(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089571
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20220609BHJP
B41J 11/68 20060101ALI20220609BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220609BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J11/68
B41J29/38
B41J29/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202063
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】今井 拓真
(72)【発明者】
【氏名】福谷 惇史
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 貴之
(72)【発明者】
【氏名】東上 尚矢
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
2C065
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AC06
2C058AC12
2C058AE04
2C058AE09
2C058AF06
2C058AF19
2C058AF22
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA18
2C058LB10
2C061AP01
2C061AQ04
2C061AR01
2C061AS06
2C061BB08
2C061CK01
2C061CK02
2C061HJ06
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HN15
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA09
2C065DA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】縦切り中に分離機構に起因して不要部がスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度の低下が発生することに善処した、新たなプリンタを実現する。
【解決手段】用紙1及びインクリボンを印刷位置に送り込んで印刷ヘッドによりカラー印刷層およびオーバーコート層OPを印刷し、印刷物となる領域Uを切り出すための横切りカッタによる長手方向の切断および縦切りカッタ13による幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域Uから幅方向に所定距離離れた位置を分離機構14で押圧して印刷物となる領域Uに隣接する領域を不要部Vとして分離する動作を、制御部が印刷情報に基づいて実行する。そして制御部に、不要部Vのうち分離機構14が接触する範囲を含む所定領域に対してオーバーコート層OPを印刷しない制御を行わせるように構成した。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷ヘッドによりカラー印刷層およびオーバーコート層を印刷し、印刷物となる領域を切り出すための横切りカッタによる長手方向の切断および縦切りカッタによる幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域から幅方向に所定距離離れた位置を分離機構で押圧して印刷物となる領域に隣接する領域を不要部として分離する動作を、制御部が印刷情報に基づいて行い得るプリンタにおいて、
前記制御部に、前記不要部のうち前記分離機構が接触する範囲を含む所定領域に対してオーバーコート層を印刷しない制御を行わせるように構成したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
用紙に印刷ヘッドによりカラー印刷層およびオーバーコート層を印刷し、印刷物となる領域を切り出すための横切りカッタによる長手方向の切断および縦切りカッタによる幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域から幅方向に所定距離離れた位置を分離機構で押圧して印刷物となる領域に隣接する領域を不要部として分離する動作を、制御部が印刷情報に基づいて行い得るプリンタにおいて、
