(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089611
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】連続式粉体処理装置
(51)【国際特許分類】
B01F 29/64 20220101AFI20220609BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B01F9/08
B01J2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202144
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 明紀
【テーマコード(参考)】
4G004
4G036
【Fターム(参考)】
4G004HA02
4G036AA05
(57)【要約】
【課題】処理容器内で粉体を適切に送る。
【解決手段】粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置は、入口から出口へ向かう横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、処理容器の入口と接続された供給管と、供給管内に設けられて供給管内の粉体を処理容器の入口へ送り出すスクリューと、処理容器内に配置されて送り方向に延びる回転シャフトと、処理容器内で回転シャフトに固定された送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、送り方向へ移動する送り力を当該粉体に与えるとともに粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、を備える。複数の回転羽根の各々は回転方向の前部にナイフエッジを有する。複数の回転羽根は複数の標準羽根と少なくとも1つの送り羽根とを含み、送り羽根が複数の標準羽根の各々よりも大きな送り力を粉体に与える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置であって、
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記入口と接続された供給管と、
前記供給管内に配置されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内に配置されて前記送り方向に延びる回転シャフトと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、を備え、
前記複数の回転羽根の各々は回転方向の前部にナイフエッジを有し、
前記複数の回転羽根は複数の標準羽根と少なくとも1つの送り羽根とを含み、前記送り羽根が前記複数の標準羽根の各々よりも大きな前記送り力を前記粉体に与えるように構成されている、
連続式粉体処理装置。
【請求項2】
前記送り羽根は、前記複数の回転羽根のうち前記処理容器の前記入口の側に配置されている、
請求項1に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項3】
前記複数の標準羽根の各々は第1羽根角を有し、前記送り羽根は少なくとも根本部において前記第1羽根角よりも大きな第2羽根角を有する、
請求項1又は2に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項4】
前記第2羽根角は、1°以上15°以下である、
請求項3に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項5】
前記複数の回転羽根は、前記送り方向と逆の戻り方向へ移動する戻り力を前記粉体に与える少なくとも1つの戻し羽根を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項6】
前記戻し羽根は、前記複数の回転羽根のうち前記処理容器の前記出口の側に配置されている、
請求項5に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項7】
前記戻し羽根の羽根角の大きさは、前記送り羽根の羽根角の大きさよりも小さい、
請求項5又は6に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項8】
前記処理容器は筒の中心軸を中心として回転するように構成されており、
前記回転シャフトの回転方向は、前記処理容器の回転方向と同じであり、前記回転シャフトの回転速度は、前記処理容器の回転速度よりも速い、
