(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089609
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】後方視認装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/00 20220101AFI20220609BHJP
B60R 1/06 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
B60R1/00 A
B60R1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202134
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 光広
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053HH52
3D053HH55
(57)【要約】
【課題】ハーネスの損傷を抑制でき、また異物の混入を抑制できる後方視認装置を提供する。
【解決手段】ハーネス46は、ウイング下カバー34のうちベース20側に形成された第1通孔36と、ベース上カバー23のうち第1通孔36に対向する位置に形成された第2通孔26とを通ってベース20内に導かれている。スライダー50は、ハーネス46が挿通されるとともに通孔26,36に挿入された筒状の保護壁51、および、保護壁51から外側に突き出したフランジ状のシャッター52を有する。保護壁51は、ハーネス46と通孔26,36の内壁との間に介在している。保護壁51は、ハーネス46を保持しながら通孔26,36内を周方向へ移動可能である。シャッター52は、保護壁51と一体に周方向へ移動し、保護壁51の位置にかかわらず、第2通孔26のうち保護壁51の内側を除く部分を塞ぐ。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に設けられるベース(20)と、
前記ベースに対して回動可能に設けられたウイング(30)と、
前記ウイングを回動させる格納ユニット(40)、および、車外を撮影するカメラ(41)を含み、前記ウイングに取り付けられた複数の電器と、
前記複数の電器に接続され、前記ウイングの第1通孔(36)および前記ベースの第2通孔(26)を通って前記ベース内に導かれたハーネス(46)と、
前記ハーネスが挿通されるとともに前記第1通孔および前記第2通孔に挿入された筒状の保護壁(51)、および、前記保護壁から外側に突き出したフランジ状のシャッター(52)、を有するスライダー(50)と、
を備え、
前記保護壁は、前記ハーネスを保持しながら前記第1通孔内および前記第2通孔内を前記格納ユニットの回動軸心(AX)まわりの周方向へ移動可能であり、
前記シャッターは、前記保護壁と一体に周方向へ移動し、前記保護壁の位置にかかわらず、前記第2通孔のうち前記保護壁の内側を除く部分を塞ぐ、後方視認装置。
【請求項2】
前記ベースは、車体に取り付けられるベース本体(21)と、前記第2通孔が形成されたベースカバー(22)とを含み、
前記ベース本体は、前記スライダーを周方向へ移動可能なように前記ベースカバーとの間に前記シャッターを保持している、請求項1に記載の後方視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側部に設けられるドアミラー等の後方視認装置が知られている。特許文献1に開示されたドアミラーは、ミラーを収容したハウジングがベースに対して回動可能になっており、格納ユニットにより走行位置と格納位置を切り替えることができる。
【0003】
一方、ミラーの代わりにカメラの映像で後方を視認することができるカメラモニターシステム(以下、CMS)が知られている。特許文献2に開示されたCMS用のドアミラーは、車両の側方に突き出す翼状のハウジングと、ハウジング内に設けられたカメラとを備えている。ハウジングは、カメラを収納できる程度の大きさに設定することで薄型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-019396号公報
【特許文献2】特開2018-197021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では格納ユニットを含む電器に接続されたハーネスが格納ユニットのシャフトの孔を通じてベースに導かれる。しかし、CMS用のドアミラーを格納できるようにするためにハウジングに格納ユニットを収容する場合、ドアミラー薄型化のメリットを享受するには格納ユニットも薄型化する必要があり、上記特許文献1に開示されたようなハーネスの配線方法を採用することはできない。
【0006】
