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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089563
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】インナーソールの製作方法
(51)【国際特許分類】
   A43D 1/02 20060101AFI20220609BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20220609BHJP
   A43D 1/08 20060101ALI20220609BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20220609BHJP
【FI】
A43D1/02
A43B17/00 Z
A43D1/08
G16Y40/20
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202054
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】519451131
【氏名又は名称】ゴールド グラビティー プロプライエタリ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GOLD GRAVITY PTY. LTD
(71)【出願人】
【識別番号】520421868
【氏名又は名称】株式会社SPIRAL TURN
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】冨永 琢也
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA01
4F050KA01
4F050NA86
(57)【要約】
【課題】 技術者との対面を必要とせずに、オーダーメイドのインナーソールを製作するためのインナーソールの製作方法を提供する。
【解決手段】 使用者の動作を表現する電子データとしての動作データに基づいて、インナーソールに設ける凸部の形状を決定する。また、使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データに基づいて、足部の骨の突出部および関節部の形状から足サイズを計測し、足サイズのデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用して、足部の骨の突出部のない部位の足サイズを算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中敷きとして使用され、使用者の足部の状態に合わせてオーダーメイドで製作されるインナーソールの製作方法であって、
使用者の動作を表現する電子データとしての動作データに基づいて、前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定することを特徴とするインナーソールの製作方法。
【請求項2】
前記動作データは、複数の動作が混在し連続した包括動作データであることを特徴とする請求項1に記載のインナーソールの製作方法。
【請求項3】
前記動作データは、片足バランスデータ、足踏みデータ、歩行データ、サイドステップデータ、特有動作データのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のインナーソールの製作方法
【請求項4】
使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データに基づいて、使用者の足部の骨の突出部および関節部の形状から足サイズを計測し、
前記足サイズのデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用して、前記足部の骨の突出部のない部位の足サイズを算出することを特徴とするインナーソールの製作方法。
【請求項5】
前記足部の踵から母趾球後縁までの長さを算出することを特徴とする請求項4に記載のインナーソールの製作方法。
【請求項6】
足のタコの位置、抱えているトラブルの種類、体の痛みの部位についての情報である問診データに基づいて、当該インナーソールの部分的形状の変更を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のインナーソールの製作方法。
【請求項7】
前記動作データ、前記足部骨格データ、または前記問診データをインターネット回線を通じて取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のインナーソールの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の中敷きとして装着されるインナーソールの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴の内部に装着されるインナーソール(足底板、矯正中敷きともいう)としては、足裏の特定の部位を持ち上げるための凸部を設けたものがある。このような凸部は、その高さ或いは幅寸法を平均的な人の足裏形状に基づいて製作することで、いわゆる既製品として販売されるものが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、インナーソールは、今日医学の中でも治療用ツールなどとして広く用いられ始めており、既製品ではなく、特定の人に合わせたフルカスタム(オーダーメイド)の製品も製作されている。このようなオーダーメイドのインナーソールの製作方法では、技術者(医師、或いは医師の指示に基づいて作業をする者など)との対面式でのカウンセリングや、足裏の採寸、足裏の型取りを必要とする。また、この採寸、型取りされた使用者の静的な足形状(立位や臥位、座位などでの足形状)を基に、その足型通りに作製されるインナーソールが未だ世界でも、そして日本においても主流と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-62005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オーダーメイドの製作方法では、対面式であるがために、技術者が開業する特定の地域でのみでしか製作することができず、地域ごとにサービスの格差が生じている。また、対面式であるがために、希少性が高まり、価格の高騰により、価格の問題で入手困難となるケースが多く、このこともサービス格差を生じさせている。