前記制御部に、前記不要部のうち前記分離機構が接触する範囲を含む所定領域に対してオーバーコート層に代えてオーバーコート層よりも分離機構が受ける摩擦抵抗を小さくする低摩擦層を印刷する制御を行わせるように構成した、ことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
前記低摩擦層が、オーバーコート層のマット調印刷である、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記低摩擦層が、カラー印刷層よりも印刷時の熱エネルギを小さくしたグレーコート層である、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記印刷物となる領域およびその領域に近い前記不要部の所定領域に対してのみオーバーコート層を印刷する、請求項1~4の何れかに記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙幅方向の所要位置を縦切りカッタで切断して幅狭サイズのミニプリント印刷物の出力を可能にするプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のプリンタとして、特許文献1に示すものが知られている。
このプリンタは、
図8に示すように、用紙ロールRが装填されて用紙1を印刷位置PLに向けて繰り出す給紙ローラ2と、用紙ロールRから繰り出された用紙1を所定速度で搬送する主搬送手段3と、印刷位置PLに用紙1とともにリボン4を供給すべく配置される一対の供給側ボビン5a及び巻取側ボビン5bと、印刷位置PLにおいて用紙1の下方に配置されるプラテンローラ6と、このプラテンローラ6に対して用紙1の上方に接離可能に配置されプラテンローラ6との間に用紙1及びインクリボン4を圧接した状態で用紙1に対して印刷を行う印刷ヘッド7と、用紙1を挟持して排紙を行う排紙手段8と、排出前の用紙1を所要長さに切断する横切りカッタ9と、を備える。
【0003】
給紙ローラ2は、
図9に示すように、軸部2aの両側に円盤状の用紙ガイド2bを備えたもので、用紙ロールRは中心部を軸部2aに支持され、両側部を用紙ガイド2bに挟まれた状態で装填される。
【0004】
印刷は、用紙ロールRから排紙方向(
図8における矢印A方向)に一旦繰り出した用紙1を、主搬送手段3によって排紙方向と反対方向である反排紙方向(印刷B方向)に搬送しながら行われる。
【0005】
印刷終了後の用紙1は、横切りカッタ9によって切断される。切断後の用紙1は、補助搬送手段12によって排紙される。
【0006】
加えてこのプリンタは、プリントサイズの多様化を図るべく、横切りカッタ9の下流に縦切りカッタ13を備えている。縦切りカッタ13は、
図8及び
図10に示すように、用紙幅方向の所要箇所を切断するもので、切断後の用紙1のうち、印刷が施されて印刷物となる領域(印刷物)Uは印刷物取出口へ、印刷されなかった領域は不要部Vとしてゴミ箱へ、それぞれ移送されるように構成されている。図中符号14で示すものは、不要部Vを印刷物Uから分離し、経路を変更してゴミ箱へ導くための分離機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、
図11(a)に示す分離機構14の幅W0は、多様な幅の印刷物Uを出力するために、必要最小限に設計されている。縦切り可能な最小幅は、分離機構14の幅W0に依存するためである。すなわち、不要部Vの幅寸法Wが分離機構14の幅寸法W0よりも小さくなると、分離機構14がその不要部Vから印刷物となる領域U側にはみ出してしまい、不要部Vの分離ができなくなるからである。最小幅の下限は、不要部Vを印刷物となる領域Uから分離するための押圧力を適切に付与できる程度であり、例えば最小限の不要部Vの幅が1インチであるとすれば、分離機構14の幅W0はその半分の0.5インチ(13mm)程度に設定される。
【0009】
一方、この種の分離機構14は、
図10に示した縦切りカッタ13とともに縦切りを必要としないときの待機位置と縦切りを必要とする位置との間で幅方向に移動すべく、縦切りカッタ13に近い位置において縦切りカッタ13とともに適宜構造のホルダHに取り付けられているのが通例である。
【0010】
