(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089638
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】連続式粉体処理装置
(51)【国際特許分類】
B01F 29/64 20220101AFI20220609BHJP
B01J 2/12 20060101ALI20220609BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20220609BHJP
【FI】
B01F9/08
B01J2/12
B01F15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202188
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 明紀
【テーマコード(参考)】
4G004
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4G004HA01
4G004HA02
4G004HA04
4G036AA04
4G036AA05
4G037AA05
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】回転容器を含む連続式粉体処理装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る、粉体の混合または湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置1は、横向きに延びる筒状の回転容器2と、回転容器2内に配置された回転シャフト4を含む。回転容器2内では回転シャフト4に複数の羽根6が取り付けられている。各羽根6には、粉体または湿潤粉体へ回転容器2の一方の開口2aから他方の開口2bへ向かう送り力を付与するナイフエッジが形成されている。回転容器2の内周面2cには、回転容器2の一方の開口2aから他方の開口2bへ向かって延びる少なくとも1つの凸条部8が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の混合または湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置であって、
横向きに延びる筒状の回転容器と、
前記回転容器内に配置された、前記回転容器の軸方向に延びる回転シャフトと、
前記回転容器内で前記回転シャフトに取り付けられた複数の羽根であって、各々に前記粉体または前記湿潤粉体へ前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かう送り力を付与するナイフエッジが形成された羽根と、を備え、
前記回転容器の内周面には、前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かって延びる少なくとも1つの凸条部が設けられている、連続式粉体処理装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの凸条部は、前記回転容器の一方の開口側の第1端部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜している、請求項1に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凸条部は、前記回転容器の一方の開口側の第1端部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の後方側に傾斜している、請求項1に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの凸条部は、当該凸条部の中央部から前記回転容器の一方の開口側の第1端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜しており、前記凸条部の中央部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜している、請求項1に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの凸条部は、当該凸条部の長手方向に並ぶ複数の線状突起で構成されている、請求項1~4の何れか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項6】
前記回転容器の一方の開口と嵌合する、前記回転容器の内部と連通する供給穴が設けられた静止部材をさらに備え、
前記供給穴は、前記回転シャフトの中心軸に沿って延びており、
前記回転シャフトは、前記供給穴内にも配置されており、
前記供給穴内では前記回転シャフトにスクリューが取り付けられている、請求項1~5の何れか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項7】