請求項1~7のいずれか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項9】
前記回転シャフトの中心軸は、前記処理容器の前記中心軸よりも下方に位置する、
請求項8に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項10】
粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置であって、
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記入口と接続された供給管と、
前記供給管内に配置されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内に配置されて前記送り方向に延びる回転シャフトと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、を備え、
前記複数の回転羽根の各々は回転方向の前部にナイフエッジを有し、
前記複数の回転羽根は複数の標準羽根と少なくとも1つの戻し羽根とを含み、前記送り方向と逆の戻り方向へ移動する戻り力を前記粉体に与えるように構成されている、
連続式粉体処理装置。
【請求項11】
前記戻し羽根は、前記複数の回転羽根のうち前記処理容器の前記出口の側に配置されている、
請求項10に記載の連続式粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の混合又は湿潤した粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば医薬品、化学薬品、食品などの分野では、複数の粉体を混合し、混合粉体を湿潤させ、その湿潤粉体から顆粒を製造することが行われている。粉体はそのままではハンドリングが困難であるため、顆粒とすることでハンドリング性を向上させることができる。このように粉体の混合や、湿潤粉体からの造粒に用いられる連続式粉体処理装置が知られている。特許文献1は、この種の連続式粉体処理装置を開示する。
【0003】
特許文献1の連続式粉体処理装置(特許文献1では、「連続式撹拌処理装置」と称呼)は、軸方向一方の端部に入口が設けられ他方の端部に出口が設けられた筒状の処理容器と、処理容器の内部に挿通されたアジテータとを備える。アジテータは、回転軸と、回転軸の外周部に設けられた複数の攪拌羽根とを有する。攪拌羽根の各々は、回転面(即ち、回転軸に直角な面)と平行に扁平な形状を有し、当該攪拌羽根の回転方向の前部には片刃状のナイフエッジ部が設けられている。この攪拌羽根が回転軸を中心として回転することにより、処理容器内の被処理物が攪拌混合されるとともに、被処理物がナイフエッジ部で解砕されて分散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の攪拌羽根では、ナイフエッジ部の回転面に対する傾きによって、被処理物が処理容器の入口から出口へ向けて送られる。処理容器内での被処理物の滞留時間を確保する観点からは、処理容器内で回転する羽根による被処理物の送り作用は小さいほうが望ましい。一方で、回転する羽根による被処理物の送り作用が小さいと、被処理物(例えば、バインダと粉体)の混合が十分に進んでいない箇所では、処理容器内の他の場所と比較して被処理物が処理容器の壁に付着しやすいなどの課題もある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置において、処理容器内で粉体を適切に送る技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る連続式粉体処理装置は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置であって、
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記入口と接続された供給管と、
前記供給管内に配置されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内に配置されて前記送り方向に延びる回転シャフトと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、を備え、
前記複数の回転羽根の各々は回転方向の前部にナイフエッジを有し、
