(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089633
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】タイヤ放射音の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20220609BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202175
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】辻井 政統
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC43
3D131BC44
3D131LA06
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】転動中のタイヤから発生する放射音への、タイヤ表面の振動の寄与を評価する。
【解決手段】静止中のタイヤ表面を音源位置からの音により音響加振したときの音源位置での音の信号と、音響加振により生じたタイヤ表面振動を振動測定位置において測定して得られた信号とから、前記音源位置での音とタイヤ表面振動との関係を求める工程と、タイヤを転動させ、転動中のタイヤ表面振動を振動測定位置で測定するとともに、転動中のタイヤからの放射音を音源位置で測定する工程と、転動中のタイヤ表面振動の信号と前記関係とから、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の音源位置での計算上の信号を求める工程と、音源位置で測定された転動中のタイヤからの放射音の信号と、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の音源位置での計算上の信号との比を求める工程とを含む、タイヤからの放射音の評価方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置で静止中のタイヤ表面を音源位置からの音により音響加振したときの前記音源位置での音圧のフーリエスペクトルQ(f)と、前記音響加振により生じたタイヤ表面振動を振動測定位置において測定したときの振動のフーリエスペクトルR(f)とから、タイヤ表面振動と前記音源位置との間の伝達関数
(Q(f)
*はQ(f)の複素共役)
を求める工程と、
前記所定位置でタイヤを転動させ、転動中のタイヤ表面振動を前記振動測定位置において測定したときの振動のフーリエスペクトルr(f)と、転動中のタイヤからの放射音を前記音源位置で測定したときの音圧のフーリエスペクトルq(f)とを求め、2つのフーリエスペクトルr(f)、q(f)のクロスパワースペクトル
(q(f)
*はq(f)の複素共役)
を求める工程と、
前記伝達関数H
QR(f)と前記クロスパワースペクトルC
qr(f)とから、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の前記音源位置での計算上の音圧のオートパワースペクトル
を求める工程と、
前記音源位置で測定された転動中のタイヤからの放射音の音圧のオートパワースペクトル
と、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の前記音源位置での計算上の前記オートパワースペクトルC
QQ(f)との周波数iのときの比
を求める工程と、
を含む、タイヤからの放射音の評価方法。
【請求項2】
前記音源位置に配置したスピーカからの音によりタイヤ表面を音響加振し、前記振動測定位置に配置した機器によりタイヤ表面振動を測定する、請求項1に記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ放射音の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、路面上で転動するタイヤからは放射音が発生する。放射音は車両の内外での騒音となるため、低減することが求められている。放射音の発生原因として、タイヤ表面(特にサイドウォール)の振動、タイヤのトレッドの溝での共鳴、タイヤと路面との接触や摩擦等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射音に対し有効な対策をするためには、上記のような発生原因がそれぞれ放射音にどの程度寄与しているかを明らかにする必要がある。しかしその方法は今まで確立されていなかった。
