制御部は、非待機状態において、消毒剤の吐出が可能な使用可状態である旨の表示を行うように状態表示部を制御する
請求項2に記載の乗客コンベアの消毒剤供給装置。
【請求項4】
制御部は、待機状態の設定に基づき、消毒剤の吐出を不能な状態に制御する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの消毒剤供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の消毒剤供給装置を乗り口に備える
乗客コンベア。
【請求項6】
降り口にも消毒剤供給装置を備えるが、設定手段は不作動とされる
請求項5に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
搬送部は、複数の踏段が無端状に連結されて循環駆動される無端搬送体を備え、
待機状態の所定時間は、踏段が2つ先の踏段の位置に進むのに要する時間以上の時間に設定される
請求項5又は請求項6に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの乗客に消毒剤を供給する乗客コンベアの消毒剤供給装置及び乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウイルスの感染流行を受けて、人と人とが一定の距離を保つ、いわゆる社会的距離(ソーシャルディスタンス)という考え方が導入されるようになった。社会的距離という考え方は、新型コロナウイルスに限らず、細菌やその他のウイルスに対しても有効であるとして、今後ますます普及していくものと考えられる。
【0003】
社会的距離の実現は、不特定多数の者が比較的接近した状態で利用するエスカレータや動く歩道といった乗客コンベアにおいても望ましい。社会的距離の実現を目的としたものではないが、社会的距離の実現に寄与し得るものとして、特許文献1に記載された乗客コンベアがある。この乗客コンベアは、踏段の表面に対するマークの付与の仕方を工夫することにより、各乗客を離れた踏段に立たせ、乗客コンベア上での乗客の集中を防ぐ、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-61975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された乗客コンベアにおいては、必ずしも乗客がマークの意味を理解するとは限らない。また、乗客によっては、足元に目を向けない者もいる。したがって、特許文献1に記載された乗客コンベアでは、乗客コンベア上での乗客の集中を防ぐ効果が不十分である。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、乗客コンベア上での乗客の集中を効果的に防ぐことができる乗客コンベアの消毒剤供給装置及び乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアの消毒剤供給装置は、
乗客コンベアの乗り口に設けられ、搬送部に乗り込もうとする乗客の手指に消毒剤を供給する消毒剤供給装置であって、
制御部と、
消毒剤を吐出する吐出部とを備え、
制御部は、消毒剤の吐出後所定時間を次回の消毒剤の吐出までの待機状態として設定する設定手段を備える
乗客コンベアの消毒剤供給装置である。
【0008】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの消毒剤供給装置の一態様として、
状態表示部を備え、
制御部は、待機状態の設定に基づき、待機状態である旨の表示を行うように状態表示部を制御する
との構成を採用することができる。
【0009】
また、この場合、
制御部は、非待機状態において、消毒剤の吐出が可能な使用可状態である旨の表示を行うように状態表示部を制御する
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る乗客コンベアの消毒剤供給装置の他態様として、
制御部は、待機状態の設定に基づき、消毒剤の吐出を不能な状態に制御する
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアは、
上記消毒剤供給装置を乗り口に備える
乗客コンベアである。
【0012】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
降り口にも消毒剤供給装置を備えるが、設定手段は不作動とされる
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベアの他態様として、
搬送部は、複数の踏段が無端状に連結されて循環駆動される無端搬送体を備え、
待機状態の所定時間は、踏段が2つ先の踏段の位置に進むのに要する時間以上の時間に設定される