前記複数の回転羽根は複数の標準羽根と少なくとも1つの送り羽根とを含み、前記送り羽根が前記複数の標準羽根の各々よりも大きな前記送り力を前記粉体に与えるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成の連続式粉体処理装置によれば、粉体の移動が滞る要因があるところに送り羽根が配置されることによって局所的に粉体の移動が促進されるが、処理容器全体としての粉体の移動は標準羽根の送り力に律速される。このように、処理容器での粉体の滞留時間を確保しつつ、局所的な粉体の滞留を抑制して粉体をより均一に移動させることができる。よって、連続式粉体処理装置では、粉体の送りムラに起因する造粒ムラや混合ムラが抑えられ、安定した造粒や混合を行うことができる。
【0009】
また、本発明の別の一態様に係る連続式粉体処理装置は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置であって、
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記入口と連続して配置され、前記送り方向に延びる供給管と、
前記供給管内に配置されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内に配置されて前記送り方向に延びる回転シャフトと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、を備え、
前記複数の回転羽根の各々は回転方向の前部にナイフエッジを有し、
前記複数の回転羽根は複数の標準羽根と少なくとも1つの戻し羽根とを含み、前記送り方向と逆の戻り方向へ移動する戻り力を前記粉体に与えるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成の連続式粉体処理装置によれば、回転する戻し羽根が局所的に配置されて粉体に戻り力が与えられることによって、粉体の処理容器での滞留時間を延ばすことができる。これにより、処理容器での処理量が比較的少ない場合であっても、粉体が適切な滞留時間だけ処理容器に留まるように粉体を送ることができるので、造粒不足や混合不足を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置において、処理容器内で粉体を適切に送る技術を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る連続式粉体処理装置の縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った正面断面図である。
【
図5】
図5(A)は標準羽根を含む羽根部品の構成を示す図であり、
図5(B)は
図5(A)のVB矢視図である。
【
図6】
図6(A)は送り羽根を含む羽根部品の構成を示す図であり、
図6(B)は
図6(A)のVIB矢視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の変形例1に係る連続式粉体処理装置の縦断面図である。
【
図8】
図8(A)は戻し羽根を含む羽根部品の構成を示す図であり、
図8(B)は
図8(A)のVIIIB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に、本発明の一実施形態に係る連続式粉体処理装置1を示す。この連続式粉体処理装置1は、粉体の混合又は湿潤した粉体の造粒に用いられるものである。例えば、湿潤前の混合粉体の平均粒径は30~70μmであり、顆粒の平均粒径は80~250μmである。
【0014】
〔連続式粉体処理装置1の概略構成〕
本実施形態に係る連続式粉体処理装置1は、横向きに延びる筒状の処理容器2と、処理容器2の入口2aと連続して配置された供給管3と、処理容器2及び供給管3の内部に配置された回転シャフト4と、供給管3内において回転シャフト4に取り付けられたスクリュー5と、処理容器2内において回転シャフト4に取り付けられた複数の回転羽根6とを備える。
【0015】
処理容器2は、両端開放の筒状体であって、一方の開口端部の内周面2cによって形成された入口2aと、他方の開口端部の内周面2cによって形成された出口2bとを有する。入口2aから出口2bへ向かう横向きの方向を「送り方向X」と称し、送り方向Xと反対方向を「戻り方向Y」と称する。送り方向X及び戻り方向Yは、処理容器2の中心軸20の延在方向と平行である。本実施形態に係る処理容器2では、中心軸20は略水平に延びる。但し、処理容器2の中心軸20は、入口2aから出口2bへ向かって下向きに若干傾斜してもよいし、入口2aから出口2bへ向かって上向きに若干傾斜してもよい。このように処理容器2の中心軸20を傾斜させることで、処理容器2内での粉体の滞留時間を調整することができる。
