(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089600
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20220609BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220609BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220609BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220609BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220609BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20220609BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B7/023
B32B7/022
B29C45/14
G02B1/14
G02B1/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202122
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】滝川 慶
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 孝允
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4F206
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009AA05
2K009AA15
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK25
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100DE01C
4F100EH36
4F100EH36E
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ08
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100EJ42D
4F100EJ42E
4F100EJ54
4F100EJ54A
4F100EJ54B
4F100EJ54C
4F100EJ54D
4F100EJ54E
4F100GB41
4F100HB00E
4F100HB31
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100JB01
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JB14C
4F100JK02
4F100JK02A
4F100JK02B
4F100JK02C
4F100JK08
4F100JK08A
4F100JK08B
4F100JK08C
4F100JK09
4F100JK12
4F100JK12A
4F100JK12B
4F100JK12C
4F100JK12D
4F100JL01
4F100JN01A
4F100JN06
4F100JN06A
4F100JN06B
4F100JN06C
4F100JN18
4F100JN18C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F206AD05
4F206AD09
4F206AD20
4F206AD27
4F206AG03
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB19
4F206JF05
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】低い反射率を有するアフターキュア型の積層フィルムを提供する。
【解決手段】透明支持基材と、前記透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、前記未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を備える積層フィルムであって、前記未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含み、前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、前記透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下であり、前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、90℃の温度下で30分間加熱処理された前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値R
AHは、2%以下である、積層フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、
前記未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を備える積層フィルムであって、
前記未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含み、
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下であり、
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、
90℃の温度下で30分間加熱処理された前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2%以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記反射率の極小値RAHと、前記加熱処理される前の前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RBHとは、
100×|RAH-RBH|/RBH≦20(%)
の関係を満たす、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記光干渉層形成組成物は、第1の層形成成分と低屈折粒子とを含み、
前記第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含み、
前記第1反応性成分は、重量平均分子量が1万超の第1ポリマー、重量平均分子量が1万以下の第1オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第1モノマーよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記低屈折粒子の含有量Xと、前記第1オリゴマーおよび前記第1モノマーの合計の含有量Yと、前記第1ポリマーの含有量Zとは、
X+Y+Z=100、
X≧30、
Y≧0、
Z≧0、および、
Z≦1/2X-15
の関係を満たす、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層形成組成物は、第2の層形成成分を含み、
前記第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含み、
前記第2反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第2オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第2モノマーの少なくとも一方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記第2反応性成分は、さらに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含む、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記第2オリゴマーおよび前記第2モノマーの合計の含有量は、前記ハードコート層形成組成物の固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下である、請求項4または5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記未硬化のハードコート層と前記未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも一つの未硬化の機能層を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記未硬化の光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HBCは、0.1GPa以上0.5GPa以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムの前記光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HACは、0.25GPa以上0.7GPa以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記未硬化のハードコート層の厚さは、2μm以上30μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記未硬化の光干渉層の厚さは、15nm以上200nm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項12】
硬化された請求項1~11のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む、成形体。
【請求項13】
前記ハードコート層は、前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
さらに、前記透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層を備える、請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
さらに、前記加飾層の少なくとも一部を覆う成形樹脂層を備える、請求項13に記載の成形体。
【請求項15】
厚さ50μm以上600μm以下の透明支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を塗布して、未硬化のハードコート層を形成する工程と、
他の支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を塗布して、未硬化の光干渉層を形成する工程と、
前記未硬化のハードコート層の前記透明支持基材とは反対側の面と、前記未硬化の光干渉層の前記他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備え、
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、
90℃の温度下で30分間加熱された前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2%以下である、積層フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層フィルムの前記透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、
前記加飾工程の後、前記積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備え、
前記加飾工程は、前記積層フィルムを、80℃以上で20分間以上加熱する、加熱工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項17】
前記加飾工程の後、金型に前記光干渉層を対向させ、前記加飾層に向かって成形用樹脂を射出する射出成型工程を備える、請求項16に記載の成形体の製造方法。
【請求項18】
前記金型は、前記積層フィルムに立体形状を付与し、
前記加飾工程の後、前記射出成型工程の前に、前記積層フィルムを前記立体形状に沿った形状に成形するプレフォーム工程を備える、請求項17に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、コンピュータ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器(タブレットパソコン、モバイル機器および電子手帳等)に加え、デジタルメーター、インストルメントパネル、ナビゲーション、コンソールパネル、センタークラスターおよびヒーターコントロールパネル等の車載用表示パネル等、様々な分野で使用されている。このような製品は、多くの場合、保護材で覆われている。保護材は、通常、ハードコート層を有するフィルムを成形することにより得られる。
【0003】
ディスプレイの保護材には、視認側表面の反射率を低減させることを目的として、さらに低屈折率層が設けられる場合もある。特許文献1には、透明支持体上にハードコート層と低屈折率層(光干渉層)とを順に積層した積層フィルムが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、用途および意匠性等の目的に応じて、ディスプレイの保護材に様々な加飾層を設けたり、ディスプレイの保護材を立体形状に成形したりすることが提案されている。しかし、加熱を伴う処理が行われると、積層フィルムの反射率が大きくなる場合がある。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、その目的は、低い反射率を有するアフターキュア型の積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、
前記未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を備える積層フィルムであって、
前記未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含み、
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下であり、
