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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089526
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】生体信号処理装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20220609BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20220609BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/16 130
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020201975
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100161399
【弁理士】
【氏名又は名称】大戸 隆広
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕貴
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038PP05
4C038PS00
4C038PS03
4C038PS07
4C038SS09
4C038ST01
4C038SV01
4C038SX07
(57)【要約】
【課題】睡眠評価のために計測されたデータから、ユーザの希望に応じた多面的な情報を提供することが可能な生体信号処理装置およびその制御方法を提供すること。
【解決手段】生体信号処理装置は、睡眠評価のために計測された計測データから、予め定められた睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するイベントを検出する。また、生体信号処理装置は、検出したイベントに関する情報を被検者の体位別に一覧表示する領域と、特定の体位について、検出したイベントに関する情報を一覧表示よりも詳細に表示する領域と、を有する画面を表示装置に表示させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠評価のために計測された計測データを取り扱う生体信号処理装置であって、
前記計測データから、予め定められた睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するイベントを検出する検出手段と、
前記検出したイベントに関する情報を被検者の体位別に一覧表示する領域と、特定の体位について、前記検出したイベントに関する情報を前記一覧表示よりも詳細に表示する領域と、を有する画面を表示装置に表示させる制御手段と、
を有することを特徴とする生体信号処理装置。
【請求項2】
被検者の体位として、左側臥位と右側臥位とを合わせた側臥位を含めることを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理装置。
【請求項3】
前記一覧表示において、仰臥位と前記側臥位とを隣接させることを特徴とする請求項2に記載の生体信号処理装置。
【請求項4】
前記詳細に表示する領域では、前記特定の体位として、全ての体位を合わせた体位を選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理装置。
【請求項5】
前記イベントが、無呼吸イベント、低呼吸イベント、酸素飽和度低下イベントを含み、
前記イベントに関する情報が時間当たりのイベント発生回数を含み、
前記時間当たりのイベント発生回数の算出に用いる計測区間の長さに、アーチファクト区間として設定された区間を含めるか否かを切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項6】
前記イベントの持続時間に関する情報が、前記一覧表示する領域には表示されず、前記詳細に表示する領域には表示されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項7】
前記持続時間に関する情報が、最大持続時間とその発生時刻、および平均持続時間を含むことを特徴とする請求項6に記載の生体信号処理装置。
【請求項8】
前記制御手段はさらに、前記イベントの発生頻度の経時変化を示すヒストグラムを含んだ画面を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項9】
前記制御手段はさらに、前記イベントの持続時間の頻度分布を示すヒストグラムを含んだ画面を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の生体信号処理装置。