【0006】
また、上述した静的な足型通りに作製されるオーダーメイドインナーソールが足の運動を阻害するばかりではなく、足から波及する全身運動をも不良化させてしまうことで、痛みなどを誘発させる結果となり、健康を害された症例が多数存在する。
【0007】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、技術者との対面を必要とせずにオーダーメイドのインナーソールを製作するためのインナーソールの製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明は、靴の中敷きとして使用され、使用者の足部の状態に合わせてオーダーメイドで製作されるインナーソールの製作方法であって、使用者の動作を表現する電子データとしての動作データに基づいて、前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定することを特徴とする。
【0009】
また、前記動作データは、複数の動作が混在し連続した包括動作データであってもよい。
【0010】
さらに、前記動作データは、片足バランスデータ、足踏みデータ、歩行データ、サイドステップデータ、特有動作データのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0011】
一方、使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データに基づいて、使用者の足部の骨の突出部および関節部の形状から足サイズを計測し、前記足サイズのデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用して、前記足部の骨の突出部のない部位の足サイズを算出することを特徴とする。
【0012】
また、前記足部の踵から母趾球後縁までの長さを算出することもできる。
【0013】
さらに、足のタコの位置、抱えているトラブルの種類、体の痛みの部位についての情報である問診データに基づいて、当該インナーソールの部分的形状の変更を行うようにしてもよい。
【0014】
さらにまた、前記動作データ、前記足部骨格データ、または前記問診データをインターネット回線を通じて取得するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインナーソールの製作方法は、靴の中敷きとして使用され、使用者の足部形状、および動的動作の状態に合わせてオーダーメイドとして製作されるインナーソールに使用されるものであり、使用者の動作を表現する電子データとしての動作データ(主に、包括動作データ(複数の動作が混在し連続した動作データ))を用いる。また、変法として、片足バランスデータ、足踏みデータ、歩行データ、サイドステップデータ、特有動作データから成る5種変法動作データのいずれか1つ、または2つ以上の組み合わせに基づいて、前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定しているので、インターネットなどの通信回線を通じて送信された各種電子データに基づいて、技術者との対面を必要とせず、かつ、静的な身体ではなく、動的な身体状況にも対応した従来よりも優れたオーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
また、使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データに基づいて、使用者の足部の骨の突出部および関節部の形状から足サイズを計測し、前記足サイズのデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用して、前記足部の骨の突出部のない部位の足サイズを算出しているので、同様に、インターネットなどの通信回線を通じて送信された各種電子データに基づいて、技術者との対面を必要とせず、オーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
これらにより、以下の3つの優れた効果を奏することができる。
【0016】
(サービス格差の是正)
現在、地域によってはインナーソールを手に入れられない人や、インナーソールの存在を知らずにその恩恵を受けられない格差が生じている。その格差の根源は対面式作製であり、本発明により非対面式作製方法(ビジネスモデル)が確立されることで、日本国内はもちろん、体のトラブルやスポーツのパフォーマンスに悩む世界中の人々への技術提供が可能となりサービス格差が是正される。
【0017】
(オーダーメイドインナーソールの質の向上)
近年多用されている3Dスキャナーなどで取得される静的な足型データは、あくまで使用者の静的な足型(静止立位時や臥位および座位での足型)であり、動作中の足型とは全く異なる形状であることが運動学的、解剖学的に明らかとなっている。むしろ、足は動作中、荷重のかかる位置や、床面の形状などに合わせて常に変形しており、この変形する足部の機能こそが、これほどまでに優れたヒトの歩行能力の基礎を成している。従って、この静的な足型データを主として作製されたインナーソールでは、歩行時、スポーツ時などの動的な足および身体の状態にマッチした最適なインナーソールを製作することは困難である。本発明では、電子的にやり取りが可能な動的動作データに基づいて、オーダーメイドのインナーソールに設ける凸部の形状を決定することを可能としたことで、従来の製造方法では困難であった、動的な足および、身体状況にマッチしたインナーソールを遠く離れた世界中の人々に対し提供可能となる。