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、
90℃の温度下で30分間加熱処理された前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2%以下である、積層フィルム。
【0008】
[2]
前記反射率の極小値RAHと、前記加熱処理される前の前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RBHとは、
100×|RAH-RBH|/RBH≦20(%)
の関係を満たす、上記[1]に記載の積層フィルム。
【0009】
[3]
前記光干渉層形成組成物は、第1の層形成成分と低屈折粒子とを含み、
前記第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含み、
前記第1反応性成分は、重量平均分子量が1万超の第1ポリマー、重量平均分子量が1万以下の第1オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第1モノマーよりなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記低屈折粒子の含有量Xと、前記第1オリゴマーおよび前記第1モノマーの合計の含有量Yと、前記第1ポリマーの含有量Zとは、
X+Y+Z=100、
X≧30、
Y≧0、
Z≧0、および、
Z≦1/2X-15
の関係を満たす、上記[1]または[2]に記載の積層フィルム。
【0010】
[4]
前記ハードコート層形成組成物は、第2の層形成成分を含み、
前記第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含み、
前記第2反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第2オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第2モノマーの少なくとも一方を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0011】
[5]
前記第2反応性成分は、さらに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含む、上記[4]に記載の積層フィルム。
【0012】
[6]
前記第2オリゴマーおよび前記第2モノマーの合計の含有量は、前記ハードコート層形成組成物の固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下である、上記[4]または[5]に記載の積層フィルム。
【0013】
[7]
前記未硬化のハードコート層と前記未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも一つの未硬化の機能層を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
[8]
前記未硬化の光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HBCは、0.1GPa以上0.5GPa以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0015】
[9]
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムの前記光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HACは、0.25GPa以上0.7GPa以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0016】
[10]
前記未硬化のハードコート層の厚さは、2μm以上30μm以下である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0017】
[11]
前記未硬化の光干渉層の厚さは、15nm以上200nm以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0018】
[12]
硬化された上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルムを含む、成形体。
【0019】
[13]
前記ハードコート層は、前記透明支持基材の一方の主面に配置されており、
さらに、前記透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層を備える、上記[12]に記載の成形体。
【0020】
[14]
さらに、前記加飾層の少なくとも一部を覆う成形樹脂層を備える、上記[13]に記載の成形体。
【0021】
[15]
厚さ50μm以上600μm以下の透明支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を塗布して、未硬化のハードコート層を形成する工程と、
他の支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を塗布して、未硬化の光干渉層を形成する工程と、
前記未硬化のハードコート層の前記透明支持基材とは反対側の面と、前記未硬化の光干渉層の前記他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備え、
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、
90℃の温度下で30分間加熱された前記積層フィルムの、前記未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2%以下である、積層フィルムの製造方法。
【0022】
[16]
上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルムの前記透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、
前記加飾工程の後、前記積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備え、
前記加飾工程は、前記積層フィルムを、80℃以上で20分間以上、加熱する加熱工程を含む、成形体の製造方法。
【0023】
[17]
前記加飾工程の後、金型に前記光干渉層を対向させ、前記加飾層に向かって成形用樹脂を射出する射出成型工程を備える、上記[16]に記載の成形体の製造方法。
【0024】
[18]
前記金型は、前記積層フィルムに立体形状を付与し、
前記加飾工程の後、前記射出成型工程の前に、前記積層フィルムを前記立体形状に沿った形状に成形するプレフォーム工程を備える、上記[17]に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低い反射率を有するアフターキュア型の積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法におけるラミネート工程を説明する概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ディスプレイの保護フィルムとして、通常、プレキュア型と称される積層フィルムが用いられる。特許文献1に示されるように、プレキュア型の積層フィルムにおいて、各層はプレフォームの時点ですでに硬化されている。そのため、立体形状への射出成型やその前に行われるプレフォームにおいて、積層フィルムが深い立体形状の型に追従できず、積層フィルムにクラックが発生したり、白化したりすることがある。
【0028】
プレキュア型の積層フィルムを深い立体形状の型に追従させるには、積層フィルムの架橋密度を低くして、硬化された後の硬度を低下させることが考えられる。しかし、架橋密度が低いと、十分な機械的物性や耐薬品性が得られ難い。
【0029】
最終製品としての積層フィルムの架橋密度を高くしつつ、積層フィルムを深い立体形状の型に追従させるには、プレフォームの後、積層フィルムを硬化させればよい。このような積層フィルムは、アフターキュア型と呼ばれる。アフターキュア型の積層フィルムは、未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層を備える。
【0030】
アフターキュア型の積層フィルムを用いる場合、積層フィルムに加飾層を形成する際に施される加熱処理によって、未硬化のハードコート層と光干渉層との界面で混相が生じる場合がある。この界面で混相が生じると、反射率が上昇する。
【0031】
そこで、本実施形態では、加熱処理後にも低い反射率を有する積層フィルムを提案する。具体的には、90℃の温度下で30分間加熱処理された積層フィルムの、未硬化の光干渉層側から測定された、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2%以下である。そのため、本実施形態に係る積層フィルムは、低反射率を維持したまま、加飾したり、複雑な形状に成型したりすることができる。
【0032】
積層フィルムは、アフターキュア型であるとともに、160℃における延伸率が50%以上である。そのため、プレフォームや射出成型工程におけるクラックや白化の発生が抑制されて、成形品の外観が良好になる。クラックが生じ難いため、ハードコート層および光干渉層の機能は、より効果的に発揮される。加えて、積層フィルムの160℃における延伸率が50%以上であり、透明支持基材の厚さが50μm以上600μm以下であるため、複雑な形状に成形した場合にも、得られる成形体は、十分な剛性を有する。
【0033】
プレフォームの際、積層フィルムは延伸させられる。アフターキュア型の積層フィルムを用いる場合、プレフォームされる積層フィルムは未硬化状態である。言い換えれば、延伸処理は未硬化の積層フィルムに対して施され、硬化後に過度な延伸処理は行われない。よって、各層を、架橋密度が高くなるような層形成組成物により形成することができる。つまり、硬化後の各層の硬度をより高くすることができる。
【0034】
また、積層される際、ハードコート層および光干渉層は共に未硬化であるため、層間の密着性が高くなる。さらに、熱処理することにより、各層の表面の凹凸をレベリングすることができる。これにより、高い平滑性を有する積層フィルムを得ることができる。
【0035】
A.積層フィルム
本実施形態に係る積層フィルムは、透明支持基材と、透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を有する。未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含む。未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含む。
【0036】
未硬化とは、完全硬化していない状態をいう。積層フィルムに含まれるハードコート層および光干渉層は、半硬化の状態であってもよい。積層フィルムは、アフターキュア型である。
【0037】
硬化とは、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「硬化乾燥」と同義である。すなわち、硬化は、a)試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて、すり跡が付かない状態(dry hard)になることをいう。
【0038】
積算光量200mJ/cm2の活性エネルギー線を照射された積層フィルムは、完全硬化しているといえる。
【0039】
半硬化は、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「半硬化乾燥」と同義である。すなわち、半硬化は、塗った面の中央を指先でかるくこすってみて塗面にすり跡が付かない状態(dry to touch)になったときをいう。積算光量1mJ/cm2以上200mJ/cm2未満の活性エネルギー線を照射された積層フィルムは、半硬化しているといえる。
【0040】
ハードコート層および光干渉層が活性エネルギー線に暴露されていない、あるいは、1mJ/cm2未満の活性エネルギー線に暴露された状態は、未硬化であるといえる。
【0041】
(反射率)
90℃の温度下で30分間の加熱処理(以下、特定加熱処理と称する場合がある。)が施された積層フィルムの、未硬化の光干渉層側から測定した、波長380nmから780nmの間における反射率の極小値RAHは、2.0%以下である。反射率の極小値RAHがこの範囲内であるということは、未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との間の混相の発生が抑制されており、両層の間に明瞭な界面が形成されていることを示す。反射率の極小値RAHは、1.8%以下が好ましく、1.6%以下がより好ましい。本実施形態に係る積層フィルムの反射率の極小値は、90℃以上120℃以下の温度下で、30分以上90分以下の加熱処理後であっても、2.0%以下であり得る。
【0042】
本実施形態に係る積層フィルムは優れた反射防止性能を有する。これを硬化させた成形体もまた、優れた反射防止性能を有する。反射防止効果によって、外光の成形体への映り込みが低減される。成形体は、良好な表示特性および良好な視認性を有する。
【0043】
反射率の極小値RAHは、380nm以上780nm以下の波長領域において、正反射光を含むすべての反射光を測定して得られる。反射率の極小値RAHは、いわゆるSCI(Specular Component Include)方式により測定される、各波長における反射率のうち最も小さい値である。この方法は、被測定物の表面状態による影響を受け難いため、未硬化の層の反射率を測定することができる。
【0044】
積層フィルムの反射率の極小値RAHは、具体的には、以下の方法により測定できる。
透明支持基材の、未硬化のハードコート層とは反対側の面に、黒色塗料(例えば、品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製)を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布する。その後、90℃の温度下で30分間加熱処理して、評価サンプルMを作成する。
【0045】
得られた評価サンプルMの光干渉層側から、分光色彩計(例えば、日本電色工業社製のSD7000)を用いて、380nm以上780nm以下の波長領域におけるSCI方式による反射率を波長10nm毎に測定する。反射率は、評価サンプルMの任意の5点以上(好ましくは、10点)で測定される。測定点ごとに、反射率の極小値が決定される。本実施形態に係る積層フィルムの反射率の極小値RAHは、全ての測定点において、2%を超えない。