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送部に乗り込もうとする乗客が消毒剤の吐出を受けた後、次に搬送部に乗り込もうとする乗客が消毒剤の吐出を受けるまでに、所定時間の待機状態が発生する。これにより、必然的に乗客同士が引き離され、本発明に係る消毒剤供給装置を備えない一般的な乗客コンベアの乗客搬送態様に比べ、乗客間の間隔が広くなる乗客搬送態様となる。このため、本発明によれば、乗客コンベア上での乗客の集中を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態に係るエスカレータの乗り口部分の斜視図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係る消毒剤供給装置の正面図である。図1(c)は、消毒剤供給装置の側面図である。
図2図2は、消毒剤供給装置の内部構成を示す断面図である。
図3図3(a)は、乗り口に設置される消毒剤供給装置の消毒剤吐出処理のフローチャートである。図3(b)は、降り口に設置される消毒剤供給装置の消毒剤吐出処理のフローチャートである。
図4図4(a)は、消毒剤供給装置を備えるエスカレータの乗客搬送態様の説明図である。図4(b)は、消毒剤供給装置を備えない一般的なエスカレータの乗客搬送態様の説明図である。
図5図5は、拡張例に係る乗り口部分の斜視図である。
図6図6(a)は、乗り口に設置される消毒剤供給装置の別の実施形態に係る消毒剤吐出処理のフローチャートである。図6(b)は、さらに別の実施形態に係る消毒剤吐出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態として、乗客コンベアの一つであり、消毒剤供給装置を備えるエスカレータについて、図1ないし図5を参酌して説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、エスカレータ1は、搬送部2と、乗降口3とを備える。搬送部2は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体であるトラス(図示しない)に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。乗降口3は、乗り口と降り口とからなり、搬送部2の各端部に設けられる。本実施形態においては、エスカレータ1は、乗客を階下から階上に搬送する設定となっている。このため、図1(a)の乗降口3は、乗り口である。設定を逆に切り替えると、乗り口は降り口に、降り口は乗り口に切り替わり、乗客を階上から階下に搬送する設定となる。
【0018】
搬送部2は、無端搬送体20と、ハンドレール22と、欄干パネル23とを備える。無端搬送体20は、複数の踏段(ステップ)21,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール22は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体20と連動して循環駆動される。欄干パネル23は、下辺部がトラスに支持され、ハンドレール22を循環移動可能に支持する。ハンドレール22及び欄干パネル23は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0019】
乗降口3は、乗り口及び降り口ともに、フロアプレート30と、ポール31と、進入防止柵32とを備える。フロアプレート30は、乗降口3の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。フロアプレート30の先端縁は、無端搬送体20の上面に接し、搬送部2と乗降口3との境界を画する。ポール31は、通路の左右に一対設けられ、通路の端(始端及び終端)に設置される。乗客は、一対のポール31,31間を通って、乗り口3に進入し、一対のポール31,31間を通って、降り口から退出する。進入防止柵32は、通路の左右に一対設けられ、ポール31と搬送部2との間に設置される。進入防止柵32は、乗客が通路を通らずに側方から乗り口3に進入することを防止する。
【0020】
ポール31は、人検知センサ(図示しない)を備える。人検知センサは、乗り口3に進入した乗客を検知し、降り口から退出する乗客を検知する。人検知センサは、たとえば2種類がある。一つの人検知センサは、エリアセンサである。もう一つの人検知センサは、ラインセンサである。これらセンサの組み合わせにより、乗り口3に進入した乗客や降り口から退出する乗客の数を正確に把握することができる。
【0021】