前記回転シャフトの回転方向は、前記回転容器の回転方向と同じであり、
前記回転シャフトの回転速度は、前記回転容器の回転速度よりも速い、請求項1~6の何れか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項8】
前記回転シャフトの中心軸は、前記回転容器の中心軸よりも下方に位置する、請求項1~7の何れか一項に記載の連続式粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の混合または湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば医薬品、化学薬品、食品などの分野では、複数種類の粉体を混合し、その混合粉体を湿潤させた湿潤粉体から顆粒を製造することが行われている。粉体はそのままではハンドリングが困難であるため、顆粒とすることでハンドリング性を向上させることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置(特許文献1では、「連続式撹拌処理装置」と称呼)が開示されている。このような連続式粉体処理装置は、複数種類の粉体の混合のみに用いることも可能である。
【0004】
具体的に、特許文献1の連続式粉体処理装置は、横方向に延びる筒状であって固定式の処理容器と、処理容器内に配置された、複数の羽根が取り付けられた回転シャフトを含む。処理容器には、一端部に供給口が設けられ、この供給口に粉体が投入される。この粉体の投入には、スクリューフィーダが用いられる。
【0005】
また、処理容器内には、湿潤粉体を処理容器の軸方向に移動させるための複数のスクレーパ(特許文献1では、「掻き取り羽根」と称呼)が配置されている。各スクレーパは、処理容器の軸方向に対して傾斜しており、回転シャフト回りに回転する。
【0006】
特許文献1には、粉体を湿潤させるための処理液の添加が処理容器の内部と外部のどちらで行われてもよいことが記載されている。また、特許文献1には、処理容器を回転させてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、処理容器を回転させるときに連続式粉体処理装置をどのように構成すべきか記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、回転容器を含む連続式粉体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の連続式粉体処理装置は、粉体の混合または湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置であって、横向きに延びる筒状の回転容器と、前記回転容器内に配置された、前記回転容器の軸方向に延びる回転シャフトと、前記回転容器内で前記回転シャフトに取り付けられた複数の羽根であって、各々に前記粉体または前記湿潤粉体へ前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かう送り力を付与するナイフエッジが形成された羽根と、を備え、前記回転容器の内周面には、前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かって延びる少なくとも1つの凸条部が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、連続式粉体処理装置が湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる場合、回転容器内に湿潤粉体が供給されるか、回転容器内に供給された粉体が回転容器内で湿潤される。回転容器内では、回転容器が回転することによって湿潤粉体が流動させられるとともに、羽根が回転シャフトと共に回転することによって湿潤粉体が混合および解砕されながら回転容器の他方の開口に向かって移動させられる。これにより顆粒が製造され、製造された顆粒が回転容器の他方の開口から排出される。
【0012】
一方、連続式粉体処理装置が粉体の混合に用いられる場合、回転容器内に複数種類の粉体が供給される。回転容器内では、回転容器が回転することによって粉体が流動させられるとともに、羽根が回転シャフトと共に回転することによって粉体が混合および解砕されながら回転容器の他方の開口に向かって移動させられ、混合粉体が回転容器の他方の開口から排出される。
【0013】
