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特開2022-89515排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089515
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/121 20190101AFI20220609BHJP
   C02F 11/122 20190101ALI20220609BHJP
【FI】
C02F11/121 ZAB
C02F11/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201955
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】591195031
【氏名又は名称】J-POWERジェネレーションサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 慎一
(72)【発明者】
【氏名】氏山 友巳
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA06
4D059BE16
4D059BE31
4D059BE56
4D059DB11
4D059EB16
(57)【要約】
【課題】 凝沈汚泥濃度が高く供給されなくても安定的な運転が可能な排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備を提供する。
【解決手段】 排水処理汚泥を脱水する脱水処理方法であって、汚泥を供給する給泥工程と、供給された汚泥を沈降させる沈降工程と、沈降工程によって得られた汚泥をろ過するろ過工程と、ろ過工程によって得られた汚泥の圧搾を行う圧搾工程と、圧搾工程にて残った汚泥を脱滓する脱滓工程とを有し、給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理汚泥を脱水する脱水処理方法であって、
汚泥を供給する給泥工程と、
供給された汚泥を沈降させる沈降工程と、
沈降工程によって得られた汚泥をろ過するろ過工程と、
ろ過工程によって得られた汚泥の圧搾を行う圧搾工程と、
圧搾工程にて残った汚泥を脱滓する脱滓工程とを有し、
給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行することを特徴とする排水処理汚泥の脱水処理方法。
【請求項2】
プレス式脱水機によって圧搾工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の排水処理汚泥の脱水処理方法。
【請求項3】
1サイクルが、給泥工程、沈降工程、ろ過工程を進行した後に、圧搾工程、脱滓工程を進行するものであり、前の1サイクルにおける圧搾工程及び脱滓工程を進行しているときに、次の1サイクルにおける給泥工程及び沈降工程を同時に進行することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理汚泥の脱水処理方法。
【請求項4】
前記脱水処理方法を、停止状態から初期開始した場合、1巡目の工程順序を給泥工程、沈降工程、ろ過工程、圧搾工程、脱滓工程の順に進行し、2巡目から給泥工程及び沈降工程を、圧搾工程及び脱滓工程と同時に進行することを特徴とする請求項3に記載の排水処理汚泥の脱水処理方法。
【請求項5】
排水処理汚泥の脱水設備であって、
汚泥を供給する給泥手段と、
供給された汚泥に対して沈降工程を行う沈降手段と、
沈降手段から得られた汚泥に対してろ過工程を行うろ過手段と、
ろ過手段から得られた汚泥の圧搾工程を行う圧搾手段と、
圧搾手段に残った汚泥を脱滓する脱滓手段とを有し、
給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行することを特徴とする排水処理汚泥の脱水設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理の際に汚泥を脱水する排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水処理設備において発生するスラリー状の凝集沈殿汚泥(以下「凝沈汚泥」という。)は、デカンタ式脱水機と、プレス式脱水機の2種類の脱水機を運転して処理されていた。
【0003】
デカンタ式脱水機は、凝集助剤と凝沈汚泥とを混合してデカンタ内に導入して遠心分離により脱水する方式のものであり、含水率が比較的高い脱水汚泥を生成する。