【0016】
本実施形態では、処理容器2の内周面2cの入口側端部が径方向内向きに張り出しており、入口2aの直径が出口2bの直径よりも小さい。即ち、処理容器2の内周面2cは、入口側端部以外では、一定の直径Dの円筒面である。処理容器2の入口2aに、供給管3の端部が嵌入されている。
【0017】
供給管3の内部には、送り方向Xと平行に延びる円筒状のガイド穴3aが設けられている。ガイド穴3aは処理容器2の内部と連通している。供給管3の処理容器2と連通される端部には、第1閉塞部材12が接合されている。第1閉塞部材12と処理容器2の入口側端面との間の空間には、当該空間へ処理容器2の入口2aと供給管3との間の隙間を通じて粉体が流入するのを防止するために、図略の圧縮機から圧縮空気が導入される。この圧縮空気は、処理容器2の入口2aと供給管3との間の隙間を通じて処理容器2の内部へ流出する。
【0018】
供給管3には、上向きに開口する投入口3bが設けられている。この投入口3bにホッパー35が接続されている。ホッパー35には、混合される粉体、又は、処理液が添加されて湿潤した粉体が投入される。
【0019】
本実施形態において、処理容器2はフレーム11によって回転可能に支持されている。フレーム11は、処理容器2の側方に位置するベース11aと、ベース11aから突出する一対の容器支持部11b,11cを含む。容器支持部11b,11cは、ベアリング21,22を介して処理容器2を中心軸20を中心として回転可能に支持する。
【0020】
フレーム11のベース11aには、処理容器2を回転させる電動機71が取り付けられている。電動機71の出力シャフト及び処理容器2の外周面には、ベベルギア72,73がそれぞれ設けられており、それらのベベルギア72,73が互いに噛み合っている。
【0021】
フレーム11のベース11aには電動機支持部16が固定されており、この電動機支持部16に、回転シャフト4を回転させる電動機75が取り付けられている。更に、フレーム11の容器支持部11bには、ベアリング21及びその内側を覆う第1閉塞部材12が固定されており、容器支持部11cには、ベアリング22及びその内側を覆う第2閉塞部材13が固定されている。本実施形態では、第1閉塞部材12が円盤状であり、供給管3と一体となっている。第2閉塞部材13は環状であり、処理容器2に貫通されている。また、フレーム11の容器支持部11b,11cには、それらの間の空間を覆うカバー15が取り付けられている。第2閉塞部材13には、処理容器2の出口2bから排出される顆粒を案内するシュート14が取り付けられている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、回転シャフト4は、処理容器2内及び供給管3内において、処理容器2の軸方向(即ち、送り方向X)に延びている。本実施形態では、供給管3内及び処理容器2内における回転シャフト4の断面形状が正方形状である。但し、回転シャフト4の形状はこれに限られるものではない。
【0023】
本実施形態では、回転シャフト4の中心軸40が処理容器2の中心軸20よりも下方に位置している。即ち、回転シャフト4は処理容器2に対し偏心している。例えば、処理容器2の中心軸20に対する回転シャフト4の中心軸40の偏心量eは、処理容器2の内周面2cの中央部及び出口側端部の直径Dの1/6~1/12である。
【0024】
更に、本実施形態では、回転シャフト4の回転方向が処理容器2の回転方向と同じであるとともに、回転シャフト4の回転速度が処理容器2の回転速度よりも速い。回転シャフト4の回転速度は、後述する回転羽根6の先端部での周速が10m/s程度となるように設定され、処理容器2の回転速度は、処理容器2の内周面2cでの周速が1m/s程度となるように設定される。
【0025】
供給管3内では、回転シャフト4の周囲にスクリュー5が設けられている。スクリュー5は、回転シャフト4に挿通されるボス51と、ボス51の外周面に設けられた螺旋状のスクリュー羽根52を含む。スクリュー5の長さは、ガイド穴3aの長さと同程度である。
【0026】
一方、処理容器2内では、回転シャフト4の周囲に複数の回転羽根6が設けられている。回転シャフト4には複数の羽根部品60と複数のスペーサリング61とが挿通されている。スペーサリング61によって、送り方向Xに並ぶ羽根部品60同士の間隙が調整される。以下、回転羽根6及びそれを含む羽根部品60について詳細に説明する。
【0027】
〔羽根部品60の構成〕
図5(A)及び