【0046】
評価サンプルMに、積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射した評価サンプルNを用いて、反射率の極小値RAHを測定してもよい。硬化の前後において、反射率はほとんど変化しないためである。
【0047】
加熱処理の前後において、反射率はあまり変化しないことが望ましい。これにより、工程の生産条件のバラつきに影響されることなく、安定した反射防止性能が得られ易い。例えば、反射率の極小値RAHと、特定加熱処理が施される前の積層フィルムの、未硬化の光干渉層側から測定された反射率の極小値RBHとは、100×|RAH-RBH|/RBH≦20(%)の関係を満たすことが好ましい。100×|RAH-RBH|/RBHは、10%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0048】
本実施形態に係る積層フィルムによれば、特定加熱処理が施されても、反射率は低く維持される。また、特定加熱処理によって、ハードコート層形成組成物および光干渉層形成組成物の硬化はほとんど進行しない。そのため、完全硬化する前に、反射率に加えて、密着性や延伸率に影響を与えることなく、積層フィルムに特定加熱処理およびその他の加熱処理を施すことができる。加熱処理により、各層の平滑性を高めることができる。よって、得られる成形体の平滑性も向上する。
【0049】
他の加熱処理の条件は、各層の組成に応じて適宜設定すればよい。他の加熱処理の温度は、90℃以上220℃以下であってよく、100℃以上220℃以下であってよく、110℃以上220℃以下であってよい。他の熱処理の時間は、10秒以上10分以下であってよい。
【0050】
プレフォーム工程において、積層フィルムは熱成形にて所望の立体形状に賦形される。他の加熱処理は、プレフォーム工程において加えられるこの熱を利用して行われてもよい。熱成形を、150℃以上190℃以下程度の条件で、10秒以上5分以下実施することで、プレフォームしながら、未硬化の各層を十分にレベリングさせることができる。
【0051】
(延伸率)
積層フィルムの160℃における延伸率E160は、50%以上である。この場合、積層フィルムは150℃以上190℃以下の成形温度において十分に延伸する。よって、積層フィルムを、クラックを生じることなく、複雑な立体形状に成形することができる。特に、プレフォーム工程において、積層フィルムの損傷が抑制され易くなる。そのため、ハードコート層および光干渉層の機能を備え、かつ、複雑な立体形状を有する成形体を得ることができる。積層フィルムは、要求される物性、形状等に応じて、例えば、プレフォームおよびインサートモールド法等により立体形状に成型される。
【0052】
ハードコート層および光干渉層の機能とは、例えば、優れたハードコート性能および反射防止性能である。ハードコート性能としては、例えば、高い硬度、耐摩耗性および耐薬品性が挙げられる。
【0053】
積層フィルムの延伸率E160は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。積層フィルムの延伸率E160は、400%未満であってよく、350%未満であってよく、300%未満であってよい。積層フィルムを硬化して得られる成形体の160℃における延伸率は、15%未満であり、5%以下であり得る。
【0054】
延伸率E160は、例えば、以下のようにして測定できる。
チャック間距離が150mmである引張り試験機、および、長さ200mm×幅10mmに切り出した評価サンプルを準備する。160℃雰囲気下、引張力5.0Kgf、引張速度300mm/分の条件にて、評価サンプルを長辺方向に10%延伸する。延伸された評価サンプルのクラックの有無を目視で確認する。
【0055】
クラックの発生が無い場合、新たなサンプルを切り出し、次は長辺方向に20%まで延伸させる。そして、同様に、クラックの有無を目視で確認する。この手順を、延伸率を10%ずつ増加させながら繰り返して、クラックが初めて確認されたときの延伸率を、積層フィルムの延伸率E160とする。
【0056】
(厚さ)
透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下である。これにより、積層フィルムを延伸させた場合にも、積層フィルムは剛性を保持できる。また、積層フィルムおよび成形体の反りが抑制され易い。さらに、透明支持基材および積層フィルムをロール状に巻き取ることが可能となるため、ロールtoロール加工を行うことができる。
【0057】
透明支持基材の厚さは、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。透明支持基材の厚さは、500μm以下が好ましく、480μm以下がより好ましく、450μm以下がさらに好ましく、400μm以下が特に好ましい。
【0058】
未硬化のハードコート層の厚さは特に限定されない。例えば、未硬化のハードコート層の厚さは、2μm以上30μm以下である。未硬化のハードコート層とは、乾燥後であって、かつ、未硬化のハードコート層である(以下、単に未硬化のハードコート層と称する。)。未硬化のハードコート層がこのような厚さを有することにより、硬化後の反りが抑制され易い。また、優れたハードコート性能を有するハードコート層が得られる。
【0059】
未硬化のハードコート層の厚さは、3μm以上がより好ましい。未硬化のハードコート層の厚さは、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0060】
未硬化の光干渉層の厚さは特に限定されない。未硬化の光干渉層の厚さは、例えば、15nm以上200nm以下である。未硬化の光干渉層の厚さは、60nm以上が好ましく、65nm以上がより好ましい。未硬化の光干渉層の厚さは、180nm以下が好ましい。未硬化の光干渉層の厚さがこの範囲であると、成形体に良好な反射防止性を付与できる。
【0061】
(硬度)
後工程における損傷が抑制され易い点で、積層フィルムの光干渉層側から測定されたナノインデンテーション法による硬度HBCは、0.1GPa以上が好ましい。硬度HBCが0.1GPa以上であると、スリット形成および裁断の際の凹みや損傷、複数の積層フィルムを積層した際に混入する異物による凹み、スキージ痕あるいは吸引痕等の不具合が抑制されて、歩留まりが向上し易くなる。
【0062】
未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との密着性が向上し易い点で、硬度HBCは0.5GPa以下が好ましい。硬度HBCが0.5GPa以下であると、未硬化のハードコート層上に未硬化の光干渉層を積層する際、両者は密着し易くなる。さらに、未硬化ハードコート層と未硬化の光干渉層とを貼り合わせにより積層する際、層間に空気が入り込むこと(エア噛み)が抑制される。硬度HBCは、具体的には、0.1GPa以上0.5GPa以下が好ましい。硬度HBCは、0.15GPa以上がより好ましい。硬度HBCは、0.4GPa以下がより好ましい。
【0063】
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルム(すなわち、硬化された積層フィルム(成形体))の光干渉層側から測定されたナノインデンテーション法による硬度HACは、0.25GPa以上が好ましい。硬度HACは0.7GPa以下が好ましい。硬度HACは、具体的には、0.25GPa以上0.7GPa以下が好ましい。特定加熱処理が施された後、硬化された積層フィルムの硬度も、上記範囲を満たす。硬度HACは、0.3GPa以上が特に好ましい。硬度HACは、0.6GPa以下であってもよい。
【0064】
成形体の硬度HACは、積層フィルムの硬度HBCよりも大きい。本実施形態において、硬度HACが0.25GPa以上0.7GPa以下である場合、硬度HBCは0.1GPa以上0.5GPa以下を満たす。
【0065】
硬度HBCおよびHACは、積層フィルムあるいは成形体の光干渉層側から、ナノインデンテーション法により測定される値に基づいて算出される。ただし、硬度HBCおよびHACは、光干渉層の表面状態および透明支持基材の硬度が影響し難い条件で測定される。すなわち、硬度HBCおよびHACは、圧子を光干渉層側からハードコート層にまで押し込んで測定される。硬度HBCおよびHACは、未硬化あるいは硬化されたハードコート層の硬度を反映しているといえる。例えば、硬度HBCおよびHACは、光干渉層の表面から1000nm内部で測定される。
【0066】
ナノインデンテーション法による硬度は、ナノインデンテーション装置を用いて、例えば、連続剛性測定法(Continuous Stiffness Measurement)により求められる。連続剛性測定法では、サンプルに、準静的な試験荷重(直流(DC)荷重)に加えて微小荷重(交流(AC)荷重)が与えられる。これにより、サンプルにかかる力が微小に振動する。その結果として発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対するスティフネスを計算する。これにより、深さに対して、硬度の連続的なプロファイルが取得できる。
【0067】
ナノインデンテーション装置としては、NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterが使用できる。連続剛性測定法には、例えば、Advanced Dynamic E and H.NMTメソッドが使用できる。荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いればよい。サンプルには、圧子により最大荷重50mNに到達するまで荷重がかけられる。圧子としては、例えばバーコビッチ(verkovich)型のダイアモンド圧子が用いられる。測定およびスティフネスの計算にあたって、測定対象物(未硬化のハードコート層および光干渉層)のポアソン比および荷重等は、適宜適切な値を設定すればよい。
【0068】
ナノインデンテーション法により硬度HBCを測定した後、光干渉層の表面に、用いた圧子の形状に一致する押し跡が残っていない場合、測定された硬度HBCは、正確ではないと判断できる。上記の事象は、未硬化のハードコート層が過度に柔らかいために生じると考えられる。つまり、測定されたこの硬度は、未硬化のハードコート層ではなく、透明支持基材の影響を強く受けている。そのため、上記の場合、硬度HBCは0.1GPa未満であるとみなしてよい。
【0069】
(耐摩耗性)
視認性の観点から、硬化された積層フィルムは、耐摩耗性に優れることが望ましい。積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムの光干渉層の表面を、4cm2あたり垂直荷重19.6Nをかけながら3,000回摩擦したとき、光干渉層に傷が視認されないことが好ましい。この場合、成形体の外観変化による視認性低下が抑制され易くなる。特定加熱処理が施された後、硬化された積層フィルムも、上記を満たす耐摩耗性を有する。
【0070】
「傷が視認されない」とは、目視によっては、傷が観察できないことを意味する。「傷」とは、例えば、表面の荒れである。目視によって傷が観察されない限り、倍率100倍の顕微鏡を用いて摩耗試験後のサンプルを観察した際、ごく僅かな傷が観察されてもよい。
【0071】
摩耗試験は、上記の条件のもと、既知の方法を用いて行われる。摩耗試験には、通常、綿布が固定された摩擦子が用いられる。この摩擦子によって、サンプルに垂直荷重(具体的には4cm2あたり19.6N)がかけられる。
【0072】
積層フィルムは、活性エネルギー線の照射の前に特定加熱処理されてもよい。積層フィルムは、特定加熱処理に加えて、あるいは、特定加熱処理に替えて、150~190℃の雰囲気下で30~60秒間、加熱処理されてもよい。これらの加熱処理により、積層フィルムの表面はレベリングにより平坦化されて、耐摩耗性はさらに向上し易くなる。
【0073】
(静摩擦係数)
耐擦傷性および耐摩耗性の観点から、硬化された積層フィルムの静摩擦係数は小さいことが望ましい。積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムの光干渉層の静摩擦係数μACは、0.3以下が好ましく、0.25以下がより好ましく、0.20以下が特に好ましい。静摩擦係数は、JIS K 7125に準じて測定される。特定加熱処理が施された後、硬化された積層フィルムの静摩擦係数も、上記範囲を満たす。
【0074】
光干渉層は、未硬化の状態で未硬化のハードコート層と積層される。さらに、積層フィルムは、未硬化の状態で種々の加工に供される。そのため、光干渉層には、反射防止性能に加えて、高い硬度を有すること、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷および外観変化が抑制されること、他の層との熱収縮性の違いによるカールが抑制されること等が求められる。特に、光干渉層には、優れた反射防止性能、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷(例えば、加飾工程における吸引跡等の凹み、スキージ痕)等が抑制されることが求められる。
【0075】
これらの要求は、未硬化の光干渉層の硬度、剛性、平滑性およびタック性等を制御することにより実現できる。未硬化の光干渉層の上記物性は、その厚みおよび光干渉層形成組成物の組成等によって調整可能である。
【0076】
ハードコート層もまた、未硬化の状態で未硬化の光干渉層と積層される。さらに、上記の通り、積層フィルムは、未硬化の状態で種々の加工に供される。そのため、未硬化のハードコート層には、光干渉層と同様に、高い硬度を有すること、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷および外観変化(例えば、プレフォーム工程における発泡、クラック)が抑制されること、他の層との熱収縮性の違いによるカールが抑制されること等が求められる。
【0077】
これらの要求は、未硬化のハードコート層の硬度、剛性、平滑性およびタック性等を制御することにより実現できる。未硬化のハードコート層の上記物性は、その厚みおよびハードコート層形成組成物の組成等によって調整可能である。
【0078】
以下、本実施形態の積層フィルムが有する透明支持基材および各層について、さらに説明する。
【0079】
[透明支持基材]
