(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089564
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ホーン
(51)【国際特許分類】
G10K 9/13 20060101AFI20220609BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20220609BHJP
G10K 9/12 20060101ALI20220609BHJP
G10K 9/22 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G10K9/13 101S
B60Q5/00 620C
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 670A
G10K9/12 C
G10K9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202055
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】小寺 銀河
(72)【発明者】
【氏名】河合 達也
(72)【発明者】
【氏名】前橋 祐哉
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異物侵入防止手段による音圧の低下を防ぎつつ、音道への異物の侵入を防止する。
【解決手段】音響部、渦巻ケース200及びカバーの3部材からなるホーン10であって、異物防止手段を渦巻ケースの音道には形成せず音圧低下を防止する。カバーは、立方体形状をし、上面に連通口310、底面に底面反射壁、背面に背面反射壁を形成する。前面は、車両進行方向を向くと共に音響を通過させる前面通過口と前面ルーバを形成し、側面に音響を通過させる側面通過口と側面ルーバ321を形成する。少なくとも側面ルーバは、隣接する側面ルーバの先端及び後端を結ぶ線と渦巻ケースの音道の接線との交差角が下方側で鈍角として、侵入した異物は音道に跳ね返されて落下する。また、少なくとも前面ルーバは、隣接する前面ルーバの先端及び後端を結ぶ線がカバー内に留まり、渦巻ケースには向かわない構造とする。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状をし、中心位置に発音部がある音響部と、
中心から外周に向けて渦巻状の音道を形成し、渦巻状の巻き始め部が前記発音部に対向し、巻き終わり部が下方に開口する渦巻ケースと、
前記渦巻ケースの前記巻き終わり部を覆うカバーとを備えるホーンであって、
前記渦巻ケースの前記音道は、前記巻き始め部から前記巻き終わり部までの全長に亘って断面形状が連続して増加し、
前記カバーは立体形状をしており、
立体形状の上面には、前記渦巻ケースの前記巻き終わり部と連通する連通口を有し、
立体形状の底面には、音を反射する底面反射壁を形成し、
立体形状の前面は、車両取り付け時に車両進行方向を向くと共に、音響を通過させる前面通過口と、この前面通過口を覆う水平方向に延びる複数の前面ルーバを形成し、
立体形状の側面には、音響を通過させる側面通過口と、この側面通過口を覆う水平方向に延びる複数の側面ルーバを形成し、
立体形状の背面には、音を反射する背面反射壁を形成し、
少なくとも前記側面ルーバは、隣接する前記側面ルーバの先端及び後端を結ぶ線と前記渦巻ケースの前記音道の接線との交差角が、下方側で鈍角である
ことを特徴とするホーン。
【請求項2】
円盤形状をし、中心位置に発音部がある音響部と、
中心から外周に向けて渦巻状の音道を形成し、渦巻状の巻き始め部が前記発音部に対向し、巻き終わり部が下方に開口する渦巻ケースと、
前記渦巻ケースの前記巻き終わり部を覆うカバーとを備えるホーンであって、
前記渦巻ケースの前記音道は、前記巻き始め部から前記巻き終わり部までの全長に亘って断面形状が連続して増加し、
前記カバーは立体形状をしており、
立体形状の上面には、前記渦巻ケースの前記巻き終わり部と連通する連通口を有し、
立体形状の底面には、音を反射する底面反射壁を形成し、
立体形状の前面は、車両取り付け時に車両進行方向を向くと共に、音響を通過させる前面通過口と、この前面通過口を覆う水平方向に延びる複数の前面ルーバを形成し、
立体形状の側面には、音響を通過させる側面通過口と、この側面通過口を覆う水平方向に延びる複数の側面ルーバを形成し、
立体形状の背面には、音を反射する背面反射壁を形成し、