【0004】
一方、プレス式脱水機は、ろ布(濾布)をプレスする脱水機であって凝集助剤を使用しないタイプのものであり、含水率がデカンタ式よりも低い板状の脱水汚泥を生成する。
【0005】
したがって、排水処理設備には、含水率が低く、凝集助剤の薬品も使用しないプレス式脱水機の運転を継続して行いたいが、凝沈汚泥の性状(特に濃度)に著しく影響を受けやすく、安定的に凝沈汚泥濃度が高く供給されなければ運転が困難な状況であった。
【0006】
排水処理の凝沈汚泥の処理に関して、特許文献1~5の従来技術がある。
【0007】
特許文献1記載の排水の清澄化方法は、二個以上のクラリファイアを用いて、少なくとも二個の交替式の同一の処理サイクルを行い、各処理サイクルは同時進行の供給と排出を伴う供給期間と、余剰スラッジがシックナへ除去され、残りのスラッジブラケットが均質化して予備沈降するリセット期間で構成されたものである。この特許文献1では、供給工程と排出工程は同時に行うが、沈降工程は同時に行われていないことから、凝沈汚泥の性状の改善ができないものであった。
【0008】
特許文献2は、エアーポンプ作動中に貯留タンク内の濾液を液体ポンプで排出することにより貯留タンクの容積を小さくするろ過濃縮装置である。この特許文献2には、エアーポンプろ過(濾過)工程と、未濃縮汚泥排出工程とを同時に行う点が記載されているが、エアーポンプろ過工程は、エアーポンプにより貯留タンク内の空気を吸引して汚泥のろ過を行う工程であって、ろ布をプレスする工程ではない。
【0009】
特許文献3は、「小型汚水処理装置(1)への既存の汚水処理処理槽(A)から吸引を行う工程と、他方で排出手段によって小型汚水処理装置(1)から既存の汚水処理装置(A)への排出を行う工程とを、同時に行う。」ことが記載された、車両に搭載可能な移動式の小型汚水処理装置であるが、沈降工程について記載は無い。
【0010】
特許文献4は、第1のろ過装置(102)を使って原水タンク(101)の原水(105)を高濃度にする。…第2のろ過装置(121)を使って原水(105)をろ過する。第2のろ過装置(121)は目の粗いフィルターでろ過し、その濾液を原水タンク(101)に戻す固形物回収方法である。「第1のろ過装置とフィルター装置(第2のろ過装置)とを同時に動作させる。」ことが記載されている。ここで、フィルター装置とは、被除去物からなる自己形成膜を有するフィルター装置により前記流体は濃縮されるものであるが、沈降により濃縮するものとは異なる。
【0011】
特許文献2~4の技術ではいずれも、沈降された凝沈汚泥の性状の改善について提案していない。
【0012】
特許文献5は、洗浄工程を経た灰スラリーに凝集剤を加えて沈降分離する濃縮工程と、濃縮スラリーを脱水する第1の脱水工程と、脱水された脱水ケーキを水で分散して二酸化炭素含有ガスを加え加温する高度脱塩工程と、高度脱塩されたスラリーをフィルタープレスで脱水して洗浄灰ケーキとする第2の脱水工程とを備える処理方法が記載されている。
【0013】
特許文献5の技術では、沈降する濃縮工程があるが、凝集剤を加えて沈降させるものである。プレス式脱水工程を採用しているが、凝沈汚泥濃度を高くして供給するため、凝集剤を使用しており、安定的な運転を確保できる脱水装置ではなかった。
【0014】
しがたって、従来は、プレス式脱水機の運転において、スラリー状の凝集沈殿汚泥の性状の影響を受けずに安定的な運転ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2017-516658号公報
【特許文献2】特開2008-6360号公報
【特許文献3】特開2003-190995号公報
【特許文献4】特開2002-166297号公報
【特許文献5】特許第6252653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、斯かる実情に鑑み、凝沈汚泥濃度が高く供給されなくてもサイクル時間を短くかつ安定的な運転が可能な排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明創案の前提を説明する。
発明者の知見によれば、火力発電所等の排水処理設備において凝沈汚泥の脱水には、デカンタ式脱水機を使用しており、含水率が82%と比較的高い脱水汚泥を生成していた。
【0018】
その後プレス式脱水機を導入して、凝集剤を使用しないタイプであり、含水率が77%の板状の汚泥を生成した。
【0019】
含水率が高く凝集剤(薬品)を使用しないタイプのプレス式脱水機の運転を継続して行いたいが、前述のように凝沈汚泥の性状(特に濃度)に著しく影響を受けやすく、安定的に凝沈汚泥濃度が高く供給されなければ運転が困難な状況にあった。
