(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008964
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】カラーコンタクトレンズ用眼科組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20220106BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220106BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20220106BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K47/10
A61P27/02
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
G02C7/04
G02C13/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165666
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2019230860の分割
【原出願日】2015-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2014064770
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015060691
(32)【優先日】2015-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古宮 千夏
【テーマコード(参考)】
2H006
4C076
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB02
2H006BB03
2H006BB08
2H006BC06
4C076AA06
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE02
4C076EE20
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE37
4C076EE53
4C076FF02
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF61
(57)【要約】
【課題】カラーコンタクトレンズ特有の硬度を改善することのできる、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の提供。
【解決手段】(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーコンタクトレンズの装用者が増えている。カラーコンタクトレンズには、色素の色落ち、低い酸素透過率等の問題が指摘されている。また、カラーコンタクトレンズのデザインや装用者の誤った使用が、角膜びらん、角膜浸潤、点状表層角膜症(SPK)など角膜上皮障害を引き起こしやすい要因となることが知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】渡邊潔,あたらしい眼科,Vol.28,No.5,pp.653~654(2011年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1のようにカラーコンタクトレンズの問題点が指摘されている一方、カラーコンタクトレンズに特に適した眼科組成物についての検討は未だ充分とはいえない。
【0005】
また、本発明者の検討によれば、カラーコンタクトレンズは、同一材質のクリアコンタクトレンズと比べて硬度が高いという、新たな課題が見いだされた。
【0006】
そこで本発明は、カラーコンタクトレンズ特有の硬度を改善することのできる、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲラニオールにヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を組み合わせた眼科組成物が、カラーコンタクトレンズ特有の硬度を改善(低下)できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1](A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
[2](A)成分が、ゲラニオールを含み、(B)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む、[1]に記載のカラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
[3](B)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、(A)ゲラニオールの含有量1質量部に対して、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が35質量部以下である、[2]に記載のカラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
[4](B)成分が、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含み、(A)ゲラニオールの含有量1質量部に対して、(B)ヒアルロン酸及びその塩の総含有量が3質量部以下である、[2]に記載のカラーコンタクトレンズ用眼科組成物。
[5](A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、をカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に含有させることを含む、該カラーコンタクトレンズ用眼科組成物にカラーコンタクトレンズの硬度を低下させる作用を付与する方法。
[6](A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、をカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に含有させることを含む、該カラーコンタクトレンズ用眼科組成物にカラーコンタクトレンズによる装着感の悪さを低減する作用を付与する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、カラーコンタクトレンズ特有の硬度を顕著に改善(低下)することができる。また、カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さ(装着時の不快感)を顕著に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】試験例1において各種ソフトコンタクトレンズの硬度を評価した結果を示すグラフである。
【
図2】試験例2において各処方液がカラーソフトコンタクトレンズの硬度に及ぼす影響を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載のない限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを意味し、略号「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
【0012】
〔1.カラーコンタクトレンズ用眼科組成物〕
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、(A)テルペノイド(単に「(A)成分」とも表記する。)と、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上(単に「(B)成分」とも表記する。)と、を含有する。
【0013】
