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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089652
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】光学モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20220609BHJP
【FI】
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202219
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 東市
(72)【発明者】
【氏名】松下 智治
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA08
5F173MB03
5F173MC15
5F173ME23
5F173ME44
5F173MF04
5F173MF23
5F173MF28
5F173MF39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光源、特に半導体レーザを使用した光学モジュールにおいて、出力光の減衰を抑制しつつ、戻り光を監視できる光学モジュールを提供する。
【解決手段】光源から照射された光を反射体50によって所定の場所へ導光する光学モジュール1において、反射体に反射面51と光透過部52を形成し、光源からの照射光は反射面に照射する。反射体の背面には、光透過部を透過した戻り光RLを検出するための光受光部80を設ける。光源が半導体レーザの場合、光透過部は光線の断面の長軸に対して略平行に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の光源(Nは2以上の自然数)を有する光学モジュールであって、該光学モジュール内には第i光源(iはN以下の自然数)から照射された第i光線を所定の方向へ反射する反射体が設けられ、該反射体には反射面と光透過部が形成されていると共に、第1光源~第N光源から照射された第1光線~第N光線は全て、該反射面に照射されることを特徴とする光学モジュール。
【請求項2】
該反射体に照射された該第1光線~第N光線のそれぞれは、該反射体によって所定の方向へ反射された後、集光レンズを介して光ファイバに結合されるとともに、該光ファイバを逆行する戻り光が該反射体に照射され、該戻り光が該反射体を照射する範囲に該光透過部が含まれるよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項3】
該反射体と該光ファイバとの間の空間において、該第1光線~第N光線の各中心軸と、該戻り光の中心軸とが一致していないことを特徴とする、請求項2に記載の光学モジュール。
【請求項4】
該N個の光源は、照射する光線の断面形状が長軸と短軸を略楕円形状である半導体レーザであり、該第1光線~第N光線のそれぞれは断面形状の長軸が互いに平行な状態で該反射体に照射されるとともに、該光透過部は該長軸に対して略平行に設けられていることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の光学モジュール。
【請求項5】
該光透過部は、第i光線と第i+1光線とが該反射体に照射される領域の間に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の光学モジュール。
【請求項6】
該光透過部が、該反射体に複数設けられていることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の光学モジュール。
【請求項7】
該光透過部を透過した該戻り光を受光する光受光部が設けられていることを特徴とする、請求項2~6の何れか一項に記載の光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学モジュール、特に複数の半導体レーザが発するレーザ光を合成することで、高出力のレーザを得る構成の光学モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザは、その高いエネルギー密度を利用して、金属に代表される材料加工分野、医療分野など、様々な分野において用いられている。特に材料加工分野においては、加工時間の短縮などを目的として、レーザの高出力化がなされている。
【0003】
材料加工分野において使用されるレーザの一種に、DDL(Direct Diode Laser)と呼ばれる構成のものが存在する。以下、DDLについて簡単に説明する。
【0004】
DDLは特許文献1に記載されたように、複数の半導体レーザを組み合わせたモジュールを使用し、各半導体レーザから放出されたそれぞれのレーザ光をレンズ、反射ミラー等の光学部材を使用して1つのレーザ光に合成し、加工対象物に照射する方式である。
【0005】
DDLを使用する場面において、合成したレーザ光を加工対象物へ直接照射することがあるが、加工対象物によって反射されたレーザ光がモジュール内に戻ってしまう現象が存在する。