【0020】
また、引き取り試験では凝沈汚泥濃度を、時間をかけて濃縮し3.0wt%で行われていた。現状では、凝沈汚泥濃度は年間を平均して2wt%以下で推移しており、運転への影響が著しく、そのため、デカンタ式脱水機をメインで運転せざるを得ない状況となっていた(凝沈汚泥濃度は、通常1.5wt%前後であり、2wt%以下では脱水不良汚泥が発生する)。
【0021】
濃度は、ボイラ排煙のエアーヒータ(AH)、ガスガスヒータ(GGH)、洗浄排水等の処理量及び排水処理の運転時間によって常に変動する。
【0022】
そこで、発明者は、プレス式脱水機を安定して運転できるように、排水処理設備において、汚泥を供給する給泥手段と、供給された汚泥に対して沈降工程を行う沈降手段と、沈降手段から得られた汚泥に対してろ過工程を行うろ過手段と、ろ過手段から得られた汚泥の圧搾工程を行う圧搾手段と、圧搾手段に残った汚泥を脱滓する脱滓手段との制御パラメータについてし、鋭意考察した。
【0023】
その結果、プレス式脱水機を安定的に運転できるように、制御パラメータの変更と工程順序の変更を実施した。主な内容として、低凝沈汚泥濃度に対してはろ過時間を延長することにより、濾布による汚泥捕集率の向上を実施した。
【0024】
次に、脱水機供給の前段装置では、汚泥貯槽における汚泥スラリーの濃縮時間確保のため、沈降時間を延長したことにより汚泥スラリーの濃縮を実施した。
【0025】
パラメータの変更により、各工程の時間が増えるので給泥工程と沈降工程を、圧搾工程と脱滓工程の実施中に同時進行で行うことを創案したものである。
【0026】
すなわち、本発明は、排水処理汚泥の脱水処理方法であって、汚泥を供給する給泥工程と、
供給された汚泥に対して沈降させる沈降工程と、沈降手段から得られた汚泥をろ過するろ過工程と、ろ過手段から得られた汚泥の圧搾を行う圧搾工程と、圧搾手段に残った汚泥を脱滓する脱滓工程とを有し、給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行することを特徴とする排水処理汚泥の脱水処理方法である。
【0027】
本発明においては、プレス式脱水機によって圧搾工程を行うことが好適である。
【0028】
本発明においては、1サイクルが、給泥工程、沈降工程、ろ過工程を進行した後に、圧搾工程、脱滓工程を進行するものであり、前の1サイクルにおける圧搾工程及び脱滓工程を進行しているときに、次の1サイクルにおける給泥工程及び沈降工程が同時に進行することが好適である。
本発明においては、脱水処理方法を停止状態から初期開始した場合、1巡目の工程順序を給泥工程、沈降工程、ろ過工程、圧搾工程、脱滓工程の順に進行し、2巡目から給泥工程及び沈降工程を、圧搾工程及び脱滓工程と同時に進行することが好適である。
【0029】
本発明は、排水処理汚泥の脱水設備であって、汚泥を供給する給泥手段と、供給された汚泥に対して沈降工程を行う沈降手段と、沈降手段から得られた汚泥に対してろ過工程を行うろ過手段と、ろ過手段から得られた汚泥の圧搾工程を行う圧搾手段と、圧搾手段に残った汚泥を脱滓する脱滓手段とを有し、給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行することを特徴とする排水処理汚泥の脱水設備である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の排水処理汚泥の脱水処理方法及び脱水設備によれば、給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行するので、凝沈汚泥濃度が高く供給されなくてもサイクル時間を短くかつ安定して脱水汚泥を生成することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る排水処理汚泥の脱水処理方法を行う脱水設備の説明図である。
図2】脱水設備の排水処理工程の前提を説明する、パラメータ変更前の工程説明図である。
図3】脱水設備の排水処理工程の前提を説明する、パラメータ変更後の工程説明図である。
図4】脱水設備の排水処理工程を説明する、プログラム変更後の工程説明図であり、(a)が工程サイクルの流れ、(b)が時間の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1は実施形態に係る排水処理汚泥の脱水処理方法を行う脱水設備の全体構成の説明図である。
【0034】