図11(a)の場合は、左右に縦切りカッタ13,13がついているが、分離機構14は左側の縦切りカッタ13と結合しており、左側の縦切りカッタ13と一緒に分離機構14も動く構成になっている。
【0011】
例えば、
図11(a)のように不要部Vの幅Wが狭いときは、分離機構14は不要部Vの略中央を押圧することができるため、不要部Vには幅方向に均等に分離機構14から摩擦抵抗が作用する。
【0012】
しかしながら、
図11(b)のように不要部Vの幅Wが広くなると、分離機構14による摩擦抵抗が不要部Vの左側にのみ生じるため、不要部Vをまっすぐ搬送することが難しくなる。その結果、縦切り中に不要部Vがスキューすることによる用紙詰まりや、縦切りの真直度の低下が発生する可能性がある。
【0013】
本発明は、このような課題に着目し、縦切り中に分離機構に起因して不要部がスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度の低下が発生することに善処した、新たなプリンタを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0015】
すなわち、本発明のプリンタは、用紙に印刷ヘッドによりカラー印刷層およびオーバーコート層を印刷し、印刷物となる領域を切り出すための横切りカッタによる長手方向の切断および縦切りカッタによる幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域から幅方向に所定距離離れた位置を分離機構で押圧して印刷物となる領域に隣接する領域を不要部として分離する動作を、制御部が印刷情報に基づいて行い得るプリンタにおいて、前記制御部に、前記不要部のうち前記分離機構が接触する範囲を含む所定領域に対してオーバーコート層を印刷しない制御を行わせるように構成したことを特徴とする。
【0016】
このようにすると、不要部のうち分離機構が接触する範囲を含む所定領域において、不要部の表面と分離機構との摩擦抵抗は、オーバーコート層を設けたときよりもオーバーコート層を設けないときの方が小さくなる。このため、本発明によれば、分離機構が不要部の幅方向に偏った位置を押圧しても、不要部の真直度の低下を防ぐことができ、これにより、縦切り中に分離機構に起因して不要部がスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度が低下することを有効に防止することができる。
【0017】
或いは、本発明のプリンタは、用紙に印刷ヘッドによりカラー印刷層およびオーバーコート層を印刷し、印刷物となる領域を切り出すための横切りカッタによる長手方向の切断および縦切りカッタによる幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域から幅方向に所定距離離れた位置を分離機構で押圧して印刷物となる領域に隣接する領域を不要部として分離する動作を、制御部が印刷情報に基づいて行い得るプリンタにおいて、前記制御部に、前記不要部のうち前記分離機構が接触する範囲を含む所定領域に対してオーバーコート層に代えてオーバーコート層よりも分離機構が受ける摩擦抵抗を小さくする低摩擦層を印刷する制御を行わせるように構成した、ことを特徴とする。
【0018】
このようにしても、不要部のうち分離機構が接触する範囲を含む所定領域において、不要部の表面と分離機構との摩擦抵抗は、オーバーコート層を設けたときよりも低摩擦層を設けたときの方が小さくなる。このため、本発明によれば、分離機構が不要部の幅方向に偏った位置を押圧しても、不要部の真直度の低下を防ぐことができ、これにより、縦切り中に分離機構に起因して不要部がスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度が低下することを有効に防止することができる。しかも、低摩擦層を印刷する際に用紙に熱エネルギを加えるため、単にオーバーコート層を印刷しない場合に比べて、用紙のカールを矯正し、不要部を収容するゴミ箱が嵩高くなることを防ぐことができる。
【0019】
この場合の低摩擦層が、オーバーコート層のマット調印刷であることが好ましい。
【0020】
マット調印刷とは、オーバーコート層の印刷時に通常よりも熱エネルギを上げてつや消し状態で印刷したものを言う。熱エネルギを上げ過ぎると表面が荒れて却って摩擦抵抗が大きくなるが、一定の限度内であればマット調印刷による摩擦低減効果が期待できるものとなる。
【0021】