【請求項10】
前記制御手段は、ユーザが指定した体位についての前記ヒストグラムを含んだ画面を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項8または9に記載の生体信号処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、体位が識別できるように前記ヒストグラムを生成することを特徴とする請求項8または9に記載の生体信号処理装置。
【請求項12】
睡眠評価のために計測された計測データを取り扱う生体信号処理装置の制御方法であって、
前記計測データから、予め定められた睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するイベントを検出する検出工程と、
前記検出工程で検出されたイベントに関する情報を被検者の体位別に一覧表示する領域と、特定の体位について、前記検出工程で検出されたイベントに関する情報を前記一覧表示よりも詳細に表示する領域と、を有する画面を表示装置に表示させる制御工程と、
を有することを特徴とする生体信号処理装置の制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から11のいずれか1項に記載の生体信号処理装置が有する各手段として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号処理装置およびその制御方法に関し、特には睡眠評価のために計測されたデータを取り扱う生体信号処理装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)に対する社会的な関心が高まっている。SASの確定診断には被検者に複数のセンサを装着して睡眠中の呼吸や体動などに関する計測を行うPSG(polysomnography)検査が必要である。
【0003】
PSG検査による計測は長時間にわたるため、計測データも大量になる。そのため、PSG検査によって計測されたデータを効率的に評価する機能を提供する装置やシステムが知られている。例えば、特許文献1には、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)を決定する解析手段を有するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-506920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるようなシステムは有用であるが、システムが計測データに基づいて提供する情報が少ないため、多面的な考察には適さないという問題がある。
【0006】
本願発明は、睡眠評価のために計測されたデータから、ユーザの希望に応じた多面的な情報を提供することが可能な生体信号処理装置およびその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、睡眠評価のために計測された計測データを取り扱う生体信号処理装置であって、計測データから、予め定められた睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するイベントを検出する検出手段と、検出したイベントに関する情報を被検者の体位別に一覧表示する領域と、特定の体位について、検出したイベントに関する情報を一覧表示よりも詳細に表示する領域と、を有する画面を表示装置に表示させる制御手段と、を有することを特徴とする生体信号処理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、睡眠評価のために計測されたデータから、ユーザの希望に応じた多面的な情報を提供することが可能な生体信号処理装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る生体信号処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る生体信号処理装置が提供する波形編集画面の例を示す図である。
図3】実施形態に係る生体信号処理装置の動作に関するフローチャートである。
図4】実施形態に係る波形編集画面の補助情報領域におけるサマリ画面の表示例を示す図である。
図5】実施形態に係る波形編集画面の補助情報領域におけるサマリ画面の別の表示例を示す図である。
図6】実施形態に係る波形編集画面の補助情報領域におけるヒストグラム画面の表示例を示す図である。
図7】実施形態に係る波形編集画面の補助情報領域におけるヒストグラム画面の別の表示例を示す図である。