図1に示すように、実施形態は、排水処理汚泥の脱水設備であって、排水中の汚泥を含むスラリーを沈降手段に向けて送給する給泥工程を行う給泥手段10と、送給されたスラリーからフロックを沈降分離する沈降工程を行う汚泥貯槽(沈降手段)12と、汚泥貯槽12で沈降分離されたフロックを含む汚泥をろ布14aに導入してろ布14aによってろ過工程を行うと共に、ろ過によって含水率が低くなった汚泥を圧搾して脱水する圧搾工程を行うプレス式脱水機14と、プレス式脱水機14から、脱水されて生成された汚泥を脱滓する脱滓工程を行う脱滓手段16とを有し、給泥工程及び沈降工程の進行と、圧搾工程及び脱滓工程との進行を同時にする排水処理汚泥の脱水設備である。
【0035】
実施形態は、火力発電所内の排水処理において、スラリー状の排水から汚泥を脱水する設備で脱水処理方法を実施するものである。
図1において、給泥工程の説明を丸付き数字の1~5で示す。
【0036】
[給泥工程]
給泥手段10は、丸付き数字の符号「1」で示す破線の経路のように、濃縮槽18の底部からスラリー状の汚泥を汚泥貯槽12に向けて管路20及び給泥ポンプ22(A,B)によって送り出す(給泥工程)構成を有する。
【0037】
濃縮槽18は、所内の処理対象の汚泥を含む排水を静置して濃縮するものである。濃縮槽18には、所内の排水ピット24の排水がポンプ24pによって送給される。給泥ポンプ22(A,B)から濃縮槽18に向かう戻り管路も設けられる。
【0038】
汚泥貯槽12は、スラリー中のフロックを沈降分離する設備である。
【0039】
ここで、実施形態に係る脱水設備では、例えばボイラのエアーヒータ(AH)排水、その他を収容するNo.1非回収系排水貯槽26と、pH調整酸化槽28と、苛性ソーダ貯槽30と、凝集助剤溶解槽32とを設けている。pH調整酸化槽28には、No.1非回収系排水貯槽26から排水がポンプ26aによって送給されると共に、pH調整酸化槽28内の排水を空気散気するためにエアーポンプ28aによって空気が注入される。また、pH調整酸化槽28には、苛性ソーダ貯槽30からポンプ30a(A,B)によって苛性ソーダが送給されると共に、凝集助剤溶解槽32からポンプ32aによって凝集助剤が送給される。
【0040】
各部の機能を説明する。
pH調整酸化槽28は、空気散気により、中和凝集して、排水中の鉄イオンを酸化させ、排水中の懸濁物質(SS)をフロック化する。出口では、高分子凝集助剤(ポリマー)を添加してフロックを成長させて凝集する(凝集液)。
【0041】
[沈降工程]
汚泥貯槽12では、フロックを沈降分離する(沈降工程)。この場合、汚泥貯槽12の中心部より、pH調整酸化槽28でできたフロックを含む凝集液を流入させ、汚泥貯槽12に設置したフィードウェルにより原水の均一流入分散させる。処理水は上部Vノッチ型トラフより溢流させて、沈降した汚泥(フロック)は、中心駆動のレーキ12a(モータMで回転する)により、中心部にかき集める。沈降工程では丸付き数字の符号「2」で示す経路のように汚泥貯槽12の底部に向けて汚泥が沈降分離される。
【0042】
[ろ過工程]
ろ過工程では、沈降してかき集められた汚泥を、丸付き数字の符号「3」で示す破線の経路のように、汚泥貯槽12の底部から排泥管38を通じて排泥ポンプ38a(A,B)によりプレス式脱水機14のろ布に圧送される。汚泥が圧送されることによって、プレス式脱水機14のろ布14aが汚泥をろ過し(ろ過工程)、ろ過された汚泥ケーキがろ布に残り、一方、ろ液がろ液管40を通じて汚泥貯槽12に戻される。
【0043】
なお、図1において、プレス式脱水機14について、14Aが正面視状態と14Sが側面視状態を概略を示している。排泥管38とろ液管40は正面視状態14Aに接続状態を示している。
【0044】
[圧搾工程]
プレス式脱水機14は、側面視状態14Sに示すように、プレスシリンダ14bでフィルタ部に圧力を加えて、汚泥貯槽12の貯留汚泥を脱水する(圧搾工程)。圧搾工程で絞り出されたろ液が、丸付き数字の符号「4」で示す二点鎖線の経路のように、このプレス式脱水機14からろ液管40を通して汚泥貯槽12のフィードウェルに投入される。
【0045】
ここで、ろ過工程、圧搾工程、脱滓工程を行うプレス式脱水機14は、実施形態では、フィルタープレス式脱水機を採用している。具体的には、ろ布走行式全自動圧搾式フィルタープレスを採用している。脱滓手段16として、ろ室を開閉し、同時ろ布走行してケーキ剥離をするものであった。ろ布洗浄は複数室単位で行う。ろ布洗浄水圧力を加えてろ布洗浄を効果的に行うことが可能である。
【0046】