乗降口3は、乗り口及び降り口ともに、消毒剤供給装置4を備える。消毒剤供給装置4は、たとえばポール31に設けられる。消毒供給装置4は、アルコール系や次亜塩素酸系の液状又はジェル状の消毒剤をエスカレータ1の乗客に供給する装置である。本実施形態においては、消毒供給装置4は、液体の消毒剤(消毒液)を噴射して供給する消毒液噴射装置の形態を採る。また、本実施形態においては、エスカレータ1は、たとえば親子や夫婦といった同行者が踏段21に横並びに立てる幅広タイプであるところ、同行者が同時に消毒剤供給装置4を使用できるよう、消毒剤供給装置4は、通路の左右に(たとえば各ポール31に)一対設けられる。
【0022】
図1(b)及び(c)に示すように、消毒剤供給装置4は、外部構成として、筐体40と、吐出(噴射)部41と、受け部42と、案内表示部43と、状態表示部44とを備える。吐出部41は、消毒剤が吐出される部分である。本実施形態においては、吐出部41は、下方に消毒剤を吐出する。受け部42は、吐出部41から吐出されたが、乗客に供されなかった消毒剤を受ける部分であり、消毒剤が床に垂れたり、飛散しないようにするためのものである。案内表示部43は、乗客に、エスカレータ1を利用する前に、消毒を促す旨の表示を行う。本実施形態においては、案内表示部43は、ポール31の表面に貼られたステッカー、ラベル又はプレート等の公知の表示手段である。
【0023】
状態表示部44は、消毒剤供給装置4の状態を表示する。すなわち、状態表示部44は、消毒剤供給装置4が消毒剤の吐出が可能な使用可状態(第1状態)にあるか、消毒剤の吐出が不能な待機状態(第2状態)にあるのかを表示する。状態表示部44は、第1状態表示部44aと、第2状態表示部44bとを備える。第1状態表示部44aは、消毒剤供給装置4が第1状態にあることを表示する。第1状態表示部44aは、たとえば緑色に発光するLED光源である。第2状態表示部44bは、消毒剤供給装置4が第2状態にあることを表示する。第2状態表示部44bは、たとえば赤色に発光するLED光源である。
【0024】
図2に示すように、消毒剤供給装置4は、内部構成として、ノズル45と、管路46と、ジョイント47と、タンク48とを備える。ノズル45とジョイント47とは、剛性又は可撓性の管路46で接続される。ジョイント47は、カートリッジ式のタンク48の口部48aが挿入されると、口部48aの弁構造を弁閉状態から弁開状態に切り替えて、口部48aと接続される。タンク48は、消毒剤を収容し、貯蔵する。タンク48は、カートリッジ式でなく、固定式であってもよい。これらの構成により、消毒剤は、管路46を介してノズル45に供給可能となる。
【0025】
また、消毒剤供給装置4は、内部構成として、制御部50と、ポンプ51と、電磁弁52と、手指検知センサ53とを備える。ポンプ51は、管路46上に配置され、管路46の消毒剤をノズル45に送給する。電磁弁52は、管路46上に配置され、管路46を開閉する。手指検知センサ53は、吐出部41内に配置され、消毒剤の吐出領域(吐出部41の下方領域)に進入した乗客の手指を検知する検知手段である。手指検知センサ53は、ノズル45の近傍に配置される。これらは、制御部50に接続され、制御部50の制御下に置かれる。すなわち、制御部50は、手指検知センサ53による手指の検知に基づき、消毒剤の吐出を制御する。
【0026】
なお、消毒剤供給装置4の筐体40は、ポール31の上端に脱着自在に取り付けられ、ポール31とは別体の構造である。ただし、筐体40は、ポール31の断面形状(円形や四角形)と同じ断面形状を有し、ポール31の上端に取り付けられると、外観的に、ポール31と一体化する。筐体40の上部は、開閉可能な蓋構造40aとなっており、蓋40aを開くことにより、カートリッジ48をジョイント47から分離して取り外し、消毒剤を補充することができる。筐体40の正面側の下部からは、係止片40bが突出している。係止片40bは、受け部42の基部に差し込むことができ、これにより、受け部(トレイ)42は、筐体40に着脱自在に取り付けられる。筐体40の正面側の壁部には、透光性を有する窓部40cが形成される。状態表示部44のLED光源は、窓部40cの内側に配置され、窓部40cを介して外部から視認可能となる。
【0027】
消毒剤供給装置4の制御部50は、消毒剤の吐出を制御するほか、設定手段と、時計手段とを備える。設定手段は、消毒剤の吐出後所定時間を次回の消毒剤の吐出までの待機状態として設定するものである。時計手段は、所定時間を計時するタイマーである。具体的には、図3(a)に示すように、乗客の動作に起因して消毒剤の吐出が行われる(S10、S12)と、使用可フラグがOFFとなって待機状態が設定される(S22)。そして、待機状態は、所定時間が経過して(S24がYES)、使用可フラグがONになって待機状態が解除される(S20)まで継続する。
【0028】