【0005】
そこで本発明は、転動中のタイヤから発生する放射音への、タイヤ表面の振動の寄与を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のタイヤ放射音の評価方法は、所定位置で静止中のタイヤ表面を音源位置からの音により音響加振したときの前記音源位置での音圧のフーリエスペクトルQ(f)と、前記音響加振により生じたタイヤ表面振動を振動測定位置において測定したときの振動のフーリエスペクトルR(f)とから、タイヤ表面振動と前記音源位置との間の伝達関数
(Q(f)
*はQ(f)の複素共役)
を求める工程と、前記所定位置でタイヤを転動させ、転動中のタイヤ表面振動を前記振動測定位置において測定したときの振動のフーリエスペクトルr(f)と、転動中のタイヤからの放射音を前記音源位置で測定したときの音圧のフーリエスペクトルq(f)とを求め、2つのフーリエスペクトルr(f)、q(f)のクロスパワースペクトル
(q(f)
*はq(f)の複素共役)
を求める工程と、前記伝達関数H
QR(f)と前記クロスパワースペクトルC
qr(f)とから、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の前記音源位置での計算上のオートパワースペクトル
を求める工程と、前記音源位置で測定された転動中のタイヤからの放射音の音圧のオートパワースペクトル
と、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の前記音源位置での計算上の前記オートパワースペクトルC
QQ(f)との周波数iのときの比
を求める工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
上記の評価方法によれば、転動中のタイヤから発生する放射音への、タイヤ表面の振動の寄与を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
1.測定器等の配置
本実施形態における空気入りタイヤ(以下「タイヤ」とする)及び機器等の配置について説明する。
図1に示すように、タイヤTの軸方向の場所に、音源位置Pと、振動測定位置Vとが設けられている。音源位置Pには音を発生させるスピーカ10が、振動測定位置Vには振動速度を測定するレーザードップラー振動計11が配置されている。また、音源位置Pには、スピーカ10と隣接させて、音圧を測定するマイクロホン12も配置されている。レーザードップラー振動計11及びマイクロホン12は、解析装置13に接続されている。またスピーカ10は制御装置14に接続されており、制御装置14の制御により音の発生を開始及び停止する。
【0010】
これらのタイヤ及び機器等は、無響室、半無響室又は遮蔽物の無い屋外に配置されている。従って本実施形態の方法は無響室、半無響室又は遮蔽物の無い屋外において行われる。
【0011】
スピーカ10の音の発生部及びレーザードップラー振動計11の検出部はタイヤTの方向を向いている。そのため、スピーカ10はタイヤTに向かって音を発生することとなり、レーザードップラー振動計11はタイヤTの表面(以下「タイヤ表面」とする)の振動速度を測定することとなる。なお、
図1は、スピーカ10の音の発生部及びレーザードップラー振動計11の検出部がサイドウォールSWの方向を向いている様子を示したものだが、これらの発生部及び検出部がタイヤTの別の部分の方向を向いていても良い。
【0012】
音源位置Pは振動測定位置VよりもタイヤTに近い。それにより、スピーカ10とタイヤTの間に障害物が無いこととなり、スピーカ10から発生した音が障害物の影響を受けることなくタイヤTに到達する。また、レーザードップラー振動計11の検出部にスピーカ10から発生した音が直接入ることがないため、レーザードップラー振動計11の検出部が揺れにくく正確な測定が可能となる。
【0013】
音源位置Pは、例えば、台上試験におけるいわゆるJASO点(タイヤ接地中心から1m離れた地点での、高さ25mmの位置)や、タイヤ単体騒音規制に係る国際基準(ECE R117-02)に定められた車外音測定時のマイクロホン位置とする。
