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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089605
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】巡回自律走行ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220609BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202129
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 克紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和宏
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA02
5H301BB01
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301EE08
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
(57)【要約】
【課題】高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能な巡回自律走行ロボットを提供する。
【解決手段】機台20に搭載された走行モータと、機台20に搭載され、ケージ110内の鶏120を撮像するためのカメラ40~43と、機台20に搭載され、ケージ110の前においてケージ110に沿って直線的に延びる給餌用レール130までの距離を計測するためのLiDARセンサ50と、機台20に搭載され、LiDARセンサ50の計測結果に基づいて走行モータを制御して給餌用レール130までの距離Lが一定となるように走行させる走行制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に延びる収容部の前の走行路を走行可能な巡回自律走行ロボットであって、
機台に搭載された走行用アクチュエータと、
前記機台に搭載され、前記収容部内の動植物を撮像するためのカメラと、
前記機台に搭載され、前記収容部の前において前記収容部に沿って直線的に延びる棒状部材までの距離を計測するためのセンサと、
前記機台に搭載され、前記センサの計測結果に基づいて前記走行用アクチュエータを制御して前記棒状部材までの距離が一定となるように走行させる走行制御部と、
を備える
ことを特徴とする巡回自律走行ロボット。
【請求項2】
前記動植物は、鶏であり、
前記収容部は、ケージである
ことを特徴とする請求項1に記載の巡回自律走行ロボット。
【請求項3】
前記棒状部材は、給餌用レールである
ことを特徴とする請求項2に記載の巡回自律走行ロボット。
【請求項4】
前記センサは、LiDARセンサである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の巡回自律走行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巡回自律走行ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用の建物等における建物内での作業として、巡回して収容部内の動植物の状態を監視する作業がある。人による定期的な巡回により作業を実施すると、広い建物においては過酷な作業となっている。この作業の省人化・省力化に向け、自走式ロボットを導入することが考えられている。一般的なロボットの走行方式は、磁気テープ誘導型であり、巡回路に磁気テープを貼り付け、磁気センサによりルートを検知するものである。また、ロボットに撮影用のカメラを搭載して磁気テープにより構成されたガイドラインに沿って走行するロボットも知られている(例えば、特許文献1)。また、走行させる路面が凹凸を含む場合において改良もなされている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5412890号公報