本明細書において、カラーコンタクトレンズとは、虹彩又は瞳孔の外観(色、模様又は形)を変えるコンタクトレンズを意味する。具体的には、例えば、コンタクトレンズの使用目的、効能効果として、虹彩又は瞳孔の外観(色、模様又は形)を変えるレンズとして規定されているものを指す。カラーコンタクトレンズとしては、視力補正用であってもよく、視力補正用でなくてもよい。カラーコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ(SCL)に分類されるものであってもよく、ハードコンタクトレンズに分類されるものであってもよいが、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、ソフトコンタクトレンズに分類されるもの(「カラーSCL」ともいう。)であることが好ましい。また、カラーコンタクトレンズのレンズ材質は特に限定されず、あらゆるレンズ材質のカラーコンタクトレンズが包含される。
【0014】
(A)テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル(「ショウノウ」又は「樟脳」ともいう)、ボルネオール(「リュウノウ」又は「竜脳」ともいう)、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール及び酢酸リナリルが挙げられる。テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよい。ただし、ゲラニオール、ネロール及びシネオール等のようにテルペノイドによっては光学異性体が存在しない場合もある。(A)テルペノイドは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物における(A)成分の含有量は化合物の種類に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、通常0.0001~0.5w/v%であり、0.0002~0.1w/v%であることが好ましく、0.0005~0.05w/v%であることがより好ましく、0.001~0.03w/v%であることが更に好ましく、0.002~0.02w/v%であることが更により好ましい。
【0016】
(A)成分は、テルペノイドを含有する精油として本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に配合してもよい。テルペノイドを含有する精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、パルマローザ油、シトロネラ油、ラベンダー油、レモングラス油、ゼラニウム油及びハッカ油が挙げられる。なお、(A)成分としてテルペノイドを含有する精油を使用する場合は、当該精油に含有されるテルペノイドが上述した含有量を満たすように配合させることが好ましい。
【0017】
(A)成分としては、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、ゲラニオールが好ましい。ゲラニオールは、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オールとも称される公知化合物である。ゲラニオールとしては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、公知の方法により合成したものであってもよく、市販品として入手したものであってもよい。
【0018】
(A)成分としてゲラニオールを使用する場合、ゲラニオールの含有量としては、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.0001~0.5w/v%であり、0.0002~0.1w/v%であることが好ましく、0.0005~0.05w/v%であることがより好ましく、0.001~0.01w/v%であることが更に好ましく、0.002~0.008w/v%であることが更により好ましい。
【0019】
(B)成分は、ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上である。(B)成分は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
ビニル系高分子化合物としては、カラーコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。ビニル系高分子化合物は、市販のものを用いることもできる。
【0021】
ビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)等のビニルアルコール系高分子、ポリビニルピロリドン等のビニルピロリドン系高分子及びカルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0022】
ビニル系高分子化合物の中でも、本発明による効果をより一層高める観点から、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)又はカルボキシビニルポリマーが好ましく、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)又はカルボキシビニルポリマーがより好ましく、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)が更に好ましい。
【0023】
ビニル系高分子化合物は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中のビニル系高分子化合物の含有量は、化合物の種類及び分子量に応じて適宜設定される。ビニル系高分子化合物の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、ビニル系高分子化合物の総含有量が、通常0.001~25w/v%であり、0.001~10w/v%であることが好ましく、0.005~5w/v%であることがより好ましく、0.01~5w/v%であることが更に好ましく、0.1~3w/v%であることが更により好ましい。
【0025】
糖類としては、カラーコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。糖類としては、例えば、多糖類(例えば、セルロース系高分子化合物、グリコサミノグリカン、デキストラン、ジェランガム、アルギン酸及びそれらの塩)、オリゴ糖(例えば、シクロデキストリン)、単糖類(例えば、ブドウ糖)が挙げられる。糖類は、市販のものを用いることもできる。糖類は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
セルロース系高分子化合物としては、セルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置き換えることで得られるセルロース系高分子化合物であって、カラーコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カルボキシメトキシ基及びカルボキシエトキシ基が挙げられる。セルロース系高分子化合物は、市販のものを用いることもできる。
【0027】
セルロース系高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース及びこれらの塩が挙げられる。ここで、塩としては医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよく、中でもアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩等がより好ましい。
【0028】
セルロース系高分子化合物の中でも、本発明による効果をより一層高める観点から、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はこれらの塩が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。また、セルロース系高分子化合物の中でも、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが更に好ましい。