少なくとも前記前面ルーバは、隣接する前記前面ルーバの先端及び後端を結ぶ線が前記カバー内に留まり、前記渦巻ケースには向かわない
ことを特徴とするホーン。
【請求項3】
前記側面ルーバは、先端から後端に亘って水平方向に延びている
ことを特徴とする請求項1若しくは2記載のホーン。
【請求項4】
前記前面ルーバは、前方に向けて上方傾斜している
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載のホーン。
【請求項5】
前記底面反射壁は、上部壁と下部壁との二重壁であり、
前記上部壁には、異物が通過可能なスリットが形成され、
前記下部壁は、このスリットを覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一つに記載のホーン。
【請求項6】
前記背面反射壁には、異物の上方への移動を防ぐ返し部が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載のホーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の警音に道いるホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
中心から外周に向けて渦巻状の音道を形成するいわゆるトランペットタイプのホーンでは、異物の侵入が問題となっている。そこで、特許文献1ないし特許文献5では、異物の侵入を防止するための手段を渦巻ケースの渦巻状の音道に形成し、異物が音道の巻き始め部に到達しないようにしていた。
【0003】
しかしながら、音道に異物侵入防止手段を形成したのでは、音道に沿った音波に乱れが生じ、音圧が低下する懸念がある。特に、ホーンは警笛としての役割を果たすものであり、音圧低下は避ける必要がある。
【0004】
また、特許文献6のように、渦巻状の音道の途中ではなく、巻き終わり部の開口部に異物侵入防止材を配置するものも提案されているが、単に異物侵入防止材を配置したのみでは、異物侵入の防止効果が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-134158号公報
【特許文献2】特開2012-88414号公報
【特許文献3】特開2014-98740号公報
【特許文献4】特開2014-98741号公報
【特許文献5】特開2014-153579号公報
【特許文献6】特開2011-76018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、異物侵入防止手段による音圧の低下を防ぎつつ、渦巻ケースの渦巻状音道への異物の侵入を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、円盤形状をして中心位置に発音部がある音響部と、中心から外周に向けて渦巻状の音道を形成して渦巻状音道の巻き始め部が発音部に対向すると共に巻き終わり部が下方に向けて開口する渦巻ケースと、この渦巻ケースの巻き終わり部を覆うカバーとを備えるホーンである。即ち、本開示は音響部、渦巻ケース及びカバーの3部材からなるホーンである。
【0008】
そして、本開示のホーンでは、渦巻ケースの音道は、巻き始め部から巻き終わり部までの全長に亘って断面形状が連続して増加している。即ち、異物防止手段を音道には形成せず、音道の断面形状はスムーズに連続するものとしている。これにより、音道を通過する音の音圧低下を防止している。
【0009】
また、本開示のホーンでは、カバーは立体形状をしており、その上面には渦巻ケースの巻き終わり部と連通する連通口を有し、底面には音を反射する底面反射壁を形成している。そして、カバーの前面は車両取り付け時に車両進行方向を向くと共に、音響を通過させる前面通過口とこの前面通過口を覆う水平方向に延びる複数の前面ルーバを形成している。底面が閉じたカバーの前面に前面通過口を設けることで、底面で反射した音波を効果的に前方に向かわせることができる。また、底面での反射によっては、音圧低下は生じない。
【0010】
更に、本開示のホーンでは、立体形状のカバーの側面に、音響を通過させる側面通過口とこの側面通過口を覆う水平方向に延びる複数の側面ルーバを形成し、カバーの背面には、音を反射する背面反射壁を形成している。背面を閉じて背面反射壁を設けることで、背面で反射した音波も効果的に前方に向かう。かつ、側面にも側面通過口を形成することで渦巻ケースから出た音波に広がりを持たせることができる。
【0011】