なおプレス式脱水機は、フィルタープレス式の加圧ろ過機能を有すれば、フィルター走行式以外の脱水機を採用できる。フィルタープレス式脱水機は、密閉されたろ過一次側にろ過ポンプで加圧することで、ろ過圧力(一次側と二次側の差圧)を加えて、ろ過機能を発揮させてケーキ層を形成するろ過工程を進行し、その後、ろ布の汚泥をダイヤフラムや高圧空気によって圧搾する形式のいずれのものも採用できる。
【0047】
[脱滓工程]
プレス式脱水機14は、脱滓手段16によって脱水されケーキとなった汚泥をろ布から取り除く(脱滓工程)。脱滓工程では、丸付き数字の符号「5」で示す破線の経路のように、搾られた汚泥ケーキがケーキホッパー36に排出される。
【0048】
ケーキホッパー36はプレス式脱水機14の下部に設置され、脱滓手段16で取り除いた脱水汚泥(ケーキ)を貯留する。
【0049】
なお、図1において、符号42は所内用水管、44は所内用水をろ過洗浄水に使用する貯留するろ過洗浄水タンク、vはバルブ、囲み文字のMは駆動モータ、cはコンプレッサーを示す。
【0050】
所内用水管42から排泥管38やプレス式脱水機の洗浄機に洗浄水を流す。また、コンプレッサーcからケーキ剥離用のろ室内に空気圧を導入する。
【0051】
[汚泥処理の制御パラメータ]
プレス式脱水機14を安定して運転できるように、各工程の制御パラメータを考察した。制御パラメータは当初に直列的に進行することを検討したが、検討の結果、制御パラメータの変更(工程時間の延長等)と順序の変更をした。この場合、各工程の直列的な進行は、全工程1サイクルを終了してから次の全工程サイクルを進行することであり、同じ時間内に別の工程が重なって進行しない。
【0052】
図2は制御パラメータの変更前の各工程を示す。
【0053】
制御パラメータの変更前は、図2に示すように、給泥工程:12分、沈降工程:5分、ろ過工程:10分、圧搾工程:10分、脱滓工程:8分で順次各工程を進行した。
【0054】
図3は制御パラメータの変更後の各工程を示す。
【0055】
主な変更内容としては、低凝沈汚泥濃度に対してはろ過工程のろ過時間を延長(1.5倍)することにより、ろ布による汚泥捕集率向上を実施した。次に、プレス式脱水機14供給前端装置である汚泥貯槽12における汚泥スラリーの濃縮時間確保のため沈降時間の延長(3倍)により汚泥スラリー濃縮を実施した。
【0056】
制御パラメータの変更後は、図3に示すように、給泥工程:12分(変更無し)、沈降工程:16分(11分増)、ろ過工程:15分(5分増)、圧搾工程:17分(5分増)、脱滓工程:11分(3分増)を順次進行した。全工程時間が71分であった。図2の変更前に比較して26分増加していた。
【0057】
工程時間の変更によって、プレス式脱水機の安定的な運転ができたが、パラメータの変更により各工程の時間が増えているが、全体の工程時間が増えて(図3の場合26分増加)しまうので、汚泥処理量が減ってしまった。そのため、デカンタ式脱水機の運転を行って処理量を確保する必要が生じた。
【0058】
そこで、実施形態では、パラメータ変更により、各工程の時間が図2に比較して増えているが、処理プログラムを変更して、図4(a)に示すように、給泥工程(12分)と沈降工程(16分)を、圧搾工程(17分)と脱滓工程(11分)の28分間中に同時進行で実施するように変更した。
【0059】
そして、給泥工程、沈降工程、ろ過工程を進行した後に、圧搾工程、脱滓工程を進行する1サイクルの時間はほぼ変化の無いもの(71分)にし、1サイクルにおける圧搾工程及び脱滓工程を進行しているのと同時に、次の1サイクルにおける給泥工程及び沈降工程を進行させる。
【0060】
図4(b)に示すように、実施形態の全工程サイクル時間は43分(15分+12分+16分)であった。図3の工程に比較して28分の時間短縮ができたことと共に、安定した脱水汚泥を生成することが可能となった。
【0061】
また、前記脱水設備が、マスター停止状態から初期起動(初期開始)した場合の1巡目の工程順序は、図3の工程順のように、給泥工程、沈降工程、ろ過工程、圧搾工程、脱滓工程の順に進行し、2巡目から、図4に示す工程順のように、給泥工程及び沈降工程を進行しているのと同時に圧搾工程及び脱滓工程とを同時進行する。
【0062】
実施形態の排水処理汚泥の脱水設備によれば、プレス式脱水機のパラメータを変更することで効率的に汚泥を生成することが可能となった。各脱水機で脱水された汚泥はケーキホッパーに貯留後、委託作業により灰捨場に搬出される。プレス式脱水機では、プレス後にケーキホッパーから直接トラックに積載するが、デカンタ式脱水機の場合、スクリューコンベアにより払い出しや汚泥搬出部分の清掃等運用条件があるため、含水率が違えどほぼ同量の汚泥排出量で搬出時間に差異が出ている。また、デカンタ式脱水機はプレス式脱水機と異なり凝集助剤を必要とする。これを踏まえて、プレス式脱水機で運転することにより、委託費の削減並びにデカンタ式脱水機で使用する薬品使用量の削減が可能になった。
