(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089483
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
B26B 13/06 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B26B13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201903
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】518327419
【氏名又は名称】株式会社ローレル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】小堺 哲男
(72)【発明者】
【氏名】彭 月桂
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065AA03
3C065BA03
3C065BA06
3C065BA31
3C065BB02
3C065FA05
(57)【要約】
【課題】撚糸又は編糸をきれいに切断することのできる鋏を提供する。
【解決手段】鋏1は、撚糸又は編糸90を切断するための鋏であって、一対の鋏体が交差して連結軸により連結して開閉可能とし、鋏体は、内側に沿って刃部15を有する平板状の剛性の高い刃体10と刃体10に接続するハンドル部とを備え、刃部15の刃付け角θが80~90度であり、刃部15は、開閉の間、刃部15の刃線がカーブ形状を有することにより、交差する刃部15のはさみ角が15~30度となる形状を保持可能である。撚糸又は編糸90の材質は、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、フロロカーボン樹脂、綿、羊毛、絹、及び麻からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。刃体15は、厚さが2.0mm以上であり、ロックウェルCスケール硬さが48~56のステンレス製であることが好ましい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚糸又は編糸を切断するための鋏であって、
一対の鋏体が交差して連結軸により連結して開閉可能とし、
前記鋏体は、内側に沿って刃部を有する平板状の剛性の高い刃体と該刃体に接続するハンドル部とを備え、
前記刃部の刃付け角が80~90度であり、
前記刃部は、開閉の間、該刃部の刃線がカーブ形状を有することにより、交差する該刃部のはさみ角が15~30度となる形状を保持可能であることを特徴とする鋏。
【請求項2】
前記撚糸又は編糸の材質は、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、フロロカーボン樹脂、綿、羊毛、絹、及び麻からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
前記刃体は、前記刃部の上部に前記刃付け角より小さな傾斜角で接続形成された傾斜部を備える請求項1又は2に記載の鋏。
【請求項4】
前記刃体の上面が先端側に向かって傾斜して形成されている先細部を有する請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の鋏。
【請求項5】
前記刃体は、厚さが2.0mm以上であり、ロックウェルCスケール硬さが48~56のステンレス製である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚糸又は編糸を切断するための鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
撚糸又は編糸を、鋏で切断するには、例えば
図8(a)に示すように、鋏7の1対の刃体70の間に糸90を挿入し、刃部75を上下に交差させて切断する。
しかしながら、複数本からなる撚糸又は編糸は強固で、
図8(b)に示すように、比較的鋭角からなる刃部75からなる鋏7の先端部77が糸90に食い込みやすく、
図9(a)に示すように滑ってしまい、
図9(b)に示すように切断に至らず、切り残し部95が生じやすい。更に、
図9(c)に示すように、切断しても、切断した糸91、92のように端部91b、92bにおいて複数の糸がばらけた状態になりがちである。
また、
図10(a)に示すように、はさみ角αの大きな鋏7で撚糸又は編糸を切断しようとすると、
図10(b)に示すように、刃部75の刃面75aから糸90が逃げてしまい、切断するのが困難となる。
【0003】