【0018】
(オーダーメイドのインナーソールの低価格化と、医学的に、より合理的な発想から製作されるオーダーメイドインナーソールの社会浸透の促進。予防医療への貢献)
対面式であることから、インナーソールの価格が高騰し、特定の富裕層が購入するか、我が国の医療保険制度を用いた作製に限定されてしまっている。より多くの人々がオーダーメイドのインナーソールの恩恵を受けるには低価格化は必須である。また、医療保険の性質上、診断名がついた後に初めて保険が適応されることから、予防医学という観点でのインナーソール作製が制度上困難となっている。身体の不良な動きからくる痛みや、スポーツでの怪我を引き起こす特徴的な不良動作、医療機関にて診断名がつくより前の段階で生じていることから、医療保険を介さない予防医療ツールが非常に重要である。本発明は足元の健康増進を加速させ、大いに社会貢献できる新規的なものであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】身体重心と床反力を説明する概要図である。
図2】COPと身体重心の移動軌跡を示す概要図である。
図3】本発明の実施の形態に係るインナーソールの単体図であって、(A)は平面図、(B)は(A)の右側面図である。
図4図3のX部の拡大図である。
図5】人の足骨の平面図である。
図6】平面視で人の足骨と第1~第5凸部との位置関係を示す概要図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
人が日常行う全ての動作は、身体重心26を制御する運動である。この身体重心26を制御するために生体力学(バイオメカニクス)的に重要になるのがCOP(Center of Pressure)である。まずは、このCOPについて簡単に説明する。なお、図1はヒトの立位における身体重心とCOPの関係性の視覚的理解を容易にする目的で、上半身を除去したロボットの様な模擬身体が、半楕円形に近い形状の物体の上で静止している状態を示している。
【0021】
図1に示すように、人の身体重心26から重力方向に作用する力W1は、模擬股関節22、模擬膝関節23、および模擬足関節24を介して足25へ伝達され、足25から足裏の物体を介し床に作用する。一方、足25の裏全体には、足裏の物体を介して床から受ける反力(以下、床反力W2という)が生じる。
【0022】
COPとは、足25の裏と物体との接触面全体に作用する力の合成ベクトル(床反力W2)の起始点として科学的計算上では広く用いられている。そして、このCOPから生じる床反力W2の大きさと方向により、身体重心運動を含め全身の各関節の運動が物理的に決定される。歩行時における理想的なCOPの移動軌跡は図2の足LF、LR上に描かれた線Yで示される。この個人間で差のあるCOPの移動軌跡Yを最適化させることで、歩き方の改善や痛みの軽減だけでなく、スポーツのパフォーマンスを向上させることも物理的に可能となる。
【0023】
また、スポーツや日常行う動作のほとんどのCOPは足の踵部あるいは、踵付近より起こり(以下、COP起点)、終わり(COP終点)はつま先部分であることが多い。例えば、通常歩行では、踵から接地し、母趾と2趾の間部がCOP終点であることが理想的と言える。また、ゴルフスイング時のダーゲットから遠位側の足(通常右足)では母趾内側部がCOP終点であることが理想的と言える。このように、COP終点がどの趾付近なのか、或いは、趾のどの特定の部位なのかで蹴り出しの強さや方向が決定され、それにより生じた力により、身体重心の進む方向や速度が決定され身体の動きが形成される。
【0024】
解剖学的、運動学的にはCOP終点は母趾付近であることが最も効率が良いとされている。その理由は母趾中足骨18a、母趾基節骨19a、母趾末節骨20aは他の指のそれらより大きく、また、他の指とは異なり、母趾単独で機能する筋肉の配列を有するなどがある。そして、不適切な部位をCOP終点としてしまうことはスポーツのパフォーマンス低下を生じさせるだけではなく、歩行を含めたあらゆる動作での障害や痛みの発生の原因となっている。
【0025】
また、2足歩行を行うヒトにおいて、COP終点の位置、あるいは、COPの移動速度の違いにより生じる左右の足部での蹴り出し力の違いが、下肢全体、骨盤、体幹へと捻じれとして影響を及ぼし、同様に様々な痛みなどの障害に繋がり社会問題化している。
【0026】
COP終点を母趾付近の特定の部位に誘導することによって、母趾付近の特定の部位での蹴り出し力を向上させたり、或いは、左右の足部における蹴り出し力を増減させることで、より目的に適した運動を作り出すことを可能とするものであり、主に前足部(指付近)を中心に凸部を設置することが新規な点であると言える。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係るインナーソール30であって、(A)は平面図、(B)は(A)の右側面図である。また、図4は、図3(A)のX部の拡大図である。さらに、図5は、足骨の平面図、図6は、平面視で人の足骨と第1~第5凸部との位置関係を示す概要図である。
【0028】
なお、図3で示すインナーソール30は右足用のものであり、左足用は、左右対称の構成になる。そのため、以下の説明では、右足用のインナーソール30について説明し、左足用の説明は省略する。なお、厳格に比較をすれば、利用者によって左足と右足とで左右非対称な形状(左右の足裏のばらつきにより生じるCOPの移動軌跡を矯正することが必要になるため)にはなるが、それはあくまで個人差の範囲内であると仮定して、左右対称とみなして説明を進める。