図5(B)、並びに、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、羽根部品60は、回転シャフト4が挿通されるボス65と、ボス65の周囲から放射状に延びる一対の回転羽根6とからなる。一対の回転羽根6は、ボス65を介して対角(又は、点対称)に配置されている。ボス65には、回転シャフト4が挿通されるボス孔6aが形成されている。本実施形態では、ボス孔6aは回転シャフト4の断面形状と対応した正方形状を呈する。
図5(A)及び
図5(B)に示すように、一対の回転羽根6が同一平面内に収まる場合には、ボス65は省略されてもよい。
【0028】
各回転羽根6は、略菱形の板状体である。回転羽根6の回転方向R前部には、回転方向R前方へ向かって尖るようにナイフエッジ6bが形成されている。ナイフエッジ6bは、回転方向R前方に向かって、入口2aへ近づく(出口2bから遠ざかる)ように傾斜している。このため、回転羽根6が回転すると、ナイフエッジ6bによって、粉体へ処理容器2の出口2bへ向かう送り力が付与される。
【0029】
図3及び
図4に戻って、複数の羽根部品60は、隣り合う羽根部品60の位相が90°ずれるように、回転シャフト4に取り付けられる。隣り合う羽根部品60の間には、スペーサリング61が適宜配置される。各スペーサリング61は、回転シャフト4の断面形状と対応した正方形状の貫通孔を有し、回転シャフト4に挿通される。回転シャフト4の先端には、羽根部品60及びスペーサリング61の落脱を防止する、保持部材62が取り付けられている。羽根部品60の直径Lは、各回転羽根6と処理容器2の内周面2cとの最短距離(処理容器2の中心軸20の真下でのクリアランス)が数ミリ(例えば、1~5mm)程度となるように設定される。
【0030】
複数の回転羽根6は、複数の標準羽根6Aと少なくとも1つの送り羽根6Bとを含む。本実施形態では、標準羽根6Aを有する羽根部品60Aと、送り羽根6Bを有する羽根部品60Bとが、回転シャフト4に取り付けられている。
【0031】
回転する標準羽根6A及び送り羽根6Bは、ともに、送り方向Xへ移動する送り力を粉体に与えるとともに、粉体を攪拌及び解砕する機能を有する。各送り羽根6Bは、各標準羽根6Aよりも大きな送り力を粉体に与えるように構成されている。
【0032】
具体的には、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、各標準羽根6Aの羽根角θAは、概ね0°である。なお、羽根角とは、回転面S(即ち、回転シャフト4の中心軸40に直角な面)に対する羽根の断面の傾きと規定される。これに対し、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、各送り羽根6Bの少なくとも根本部の羽根角θBは、標準羽根6Aの羽根角θAよりも大きい。送り羽根6Bでは、回転方向R前部が回転方向R後部よりも送り方向Xへ後退した位置(換言すれば、戻り方向Yへ前進した位置)にある。
【0033】
送り羽根6Bの羽根角θBは、標準羽根6Aの羽根角θAよりも大きいことから、粉体へより大きな送り力を与えることができる。送り羽根6Bの羽根角θBが大きいほど、送り力は大きくなる一方で送り羽根6Bに付着する粉体の量が増える。より詳細には、送り羽根6Bが処理容器2へ粉体を押し付ける力は羽根角θBの増大に伴って大きくなり90°で最大となるが、送り羽根6Bの送り力は羽根角θBの増大に伴って大きくなり或る角度(約45°)を超えると減少して90°でゼロとなる。このような理由から、送り羽根6Bの羽根角θBは1°~15°であることが望ましい。
【0034】
送り羽根6Bは、根本部(即ち、ボス65との接続部分)の羽根角と、先端部(即ち、ボス65から放射方向・半径方向に最も離れた部分)の羽根角とが、略同一であってよい。また、送り羽根6Bは、根本部と先端部とで羽根角の異なる、所謂「捩じり羽根」であってもよい。この場合、送り羽根6Bは、根本部の羽根角が羽根角θBであり、先端へいくにつれて羽根角が小さくなり、先端部の羽根角が略0°(又は、標準羽根6Aの羽根角θAと同じ)であるように、形成されていてよい。このように送り羽根6Bを先端部の羽根角の大きさが根本部と比較して小さい捩じり羽根とすることによって、送り羽根6Bの根本部では粉体を放射方向(半径方向)へ移動させる力が大きくなる。これにより、送り羽根6Bの根本部によって粉体は先端側へ押し出され、粉体は周速の速い送り羽根6Bの先端部に集められる結果、造粒効果を高めることができる。
【0035】
また、