本開示の第1は、少なくとも側面ルーバは、隣接する側面ルーバの先端及び後端を結ぶ線と渦巻ケースの音道の接線との交差角が、下方側で鈍角である。側面通過口には側面ルーバが形成されているので、側面ルーバは側面通過口からカバー内に浸入する異物の防止手段として機能する。一方で、音圧の低下を防ぐためにも側面ルーバはある程度の間隔を空けて形成する必要がある。そのため、隣接する側面ルーバの先端及び後端を結ぶ線に沿って異物がカバー内に侵入し、渦巻ケースの音道に向かう可能性もある。
【0012】
しかし、隣接する側面ルーバの先端及び後端を結ぶ線と渦巻ケースの音道の接線との交差角が下方側で鈍角であるので、侵入した異物は音道に跳ね返されて落下することになる。そのため、音道に沿って巻き始め部側に向かうことは無い。側面ルーバを上記のような構造とすることで、異物が侵入したとしても音響部まで異物が到達することを効果的に防ぐことができる。
【0013】
本開示の第2は、少なくとも前面ルーバは、隣接する前面ルーバの先端及び後端を結ぶ線がカバー内に留まり、渦巻ケースには向かわない構造としている。前面通過口は側面通過口に比べて異物の飛来が多くなるので、隣接する前面ルーバの先端及び後端を結ぶ線に沿って侵入する異物も多くなることが懸念される。しかし、たとえ異物が侵入したとしても、飛来した異物はカバー内に留まる構造である。そのため、たとえ異物がカバーに侵入したとしても、侵入した異物がカバーからその上方に位置する渦巻ケースに向かうことは無い。
【0014】
本開示の第3は、側面ルーバを、その先端から後端に亘って水平方向に延びる構造としている。即ち、側面ルーバの投影面積を小さくして、渦巻ケースからの音波がカバー外部にスムーズに流れ出るようにしている。
【0015】
本開示の第4は、前面ルーバを、前方に向けて上方傾斜する構造としている。その結果、前面ルーバは投影面積が大きくなることになる。しかし、上記の通り、前面通過口は側面通過口に比べて異物の飛来が多くなるので、前面ルーバの投影面積を大きくすることで、異物がカバーに浸入するのを防止し、仮に侵入しても渦巻ケースには向かわないようにしている。
【0016】
本開示の第5は、底面反射壁の構造に関する。底面反射壁を、上部壁と下部壁との二重壁とし、上部壁に異物が通過可能なスリットを形成し、下部壁はこのスリットを覆うように配置している。カバー内部に侵入した異物は上部壁のスリットから下方に落下するので、カバー内部に異物が留まる恐れは低減される。しかも、スリットは下部壁により覆われるため、上部壁と下部壁との組み合わせで、音の反射は維持することが可能である。かつ、下部壁がスリットを覆っているので、下方から異物がスリットを介してカバー内に侵入するのも防止できる。
【0017】
本開示の第6では、背面反射壁に異物の上方への移動を防ぐ返し部を形成している。背面は背面反射壁によって閉じているので、背面反射壁に返し部を設けても音圧の低下を来すことは無い。そして、この返し部によって異物の上方への移動を防ぐことができるので、カバー内部に侵入した異物が上方の渦巻ケースに向かうのを効果的に抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本開示の一例を図に基づいて説明する。
図1に示すように、ホーン10は、音響部100、渦巻ケース200、及びカバー300の3部材からなる。
【0020】
音響部100は、
図2に示すように、直径が7センチメートル程度の円盤形状をしており、内部にコイル、リレーを備えている。リレーへの通電で自励することで音響板を振動させて、音波を発生する。音波は渦巻きケースで共鳴して、特定の周波数(例えば400ヘルツ等)で音が鳴る。
【0021】
音響部100で生じた音波は、中心位置に開口した発音部101より渦巻ケース200に送出される。音響部100のうち
図2の背面側はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製のハウジング102で覆われている。
【0022】
また、音響部100には、ホーン10を自動車の車体に固定するためのブラケット103がボルト固定されている(
図11、
図12図示)。ホーン10は、通常自動車のエンジンルーム内で、ラジエータの前方に配置され、ホーンからの警音が前方に向かいやすくしている。
【0023】
渦巻ケース200はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製で、
図3ないし
図5に示すように、内部に渦巻状の音道201を形成している。音響部100の樹脂製のハウジング102と渦巻ケース200とはそれぞれの外周を接着剤や超音波溶着することで固定される。
【0024】