或いは低摩擦層は、カラー印刷層よりも印刷時の熱エネルギを小さくしたグレーコート層であることも好ましい。
【0022】
グレーコート層もカラー印刷には違いないが、画像情報に基づいて印刷を行うカラー印刷層に比べて、各色素を一様に所定割合で混合してグレーコーティング層にすれば、オーバーコート層よりも摩擦低減効果が得られ、かつ、熱エネルギを加えることによる用紙のカール矯正効果も期待できるようになる。
【0023】
分離機構は、前記縦切りカッタの隣接位置において前記縦切りカッタとともに共通のホルダに取り付けられることが好ましい。
【0024】
そもそも分離機構が縦切りカッタとは別に駆動されるものであれば、常に不要部の中心を押圧する位置に分離機構を配置することも可能であるが、本発明は分離機構を縦切りカッタとともに共通のホルダに取り付ける簡素な構造の下で、不要部を片押しすることによる不具合を解消することができる点で有益なものとなる。
【0025】
前記印刷物となる領域およびその領域に近い前記不要部の所定領域に対してのみオーバーコート層を印刷することが好ましい。
【0026】
このようにすれば、印刷位置が多少ずれてもオーバーコート層を確実に印刷することができる。例えば、縁なしプリント時は、実際提供する印刷物より少し大きい範囲に印刷を施すことで、印字位置が多少ずれた時でもカット後の印刷物は縁なし印刷の状態を保っており、上記のようにすればオーバーコート層についても同様の対応が可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した本発明によれば、縦切り中に分離機構に起因して不要部がスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度の低下が発生することに善処した、新たなプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態のプリンタの構成を示す模式的な側面図。
【
図2】
図1の内部構成を用紙に沿って上方から模式的に見た図。
【
図3】印刷位置に送り込まれるインクリボンと用紙の関係を示す図。
【
図6】本実施形態の不要部のうちオーバーコートを印刷しない制御を説明する図。
【
図7】本実施形態の不要部のうち低摩擦層を印刷する制御を説明する図。
【
図8】従来のプリンタの構成を示す模式的な側面図。
【
図11】従来のプリンタの不具合を説明する
図6に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は本実施形態のプリンタの構成を示す模式的な側面図、
図2は
図1の内部構成を用紙1に沿って上方から模式的に見た図、
図3は印刷位置PLに送り込まれるインクリボン4と用紙1の関係を示す図である。
【0031】
このプリンタPは、プリンタ本体PBと、縦切りユニットSUとを備える。
【0032】
プリンタ本体PBは、用紙ロールRが装填されて用紙1を印刷位置PLに向けて繰り出す給紙ローラ2と、用紙ロールRから繰り出された用紙1を所定速度で搬送する主搬送手段たる主搬送ローラ3と、印刷位置PLに用紙1とともにリボン4を供給すべく配置される一対の供給側ボビン5a及び巻取側ボビン5bと、印刷位置PLにおいて用紙1の下方に配置されるプラテンローラ6と、このプラテンローラ6に対して用紙1の上方より接離可能に配置されプラテンローラ6との間に用紙1及びインクリボン4を圧接した状態で用紙1に対して印刷を行う印刷ヘッド7と、用紙1を挟持して排紙を行う排紙手段たる排紙ローラ8と、排紙前の用紙1を所要長さに切断する横切りカッタ9と、用紙1の搬送や印刷ヘッド7への通電を制御する制御部CUと、を備える。
【0033】
給紙ローラ2は、
図2に示すように、軸部2aの両側に円盤状の用紙ガイド2bを備えるもので、用紙ロールRはその中心部を軸部2aに支持され、両側部を用紙ガイド2bに挟まれた状態で給紙ローラ2に装填される。給紙ローラ2は図示しないモータに接続され、用紙ロールRからの用紙1の繰り出しや巻き戻しが必要な場合に駆動される。
【0034】
図1に示す主搬送ローラ3は、フィードローラ3aとメインピンチローラ3bからなる。フィードローラは上記給紙ローラ2とは独立して図示しないモータに接続され、メインピンチローラ3bはフィードローラ3aに対して用紙1を介して接離可能とされて、圧接することによってフィードローラ3aとの間で用紙1を挟持して用紙1に搬送力を伝える。フィードローラ3aは正逆方向に駆動して用紙1を所定速度で搬送する機能を有する。