図8】実施形態に係る波形編集画面の補助情報領域におけるヒストグラム画面の対位別の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明をいかなる意味においても限定しない。また、実施形態で説明される構成の全てが本発明に必須とは限らない。また、明らかに不可能である場合や、それが否定されている場合を除き、異なる実施形態に含まれる構成を組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。また、重複した説明を省略するために、添付図面においては全体を通じて同一もしくは同様の構成要素には同一の参照番号を付してある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る生体信号処理装置100の機能構成例を示すブロック図である。生体信号処理装置100は、例えばプログラマブルプロセッサにより、後述する動作を実現するアプリケーションプログラムを実行することによって実現することができる。したがって、生体信号処理装置は、パーソナルコンピュータなど、プログラマブルプロセッサを有する電子機器一般で実施することができる。
【0012】
なお、以下の説明では、生体信号処理装置100が簡易PSG検査装置(スクリーニング装置とも呼ばれる)によって計測、記録されたデータを取り扱うものとする。これは、睡眠評価を目的とした計測では簡易PSG検査が実施される頻度が高いことによる。しかしながら本発明は簡易検査でないPSG検査で計測されたデータを取り扱う生体信号処理装置においても同様に実施可能である。
【0013】
なお、簡易PSG検査装置が計測するデータは装置に応じて異なりうるが、本実施形態では、少なくとも呼吸に関するデータとして鼻または口鼻呼吸(圧力)が、被検者の動きに関するデータとして体位の種別(仰臥位が計測されているものとする。また、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)のデータも計測されているものとする。腹および胸の呼吸努力運動、鼻または口鼻呼吸の温度など、他の項目が計測されていてもよい。
【0014】
制御部110は、プログラマブルプロセッサ、ROM、RAMを有し、ROMや記録部130に記憶されているプログラムをRAMに読み込んで実行することにより、後述する波形編集処理を含む、生体信号処理装置100の処理を実現する。また、制御部110は操作部160の操作に応じた処理を実行することにより、ユーザによる生体信号処理装置100の対話的な操作を可能にする。
【0015】
外部I/F120は生体信号処理装置100が外部装置と有線および/または無線通信するためのインタフェースである。生体信号処理装置100は、外部I/F120を通じて外部機器から処理対象の計測データを取得することができる。外部I/F120は例えば、USB、無線LAN、有線LAN、bluetooth(登録商標)など、機器間の通信に関する規格の1つ以上に準じた構成を有することができる。
【0016】
記録部130は計測データなどを保持するための装置であり、SSD、HDDなどの内蔵記憶装置、および/またはUSBメモリ、メモリカードなどの着脱可能な記憶装置であってよい。制御部110は、記録部130にデータを記録したり、記録部130に記録されたデータを読み出したりする。
【0017】
表示部150は液晶表示装置(LCD)などの表示装置であり、生体信号処理装置100のユーザインタフェース(GUI)、計測データや被検者情報などを表示する。表示部150は外部表示装置であってもよい。
【0018】
操作部160はキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、スイッチ、ボタンなど、ユーザが生体信号処理装置100に指示を入力するための入力デバイスの総称である。表示部150がタッチディスプレイの場合、表示部150に表示されたソフトウェアキーは操作部160の一部を構成する。
【0019】
本明細書において、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)画面に含まれるボタン、スイッチ、メニュー、テキストボックスなどに対する操作は、各入力デバイスの操作と予め対応付けられている。この対応付けは、特段の限定が無い限り、一般的なオペレーティングシステムにおいて採用されている対応付けと同様なものであってよい。
【0020】
図2は、生体信号処理装置100が計測データを表示したり、計測データから得られる様々な情報を提供したり、波形編集機能を提供する画面(波形編集画面200)の一例を示す図である。波形編集機能は、計測データのうち、信頼度が低かったり不要であったりする計測区間(アーチファクト区間とも呼ばれる)を特定したり、アーチファクト区間や各種イベントの自動解析結果を修正したりするための機能である。