また、本発明でいうインナーソールとは、完成した靴の中に利用者が別途装着して使用するもののほか、製造段階で予め備え付けられている取り外し可能なインナーソールや、靴に縫製されているインナーソールも含まれる。
【0029】
インナーソール30は、図3(A)に示すよう、靴の内部に合わせた外形状(中底形状)に近い形状に形成されており、上面視で領域線L1、L2、L3によって6つの領域に分けられる。この領域線L1、L2、L3および領域A~Eの区分けは、図5に示すように、人の足骨1の構造に基づいて決定されている。
【0030】
人の足骨1は、前後方向に3つの領域A、B、Cに分けることができる。詳細には、前足部A(第1~第5中足骨18、第1~第5趾骨19(第1~第5とは、それぞれ、第1(母趾)、第2(示趾)、第3(中趾)、第4(環趾)、第5(小趾)をいう。趾骨とは、基節骨、中節骨、未節骨の総称)で構成される:リスフラン関節より遠位部)と、中足部B(楔状骨11、12、13、立方骨14、舟状骨15で構成される:ショパール関節とリスフラン関節の間)と、後足部C(踵骨17、距骨16で構成される:ショパール関節より近位部)とである。領域線L1、L2は、これらの領域A,B、Cを概略で分ける線である。
【0031】
また、第2趾の頂点から踵骨最突出部を結ぶ図5の紙面略垂直に1本の領域線L3を引き、領域線L3を挟んで左右に2つの領域(内側部D、外側部E)を分ける。
図5に示した領域線L1~L3の位置は、図3(A)に示した領域線L1~L3の位置に対応する。
【0032】
インナーソール30は、靴の内部形状に合わせて型取りされ、一定の厚みを有する底敷き31と、この底敷き31の上面31bから上側に突出する内側前足部凸部群40とで構成されている。また、この内側前足部凸部群40は、図4に示すように、領域線L1とL3で仕切られた前足部Aかつ内側部Dの領域内で5つの凸部(第1凸部41、第2凸部42、第3凸部43、第4凸部44、第5凸部45)によって構成されている。
【0033】
この凸部群40の各凸部41、42、43、44、45は、底敷き31と一体に形成されており、底敷き31を削り出すことによって所望の形状に仕上げたり、高さ寸法を調整したりしている。また、各凸部41、42、43、44、45を底敷き31と一体で形成しないものであってもよく、例えば、上面31bが平坦な底敷き31に、別体で構成した各凸部41~45を貼り付けることで凸部群40を構成することもできる。
【0034】
これらの第1~第5凸部41、42、43、44、45は、図6に示すように、平面視で母趾の外周を包み込むように配置されている。これらの各凸部41、42、43、44、45には、それぞれの位置、形状により、それぞれ特有の機能、効果を奏している。
【0035】
第1凸部41は、図3および図4に示すように、足の母趾及び2趾の間の基節骨19a部付近(指と指の間かつ、指の付け根付近)に位置する。この第1凸部41の形状は、第2趾に沿って前後に延びる一辺を有し、この一辺よりも内側に頂点を有する略3角形状に形成されている。また、第1凸部41の寸法としては、図4の横方向(内外側の方向)に5mm~30mm、前後方向に5mm~40mm、高さ方向(厚み方向。図3(B)のT1寸法)に1mm~7mmの凸部になっている。
【0036】
第2凸部42は、第1凸部41の前側付近を基部とし、つま先方向に延在している。この第2凸部42の寸法は、図4の横方向(内外側の方向)に2mm~10mm、前後方向に5mm~ソールつま先部先端まで、高さ方向T1で1mm~7mmの凸部になっている。
【0037】
第3凸部43は、第1凸部の内側付近を基部とし、内側方向(母趾方向)に向け母趾基節骨19a部を横断するように延在している。この第3凸部43の寸法は、図4の横方向(内外側の方向)に5mmからソール内側縁まで、前後方向に2mm~10mm、高さ方向T1で1mm~7mmの凸部になっている。
【0038】
第4凸部44は、母趾球後側縁付近(母趾の中足骨頭近位縁18a付近)に沿うように略V字形状で構成されている。この第4凸部44は、踵側端は最大長で内側楔状骨中央まで伸びるように配置されている。また、高さ方向T1で1mm~10mmの凸部になっている。
【0039】
第5凸部45は、母趾球後側縁付近から、或いは、母趾趾骨内側付近からソール内側縁31cの湾曲に沿って配置されている。この第5凸部45の寸法は、図4の横方向(内外側の方向)に2mm~15mm、前後方向に15mmから最大でソールつま先先端まで、高さ方向T1で1mm~7mmの凸部になっている。
【0040】
これら第1~第5凸部41、42、43、44、45は、利用者の足骨の状態にあわせて、これらの凸部41、42、43、44、45のいずれか1つのみを単独で設けることもできるし、これらのうちの2つを組み合わせ(または、3つ、4つ、5つの組み合わせ)て設けることもできる。
【0041】
組み合わせ数を増加させることにより、母趾付近の特定の部位での蹴り出し力を増加させることができる。すなわち、組み合わせ数や、組み合わせパターンを変更することで、母趾付近の特定の部位での蹴り出し力の程度や、あるいは、母趾付近へのCOPの誘導の程度を変化させることができ、目的に応じた最適動作を導くことが可能となる。従って、第1~第5凸部41、42、43、44、45をそれぞれ単独で用いることもあれば、組み合わせて用いることもある。
【0042】
これらの凸部群40は、COPの移動軌跡を移動させるための1つの形態であり、例示として詳細に説明したが、この凸部群40のみが有効な手段ではない。例えば、前足部A、中足部B、後足部Cの外側縁部に沿ってそれぞれ別個に凸部を設けることにより、COPの移動軌跡をより適切に変化させることもできる。このように、インナーソールのどの部位に凸部を設けるかは、使用者の足裏の状態や、歩行姿勢、体の重心バランスなどに基づいて、適宜決定されるものである。