【0029】
セルロース系高分子化合物は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中のセルロース系高分子化合物の含有量は、化合物の種類及び分子量等に応じて適宜設定される。セルロース系高分子化合物の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、セルロース系高分子化合物の総含有量が、通常0.0001~25w/v%であり、0.001~10w/v%であることが好ましく、0.001~2w/v%であることがより好ましく、0.002~1w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.2w/v%であることが更により好ましい。
【0031】
(B)成分としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量としては、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.0001~2w/v%であり、0.0005~1w/v%であることが好ましく、0.001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.002~0.5w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.1w/v%であることが更により好ましい。
【0032】
グリコサミノグリカンとしては、例えば、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸が挙げられる。
【0033】
グリコサミノグリカンの中でも、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、ヒアルロン酸等の硫酸基を有しないものが好ましく、ヒアルロン酸又はその塩がより好ましい。ヒアルロン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ヒアルロン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩等がより好ましい。
【0034】
グリコサミノグリカンは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中のグリコサミノグリカンの含有量は、化合物の種類及び分子量に応じて適宜設定される。グリコサミノグリカンの含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、グリコサミノグリカンの総含有量が、通常0.00001~5w/v%であり、0.00005~3w/v%であることが好ましく、0.0001~2w/v%であることがより好ましく、0.0005~1w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.6w/v%であることが更により好ましい。
【0036】
(B)成分としてヒアルロン酸又はその塩を使用する場合、ヒアルロン酸又はその塩の含有量としては、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、通常0.00001~1w/v%であり、0.00005~0.5w/v%であることが好ましく、0.0001~0.1w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.05w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.02w/v%であることが更により好ましい。
【0037】
デキストランとしては、例えば、デキストラン40、デキストラン70が挙げられ、デキストラン70が特に好ましい。
【0038】
アルギン酸としては、アルギン酸、アルギン酸の塩が好ましく、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0039】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中の糖類の含有量は、化合物の種類及び分子量に応じて適宜設定される。糖類の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、糖類の総含有量が、通常0.00001~25w/v%であり、0.00005~10w/v%であることが好ましく、0.0001~10w/v%であることがより好ましく、0.0005~7w/v%であることが更に好ましく、0.001~5w/v%であることが更により好ましい。
【0040】
(B)成分のうち、多糖類が好ましく、中でもセルロース系高分子化合物及びグリコサミノグリカンを組み合わせて用いることがより好ましく、中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒアルロン酸又はその塩を組み合わせて用いることが更に好ましい。
【0041】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中の(B)成分の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、通常0.00001~25w/v%であり、0.00005~10w/v%であることが好ましく、0.0001~10w/v%であることがより好ましく、0.0005~7w/v%であることが更に好ましく、0.001~5w/v%であることが更により好ましい。
【0042】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.1~10000質量部であることがより好ましく、1~1000重量部であることが更に好ましく、1~300重量部であることが更により好ましく、2~100質量部であることが更によりまた好ましく、10~35質量部であることが特に好ましい。
【0043】
また、例えば、(A)成分としてゲラニオール、(B)成分としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、ゲラニオールに対するヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有比率としては、例えば、ゲラニオールの含有量1質量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、1~200重量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましく、5~35質量部であることが更により好ましく、10~35質量部であることが特に好ましい。
【0044】
また、例えば、(A)成分としてゲラニオール、(B)成分としてヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を使用する場合、本発明による効果をより一層顕著に発揮することから、ゲラニオールに対するヒアルロン酸及びその塩の含有比率としては、例えば、ゲラニオールの含有量1質量部に対して、ヒアルロン酸及びその塩の総含有量が、0.1~50質量部であることがより好ましく、0.1~10質量部であることが更に好ましく、0.1~3質量部であることが更により好ましく、0.2~2質量部であることが特に好ましい。
【0045】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、本発明による効果をより一層高める観点から、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。また、界面活性剤は、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の使用目的に応じて、後述する種々の薬理活性成分、生理活性成分及び添加剤等を配合する際に、それらの溶解性を向上させる溶解補助剤としても有効である。