【0035】
ボビン5a、5bは、用紙1の搬送方向に沿って印刷位置PLの両側に配置され、未使用のリボン4が供給側ボビン5aから印刷位置PLに送り込まれ、印刷に供したリボン4が巻取側ボビン5bに巻き取られる。
【0036】
インクリボン2は、
図3に示すように、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、OP(オーバーコート)の染料が塗布された領域が長さ方向に繰り返し形成されている。以下、インクリボン2によって印刷されるカラー印刷層を「CLR」と表記する。
【0037】
図1に示す印刷ヘッド7は、プラテンローラ6に対して昇降可能に配置され、圧接状態で制御部CUから送られる印刷情報(画像情報)に基づきリンクリボン4を加熱してインクを用紙1に転写する。
【0038】
排紙ローラ8は、搬送ローラ8aとピンチローラ8bからなる。搬送ローラ8aは上記給紙ローラ2等とは独立して図示しないモータに接続され、ピンチローラ8bは搬送ローラ8aに対して用紙1を介して接離可能とされて、圧接することによって搬送ローラ8aとの間で用紙1を挟持して用紙1に排紙方向の搬送力を伝える。
【0039】
横切りカッタ9は、
図2に示すように用紙1を幅方向に横断して、用紙1を搬送方向と直交する方向に切断する。
【0040】
制御部CUは、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されるもので、メモリにはプリンタ本体PBや縦切りユニットSUの制御に必要なプログラム及びデータが記憶されている。印刷時の基本制御として、用紙ロールRから給紙方向(
図1中矢印A方向)に一旦繰り出した用紙1を、主搬送ローラ3によってインクリボン4とともに排出方向と反対方向である印刷方向(
図1中矢印B方向)に搬送しながらこれらを印刷位置PLに送り込み、外部から与えられる印刷情報に基づいて用紙1の所要箇所に印刷を施す。
【0041】
印刷に供される用紙1は、
図3に示すように、同一の印刷領域が印刷開始位置1(P)と印刷終了位置1(Q)の間で往復して搬送され、各々の印刷開始時にインクリボン4の先頭が図中(a)~(d)のごとくY、M、C、OPと入れ替わり、印刷開始位置にある用紙1(P)に重合した状態で印刷ヘッド7がヘッドダウンして、用紙1とインクリボン4が同時搬送されながら、カラー印刷層CLRおよびオーバーコート層OPの印刷が行われる。オーバーコート層OPが印刷されるまでは、印刷終了後に印刷ヘッド7がヘッドアップし、インクリボン4を残して用紙1だけが印刷終了位置1(Q)から印刷開始位置1(P)に戻される。
【0042】
1つの印刷領域に対してオーバーコート層OPまでの印刷が終了した後、用紙1は、
図1に示す排紙ローラ8によって
図2に示すプリンタ本体PBの排紙口10側に送り出され、所定の送り出し位置で横切りカッタ9が用紙幅方向に作動して、印刷済領域A1と未印刷領域A2の間が切断される。
【0043】
一方、
図1及び
図2に示す縦切りユニットSUは、プリンタ本体PBに対して後付けで取り付けられるもので、プリンタ本体PBの排紙口10から排出される用紙1を受け入れる縦切りガイド11と、この縦切りガイド11から導入された用紙1を縦切りユニットSU内で搬送する補助搬送手段たる一対の補助搬送ローラ12と、これら一対の補助搬送ローラ12の間に位置する縦切りカッタ13とを備える。
【0044】
縦切りガイド11は、用紙1を受け入れつつ幅方向に位置決めするために、搬送方向に沿って漸次幅狭となるテーパ状をなしている。プリンタ本体PBにも用紙ガイド11´が存在しているが、縦切りユニットUSの縦切りガイド11はプリンタ本体PBの用紙ガイド11´よりも幅狭とされている。
【0045】
補助搬送ローラ12は、用紙1の下方に位置する補助駆動搬送ローラ12aと、用紙の上方にあって補助駆動搬送ローラ12aに対して接離可能な補助ピンチローラ12bとを備える。補助駆動搬送ローラ12aは、プリンタ本体PBのフィードローラ3aや排紙ローラ8の搬送ローラ8a、給紙ローラ2とは独立したモータに接続され、補助ピンチローラ12bの昇降用モータも、プリンタ本体PBのメインピンチローラ3bや排紙ローラ8のピンチローラ8b、印刷ヘッド7の昇降モータとは独立したモータに接続されている。
【0046】
図4は
図2におけるIV-IV線断面図である。
図4(a)は縦切りカッタ13で切断後に印刷物となる領域(印刷物)Uが印刷物排出口へ導出される様子を示した図であり、