使用可フラグがOFFとなって待機状態が設定されると、状態表示部44において、第1状態表示部44aによる(緑色の発光)表示(使用可表示、S21)から、第2状態表示部44bによる(赤色の発光)表示に切り替わる(待機表示、S23)。また、使用可フラグがOFFとなって待機状態が設定されると、制御部50は、ポンプ51を作動させない、電磁弁52を閉じる等して、消毒剤の吐出を不能な状態に制御する(S11がNO)。これにより、先の乗客が消毒剤供給装置4を使用した後所定時間は、次の乗客は、消毒剤供給装置4の前で立ち止まって待機することを余儀なくされる。そして、この結果、必然的に先の乗客との間隔が広げられることとなる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、搬送部2に乗り込もうとする乗客が消毒剤の吐出を受けた後、次に搬送部2に乗り込もうとする乗客が消毒剤の吐出を受けるまでに、所定時間の待機状態が発生する。これにより、必然的に乗客同士が引き離され、消毒剤供給装置4を備えない一般的な乗客コンベアの乗客搬送態様(図4(b)参照)に比べ、乗客間の間隔が広くなる乗客搬送態様となる(図4(a)参照)。このため、本実施形態によれば、搬送部2上において社会的距離(ソーシャルディスタンス)を確保することができ、搬送部2上での乗客の集中を効果的に防ぐことができる。
【0030】
なお、搬送部2上での乗客の離隔は、少なくとも踏段21の1段おき以上とすべきことから、待機状態の所定時間(待機時間)は、踏段21が2つ先の踏段21の位置に進むのに要する時間以上の時間に設定される。ただし、乗客の離隔が大きくなるほど輸送効率が低下する。そこで、待機時間は、両者のバランスを考慮して決定される。具体的には、待機時間は、乗客の離隔が1段おきないし4段おきとなるよう、搬送部2の定格速度と、踏段21の奥行長さとから適宜定められる。待機時間は、秒単位の時間であり、2秒ないし5秒といった数秒の時間である。本実施形態においては、待機時間は、4秒程度である。
【0031】
また、本実施形態によれば、(たとえば赤色発光をもって)第2状態表示部44bによる待機表示が行われる。このため、乗客は、消毒剤供給装置4が待機状態にあることを視覚的及び感覚的に把握することができる。また、第2状態表示部44bによる待機表示は、たとえば赤色発光という経験的に注意喚起を促す表示と認識される表示である。このため、乗客に待機を促す効果、ひいては社会的距離を実現する効果を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、消毒剤供給装置4が待機状態にある間は、消毒剤の吐出が不能となる。このことからも、乗客に待機を促す効果、ひいては社会的距離を実現する効果を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、乗り口だけでなく、降り口にも、消毒剤供給装置4が設置される。このため、乗客は、エスカレータ1の利用前だけでなく、利用後の消毒を行うこともできる。ただし、降り口の消毒剤供給装置4においても、乗り口の消毒剤供給装置4の待機状態設定が行われるとすると、降り口で乗客が滞留するおそれがあり、安全上好ましくない。そこで、制御部50の設定手段は、待機状態設定の作動モードと不作動モードとの切り替えを可能とし、降り口の消毒剤供給装置4においては、不作動とされることが好ましい。具体的には、降り口の消毒剤供給装置4においては、図3(b)に示す、常時、消毒剤の吐出が可能な処理が行われる。なお、乗降口3の乗り口、降り口の設定の切り替えに伴い、消毒剤供給装置4のモードも自動又は手動で切り替えられるようになっている。
【0034】
ところで、消毒剤供給装置4を設置することにより、この周辺に乗客が滞留し、密状態が形成されてしまうことは避けなければならない。そこで、乗り口3(の消毒剤供給装置4の設置箇所)に至る乗客の流れを整列かつ社会的距離で離隔させたものとするために、拡張例として、図5に示すように、乗り口3(の消毒剤供給装置4の設置箇所)に至る床面に、左右の規制線55及び立ち位置表示56を設けるといった対策が有効である。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0036】
上記実施形態においては、待機状態の設定に基づき、待機表示と、消毒剤吐出不能制御の二つの方法が用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図6(a)に示すように、待機状態の設定に基づき、待機表示だけが行われるようにしてもよいし、図6(b)に示すように、待機状態の設定に基づき、消毒剤吐出不能制御だけが行われるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4は、乗り口及び降り口のそれぞれに設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。消毒剤供給装置は、少なくとも乗り口に設けられればよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4は、ポール31に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、消毒剤供給装置は、乗降口にスタンドを設置し、このスタンドに配置するようにしてもよい。要は、消毒剤供給装置は、乗客の通行のじゃまにならず、消毒剤の供給を受けやすい箇所であれば、乗降口のいずれの箇所に設置されるものであってもよい。そもそも、本発明においては、ポールも必須ではない。