しかも、回転容器の内周面には凸条部が設けられているので、その凸条部によって粉体または湿潤粉体が掻き上げられる。従って、粉体または湿潤粉体が回転容器の内周面に対して滑り易く、内周面に追従して持ち上がり難い場合であっても、粉体または湿潤粉体を良好に流動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転容器を含む連続式粉体処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る連続式粉体処理装置の縦断面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った横断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿った正面断面図である。
【
図5】(a)は羽根の正面図、(b)はスペーサの正面図である。
【
図6】(a)は第1実施形態で用いられる回転容器の正面図、(b)は(a)のVIB-VIB線に沿った断面図である。
【
図7】(a)は第1変形例の回転容器の正面図、(b)は(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
【
図8】(a)は第2変形例の回転容器の正面図、(b)は(a)のVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。
【
図9】(a)は第3変形例の回転容器の正面図、(b)は(a)のIXB-IXB線に沿った断面図である。
【
図10】(a)は第4変形例の回転容器の正面図、(b)は(a)のXB-XB線に沿った断面図である。
【
図11】(a)は第5変形例の回転容器の正面図、(b)は(a)のXIB-XIB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および
図2に、本発明の一実施形態に係る連続式粉体処理装置1を示す。本実施形態では、連続式粉体処理装置1が湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる。例えば、湿潤前の粉体(一般的に、複数種類の粉体の混合体)の平均粒径は30~70μmであり、顆粒の平均粒径は80~250μmである。
【0017】
具体的に、連続式粉体処理装置1は、横向きに延びる筒状の回転容器2と、回転容器2を回転可能に支持するフレーム11を含む。フレーム11は、回転容器2の側方に位置するベース11aと、ベース11aから突出する一対のアーム11b,11cを含む。アーム11b,11cは、ベアリング21,22を介して回転容器2を回転可能に支持する。
【0018】
フレーム11のベース11aには、回転容器2を回転させる電動機71が取り付けられている。電動機71の出力シャフトおよび回転容器2の外周面には、ベベルギヤ72,73がそれぞれ設けられており、それらのベベルギヤ72,73が互いに噛み合っている。
【0019】
回転容器2は、一方の開口である入口側開口2aと、他方の開口である出口側開口2bを有する。入口側開口2aは回転容器2の内周面2cの入口側端部で形成され、出口側開口2bは内周面2cの出口側端部で形成されている。本実施形態では、回転容器2の内周面2cの入口側端部が径方向内向きに張り出しており、入口側開口2aの直径が出口側開口2bの直径よりも小さい。すなわち、回転容器2の内周面2cは、入口側端部以外では、一定の直径Dの円筒面である。
【0020】
さらに、連続式粉体処理装置1は、回転容器2の入口側開口2aと嵌合する静止部材3と、
図3中に破線で示すように回転容器2内に配置された回転シャフト4を含む。回転シャフト4は、回転容器2の軸方向に延びている。
【0021】
静止部材3には、回転容器2の内部と連通する円筒状の供給穴3aが設けられている。供給穴3a内には、スクリュー5が配置されている。本実施形態では、供給穴3aが回転シャフト4の中心軸40(
図3参照)に沿って延びており、回転シャフト4が供給穴3a内にも配置されている。そして、スクリュー5が回転シャフト4に取り付けられている。
【0022】
フレーム11のベース11aにはサポート16が固定されており、このサポート16に、回転シャフト4を回転させる電動機75が取り付けられている。
【0023】
さらに、フレーム11のアーム11bには、ベアリング21およびその内側を覆う第1閉塞部材12が固定されており、アーム11cには、ベアリング22およびその内側を覆う第2閉塞部材13が固定されている。本実施形態では、第1閉塞部材12が円盤状であり、静止部材3と一体となっている。第2閉塞部材13は環状であり、回転容器2に貫通されている。また、フレーム11のアーム11b,11cには、それらの間の空間を覆うカバー15が取り付けられている。
【0024】
回転容器2内では顆粒が製造され、その顆粒は出口側開口2bから排出される。第2閉塞部材13には、回転容器2の出口側開口2bから排出される顆粒を案内するシュート14が取り付けられている。
【0025】
次に、
図3および
図4を参照して、回転容器2内およびその回りの構造を詳細に説明する。
【0026】