透明支持基材は、透明である限り特に限定されない。透明であるとは、具体的には、全光線透過率が80%以上であることをいう。透明支持基材の全光線透過率は、80%以上であって、90%以上が好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠する方法により測定することができる。透明支持基材としては、当分野において公知のものが、特に制限されることなく用いられる。透明支持基材は、無色であってもよく、有色であってもよい。
【0080】
透明支持基材は、用途に応じて適宜選択される。透明支持基材としては、例えば、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルフィルム;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレンフィルム;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィンフィルム;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミドフィルムが挙げられる。また、透明支持基材は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂等の樹脂を含むフィルムであってよく、これらポリマーの混合物を含むフィルムであってもよい。
【0081】
透明支持基材は、複数のフィルムの積層体であってもよい。透明支持基材は、例えば、アクリル樹脂からなるフィルムと、ポリカーボネート樹脂からなるフィルムとの積層体であってよい。
【0082】
透明支持基材は、光学的に異方性を有していてもよく、等方性を有していてもよい。光学的に異方性を有する透明支持基材の複屈折の大きさは、特に限定されない。異方性を有する透明支持基材の位相差は、波長の1/4(λ/4)であってよく、波長の1/2(λ/2)であってよい。
【0083】
[未硬化の光干渉層]
未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物(以下、組成物Rと称す場合がある。)を含む。組成物Rは、活性エネルギー線により硬化する。活性エネルギー線の積算光量を調整することにより、光干渉層の硬度および/または延伸率を制御することができる。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。組成物Rは、特に紫外線硬化型であることが好ましい。
【0084】
光干渉層は、低屈折率を有する層として機能する。硬化された光干渉層の屈折率は、例えば、1.20以上1.55以下であり、1.25以上1.50以下であってよく、1.30以上1.45以下であってよい。これにより、良好な反射防止性が発揮される。
【0085】
《光干渉層形成組成物》
光干渉層形成組成物(組成物R)は、例えば、第1の層形成成分と低屈折粒子とを含む。低屈折粒子は、低い屈折率を有する粒子であって、光干渉層の屈折率を低下させる。
【0086】
〈低屈折粒子〉
低屈折粒子としては、例えば、中空状シリカ微粒子、中空樹脂粒子が挙げられる。低屈折粒子は、光干渉層の強度を保持しつつ、その屈折率を下げることができる。低屈折粒子は、内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造体である。屈折率は、気体の占有率に反比例して低下する。そのため、低屈折粒子は、中空を有さない粒子の屈折率に比べて、低い屈折率を有する。
【0087】
低屈折粒子として、内部および/または表面の少なくとも一部に、ナノポーラス構造が形成されるようなシリカ微粒子を用いてもよい。ナノポーラス構造は、シリカ微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜の内部での分散状態に応じて、形成される。
【0088】
低屈折粒子の体積平均粒子径(1次粒子径)は、50nm以上200nm以下が好ましい。光干渉層の膜厚は、低屈折粒子の体積平均粒子径(1次粒子径)等を考慮して設計される。具体的には、光干渉層は、低屈折粒子の体積平均粒子径より厚くなるように設計される。これにより、光干渉層の表面から低屈折粒子が露出し難くなって、光干渉層表面を摩擦した際の、光干渉層からの低屈折粒子の脱落が抑制され、耐摩耗性が向上し易くなる。
【0089】
低屈折粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましい。これにより、光干渉層は、優れた反射防止性を発揮し易い。低屈折粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましく、70質量部以下が特に好ましい。
【0090】
〈第1の層形成成分〉
第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含む。第1反応性成分は、第1モノマー、第1オリゴマーおよび第1ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1モノマーおよび第1オリゴマーの重量平均分子量は、1万以下であり、9000以下であってよい。第1ポリマーの重量平均分子量は、1万超であり、2万以上であってよい。第1ポリマーの重量平均分子量は、10万以下であってよい。
【0091】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。
【0092】
未硬化のハードコート層との密着性および透明性の観点から、第1反応性成分は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アクリル(メタ)アクリレートモノマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーおよびアクリル(メタ)アクリレートポリマー等のアクリル(メタ)アクリレート化合物;ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー等のウレタン(メタ)アクリレート化合物;シリコン(メタ)アクリレートモノマー、シリコン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびシリコン(メタ)アクリレートポリマー等のシリコン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。
【0093】
第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は特に限定されない。反応性の点で、第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は、100g/eq.以上が好ましく、110g/eq.以上がより好ましく、115g/eq.以上が特に好ましい。第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は、200g/eq.以下であってよく、180g/eq.以下であってよく、160g/eq.以下であってよい。
【0094】
(メタ)アクリレート化合物の原料である(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸イソステアリル、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(PETA)、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0095】
アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、上記の(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種の重合物が挙げられる。
【0096】
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーは、例えばポリカーボネートジオールと、分子中に水酸基と不飽和二重結合基とを含有する(メタ)アクリレート化合物と、ポリイソシアネートと、を反応させることによって調製することもできる。
【0097】
ウレタン(メタ)アクリレートポリマーとしては、例えば、上記のウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーの少なくとも1種の重合物が挙げられる。
【0098】
シリコン(メタ)アクリレート化合物は、シロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物である。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、シリコン(メタ)アクリレート化合物により、未硬化の光干渉層の低表面張力化、レベリング性の向上およびタックの低減が可能となる。
【0099】
耐摩耗性や防汚性の向上、屈折率低下などの観点から、第1反応性成分(代表的には、(メタ)アクリレート化合物)は、フッ素原子を含んでいてもよい。第1の層形成成分は、1分子中に含まれる重合性官能基が2未満の非反応性成分を含んでもよい。
【0100】
混相は、主にハードコート層に含まれる分子量の小さなモノマーおよび/またはオリゴマーが熱によって拡散し、光干渉層に到達することにより起こると考えられる。そして、低屈折粒子は、このハードコート層から光干渉層へのモノマーおよび/またはオリゴマーの熱拡散を抑制し得る。一方、第1ポリマーは、ハードコート層から光干渉層へのモノマーおよび/またはオリゴマーの熱拡散を抑制する作用が小さい。
【0101】
混相抑制の観点から、第1ポリマーの含有割合を小さくするとともに、低屈折粒子の含有割合を大きくすることが望ましい。例えば、組成物Rは、低屈折粒子の含有量Xと第1ポリマーの含有量Zとが、
100×Z/(X+Z)<40(%)
の関係を満たすように、第1ポリマーを含むことが好ましい。100×Z/(X+Z)≦35(%)の関係を満たすことがより好ましく、100×Z/(X+Z)≦30(%)の関係を満たすことが特に好ましい。
【0102】
特に、第1オリゴマー、第1モノマー、第1ポリマーおよび低屈折粒子の合計に対して、低屈折粒子が30質量%以上含まれる場合(X≧30)、低屈折粒子の含有量Xと、第1オリゴマーおよび第1モノマーの合計の含有量Yと、第1ポリマーの含有量Zとは、
X+Y+Z=100、
Y≧0、
Z≧0、および、
Z≦1/2X-15
の関係を満たすことが好ましい。これにより、さらに混相が抑制され易くなる。Z≦1/2X-18の関係を満たすことがより好ましく、Z≦1/2X-20の関係を満たすことが特に好ましい。
【0103】
第1モノマーおよび/または第1オリゴマーは、低屈折粒子に比べ混相を抑制する効果がやや小さいものの、硬化された積層フィルム(成形体)の諸物性を向上させる点で、重要である。
【0104】
<無機酸化物微粒子>
組成物Rは、無機酸化物微粒子を含んでもよい。無機酸化物微粒子により、未硬化の光干渉層の体積収縮が抑制されるとともに、剛性が高まり易くなる。そのため、未硬化の光干渉層の製造工程中の外観変化が抑制され易い。さらに、硬化された光干渉層の外観変化やカールの発生も抑制される。加えて、硬化された光干渉層のタック性が低減するとともに耐摩耗性が高まり易い。
【0105】
無機酸化物微粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上が特に好ましい。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。
【0106】
組成物Rの固形分は、溶媒を除く組成物Rの全成分である。ハードコート層形成組成物の固形分も同様である。
【0107】
無機酸化物微粒子は特に限定されない。無機酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子(ただし、中空のものを除く)、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子、酸化亜鉛粒子が挙げられる。無機酸化物微粒子の表面は、不飽和二重結合を含む官能基によって修飾されていてよい。官能基としては、(メタ)アクリロイル基が望ましい。なかでも、コストおよび塗料安定性の観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子が好ましく、特に、表面が官能基により修飾されたシリカ粒子、アルミナ粒子が好ましい。無機酸化物微粒子の形態はゾルであってよい。
【0108】
無機酸化物微粒子の平均粒子径は特に限定されない。透明性および塗料安定性の観点から、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5nm以上100nm以下が好ましい。無機酸化物微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡によって得られる断面の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。他の粒状物の平均粒子径も、同様の方法により求められる。
【0109】
<光重合開始剤>
組成物Rは、光重合開始剤を含むのが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分の重合が進行し易くなる。
【0110】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤が挙げられる。
【0111】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
【0112】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0113】
チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0114】
オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0115】
なかでも、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0116】
光重合開始剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。光重合開始剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0117】
<溶媒>