図4(b)は縦切りカッタ13で切断後に印刷に供されなかったゴミとなる不要部Vが分離機構14によりゴミ箱に導出される様子を示した図である。縦切りカッタ13は、用紙下面側の下部カッタ13aと用紙上面側の上部カッタ13bとの間で用紙1を縦方向に切断し、スリットSを形成するもので、下部カッタ13aおよび上部カッタ13bはそれぞれホルダHa、Hbに保持されている。ホルダHa、Hbは、同期してカッタ13a、13bを、
図2に示すように用紙1の通過と干渉しない待機位置13(A)と、縦切りを要する用紙幅方向の所要位置13(B)との間で移動可能とされている。待機位置(A)から所要位置13(B)へのホルダHa、Hbの移動は、用紙1が縦切りを必要とする位置に到来する前に行われる。用紙1に対する縦切りが終わり、印刷物Uや不要部Vが印刷物取出口やゴミ箱に送られた後に、カッタ13a、13bはホルダHa、Hbによって再び待機位置(A)に移動される。
【0047】
図示例のものは縦切りカッタ13が1つであるが、
図5に示すように縦切りカッタ13を二組備え、それらを待機位置13(A)から異なる切断位置13(B)にそれぞれ移動させることによって、用紙1を三分割に切断するように構成することもできる。
【0048】
縦切りカットによって生成されるスリットSの位置は、外部から与えられる印刷情報(例えば、フォトプリント印刷情報)に基づく。すなわち、印刷情報により何インチサイズの印刷画像であるか、用紙1のどの位置が印刷領域であるかが判明すると、縦切りするスリットSの位置が特定されるので、制御部CUは縦切りカッタ13をそのスリットSの位置に移動させて縦切りを実行する。
【0049】
縦切りカッタ13で切断後、印刷領域に所要の印刷を施した印刷物となる領域(印刷物)Uは
図2及び
図4(a)に示すように正規のルートを通って最終的に縦切りユニットSUの印刷物取出口に導出される。一方、ゴミとなる不要部Vをゴミ箱に収容するルートに送り出すために、このプリンタには
図2及び
図4(b)に示すように、印刷物となる領域Uから不要部Vを分離しつつ排出経路を変更する分離機構14が設けられている。
【0050】
分離機構14は、
図2、
図4(b)、
図10に示すように、縦切りカッタ13の下流において上部カッタ13bを保持する上部ホルダHbに取り付けられたもので、縦切りカットされる位置から幅方向に所定距離離れた位置を押圧するように配置され、その位置関係を保って上部カッタとともに動作する。そして、用紙1と干渉しない
図4(b)に想像線で示す位置から、軸mの回りに回転することによって用紙1を下方に押圧する位置に移動するように構成される。分離機構14の用紙1との接触面は、用紙1を滑らかに下方に誘導する滑らかな湾曲面となっている。これによって、不要部Vは印刷物となる領域(印刷物)Uから分離され、ゴミ箱に向かう方向に導かれる。
【0051】
縦切りカッタ13による縦カット中に、
図2に示す印刷済領域A1の終端が横切りカッタ9の位置に到来した際には、横切りカッタ9によって印刷済領域A1と未印刷領域A2の間を切断する。その後は、補助搬送ローラ12によって用紙1を送りながら、残りの縦カットを完了する。これにより、印刷物となる領域(印刷物)Uとなる領域がミニプリントとして切り出される。
【0052】
図1、
図2において符号15、15´で示すものは用紙先端を検知するセンサである。
【0053】
以上の構成において、従来のミニプリントには、
図11(b)に示したように、縦切り中に分離機構14が不要部Vを片押しすることに起因して、不要部Vがスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度の低下が危惧されるものとなっている。
【0054】
すなわち従来の制御では、印刷部となる領域Uに関しては印刷情報に基づいてY、M、Cのカラー印刷層CLRを印刷するのに対して、オーバーコート層OPに関しては、印刷領域が何インチサイズであるか、用紙1のどの位置が印刷領域となるのかに拘わらず、用紙1の全面に印刷するのが通例である。しかしながら、オーバーコート層OPを塗布すると、オーバーコート層OPの印刷前の状態に比べて分離機構14と不要部Vの間の摩擦抵抗が大きくなるため、これが不要部Vの真直度の低下を助長していることが検討の結果明らかになった。
【0055】
そこで本実施形態は、
