IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
  • 特開-空気入りタイヤ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089630
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20220609BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B60C11/03 Z
B60C11/03 B
B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202172
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 由彦
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC19
3D131BC33
3D131CB06
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB05V
3D131EB05X
3D131EB07U
3D131EB11V
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】ウェット性能を維持しつつ摩耗性能を向上する。
【解決手段】トレッド16には、センター主溝28Aと、その両側に位置する一対のショルダー主溝28B,28Cとの、3本の主溝が設けられている。接地端TE,TE間のトレッド表面16Aの面積SAに対する当該トレッド表面16A内の非接地部分の面積SBの比SB/SAであるボイド比VRが26.5~28.5%であり、各主溝28の溝深さDGが、各主溝28の溝下における複数の補強層の最外層26の外表面からトレッド表面16Aまでの距離DXの79~85%である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる主溝として、センター主溝と、前記センター主溝のタイヤ幅方向両側に位置する一対のショルダー主溝との、3本の主溝がトレッドに設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドにおける接地端間のトレッド表面の面積に対する当該接地端間のトレッド表面内の非接地部分の面積の比であるボイド比が26.5%以上28.5%以下であり、
前記3本の主溝の各溝深さが、各主溝の溝下における複数の補強層の最外層の外表面からトレッド表面までの距離の79%以上85%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記空気入りタイヤは車両への装着向きが指定され、前記トレッドの前記接地端間において、タイヤ赤道面よりも車両装着内側に位置する内側領域と、タイヤ赤道面よりも車両装着外側に位置する外側領域と、を備え、前記外側領域におけるボイド比が前記内側領域におけるボイド比よりも小さい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター主溝がタイヤ赤道面よりも車両装着内側に偏在している、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、湿潤路面での高いグリップ性能(即ち、ウェット性能)を付与することが求められており、例えばトレッド表面を形成するトレッドゴムのゴム配合によりウェット性能を向上することができる。
【0003】
なお、特許文献1,2には、トラックやバス等の重荷重用空気入りタイヤにおいて、トレッドに設けた主溝の溝深さと溝下のゴム厚さとの関係を規定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-059340号公報
【特許文献2】特開2017-071275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにトレッドゴム配合によりウェット性能を向上させた場合、一般的にその背反として摩耗性能が低下する。そのため、トレッドゴム配合により向上したウェット性能を維持しつつ、トレッドパターンにより摩耗性能を向上することが求められる。
【0006】
本発明の実施形態は、上記の点に鑑み、ウェット性能を維持しつつ摩耗性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる主溝として、センター主溝と、前記センター主溝のタイヤ幅方向両側に位置する一対のショルダー主溝との、3本の主溝がトレッドに設けられた空気入りタイヤにおいて、前記トレッドにおける接地端間のトレッド表面の面積に対する当該接地端間のトレッド表面内の非接地部分の面積の比であるボイド比が26.5%以上28.5%以下であり、前記3本の主溝の各溝深さが、各主溝の溝下における複数の補強層の最外層の外表面からトレッド表面までの距離の79%以上85%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態に係る空気入りタイヤによれば、そのトレッドパターンにおいてボイド比と主溝の溝深さ比を規定することにより、ウェット性能を維持しつつ摩耗性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図
図2】同空気入りタイヤの断面図