ここで、刃に滑り防止部を設けた鋏が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の鋏は、先端付近の刃に複数の凹部を有する滑り防止部を備えている。そのため、滑りやすい糸であっても刃先から逃げてしまうのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の鋏では、その刃の形状から糸を切断すると切断面が潰れてしまうことになる。このため、撚糸又は編糸を切断すると、その切断面は、スパッと切断した状態にはなり得ないといえる。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、撚糸又は編糸をきれいに切断することのできる鋏を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る鋏の特徴は、撚糸又は編糸を切断するための鋏であって、一対の鋏体が交差して連結軸により連結して開閉可能とし、前記鋏体は、内側に沿って刃部を有する平板状の剛性の高い刃体と該刃体に接続するハンドル部とを備え、前記刃部の刃付け角が80~90度であり、前記刃部は、開閉の間、該刃部の刃線がカーブ形状を有することにより、交差する該刃部のはさみ角が15~30度となる形状を保持可能であることを特徴とする。
ここで、「撚糸」は複数本の糸を撚り合わせた糸である。本数は特に限定されず、2~16本撚り等とすることができる。また、「編糸」は、複数の糸を編んで形成した糸であり、本数、編み方は特に限定されない。
請求項2に係る鋏の特徴は、請求項1に記載の鋏において、前記撚糸又は編糸の材質は、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、フロロカーボン樹脂、綿、羊毛、絹、及び麻からなる群より選択される少なくとも1種であることである。
請求項3に係る鋏の特徴は、請求項1又は2に記載の鋏において、前記刃体は、前記刃部の上部に前記刃付け角より小さな傾斜角で接続形成された傾斜部を備えることである。
請求項4に係る鋏の特徴は、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の鋏において、前記刃体の上面が先端側に向かって傾斜して形成されている先細部を有することである。
請求項5に係る鋏の特徴は、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の鋏において、前記刃体は、厚さが2.0mm以上であり、ロックウェルCスケール硬さが48~56のステンレス製であることである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明に係る鋏は、撚糸又は編糸(以下「撚糸等」ともいう。)をきれいに切断することができる。すなわち、内側に沿って刃部を有する平板状の剛性の高い刃体を有しているため、撓むことなく撚糸等を切断することができる。更に、刃部の刃付け角が80~90度であるため、切断力が大きく、撚糸等に刃が食い込むことなく切断することができる。また、刃部は、開閉の間、該刃部の刃線がカーブ形状を有することにより、交差する該刃部のはさみ角が15~30度となる形状を保持可能であるため、切断に際して、刃部から撚糸等が逃げるのを防ぐことができる。
更に、撚糸等の材質がポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、フロロカーボン樹脂、綿、羊毛、絹、及び麻からなる群より選択される少なくとも1種である場合には、本発明の効果を十分に発揮することができる。
また、刃体が、刃部の上部に刃部の刃付け角より小さな傾斜角で接続形成された傾斜部を備える場合には、意匠性に優れることができる。
更に、刃体の上面が先端側に向かって傾斜して形成されている先細部を有する場合には、極短い糸部分を切断しやすい。
また、刃体の厚さが2.0mm以上であり、ロックウェルCスケール硬さが48~56のステンレス製である場合には、特に高い剛性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】実施形態1の鋏に係り、(a)鋏で糸を切断する前の状態、(b)切断中の状態、(c)切断後の糸の状態をそれぞれ示す模式図である。
【
図5】実施形態1の鋏に係り、(a)鋏で糸を切断する直前の状態、(b)切断中の状態をそれぞれ示す模式図である。
【
図6】実施形態2の鋏に係り、鋏で糸を切断する直前の状態を示す平面図である。
【
図7】(a)
図6のC-C拡大断面図、(b)
図6のD-D拡大断面図である。
【
図8】従来例の鋏に係り、(a)鋏で糸を切断する前の状態、(b)切断中の状態をそれぞれ示す模式図である。
【
図9】従来例の鋏に係り、(a)鋏で糸を切断する途中の状態、(b)鋏が滑り、切り残した糸の状態、(c)切断後の糸の状態をそれぞれ示す模式図である。
【
図10】従来例の鋏に係り、(a)鋏で糸を切断する直前の状態、(b)刃体を閉じても糸が逃げていく状態をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る鋏を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
[実施形態1]
実施形態1に係る鋏1は、