本実施形態では、回転容器2の中心軸20が水平方向と平行である。ただし、回転容器2の中心軸20は、入口側開口2aから出口側開口2bへ向かって下向きに傾斜してもよいし、上向きに傾斜してもよい。このように回転容器2の中心軸20を傾斜させることで、回転容器2内での湿潤粉体の滞留時間を調整することができる。
【0027】
また、本実施形態では、回転シャフト4の中心軸40が回転容器2の中心軸20よりも下方に位置している。例えば、回転容器2の中心軸20に対する回転シャフト4の中心軸40の偏心量eは、回転容器2の内周面2cの直径Dの1/6~1/12である。
【0028】
さらに、本実施形態では、回転シャフト4の回転方向が回転容器2の回転方向と同じであるとともに、回転シャフト4の回転速度が回転容器2の回転速度よりも速い。回転シャフト4の回転速度は、後述する羽根6の先端での周速が5~13m/s程度となるように設定され、回転容器2の回転速度は、回転容器2の内周面2cでの周速が0.5~1m/s程度となるように設定される。
【0029】
静止部材3は、回転容器2の入口側開口2aと嵌合する偏心部31と、偏心部31よりも回転容器2から遠くに位置する管部32を含む。上述した供給穴3aは、偏心部31と管部32とに跨って設けられている。
【0030】
偏心部31の輪郭は円形である。偏心部31の中心は回転容器2の中心と一致しており、管部32の中心(供給穴3aの中心でもある)は回転シャフト4の中心と一致している。静止部材3は、単一の部品であってもよいし、複数の部品に分割されてもよい。
【0031】
偏心部31の管部32側の端部には、第1閉塞部材12が接合されている。第1閉塞部材12と回転容器2の入口側端面との間の空間には、当該空間へ回転容器2の入口側開口2aと偏心部31との間の隙間を通じて粉体または湿潤粉体が流入するのを防止するために、図略の圧縮機から圧縮空気が導入される。この圧縮空気は、回転容器2の入口側開口2aと偏心部31との間の隙間を通じて回転容器2の内部へ流出する。
【0032】
静止部材3の管部32には、上向きに開口する投入口3bが設けられている。この投入口3bにホッパー35が接続されている。本実施形態では、ホッパー35に、処理液が添加されて湿潤された湿潤粉体が投入される。
【0033】
本実施形態では、供給穴3a内および回転容器2内における回転シャフト4の断面形状が正方形状である。ただし、回転シャフト4の形状はこれに限られるものではない。
【0034】
供給穴3a内で回転シャフト4に取り付けられるスクリュー5は、回転シャフト4に挿通される中心管51と、中心管51の外周面に設けられた螺旋状のスクリュー羽根52を含む。スクリュー5の長さは、供給穴3aの長さと同程度である。上述したように、供給穴3a内の回転シャフト4の断面形状が正方形状であるため、中心管51の内周面の断面形状も正方形状である。
【0035】
回転容器2内では、回転シャフト4に複数の羽根6が取り付けられている。本実施形態では、各羽根6が、
図5(a)に示すように、回転シャフト4が挿通される貫通穴6aが形成された板状である。ただし、各羽根6の形状はこれに限られるものではない。
【0036】
より詳しくは、各羽根6は、略菱形状の形状を有し、その中央に貫通穴6aが形成されている。すなわち、各羽根6は、貫通穴6aから互いに反対向きに突出する一対の刃部を有する。上述したように、回転容器2内の回転シャフト4の断面形状が正方形状であるため、貫通穴6aも正方形状である。
【0037】
また、各羽根6の各刃部には、回転方向に向かって尖るようにナイフエッジ6bが形成されている。ナイフエッジ6bは、回転方向に向かって、入口側開口2aへ近づく(出口側開口2bから遠ざかる)ように傾斜している。このため、羽根6が回転すると、ナイフエッジ6bによって、湿潤粉体へ回転容器2の入口側開口2aから出口側開口2bへ向かう送り力が付与される。
【0038】
各羽根6の長さLは、各羽根6と回転容器2の内周面2cとの最短距離(回転容器2の中心軸20の真下でのクリアランス)が数ミリ(例えば、1~5mm)程度となるように設定される。
【0039】
図3および
図4に示すように、羽根6は、向きが交互に90度変わるように回転シャフト4に取り付けられる。隣り合う羽根6の間には、スペーサリング61が配置されている。各スペーサリング61は、
図5(b)に示すように、羽根6の貫通穴6aと同様の正方形状の貫通穴61aを有し、回転シャフト4に挿通される。回転シャフト4の先端には、保持部材62が取り付けられている。
【0040】
図6(a)および(b)に示すように、回転容器2の内周面2cには、入口側開口2aから出口側開口2bへ向かって延びる少なくとも1つの凸条部8が設けられている。本実施形態では、6つの凸条部8が等角度間隔で設けられている。ただし、凸条部8の数は適宜変更可能である。
【0041】
各凸条部8は、本実施形態では、回転容器2の内周面2cにおける一定の直径Dの部分の全長に亘って、回転容器2の軸方向と平行に延びている。つまり、各凸条部8における入口側開口2a側の第1端部8aは内周面2cの段差面に接しており、出口側開口2b側の第2端部8bは回転容器2の出口側端面と面一である。