【特許文献2】特許第4543435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮影した画像の精細さを落とさないようにすべく、ピントがずれないようにカメラと対象物との距離をできる限り一定に保ちつつ走行させる必要がある。巡回ロボットを磁気テープ誘導型によって高精度に走行させるためには、走行させる路面へ磁気テープを貼り付けるための高度な施工技術が必要であるが、施工状況によって施工精度のばらつきが生じる虞がある。また、路面への磁気テープの設置は、イニシャル、ランニングコストが高く、また施工の手間がかかる。さらに、施工後において、磁気テープが貼られた路面において経年劣化により磁気テープが剥がれる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための巡回自律走行ロボットは、直線的に延びる収容部の前の走行路を走行可能な巡回自律走行ロボットであって、機台に搭載された走行用アクチュエータと、前記機台に搭載され、前記収容部内の動植物を撮像するためのカメラと、前記機台に搭載され、前記収容部の前において前記収容部に沿って直線的に延びる棒状部材までの距離を計測するためのセンサと、前記機台に搭載され、前記センサの計測結果に基づいて前記走行用アクチュエータを制御して前記棒状部材までの距離が一定となるように走行させる走行制御部と、を備えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、走行制御部において、センサの計測結果に基づいて走行用アクチュエータを制御することによって、棒状部材までの距離が一定となるように走行される。その結果、高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。
【0007】
巡回自律走行ロボットにおいて、前記動植物は、鶏であり、前記収容部は、ケージであるとよい。
巡回自律走行ロボットにおいて、前記棒状部材は、給餌用レールであるとよい。
【0008】
巡回自律走行ロボットにおいて、前記センサは、LiDARセンサであるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能な巡回自律走行ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における鶏舎巡回自律走行ロボットが走行する鶏舎の平面図。
図2】鶏舎巡回自律走行ロボットが走行する鶏舎の一部平面図。
図3】鶏舎巡回自律走行ロボットが走行する鶏舎の一部平面図。
図4】鶏舎巡回自律走行ロボットが走行する鶏舎の一部正面図。
図5】鶏舎巡回自律走行ロボットが走行する鶏舎の一部側面図。
図6】鶏舎巡回自律走行ロボットの概略構成図。
図7】鶏舎巡回自律走行ロボットの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を鶏舎巡回自律走行ロボットに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。なお、図1図2図3図4図5において、水平面を、直交するX軸とY軸で規定するとともに、上下をZ軸で規定している。
【0012】
図1に示すように、鶏舎巡回自律走行ロボット10は、採卵養鶏場における鶏舎100内において、Y方向に直線的に延びるケージ110の前の走行路を走行可能である。鶏舎100には、Y方向に直線的に延びるケージがX方向において複数列にわたって並べられている。図1において、Y方向に延びる左から1列目のケージ列とY方向に延びる左から2列目のケージ列とが背中合わせの状態でX方向において接近して配置されている。Y方向に延びる左から2列目のケージ列とY方向に延びる左から3列目のケージ列とはX方向において離間して配置されている。Y方向に延びる左から3列目のケージ列とY方向に延びる左から4列目のケージ列とが背中合わせの状態でX方向において接近して配置されている。
【0013】
鶏舎巡回自律走行ロボット10は、図1において、スタート位置から、ゴール位置まで走行する。詳しくは、スタート位置から、鶏舎巡回自律走行ロボット10は、Y方向に延びる左から1列目のケージ列の前を当該1列目のケージ列に沿って走行し、その後、図2に示すように、Uターンして、図1に示すように、Y方向に延びる左から2列目のケージ列の前を当該2列目のケージ列に沿って走行する。さらに、鶏舎巡回自律走行ロボット10は、Uターンして、Y方向に延びる左から3列目のケージ列の前を当該3列目のケージ列に沿って走行する。さらには、鶏舎巡回自律走行ロボット10は、Uターンして、Y方向に延びる左から4列目のケージ列の前を当該4列目のケージ列に沿って走行し、その後、ゴール位置に走行する。
【0014】
鶏舎巡回自律走行ロボット10によるスタート位置からゴール位置までの鶏舎100の巡回は、所定の時間間隔で行われる。
Y方向に延びる各ケージ列においては、複数に仕切られており、仕切られたケージ毎に鶏が複数羽入っている。図1においてケージ番号1,2,3,・・・で示すように、仕切られたケージ毎に識別用の番号が付与されている。
【0015】
鶏舎巡回自律走行ロボット10は、鶏舎100を巡回して採卵養鶏場の死亡鶏を検知するために用いられる。
図4図5に示すように、Y方向に延びる各ケージ列においては、ケージ110が4段にわたり上下に(Z方向に)配置されている。なお、上下方向に重ねるケージの段数は問わない。4段は一例である。
【0016】