組成物Rは、溶媒を含んでもよい。溶媒は特に限定されず、組成物に含まれる成分、透明支持基材の種類および塗布方法等を考慮して、適宜選択される。
【0118】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましい。
【0119】
〈その他〉
組成物Rは、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、表面改質剤、レベリング剤および光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS))が挙げられる。
【0120】
各添加剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。各添加剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0121】
[未硬化のハードコート層]
未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物(以下、組成物HCと称す場合がある。)を含む。組成物HCは、活性エネルギー線により硬化する。活性エネルギー線の積算光量を調整することにより、ハードコート層の硬度および/または延伸率を制御することができる。組成物HCは、組成物Rと同種の活性エネルギー線により硬化することが好ましい。
【0122】
《ハードコート層形成組成物》
ハードコート層形成組成物(組成物HC)は、第2の層形成成分を含む。
【0123】
〈第2の層形成成分〉
第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含む。第2反応性成分は、第2モノマーおよび第2オリゴマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、第2の層形成成分の架橋密度が高まって、硬化されたハードコート層の硬度が向上し易くなる。第2モノマーおよび第2オリゴマーの重量平均分子量は、1万以下であり、9000以下であってよい。
【0124】
第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下が好ましい。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量が、組成物HCの固形分100質量部に対して、25質量部以上であると、硬度HBCが0.5GPa以下に制御され易くなる。そのため、未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層とが密着し易くなる。さらに、未硬化ハードコート層と未硬化の光干渉層とをラミネートする際、層間に空気が入り込むこと(エア噛み)が抑制され易くなる。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、28質量部以上がより好ましく、30質量部以上が特に好ましい。
【0125】
第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量が、組成物HCの固形分100質量部に対して、65質量部以下であると、硬度HBCが0.1GPa以上に制御され易くなる。そのため、スリット形成および裁断の際の凹みや損傷、複数の積層フィルムを積層した際に混入する異物による凹み、スキージ痕あるいは吸引痕等の不具合が抑制されて、歩留まりが向上し易くなる。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、62質量部以下がより好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
【0126】
未硬化のハードコート層のタック性を抑制できる点で、第2反応性成分は、第2モノマーおよび/または第2オリゴマーとともに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含むことが好ましい。第2ポリマーの重量平均分子量は、1万超であり、2万以上であってよい。第2ポリマーの重量平均分子量は、10万以下であってよい。
【0127】
好ましい第2反応性成分としては、第1反応性成分として例示されたものと同様の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。透明支持基材および光干渉層との密着性や、透明性の観点から、第2反応性成分は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0128】
<無機酸化物微粒子>
組成物HCは、無機酸化物微粒子を含んでもよい。無機酸化物微粒子としては、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。
【0129】
<光重合開始剤>
組成物HCは、光重合開始剤を含むのが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分の重合が進行し易くなる。光重合開始剤として、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。
【0130】
なかでも、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0131】
光重合開始剤の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0132】
<溶媒>
組成物HCは、溶媒を含んでもよい。溶媒は特に限定されず、組成物に含まれる成分、透明支持基材の種類および塗布方法等を考慮して、適宜選択される。溶媒としては、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。なかでも、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましい。
【0133】
〈その他〉
組成物HCは、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。
【0134】
組成物HCと組成物Rとが有する樹脂成分は、同じであってよく、異なっていてもよい。なかでも、両者の樹脂成分は、同一あるいは同種であることが好ましい。未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との密着性が向上し、層間の剥離が生じ難くなるためである。
【0135】
[未硬化の機能層]
積層フィルムは、未硬化のハードコート層と、未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも1つの未硬化の機能層を有していてもよい。機能層により、積層フィルムの光学的機能が補強されたり、新たな光学的機能が付与されたりする。
【0136】
機能層は、上記の光干渉層とは異なる光学的特性を有する、他の光干渉層であってよい。機能層は、上記の光干渉層とは異なる特性を有する、他の2以上の光干渉層の組み合わせであってよい。
【0137】
好ましい機能層は、例えば、高屈折率を有する光干渉層および中屈折率を有する光干渉層の少なくとも一方である。高屈折率層の屈折率は、1.55超2.00以下であってよい。中屈折率層の屈折率は特に限定されず、光干渉層(低屈折率層)と高屈折率層との間であればよい。中屈折率層の屈折率は、例えば、1.55以上1.75以下であってよい。
【0138】
他の光干渉層の厚さは特に限定されない。他の光干渉層の1層当たりの厚さは、10nm以上300nm以下であってよい。光干渉層の1層当たりの厚さは、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上が特に好ましい。光干渉層の1層当たりの厚さは、200nm以下が好ましく、180nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。
【0139】
機能層を形成する機能層形成組成物は、上記の組成物HCまたは組成物Rに含まれる成分と同様のものを含み得る。他の光干渉層を形成する機能層形成組成物は、組成物Rに含まれる成分と同様のものを含み得る。他の光干渉層を形成する機能層形成組成物は、高屈折粒子を含んでいてもよい。複数の機能層に含まれる成分は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0140】
高屈折率層および中屈折率層は、活性エネルギー線硬化型以外の樹脂成分を含んでもよい。他の樹脂成分としては、例えば、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、メラミン系樹脂ウレタン系樹脂およびシリコン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリイソシアネートが挙げられる。
【0141】
[保護フィルム]
積層フィルムは、未硬化の光干渉層の、未硬化のハードコート層とは反対側の面に、保護フィルムを有していてもよい。これにより、積層フィルムをロール状に巻き取ったり、ロールから巻き出したりする際、損傷が抑制され易い。
【0142】
保護フィルムは、光干渉層および積層フィルムを保護するとともに、組成物Rをフィルム状に成形するための離型紙として機能する。保護フィルムは、塗布面に粘着層を有してもよい。
【0143】
当分野において公知である保護フィルムが、特に制限されることなく用いられる。保護フィルムは、無色であってもよく、有色であってもよい。保護フィルムは、透明であってもよい。
【0144】
保護フィルムの厚さは、特に限定されない。保護フィルムの厚さは、20μm以上100μm以下であってよい。これにより、未硬化の光干渉層の保護効果が高まり易い。保護フィルムの厚さは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、33μm以上がさらに好ましく、35μm以上が特に好ましい。保護フィルムの厚さは、85μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、65μm以下が特に好ましい。保護フィルムの厚さは、粘着層の厚さを含まない値である。
【0145】
保護フィルムは、例えば樹脂製である。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルムおよびポリプロピレンフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)および二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を含む)等のポリオレフィンフィルム、これらポリオレフィンを変性し、更なる機能を付加した変性ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリ乳酸等のポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、AS樹脂フィルムおよびABS樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムおよびポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルペンテンフィルムが挙げられる。
【0146】
樹脂フィルムには、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。樹脂フィルムの表面は、コロナ処理あるいは低温プラズマ処理が施されていてもよい。
【0147】
なかでも、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、OPPフィルムおよびCPPフィルムから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0148】
特に、厚さ30μm以上100μm以下のポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、OPPフィルムおよびCPPフィルムから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0149】
図1は、本実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。積層フィルム10は、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された未硬化のハードコート層12と、未硬化のハードコート層12上に形成された未硬化の光干渉層13と、を備える。
【0150】
B.成形体
本実施形態に係る成形体は、上記の積層フィルムが硬化されることにより得られる。成形体は、積層フィルムの完全硬化物である。成形体は、透明支持基材と、硬化されたハードコート層と、硬化された光干渉層と、を有する。成形体は、硬化されたハードコート層と硬化された光干渉層との間に、さらに、少なくとも1つの硬化された機能層を有していてもよい。成形体は、さらに、保護フィルムを有していてもよいし、有していなくてもよい。保護フィルムは、使用目的に応じて、使用される。
【0151】
成形体は、積層フィルムに、例えば積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射して、未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層を硬化させることにより得られる。
【0152】
成形体は、ディスプレイおよびその周辺に配置される各種センサーの保護材として特に好適である。ディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイが挙げられる。成形体は、特に、車載用のタッチパネルディスプレイおよびその周辺の保護材として適している。成形体は、光干渉層がハードコート層より外側になるように配置される。
【0153】
[加飾層]
成形体は、さらに加飾層を備えていてもよい。本実施形態に係る積層フィルムによれば、加飾層を形成する際に加熱処理が施される場合であっても、低い反射率を維持することができる。成形体がディスプレイの保護材である場合、加飾層は、例えば、ディスプレイを囲むベゼル部分に設けられる。
【0154】
成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、を備える。加飾層は、透明支持基材の他方の主面の一部に設けられてもよい。加飾層は、模様、文字または金属光沢等の装飾を成形体に与える層である。加飾層により、成形体の意匠性が高まる。