【0042】
各凸条部8の断面形状は、本実施形態では矩形状であるが、三角形状または台形状であってもよい。また、各凸条部8の長さは、必ずしも回転容器2の内周面2cにおける一定の直径Dの部分の長さと等しい必要はなく、それよりも短くてもよい。
【0043】
各凸条部8の高さは、当該凸条部8が羽根6と干渉しないように設定される。例えば、各凸条部8の高さは、5mm以下(例えば、1~3mm程度)である。
【0044】
以上説明した構成の連続式粉体処理装置1では、湿潤粉体がホッパー35および投入口3bを通じて供給穴3a内へ投入されると、その湿潤粉体はスクリュー5によって回転容器2内へ供給される。回転容器2内では、回転容器2が回転することによって湿潤粉体が流動させられるとともに、羽根6が回転シャフト4と共に回転することによって湿潤粉体が混合および解砕されながら回転容器2の出口側開口2bに向かって移動させられる。これにより顆粒が製造され、製造された顆粒が回転容器2の出口側開口2bから排出される。
【0045】
しかも、回転容器2の内周面2cには凸条部8が設けられているので、その凸条部8によって湿潤粉体が掻き上げられる。従って、湿潤粉体が回転容器2の内周面2cに対して滑り易く、内周面2cに追従して持ち上がり難い場合であっても、湿潤粉体を良好に流動させることができる。なお、湿潤粉体が回転容器2の内周面2cに対して滑り易い要因としては、粉体の比重が小さいことや湿潤粉体中の処理液の量が少ないことによる摩擦の小ささがある。
【0046】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、回転容器2の内周面2cに設けられる凸条部8は、必ずしも回転容器2の軸方向と平行である必要はない。例えば、
図7(a)および(b)に示す第1変形例の回転容器2Aのように、各凸条部8は、第1端部8aから第2端部8bへ向かって回転容器2の回転方向の前方側に(換言すれば、回転方向に倒れるように)傾斜してもよい。この構成であれば、回転容器2内での湿潤粉体の滞留時間をある程度長く確保することができる。これにより、製造される顆粒の粒子径を均質化することができる。
【0048】
あるいは、
図8(a)および(b)に示す第2変形例の回転容器2Bのように、各凸条部8は、第1端部か8aから第2端部8bへ向かって回転容器2の回転方向の後方側に(換言すれば、回転方向と逆方向に倒れるように)傾斜してもよい。この構成であれば、凸条部8によって湿潤粉体を回転容器2の出口側開口2bへ向かって送り出すことができる。これにより、供給穴3aの近傍に、処理液との混合状態が不十分な湿潤粉体が溜まり難くすることができる。
【0049】
第1変形例および第2変形例において、回転容器2の軸方向に対する各凸条部8の傾斜角度θは、例えば、45度以下である。望ましくは、各凸条部8の傾斜角度θは、5度以上35度以下である。
【0050】
さらには、
図9(a)および(b)に示す第3変形例の回転容器2Cのように、各凸条部8は、中央部8cから第1端部8aへ向かって回転容器2の回転方向の前方側に傾斜するとともに、中央部8cから第2端部8bへ向かって回転容器2の回転方向の前方側に傾斜してもよい。この構成であれば、凸条部8の中央部8cよりも入口側では凸条部8によって湿潤粉体を回転容器2の出口側開口2bへ向かって送り出すことができ、凸条部8の中央部8cよりも出口側では回転容器2内での湿潤粉体の滞留時間をある程度長く確保することができる。
【0051】
第3変形例において、回転容器2の軸方向に対する各凸条部8の入口側部分の傾斜角度αおよび出口側部分の傾斜角度βは、例えば、45度以下である。望ましくは、各凸条部8の入口側部分の傾斜角度αおよび出口側部分の傾斜角度βは、5度以上35度以下である。また、各凸条部8の出口側部分の傾斜角度βは、入口側部分の傾斜角度α以下であることが望ましい。
【0052】
また、各凸条部8は、
図6(a)~
図9(b)に示すように必ずしも連続している必要はない。例えば、
図10(a)および(b)に示す第4変形例の回転容器2Dのように、各凸条部8は、当該凸条部8の長手方向に並ぶ複数の線状突起81で構成されてもよい。各凸条部8が複数の線状突起81で構成される場合も、各凸条部8は回転容器2の軸方向と平行であってもよいし、
図7(b)および
図8(b)または
図9(b)に示すように全体的にまたは部分的に傾斜してもよい。
【0053】
図10(a)および(b)では、全ての凸条部8で、回転容器2の軸方向における線状突起81の位置が同じであるが、
図11(a)および(b)に示す第5変形例の回転容器2Cのように、隣り合う凸条部8で、回転容器2の軸方向における線状突起81の位置がずれていてもよい。
【0054】