図1~3に示す例では、処理容器2の入口2aの側から一段目及び二段目の回転羽根6が送り羽根6Bであり、その他の段の回転羽根6は標準羽根6Aとなっている。この場合、一段目の送り羽根6Bの羽根角と、二段目の送り羽根6Bの羽根角は略同一であってよい。或いは、一段目の送り羽根6Bの羽根角は、二段目の送り羽根6Bの羽根角よりも大きくてよい。また、送り羽根6Bは処理容器2の入口2aの側から連続する二段となっているが、2段の送り羽根6Bの間に標準羽根6Aからなる段が介されていてもよい。
【0036】
上記では、送り羽根6Bが処理容器2の入口2aの側に局所的に設けられた例を示したが、送り羽根6Bは上記例に限らず、送り方向Xに並ぶ複数の回転羽根6のうち粉体の送り方向Xの移動が阻害される要因がある部分に局所的に設けられてよい。また、送り羽根6Bは、連続する二段に限られず、間に標準羽根6Aの段を介した一つおきの二段、又は、単段で設けられてもよい。
【0037】
〔連続式粉体処理装置1の動作〕
ここで、上記構成の連続式粉体処理装置1で湿潤粉体の造粒を行う場合の動作について説明する。連続式粉体処理装置1では、ホッパー35に貯留されている湿潤粉体(例えば、バインダと粉体との混合体)が、投入口3bを通じて供給管3内へ投入される。供給管3内の湿潤粉体は、スクリュー5の回転によって処理容器2の入口2aへ定量的に供給される。処理容器2内では、回転羽根6が回転シャフト4と一体的に回転することによって、湿潤粉体が送り方向Xへ送られるとともに、湿潤粉体が混合及び解砕される。湿潤粉体は、処理容器2を送り方向Xへ移動するうちに顆粒となって出口2bから排出される。このようにして顆粒が製造され、製造された顆粒が処理容器2の出口2bから排出される。なお、連続式粉体処理装置1が造粒に用いられる場合について説明したが、連続式粉体処理装置1は粉体の混合に用いられる場合も前述と同様に動作する。
【0038】
〔変形例〕
次に、上記実施形態に係る連続式粉体処理装置1の変形例を説明する。
図7は、本実施形態の変形例1に係る連続式粉体処理装置1Aの縦断面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態に係る連続式粉体処理装置1と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図7に示す本実施形態の変形例1に係る連続式粉体処理装置1Aでは、複数の回転羽根6が、複数の標準羽根6A及び少なくとも1つの送り羽根6Bのほかに、少なくとも1つの戻し羽根6Cを含む。本変形例では、標準羽根6Aを有する羽根部品60Aと、送り羽根6Bを有する羽根部品60Bと、戻し羽根6Cを含む羽根部品60Cとが、回転シャフト4に取り付けられている。
【0040】
回転する戻し羽根6Cは、戻り方向Yへ移動する戻り力を粉体に与える。具体的には、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、戻し羽根6Cの少なくとも根本部の羽根角θCの大きさ(絶対値)は、標準羽根6Aの羽根角θAの大きさと比較して大きい。また、戻し羽根6Cの少なくとも根本部の羽根角θCの傾きは、送り羽根6Bの少なくとも根本部の羽根角θBの傾きと逆向きである。即ち、戻し羽根6Cでは、回転方向R前部が回転方向R後部よりも送り方向Xへ前進した位置(換言すれば、戻り方向Yへ後退した位置)にある。
【0041】
戻し羽根6Cは、根本部(即ち、ボス65との接続部分)の羽根角と、先端部(即ち、ボス65から放射方向・半径方向に最も離れた部分)の羽根角とが、略同一であってよい。また、戻し羽根6Cは、根本部と先端部とで羽根角の異なる、所謂「捩じり羽根」であってもよい。この場合、戻し羽根6Cは、根本部の羽根角が羽根角θCであり、先端へいくにつれて羽根角が小さくなり、先端部の羽根角が略0°(又は、標準羽根6Aの羽根角θAと同じ)であるように、形成されていてよい。このように戻し羽根6Cを先端部の羽根角の大きさが根本部と比較して小さい捩じり羽根とすることによって、戻し羽根6Cの根本部では粉体を放射方向(半径方向)へ移動させる力が大きくなる。これにより、戻し羽根6Cの根本部によって粉体は先端側へ押し出され、粉体は周速の速い戻し羽根6Cの先端部に集められる結果、造粒効果を高めることができる。
【0042】
図7に示す例では、回転シャフト4の周囲に設けられた複数の回転羽根6において、処理容器2の入口2aの側から一段目及び二段目の回転羽根6が送り羽根6Bであり、処理容器2の出口2bの側から四段目及び五段目の回転羽根6は戻し羽根6Cであり、残りの段の回転羽根6は標準羽根6Aとなっている。送り羽根6Bの羽根角θBの大きさ(絶対値)は、戻し羽根6Cの羽根角θCの大きさよりも大きい。