各段のケージ110には、給餌用レール(給餌用樋)130~133がケージ110の前においてケージ110に沿ってY方向に直線的に延びている。即ち、4段のケージ110の内の最も下の段のケージ110には給餌用レール130が、下から2段目のケージ110には給餌用レール131が、下から3段目のケージ110には給餌用レール132が、最も上の段のケージ110には給餌用レール133が設けられている。給餌用レール130~133は、餌が撒かれる金属製のレール(樋)であり、ほぼ同じ高さでY方向に延在している。
【0017】
図3図4図5図6に示すように、鶏舎巡回自律走行ロボット10における機台20の左側に、複数の履板を接続して帯状に繋いだ履帯21が設けられているとともに、機台20の右側に、複数の履板を接続して帯状に繋いだ履帯22が設けられている。詳しくは、機台20の左側及び右側には、それぞれ、駆動輪23、接地輪24が配置されており、これら車輪に無端状の履帯21,22が掛け渡されている。そして、駆動輪23で履帯21,22を動かすことによってロボットの走行が可能となる。このとき、左右の駆動輪23の回転速度の差、即ち、履帯21,22の移動速度の差により操舵が行われる。
【0018】
図3図4図5図6図7に示すように、鶏舎巡回自律走行ロボット10は、左側走行モータ30(図7参照)と、右側走行モータ31(図7参照)と、カメラ40~43と、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサ50と、コントローラ60(図7参照)と、を備える。コントローラ60は、機台20に搭載されている。
【0019】
図7に示すように、コントローラ60は、走行制御部61と、撮影制御部62と、記録媒体63を有する。走行モータ30,31は、機台20に搭載されている。コントローラ60はパーソナルコンピュータ(PC)により構成されている。コントローラ(PC)60には自律走行ソフトが組み込まれている。自律走行ソフトにより、走行速度や操舵角を調整してロボットを自律走行させることができる。
【0020】
走行制御部61には左側走行モータ30が接続されている。左側走行モータ30の駆動により左側の駆動輪を回転させることができる。走行制御部61には右側走行モータ31が接続されている。右側走行モータ31の駆動により右側の駆動輪を回転させることができる。
【0021】
走行制御部61には左側回転センサ32が接続されている。左側回転センサ32により左側走行モータ30の回転数が検出される。走行制御部61には右側回転センサ33が接続されている。右側回転センサ33により右側走行モータ31の回転数が検出される。
【0022】
走行制御部61は、左側走行モータ30を介して左側の駆動輪を回転させるとともに右側走行モータ31を介して右側の駆動輪を回転させることによりロボットを所望の速度及び所望の操舵角で走行させることができる。この走行制御時において走行制御部61は、左側回転センサ32及び右側回転センサ33からのモータ回転数検出信号をフィードバックして走行制御を実行する。
【0023】
図3図4図5に示すように、カメラ40~43は、機台20に搭載されている。カメラ40~43は、ケージ110内の鶏120を撮像するためのものである。詳しくは、機台20にはカメラ設置台44が立設されている。カメラ設置台44において、一番下にカメラ40が設置され、その上にカメラ41が設置され、その上にカメラ42が設置され、その上にカメラ43が設置されている。
【0024】
図5に示すように、カメラ40は、4段のケージ110の内の最も下のケージ110における立った状態の鶏120の脚部を撮影できるようにセットされている。カメラ41は、4段のケージ110の内の下から2段目のケージ110における立った状態の鶏120の脚部を撮影できるようにセットされている。カメラ42は、4段のケージ110の内の下から3段目のケージ110における立った状態の鶏120の脚部を撮影できるようにセットされている。カメラ43は、4段のケージ110の内の最上段のケージ110における立った状態の鶏120の脚部を撮影できるようにセットされている。
【0025】
コントローラ60には、カメラ40~43に対応する照明45~48が接続されている。カメラ40~43により撮影する際には照明45~48(図4参照)が点灯される。即ち、カメラ40により撮影する際には照明45が点灯され、カメラ41により撮影する際には照明46が点灯され、カメラ42により撮影する際には照明47が点灯され、カメラ43により撮影する際には照明48が点灯される。
【0026】
図7に示すように、コントローラ60の撮影制御部62とカメラ40~43が接続されているとともにカメラ40~43と記録媒体63が接続されている。走行制御部61から撮影制御部62に撮影の指示が出されると、そのタイミングで撮影制御部62はカメラ40~43での撮影を行わせる。カメラ40~43で取得された画像は記録媒体63に送られて保存される。
【0027】