【0046】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物が含有することができる界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、イオン性(両性、陰性、陽性)界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
非イオン性界面活性剤として、例えば、モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコールが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0048】
両性界面活性剤として、例えば、N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩(例えば、塩酸塩等)が挙げられる。N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシンは、アルキルジアミノエチルグリシン又はアルキルポリアミノエチルグリシンとも呼ばれる。
【0049】
陰イオン性界面活性剤として、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸が挙げられる。
【0050】
陽イオン性界面活性剤として、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール又はPOE・POPブロックコポリマーが好ましく、ポリソルベート80、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40又はポロクサマー407がより好ましい。
【0052】
界面活性剤を含有する場合、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物における界面活性剤の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、通常0.0001~8w/v%であり、0.001~4w/v%であることが好ましく、0.002~2w/v%であることがより好ましく、0.01~1w/v%であることが更に好ましく、0.05~0.5w/v%であることが更により好ましい。
【0053】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、本発明による効果をより一層高める観点から、更に緩衝剤を含有することが好ましい。緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、エデト酸塩が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0054】
ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸又はその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸又はその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸又はその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸又はその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)などが例示できる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましい。
【0055】
緩衝剤を含有する場合、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物における緩衝剤の含有量としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、通常0.05~10w/v%であり、0.1~5w/v%であることが好ましく、0.3~3w/v%であることがより好ましく、0.5~2w/v%であることが更に好ましく、0.6~1.5w/v%であることが更により好ましい。
【0056】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。カラーコンタクトレンズ用眼科組成物のpHとしては、例えば、4.0~9.5であることが好ましく、5.0~9.0であることがより好ましく、5.5~8.5であることが更に好ましく、5.5~8.0であることが特に好ましい。
【0057】
また、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の浸透圧比としては、例えば、0.5~5であることが好ましく、0.6~3.0であることがより好ましく、0.7~2.0であることが更に好ましく、1.0~1.8であることが更により好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール又は糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0058】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、本発明による効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分又は生理活性成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。薬理活性成分又は生理活性成分としては、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム等。
アミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、アミノエチルスルホン酸等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
【0059】
また、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物には、本発明による効果を損なわない範囲であれば、その用途又は製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有していてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはD体、L体及びDL体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
安定化剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、流動パラフィン、プラスチベース、ラノリン、プロピレングリコール等。
その他:リピジュア-PMB(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、リピジュア-HM等。
【0060】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、例えば、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて他の含有成分を所望の含有量となるように添加及び混和することにより調製することができる。具体的には、例えば、精製水で上記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0061】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の総量に対して、例えば、水の含有量が50w/v%以上であり、70w/v%以上であることが好ましく、80w/v%以上であることがより好ましく、90w/v%以上であることが更に好ましく、95w/v%以上であることが更により好ましい。本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水が挙げられる。