図3図2の一部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本明細書における各形状及び寸法等は、特に断らない限り、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤということがある。)を正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えばJATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【0012】
一実施形態に係る空気入りタイヤ10は、乗用車用タイヤであり、図2に示すように、リムに固定される左右一対のビード12,12と、該一対のビード12,12からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる左右一対のサイドウォール14,14と、該一対のサイドウォール14,14の間に跨がって延び接地面を構成するトレッド16とを有する。
【0013】
図中、符号CLは、タイヤ幅方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図において符号WDで示す。タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいい、図において符号CDで示す。
【0014】
本実施形態では、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができ、特に限定されない。図2に示す例では、空気入りタイヤ10は、一対のビードコア18,18と、該一対のビードコア18,18間に掛け渡されたカーカスプライ20と、カーカスプライ20のクラウン部のタイヤ半径方向RD外側に配置されたベルト22と、ベルト22の外周側に設けられたトレッドゴム24とを備える。
【0015】
ビードコア18は、ビードワイヤで構成されたタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード12に埋設されている。カーカスプライ20は、子午線方向に沿って配される繊維コードの配列体をトッピングゴムで被覆してなり、両端部がビードコア18の周りに折り返されて係止されている。ベルト22は、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜したベルトコードの配列体をトッピングゴムで被覆してなり、トレッド16におけるカーカスプライ20の外周側において複数層(図では2層)が設けられている。図2の例では、ベルト22の外周側に、タイヤ周方向に対して実質的に平行に延びる有機繊維コードを含むベルト補強層26が設けられている。本実施形態では、ベルト22とベルト補強層26を総称して「補強層」といい、「補強層の最外層」とは、図2の例ではベルト補強層26であるが、ベルト補強層26がない場合はベルト22の最外層である。
【0016】
図1及び図2において、符号TEは、トレッド16の接地端を示す。接地端TEは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド表面のタイヤ幅方向WDの最外位置を指す。正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えばJATMA規格における最大負荷能力、TRA規格における上記の表に記載の最大値、ETRTO規格における「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0017】
図1及び図2に示す空気入りタイヤ10は、車両への装着向きが指定されたタイヤであり、車両に装着する際に外側に装着される側面と内側に装着される側面とが指定されている。そのため、空気入りタイヤ10の例えばサイド部には、車両への装着向きを指定するための表示が設けられている。図中、符号OUTで示す側が車両装着姿勢において外側(車両装着外側)に向き、符号INで示す側が車両装着姿勢において内側(車両装着内側)に向くように、車両に装着される。
【0018】
図1及び図2に示すように、トレッド16の表面(即ち、トレッド表面16A)には、タイヤ周方向CDに延びる主溝28がタイヤ幅方向WDに間隔をおいて3本設けられている。詳細には、トレッド16におけるタイヤ幅方向WDの中央部に位置するセンター主溝28Aと、該センター主溝28Aのタイヤ幅方向WD両側に位置する一対のショルダー主溝28B,28Cとが設けられている。この例では、これらの主溝28は、いずれもタイヤ周方向CDに平行に延びるストレート状である。なお、主溝28は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ周方向溝である。
【0019】
トレッド16には3本の主溝28によって4つの陸部30が区画形成されている。すなわち、センター主溝28Aと一対のショルダー主溝28B,28Cとの間にそれぞれ挟まれた左右のセンター陸部30A,30Bと、ショルダー主溝28B,28Cのタイヤ幅方向WD外側に位置して接地端TEを含む左右のショルダー陸部30C,30Dが設けられている。
【0020】
各陸部30には、タイヤ周方向CDに対して交差する方向に延びる横溝32及び/又はサイプ34が設けられている。ここで、サイプ34とは、溝幅が1.5mm以下(好ましくは0.4~1.2mm)の細い溝をいう。横溝32とは、溝幅が1.5mmを超える(通常は溝幅2mm以上)溝をいう。