図6(a)に示すように、制御部CUに、印刷物となる領域Uおよびその領域Uに隣接する不要部Vの幅方向所定領域(寸法α)に対してのみオーバーコート層OPを印刷し、不要部Vのうち分離機構14が接触する領域を含めた図中ハッチングで示す残りの所定領域に対してオーバーコート層OPを印刷しない制御を行わせるように構成している。
【0056】
例えば、ミニプリントのプリントサイズとして幅寸法が1インチ~6インチ程度のものが予定される場合に、本実施形態ではそのうちの最小プリントサイズである1インチサイズに対して分離機構14による適切な押圧ができるように、分離機構14の幅W0はその半分のサイズの0.5インチ程度(13mm)に設定されている。そして、縦切りカッタ13によって形成されるスリットSの位置から分離機構14による押圧領域のうち最も近い押圧端部までの距離をLとした場合、不要部Vに対してオーバーコート層OPを印刷すべき幅方向所定領域αは上記距離Lよりも狭い範囲(α<L)となるように設定している。αの値は適宜設定できるが、この実施形態では2mm程度である。図において、縦切りカッタ13の刃幅やスリットSの幅は切断時の様子を示すものとして図示しているが、最終的に縦切りカッタ13は退避し、スリットSは閉じるため、縦切りカッタ13の刃幅やスリットSの幅寸法はこの明細書ではオーバーコート層OPの寸法設定や計算上考慮していない。
【0057】
図6の場合、用紙1の左側が印刷物となる領域U、右側が印刷物とならない不要部Vであるため、不要部Vの左側の幅方向所定領域のみにオーバーコート層OPが印刷され、右側のハッチングで示す領域はオーバーコート層OPを印刷しない領域となっている。一方、
図6(b)の場合は、用紙1の左右が印刷物となる領域U、真ん中が印刷物とならない不要部Vであるため、不要部Vのうち左右2mmの領域はオーバーコート層OPを印刷し、それ以外の領域すなわち真ん中のハッチングで示す領域はオーバーコート層OPを印刷しない領域となっている。
【0058】
前述したようにスリットSの位置すなわち座標は印刷情報から判明するので、制御部CUはその座標に幅方向所定領域のαを加えてオーバーコート層OPを印刷すべき領域を演算により算出する。例えば、
図6(a)でカラー印刷層CRLの座標がX0~X1であれば、スリット位置はX1、オーバーコート層OPの範囲はX0~X1+αとなり、残りの所定領域であるX1+α~Xendの範囲はオーバーコート層OPを印刷しない。
【0059】
或いは、
図6(b)の場合、カラー印刷層CRLの座標がX0~X1、X2~Xendであれば、スリット位置はX1、X2、オーバーコート層OPの範囲はX0~X1+αと、X2-α~Xendとなり、残りの所定領域であるX1+α~X2-αの範囲はオーバーコート層OPを印刷しない。
【0060】
制御部CUは、これらの情報に基づいて印刷ヘッド7にカラー印刷層CLR及びオーバーコート層OPの印刷指令をなし、印刷ヘッド7がカラー印刷層CLRの印刷の後にオーバーコート層OPの印刷を実行する。
【0061】
以上のように、本実施形態のプリンタは、用紙1に印刷ヘッド7によりカラー印刷層CLRおよびオーバーコート層OPを印刷し、印刷物となる領域Uを切り出すための横切りカッタ9による長手方向の切断および縦切りカッタ13による幅方向の切断を行うとともに、印刷物となる領域Uから幅方向に所定距離離れた位置を分離機構たる分離機構14で押圧して印刷物となる領域Uに隣接する領域を不要部Vとして分離する動作を、制御部CUが印刷情報に基づいて実行し得るものである。
【0062】
そして制御部CUに、印刷物となる領域Uおよびその領域Uに近い不要部Vの所定領域αに対してのみオーバーコート層OPを印刷し、不要部Vのうち分離機構14が接触する範囲を含む残りの所定領域に対してオーバーコート層OPを印刷しない制御を行わせるように構成したものである。
【0063】
このようにすると、不要部Vのうち印刷物となる領域Uに近い所定領域αにはオーバーコート層OPが印刷されるため、印刷物となる領域Uに対しては確実に全面にオーバーコート層を印刷することができる。そして、不要部Vのうち分離機構14が接触する範囲を含む残りの所定領域において、前述したように、不要部Vの表面と分離機構14との摩擦抵抗は、オーバーコート層OPを設けたときよりもオーバーコート層OPを設けないときの方が小さくなる。このため、本実施形態によれば、分離機構14が不要部Vの幅方向に偏った位置を押圧しても、不要部Vの真直度の低下を防ぐことができ、これにより、縦切り中に分離機構14に起因して不要部Vがスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度が低下することを有効に防止することができる。
