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特開2022-89543電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089543
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】電気化学反応単セルおよび電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20220609BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220609BHJP
   H01M 8/2432 20160101ALI20220609BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2432
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202005
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 保夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 暁
(72)【発明者】
【氏名】小野 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞絵
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H126DD05
(57)【要約】
【課題】電解質層と燃料極との剥離を抑制する。
【解決手段】電気化学反応単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備えている。電気化学反応単セルは、さらに、電解質層と燃料極とを接合する溶接部を備えている。溶接部は、第1の方向視で電解質層と燃料極との外周の少なくとも一部に位置している。また、溶接部は、電解質層と燃料極とに跨がるように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備える電気化学反応単セルにおいて、
前記電解質層と前記燃料極とを接合する溶接部を備え、
前記溶接部は、前記第1の方向視で前記電解質層と前記燃料極との外周の少なくとも一部に位置し、前記電解質層と前記燃料極とに跨がるように形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記溶接部を複数備え、
前記複数の溶接部は、前記電解質層と前記燃料極との周方向に沿って互いに離間しつつ並ぶように配置されている、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記溶接部は、前記第1の方向視で前記電解質層よりも外側に位置し、かつ、前記電解質層における前記燃料極とは反対側の表面に連なる突出部分を有している、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルにおいて、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記溶接部と前記燃料極との境界線は、凹凸状である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル。
【請求項5】
複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セルである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの最小構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
従来から、電解質層が燃料極の側面を覆うように配置された単セルが知られている(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-174605号公報
【特許文献2】特開2019-220461号公報
【特許文献3】特開2016-157637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単セルでは、電解質層と燃料極との熱膨張差に起因して電解質層と燃料極との剥離が生じることがある。電解質層が燃料極の側面を覆うように配置された従来の単セルであっても、電解質層と燃料極との境界には、両者の熱膨張差に起因する応力が生じるため、電解質層と燃料極との剥離を抑制することができない、という問題がある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルに含まれる電解質層と燃料極にも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応単セルに含まれる電解質層と燃料極にも共通の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を備える電気化学反応単セルにおいて、前記電解質層と前記燃料極とを接合する溶接部を備え、前記溶接部は、前記第1の方向視で前記電解質層と前記燃料極との外周の少なくとも一部に位置し、前記電解質層と前記燃料極とに跨がるように形成されている。本電気化学反応単セルでは、溶接部が電解質層と燃料極とに跨がるように形成されている。この溶接部は、電解質層と燃料極とを接合するものであり、電解質層の熱膨張率と燃料極の熱膨張率との間の熱膨張率を有している。このため、溶接部は、電解質層と燃料極との熱膨張差を緩和する役割を果たす。これにより、本電気化学反応単セルによれば、電解質層と燃料極との剥離を抑制することができる。
【0009】
(2)上記電気化学反応単セルにおいて、前記溶接部を複数備え、前記複数の溶接部は、前記電解質層と前記燃料極との周方向に沿って互いに離間しつつ並ぶように配置されている構成としてもよい。本電気化学反応単セルでは、一の溶接部が剥がれたり損傷したりしても、その影響が他の溶接部に与えることが抑制される。このため、本電気化学反応単セルによれば、例えば1つの溶接部が電解質層及び燃料極の全周を囲む構成に比べて、溶接部の損傷等が広く影響を与えることを抑制することができる。
【0010】
(3)上記電気化学反応単セルにおいて、前記溶接部は、前記第1の方向視で前記電解質層よりも外側に位置し、かつ、前記電解質層における前記燃料極とは反対側の表面に連なる突出部分を有している構成としてもよい。本電気化学反応単セルでは、溶接部が突出部分を有しない構成に比べて、電気化学反応スタックを組む際に電気化学反応単セルと他の部材との接合面積を広く確保することができる。
【0011】
(4)上記電気化学反応単セルにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記溶接部と前記燃料極との境界線は、凹凸状である構成としてもよい。本電気化学反応単セルでは、溶接部と燃料極との境界線が直線状である構成に比べて、溶接部と燃料極との接触部分が長い分だけ溶接部の脱落を抑制することができる。