【0021】
この例では、車両装着内側INのセンター陸部30Aには、タイヤ幅方向WD外側のエッジから延びて当該センター陸部30A内で終端する第1横溝32Aと、タイヤ幅方向WD内側のエッジから延びて当該センター陸部30A内で終端する第1サイプ34Aが、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。第1横溝32Aのトレッド表面16Aへの開口部には逆テーパ状に広がる傾斜面33が設けられている。第1サイプ34Aのトレッド表面16Aへの開口部にも逆テーパ状に広がる傾斜面35が設けられている。
【0022】
車両装着外側OUTのセンター陸部30Bには、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びて当該センター陸部30Bを横断する第2サイプ34Bがタイヤ周方向CDに間隔をおいて設けられている。第2サイプ34Bは、トレッド表面16Aへの開口部に逆テーパ状に広がる傾斜面35が設けられたものと、当該傾斜面35が設けられていないものが、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。
【0023】
車両装着内側INのショルダー陸部30Cには、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びて、当該ショルダー陸部30Cを、少なくとも接地端TEまでの範囲で横断する、第2横溝32Bと第3サイプ34Cとが、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。第2横溝32Bは、ショルダー主溝28B側の端部がサイプとして形成されており、また、トレッド表面16Aへの開口部に逆テーパ状に広がる傾斜面33が設けられている。
【0024】
車両装着外側OUTのショルダー陸部30Dには、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びて当該ショルダー陸部30Dを横断する第3横溝32Cが、タイヤ周方向CDに間隔をおいて設けられている。第3横溝32Cは、ショルダー主溝28C側の端部がサイプとして形成されており、また、トレッド表面16Aへの開口部に逆テーパ状に広がる傾斜面33が設けられている。
【0025】
本実施形態では、トレッド表面16Aのボイド比が26.5%以上28.5%以下に設定されている。従来一般的なボイド比が33%程度であるのに対し、このようにボイド比を小さく設定することにより、接地圧を下げて摩耗しにくくすることができ、摩耗性能を向上させることができる。
【0026】
ここで、トレッド表面16Aのボイド比とは、両側の接地端TE,TE間のトレッド表面16Aの面積に対する、当該接地端TE,TE間のトレッド表面16A内の非接地部分の面積の比をいい、即ち、接地端TE,TE間の領域内に占める非接地部分の面積の比率である。詳細には、車両装着内側INの接地端TEから車両装着外側OUTの接地端TEまでのトレッド表面16Aの面積(タイヤ周方向CDの全周にわたる接地部分の面積と非接地部分の面積の総和)をSAとし、車両装着内側INの接地端TEから車両装着外側OUTの接地端TEまでのトレッド表面16Aにおける非接地部分の面積をSBとし、ボイド比をVRとして、VR=(SB/SA)×100で表される。ここで、非接地部分の面積は、主溝28、横溝32及びサイプ34の開口面積の総和であり、横溝32及びサイプ34の開口面積には上記傾斜面33,35により広げられた部分も含まれる。
【0027】
本実施形態では、また、3本の主溝28の各溝深さDGが、各主溝28の溝下における複数の補強層の最外層の外表面からトレッド表面16Aまでの距離DXの79%以上85%以下に設定されている。
【0028】
このように距離DXに対する溝深さDGの比(以下、この比を溝深さ比GRという。GR=(DG/DX)×100)を79%以上85%以下に設定しており、従来一般的な溝深さ比よりも大きく設定したことにより、トレッドゴム24の厚みを抑えながら、主溝28の溝深さDGを大きくすることができ、摩耗寿命を延長することができる。また、主溝28の溝深さDGが大きくなることで、ウェット性能が向上するため、ボイド比VRを小さく設定したことによるウェット性能の低下を抑えることができる。また、トレッドゴム24の厚みを抑えることできるため、タイヤ質量の増加による転がり抵抗の悪化を抑えることができる。よって、ボイド比VRの上記設定と相俟って、ウェット性能を維持しつつ、またタイヤ質量の増加を抑えながら、摩耗性能を向上することができる。溝深さ比GRは、より好ましくは80%以上84%以下である。
【0029】
ここで、主溝28の溝深さDGは、図3に示すように、主溝28の底部29から主溝28の開口面までのタイヤ半径方向RDにおける距離であり、TWI(トレッドウエアーインジケータ)が設けられた部位を除いた主溝28の最大深さをいう。溝深さDGの大きさは、タイヤサイズによっても異なるため、特に限定されず、例えば7~10mmでもよい。
【0030】
上記距離DXは、主溝28の直下にある補強層の最外層(この例ではベルト補強層26)の外表面からトレッド表面16A(主溝28の開口面)までのタイヤ半径方向RDにおける距離である。距離DXは、主溝28の溝底ゴム厚みをTGとして、DX=DG+TGで表される。ここで、溝底ゴム厚みTGは、主溝28の下方に存在するゴムのタイヤ半径方向RDにおける厚みであり、主溝28の底部29とその直下の補強層の最外層(この例ではベルト補強層26)の外表面とのタイヤ半径方向RDにおける距離である。