【0043】
このように、送り羽根6Bは処理容器2の入口2aの側に局所的に配置され、戻し羽根6Cは処理容器2の出口2bの側に局所的に配置されている。但し、顆粒が処理容器2の出口2bから速やかに排出されるようにするために、複数の回転羽根6のうち最も出口2bに近い段には標準羽根6Aが配置されることが好ましく、戻し羽根6Cは複数の回転羽根6のうち出口2bの側から数段おいたところに配置されることが好ましい。また、上記では複数段に渡って戻し羽根6Cが設けられているが、戻し羽根6Cは一段であってもよい。
【0044】
本実施形態の変形例1に係る連続式粉体処理装置1Aでは、複数の回転羽根6に複数の標準羽根6A、少なくとも1つの送り羽根6B、及び、少なくとも1つの戻し羽根6Cが含まれるが、このうち送り羽根6Bが省略されてもよい。この場合、回転する戻し羽根6Cが局所的に配置されて粉体に戻り力が与えられることによって、粉体の処理容器2での滞留時間を延ばすという効果が得られる。
【0045】
〔総括〕
以上に説明した通り、本実施形態に係る連続式粉体処理装置1は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置1であって、
入口2a及び出口2bを有し、入口2aから出口2bへ向かって横向きの送り方向Xに延びる筒状の処理容器2と、
処理容器2の入口2aと接続された供給管3と、
供給管3内に配置されて、供給管3内の粉体を処理容器2の入口2aへ送り出すスクリュー5と、
処理容器2内に配置されて送り方向Xに延びる回転シャフト4と、
処理容器2内で回転シャフト4に固定された送り方向Xに並ぶ複数の回転羽根6であって、回転することにより、送り方向Xへ移動する送り力を当該粉体に与えるとともに粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根6と、を備える。
そして、複数の回転羽根6の各々は回転方向Rの前部にナイフエッジ6bを有し、複数の回転羽根6は複数の標準羽根6Aと少なくとも1つの送り羽根6Bとを含み、送り羽根6Bが複数の標準羽根6Aの各々よりも大きな送り力を粉体に与えるように構成されていることを特徴としている。
【0046】
上記構成の連続式粉体処理装置1によれば、粉体の移動が滞る要因があるところ(一か所に限定されない)に送り羽根6Bが配置されることによって局所的に粉体の移動が促進されるが、処理容器2全体としての粉体の移動は標準羽根6Aの送り力に律速される。従って、処理容器2での粉体の滞留時間を確保しつつ、局所的な粉体の滞留を抑制して粉体をより均一に移動させることができる。よって、連続式粉体処理装置1では、粉体の送りムラに起因する造粒ムラや混合ムラが抑えられ、安定した造粒や混合が行われる。
【0047】
また、本実施形態に係る連続式粉体処理装置1において、送り羽根6Bは、複数の回転羽根6のうち処理容器2の入口2aの側に配置されている。
【0048】
処理容器2の入口2aでは、粉体の混合が十分に進んでいないことから、処理容器2内の他の場所と比較して粉体が処理容器2の壁に付着しやすい。よって、処理容器2の入口2aの近傍に配置された送り羽根6Bによって局所的に粉体の移動が促進されることによって、粉体の処理容器2の壁への付着が抑制される。
【0049】
処理容器2の入口2aの近傍では、処理容器2と供給管3との間隙に粉体が入り込まないように、この間隙を通じた圧縮空気の供給が行われる。混合が十分に進んでいない湿潤粉体は、含水量が不均等で、含水量が多い部分は付着しやすく、隙間からの空気の流出を阻害する。処理容器2の入口2aの近傍で混合が十分に進んでいない湿潤粉体の濃度が過剰に高くなると、上記間隙のシールが難しくなることから、供給量を増大させることが難しい。これに対し、処理容器2の入口2aの近傍に配置された送り羽根6Bによって局所的に粉体の移動が促進されれば、処理容器2の入口2aの近傍における粉体の滞留量を抑えられて、圧縮空気による上記間隙の良好なシールを維持することが可能となる。これにより、処理容器2への粉体の供給量を増大させることが可能となり、全体としての処理量を増加させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る連続式粉体処理装置1では、複数の標準羽根6Aの各々は第1羽根角θAを有し、送り羽根6Bは少なくとも根本部において第1羽根角θAよりも大きな第2羽根角θBを有する。
【0051】
このように、送り羽根6Bの羽根角を標準羽根6Aの羽根角よりも大きくすることで、送り羽根6Bが粉体へ与える送り力を標準羽根6Aが湿潤流体へ与える送り力よりも大きくしている。