【0014】
タイヤTは一般的な試験機に取り付けられている。試験機は回転路面Rを有しており、その回転路面R上にタイヤTが接地している。回転路面Rは制御装置14の制御により回転を開始及び停止する。回転路面Rが回転するとタイヤTが転動する。ただしタイヤTは転動中も定位置で転動し、前後へ移動はしない。回転路面Rは、樹脂路面、アスファルト路面、コンクリート路面等の中から適宜選択され、その表面粗さも適宜設定される。
【0015】
タイヤTは、所定のリムにリム組みされ、所定の内圧が付与され、所定の荷重が負荷されている。内圧や荷重の条件は限定されない。
【0016】
後述する第1測定では、回転路面Rは回転せず、タイヤTは静止状態で保持される。その状態でスピーカ10から音が発生すると、その音が静止状態のタイヤTに到達してタイヤ表面が振動する。つまりスピーカ10がタイヤ表面を音響加振する。その振動速度をレーザードップラー振動計11が測定する。また、マイクロホン12が、スピーカ10から発生する音の音圧を測定する。レーザードップラー振動計11及びマイクロホン12の測定データは解析装置13に送られる。
【0017】
また、後述する第2測定では、回転路面Rが回転し、タイヤTが転動する。タイヤTが転動するとタイヤ表面が振動する。タイヤ表面の振動の他、トレッドの溝での共鳴やタイヤTと回転路面Rとの接触や摩擦も原因となって、タイヤTから放射音が発生する。タイヤTからの放射音の音圧をマイクロホン12が測定し、タイヤ表面の振動速度をレーザードップラー振動計11が測定する。マイクロホン12及びレーザードップラー振動計11の測定データは解析装置13に送られる。
【0018】
なお、タイヤTは第1測定時も第2測定時も同じ所定位置(回転路面R上の位置)にある。また、レーザードップラー振動計11及びマイクロホン12のそれぞれの位置も、第1測定時と第2測定時とで変わらない。
【0019】
また、解析装置13は処理装置及び記憶装置を有しており、記憶装置に記憶されているプログラムを処理装置が読み込んで実行することにより本実施形態の計算を行う。
【0020】
2.タイヤ放射音の評価方法
図2に示すように本実施形態の方法は工程S1~S6を含む。
【0021】
工程S1は、静止中のタイヤTを音源位置Pのスピーカ10からの音で音響加振して、音源位置Pで音を測定すると共に振動測定位置Vでタイヤ表面振動を測定する第1測定の工程である。
【0022】
工程S2は、タイヤTを転動させてタイヤTからの放射音を音源位置Pで測定するとともにタイヤ表面振動を振動測定位置Vで測定する第2測定の工程である。
【0023】
工程S3は、第1測定で得られた音圧のフーリエスペクトル及びタイヤ表面振動のフーリエスペクトルから、音源位置Pでの音圧とタイヤ表面振動との関係を、伝達関数として求める工程である。
【0024】
工程S4は、第2測定で得られた音圧のフーリエスペクトルとタイヤ表面振動のフーリエスペクトルとに基づき、クロスパワースペクトルを求める工程である。
【0025】
工程S5は、工程S3で求まった伝達関数と工程S4で求まったクロスパワースペクトルとに基づき、第2測定時のタイヤ表面振動に起因する音圧の、音源位置Pでのオートパワースペクトルを求める工程である。
【0026】
工程S6は、第2測定時に測定された放射音の音圧のオートパワースペクトルと、工程S5で求まったオートパワースペクトルとに基づき、転動中のタイヤTから発生する放射音に対する転動中のタイヤ表面振動に起因する音の寄与率を求める工程である。
【0027】
以下では工程S1~S6について具体的に説明する。
【0028】
(1)工程S1
第1測定の工程S1では、制御装置14が、静止しているタイヤTに向かってスピーカ10から音を発生させる。スピーカ10からの音によってタイヤ表面が振動する。スピーカ10から音が発生しそれによってタイヤ表面が振動している間、マイクロホン12がスピーカ10から発生する音の音圧を測定し、それと並行して、レーザードップラー振動計11がタイヤ表面の振動速度を測定する。それぞれの測定データは解析装置13に送られる。
【0029】
(2)工程S2
第2測定の工程S2では、制御装置14が回転路面Rを回転させてタイヤTを転動させる。タイヤTが転動することによってタイヤTから放射音が発生し、またタイヤ表面が振動する。タイヤTが転動している間、マイクロホン12がタイヤTからの放射音の音圧を測定し、それと並行して、レーザードップラー振動計11がタイヤ表面の振動速度を測定する。それぞれの測定データは解析装置13に送られる。