【0155】
加飾層としては、例えば、印刷層および蒸着層の少なくとも1つが挙げられる。印刷層および蒸着層はそれぞれ、1以上の層であり、複数の層を備えていてもよい。加飾層の厚さは特に限定されず、意匠性等に応じて、適宜設定される。
【0156】
印刷層には、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、砂目模様、幾何学模様、文字、全面ベタが描かれる。印刷層は、例えば、バインダー樹脂と着色剤とを含む着色インキにより形成される。バインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0157】
着色剤は特に限定されず、公知の顔料または染料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料またはチタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料または弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー等の有機顔料またはコバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0158】
蒸着層は、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物により形成される。
【0159】
[成形樹脂層]
成形体は、さらに成形樹脂層を備えていてもよい。成形樹脂層は、透明支持基材とともにハードコート層および光干渉層を支持する。成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された成形樹脂層と、を備える。成形樹脂層の形状は制限されない。そのため、成形体のデザインの自由度が高まる。
【0160】
成形体は、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、成形樹脂層と、を備えていてもよい。この場合、加飾層は、透明支持基材と成形樹脂層とで挟まれるように配置される。
【0161】
成形樹脂層を形成する樹脂は特に限定されない。成形樹脂層は、例えば、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、いわゆるエンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが挙げられる。
【0162】
図2は、本実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。成形体20は、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された硬化されたハードコート層22と、ハードコート層22上に形成された硬化された光干渉層23と、加飾層24と、成形樹脂層25と、を備える。加飾層24は、透明支持基材11の他方の主面の一部を覆うように配置されている。成形樹脂層25は、透明支持基材11の他方の主面全体および加飾層24の全体を覆うように配置されている。
【0163】
C.積層フィルムの製造方法
本実施形態に係る積層フィルムは、厚さ50μm以上600μm以下の透明支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を塗布して、未硬化のハードコート層を形成する工程と、他の支持基材の一方の面上に、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を塗布して、未硬化の光干渉層を形成する工程と、未硬化のハードコート層の透明支持基材とは反対側の面と、未硬化の光干渉層の他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備える方法により製造される。未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層とを、ラミネート法によって積層することにより、混相は抑制され易い。得られる積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上であり、特定加熱処理が施された後の反射率の極小値R
AHは、2%以下である。
図3は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【0164】
(1-1)未硬化のハードコート層を形成する工程(S11)
未硬化のハードコート層を形成する方法は特に限定されない。未硬化のハードコート層は、透明支持基材の一方の面上に、例えば、組成物HCを塗布することにより形成される。
【0165】
組成物HCは、当業者において通常行われる手法によって調製することができる。例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の通常用いられる混合装置を用いて、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0166】
組成物HCの塗布方法は、特に限定されず、当業者において通常行われる手法によって行われる。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、バーコート法(例えば、ワイヤーバーコート法)、ダイコート法、インクジェット法およびグラビアコート法が挙げられる。
【0167】
組成物HCの塗布量は特に限定されない。組成物HCは、例えば、乾燥後であって、未硬化のハードコート層の厚さが2μm以上30μm以下になるように、塗布される。
【0168】
塗布後、乾燥工程を行ってもよい。乾燥条件は特に限定されず、組成物HCに含まれる溶剤の少なくとも一部が除去されるように、適宜設定される。乾燥方法としては、例えば、風乾(自然乾燥)、加熱乾燥、真空乾燥が挙げられる。なかでも、加熱乾燥が好ましい。加熱によって、乾燥とともに、未硬化のハードコート層がレベリングされ得る。乾燥は、透明支持基材上に未硬化のハードコート層が形成されてから、未硬化のハードコート層がラミネート工程に供されるまでの間に行われる。例えば、未硬化のハードコート層を備える透明支持基材がラミネート加工機に搬入される前に、未硬化のハードコート層が乾燥される。
【0169】
未硬化のハードコート層が形成された後、透明支持基材は、ロール状に巻き取られてもよい。これにより、ラミネート工程まで、ロールtoロール処理が可能となる。さらに、未硬化のハードコート層の表面に保護用のフィルムを貼り合わせた後、透明支持基材を巻き取ってもよい。保護用のフィルムと未硬化のハードコート層とは、粘着層を介して貼り合わされてもよい。
【0170】
(1-2)未硬化の光干渉層を形成する工程(S12)
未硬化の光干渉層を形成する方法は特に限定されない。未硬化の光干渉層は、他の支持基材(代表的には、上記の保護フィルム)の一方の面上に、例えば、組成物Rを塗布することにより形成される。組成物Rの塗布方法は、組成物HCと同様に、当業者において通常行われる手法によって行われる。
【0171】
組成物Rの塗布量は特に限定されない。組成物Rは、例えば、乾燥後であって、未硬化の光干渉層の厚さが15nm以上200nm以下になるように、塗布される。
【0172】
塗布後、乾燥工程を行ってもよい。乾燥条件は特に限定されず、組成物Rに含まれる溶剤の少なくとも一部が除去されるように、適宜設定される。乾燥方法としては、ハードコート層の乾燥と同様の方法が挙げられる。なかでも、加熱乾燥が好ましい。加熱によって、乾燥とともに、未硬化の光干渉層がレベリングされ得る。
【0173】
乾燥は、他の支持基材上に未硬化の光干渉層が形成されてから、未硬化の光干渉層がラミネート工程に供されるまでの間に行われる。例えば、未硬化の光干渉層を備える他の支持基材がラミネート加工機に搬入される前に、未硬化の光干渉層が乾燥される。
【0174】
未硬化の光干渉層が形成された後、他の支持基材は、ロール状に巻き取られてもよい。これにより、ラミネート工程まで、ロールtoロール処理が可能となる。さらに、未硬化の光干渉層の表面に保護用のフィルムを貼り合わせた後、他の支持基材を巻き取ってもよい。保護用のフィルムと未硬化の光干渉層とは、粘着層を介して貼り合わされてもよい。
【0175】
(1-3)ラミネート工程(S13)
他の支持基材上に形成された未硬化の光干渉層と、透明支持基材上に形成された未硬化のハードコート層とが貼り合わされる。これにより、積層フィルムが得られる。両者を貼り合わせた後、他の支持基材は剥離されてもよい。
【0176】
未硬化の光干渉層が形成された他の支持基材が巻き取られている場合、未硬化のハードコート層を備える透明支持基材をラミネート機に搬入するとともに、巻き取られていた他の支持基材を、巻き出しながらラミネート機に搬入する。
【0177】
未硬化のハードコート層が形成された透明支持基材が巻き取られている場合、未硬化の光干渉層を備える他の支持基材をラミネート機に搬入するとともに、巻き取られていた透明支持基材を、巻き出しながらラミネート機に搬入する。
【0178】
貼り合わせは、圧力をかけながら行われるのが好ましい。圧力は、例えば、0.1N/cm以上50N/cm以下であればよい。圧力は、0.5N/cm以上が好ましい。圧力は、30N/cm以下が好ましい。
【0179】
貼り合わせの際の各層の温度は、特に限定されない。各層はいずれも未硬化であるため、低温で貼り合わせることができる。一方、本実施形態に係る積層フィルムは混相の発生が抑制され易いため、貼り合わせの際に各層を加温してもよい。貼り合わせの際の各層の温度は、0℃以上100℃以下であってよい。
【0180】
未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との間に、未硬化の機能層を備える積層フィルムは、例えば、以下の工程により製造される。
まず、他の未硬化の機能層を、新たな支持基材上に形成する。次いで、未硬化のハードコート層の透明支持基材とは反対側の面と、未硬化の機能層の新たな支持基材とは反対側の面とを貼り合わせる。新たな支持基材を剥離した後、露出した未硬化の機能層に、他の支持基材で支持された未硬化の光干渉層を貼り合わせる。必要に応じて、光干渉層を貼り合わせる前に、未硬化の機能層を未硬化のハードコート層、あるいはこれに積層された未硬化の機能層に貼り合わせる工程を繰り返す。
【0181】
これにより、透明支持基材と、未硬化のハードコート層と、少なくとも1つの未硬化の機能層と、光干渉層と、他の支持基材と、をこの順に含む積層フィルムが得られる。他の支持基材は、剥離されてもよく、剥離されなくてもよい。ラミネート工程の後、積層フィルムはロール状に巻き取られてもよい。この場合、他の支持基材は剥離されていないことが好ましい。
【0182】
図4は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法におけるラミネート工程を説明する概略図である。透明支持基材11の一方の面上に、未硬化のハードコート層12が形成されている。この積層体は、未硬化のハードコート層の形成工程で得られる。この積層体は、
図4の左方向から右方向に向かって、平坦な状態で搬送される。
【0183】
一方、他の支持基材14の一方の面上に、未硬化の光干渉層13が積層されている。この積層体は、未硬化の光干渉層の形成工程で得られる。この積層体は、
図4の左方向から右方向に向かって、平坦な状態で搬送される。
【0184】
これら積層体を搬送しながら、未硬化のハードコート層12の透明支持基材11とは反対側の面と、未硬化の光干渉層13の他の支持基材14とは反対側の面とを、一対のローラ30により圧力をかけながら。貼り合わせる。これにより、透明支持基材11と、未硬化のハードコート層12と、光干渉層13と、他の支持基材14と、をこの順に含む積層フィルムが得られる。
【0185】
図示例における各種寸法は、一態様に過ぎない。各層および各基材の厚みおよび大きさ、ローラの位置および大きさ等は、適宜設定すればよい。
【0186】
D.成形体の製造方法
本実施形態に係る成形体は、例えば、上記の積層フィルムの透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、加飾工程の後、積層フィルムに、積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備える方法により製造される。加飾工程は、積層フィルムを、80℃以上で20分間以上、加熱する加熱工程を含む。
【0187】
加飾工程の後、必要に応じて、射出成型工程、あるいは、プレフォーム工程および射出成型工程が行われる。プレフォーム工程では、積層フィルムが熱成形にて所望の立体形状に沿った形状に賦形される。
【0188】
プレフォーム工程が行われる場合、硬化工程は、複数回行われてもよい。例えば、プレフォーム工程の後に、積層フィルムの一部を硬化させるように活性エネルギー線を照射する、半硬化工程が行われてもよい。この場合、射出成型工程の後、積層フィルムの残部を硬化させるように活性エネルギー線を照射する、本硬化工程が行われる。
【0189】
すなわち、成形体は、例えば、加飾工程(S21)、プレフォーム工程(S22)、硬化工程(S23)および射出成型工程(S24)をこの順で備える方法により製造される。
図5は、本実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0190】
成形体は、また、例えば、加飾工程(S21)、プレフォーム工程(S22)、半硬化工程(S23-1)、射出成型工程(S24)および本硬化工程(S23-2)をこの順で備える方法により製造される。
図6は、本実施形態に係る他の成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0191】
積層フィルムがロール状に巻き取られている場合、加飾工程の前に、積層フィルムをロールから巻き出して、スリットを形成したり、所望の形状および大きさに裁断したりする工程を行ってもよい。
以下、各工程について説明する。
【0192】
(2-1)加飾工程(S21)
積層フィルムの透明支持基材の他方の主面に、加飾層(代表的には、印刷層および蒸着層)を形成する。
【0193】
印刷層の形成方法は特に限定されない。印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコート法およびスプレーコート法が挙げられる。蒸着層の形成方法も特に限定されない。蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法および鍍金法が挙げられる。