さらに、ホッパー35には、乾燥した粉体が投入されてもよい。この場合、粉体がホッパー35および投入口3bを通じて供給穴3a内へ投入され、その粉体がスクリュー5によって回転容器2内へ供給される。回転容器2内では、粉体に処理液が添加され粉体が湿潤される。すなわち、図示は省略するが、回転容器2内には、処理液を噴射するノズルが設けられる。
【0055】
あるいは、供給穴3a内にスクリュー5が配置される代わりに、静止部材3を回転容器2内に位置するような板状とし、その静止部材3に、回転シャフト4用の挿通穴を設けるとともに、その挿通穴よりも上方に供給穴3aを設けてもよい。この場合、供給穴3aの形状を矩形状とし、供給穴3aにホッパー35を直接接続してもよい。ただし、前記実施形態のように供給穴3a内に回転シャフト4が配置され、この回転シャフト4にスクリュー5が取り付けられていれば、湿潤粉体または粉体を回転容器2内へ安定的に供給することができる。
【0056】
また、回転シャフト4の回転方向は回転容器2の回転方向と逆であってもよいが、その場合は湿潤粉体が回転容器2内の下部に貯まりやすい。これに対し、前記実施形態のように回転シャフト4の回転方向と回転容器2の回転方向が同じであれば、湿潤粉体が回転容器2内の下部に貯まり難くすることができる。
【0057】
回転シャフト4の中心軸40は、必ずしも回転容器2の中心軸20の下方に位置している必要はなく、それらの中心軸40,20が一致してもよい。ただし、
図3に示すように回転シャフト4の中心軸40が回転容器2の中心軸20の下方に位置すれば、羽根6の上方に空間が確保されるため、回転容器2の内周面2cに追従して持ち上がった湿潤粉体が羽根6の上方で回転容器2の内周面2cから剥離して落下したときに羽根6に衝突して解砕される。従って、回転シャフト4の中心軸40と回転容器2の中心軸20とが一致している場合に比べて、造粒効果を向上させることができる。
【0058】
また、回転容器2の駆動機構および回転シャフト4の駆動機構も適宜変更可能である。例えば、回転容器2および/または回転シャフト4をベルトを用いて回転させてもよい。
【0059】
連続式粉体処理装置1は、複数種類の粉体の混合に用いられてもよい。この場合、回転容器2内では粉体が湿潤されず、羽根6のナイフエッジ6bによって、粉体へ回転容器2の入口側開口2aから出口側開口2bへ向かう送り力が付与される。
【0060】
連続式粉体処理装置1が複数種類の粉体の混合に用いられる場合、粉体がホッパー35および投入口3bを通じて供給穴3a内へ投入されると、その粉体はスクリュー5によって回転容器2内へ供給される。回転容器2内では、回転容器2が回転することによって粉体が流動させられるとともに、羽根6が回転シャフト4と共に回転することによって粉体が混合および解砕されながら回転容器2の出口側開口2bに向かって移動させられ、混合粉体が回転容器2の出口側開口2bから排出される。
【0061】
連続式粉体処理装置1が複数種類の粉体の混合に用いられる場合でも、回転容器2の内周面2cには凸条部8が設けられているので、その凸条部8によって粉体が掻き上げられる。従って、粉体が回転容器2の内周面2cに対して滑り易く、内周面2cに追従して持ち上がり難い場合であっても、粉体を良好に流動させることができる。なお、粉体が回転容器2の内周面2cに対して滑り易い要因としては、粉体の比重が小さいことによる摩擦の小ささがある。
【0062】
また、連続式粉体処理装置1が複数種類の粉体の混合に用いられる場合でも、回転シャフト4の回転方向と回転容器2の回転方向が同じであれば、粉体が回転容器2内の下部に貯まり難くすることができる。
【0063】
さらに、連続式粉体処理装置1が複数種類の粉体の混合に用いられる場合でも、回転シャフト4の中心軸40が回転容器2の中心軸20よりも下方に位置すれば、羽根6の上方に空間が確保されるため、回転容器2の内周面に追従して持ち上がった粉体が羽根6の上方で回転容器2の内周面から剥離して落下したときに羽根6に衝突して解砕される。従って、回転シャフト4の中心軸40と回転容器2の中心軸20とが一致している場合に比べて、混合効果を向上させることができる。
【0064】
また、連続式粉体処理装置1が複数種類の粉体の混合に用いられる場合でも、
図8(a)および(b)に示す第1変形例の回転容器2のように、各凸条部8が第1端部8aから第2端部8bへ向かって回転容器2の回転方向に倒れるように傾斜していれば、回転容器2内での粉体の滞留時間をある程度長く確保することができる。これにより、粉体の混合度合を向上させることができる。
【0065】
(まとめ)
本発明の連続式粉体処理装置は、粉体の混合または湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる連続式粉体処理装置であって、横向きに延びる筒状の回転容器と、前記回転容器内に配置された、前記回転容器の軸方向に延びる回転シャフトと、前記回転容器内で前記回転シャフトに取り付けられた複数の羽根であって、各々に前記粉体または前記湿潤粉体へ前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かう送り力を付与するナイフエッジが形成された羽根と、を備え、前記回転容器の内周面には、前記回転容器の一方の開口から他方の開口へ向かって延びる少なくとも1つの凸条部が設けられている、ことを特徴とする。