【0043】
上述したように、これらの凸部群40の組み合わせや詳細形状、或いは外側縁部などの他の部位に設ける凸部の形状は、ユーザー特性に鑑みてフルカスタム(オーダーメイド)で製作される。その際、使用者の足部の各部位を綿密に測定しなければならず、従来では、技術者との対面式で行われるものであった。本発明は、以下に記載する方法によって、オーダーメイドのインナーソールの作製を、例えば、インターネット上でのデータの送受信、応答、受答に基づいて非対面式で行えるようにした。
【0044】
非対面式にするには、主に足の解剖学的情報および、身体の動作情報を用いる。より詳細には、(1)統計モデル、(2)人間工学に基づく形状データ、(3)電子データとしての動作データ、(4)インターネット上で回答可能な問診データ、の情報である。これらの情報を組み合わせることで、対面式で作製するものと同質のオーダーメイドのインナーソールの作製が非対面式で可能になる。本発明において特筆すべき新規な点は、足そのものの骨格データ(使用者が静止している状態のデータ)だけにとどまらず、電子データとしてやり取り可能な動作データ(使用者が動いている状態のデータ)からインナーソールの形状を決定するという方法にある。
【0045】
(1)統計モデルとは、足の写真より計測した足サイズの各データを基に、個人の足の特徴に合わせたインナーソールを作製するのに欠かすことのできない数種類の足の長さやサイズを算出するためのモデルである。写真から計測できるデータは足の解剖学的ランドマーク(骨の突出部など形状に特徴がある部位)間の長さに限定されるが、ランドマークを持たない部位までの長さの計測は困難である。これに対し統計モデルを使用することでランドマークから計測したデータを基に、ランドマークの無い部位までの距離の算出することが可能となる。また、この統計モデルにより算出された値はどの程度誤差が生じるか(誤差範囲)も数学的に導くことができるが、本統計モデルは実用可能レベルの非常に少ない誤差範囲で算出可能であることが数学的に明らかとなっている。
【0046】
(2)人間工学に基づく形状データとは、人種、性別を超えて使用可能な平均的かつ中性的なアーチ形状を指す。片足28個の骨からなるヒトの足の構造は性別や人種を越えてある形状範囲内に収まることがわかっている。この形状範囲を基に、動作中のCOPの移動軌跡を機能的にコントールするための平均的かつ中性的なアーチ形状が存在する。しかし、この形状だけでは、個々の動きの特徴に適応させることは困難である。あくまで平均的形状であり、その形状から個々の動きに合わせて変形させることを前提とした形状と言える。
【0047】
(3)電子データとしての動作データ、および(4)のインターネットにより取得する情報は、具体的には以下の電子データであり、(A)足の骨格情報を真上或いは各方向から取得したデータ(以下、足部骨格データ)、(B)包括動作データ、(C)インターネット上で回答可能な問診データ。(以下、問診データ)である。
【0048】
(A)足部骨格データは、足を真上或いは必要に応じて各方向から取得された足部骨格情報であり、具体的には足部を撮影した写真、動画、および、足のサイズ情報を取得することができるセンサーからのデータなどが挙げられる。これらを用いて、足の解剖学的ランドマーク(骨の突出部および関節部など、形状に特徴がある部位)を元に足サイズの計測を行う。
【0049】
ここで、足サイズとは、一般的な足長(踵からつま先までの長さ)に加え、足幅や各足の指までの距離などがある。
【0050】
また、ランドマークとなる部位とは、具体的には、第一中足趾節関節内側の最突出部、第5中足趾節関節外側の最突出部、踵骨最突出部、足趾最突出部、足趾関節部などが挙げられる。
【0051】
この足サイズの計測には、ランドマークを元にした足サイズデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用し、ランドマークのない部位の足サイズを算出することが本発明の新規的点であると言える。
なお、多変量解析とは、統計学において複数の独立変数から何らかの結果を予測する手法であり、その一種に重回帰分析などがある。ある結果(目的変数)に対し、関連する複数の要因(説明変数)のうち、どの変数がどの程度、結果を左右しているのかを関数の形で数値化し両者の関係を表し、それを元にして予測を行うことなどが可能な統計手法である。
【0052】
このランドマークの無い部位の足サイズを統計学を用いて算出するという新規な方法において、作製に最も重要かつ新規的な部位の長さとなるのは、踵から母趾球後縁までの長さである(以下、後縁距離)。母趾球後縁とは、その名の通り、球状の第一中足趾節関節の後ろ(踵方向)の端部のことである。仮に足長(踵からつま先までの長さ)が同一であっても、後縁距離が同一とは限らない。そのため、従来の対面式では個人間で差がある母趾球後縁部を触知し、その部位に合わせてインナーソールを作製することが非常に重要であった。言い換えれば、個人間で異なる母趾球後縁部に適合しているか否かが、オーダーメイドのインナーソールと工場であらかじめ作製された万人共通の既製品のインナーソールを分ける、明確な相違点の一つである。
【0053】
上記方法で後縁距離を算出後、人間工学に基づくアーチ形状サイズを決定する。後縁距離が定まればヒトの足の形状は人種を越えて人間工学に基づくアーチ形状を適応させることが可能である。この人間工学に基づくアーチ形状は中間的(中性的)かつ不完全な形状であり、個人間で異なるCOPの軌跡を適切に誘導することはできないが、COPを誘導する基礎となる形状としての役割を果たす。
【0054】