【0021】
波形編集画面200は、生体信号処理装置100が所定のアプリケーションプログラムを実行することにより、表示部150に表示される。なお、アプリケーションの起動や、起動後に波形編集画面200を呼び出すための操作はパーソナルコンピュータなどにおいて一般的に行われる操作と同様であるため、詳細については省略する。
【0022】
波形編集画面200は、リスト領域201、補助情報領域202、波形領域203を有する。なお、各領域の大きさ並びに表示・非表示は変更可能であってよい。また、ある領域の大きさの変更に連動して他の領域の大きさが変化してもよいし、ある領域の大きさは他の領域の大きさとは独立して変更可能であってもよい。後者の場合には、複数の領域が重畳表示されうる。
【0023】
リスト領域201はタブで表示内容を切り替え可能に構成されており、本実施形態では一例としてイベントリスト、登録波形リスト、およびタスクリストの表示が切り替え可能である。イベントリストは、被検者または計測機器で付与されたイベントを検索したり、新たなイベントを登録するためのリストである。登録波形リストは、イベントなどに対応して登録された波形のリストである。タスクリストは、波形編集で実行すべき工程に対応したタスク項目を一覧表示するリストである。
【0024】
補助情報領域202は、計測データから得られる、診断に有用な様々な情報を表示する補助情報画面、波形領域203の表示に関する設定画面、データを計測した装置に関する情報を表示する画面などを表示する領域である。補助情報領域202に表示する画面はタブ202Aの選択操作によって切り替えることができる。補助情報画面には全計測区間を1画面に縮小表示するトレンド画面、イベントの発生回数の情報を集約したサマリ画面、イベントの発生頻度を表示するヒストグラム(グラフ)画面などがある。
【0025】
波形領域203は、計測データを時間軸に沿って表示するとともに、計測データに対する波形編集操作を受け付ける領域である。波形領域203には計測データとともに、計測中に被検者が登録したイベント、自動解析によって付与されたイベントおよびアーチファクト区間、生体信号処理装置100のユーザが波形編集機能によって設定したイベントやアーチファクト区間などが表示される。
【0026】
図3は、生体信号処理装置100の動作に関するフローチャートである。制御部110は、アプリケーションの実行中に記録部130から計測データの読み込みを指示されたことに応じて図3に示す動作を実行することができる。
【0027】
S301において制御部110は、記録部130に記憶されている計測データファイルのうち、例えばユーザがファイル選択GUIを通じて指定したファイルから計測データを読み出す。読み出した計測データは制御部110のRAMなどのバッファメモリに一時的に格納される。なお、計測データは予め定められた処理単位ごとに読み込むことができ、一度にすべてを読み込まなくてもよい。
【0028】
S303において制御部110は、計測データに対してイベントおよびアーチファクト区間の検出処理を適用する。この検出処理において、制御部110は予め定められた判断基準に照らして、SASイベント(無呼吸イベントおよび低呼吸イベント)とその分類の検出、酸素飽和度低下イベント、体動イベント、および、アーチファクト区間(センサ装着不良区間、入眠前区間、起床区間など)を検出する。制御部110は、検出したイベントやその付随情報(発生時刻、継続時間、分類、区間の開始時刻および終了時刻、および種類など)を計測データと対応付けて保存する。また、制御部110は、検出結果および計測データに基づいて、後述する補助情報領域202に表示する、予め定められた指数(AHI、ODIなど)などを算出し、計測データと対応付けて保存する。
【0029】
S305において制御部110は、ユーザの指示があった場合には、波形編集画面200を通じて波形編集機能を提供し、S303で自動検出したイベントや区間に関する編集(削除、種別の変更、期間の変更など)や、ユーザイベントの追加を受け付ける。制御部110は、波形編集結果を、自動検出結果に反映させる。
【0030】
S307において制御部110は、S303で検出したイベントやその付随情報、指数などに、波形編集結果を反映させて、更新する。以下で説明するサマリ画面やヒストグラム画面などの表示に用いる各種の数値は、S303による自動検出により算出されたものであるか、S307で更新されたものである。
【0031】
図4は、波形編集画面200の補助情報領域202にサマリ画面が表示された状態を示している。