図1に示すように、一対の鋏体1Sが交差して連結軸50により連結して開閉可能としている。連結軸50は、鋏体1Sが交差して開閉可能とするように連結するものであれば、特に限定はなく、リベット、ボルトナット等とすることができる。
鋏体1Sは、それぞれ内側に沿って刃部15を有する平板状の剛性の高い刃体10と、刃体10に接続するハンドル部60とを備えている。
【0011】
鋏体1Sの各部の寸法比率は、特に限定はないが、鋏の切断の動作において、連結軸50が支点、指掛け孔61の略中央内側が力点、刃部15の切断箇所が作用点となることから、支点から作用点までの長さを、支点から力点までの長さよりも大きくすることにより、撚糸等に対する切断力を大きくすることができる。
そこで、刃体10の先端から連結軸50の中心までの長さをL1とし、連結軸の中心L1からハンドル部60の指掛け孔61の上下方向の中心までの長さをL2とした場合に、L1:L2=30~36:45~53であることが好ましく、L1:L2=32~34:47~51であることが更に好ましい。なお、
図1において、L3は、指掛け孔61の内側の上端及び下端から、指掛け孔61の長手方向の中心までの長さであり同一長さであることを示す。
【0012】
前記刃体10は、
図2に示すように、上面10aと下面10bが平行である平板状であり、内側に沿って刃部15を有している。刃部15において、下面10bと、刃面15aの交差する角度が、刃付け角θである。刃付け角θは80~90度であることが好ましく、更に好ましくは85~90度である。このように大きな刃付け角とすることにより、剪断力を大きくすることができ、撚糸又は編糸が切断しやすくなる。
【0013】
すなわち、
図4(a)に示すように、一対の刃体10の刃部15の間に、糸90を挿入して、
図4(b)に示すように、刃体10を閉じて糸90を切断すると、
図4(c)に示すように、切断された糸91、92のそれぞれの端面91a、92aは、スパッと切断されたきれいな面となる。
【0014】
刃部15は、
図5(a)に示すように、開閉の間、刃部15の刃線15bがカーブ形状を有することにより、交差する刃部15のはさみ角αが15~30度となる形状を保持可能である。
「はさみ角」とは、刃線が直線である場合には、刃線同士のなす角であるが、本発明における刃部15のように、刃線15bがカーブ形状の場合には、
図5(a)に示すように、刃線15bの接線同士のなす角を意味する。
はさみ角αは、15~30度とする形状を有することが好ましく、18~28度であることが更に好ましく、20~25度であることが特に好ましい。
はさみ角αを15~30度とすることにより、切断力が大きくなり
図5(b)に示すように、糸90が逃げることなく、切断することができる。
【0015】
刃体10は、
図3に示すように、上面10aが、先端側に向かって傾斜している先細部17を有することが好ましい。このように先細部17を有していることで、糸90の極狭い箇所に先細部17を挿入して、微小な糸部分を切断することができる。
なお、先細部17の先端部は、
図3に示すように角張っていてもよいが、丸みを付けて、より安全性を担保することもできる。
【0016】
刃体10は、撚糸等を切断するために、高い剛性を有している。
そのため、刃体10の厚さは特に限定はないが、2.0mm以上であることが好ましい。また、刃体10の硬度も特に限定はないが、ロックウェルCスケール硬さが48~56であることが好ましく、50~54であることが更に好ましい。
すなわち、刃体10は、厚さ2.0mm以上であり、ロックウェルCスケール硬さが50~54であるステンレス製であることが特に好ましく、この厚さ及び硬さであれば、刃体10が十分に高い剛性を有することができる。
【0017】
[実施形態2]
実施形態2に係る鋏2は、
図6に示すように、一対の鋏体2Sが交差して連結軸50により連結して開閉可能としている。鋏体2Sは、それぞれ内側に沿って刃部25を有する平板状の剛性の高い刃体20と、刃体20に接続するハンドル部60とを備えている。
刃体20は、
図7に示すように、上面20aと下面20bが平行である平板状であり、内側に沿って刃部25を有している。刃部25において、下面20bと、刃面25aの交差する角度が、刃付け角θである。刃体20は、
図6に示すように、上面20aが、先端側に向かって傾斜している先細部27を有することが好ましい。
これらの構成の作用・効果については実施形態1に係る鋏1と同様であり、前述した通りである。
【0018】
鋏2が、実施形態1に係る鋏1との相違する点は、
図7(a)、(b)に示すように、刃体20が、刃部25の上部に刃付け角θより小さな傾斜角γで接続形成された傾斜部26を備えていることである。
鋏2は、このように、傾斜部26を備えた、いわゆる二段刃を形成している。二段刃とすることにより、より意匠性に優れることができる。
【符号の説明】
【0019】
1、2…鋏、1S、2S…鋏体、10、20…刃体、10a、20a…上面、10b、20b…下面、15、25…刃部、15a、25a…刃面、15b…、刃線、17、27…先細部、26…斜面部、θ…刃付け角、γ…傾斜角、α…はさみ角、50…連結軸、60…ハンドル部、61…指掛け孔。