音道201はその断面積がスムーズに連続して増加しており、流れの急変に伴う音圧の低下が生じないようになっている。渦巻状をした音道201の巻き始め部202は、渦巻ケース200の中心に位置し、音響部100の発音部101と対向している。その結果、発音部101から送出された音波は音道201に流入することとなる。
【0025】
図3の正面図で示すように、音道201の巻き終わり部203のうち、右側巻き終わり部204と左側巻き終わり部205とは特に広がりが大きいエクスポネンシャル形状となっている。
図4の右側面図に示すように、後側巻き終わり部206も傾斜の大きいエクスポネンシャル形状をしている。一方、前側巻き終わり部207ではエクスポネンシャル形状とはなっておらず、渦巻ケース200全体に亘って一定の傾斜壁となっている。
【0026】
自動車への搭載を考慮して、渦巻ケース200の巻き終わり部203は四角形状となっており、その大きさは、左右方向が8センチメートル程度で前後方向が6センチメートル程度である。そして、巻き終わり部203は下方向けて開口している。
【0027】
カバー300もポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製で、渦巻ケース200の巻き終わり部203の開口部を覆うように配置される。なお、カバー300と渦巻ケース200とは嵌め合い結合している。
【0028】
図6ないし
図8に示すように、カバー300は渦巻ケース200の巻き終わり部203の開口部に対応した大きさの立方体形状であり、その高さは2センチメートル程度である。ブラケット103によって自動車に組付けられた状態では、渦巻ケース200及びカバー300の前面は自動車の進行方向前方を向いている。
【0029】
図6に示すように、カバー300の前面には、前面通過口301が開口しており、音道201を通過した音波はこの前面通過口301より自動車の前方に向けて発音される。また、前面通過口301には前面ルーバ302が4本左右方向に延びて形成されている。前面ルーバ302はカバー300から前方に向けて突出形成されており、前面ルーバ302の前後方向の突出長さは4ミリメートル程度で、厚さは1.5ミリメートル程度である。また、前面ルーバ302は20度から30度程度の傾斜角で上方に傾斜している(
図8、
図10図示)。更に、前面通過口301の中心には上下方向に延びるコラム303が形成され、前面通過口301の強度を上げている。
【0030】
図7に示すように、カバー300の上面には渦巻ケース200の巻き終わり部203の開口部に対応した形状の連通口310が開口している。従って、渦巻ケース200の音道201を通過した音波は、通路が絞られたりすることなく、スムーズにカバー300内に導入される。そして、底面の底面反射壁311に当たって反射することとなる。
【0031】
図8示すように、カバー300の側面には側面通過口320が開口しており、この側面通過口320には側面ルーバ321が2本左右方向に延びて形成されている。即ち、側面ルーバ321の数は前面ルーバ302の半分で、上側の側面ルーバ321は一番上の前面ルーバ302と連続しており、下側の側面ルーバ321は上から3番目の前面ルーバ302と連続している。
【0032】
図9に示すように、側面ルーバ321はカバー300から側面外方に向けて突出形成されるとともに、カバー300の内方に向けても突出形成されている。従って、側面ルーバ321の幅は前面ルーバ302の幅より広く、13ミリメートル程度ある。厚さも2ミリメートル程度で、前面ルーバ302より厚くなっている。
【0033】
同じく
図9に示すように、カバー300の底面は二重底に形成されており、上部壁312は下側の側面ルーバ321と同じ位置に形成され、下部壁313はカバー300の下面に形成されている。上部壁312には幅1ミリメートル程度のスリット314が5カ所、左右対称位置に開いている。そして、下部壁313はこのスリット314と重なり合う位置に形成されている。
【0034】
図10に示すように、カバー300の背面は背面反射壁330によって閉じられている。従って、カバー300の内部に入った音波は、底面反射壁311と背面反射壁330によって反射し、前面通過口301と側面通過口320から外部に発音される。特に背面反射壁330によって、前面通過口301からの音波の通過が多くなっている。また、背面反射壁330には、異物の上方への移動を阻害する返し部331が2カ所形成されている。
【0035】