サマリ画面は、詳細表示領域2020と、体位別比較領域2025とを有する。詳細表示領域2020には、無呼吸低呼吸、SpO2および脈拍数、体動、ユーザイベントの1つ以上が表示可能であり、表示項目チェックボックス2026の対応するチェックボックスがON状態の項目が詳細表示領域2020に表示される。図4の例ではチェックボックスがすべてONの状態を示している。
【0032】
表示項目チェックボックス2026にはさらに体位別比較領域2025の表示有無を切り替えるチェックボックスが含まれる。ここではチェックボックスがONされているため体位別比較領域2025が表示されている。
【0033】
集計対象区間選択メニュー2021は、サマリを集計する計測データの区間を設定するためのGUI要素である。ここではコンボボックスを用いており、全時間、波形表示区間、指定範囲が設定可能である。全時間は計測開始から終了までの全計測区間を対象とする。波形表示区間は、波形領域203に表示されている区間を対象とする。指定範囲は、全区間のうち、別途指定されている範囲を対象とする。図4では、全時間が選択されている状態を示している。
【0034】
また、集計対象区間選択メニュー2021で設定された区間から、アーチファクト区間として設定された区間を除外するか否かを、チェックボックス2022によって指定可能である。アーチファクト区間は例えばセンサ装着不良区間、入眠前区間、起床区間などであり、自動解析やユーザ指示により設定されている。
【0035】
体位指定メニュー2023は、詳細表示領域2020に表示する値を算出する対象の計測データを、体位によって限定するためのGUI要素である。ここでは、全体位、仰臥位、左側臥位、右側臥位、伏臥位、立位/座位、側臥位合計のいずれかを設定可能である。
【0036】
全体位が設定された場合には体位を限定しない。他の選択肢が設定された場合には、設定された体位が検出されている間の計測データのみを集計の対象とする。なお、側臥位合計が設定された場合には、右側臥位と左側臥位のいずれかが検出されている間の計測データを集計の対象にする。無呼吸および低呼吸のうち最も頻度が高いOSA(閉塞型)の無呼吸および低呼吸は、仰臥位と側臥位とで発生頻度が異なることが指摘されている。そのため、右側臥位と左側臥位とをまとめて集計可能としたことで、仰臥位時との対比を行いやすくなる。
【0037】
体位別比較領域2025は、SASイベント(無呼吸低呼吸イベントおよび酸素飽和度低下(ODI)イベント)と体動イベントの発生頻度を体位別に一覧表示する領域である。ここでは一例として、無呼吸低呼吸イベントとして無呼吸および低呼吸(AH)イベント、無呼吸(A)イベントを表示するものとする。体動指数は、体動イベントの発生頻度である。なお、ODIイベントとする低下割合(%)は予め定められた1つの値(例えば3%)である。
【0038】
図4の例では示していないが、体位別比較領域2025において、左側臥位と右側臥位の値の合計値を別個の体位(側臥位合計)の値として表示してもよい。特に、仰臥位の値と隣接して側臥位合計の値を表示することにより、仰臥位と側臥位とにおけるイベント発生頻度を容易に比較することが可能であり、有用である。
【0039】
体位別比較領域2025にはまた、体位が検出されている区間において個々の体位が占める割合を表示している。図4の例では仰臥位の割合が98.2%であり、計測中の大半において被検者の体位が仰臥位であったことが分かる。
【0040】
詳細表示領域2020では、表示項目チェックボックス2026の状態に応じた情報を表示するが、低呼吸無呼吸イベントを表示する場合には、体位別比較領域2025に一覧表示されるものよりも詳細な情報を表示する。
【0041】
具体的には、無呼吸低呼吸(AH)、無呼吸(A)、低呼吸(H)のそれぞれについて、
型合計(閉塞性、中枢性、混合性の合計)、閉塞性(O)、中枢性(C)のそれぞれの、1時間あたりのイベント発生数、総発生数、最大持続時間と発生時刻、平均持続時間(秒)を表示する。また、混合性(M)については、1時間あたりのイベント発生数、総発生数を表示する。なお、閉塞性、中枢性、混合性については、無呼吸低呼吸イベントがそのような分類を有する場合にのみ表示される。
【0042】
また、ODIについては、手動編集を含む酸素和飽和度イベント、および自動計測結果の酸素飽和度低下レベル2%、3%、4%、5%のそれぞれについて、1時間あたりのイベント発生数、総発生数、最大持続時間と発生時刻、および平均持続時間を表示する。酸素飽和度低下レベルは何%を閾値とするか一定でないため、異なる%について一覧表示することで、多様なニーズに対応できる。
【0043】
SpO2と脈拍数については、最高値および発生時刻、最低値および発生時刻、および平均値を表示する。
【0044】
体動指数(1時間あたりの体動イベント数)については、総発生数、最大持続時間と発生時刻、および平均持続時間を表示する。
【0045】