【0063】
[効果(1)増収又は経費に削減額・比率]
ここで、プレス式脱水機のパラメータ変更によって、デカンタ式脱水機の運転を最小限に抑えることが可能であるため、その効果を確認するため、デカンタ式脱水機のみの運転とプレス式脱水機のみの運転を比較検証した。
【0064】
薬品費用の削減
1.デカンタ式脱水機で脱水汚泥10tを生成した場合に使用する薬品使用量
41.7h*1.5m3/h/1000=62.5kg
但し、デカンタ式脱水機の脱水汚泥10tを生成する時間:41.7時間
デカンタ式脱水機の運転に使用する溶解した凝集助剤(濃度0.1%)の使用量:1.5m3/h
【0065】
2.デカンタ式脱水機で脱水汚泥10tを生成した場合にかかる薬品費用
62.5kg*1,382円=86,375円
但し、凝集助剤1kg当たりの費用:1,382円/kg
【0066】
3.プレス式脱水機で生成する汚泥をデカンタ式脱水機で生成した場合にかかる年間の薬品費用
86,375円*1190/10=10,278,625円
但し、プレス式脱水機の年間脱水汚泥発生量:(365日-7日)/3日*10t≒1190t
プレス式脱水機の脱水汚泥10t生成するまでにかかる日数:3日
【0067】
プレス式脱水機のメンテナンス日数:7日/年
よって、10,278,625円/年の薬品費削減となった。
【0068】
[効果(2)人員×時間の減少]
汚泥搬出に係る作業員の数は3人
プレス式脱水機のケーキホッパー10t堆積するまでの日数は3日
プレス式脱水機のメンテナンスに係る日数は7日/年
よって、3名の作業員で119回/年の汚泥搬出を行っている。
【0069】
1.プレス式脱水機 脱水汚泥10t搬出する委託費用
3.1h*3人*2,230円=20,739円
20,739円*119日=2,467,941円/年
但し、作業員の時間単価(1人当たり):2,230円
プレス式脱水機によって生成された汚泥の10tの搬出平均時間は約3.1時間
【0070】
2.デカンタ式脱水機 脱水汚泥10t搬出する委託費用
7.3h*3人*2,230円=48,837円 48,837円*119日=5,811,603円/年
作業員の時間単価(1人当たり):2,230円
デカンタ式脱水機によって生成された汚泥の10tの搬出平均時間は約7.3時間
【0071】
3.年間の委託費用の削減
5,811,603円-2,467,941円=3,343,662円
よって、最大3,343,662円/年の人件費削減となる。
【0072】
[効果(3)その他効果]
1.汚泥搬出時の効果
パラメータ変更前は、汚泥の含水率が高く、ろ布の水切りが不十分であったため、ケーキホッパーに水が流入し、建屋2階のケーキホッパー搬出口から建屋1階に滴下していた。
【0073】
各制御パラメータの時間変更後は、脱水汚泥の含水率が低下し、ろ布の水切り時間を十分に確保したことで、ケーキホッパーへの水の滞留がなくなった。
【0074】
滞留しなくなったことにより、脱水汚泥搬出時に脱水汚泥の飛散等が軽減され、安全面に対する効果も得られていた。
【0075】
2.脱滓工程時間を延ばした効果(環境等)
脱滓工程時間を延ばしたことにより、ろ布への脱水汚泥付着が低減された。
脱滓工程時間を変更する以前は、ろ布に付着した落とし切れなかった脱水汚泥がろ布洗浄工程時に洗い落とされて側溝へ流入していた。
【0076】
流入した脱水汚泥が側溝に詰まり、側溝からろ布洗浄水がオーバーフローする懸念があったため、当直員によりパトロールを強化していたが、側溝つまりの懸念が解消され当直員の負担や環境影響低減に寄与することとなった。
【0077】
実施形態の排水処理汚泥の脱水処理方法によれば、給泥工程及び沈降工程と、圧搾工程及び脱滓工程とを同時に進行するので安定して脱水汚泥を生成することができるという優れた効果を奏し得る。
【0078】
実施形態の外、本発明の範囲内で適宜に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の排水処理汚泥の脱水処理方法は、各種排水処理に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 給泥手段
12 汚泥貯槽(沈降手段)
14 プレス式脱水機(ろ過手段、圧搾手段)
16 脱滓手段
22 給泥ポンプ
36 ケーキホッパー
図1
図2
図3
図4