【0062】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、例えば、無色透明のプラスチック製容器などに、繰り返し使用可能なマルチドーズの形態で収容して使用できる。
【0063】
上記容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したものが挙げられる。好ましくは、低密度ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレートである。特に、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物中の(A)成分がノズルに吸着することによる効果の低減を抑制し、本発明による効果をより一層高める観点から、更に好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
【0064】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、目的に応じて種々の剤型をとることができ、例えば、液剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、眼科分野で用いられるものであってカラーコンタクトレンズに接触するように使用されるものであれば、その製剤形態については制限されない。例えば、カラーコンタクトレンズ用点眼剤(カラーコンタクトレンズを装着したまま使用可能な点眼剤)、カラーコンタクトレンズ用洗眼剤(カラーコンタクトレンズを装着したまま使用可能な洗眼剤)、カラーコンタクトレンズ装着液、カラーコンタクトレンズケア用液剤(カラーコンタクトレンズ消毒液、カラーコンタクトレンズ保存液、カラーコンタクトレンズ洗浄液、及びカラーコンタクトレンズ洗浄保存液等)等を挙げることができる。中でも、カラーコンタクトレンズ用点眼剤として用いる場合は、使用が簡便であることから、装用感の悪さを感じた際に、その使用方法において許容される範囲で速やかに服用することが可能である。この効果に鑑みれば、カラーコンタクトレンズ用点眼剤として好適に用いることができる。また、カラーコンタクトレンズ装着液として用いる場合は、装着時に特有の装用感の悪さを改善することが可能である。この効果に鑑みれば、カラーコンタクトレンズ装着液としても好適に用いることができる。
【0066】
本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の使用方法としては、該カラーコンタクトレンズ用眼科組成物をカラーコンタクトレンズに接触させることとなる工程を有する公知の方法であれば、特に限定はない。例えば、カラーコンタクトレンズ用点眼剤の場合、カラーコンタクトレンズの装着前又は装用中に、該点眼剤の適量を点眼すればよい。また、カラーコンタクトレンズ用洗眼剤の場合も、カラーコンタクトレンズの装着前又は装用中、該洗眼剤の適量を洗眼に使用すればよい。なお、カラーコンタクトレンズ用点眼剤又はカラーコンタクトレンズ用洗眼剤は、カラーコンタクトレンズを装用している時はもちろん、装用していない時でも点眼や洗眼の目的で使用することができる。また、カラーコンタクトレンズ装着液の場合、カラーコンタクトレンズの装着時にカラーコンタクトレンズと該装着液の適量を接触させることにより使用される。更に、カラーコンタクトレンズケア用液剤の場合であれば、適量の該ケア用液剤中にカラーコンタクトレンズを浸漬したり、該ケア用液剤にカラーコンタクトレンズを接触させて擦り洗いすること等によって使用される。
【0067】
また、本実施形態に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の適用対象となるカラーコンタクトレンズの含水率は、特に制限されず、例えば、20%以上であってよく、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが更により好ましく、65%以上であることが更によりまた好ましい。カラーコンタクトレンズの含水率の上限に特に制限はないが、通常90%以下である。
【0068】
ここでカラーコンタクトレンズの含水率とは、カラーコンタクトレンズ中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のカラーコンタクトレンズの重量)×100
かかる含水率はISO18369-4:2006の記載に従って、重量測定方法により測定され得る。
【0069】
〔2.カラーコンタクトレンズの硬度を低下させる作用を付与する方法〕
本発明に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、カラーコンタクトレンズ特有の硬度を改善する効果を有する。
【0070】
したがって、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、をカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に含有させることを含む、該カラーコンタクトレンズ用眼科組成物にカラーコンタクトレンズの硬度を低下させる作用を付与する方法が提供される。
【0071】
また、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する眼科組成物からなる、カラーコンタクトレンズの硬度低下剤が提供される。
【0072】
さらに、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有するカラーコンタクトレンズ用眼科組成物を、カラーコンタクトレンズに接触させるステップを含む、カラーコンタクトレンズの硬度を低下させる方法が提供される。当該接触させるステップは、カラーコンタクトレンズ装用中に実行してもよく、カラーコンタクトレンズ非装用中に実行してもよい。
【0073】
なお、上記各実施形態における、(A)成分及び(B)成分の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の製剤形態及び用途等については、〔1.カラーコンタクトレンズ用眼科組成物〕で説明したとおりである。
【0074】
上記カラーコンタクトレンズの硬度低下剤は、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する、カラーコンタクトレンズの硬度低下剤ということもできる。この場合のカラーコンタクトレンズの硬度低下剤の具体的な態様は、実質的に上記で説明したカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の態様と同じである。
【0075】
〔3.カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さを低減する作用を付与する方法〕
本発明に係るカラーコンタクトレンズ用眼科組成物は、カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さ(装着時の不快感、例えば、ゴロゴロ感)を低減する効果を有する。
【0076】
したがって、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、をカラーコンタクトレンズ用眼科組成物に含有させることを含む、該カラーコンタクトレンズ用眼科組成物にカラーコンタクトレンズによる装着感の悪さを低減する作用を付与する方法が提供される。
【0077】
また、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する眼科組成物からなる、カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さの低減剤が提供される。