次に、上記構成のホーン10の発音に関して説明する。運転者の操作、若しくは前方の障害を検知するセンサからの信号により、音響部100のリレーに通電されると、振動体(音響板)が自励する。すると、振動体の振動に応じた周波数成分の音波が作られて、発音部101より渦巻ケース200の音道201に入る。音道201はその断面形状に急変が無く、巻き始め部202から巻き終わり部203までの全長に亘って断面形状が滑らかに連続して増加しているので、音波は音圧を低下させることは無い。
【0036】
同じく、カバー300の連通口310も巻き終わり部203と同一形状であるので、音波がカバー300に入ることによっても音圧の低下はない。カバー300には底面反射壁311と背面反射壁330が形成されているので、この反射壁で反射した音波は主に前面通過口301より自動車の前方に向けて発音されることとなる。ここで、底面反射壁311及び背面反射壁330により音波の向きが変わり流れが悪くなることも想定されるが、音圧低下をきたすほどのものではない。むしろ、底面反射壁311及び背面反射壁330によって前面通過口301より自動車の前方に向けて発音される音波は大きくなる。底面反射壁311がなく、底面が開口しているものとの比較では、前面通過口301の音圧を所定量(例えば3デシベル程度)大きくすることができている。併せて、左右の側面通過口320からもカバー300外部に向けて発音される。これにより、充分な音量の警笛音を自動車の前方に向けて発音することができる。前面通過口301のみでなく、左右の側面通過口320からもカバー300外部に向けて発音される結果、音波に広がりを持たせることができている。
【0037】
次に、上記構成のホーン10の異物侵入の防止効果を接目する。まず、側面通過口320からの異物に関して説明する。異物としては、小石等の比較的大きな物から水や埃等の小さな物まである。比較的大きな異物は側面ルーバ321によりカバー300内への侵入を防ぐことができる。
【0038】
比較的小さな異物は側面ルーバ321の間からカバー300内に侵入することが考えられるが、側面ルーバ321はその幅に充分な長さがあるので、上方への侵入を阻止することが可能である。即ち、上方へ向かう異物の移動は下側の側面ルーバ321の先端321aと上側の側面ルーバ321の後端321bとを結ぶ線X(
図13図示)が最も上方に向かうこととなるが、側面ルーバ321の間隔に対して幅の長さが充分なため、この線Xが音道201の接線と交差する位置での下方側の交差角A(
図13図示)は鈍角となっている。従って、線Xに沿って飛来して音道201に衝突した異物は音道201で跳ね返されて落下することとなる。
【0039】
線Xは、上側の側面ルーバ321の先端321aとカバー300の連通口310の端部との間でも、下側の側面ルーバ321の後端321bと下部壁313の先端との間でも同様である。従って、左右のいずれの側面通過口320からでも、侵入した異物は、渦巻ケース200の音道201で跳ね返されて落下することになる。尤も、下側の側面ルーバ321の後端321bと下部壁313の先端との間から侵入した異物の大半は上部壁312によって阻止されることとなる。
【0040】
なお、落下することにはなるものの、左右の側面通過口320から侵入した異物が音道201に当たることを許容する設計としているのは、本来的に側面から異物が上方に向かって侵入してくる事態が発生しにくいためである。
【0041】
それに対し、前面通過口301からは異物の飛来が多く、異物が上方に向かって侵入してくる可能性も高くなる。そこで、本開示では、前面ルーバ302を上方に傾斜させて、異物がカバー300に入りにくくしている。即ち、前面ルーバ302を上方に傾斜させることによって、前面ルーバ302の投影面積を増し、異物が前面ルーバ302を通りにくくしている。かつ、上から2番目の前面ルーバ302の先端302aと一番上の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線Y(
図12図示)がカバー300内で留まり、渦巻ケース200には向かわないようになる。
【0042】
この線Yは、一番上の前面ルーバ302の先端302aと前面通過口301端面とを結ぶ線でも、上から3番目の前面ルーバ302の先端302aと上から2番目の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線でも、一番下の前面ルーバ302の先端302aと上から3番目の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線でも、下部壁313の端部と一番下目の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線でも同様である。側面ルーバ321での説明と同様、一番下の前面ルーバ302の先端302aと上から3番目の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線と、下部壁313の端部と一番下目の前面ルーバ302の後端302bとを結ぶ線とに沿って飛来した異物は、上部壁312によってその大半が阻止され、カバー300内に侵入することは無い。