ユーザイベントは、生体信号処理装置100のユーザが追加したイベントであり、計測データごとにイベントを追加可能である。詳細表示領域2020では、すべてのユーザイベントと、回数が上位2種類のユーザイベントとの3種類について、1時間当たりの発生数、総発生数、最大持続時間と発生時刻、および平均持続時間を表示する。回数が上位2種類のユーザイベントについては、計測データ種別も表示する。
【0046】
先に説明したように、詳細表示領域2020に表示する項目は、表示項目チェックボックス2026に対する操作よってユーザが任意に変更可能である。また、集計対象区間選択メニュー2021とチェックボックス2022に対する操作により、集計区間をユーザが任意に変更可能である。さらに、体位指定メニュー2023の操作により、特定の体位に限定した値を表示することも可能である。
【0047】
このように、本実施形態のサマリ画面は、体位ごとの無呼吸低呼吸イベントの発生頻度を一覧表示しつつ、特定の体位について、より詳細な情報をユーザに提供することが可能である。また、計測区間にアーチファクト区間を含める場合と含めない場合とを容易に比較することができるため、アーチファクト区間が無呼吸低呼吸イベントやODIイベントにどの程度影響を与えているかについいても容易に把握することができる。
【0048】
図5(a)は、図4に示すような表示状態において表示項目チェックボックス2026における体動およびユーザイベントのチェックをOFFとし、また詳細表示領域2020の表示を仰臥位における値に限定した状態の例を示している。また、図5(b)は、図5(a)の状態から側臥位合計の表示に切り替えた状態の例を示している。なお、図4図5(b)は表示状態の例を示すためのものであり、同じ計測データを対象とした表示ではない。
【0049】
図6は、タブ202A(図2)の操作により、補助情報領域202にヒストグラム画面が表示された状態を示している。集計対象区間選択メニュー2021とチェックボックス2022はサマリ画面と同様である。また、表示項目チェックボックス2027はヒストグラム画面に表示する項目を選択するチェックボックスであり、サマリ画面の表示項目チェックボックス2026と同様である。
【0050】
ここでは、無呼吸低呼吸イベント、酸素飽和度低下イベント(ODIイベント)、ユーザイベント、体動イベント、およびSpO2のヒストグラム表示が可能である。このうち、SpO2に関しては対象区間内の計測値の頻度を、他の項目(イベント)については、対象区間内における時系列頻度と、持続時間の発生頻度とについて、ヒストグラムを表示する。
【0051】
SpO2については、50%未満と、50%~100%を5%刻みで分割した各範囲に該当する値が計測された頻度を、計測総回数に対する割合をヒストグラム表示する。また、割合を数値でも表示する。図6の例では、95%~100%の値が計測値の74%を占めていることが分かる。
【0052】
各種イベントについては、対象区間(時間範囲)を横軸として、60分割した各区間におけるイベント発生回数をヒストグラム表示する。また、持続時間については、体動イベントは10ms、他のイベントは1s単位で分割し、各分割区間に該当する持続時間の発生回数をヒストグラム表示する。このように、計測区間におけるイベント発生頻度の経時変化やイベント継続時間の頻度分布を表すヒストグラムを、イベント間で比較可能に表示する。
【0053】
なお、横軸の分割単位はいずれも例示であり、他の値としても、またユーザが変更可能であってもよい。イベントに関するヒストグラムの縦軸のスケール(最大値)は、最も高い頻度に応じて自動で調整される。ユーザが変更可能であってもよい。SpO2については割合であるため、縦軸のスケールは0~100%で固定である。
【0054】
イベントのうち、無呼吸低呼吸イベントとユーザイベントについては、それぞれ対応するメニュー2028,2029の操作により、ヒストグラムを表示する対象を変更することができる。
【0055】
無呼吸低呼吸イベントメニュー2028では、無呼吸低呼吸(初期値)、閉塞性無呼吸低呼吸、中枢性無呼吸低呼吸、混合性無呼吸低呼吸、無呼吸、閉塞性無呼吸、中枢性無呼吸、混合性無呼吸、低呼吸 、閉塞性低呼吸、および中枢性低呼吸が選択可能である。なお、閉塞性、中枢性、混合性の分類がされていない場合には分類の選択はできない。
また、ユーザイベントメニュー2029では、ユーザイベント(全て)(初期値)のほか、ユーザイベントが1つ以上追加されている計測データを選択可能である。
【0056】
サマリ画面に表示される数値や、ヒストグラム画面に表示される頻度のうち、初期状態で表示されうる値については、計測データを最初に読み込んだ際に制御部110が算出しておき、例えばROMに保持しておくことができる。これにより、画面表示の際に算出するよりもレスポンスのよい画面表示が可能になる。