この基礎形状から、ミリ単位の部分的形状変更を行うことで、個人間で異なるCOPの軌跡や身体運動を適切に誘導するためのインナーソール形状に変化させる。1000種類を超えるパターンを有する形状変更を行うことで、個人の動きに最も合った形状パターンへと変化させることでオーダーメイドのインナーソールの作製を実現させる。この形状に必要なデータは、以下に記載する(B)、(b-1)~(b-5)および(C)の動作データと問診データである。
【0055】
(B)包括動作データは、日常生活動作やスポーツをプレーする様子を包括的に電子データとして取得した動作データである。ここで言う包括とは、複数の動作が混在し連続したデータのことで、特定の動作を限定して実施することない電子データとしての動作データを指す。例えば、日常生活にあるように、椅子から立ち上がって、歩きはじめ、方向転換し目的の場所に達するといった連続動作データや、スポーツにあるように、ボールを投げ、走り、方向転換をし、止まるといった連続動作のことである。これら包括動作は1分間程度の連続した動作を記録することが好ましく、また、上述のように様々な動作の要素が入っていることが好ましい。また、2方向から同時に取得されたデータであるとなお良い。三脚等で固定したカメラから撮る方法が好ましいが、必要に応じて対象者を追従する形で計測端末を動かしても良い。データの精度を上げるため対象者により近づいた状態でデータを取得することが好ましい。
【0056】
また、(B)包括動作データが取得困難な場合には、変法として、電子データとしての5種変法動作データを用いても良い。5種変法動作データとは、(b-1)片足立ちのバランス動作データ(以下、片足バランスデータ)、(b-2)その場での足踏み動作データ(以下、足踏みデータ)、(b-3)歩行動作データ(以下、歩行データ)、(b-4)反復横跳びあるいは、それに準じた、左右方向へ切り返し動作を連続して素早く行う動作データ(以下、サイドステップデータ)、(b-5)スポーツ特有の動作データ(例えば、ゴルフであればゴルフスイングの動作、野球であればバッドでのスイング動作やピッチング動作など(以下、特有動作データ)の5種である。この5種変法動作データは、いずれか1つ、または2つ以上を組み合わせて使用する。
【0057】
なお、上述した電子データとは、インターネット回線を通じて送受信可能な全てのデータであり、例えば、動画データ、静止画像データ、センサーデータ、音声データ、テキストデータ、CSVデータ、XMLデータなどを含む。
【0058】
さらに、センサーデータとは、スマートフォンやタブレット端末などに備えられている動きを感知する各種センサーにより測定されたデータである。例えば、加速度センサーにより取得された加速度データがある。これらは得られたデータに対し微分処理を繰り返すことで、速度や位置に関するデータを取得できることから動作をデータで表現することが可能である。また、近年のセンシング技術に代表される現実空間データがある。これはAR(Augmented Reality;拡張現実)の技術として知られるセンサーデータであり、レーザー光を周囲の現実環境に照射し、散乱や反射光を測定することによって、ヒトの動きを含め、周囲の状況を認識するというものである。以上の様に、様々なセンサーによりヒトの動きをデータ化することが近年可能となっている。
【0059】
(b-1)(B)の変法の1つである片足バランスデータは、片足立ち動作はあらゆる動作での全身バランスの状態を体現する評価手法であることから、包括動作データの変法になり得る。動作データは全身を評価することを基本とし、場合によっては部分的な動き方(バランスのとり方)を評価する。正面からのデータ取得を基本とするが、必要に応じて各方向から行う。片足立ちを数秒保持し、左右を入れ替えて行う。また、必要に応じて応用的な動作を付加してもよい。両足および全身の片足立ちのバランスのとり方の違いに着目する。
【0060】
(b-2)(B)の変法の1つである足踏みデータは、足踏みは片足立ちのバランスと歩行の様子を体現した評価手法であり包括動作データの変法になり得る。足を挙げる高さや速度、回数は必要に応じて変更し、これらを行う際の身体の各部位の動きに注目し評価を行う。
【0061】
(b-3)(B)の変法の1つである歩行データは、歩行は日常で最も多く行う動作の一つであり、歩行の崩れから全身のトラブルや、スポーツでのパフォーマンス低下が生じていることが非常に多いため包括動作データの変法になり得る。歩行可能な距離を正面および後面、必要に応じて側面からデータを取得する。歩行速度などの条件は必要に応じて変化させる。歩行は数試行行い、動作の傾向をつかむことが好ましい。
【0062】
(b-4)(B)の変法の1つであるサイドステップデータは、スポーツでは左右での切り替えしが多様され、左右の切り返し能力がスポーツのパフォーマンスに直接的に影響を与えるため包括動作データの変法になり得る。サイドステップ動作を正面、必要に応じて各方向からデータを取得する。左右方向への切り返し動作を足や体の部位をどのように使って行っているかの評価を行う。
【0063】
(b-5)(B)の変法の1つである特有動作データは、スポーツごとに特有の動作は異なる。スポーツの場合は、実現したいパフォーマンスに合わせて形状を変化させるため求められているスポーツ動作を評価することは言うまでもなく重要である。例えば、ゴルフの場合はゴルフのスイング動作、野球でバッティングの動作など、スポーツごとの動作データを必要に応じた方向から取得する。
【0064】
上述した包括動作データ、および、必要に応じて用いる上記5種変法動作データは、使用者または補助者が電子データとしての動作データの取得を行い、インターネット、およびそれ以外の電子データのやり取りを介して取得する。これら動作データからCOP軌跡を推定し、それを最適化させるため数ミリの形状変更をパターン的に実施する。また、動作データから形状変更の方法の決定はアルゴリズム化された独自の方法により行われる。例えば、動作時の肩の揺れる程度と骨盤の位置の関係や、足を蹴りだす方向などを評価ポイントとし形状変更の判断を、ヒト及び、コンピュータにて行う。
【0065】