これに対し、例えばハウジングとベースにそれぞれ通孔を設け、それらの通孔にハーネスを通すことが考えられる。しかしその場合、ハーネスと通孔の縁とが直接接触するため、ハウジングの回動時にハーネスが損傷する懸念がある。また、ハウジングが走行位置以外のポジションに回動した場合にベースの通孔が外部に露出した状態となり、異物が入り込む懸念がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ハーネスの損傷を抑制でき、また異物の混入を抑制できる後方視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の後方視認装置は、車両の側部に設けられるベースと、ベースに対して回動可能に設けられたウイングと、ウイングに取り付けられた複数の電器と、複数の電器に接続されたハーネスとを備える。複数の電器は、ウイングを回動させる格納ユニット、および、車外を撮影するカメラを含む。ハーネスは、ウイングの第1通孔およびベースの第2通孔を通ってベース内に導かれている。
【0009】
後方視認装置は、ハーネスが挿通されるとともに第1通孔および第2通孔に挿入された筒状の保護壁、および、保護壁から外側に突き出したフランジ状のシャッター、を有するスライダーを備える。保護壁は、ハーネスを保持しながら第1通孔内および第2通孔内を格納ユニットの回動軸心まわりの周方向へ移動可能である。これによりハーネスが第1通孔の縁および第2通孔の縁と接触せず、保護壁に保持されながら周方向へ移動するため、ハーネスの引掛り、磨耗、または断線等の懸念が無くなる。また、シャッターは、保護壁と一体に周方向へ移動し、保護壁の位置にかかわらず、第2通孔のうち保護壁の内側を除く部分を塞ぐ。これによりウイングが走行位置以外のポジションに回動した場合に第2通孔がシャッターにより塞がれ、異物の入り込みが抑制される。
【0010】
ここで、スライダーを保持するための部材を新たに設けると、部品点数増加および組付け工数増加が懸念される。そこで次のように構成することが好ましい。ベースは、車体に取り付けられるベース本体と、第2通孔が形成されたベースカバーとを含む。ベース本体は、スライダーを周方向へ移動可能なようにベースカバーとの間にシャッターを保持している。これによりスライダーを保持するための部材を新たに設ける必要がなく、部品点数増加および組付け工数増加を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態のドアミラー装置の外観を示す斜視図。
【
図2】
図1のドアミラー装置を矢印II方向から見た上面図。
【
図3】
図2のドアミラー装置を矢印III方向の車両後方から見た図。
【
図4】
図2のドアミラー装置のウイング上カバーおよび先端カバーを取り外した状態を示す図であって、ドアミラー装置の走行位置を示す図。
【
図5】
図3のドアミラー装置の回動軸心を通る断面図。
【
図6】
図4に対応する図であって、ドアミラー装置の格納位置を示す図。
【
図7】
図4に対応する図であって、ドアミラー装置の前方可倒位置を示す図。
【
図11】比較形態のドアミラー装置の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の後方視認装置は、車両の側部であって左右の前席ドアの外側に設けられる一対のドアミラー装置であり、カメラの映像で後方を視認することができるカメラモニターシステム(以下、CMS)に用いられるものである。
【0013】
(一実施形態)
図1~
図4に示すように、ドアミラー装置10は、車両の側部に設けられるベース20と、ベース20に対して回動可能に設けられたウイング30と、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42を含む複数の電器とを備える。以下、格納ユニット40、カメラ41およびターンランプ42等の電子機器および電気機器を区別しない場合、単に「電器」と記載する。
【0014】
図4および
図5に示すように、ベース20は、車体に取り付けられてドアミラー装置10を支持するベース本体21と、ベース本体21をカバーするベースカバー22とを含む。ベースカバー22は、ベース上カバー23およびベース下カバー24を含む。ベース本体21には格納ユニット40が取り付けられている。格納ユニット40は、ベース本体21に固定された図示しない固定部と、内蔵する図示しないモータの動力により固定部に対して所定の回動軸心AXまわりに回動する回動部45とを有する。
【0015】
ウイング30は、回動部45に固定されたウイング本体31と、ウイング本体31をカバーするウイングカバー32とを含む。ウイングカバー32は、ウイング上カバー33、ウイング下カバー34および先端カバー35を含む。カメラ41は、ウイングカバー32内でウイング本体31に取り付けられており、先端カバー35の開口から車外を撮影できる。ターンランプ42は、ウイングカバー32に取り付けられており、アウターレンズが外部に露出するように配置されている。
【0016】
格納ユニット40が作動すると、ウイング本体31およびこれに取り付けられたウイングカバー32および電器が回動部45と一体に回動軸心AXまわりに回動する。
図4に示すウイング30は、走行位置(すなわち車両走行時の位置)に位置した状態である。ウイング30は、走行位置から、回動軸心AXまわりの周方向の一方に位置する