【0012】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、複数の電気化学反応単セルを備え、前記複数の電気化学反応単セルの少なくとも1つは、上記(1)から(4)までのいずれか一つの電気化学反応単セルである構成としてもよい。これにより、電解質層と燃料極との剥離が抑制された電気化学反応セルスタックを提供することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、電気化学反応単セルを有する電気化学反応単位を複数備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】電解質層112と燃料極116との接合部分の構造を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、上下方向は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0016】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0017】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0018】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0019】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0020】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0021】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0022】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視で略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0023】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0024】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0025】
インターコネクタ150は、Z軸方向視で略矩形の平板形状の導電性部材であり、Crを含む材料、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0026】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112に対して上側に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112に対して下側に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112と空気極114との間に配置された中間層180とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、中間層180)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0027】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア))を含んでいる。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0028】
空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、気孔率が電解質層112の気孔率よりも高い多孔質な層である。空気極114は、ABOで表されるペロブスカイト型酸化物(例えば、ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物(LSCF)、ランタンストロンチウム鉄酸化物(LSF)、ランタンストロンチウムコバルト酸化物(LSC)、ランタンストロンチウムマンガン酸化物(LSM)、ランタンニッケル鉄酸化物(LNF)等)を含有している。
【0029】
燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、気孔率が電解質層112の気孔率よりも高い多孔質な層である。なお図示しないが、本実施形態では、燃料極116は、燃料極116における下方側の表面を構成する基板層と、基板層と電解質層112との間に位置する機能層とを備える。燃料極116の機能層は、主として、電解質層112から供給される酸素イオンと燃料ガスFGに含まれる水素等とを反応させて、電子と水蒸気とを生成する機能を発揮する層であり、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオンイオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。また、燃料極116の基板層は、主として、機能層と電解質層112と空気極114とを支持する機能を発揮する層であり、電子伝導性物質であるNiと、酸素イオン伝導性酸化物(例えば、YSZ)とを含んでいる。
【0030】
中間層180は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材である。中間層180は、例えば、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、LDC(ランタンドープセリア)、YDC(イットリウムドープセリア)等のイオン伝導性を有する固体酸化物により形成されている。
【0031】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0033】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0034】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0035】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、Crを含む材料、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。空気極114と空気極側集電体134との間に、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されてもよい。
【0036】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0037】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0038】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0039】
A-3.電解質層112と燃料極116とを接合するための詳細構成:
次に、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する単セル110における電解質層112と燃料極116とを接合するための詳細構成について説明する。図4には、電解質層112と燃料極116との接合部分(X1)が拡大して示されている。図6は、電解質層112と燃料極116との接合部分の構造を模式的に示す説明図である。図6では、空気極114等が省略されている。なお、図6は、電解質層112と燃料極116との接合部分について、上下方向に平行な断面が写ったSEM(加速電圧 15kV)におけるSEM画像(例えば90倍)を模式的に示したものである。