【0066】
上記の構成によれば、連続式粉体処理装置が湿潤粉体からの顆粒の製造に用いられる場合、回転容器内に湿潤粉体が供給されるか、回転容器内に供給された粉体が回転容器内で湿潤される。回転容器内では、回転容器が回転することによって湿潤粉体が流動させられるとともに、羽根が回転シャフトと共に回転することによって湿潤粉体が混合および解砕されながら回転容器の他方の開口に向かって移動させられる。これにより顆粒が製造され、製造された顆粒が回転容器の他方の開口から排出される。
【0067】
一方、連続式粉体処理装置が粉体の混合に用いられる場合、回転容器内に複数種類の粉体が供給される。回転容器内では、回転容器が回転することによって粉体が流動させられるとともに、羽根が回転シャフトと共に回転することによって粉体が混合および解砕されながら回転容器の他方の開口に向かって移動させられ、混合粉体が回転容器の他方の開口から排出される。
【0068】
しかも、回転容器の内周面には凸条部が設けられているので、その凸条部によって粉体または湿潤粉体が掻き上げられる。従って、粉体または湿潤粉体が回転容器の内周面に対して滑り易く、内周面に追従して持ち上がり難い場合であっても、粉体または湿潤粉体を良好に流動させることができる。
【0069】
前記少なくとも1つの凸条部は、前記回転容器の一方の開口側の第1端部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜してもよい。この構成によれば、回転容器内での粉体または湿潤粉体の滞留時間をある程度長く確保することができる。これにより、粉体の混合度合を向上させたり製造される顆粒の粒子径を均質化したりすることができる。
【0070】
前記少なくとも1つの凸条部は、前記回転容器の一方の開口側の第1端部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の後方側に傾斜してもよい。この構成によれば、凸条部によって粉体または湿潤粉体を回転容器の他方の開口へ向かって送り出すことができる。
【0071】
前記少なくとも1つの凸条部は、当該凸条部の中央部から前記回転容器の一方の開口側の第1端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜しており、前記凸条部の中央部から前記回転容器の他方の開口側の第2端部へ向かって、前記回転容器の回転方向の前方側に傾斜してもよい。この構成によれば、凸条部の中央部よりも入口側では凸条部によって粉体または湿潤粉体を回転容器の他方の開口へ向かって送り出すことができ、凸条部の中央部よりも出口側では回転容器内での粉体または湿潤粉体の滞留時間をある程度長く確保することができる。
【0072】
例えば、前記少なくとも1つの凸条部は、当該凸条部の長手方向に並ぶ複数の線状突起で構成されてもよい。
【0073】
上記の連続式粉体処理装置は、前記回転容器の一方の開口と嵌合する、前記回転容器の内部と連通する供給穴が設けられた静止部材をさらに備え、前記供給穴は、前記回転シャフトの中心軸に沿って延びており、前記回転シャフトは、前記供給穴内にも配置されており、前記供給穴内では前記回転シャフトにスクリューが取り付けられてもよい。この構成によれば、湿潤粉体または粉体を回転容器内へ安定的に供給することができる。
【0074】
前記回転シャフトの回転方向は、前記回転容器の回転方向と同じであり、前記回転シャフトの回転速度は、前記回転容器の回転速度よりも速くてもよい。回転シャフトの回転方向と回転容器の回転方向は逆であってもよいが、その場合は粉体または湿潤粉体が回転容器内の下部に貯まりやすい。これに対し、回転シャフトの回転方向と回転容器の回転方向が同じであれば、粉体または湿潤粉体が回転容器内の下部に貯まり難くすることができる。
【0075】
前記回転シャフトの中心軸は、前記回転容器の中心軸よりも下方に位置してもよい。この構成によれば、羽根の上方に空間が確保されるため、回転容器の内周面に追従して持ち上がった粉体または湿潤粉体が羽根の上方で回転容器の内周面から剥離して落下したときに羽根に衝突して解砕される。従って、回転シャフトの中心軸と回転容器の中心軸とが一致している場合に比べて、混合効果または造粒効果を向上させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 連続式粉体処理装置
2,2A~2E 回転容器
20 中心軸
2a,2b 開口
2c 内周面
3 静止部材
3a 供給穴
4 回転シャフト
40 中心軸
5 スクリュー
6 羽根
6b ナイフエッジ
8 凸条部
8a 一端部
8b 他端部
8c 中央部
81 線状突起