【0006】
合成したレーザ光を光ファイバに結合し、光ファイバを通じて加工対象物へと導光することもあるが、この場合でも加工対象物によって反射されたレーザ光が再度光ファイバに結合して光学系を逆走することで、モジュール内に戻ってしまう現象が発生する。
【0007】
この戻り光は、半導体レーザの破壊やモジュールの温度上昇といった不具合の原因になるため、戻り光を監視し、戻り光が増加した場合はレーザ出力を停止させるなどの制御が行われる場合も存在する。
【0008】
また、戻り光を監視することで、モジュールの動作状況や加工対象物の加工状況などを判断し、より望ましい動作・加工が行われるようフィードバック制御することも行われている。
【0009】
各種のレーザ装置における戻り光の監視方法として、光ファイバに沿ってフォトダイオード等の光検出素子を設け、光ファイバの側面から漏れる光を監視する方法(例えば特許文献2)や、モジュール内に光検出素子を設けて戻り光を監視する方法(例えば特許文献3)などが挙げられる。
【0010】
しかしながら、光ファイバの側面から漏れる光を監視する方法では、特許文献2で指摘されている通り、戻り光由来の漏光だけでなく、加工対象物へと向かう出力光由来の漏光も検出するため、戻り光の量を検出するために困難が伴う。
【0011】
一方、モジュール内で戻り光を監視する方法の場合、特許文献3に記載されたように、戻り光の一部を光スプリッタやハーフミラーなどの光分岐部材で分岐させ、光検出素子へ導光する方法が存在するが、この方法では出力するレーザ光が光分岐部材を透過する際に減衰してしまうという課題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007-142439号公報
【特許文献2】WO2013/108769号公報
【特許文献3】特開平11-121834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、DDLに代表される半導体レーザを使用した光学モジュールにおいて、出力光の減衰を抑制しつつ、戻り光を監視できる光学モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は、光学モジュールの構成を鋭意検討した結果、光学モジュールに使用される反射体に反射面と光透過部とを形成し、光源からの照射光を反射面に照射し、戻り光を光透過部から取り出すことで、上記の問題を解決できることを見出した。
【0015】
本発明の光学モジュールは、複数の光源から照射された光を所定の場所へ導光する光学モジュールであって、光学モジュール内には、光を所定の方向へ反射する反射体が設けられ、反射体には反射面と光透過部が形成され、光源からの照射光は反射面に照射されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学モジュールは、戻り光を光受光部へと導くための部材を出力光が透過することなく、反射のみによって出力光を対象物へと導くため、出力光の減衰の抑制に寄与するという優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の基本的構成である。
図2】光源が半導体レーザの場合の、光線の状態と光透過部の位置関係を示す図である。
図3】本発明の実施例である光学モジュールの一例である。
図4】本発明に使用する反射体の一例である。
図5】本発明に使用する反射体の変形例である。
図6】本発明に使用する反射体の他の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した光学モジュールの態様について図1を参照しながら述べる。
本発明を適用した光学モジュール(1)は、N個の光源(Nは2以上の自然数)を有しており、図1はN=4とし、光源としてレーザ光を照射する半導体レーザを使用した場合について説明する。
【0019】
本発明の技術的思想の範囲内において、Nは任意に設定できるとともに、半導体レーザ以外の光源を使用しても良い。
【0020】
図1に示した光学モジュール(1)は、第1~第4光源(10-1~4)から出射された第1~第4光線(L1~L4)をコリメートするFACレンズ(20-1~4)及び、SACレンズ(30-1~4)、コリメートされた各光線を集光レンズ(60)に向かって反射する反射体(50)、集光レンズ(60)によって集光された各光線が結合される光ファイバ(70)を有するが、本発明に必須となるのは光源(10-1~4)と反射体(50)である。
【0021】
本発明で特徴的なことは、反射体(50)に反射面(51)と光透過部(52)が形成されており、第1~第4光源(10-1~4)から照射された第1~第4光線(L1~L4)は全て、反射面(51)に照射されることである。
【0022】
各光源(10)から照射された光線(L)が反射体(50)の反射面(51)に照射され、
反射によって集光レンズ(60)側に導かれるため、反射体(50)における光線(L)の減衰が最小限となり、出力光の減衰の抑制に寄与する。
【0023】
本発明では原則として、全ての光線(L)が反射体(50)の反射面(51)に照射されるため、反射体(50)における光線(L)の減衰が少ない。