【0078】
さらに、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有するカラーコンタクトレンズ用眼科組成物を、カラーコンタクトレンズに接触させるステップを含む、カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さを低減させる方法が提供される。当該接触させるステップは、カラーコンタクトレンズ装用中に実行してもよく、カラーコンタクトレンズ非装用中に実行してもよい。
【0079】
なお、上記各実施形態における、(A)成分及び(B)成分の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、カラーコンタクトレンズ用眼科組成物の製剤形態及び用途等については、〔1.カラーコンタクトレンズ用眼科組成物〕で説明したとおりである。上記各実施形態に係る発明は、カラーコンタクトレンズの装着感の改善に係る発明と捉えることもできる。
【0080】
上記カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さの低減剤は、(A)テルペノイドと、(B)ビニル系高分子化合物及び糖類からなる群より選択される1種以上と、を含有する、カラーコンタクトレンズによる装着感の悪さの低減剤ということもできる。この場合のカラーコンタクトレンズによる装着感の悪さの低減剤の具体的な態様は、実質的に上記で説明したカラーコンタクトレンズ用眼科組成物の態様と同じである。
【実施例0081】
以下、実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0082】
〔試験例1:各種ソフトコンタクトレンズ(SCL)の硬度評価〕
表1に示す各種ソフトコンタクトレンズを用いて以下の試験を実施し、ソフトコンタクトレンズの硬度を評価した。なお、本試験に使用したソフトコンタクトレンズは、いずれも市販品である。また、クリアコンタクトレンズは、虹彩又は瞳孔の外観を変えるコンタクトレンズではない一様に透明(有色、無色含む)なコンタクトレンズを指す。
【0083】
【0084】
バブルテスターT-1T(TECHNO HASHIMOTO Co.,Ltd製)を使用し、SCLの硬度を測定した。具体的には、パッケージ液から取り出したSCLを生理食塩水で濯いだ後、SCL表面の液をふき取り、ガラス台(ビーカーの裏)に凸型に設置した。ステンレス製のφ5cmの治具を用いて、治具がコンタクトレンズを押し込む際に生じる力を測定した。測定条件は以下のとおりである。
・サイクル試験(サイクル回数1)
・往復幅:2mm
・移動速度:2mm/s
・加速速度:0.1G
・開始位置:126.20mm
【0085】
得られた測定結果から、同じ材質のクリアSCLの硬度を100%としたときのカラーSCLの相対的な硬度を求めた。結果を
図1に示す。カラーSCLであるレンズAは、同じ材質のクリアSCLであるレンズBより約1.2倍硬いことが明らかになった。同様に、カラーSCLであるレンズCは、同じ材質のクリアSCLであるレンズDより約1.5倍硬いことが明らかになった。
【0086】
〔試験例2:処方液浸漬後の硬度測定〕
表2に示す組成の処方液にレンズAを一週間浸漬し、試験例1と同様の方法で硬度を測定し、各処方液がカラーSCLの硬度に及ぼす影響を評価した。
【表2】
【0087】
結果を
図2に示す。
図2中、硬度比(%)は、比較例1の処方液に浸漬した場合の硬度を100%としたときの各処方液の硬度比を示す。ゲラニオールを含む処方液に接触することより、カラーコンタクトレンズ特有の硬度が低下し、改善がみられた(参考例1)。一方、ゲラニオールにヒドロキシプロピルメチルセルロースを組み合わせた処方液では、カラーコンタクトレンズ特有の硬度が顕著に改善された(実施例1)。
【0088】
〔試験例3:処方液浸漬後の硬度測定〕
表3に示す組成の処方液を用いて、浸漬時間が18時間であること以外は試験例2と同様の方法で硬度を測定し、各処方液がカラーSCLの硬度に及ぼす影響を評価した。
【表3】
【0089】
結果を表3に併せて示す。ゲラニオール1質量部に対してヒドロキシプロピルメチルセルロースを33.3質量部含有する実施例2の処方液でもカラーコンタクトレンズ特有の硬度が顕著に改善されることが確認された。
【0090】
〔試験例4:処方液浸漬後の硬度測定〕
表4に示す組成の処方液を用いて、浸漬時間が18時間であること以外は試験例2と同様の方法で硬度を測定し、各処方液がカラーSCLの硬度に及ぼす影響を評価した。
【表4】
【0091】
結果を表4に併せて示す。ゲラニオールにヒアルロン酸ナトリウムを組み合わせた実施例3の処方液でもカラーコンタクトレンズ特有の硬度が顕著に改善されることが確認された。
【0092】
〔試験例5:コンタクトレンズ装用感評価〕
ソフトコンタクトレンズ(レンズA、レンズB)をそれぞれ片眼ずつ装着しているモニター3名が、表5に示す0から10の目盛りを付した10cmの直線を用い、VAS法でコンタクトレンズの装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)について評価した。具体的には、モニターそれぞれが、コンタクトレンズの装着感の最も悪いと思われる状態を10の目盛り、コンタクトレンズの装着感の悪さを全く感じない状態を0の目盛りとし、各モニターの感じる各レンズの装着感の程度を直線上に記させ、0の目盛りからの長さ(mm)を各モニターの点数とした。3名の装着感評価の平均点を表6に示す。ソフトコンタクトレンズ(レンズC,レンズD)についても同様に試験し、結果を表7に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
得られた測定結果から、同じ材質のクリアSCLと比べて、カラーSCLでは装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)を顕著に感じることが明らかとなった。
【0097】
〔試験例6:コンタクトレンズ装用感評価〕
カラーソフトコンタクトレンズ(レンズA)を両眼に装着しているモニター3名が、表8に示す処方液を1日5回、1回1~2滴点眼し、以下に示す評価項目に従って、1日装用後のカラーソフトコンタクトレンズの装用感について評価した。結果を表9に示す。レンズCに関しても同様に試験し、結果を表10に示す。
【0098】
評価項目
◎:装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)を全く感じない
○:装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)を殆ど感じない
△:装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)を若干感じる
×:装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)を明らかに感じる
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
ゲラニオールにヒドロキシプロピルメチルセルロースを組み合わせた実施例2の処方液によりカラーソフトコンタクトレンズ特有の装着感の悪さ(ゴロゴロ感など)が顕著に改善されることが確認された。
【0103】
〔製剤例〕
表11~13に記載の処方で、カラーコンタクトレンズ用点眼剤、カラーコンタクトレンズ装着液、カラーコンタクトレンズ装着点眼剤、カラーコンタクトレンズ洗浄保存液が調製される。表中の単位は全て(w/v%)である。製剤例1~19、22~24、26~27はポリエチレンテレフタレート製容器に充填され、製剤例20、21はポリプロピレン製容器に充填され、製剤例25はポリエチレン製容器に充填された。
さらに、製剤例1~12はポリエチレン製ノズルを、製剤例13~23はポリブチレンテレフタレート製ノズルを容器に装着した。
【0104】
【0105】
【0106】