図3図4図5に示すように、LiDARセンサ50は、ロボットの周辺環境を把握するためのものであり、機台20における進行方向前側に搭載されている。LiDARセンサ50は、4段のケージ110の内の最も下の段のケージ110における給餌用レール130と同じ高さに位置している。LiDARセンサ50は、水平方向において進行方向の前方を中心に所定角度範囲(例えば、270度)にわたりレーザを走査(スキャン)しながら照射してその反射光を受光可能となっている。LiDARセンサ50は、Y方向に延びるケージ(ケージ列)の前においてケージ110に沿ってY方向に直線的に延びる最下段の給餌用レール130までの距離を計測することができる。
【0028】
図7に示すように、コントローラ60の走行制御部61は、LiDARセンサ50と接続されており、LiDARセンサ50から測定データ(位置情報)が走行制御部61に送られてくる。走行制御部61は、LiDARセンサ50からの測定データ(位置情報)に基づいてロボットの自己位置を推定して、推定した自己位置と予め登録したマップとを照合しながらスタート位置からゴール位置に向かって走行させる。また、走行制御部61は、LiDARセンサ50の計測結果に基づいて走行モータ30,31を制御して給餌用レール130までの距離が一定となるように走行させることができるようになっている。
【0029】
走行制御部61は、鶏舎100の巡回中においてY方向に仕切られた各ケージ110の前に来たタイミングで照明45~48を点灯させてカメラ40~43で鶏120を撮像させる。
【0030】
詳しくは、4段のケージ110の内の最も下のケージ110の前の給餌用レール130において、Y方向に仕切られた各ケージのY方向中央部に反射テープが貼られている。走行制御部61は、自己位置を推定しながら走行し、LiDARセンサ50によりレーザの反射強度が大きい反射テープを検出すると撮影タイミングであると判定して仕切られた各ケージのY方向中央部において撮影動作を行わせる。
【0031】
なお、最も下の段のケージ110の前の給餌用レール130において仕切られた各ケージのY方向中央部に反射テープを貼った場合を例示したが、鶏舎環境によっては、他の段のケージ列の前の給餌用レールにおいて仕切られた各ケージのY方向中央部に反射テープを貼って、当該反射テープの検出にて撮影タイミングとしてもよい。
【0032】
図7に示すように、鶏舎巡回自律走行ロボット10の機台20には無線機70が搭載されている。無線機70は、記録媒体63内の画像データを取得する役割を担う。
無線機70と地上側管理装置140との間で無線通信可能となっている。記録媒体63に保存されたカメラ画像は無線機70を介して無線通信により地上側管理装置140に送られる。
【0033】
地上側管理装置140は、画像処理部141を有する。画像処理部141は、カメラ画像からAI(人工知能)等の技術を用いて死亡した鶏を検出することができる。地上側管理装置140は、作業者が所持する端末(図示略)と無線通信することができるようになっている。
【0034】
次に、作用について説明する。
鶏舎巡回自律走行ロボット10は、図1において、スタート位置から、ゴール位置まで走行する。この走行時において、LiDARセンサ50により、ケージ110の前においてケージ110に沿って直線的に延びる最下段の給餌用レール130までの距離が計測される。
【0035】
走行制御部61は、LiDARセンサ50の計測結果に基づいて走行モータ30,31を制御して給餌用レール130までの距離が一定となるように走行させる。詳しくは、LiDARセンサ50と給餌用レール130との距離が最短となるX方向での距離L(図3参照)が一定となるように走行させる。
【0036】
給餌用レール130までの距離Lが一定となるように走行させながらカメラ40,41,42,43により各段のケージ110における鶏120の脚部が撮影される。その画像は、記録媒体63及び無線機70を介して無線で地上側管理装置140に送られる。地上側管理装置140において、送られてきたカメラ画像が画像処理部141において画像処理されてAI等の技術を用いて死亡した鶏121(図3図4参照)が検出される。例えば、今回の巡回において横たわっている状態の鶏121を検出するとともに次回の巡回(広義には、複数回連続した巡回)においても当該位置において鶏121が横たわっている状態ならば当該鶏121が死亡していると判定する。
【0037】
そして、地上側管理装置140において死亡鶏121を検出したならば作業者が所持する端末に対して死亡鶏の発生及び鶏舎内のその位置(例えば、図1においてケージ番号1,2,3,・・・で)を知らせる。その知らせを受けた作業者が死亡鶏の位置に行き、死亡鶏を除去する等の処理を行う。
【0038】
また、Y方向に延びる一列のケージからY方向に延びる次の列のケージに移る際にUターン(旋回)するときにおいては、図2に示したように、LiDARセンサ50により前方の周辺環境を検知しながら障害物がないことを確認しながら旋回走行する。