【0030】
(3)工程S3
伝達関数を求める工程S3では、まず、解析装置13が、第1測定時にレーザードップラー振動計11で測定したタイヤ表面の振動速度のフーリエスペクトルR(f)と、第1測定時にマイクロホン12で測定した音圧のフーリエスペクトルQ(f)を求める。なおfは周波数である。次に、解析装置13は、伝達関数HQR(f)を次のように求める。
【0031】
【数1】
ここで、Q(f)
*はQ(f)の複素共役である。また、C
QQ(f)はマイクロホン12で測定した音圧のオートパワースペクトルで、C
QR(f)は前記振動速度の前記音圧に対するクロスパワースペクトルである。ただしここでのオートパワースペクトルやクロスパワースペクトルは第1測定時のものである。
【0032】
このようにして求まる伝達関数HQR(f)は、式(I)からわかるように、音源位置Pで測定される音圧と、振動測定位置Vで測定されるタイヤ表面の振動速度との関係を表している。
【0033】
式(I)からわかるように、伝達関数HQR(f)には、レーザードップラー振動計11で測定したタイヤ表面の振動速度と、マイクロホン12で測定した音圧との、位相関係の情報が含まれている。
【0034】
(4)工程S4
次の工程S4では、解析装置13が、第2測定時に測定されたタイヤ表面の振動速度のフーリエスペクトルr(f)と、第2測定時にマイクロホン12で測定した音圧のフーリエスペクトルq(f)を求める。次に、解析装置13は、これらのフーリエスペクトルr(f)、q(f)のクロスパワースペクトルCqr(f)を次のように求める。
【0035】
【数2】
ここで、q(f)
*はq(f)の複素共役である。
【0036】
(5)工程S5
次の工程S5では、解析装置13が、工程S3で求めた伝達関数HQR(f)と、工程S4で求めたクロスパワースペクトルCqr(f)とから、第2測定時(タイヤTの転動中)のタイヤ表面の振動に起因する音圧の音源位置PでのオートパワースペクトルCQQ(f)を求める。具体的には、解析装置13は、次の式によりオートパワースペクトルCQQ(f)を求める。
【0037】
【数3】
なお、この工程S5で求まるオートパワースペクトルC
QQ(f)は、タイヤTの転動中のタイヤ表面の振動に起因する音圧のオートパワースペクトルなので、式(I)に記載のオートパワースペクトルC
QQ(f)(すなわち、静止中のタイヤTを音響加振したときの音のオートパワースペクトル)と大きさが異なる。しかし、式(I)と式(III)のオートパワースペクトルC
QQ(f)は、タイヤ表面の振動と関係する、音源位置Pでの音圧のオートパワースペクトルであるという点で同じである。
【0038】
また、上記の通り伝達関数HQR(f)には、第1測定時にレーザードップラー振動計11で測定したタイヤ表面の振動速度と、マイクロホン12で測定した音圧との、位相関係の情報が含まれているので、式(III)で求まるオートパワースペクトルCQQ(f)はその位相関係が反映されたものとなる。
【0039】
(5)工程S6
次の工程S6では、まず解析装置13が、第2測定時(タイヤTの転動中)に音源位置Pで測定された、タイヤTからの放射音の音圧のオートパワースペクトルCqq(f)を求める。このオートパワースペクトルCqq(f)は、第2測定時に音源位置Pで測定された音圧のフーリエスペクトルq(f)とその複素共役q(f)*とを用いて次のように求められる。
【0040】
【数4】
このオートパワースペクトルC
qq(f)は、タイヤ表面の振動に起因する音と、それ以外のことに起因する音とが合わさった音圧のオートパワースペクトルである。
【0041】
次に解析装置13は、特定の周波数iについて、工程S5で求まったオートパワースペクトルCQQ(f)(すなわち、転動中のタイヤ表面の振動から生じる音圧の計算上のオートパワースペクトルCQQ(f))の、タイヤTの転動中に実測された音圧の上記のオートパワースペクトルCqq(f)に対する比を求める。すなわち、解析装置13は、特定の周波数iについて次のσiを求める。
【0042】
【数5】
ここで、上記の通りC
QQ(f)には測定データの位相関係が反映されているので、σiにもその位相関係が反映されている。
【0043】