【0194】
加飾工程は、積層フィルムを、80℃以上で20分間以上、加熱する加熱工程を含む。加熱工程は、例えば、加飾層の乾燥のために行われる。本実施形態では、このような加熱工程を経る場合であっても、得られる成形体は低い反射率を有する。
【0195】
加飾工程は、例えば色を変えながら複数回行われてもよい。加飾工程では、80℃を超える温度で5分間以内の加熱、あるいは80℃未満で20分間以上の加熱がさらに行われてもよい。このような加熱は、混相の発生に大きくは関与しない。
【0196】
(2-2)プレフォーム工程(S22)
積層フィルムを、所望の立体形状に沿った形状にプレフォームする。積層フィルムを、予め立体形状に近い形状に賦形することにより、射出成型(代表的には、インサートモールドラミネーション(IML)成型)が可能となる。IML成型では、積層フィルムが金型に挿入され、積層フィルムに向かって成形用樹脂が射出される。プレフォーム工程の後、積層フィルムの不要な部分を除去するトリミング工程を行ってもよい。
【0197】
プレフォームの方法は特に限定されない。プレフォームは、例えば、真空成型法、圧空成型法、真空圧空成型法により実行される。プレフォームでは、金型と積層フィルムとが同じ処理室に設置される。積層フィルムは、透明支持基材が金型に対向するように設置される。積層フィルムを加熱して、処理室を真空状態および/または加圧状態にする。これにより、積層フィルムは金型に沿って変形する。次いで、積層フィルムを冷却して、金型から取り外す。プレフォームの際、積層フィルムを、90℃以上190℃以下で、20秒以上5分以内で、加熱してもよい。
【0198】
(2-3)半硬化工程(S23-1)
積層フィルムの一部が硬化するように、活性エネルギー線を照射する。これにより、半硬化状態の積層フィルムが得られる。半硬化工程により、射出成型工程における積層フィルムの金型への貼り付きが抑制されるとともに、積層フィルムが、射出成型工程に必要な延伸率に調整されて、射出成型工程におけるクラックの発生を抑制することができる。活性エネルギー線の積算光量は、例えば、1mJ/cm2以上200mJ/cm2未満である。半硬化工程の後、積層フィルムの不要な部分を除去するトリミング工程を行ってもよい。
【0199】
活性エネルギー線の種類は特に限定されない。活性エネルギー線は、層形成組成物に含まれる樹脂成分の種類に応じて適宜選択される。活性エネルギー線は特に限定されず、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線であってよい。なかでも、380nm以下の波長を有する紫外線が好ましい。紫外線は、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯を用いて照射される。
【0200】
(2-4)射出成型工程(S24)
射出成型では、例えば、金型に光干渉層を対向させるとともに、透明支持基材に向かって成形用樹脂が射出される。これにより、積層フィルムが金型の形状に賦形されるとともに、透明支持基材の他方の主面に成形樹脂層が形成される。
【0201】
(2-5)硬化工程(S23)、本硬化工程(S23-2)
積層フィルムに活性エネルギー線を照射して、積層フィルムを完全硬化させる。これにより、成形体が得られる。本硬化工程における活性エネルギー線の積算光量は、200mJ/cm2以上である。活性エネルギー線の積算光量は、5000mJ/cm2以下であってよく、3000mJ/cm2以下であってよい。活性エネルギー線は、半硬化工程と同種であってよく、異なっていてもよい。
【0202】
以上、上記態様は一例であり、所望により公知の処理、加工工程等を導入してもよい。
【実施例0203】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0204】
実施例および比較例において使用された各成分は、以下のとおりである。
(第1、第2ポリマー)
アクリルポリマーA:Mw70,000
アクリルポリマーB:Mw20,000
アクリルポリマーC:Mw100,000
【0205】
アクリルポリマーA、B、Cは、以下のようにして調製した。
[アクリルポリマーAの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30.0部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.5部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40.0部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン25.0部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59.0部を添加して、前駆体A1を得た。
【0206】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体A1を226.5部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3.0部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、上記反応溶液にハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3.0部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工製)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2.0部とトルエン10.0部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量70,000のアクリルポリマーAを得た。
【0207】
酸価の測定は、JIS K5601-2-1に準じて、上記反応溶液を0.1Nの水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定して、下式 酸価={(KOH溶液の滴下量[ml])×(KOH溶液のモル濃度[mol/L]}/(固形分の質量[g])に従って算出した。以下、同じである。
【0208】
[アクリルポリマーBの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30.0部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.0部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40.0部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン25.0部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59.0部を添加して、前駆体B1を得た。
【0209】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体B1を306.5部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3.0部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、上記反応溶液にハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3.0部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工製)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2.0部とトルエン10.0部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量20,000のアクリルポリマーBを得た。
【0210】
[アクリルポリマーCの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30.0部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.8部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40.0部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン25.0部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエンを59.0部添加して、前駆体C1を得た。
【0211】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体C1を295.8部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3.0部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3.0部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工製)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2.0部とトルエン10.0部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量100,000のアクリルポリマーCを得た。
【0212】
(第1、第2オリゴマー(多官能ウレタンアクリレートオリゴマー))
KRM-8452:ダイセル オルネクス社製、Mw3,884、アクリル当量120g/eq
CN-9893:アルケマ社製
H-7M40:根上工業社製、Mw10,000~15,000、
UN-904M:根上工業社製、Mw4,900
【0213】
(多官能アクリレートオリゴマー)
アロニックスM-315:東亞合成社製、Mw450、アクリル当量150g/eq
【0214】
(第1、第2モノマー(多官能アクリレートモノマー))
アロニックスM-402:東亜合成社製、DPHA
アロニックスM-305:東亜合成社製、PETA
【0215】
(低屈折粒子)
スルーリア4320:日揮触媒社製、中空状シリカ微粒子、体積平均粒子径55nm
スルーリア5320:日揮触媒社製、中空状シリカ微粒子、体積平均粒子径75nm
【0216】
(無機酸化物微粒子)
OSCAL 1842:日揮触媒化成工業社製、反応性シリカオルガノゾル、粒子径10nm
【0217】
(高屈折粒子)
NANON5 ZR-010:ソーラー社製、酸化ジルコニウム、体積平均粒子径20nm
【0218】
(表面調整剤)
オプツール:DAC-HP、ダイキン工業社製
(表面改質剤)
メガファックRS-57:DIC社製
【0219】
(光重合開始剤)
Omnirad 127:IGM RESINS社製、α-ヒドロキシアセトフェノン
Omnirad 184:IGM RESINS社製、α-ヒドロキシアルキルフェノン
【0220】
(透明支持基材)
TB1-TB5:品名AW-10U、ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー社製、PMMAおよびPCからなる2層(PMMA/PC)フィルム、厚さ300μm(TB1)、200μm(TB2)、500μm(TB3)、30μm(TB4)、100μm(TB5)
【0221】
(保護フィルム)
トレファン#40-2500、東レ社製、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、厚さ40μm
【0222】
[組成物LR1の調製]
アクリルポリマーB(第1ポリマー)3.1部、アロニックスM-402(第1モノマー)27.7部、オプツール DAC-HP(表面調整剤)11.6部、メガファックRS-57(表面改質剤)8.0部、および、Omnirad127(光重合開始剤)3.5部を混合した。さらに、スルーリア4320(低屈折粒子)46.1部を配合した。この混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルにより希釈して、固形分濃度3%の乳白色の組成物LR1を調整した。組成物LR1により形成される層の屈折率は、1.20以上1.55以下であった。
【0223】
[組成物LR2-LR15の調製]
表1Aに示す配合にしたこと以外は、組成物LR1と同様にして、固形分濃度3%の、乳白色の組成物LR2-LR11、LR13-LR15および透明な組成物LR12を調整した。組成物LR2からLR15により形成される層の屈折率は、いずれも1.20以上1.55以下であった。
【0224】
[機能層形成組成物HR1の調整]
表1Bに示す配合にしたこと以外は、組成物LR1と同様にして、固形分濃度3%の乳白色の機能層形成組成物HR1を調整した。組成物HR1により形成される層の屈折率は、1.55超2.00以下であった。
【0225】
[組成物HC1の調製]
アクリルポリマーA(第2ポリマー)32.0質量部、KRM-8452(第2オリゴマー、多官能ウレタンアクリレートオリゴマー)36.3質量部、アロニックスM-402(第2モノマー)21.3部、OSCAL 1842(無機酸化物微粒子)4.1質量部、および、Omnirad184(光重合開始)6.3質量部を混合した。この混合物をメチルイソブチルケトンにより希釈して、固形分濃度35%の透明な組成物HC1を調整した。
【0226】
[組成物HC2-HC5の調製]
表1Cに示す配合にしたこと以外は、組成物HC1と同様にして、固形分濃度35%の透明な組成物HC2-HC5を調整した。
【0227】
[実施例1]
(1)積層フィルムの製造
(1-1)未硬化の光干渉層の形成
OPPフィルム(保護フィルム)に、組成物LR1を、グラビアコーターにより、乾燥後の厚さが120nmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させて、未硬化の光干渉層を形成した。未硬化の光干渉層が形成された保護フィルムを、ロール状に巻き取った。
以下、組成物LR1-LR15により形成された光干渉層を「LR層」と表記する場合がある。
【0228】
(1-2)未硬化のハードコート層の形成
透明支持基材TB1のPMMAの面に、グラビアコーターにより、組成物HC1を乾燥後の厚さが12μmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させて、未硬化のハードコート層を形成した。