【0039】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4は、ポール31に後付け的に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。消毒剤供給装置は、最初からポール内に組み込まれる一体式であってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、エスカレータ1は、2人が横並びに立てる幅広タイプであり、これに伴い、消毒剤供給装置4は、通路の左右のポール31に一対設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図5に示すように、エスカレータは、人が横並びに立てない幅の1人用であり、これに伴い、消毒剤供給装置は、いずれか一方のポールに設けられるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、エスカレータ1は、乗客がいない(人検知センサによって乗客が検知されない)状態では、搬送部2が停止し、乗客がいる(人検知センサによって乗客が検知される)と、搬送部2の運転が開始される、いわゆる自動エスカレータである。この自動運転は、拡張例として、人検知センサではなく、消毒剤供給装置4の手指検知センサや消毒剤の吐出動作をトリガーとして実施することができる。
【0042】
また上記実施形態においては、消毒剤供給装置4専用の制御部50が設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、乗客コンベアが備える制御部が消毒剤供給装置の制御部を兼ねるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4は、手指検知センサ53を用いた自動式である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。消毒剤供給装置は、手押し式又は足踏み式といった手動式であってもよい。なお、この手動式の消毒剤供給装置にあって、消毒剤吐出不能制御の方法としては、手押し又は足踏みに係る可動部が動かないように固定する電磁解除可能なロック構造などが考えられる。
【0044】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4が存在することないし乗客に消毒を促すことを表示する案内表示部43は、ステッカー等の手段である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。案内表示部は、ステッカー等の手段に加え、またはこれの代わりに、ポール等に設けられたディスプレイを用いた視覚的表示部や、ポール又はこの近辺に設けられたスピーカを用いた音声表示部を採用することもできる。また、これらの場合、乗降口(のポール)に設けられる上述の人検知センサが乗客を検知するたびに、表示を行うようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、消毒剤供給装置4の筐体40内に収容されるタンク48に消毒剤を収容、貯蔵するようにしている。したがって、貯蔵量はある程度の限度があり、消毒剤が消費されてなくなる事態が少なからず発生する。そこで、タンク内の消毒剤の残量を検知する残量検知センサを設け、残量が少なくなれば、管理者に直接または間接に報知する機能を付加するのが好ましい。また、タンクを大容量化するために、管路をポール内を通し、大容量のタンクを床下に設置することも可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータ1である。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1…エスカレータ、2…搬送部、20…無端搬送体、21…踏段、22…ハンドレール、23…欄干パネル、3…乗降口、30…フロアプレート、31…ポール、32…進入防止柵、4…消毒剤供給装置、40…筐体、40a…蓋構造、40b…係止片、40c…窓部、41…吐出部(噴射部)、42…受け部、43…案内表示部、44…状態表示部、44a…第1状態表示部、44b…第2状態表示部、45…ノズル、46…管路、47…ジョイント、48…タンク、48a…口部、50…制御部、51…ポンプ、52…電磁弁、53…手指検知センサ、55…規制線、56…立ち位置表示
図1
図2
図3
図4
図5
図6