解析装置13は、1又は複数の周波数iについて、このようなσiを求める。このようにして求まったσiは、転動中のタイヤTから発生する周波数iの放射音における、タイヤ表面振動に起因する周波数iの音の寄与率を表している。
【0044】
3.実施形態の効果
以上のように、工程S1及び工程S3により、静止中のタイヤ表面を音源位置Pからの音により音響加振したときの音源位置Pでの音圧のフーリエスペクトルQ(f)と、音響加振により生じたタイヤ表面振動を振動測定位置Vにおいて測定して得られたフーリエスペクトルR(f)とに基づき、音源位置Pでの音圧と、振動測定位置Vで測定されたタイヤ表面振動との関係として、伝達関数HQR(f)を求めることができる。
【0045】
また工程S1とは別に、転動中のタイヤ表面振動を振動測定位置Vで測定するとともに、転動中のタイヤTからの放射音を音源位置Pで測定する工程S2を実施する。その結果を利用して、工程S4により、タイヤ転動中に振動測定位置Vで測定されたタイヤ表面振動のフーリエスペクトルr(f)と、音源位置Pで測定された音圧のフーリエスペクトルq(f)との、クロスパワースペクトルCqr(f)を求めることができる。
【0046】
さらに、工程S5により、工程S3で求めた伝達関数HQR(f)と、工程S4で求めたクロスパワースペクトルCqr(f)とから、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の音源位置Pでの計算上の音圧のオートパワースペクトルCQQ(f)を求めることができる。
【0047】
そして、工程S6により、音源位置Pで測定された転動中のタイヤTからの放射音の音圧のオートパワースペクトルCqq(f)と、転動中のタイヤ表面振動に起因する音の音源位置Pでの計算上のCQQ(f)との比σiを求めることができる。その比σiは、転動中のタイヤTから発生する放射音における、タイヤ表面振動に起因する音の寄与率である。
【0048】
このようにして、転動中のタイヤTから発生する放射音への、タイヤ表面の振動の寄与を評価することができる。このような評価をすることができれば、転動するタイヤTから発生する放射音に対し有効な対策することができる。
【0049】
また、比σiが求まるまでの式(I)~式(V)において、測定データの位相が反映されているため、転動中のタイヤTから発生する放射音への、タイヤ表面の振動の寄与を、正確に評価することができる。
【0050】
4.変更例
上記実施形態に対する複数の変更例について説明する。上記実施形態に対して、複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、複数の変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。また、以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0051】
(1)変更例1
第1測定の工程S1は、コンピュータを用いたシミュレーションに置き換えても良い。すなわち、音源からの音でタイヤモデルを振動させ、その振動の加速度等を取得するシミュレーションを行っても良い。その結果を用いて工程S3と同様に伝達関数を求めることができる。
【0052】
(2)変更例2
タイヤ表面の振動を測定する手段は、上記のレーザードップラー振動計11に限定されない。タイヤ表面の振動を測定する手段としては、それぞれ接触式又は非接触式の変位計、速度計、加速度計等が使用できる。例えばタイヤ表面に加速度計を固定することにより、タイヤ表面の振動を測定しても良い。
【0053】
(3)変更例3
タイヤTを車体に取り付けた状態で上記の第1測定及び第2測定を行っても良い。
【0054】
(4)変更例4
第1測定時にスピーカ10から発生する音の測定や、第2測定時にタイヤTから発生する放射音の測定として、音圧の測定の代わりに粒子速度の測定を行っても良い。
【0055】
(5)変更例5
第1測定時に、スピーカ10から音を発生させマイクロホン12で音の音圧を測定する代わりに、スピーカ10の前方に体積既知の粒子速度計を配置し体積速度を測定しても良い。
【符号の説明】
【0056】
R…回転路面、T…タイヤ、SW…サイドウォール、P…音源位置、V…振動測定位置、10…スピーカ、11…レーザードップラー振動計、12…マイクロホン、13…解析装置、14…制御装置