【0057】
図7は、体位別の表示を可能にしたヒストグラム表示画面202'の例を示す図である。図7において、図6のヒストグラム表示画面200と同じ構成要素には同じ参照数字を付してある。ヒストグラム表示画面202'は、図4を用いて説明した体位指定メニュー2023を有している。体位指定メニュー2023により全体位以外の体位が指定された場合、制御部110は、指定された体位において発生したイベントの頻度をヒストグラム表示画面に表示する。図7では、体位指定メニュー2023により仰臥位が指定されているため、無呼吸低呼吸イベント、酸素飽和度低下イベント、ユーザイベント、体動イベントについて、体位が仰臥位であるときの頻度分布が表示されている。
【0058】
このように、体位別のイベント発生頻度を表示可能とすることにより、特定の体位についてのイベント発生頻度とその経時変化を容易に把握することができるため、有用である。
【0059】
また、体位指定メニュー2023で「全体位」が指定された場合、ヒストグラムにおけるビン(区分)ごとの頻度を示す棒(バー)を体位別に区分して表示してもよい。図8は、体位指定メニュー2023で「全体位」が指定された場合のバーの表示例を示す図である。
【0060】
図8(a)は、イベントの一例としての無呼吸低呼吸イベントのヒストグラム表示例を示しており、バーの表示色を体位に応じて異ならせたものである。2030は座位・立位を、2032は仰臥位を、2034は側臥位(右側臥位および左側臥位)をそれぞれ示している。なお、同じビンに複数の体位のイベントが存在する場合には、図8(b)のように1つのバーを体位ごとの頻度で色分け表示してもよい。
【0061】
このように、全ての体位について頻度分布を表示する際に、体位ごとの頻度が把握できるように表示することで、無効なイベント(立位・座位で発生したイベント)の判別や、どの体位でイベントが多く発生しているかを一目で把握することが可能になる。
【0062】
また、持続時間分布についても発生頻度と同様に体位別の表示を行うことができる。それにより、持続時間の長い(重症度が高い)イベントがどの体位で発生しやすいのかについても容易に把握することが可能になる。なお、図6のように体位指定メニュー2023がないヒストグラム表示画面において、図8に示したような体位が分かる表示を行うようにしてもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の生体信号処理装置100は、PSG検査によって計測されたデータから、ユーザの希望に応じた多面的な情報を提供することが可能である。例えば、SASイベント(無呼吸低呼吸イベントおよび酸素飽和度低下イベント)の発生頻度を体位別に一覧表示しつつ、特定の体位について、無呼吸低呼吸イベントおよび酸素飽和度低下イベントのさらなる詳細や、SpO2および体動といった他の情報を表示するようにした。そのため、一覧表示において個々の体位とイベント発生頻度を把握しつつ、特定の体位についての詳細情報を確認することが可能であり、使い勝手がよい。
【0064】
また、体位として左側臥位と右側臥位とをまとめて側臥位として取り扱うことにより、仰臥位と側臥位との比較検討を容易に行うことができる。さらに、SASイベントの発生頻度(SASイベント指数)を算出する際に用いる有効計測区間にアーチファクト区間を含めるか否かを容易に切り替え可能としたため、アーチファクト区間がSASイベントの発生頻度に与える影響を容易に把握することができる。
【0065】
加えて、計測区間におけるイベント発生頻度の経時変化やイベント継続時間の頻度分布を表すヒストグラムを、イベント間で比較可能に表示することで、イベントの発生傾向などについてユーザが多面的に評価することを可能にする。
【0066】
なお、本発明に係る生体信号処理装置は、一般的に入手可能な、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末のようなプログラムを実行可能な電子機器で、図2図6を用いて説明した表示を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)を実行することによっても実現できる。従って、コンピュータを実施形態に係る生体信号処理装置として機能させるこのようなプログラムおよび、プログラムを格納した記憶媒体(CD-ROM、DVD-ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。
【符号の説明】
【0067】
100...生体信号処理装置、110...制御部、120...外部I/F、130...記録部、150...表示部、160...操作部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8