(C)問診データは、主に(I)足のタコの位置、(II)抱えているトラブルの種類、(III)体の痛みについての情報を取得する。これら(I)~(III)により、(B)、(b-1)~(b-5)および(C)から決定した形状変更の精度向上や、その形状変更が体にとって負担にならないかを判断する。すなわち、動作データから決定した形状変更の最終確認をこれらデータで行うことができる。また、必要に応じて、動作データに基づく形状変更の前に、問診データを優先して評価を行い、それに基づき動作データを参照する場合もある。
【0066】
(I)足のタコの位置は、足裏のタコは皮膚が肥厚しているため、その部位に繰り返し荷重がかかっていることを意味する。つまり、COPは動作中にそのタコの部位を通過するような軌跡になっていることが多く、動作から評価した判断の妥当性を足裏のタコの位置により確認することができる。また、先に足の裏のタコの位置を評価し、その情報を基に動作を評価することでより正確な動作分析が可能となる。
【0067】
(II)抱えているトラブルの種類は、抱えているトラブルの種類により、COPの軌跡は特徴的なものになる。膝痛や股関節痛の場合は肩を大きく左右に振って歩行する傾向が強く、それに伴うCOPの動きを特徴的に見せる。これらも(I)足のタコの位置と同様に、動作から評価した判断の妥当性の確認や、より正確な動作分析に寄与する。
【0068】
(III)体の痛みについては、身体は負担を可能な限り回避しようとする逃避動作や代償動作を巧みに使い、痛みを軽減させようとする。しかし、これら通常ではない動作が次の問題を引き起こす原因となり得る。このようにどの部位に、どのような種類の、どの程度の痛みがあるかを問診にて調査することで、動作の評価から得た形状変更の判断の妥当性の確認や、より正確な動作分析を可能にする。
また、必要に応じて問診項目および内容を付加してもよく、自由記載項目などを活用し、広く使用者の悩みに関する情報を得ることが好ましい。
【0069】
以上のようなスキームでインターネットを用いて電子データを取得することによって、対面式と同質のオーダーメイドのインナーソールを非対面式で作製することが可能となる。
【0070】
本発明の実施の形態に係るインナーソールの製作方法によれば、使用者における電子データとしての動作データに基づいて、前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定しているので、インターネットなどの通信回線を通じて送信された各種データに基づいて、技術者との対面を必要とせず、かつ、動的な足および、身体状況にマッチしたオーダーメイドインナーソールを製作することができる。
【0071】
また、使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データに基づいて、前記足部の骨の突出部などの形状から足サイズを計測し、前記足サイズのデータを独立変数とし、多変量解析により導き出された独自統計モデルを使用して、前記足部の骨の突出部のない部位の足サイズを算出しているので、従来では対面式で採寸しなければならなかった足部の骨の突出部のない部位(ランドマークのない部位)の足サイズを、対面での採寸を行うことなく算出することができる。そのため、足部の骨格情報である足部骨格データを入手するだけで、使用者に合ったオーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
【0072】
特に、個人差が最も大きな足部の踵から母趾球後縁までの長さを算出することで、今までは対面式でしか採寸できなかったこの寸法を、対面での採寸を行わずに計算で求めることができる。そのため、足部骨格データをインターネット回線などで送受信するだけで、使用者に合ったオーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
【0073】
なお、近年では、3Dスキャナーをはじめとするセンシング技術を用いた足型データを主としたインナーソール作製方法が存在するようになった。しかし、3Dスキャナーなどで取得される足型データは、あくまで使用者の静的な足型(静止立位時や臥位および座位での足型)であり、動作中の足型とは全く異なる形状であることが運動学的、解剖学的に明らかとなっている。むしろ、足は動作中、荷重のかかる位置や、床面の形状などに合わせて常に変形しており、この変形する足部の機能こそが、これほどまでに優れたヒトの歩行能力の基礎を成している。従って、この静的な足型データを主として作製されたインナーソールでは、歩行時、スポーツ時などの動的な足および身体の状態にマッチした最適なインナーソールを製作することは困難である。本発明では、動的動作データに基づいて、オーダーメイドのインナーソールに設ける凸部の形状を決定することを可能としたより論理的妥当性の高い、合理的かつ新規的な方法である点で、3Dスキャナーなどから得た静的な足型のデータを主とした従来の製作方法よりも優れている。
【0074】
さらに、日常生活動作やスポーツをプレーする様子を包括的に電子データとして取得した前記包括動作データに基づいて、当該インナーソールの部分的形状の変更を行う工程を有しているので、インナーソールに設けた凸部の形状を、これらのデータに基づいて部分的にミリ単位で形状変更または微調整をすることができる。これにより、個人間で異なるCOPの移動軌跡を最適な位置に修正可能なオーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
【0075】
またさらに、包括動作データの変法として、電子データとしての5種変法動作データである、片足バランスデータ、足踏みデータ、歩行データ、サイドステップデータ、特有動作データのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせに基づいて、凸部の形状を、微調整することも可能である。