【0064】
具体的に分離機構14は、縦切りカッタ13の隣接位置において縦切りカッタ13のうち上部カッタ13bとともに共通のホルダHbに取り付けられている。
【0065】
そもそも分離機構14が縦切りカッタ13とは別に駆動されるものであれば、常に不要部Vの中心を押圧する位置に分離機構14を配置することも可能であるが、本実施形態は分離機構14を縦切りカッタ13の上部カッタ13bとともに共通のホルダHbに取り付けるという簡素な構成を採用しているため、このような構成の下で不要部Vを片押しすることによる不具合を解消できる点で有益なものとなる。
【0066】
また制御部CUは、印刷物となる領域Uおよびその領域に近い不要部Vの所定領域αに対してのみオーバーコート層OPを印刷するようにしている。このため、印刷位置が多少ずれてもオーバーコート層を確実に印刷することができる。例えば、縁なしプリント時は、実際提供する印刷物Uより少し大きい範囲に印刷を施すことで、印字位置が多少ずれた時でもカット後の印刷物は縁なし印刷の状態を保っており、上記のようにすればオーバーコート層OPについても同様の対応が可能になる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施形態では不要部Vの一部に対してオーバーコート層OPを印刷しないことで分離機構14との摩擦抵抗を低減させたが、
図7(a)に示すように、制御部CUに、印刷物となる領域Uおよびその領域に近い不要部Vの所定領域αに対してのみオーバーコート層OPを印刷し、不要部Vのうち分離機構14が接触する範囲を含む残りの所定領域に対してオーバーコート層OPに代えてオーバーコート層OPよりも分離機構14が受ける摩擦抵抗を小さくする低摩擦層(以下、「LFL」と表記する)を印刷する制御を行わせるように構成してもよい。
【0069】
このようにしても、不要部Vのうち印刷物となる領域Uに近い所定領域αにはオーバーコート層OPが印刷されるため、印刷物となる領域Uに対しては確実に全面にオーバーコート層を印刷することができる。そして、不要部Vのうち分離機構14が接触する範囲を含む残りの所定領域において、不要部Vの表面と分離機構14との摩擦抵抗は、オーバーコート層OPを設けたときよりも低摩擦層LFLを設けたときの方が小さくなる。このため、この構成によれば、分離機構14が不要部Vの幅方向に偏った位置を押圧しても、不要部Vの真直度の低下を防ぐことができ、これにより、縦切り中に分離機構14に起因して不要部Vがスキューすることによる紙詰まりや、縦切りの真直度が低下することを有効に防止することができる。しかも、低摩擦層LFLを印刷する際に用紙に熱エネルギを加えるため、単にオーバーコート層OPを印刷しない場合に比べて、用紙1のカールを矯正し、不要部Vを収容するゴミ箱が嵩高くなることを防ぐことができる。
【0070】
図7(a)の低摩擦層LFLは、オーバーコート層OPを印刷する際に通常よりも熱エネルギを上げてつや消し状態で印刷することにより形成したマット調印刷である場合を示している。熱エネルギを上げ過ぎると表面が荒れて却って摩擦抵抗が大きくなるが、一定の限度内であれば、マット調印刷による摩擦低減効果が期待できるものとなる。
【0071】
あるいは
図7(b)に示すように、低摩擦層LFLとして、カラー印刷層CLRよりも印刷時の熱エネルギを小さくしたグレーコート層を印刷しても有効である。グレーコート層もカラー印刷には違いないが、画像情報に基づいて印刷を行うカラー印刷層に比べて、各色素を一様に所定割合で混合してグレーコート層にすれば、オーバーコート層OPよりも摩擦低減効果が得られ、かつ、熱エネルギを加えることによる用紙のカール矯正効果も期待できるようになる。
【0072】
さらに、印刷物となる領域や不要部は上記以外の位置関係や組合せであってもよく、その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…用紙
4…インクリボン
7…印刷ヘッド
9…横切りカッタ
13…縦切りカッタ
14…分離機構
CLR…カラー印刷層
CU…制御部
Hb…ホルダ
LFL…低摩擦層
OP…オーバーコート層
PL…印刷位置
U…印刷物となる領域
V…不要部
X1+α…端部座標
X2-α…端部座標
X1、X2…縦切りカット座標
α…所定領域