図6に示す格納位置まで格納ユニット40による格納作動によって回動可能である。また、ウイング30は、走行位置から、回動軸心AXまわりの周方向の他方に位置する
図7に示す前方可倒位置まで例えば手動によって回動可能である。
【0017】
以下、回動軸心AXまわりの周方向のことを、単に「周方向」と記載する。また、回動軸心AXを中心とした径方向のことを、単に「径方向」と記載する。
【0018】
図4、
図5、
図8および
図9に示すように、ドアミラー装置10は、複数の電器に接続された配線としてのハーネス46をさらに備える。ハーネス46は、例えば電源線や映像信号線などを含む複数の電線から構成されている。ミラーを備える従来のドアミラー装置ではミラーを収容できる比較的大きなハウジングが設けられることから、格納ユニットの高さが比較的高くても問題ない。そのため、ハーネスを格納ユニットのシャフト(すなわち固定部)の孔を通じてベースに導くことが可能であった。しかし、CMS用のドアミラー装置10では、ミラーに代えてカメラを使用することによる薄型化・小型化のメリットを享受するためには、上述のような従来のハーネス配線方法を採用することができない。
【0019】
そのため本実施形態において、ハーネス46は、ウイング下カバー34のうちベース20側に形成された第1通孔36と、ベース上カバー23のうち第1通孔36に対向する位置に形成された第2通孔26とを通ってベース20内に導かれている。ここからハーネス46は車体内部に導かれ、バッテリーや制御装置等に接続される。第1通孔36および第2通孔26は、周方向へ延びる円弧状の孔である。
【0020】
ここで、
図11に示すように単に通孔26,36にハーネス46を通しただけの比較形態においては、ハーネス46と通孔26,36の縁とが直接接触するため、ウイング30の回動時にハーネス46の引掛り、磨耗、または断線等が懸念される。また、ウイング30が走行位置以外のポジションに回動した場合にベース20の第2通孔26が外部に露出した状態となり、異物が入り込む懸念がある。
【0021】
この課題を解決するため、
図4、
図5、
図8および
図9に示すように、本実施形態ではスライダー50が設けられている。スライダー50は、ハーネス46が挿通されるとともに通孔26,36に挿入された筒状の保護壁51、および、保護壁51から外側に突き出したフランジ状のシャッター52を有する。
【0022】
保護壁51は、ハーネス46と通孔26,36の内壁との間に介在している。保護壁51は、ハーネス46を保持しながら通孔26,36内を周方向へ移動可能である。これによりハーネス46が通孔26,36の縁と接触せず、保護壁51に保持されながら周方向へ移動するため、ハーネス46の引掛り、磨耗、または断線等の懸念が無くなる。
【0023】
シャッター52は、特に周方向へ長く延びるように形成されている。シャッター52の周方向長さは、第1通孔36の周方向長さよりも長く、また第2通孔26の周方向長さよりも長い。具体的にはシャッター52は、保護壁51から周方向の一方へ延びる第1シャッター部53と、保護壁51から周方向の他方へ延びる第2シャッター部54とを有する。
図4、
図6および
図7に示すように、シャッター52は、保護壁51と一体に周方向へ移動し、保護壁51の位置にかかわらず、第2通孔26のうち保護壁51の内側を除く部分を塞ぐ。これによりウイング30が走行位置以外のポジションに回動した場合に第2通孔26がシャッター52により塞がれ、異物の入り込みが抑制される。
【0024】
図9および
図10に示すように、ベース本体21は、スライダー50を周方向へ移動可能なようにベース上カバー23との間にシャッター52を保持している。これによりスライダー50を保持するための部材をベース20とは別に設ける必要がなく、部品点数増加および組付け工数増加を回避できる。
【0025】
具体的にはシャッター52は、保護壁51に対して径方向外側で回動軸心AXと平行な軸方向の両側へ突き出しつつ周方向へ延びる一対の外側弧状突起55と、保護壁51に対して径方向内側で軸方向の両側へ突き出しつつ周方向へ延びる一対の内側弧状突起56と、を有する。ベース上カバー23は、シャッター52の外側弧状突起55に沿って形成された外側弧状レール部27を有する。外側弧状レール部27は、外側弧状突起55を周方向へ摺動可能に支持している。ベース本体21は、シャッター52の内側弧状突起56に沿って形成された内側弧状レール部28を有する。内側弧状レール部28は、ベース上カバー23との間にシャッター52を保持しており、内側弧状突起56を周方向へ摺動可能に支持している。
【0026】
(他の実施形態)
他の実施形態では、外側弧状レール部および内側弧状レール部の一方または両方に相当する部材がベースとは別部材から構成されてもよい。
【0027】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
20 ベース、26 第2通孔、30 ウイング、36 第1通孔、
40 格納ユニット、41 カメラ、46 ハーネス、
50 スライダー、51 保護壁、52 シャッター、
AX 回動軸心。