【0039】
このように、高精度な直進走行を行うための鶏舎巡回自律走行ロボット10において、LiDARセンサ50を用いることによって自己位置推定して走行制御する。LiDARセンサ50からレーザをケージ110の前面にある給餌用レール130に照射し、X方向におけるLiDARセンサ50と給餌用レール130との距離Lを一定に保ちつつ走行させる制御を行う。
【0040】
よって、高精度な直進による自律走行により、コースアウトによる停止頻度を軽減できる上、カメラ40~43と対象物との距離を一定に保ちつつ、高精細な画像が撮影できる。結果として死亡鶏の検知率の低下を抑制できる。また、既存設備である給餌用レール130を利用してセンシングできるため、イニシャル、ランニングコストを軽減することができる。
【0041】
以下、詳しく説明する。
採卵養鶏場の鶏舎内での業務に、死亡鶏をケージから除去する作業がある。一つのケージ内に鶏が7~10羽ほど入れられて飼育されており、死亡鶏が横たわったまま放置されると衛生上の問題に加え、他の鶏が産んだ卵が死亡鶏に引っ掛かってしまい、生産性が落ちてしまう。また、死亡鶏を除去した後に出てきた卵は、いつ産んだものなのか分からないため、廃棄処分となる。多くの養鶏場では、人による定期的な巡回により死亡鶏の除去作業を実施している。一つの鶏舎に鶏が数万羽飼育され、その広さはサッカーコート1面分もあるため、過酷な作業となっている。
【0042】
この作業の省人化・省力化に向け、自走式ロボットを導入することが考えられている。ロボットのシステム構成としては、死亡鶏を検知するシステムと鶏舎内を無人走行するシステムに大別される。このときのロボットの走行方式は、磁気テープ誘導型であり、鶏舎巡回路に磁気テープを貼り付け、磁気センサによりルートを検知するようになっている。
【0043】
ところが、以下の課題がある。
(イ)走行精度の向上が必要となる。詳しくは、死亡鶏の検知は、ロボットに搭載されたカメラで直進走行しながらケージを撮影し、AIによる画像分析で死亡鶏かどうかを判断する。この画像分析には高精度な画像が必要なため、カメラとケージとの距離を常に一定に保ちながら(カメラのピントを合わせながら)、走行する必要がある。磁気テープ誘導型の場合、磁気テープの貼り付け状態に依存するため、高精度な直進走行には高度な施工技術が必要となり、施工状況によってばらつきが発生する。
【0044】
(ロ)イニシャル、ランニングコストが高い。詳しくは、磁気テープの初期設置に多額の費用がかかる。また、鶏舎巡回路には消毒用の石灰が撒かれ、特に夏場は温度を下げるためのミストシステムにより路面が濡れた状態となるため、磁気テープが剥がれやすい環境となる。さらに、磁気テープの貼り替えや補修などのメンテナンス、維持費用が多額に発生してしまう。
【0045】
(ハ)施工するのに人員と納期がかかる。詳しくは、サッカーコート1面分の広さの鶏舎内を巡回するコース分の磁気テープを床に貼り付けるには数人がかりで施工しても数日間かかり、導入するまで時間を要する。
【0046】
(ニ)コースアウトして停止することがある。詳しくは、ロボットの中心に磁気テープを読み取るセンサを設置しており、タイヤのスリップや路面の異物乗り上げなどにより左右に大きく外れるとセンサが磁気テープを検知できずにコースアウトして停止することがある。
【0047】
これに対し、本実施形態では、ロボットの走行方法として、LiDARセンサ50を用いた自己位置推定による自律走行制御(無軌道制御)を採用している。LiDARセンサ50から照射されるレーザをケージ110の前面に設けられている給餌用レール130に当て、LiDARセンサ50と給餌用レール130との距離を一定に保ちながら走行するよう走行制御部の自律走行ソフトを用いて制御する。
【0048】
既存設備である給餌用レール130を目標に走行することにより基準位置が変わらず、繰り返し高精度な直進走行を実現させることができる。
高精度な自律直進走行により、高精細な画像が撮影でき、死亡鶏の検知率を向上させることができる。つまり、磁気テープ誘導方式のロボットでの検知率に比べ本実施形態の方式を採用することにより検知率を向上させることが可能となる。
【0049】
また、既存設備環境を利用することで、イニシャル・ランニングコストが発生しない。また、ロボット導入まで短時間で対応することができる。また、ロボットの巡回走行中、コースアウトによる停止頻度を格段に下げることができるため、安定した運用が期待できる。
【0050】
より具体的には、巡回走行ロボットの前面にLiDARセンサ50を取り付けるときの取付高さは、LiDARセンサ50から照射されるレーザがケージ110の前の給餌用レール130に当たるよう調整する。特に、ロボットにおける進行方向に対する縦振れ(前後動)であるロボットのピッチングの影響が受けにくいように一番低い位置にある給餌用レール130が最適である。