【0031】
この実施形態では、また、トレッド16の接地端TE,TE間において、タイヤ赤道面CLよりも車両装着内側INに位置する領域を内側領域36と、タイヤ赤道面CLよりも車両装着外側OUTに位置する領域を外側領域38としたとき、外側領域38におけるボイド比VR1が内側領域36におけるボイド比VR2よりも小さく設定されている(即ち、VR1<VR2)。
【0032】
このように車両装着外側OUTでボイド比を小さくすることより、次の作用効果が奏される。例えば、乗用車の中でもミニバン等のように車高の高い車両では旋回時にタイヤの車両装着外側に高荷重がかかりやすい。これに対し、上記のように車両装着外側OUTでのボイド比VR1を小さくすることにより、陸部の比率が大きくなるので、より広い面積で高荷重を分担することができ、接地圧を下げて摩耗しにくくすることができる。
【0033】
ここで、外側領域38のボイド比VR1とは、タイヤ赤道面CLから車両装着外側OUTの接地端TEまでの領域である外側領域38のトレッド表面16Aの面積に対する、当該外側領域38内の非接地部分の面積の比をいう。また、内側領域36のボイド比VR2とは、タイヤ赤道面CLから車両装着内側INの接地端TEまでの領域である内側領域36のトレッド表面16Aの面積に対する、当該内側領域36内の非接地部分の面積の比をいう。
【0034】
これらボイド比VR1,VR2の値は特に限定されないが、VR1は24%以上27%以下でもよく、25%以上26%以下でもよい。また、VR2は27%以上30%以下でもよく、28%以上29%以下でもよい。また、VR2とVR1の差(VR2-VR1)も特に限定されないが、2%以上6%以下でもよく、2%以上4%以下でもよい。
【0035】
この実施形態では、また、センター主溝28Aがタイヤ赤道面CLよりも車両装着内側INに偏在している。詳細には、センター主溝28Aは、その全体が内側領域36内に設けられており、外側領域38には存在していない。そのため、3本の主溝28は、内側領域36に2本存在し、外側領域38に1本存在することになるので、外側領域38のボイド比VR1をより効果的に小さくすることができる。
【0036】
なお、図1に示すトレッドパターンは好ましい一例にすぎず、本実施形態は、上記ボイド比VR及び溝深さ比GRを満足する種々のトレッドパターンに適用可能である。例えば、各陸部におけるサイプ及び横溝の配置等の構成、主溝の位置等の構成についても種々の変更が可能である。
【実施例0037】
実施形態に係るタイヤの性能改善効果を確認するために、実施例1~3および比較例1~3の空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:205/60R16 92H)を試作し、各タイヤを16×6.0のリムに装着し、内圧240kPaを充填してミニバンに装着し、ウェット性能と摩耗性能を評価した。
【0038】
各試作タイヤは、上記の図1で示すトレッドパターンを備えたものであり、主溝28の溝幅及び横溝32の溝幅等を変更することにより表1に示すとおりのボイド比VRに設定するとともに、トレッドゴム24の厚みは一定としたうえで主溝28の溝深さDGを変更することにより表1に示すとおりの溝深さ比GRに設定した。その他の構成については実施例1~3および比較例1~3について共通とした。
【0039】
各評価方法は以下の通りである。
・ウェット性能:水で濡れた周回路面を走行し、ドライバーによる官能評価によりハンドリング性を評価し、比較例1のタイヤのハンドリング性評価を100とした指数で表示した。数値が大きいほどウェット性能に優れることを示す。
・摩耗性能:タイヤローテーションなしで、アスファルト路を9000km走行した後の主溝の残溝深さを測定し、比較例1のタイヤの残溝深さを100とした指数で表示した。数値が大きいほど摩耗性能に優れることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
結果は表1に示す通りであり、ボイド比VRおよび溝深さ比GRが規定範囲外である比較例1に対して、ボイド比VRおよび溝深さ比GRがともに規定範囲内である実施例1~3であると、トレッドゴム配合による優れたウェット性能を維持ないし向上しながら、摩耗性能が向上していた。また、距離DXを一定としてドレッドゴム厚みを一定としたので、タイヤ質量も維持されていた。これに対し、比較例2では、溝深さ比GRを規定範囲内としたもののボイド比VRが規定範囲外であるため、摩耗性能の改善効果が不十分であった。比較例3では、ボイド比VRを規定範囲内としたものの溝深さ比GRが規定範囲外であるため、摩耗性能の改善効果が不十分であり、ウェット性能にも劣っていた。
【0042】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…空気入りタイヤ、16…トレッド、16A…トレッド表面、26…ベルト補強層、28…主溝、28A…センター主溝、28B,28C…ショルダー主溝、36…内側領域、38…外側領域、CL…タイヤ赤道面、CD…タイヤ周方向、WD…タイヤ幅方向、IN…車両装着内側、OUT…車両装着外側、TE…接地端、DG…溝深さ、DX…最外層の外表面からトレッド表面までの距離
図1
図2
図3