以下、組成物HC1-HC5により形成されたハードコート層を「HC層」と表記する場合がある。
【0229】
(1-3)未硬化のHC層とLR層との積層
ロール状に巻き取られた保護フィルムを巻き出しながら、透明支持基材TB1で支持された未硬化のHC層表面と、保護フィルムで支持された未硬化のLR層表面とを貼り合わせた。これにより、透明支持基材と、未硬化のHC層と、未硬化のLR層と、保護フィルムと、をこの順で有する積層フィルムを製造した。最後に、保護フィルムが内側になるように、積層フィルムをロール状に巻き取った。
【0230】
(2)成形体の製造
(2-1)加飾層の形成
まず、積層フィルムをロールから巻き出して、所望の形状および大きさに裁断した。裁断された積層フィルムの透明支持基材の、未硬化のHC層とは反対側の面に、スクリーン印刷により加飾(印刷)層を形成し、乾燥温度80℃で10分間乾燥させた。この加飾工程を5回繰り返し、その後、90℃で1時間乾燥させた。印刷層の形成には、黒色塗料(RIMインキ 極黒、十条ケミカル社製)を用いた。
【0231】
(2-2)保護フィルムの剥離
次いで、保護フィルムを未硬化のLR層から5.0mm/秒の速度で剥離した。
【0232】
(2-3)プレフォーム
印刷層を備える積層フィルムを190℃で30秒間加熱し、最大深さが6mmの立体形状の型を用いて、真空圧空成型法によりプレフォームを実施した。
【0233】
(2-4)硬化
プレフォームされた積層フィルムに、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射した。続いて、トリミングを実施した。
【0234】
(2-5)射出成型
最後に、射出成型を行って、透明支持基材の印刷層側に成形樹脂層(ポリカーボネート)を備える成形体を得た。なお、実施例において、特に言及のない限り、活性エネルギー線として、紫外線を使用している。
【0235】
[評価]
積層フィルムおよび成形体に対して、以下の評価を行った。結果を表2Aに示す。
【0236】
(a)厚さ
積層フィルムから、10mm×10mmの評価サンプルを切り出した。評価サンプルの断面を、ミクロト-ム(LEICA RM2265)にて析出させた。析出させた断面を、レーザー顕微鏡(VK8700、KEYENCE社製)または透過型電子顕微鏡(JEM2100、日本電子社製)にて観察し、HC層およびLR層の各10点の厚みを測定した。その平均値をそれぞれ、HC層およびLR層の厚さとした。
【0237】
(b)反射率
積層フィルムの透明支持基材における、未硬化のHC層とは反対側の面に対し、黒色塗料(品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製)を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布した。次いで、黒色塗料を塗布した積層フィルムを、室温環境下で5時間放置し、乾燥を行うことにより、未硬化の評価サンプルを作製した。
【0238】
評価サンプルの光干渉層側から、任意の10点において、SCI方式による反射率を測定した。測定には、日本電色工業社製のSD7000を用いた。測定は、380nm以上780nm以下の波長領域内で、波長10nm毎に行った。測定点ごとに反射率の極小値を決定し、10点の極小値のうち、最大となる値を反射率の極小値RBHとした。
【0239】
評価サンプルに特定加熱処理を施し、上記と同様にして、反射率の極小値RAHを求めた。
【0240】
(c)延伸率
積層フィルムから長さ200mm×幅10mmの試験片を切り出した。この試験片を、チャック間距離が150mmである引張り試験機にセットして、160℃雰囲気下、引張力5.0Kgf、引張速度300mm/分の条件にて、評価サンプルを長辺方向に10%延伸した。延伸後の評価サンプルのクラックの有無を、目視で確認した。
【0241】
クラックの発生が無ければ、新たな評価サンプルを切り出し、次は長辺方向に20%延伸させた。そして、同様にして、クラックの有無を目視で確認した。延伸率を10%ずつ大きくしながらこの手順を繰り返した。クラックが初めて確認されたときの延伸率を、積層フィルムの延伸率とした。同じ積層フィルムから切り出した評価サンプルに対して上記の評価を3回行い、各回で得られた延伸率の平均値を、積層フィルムの延伸率E160とした。
【0242】
(d)塗膜硬度
積層フィルムの未硬化のLR層側と、成形体のLR層側とから、それぞれ硬度HBCおよび硬度HACを測定した。
硬度は、NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterを用いて、連続剛性測定法(使用メソッド:Advanced Dynamic E and H.NMT)により測定した。
【0243】
具体的には、評価サンプルの表面に、準静的な試験荷重に微小なAC荷重を重畳して与えた。荷重は、最大荷重50mNに到達するまで与えた。圧子として、バーコビッチ型のダイアモンド圧子(先端曲率半径20nm)を使用した。発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対する連続的なスティフネスを計算して、深さに対する硬度のプロファイルを取得した。このプロファイルの深さ1000nmにおける硬度を算出した。
【0244】
荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いた。スティフネスの計算にあたって、コーティング層のポアソン比を0.35とした。荷重は、ひずみ速度(∂P/∂t)/Pが0.2となるように制御した。
【0245】
(e)外光の映り込み
成形体の光干渉層側の表面に蛍光灯の光を反射させ、外光の映り込みを、目視により評価した。
評価基準は以下のとおりである。
良:外光の映り込みがほとんど感じられない
可:外光の映り込みが僅かに感じられる
不良:外光の映り込みがはっきりと感じられる
【0246】
(f)立体形状への追従性
最大深さが3mmおよび6mmの2種類の型を用いて、積層フィルムにそれぞれプレフォームを行い、立体形状への追従性を評価した。
評価基準は以下のとおりである。
良:深い立体形状に成形してもクラックや白化が視認されない
可:深い立体形状に成形した場合はクラックや白化が視認されるが、
浅い立体形状に成形した場合はクラックや白化が視認されない
不良:浅い立体形状に成形した場合でもクラックや白化が視認される
【0247】
(g)プレフォーム後のハンドリング性
プレフォームした積層フィルムに積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射して評価サンプルとした。評価サンプルを射出成型の金型にセットする際のハンドリング性を評価した。
評価基準は以下のとおりである。
良:評価サンプルにコシがあり、射出成型の金型に容易に設置できる
可:評価サンプルのコシが弱く、取り扱いに若干の難があるが、金型に設置できる
不良:評価サンプルのコシが弱く、金型に設置できない
【0248】
(h)成形体の反り
積層フィルムから、200mm×200mmの評価サンプルを切り出し、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射した。次いで、評価サンプルを水平面に載置して、その四隅の水平面からの浮き上がり量(反り量)を定規を用いて計測し、平均化した。
評価基準は以下のとおりである。
最良:反り量の平均が10mm以下
良:反り量の平均が10以上15mm未満
可:反り量の平均が15mm以上20mm未満
不良:反り量の平均が20mm以上
【0249】
(i)加飾工程後の外観
保護フィルムの剥離(2-2)後、プレフォーム(2-3)前の積層フィルムを評価サンプルとした。評価サンプルの加飾工程に起因するスキージ痕および吸引痕の有無を、目視により確認した。
評価基準は、以下のとおりである。
最良:スキージ痕および吸引痕無し
良:スキージ痕および吸引痕が僅かにあるが、90℃以上に加熱することでレベリングし、消失する
可:スキージ痕および吸引痕が僅かにあるが、150℃以上に加熱することでレベリングし、消失する
不良:スキージ痕および吸引痕有り
【0250】
(j)未硬化のHC層とLR層との貼り合わせ性
(1-1)で作成された保護フィルムと未硬化の光干渉層との積層体と、(1-2)で作成された透明支持基材と未硬化のハードコート層との積層体とを、各層が対向するようにハンドローラーで押し付けながら貼り合わせて、貼り付きの程度を評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
良:積層体同士が貼り付いている
可:積層体同士が貼り付いているが、密着が弱い
【0251】
(k)鉛筆硬度
成形体のLR層の鉛筆硬度を評価した。
測定は、JIS K5600-5-4(1999)、ひっかき硬度(鉛筆法)に従って行った。
【0252】
(l)耐摩耗性
成形体のLR層の表面を、積層フィルム表面4cm2あたり垂直荷重19.6Nをかけながら、綿布を固定した摩擦子により3,000回摩擦した。成形体のLR層の表面を目視により観察した。評価基準は次のとおりである。
最良:3,000回の摩擦後にも傷は視認されなかった
良:1,000回の摩擦後に傷は視認されなかったが、3,000回の摩擦後に傷が視認された
可:1,000回の摩擦後、5本以下の傷が視認された
不良:1,000回の摩擦後、傷が多数視認された
【0253】
(m)耐薬品性
成形体から、10cm×10cmの評価サンプルを切り出した。評価サンプルのLR層の一面全体に、ニュートロジーナ サンスクリーンSPF45(ジョンソン&ジョンソン社製)2gを、指で均一になるように塗布した。次いで、80℃×4時間加温した。その後、室温まで冷却し、水洗いを行って、LR層の外観を目視で評価した。
評価基準は以下のとおりである。
最良:外観異常無し
良:塗布した痕が確認できるがリフティングは確認されない
不良:リフティングが発生している
【0254】
[実施例2-10、12-22、比較例3-10]
実施例1と同様にして、表1Aおよび表1Cに示す配合で調製された組成物を用いて、表2Aから表2Cに示す構成を有する積層フィルムおよび成形体を作成した。得られた積層フィルムおよび成形体を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2Aから表2Cに示す。
【0255】
[実施例11]
実施例1の(1-1)および(1-2)と同様にして、未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層をそれぞれ形成した。
別途、未硬化の光干渉層の形成工程(1-1)と同様にして、表1Bに示された組成を有する未硬化の機能層(HR層)が形成された保護フィルムを得た。未硬化のHR層が形成された保護フィルムを、ロール状に巻き取った。この保護フィルムを巻き出しながら、保護フィルムで支持された未硬化のHR層表面と、透明支持基材で支持された未硬化のHC層表面とを貼り合わせた。
【0256】
次いで、保護フィルムを剥離して、未硬化のHR層を露出させた。このHR層に、(1-1)で作成された未硬化のLR層を巻き出しながら貼り合わせた。これにより、未硬化のHC層、HR層およびLR層をこの順で備える積層フィルムおよび成形体を作成した。得られた積層フィルムおよび成形体を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2Aおよび表2Bに示す。
【0257】
[比較例1]
組成物HC4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、未硬化のHC層を透明支持基材TB1上に形成した。次いで、HC層に積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射し、HC層を硬化させた。
硬化されたHC層に組成物LR11を塗布した。続いて、組成物LR11を乾燥させて、乾燥厚さ120nmのLR層を形成した。最後に、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射して、プレキュア型の積層フィルムを得た。この積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして成形体を作成し、評価した。結果を表2Cに示す。
【0258】
[比較例2]
組成物LR11に替えて組成物LR1を用いたこと、および、組成物HC4に替えて組成物HC5を用いたこと以外は比較例1と同様にして、プレキュア型の積層フィルムを得た。この積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして成形体を作成し、評価した。結果を表2Cに示す。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
表2Aおよび2Bからわかるように、本実施形態に係る積層フィルムは、加熱処理された後であっても、低い反射率を有する。また、積層フィルムが高い延伸率(50%以上、具体的には70%以上)を有するにもかかわらず、これから得られる成形体は、優れたハードコート性能(例えば、高い硬度、耐摩耗性、耐薬品性等)および優れた反射防止性を有する。さらに、本実施形態に係る積層フィルムは、プレフォーム工程において、深い立体形状の型への追従性に優れていた。
【0266】
比較例1および2の積層フィルムはプレキュア型である。比較例1において、各層は、硬化後に一定程度の立体成形が可能となるような組成物で構成されている。よって、硬化後の組成物の架橋密度は低く、耐摩耗性および耐薬品性に劣っている。一方、比較例2において、各層は、硬化後の組成物の架橋密度が高く、耐摩耗性および耐薬品性に優れたものとなるような組成物で構成されている。そのため、比較例2の積層フィルムは硬化後の立体成形性に乏しく、プレフォーム工程において、浅い立体形状の型にも追従することができなかった。
【0267】
比較例3の積層フィルムは、光干渉層がないため反射率の極小値が2%を超えている。比較例4、5、8、9の積層フィルムは、特定加熱処理の前後において、反射率の極小値が2%を超えている。さらに、比較例6および7では、特定加熱処理によって、反射率が増大している。特に比較例6の積層フィルムの反射率の極小値は、特定加熱処理の前では小さいものの、特定加熱処理の後では2%を大きく超えている。比較例10では、透明支持基材の厚みが薄すぎるため基材の剛性が弱く、成形体を得ることができなかった。
本発明によれば、複雑な立体形状に成形できる積層フィルムを提供することができる。そのため、この積層フィルムは、特にディスプレイの保護材を製造するために好ましく用いられる。