【0076】
また、足のタコの位置、抱えているトラブルの種類、体の痛みの部位についての情報である問診データに基づいて、当該インナーソールの部分的形状の変更を行うようにしているので、(B)、(b-1)~(b-5)および(C)から決定した形状変更による精度向上や、その形状変更が体にとって負担にならないかを判断することができる。そのため、より使用者に適したオーダーメイドのインナーソールを製作することができる。
【0077】
さらにまた、使用者の足部の骨格情報を取得した電子データとしての足部骨格データ、動作データまたは問診データをインターネット回線を通じて取得することで、技術者との対面を必要とせず、オーダーメイドのインナーソールを製作するために必要な各種データを、インターネットなどで容易に送受信することができる。そのため、オーダーメイドで製作することの課題となっていた、地域によるサービス格差の問題や、販売価格の高騰の問題を解決することができる。また、動的な足および、身体状況にマッチしたオーダーメイドインナーソールを作製することで、従来のものよりも質および医学的に論理的妥当性が高い、より優れたオーダーメイドインナーソールを作製することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態に係るインナーソールの製作方法について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施の形態では、使用者の足部の骨格情報を取得した足部骨格データ、動作データ、または問診データをインターネット回線を通じて取得するようにしているが、これに限定されない。例えば、これらの各種データをDVDなどの記録媒体に格納し、この記録媒体を郵便などで送付することで、技術者との対面を必要とせずにオーダーメイドのインナーソールを製作することもできる。
【0080】
また、本実施の形態では、靴の中敷きとして装着されるインナーソールについて説明したが、ミッドソールとして凸部が形成される履物についても適用することもできる。すなわち、オーダーメイドのミッドソールを具備する履物の製作方法としても使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 足骨
11、12、13 楔状骨
14 立方骨
15 舟状骨
16 距骨
17 踵骨
18 第1~第5中足骨
18a 母趾中足骨
19 第1~第5趾骨
19a 母趾基節骨
20a 母趾末節骨
22 模擬股関節
23 模擬膝関節
24 模擬足関節
25 足
26 身体重心
30 インナーソール
31 底敷き
31a 外側縁部
31b 上面
31c 内側縁部
31d 下面
40 内側前足部凸部群
41 第1凸部
42 第2凸部
43 第3凸部
44 第4凸部
45 第5凸部
A 前足部
B 中足部
C 後足部
D 内側部
E 外側部
L1、L2、L3 領域線
LF 左足
RF 右足
T1 高さ寸法
W1 荷重
W2 床反力
Y COPの移動軌跡
Z 身体重心の移動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中敷きとして使用され、使用者の足部の状態に合わせてオーダーメイドで製作されるゴルフスイング用のインナーソールの製作方法であって、
使用者の動作を表現する電子データとしての動作データ、および複数の動作が混在し連続した包括動作データに基づいて、ゴルフスイング時のCOPの位置および移動軌跡を得ることで前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定するものであり、
前記動作データおよび包括動作データは、前記COPの位置および移動軌跡を推定して所定のアルゴリズムを用いて前記凸部の形状変更の方法を決定するための2D動画であり、
前記動作データは、矯正前の前記COPの位置および移動軌跡を把握するためのゴルフスイングの動作である特有動作データであることを特徴とするインナーソールの製作方法。
【請求項2】
前記動作データには、片足バランスデータ、足踏みデータ、サイドステップデータのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のインナーソールの製作方法。
【請求項3】
前記動作データおよび前記包括動作データをインターネット回線を通じて取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインナーソールの製作方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明は、靴の中敷きとして使用され、使用者の足部の状態に合わせてオーダーメイドで製作されるゴルフスイング用のインナーソールの製作方法であって、使用者の動作を表現する電子データとしての動作データ、および複数の動作が混在し連続した包括動作データに基づいて、ゴルフスイング時のCOPの位置および移動軌跡を得ることで前記インナーソールに設ける凸部の形状を決定するものであり、前記動作データおよび包括動作データは、前記COPの位置および移動軌跡を推定して所定のアルゴリズムを用いて前記凸部の形状変更の方法を決定するための2D動画であり、前記動作データは、矯正前の前記COPの位置および移動軌跡を把握するためのゴルフスイングの動作である特有動作データであることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、前記動作データには、片足バランスデータ、足踏みデータ、サイドステップデータのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むようにしてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、前記動作データおよび前記包括動作データをインターネット回線を通じて取得するようにしてもよい。