【0040】
図4および図6に示すように、単セル110は、電解質層112と燃料極116とを接合する溶接部200を備える。溶接部200は、溶融溶接法により、電解質層の形成材料(例えばYSZ)と燃料極の形成材料(例えばNi)とが溶融して凝固したもの((Y,Zr,Ni)O(xは電荷中性条件により決定))である。なお、溶接部200の特定方法は次の通りである。電解質層112と燃料極116との接合部分の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)に付属されたエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて元素分析することにより、溶接部200の元素の種類を確認する。次に、その確認結果に基づく溶接部200の組成比から、電解質層112と燃料極116とが溶融して凝固したものであることを特定することができる。
【0041】
溶接部200は、上下方向視で電解質層112と燃料極116との外周の少なくとも一部に位置する。溶接部200は、上下方向において電解質層112と燃料極116とに跨がるように形成されている。換言すれば、溶接部200は、電解質層112の側面と燃料極116の側面との両方に接触するように配置されている。より具体的には、溶接部200は、電解質層112の側面と、燃料極116の側面と、電解質層112と燃料極116との境界と、を連続的に接触しかつ覆うように配置されている。
【0042】
溶接部200の厚さD(図4参照)は、例えば10μm以上である。また、溶接部200の厚さDは、例えば30μm以下である。溶接部200の上下方向(Z軸方向)の長さL(図4参照)は、例えば30μm以上である。溶接部200の上下方向の長さLは、例えば80μm以下である。なお、本実施形態では、電解質層112の上下方向の厚さは、10μm以下であり、燃料極116の機能層の上下方向の厚さは20μm以下であり、燃料極116の基板層の上下方向の厚さは1000μm以下である。
【0043】
本実施形態では、単セル110は、複数の溶接部200を備えている。図6に示すように、複数の溶接部200は、上下方向視において電解質層112と燃料極116との周方向に沿って互いに離間しつつ並ぶように配置されている。各溶接部200の上記周方向の幅Wは、例えば50μm以上である。互いに隣に位置する溶接部200同士の上記周方向の離間距離Hは、溶接部200の幅Wより短い。溶接部200は、電解質層112と燃料極116との全周にわたって配置されている。
【0044】
複数の溶接部200の少なくとも1つは、突出部分210を有している。突出部分210は、上下方向視で電解質層112よりも外側に位置し、かつ、電解質層112における燃料極116とは反対側の表面(上面)に連なっている。換言すれば、突出部分210の上面と電解質層112の上面とが面一になっている(図4参照)。本実施形態では、セパレータ120と電解質層112との接合部124の下面が、電解質層112に接触するとともに、電解質層112より外側まで伸びており、突出部分210の上面に接触している。なお、単セル110に備えられた複数の溶接部200の内、50%以上の数の溶接部200が突出部分210を有してよいし、80%以上の数の溶接部200が突出部分210を有してよい。
【0045】
図6に示すように、上下方向に平行な少なくとも1つの断面において、溶接部200と燃料極116との境界線Bは、凹凸状である。具体的には、1つの溶接部200と燃料極116との境界線Bは、複数組の凹凸状を有している。
【0046】
なお、図4および図6に示すように、燃料極116の側面における下側(電解質層112とは反対側)の部分は、溶接部200に覆われていない。このため、燃料極116の側面の全体が溶接部200に覆われた構成に比べて、溶接部200の存在に起因する燃料極116内への燃料ガスFGの拡散の低下を抑制することができる。また、溶接部200は、電解質層112の側面の上端(燃料極116とは反対側の端)まで伸びている。このため、比較的に薄い電解質層112に対して溶接部200が引っかかるように強固に接合される。また、溶接部200は、電解質層112との接合部分の厚さDに対して、燃料極116との接合部分の厚さDが薄くなっている。これにより、比較的に薄い電解質層112に対する接合強度を確保しつつ、燃料極116側では邪魔にならないように薄くして燃料極116内への燃料ガスFGの拡散の低下を抑制することができる。
【0047】
A-4.燃料電池スタック100の製造方法:
本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、例えば以下の通りである。
【0048】
(電解質層112と燃料極116との積層体の形成)
YSZ粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるフタル酸ジオクチル(DOP)と、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約6μm)の電解質層用グリーンシートを得る。また、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、造孔材である有機ビーズと、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約400μm)の燃料極基板層用グリーンシートを得る。また、NiO粉末とYSZ粉末との混合粉末に対して、ブチラール樹脂と、可塑剤であるDOPと、分散剤と、トルエンとエタノールとの混合溶剤とを加え、ボールミルにて混合して、スラリーを調製する。得られたスラリーをドクターブレード法により薄膜化して、所定の厚さ(例えば約11μm)の燃料極機能層用グリーンシートを得る。各グリーンシートを貼り付け、所定の温度(例えば約280℃)で脱脂した後、所定の温度(例えば約1350℃)で所定の時間(例えば約1時間)焼成を行う。これにより、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0049】
次に、電解質層112と燃料極116との積層体に対して上述の溶接部200を形成する。例えば、積層体の上下方向視で周縁部に対してレーザ加工を施して、積層体の周縁部を溶融させながら切断する。レーザ加工には、例えば、COレーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ等の周知のレーザを用いることができる。なお、レーザ加工後に溶融した部分の一部を剥がして溶接部200を形成してもよい。
【0050】
(中間層180の形成)
GDC粉末に、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整して中間層用ペーストを調製する。得られた中間層用ペーストを、上述したレーザ加工後の積層体における電解質層112の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布し、所定の温度(例えば1200℃)で焼成を行う。これにより、中間層180が形成され、中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体を得る。
【0051】
(空気極114の形成)
ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF)の粉末と硫酸塩(例えばSrSO)の粉末との混合粉末を準備し、該混合粉末に対し、有機バインダとしてのポリビニルアルコールと、有機溶媒としてのブチルカルビトールとを加えて混合し、粘度を調整することにより、空気極用ペーストを調製する。得られた空気極用ペーストを、上述した中間層180と電解質層112と燃料極116との積層体における中間層180の表面に、例えばスクリーン印刷によって塗布して乾燥させ、空気極用ペーストが塗布された積層体を所定の温度(例えば約1100℃)で焼成する。これにより、空気極114が形成され、燃料極116と電解質層112と中間層180と空気極114とを備える単セル110が作製される。
【0052】
上述した方法に従い複数の単セル110を作製した後、組み立て工程(例えば、各単セル110にセパレータ120等の他の部材を取り付ける工程、複数の単セル110を積層する工程、ボルト22により締結する工程等)を行う。以上により、燃料電池スタック100の製造が完了する。
【0053】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。単セル110は、電解質層112と燃料極116とを接合する溶接部200を備える。溶接部200は、溶融溶接法により、電解質層の形成材料と燃料極の形成材料とが溶融して凝固したものである。溶接部200は、上下方向視で電解質層112と燃料極116との外周の少なくとも一部に位置する。溶接部200は、電解質層112と燃料極116とに跨がるように形成されている。
【0054】
このように、本実施形態では、溶接部200が電解質層112と燃料極116とに跨がるように形成されている。この溶接部200は、電解質層112と燃料極116とを溶融して形成されたものであり、電解質層112と燃料極116との中間的な組成(性質)を有している。具体的には、溶接部200は、電解質層112の熱膨張率と燃料極116の熱膨張率との間の熱膨張率を有している。このため、溶接部200は、電解質層112と燃料極116との熱膨張差を緩和する役割を果たす。これにより、本実施形態によれば、電解質層112と燃料極116との剥離(例えば界面剥離や層内剥離)を抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、複数の溶接部200が、電解質層112と燃料極116との周方向に沿って互いに離間しつつ並ぶように配置されている。このため、本実施形態では、一の溶接部200が剥がれたり損傷したりしても、その影響が他の溶接部200に進展することが抑制される。このため、本実施形態によれば、例えば1つの溶接部200が電解質層112及び燃料極116の全周を囲む構成に比べて、溶接部200の損傷等が広く影響を与えることを抑制することができる。また、溶接部200の存在に起因する燃料極116内への燃料ガスFGの拡散の低下を抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、溶接部200は、突出部分210を有している。突出部分210は、上下方向視で電解質層112よりも外側に位置し、かつ、電解質層112における燃料極116とは反対側の表面(上面)に連なっている。このため、本実施形態によれば、いずれの溶接部200も突出部分210を有しない構成に比べて、燃料電池スタック100を組む際に単セル110と他の部材との接合面積を広く確保することができる。具体的には、図4に示すように、電解質層112だけでなく、溶接部200の突出部分210まで接合部124を配置することができる。このため、例えば接合部124と単セル110(210を含む)との接合面積を広くすることにより、接合強度を向上させることができる。また、接合部124を電解質層112の外側にはみ出すように配置することにより、接合部124の内周側の領域が広くなるため、単セル110における発電領域を広く確保することができる。
【0057】
本実施形態では、上下方向に平行な少なくとも1つの断面において、溶接部200と燃料極116との境界線Bは、凹凸状である。このため、本実施形態によれば、溶接部200と燃料極116との境界線Bが直線状である構成に比べて、溶接部200と燃料極116との接触部分が長い分だけ溶接部200の脱落を抑制することができる。
【0058】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0059】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、単セル110が中間層180を含んでいるが、単セル110が中間層180を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、燃料極116が基板層と機能層との2層構成であるとしているが、燃料極116が単層構成であってもよいし、3層以上の構成であってもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0060】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0061】
上記実施形態において、単セル110が溶接部200を1つ備える構成でもよい。また、溶接部200は、突出部分210を備えない構成でもよい。溶接部200と燃料極116との境界線Bは、円弧状でもよい。
【0062】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。上記実施形態では、溶接部として、電解質層の形成材料としてのYSZと燃料極の形成材料としてのNiとが溶融して凝固した(Y,Zr,Ni)O(xは電荷中性条件により決定)を例示したが、これ以外に例えば、電解質層の形成材料と燃料極の形成材料との化合物や複合材料により構成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、溶接部200を備える構成が実現されている必要は無く、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの単セル110について、溶接部200を備える構成が実現されていれば、電解質層112と燃料極116との剥離を抑制することができる、という効果を奏する。
【0064】
また、上記実施形態では、平板形の単セル110を対象としているが、本明細書に開示される技術は、平板形以外の他の単セルにも同様に適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルおよび電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の溶接部200を備える構成を採用すれば、同様の効果を奏する。
【0066】
上記実施形態における燃料電池スタック100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、溶接部200を形成するためにレーザ加工を採用したが、これに限らず、他の溶融溶接法(例えば放電加工)を採用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121,131,141:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:中間層 200:溶接部 210:突出部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6