【0043】
このように、本開示の前面ルーバ302は、投影面積を増してカバー300内に異物が入りにくくし、異物が入ったとしても上方の渦巻ケース200側には向かわない構造としている。何らかの理由で異物が渦巻ケース200の音道201に向かったとしても、前面通過口301から侵入した異物は後側巻き終わり部206に向かうことなる。そして、後側巻き終わり部206は、右側巻き終わり部204や左側巻き終わり部205と同様、傾斜の大きなエクスポネンシャル形状であるので、後側巻き終わり部206で跳ね返って落下することとなる。
【0044】
また、カバー300の底面反射壁311にはスリット314が形成されているが、このスリット314は下部壁313によって覆われているので、スリット314から侵入する異物も効果的に防ぐことができる。逆に、カバー300内に侵入した異物をスリット314から下方に排出することができる。
【0045】
カバー300内に侵入してスリット314から排出されていない異物は、自動車の走行風を受けてカバー300の背面側に留まる可能性が高い。その異物が何らかの理由で上方の渦巻ケース200に向かうとしても、本開示では、背面反射壁330に返し部331を形成しているので、異物は返し部331で跳ね返されることとなる。
【0046】
以上の各構成が相俟って、本開示では、音道201まで異物が侵入することが殆ど無くなっている。そのため、渦巻ケース200の音道210に特別な異物侵入防止手段を形成しなくても、音道201の巻き始め部202まで異物が侵入することを防ぐことができる。
【0047】
なお、上述したのは、本開示の望ましい態様ではあるが、本開示は種々に変形可能である。
【0048】
音響部100の発音機構としてリレーの自励を用いる代わりに、電子回路で周波数を制御する電子制御式の発音機構を用いてもよい。
【0049】
渦巻ケース200やカバー300の大きさは、自動車に求められる性能に応じて適宜選択すればよい。また、前面ルーバ302の数の2枚に限らず、側面ルーバ321の数も4枚に限らない。カバー300の大きさに応じて枚数を設定すればよい。
【0050】
上述の例では、一番上の前面ルーバ302と上側の側面ルーバ321とを連続して形成し、上から3番目の前面ルーバ302と下側の側面ルーバ321とを連続して形成していた。意匠上も金型製作上も連続して形成することが好ましいが、搭載等の必要に応じ、非連続とすることも可能である。
【0051】
側面ルーバ321の構成は側面通過口320に配置することが望ましいが、設計上の必要に応じ、前面通過口301に設けてもよい。上述の通り、後側巻き終わり部206は、右側巻き終わり部204や左側巻き終わり部205と同様に傾斜の大きいエクスポネンシャル形状としているので、前面通過口301に設けても、隣接する前面ルーバ302の先端302a及び後端302bを結ぶ線と渦巻ケース200の音道201の接線との交差角が、下方側で鈍角とすることができる。
【0052】
逆に、前面ルーバ302の構成は前面通過口301に用いるのが望ましいが、必要に応じ、側面通過口320に設けることも可能である。この場合には、ルーバの形状を、前面ルーバ302と側面ルーバ321とで同じ形状に揃えることができる。側面ルーバ321の投影面積が増える結果、異物侵入をより効果的に阻止することができる。
【0053】
また、上述の例では、カバー300の連通口310を渦巻ケース200の音道201の巻き終わり部205と同一形状としていたが、連通口310は音道201を通過した音波に絞りを形成しなければよく、巻き終わり部205より大きな形状としてもよい。逆に、多少であれば巻き終わり部205より小さくすることも可能である。更に、カバー300の形状は立体であればよく、前後方向、左右方向、上下方向の寸法は設計要請に応じ適宜選択すれば良い。
【符号の説明】
【0054】
10 ホーン
100 音響部
101 発音部
200 渦巻ケース
201 音道
202 巻き始め部
203 巻き終わり部
300 カバー
301 前面通過口
302 前面ルーバ
310 連通口
311 底面反射壁
320 側面通過口
321 側面ルーバ
330 背面反射壁
331 返し部