【0051】
LiDARセンサ50は、自身と給餌用レール130との距離を測定し、ロボットに搭載されたコントローラ(PC)60に測定データ(位置情報)を送る。コントローラ(PC)60は自律走行ソフトを用いて、その位置情報を元に走行速度や操舵角を調整して、距離を一定に保持するようにロボットを走行させる。
【0052】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)直線的に延びる収容部としてのケージ110の前の走行路を走行可能な巡回自律走行ロボットとしての鶏舎巡回自律走行ロボット10の構成として、機台20に搭載された走行用アクチュエータとしての走行モータ30,31を備える。また、機台20に搭載され、ケージ110内の動植物としての鶏120を撮像するためのカメラ40~43を備える。動植物は、動物のみを指す場合と、植物のみを指す場合と、動物と植物の両方を指す場合を含むものとする。さらに、機台20に搭載され、ケージ110の前においてケージ110に沿って直線的に延びる棒状部材としての給餌用レール130までの距離を計測するためのセンサとしてのLiDARセンサ50を備える。さらには、機台20に搭載され、LiDARセンサ50の計測結果に基づいて走行モータ30,31を制御して給餌用レール130までの距離Lが一定となるように走行させる走行制御部61を備える。よって、既存の設備を利用し、高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。また、床面がコンクリート面ではなく磁気テープの貼り付けが困難な凹凸を含んだグレーチング面であっても高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。また、大規模な設備投資をすることなく高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。つまり、大規模な設備投資をすることなく高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能な巡回自律走行ロボットを提供することができる。
【0053】
特に、巡回自律走行ロボットは、既存の直線的に延びる収容部としてのケージ110の前の走行路を走行可能なロボットである。
また、巡回自律走行ロボットとしての鶏舎巡回自律走行ロボット10の構成として、撮影タイミングの指示を出す撮影制御部62と、その画像を保存する記録媒体63を備える。よって、実用的である。
【0054】
(2)動植物は、鶏120であり、収容部は、ケージ110である。よって、鶏舎を巡回して鶏120を監視することができる。つまり、動植物の一例は鶏である。
(3)棒状部材は、給餌用レール130である。この場合、既存の設備を用いて、高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。
【0055】
(4)センサは、LiDARセンサ50である。この場合、ロボットの周囲環境を把握するためのセンサを用いて、高精度な直進走行を行いつつ、高精細な画像が撮影可能となる。
【0056】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇棒状部材としての給餌用レールは金属製であったが、これに限定されない。例えば、棒状部材としての給餌用レールはプラスチック製、木製等であってもよい。
【0057】
〇棒状部材は、給餌用レールであったが、これに限定されない。例えば、収容部としてのケージの前においてケージに沿って直線的に延びる丸棒等であってもよい。
○センサはLiDARセンサ50であったが、これに限定されない。レーザ方式以外にも超音波方式等でもよく、距離センサであればよい。
【0058】
○ロボットの走行方式は、履帯で走行する方式であったが、これに限らない。例えば、タイヤ車輪で走行する装輪方式でもよい。
○鶏舎で用いる巡回自律走行ロボットであったが、これに限定されない。つまり、動植物は、鶏であり、収容部は、ケージであったが、これに限定されない。動植物は、鶏以外の動物であってもよい。また、動植物は、植物であってもよく、この場合において、収容部は、植物を並べた棚であってもよい。
【0059】
このように、本発明は、農業用の建物、例えば、畜産用の建物、植物工場等において、動物や植物等を巡回して撮像する場合に利用できる。また、撮像画像から作物の枯具合の検知、動物の生死等の検知に応用できる。
【符号の説明】
【0060】
10…鶏舎巡回自律走行ロボット、20…機台、30,31…走行モータ、40~43…カメラ、50…LiDARセンサ、61…走行制御部、110…ケージ、120…鶏、130…給餌用レール、L…距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7