【0052】
上記において、第2羽根角θBは、1°以上15°以下であることが好ましい。これにより、送り羽根6Bへの粉体の付着が抑制される範囲で、粉体に与える送り力を増大させることができる。
【0053】
また、上記実施形態の変形例に係る連続式粉体処理装置1Aでは、複数の回転羽根6は、送り方向Xと逆の戻り方向Yへ移動する戻り力を粉体に与える少なくとも1つの戻し羽根6Cを更に含む。
【0054】
回転する戻し羽根6Cが局所的に配置されて粉体に戻り力が与えられることによって、粉体の処理容器2での滞留時間を延ばすことができる。これにより、処理容器2での処理量が比較的少ない場合であっても、粉体を適切な滞留時間だけ処理容器2に留めておくことができるので、造粒不足や混合不足を抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態の変形例に係る連続式粉体処理装置1Aでは、戻し羽根6Cは、複数の回転羽根6のうち処理容器2の出口2bの側に配置されている。このように戻し羽根6Cが配置されることで、標準羽根6Aでの攪拌や解砕に与える影響を抑えつつ、粉体の処理容器2での滞留時間を効果的に延ばすことができる。なお、複数の回転羽根6が戻し羽根6Cを含む場合、送り羽根6Bが省略されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態の変形例に係る連続式粉体処理装置1Aでは、戻し羽根6Cの羽根角θCの大きさ(絶対値)は、送り羽根6Bの羽根角θBの大きさよりも小さい。
【0057】
これにより、1枚の戻し羽根6Cが粉体に与える戻し力よりも1枚の送り羽根6Bが粉体に与える送り力のほうが大きい。このようにして、送り力と戻し力とのバランスを図ることにより、処理容器2内の粉体を、より均一で、且つ、十分な滞留時間が確保できるように、移動させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る連続式粉体処理装置1,1Aにおいて、処理容器2は筒の中心軸20(軸心)を中心として回転するように構成されており、回転シャフト4の回転方向は、処理容器2の回転方向と同じであり、回転シャフト4の回転速度は、処理容器2の回転速度よりも速い。
【0059】
このように処理容器2が回転することによって粉体の流動が促進されて、処理容器2の内周面2cへの粉体の付着が抑制され、粉体の均一化が期待される。回転シャフト4の回転方向と処理容器2の回転方向は逆であってもよいが、その場合は粉体が処理容器2内の下部に貯まりやすい。これに対し、回転シャフト4の回転方向と処理容器2の回転方向が同じであれば、粉体が処理容器2内の下部に貯まり難くすることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る連続式粉体処理装置1,1Aにおいて、回転シャフト4の中心軸40は、処理容器2の中心軸20よりも下方に位置する。
【0061】
この構成によれば、回転羽根6の上方に空間が確保されるため、処理容器2の内周面2cに追従して持ち上がった粉体が回転羽根6の上方で処理容器2の内周面2cから剥離して落下したときに回転羽根6に衝突して解砕される。従って、回転シャフト4の中心軸40と処理容器2の中心軸20とが一致している場合に比べて、造粒効果や混合効果を向上させることができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び変形例)を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0063】
例えば、上記の連続式粉体処理装置1,1Aでは、処理容器2が回転するが、処理容器2は回転が固定されていてもよい。また、処理容器2が固定されている場合には、処理容器2と供給管3とが分離構成されて、処理容器2に上方に向けて開口した入口2aが設けられていてもよい。
【0064】
また、例えば、上記の連続式粉体処理装置1,1Aでは、処理容器2の中心軸20に対し回転シャフト4の中心軸40が偏心しているが、処理容器2の中心軸20に対し回転シャフト4の中心軸40とが同心状に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,1A :連続式粉体処理装置
2 :処理容器
2a :入口
2b :出口
3 :供給管
4 :回転シャフト
5 :スクリュー
6 :回転羽根
6A :標準羽根
6B :送り羽根
6C :戻し羽根
6b :ナイフエッジ
20 :中心軸
40 :中心軸
X :送り方向
Y :戻り方向