【0024】
また、戻り光(RL)は通常、集光レンズ(60)側から反射体(50)に戻ってくるが、戻り光(RL)はFACレンズ(20)等を使用して特定の形状、強度分布に成型した第1~第4光線(L1~L4)とは異なった形状、強度分布を有した状態で反射体(50)に戻ってくるのが一般的である。
【0025】
このため、反射体(50)に光透過部(52)が存在することで、戻り光(RL)の一部は光透過部(52)を通過し、反射体(50)の背面側に導光されることになり、反射体(50)の背面に光受光部(80)を設けることで、戻り光(RL)の検出、監視が可能となる。
【0026】
本発明は、反射体(50)に照射され、所定の方向に反射された第1~第4光線(L1、~L4)を、集光レンズ(60)を介して光ファイバ(70)に結合する場合に好ましく利用でき、この場合、光ファイバ(70)を逆行してきた戻り光(RL)が反射体(50)を照射するとともに、戻り光(RL)が反射体(50)を照射する範囲に光透過部(52)が含まれるよう構成する。
【0027】
光ファイバ(70)からの戻り光(RL)は、光ファイバ(70)の開口数に従った広がり角度で光ファイバ(70)から出射されるが、戻り光(RL)が反射体(50)に到達した際に、戻り光(RL)の強度分布が最も高い部分が光透過部(52)に照射されるよう構成するのが好ましい。この構成によって戻り光(RL)のうち、特に強度が高い部分が光透過部(52)を透過することになるため、反射体(50)の背面で戻り光(RL)を検出する際の光量を高めることができる。
【0028】
通常、光ファイバ(70)からの戻り光(RL)はガウシアンビームとして出射され、戻り光(RL)の中心軸近傍で強度分布が最も高くなる。
【0029】
すなわち、本発明は、反射体(50)と光ファイバ(70)との間の空間(光路)において、第1~第4光線(L1~L4)の各中心軸と、戻り光(RL)の中心軸を一致させないことを意図したものと言うことができる。
【0030】
なお、必ずしも戻り光(RL)の強度が高い部分が光透過部(52)を透過するように構成する必要はなく、必要な戻り光(RL)の強度が得られる範囲で、反射体(50)における光透過部(52)の位置は任意に設定することができる。
【0031】
光透過部(52)の位置、形状は、第1~第4光線(L1~L4)の状態、戻り光(RL)の状態などに基づいて決定されるが、光源(10-1~4)としてレーザ光を照射する半導体レーザを使用する場合、光透過部(52)の位置、形状は以下に述べるものが好ましく利用できる。
【0032】
光源(10-1~4)が半導体レーザである場合、第1~第4光線(L1~L4)の断面形状は通常、図2に示したように長軸と短軸を有した略楕円形状を示すとともに、第1~第4光線(L1~L4)の断面の長軸が互いに平行な状態で反射体(50)に照射されるように構成される。
【0033】
この時、長軸が互いに平行な第1~第4光線(L1~L4)の間には、光線が照射されない略長方形状の非照射領域が形成される。反射体(50)における反射面(51)と光透過部(52)が形成される面において、この非照射領域に相当する領域に光透過部(52)を形成する方法が好ましく利用できる。
【0034】
言い換えると、光源(10)が半導体レーザの場合、光透過部(52)は図2に示したように、半導体レーザが出射した、断面形状が長軸と短軸を有する略楕円形状の光線(L)に対し、長軸に平行な形状となるよう反射体(50)に設けるのが好ましい。
【0035】
このように光透過部(52)を設けることで、光線(L)を確実に反射させるとともに、戻り光(RL)を透過させるために必要な光透過部(52)の面積を抑制できるため、反射体(50)の大きさを必要最小限に抑えることができる。
【0036】
通常、光透過部(52)の形状は、図2に示したように、高さ方向の寸法に比べて幅方向の寸法が長い長方形状とし、幅方向を光線(L)の長軸に対して平行にすれば良い。
【0037】
図2では光透過部(52)を1箇所のみ設けたが、各光線間に非照射領域が存在する場合は必要に応じて複数の光透過部(52)を設けても良い。また、光線間の非照射領域が狭く、十分な光透過部(52)の形成が困難な場合は、光線群の外側に光透過部(52)を形成する方法や、光源(10)や光源(10)に付随する光学部品の配置を調整して、光透過部(52)の形成に十分な広さの非照射領域を設ける方法が利用できる。
【0038】
なお、最も理想的な反射体(50)の構成は、各光源(10)からの光線(L)が照射される領域のみに反射面(51)を設け、その他の領域は光透過部(52)とした構成である。
【0039】
上述した通り、本発明は反射体(50)の背面に、光透過部(52)を透過した戻り光(RL)を受光する光受光部(80)を設ける形で本発明は実施される。光受光部(80)は通常、戻り光(RL)を検出し、電気信号に変換するフォトダイオードなどの光検出素子が使用されるが、戻り光(RL)を吸収し、そのエネルギーを安全に処理するためのダンパーを使用しても良い。
【0040】
本発明における反射体(50)は、合成石英、BK7ガラスなどで構成された基材に誘電体多層反射膜や金属蒸着膜を設けて反射面(51)となる領域を形成し、光透過部(52)となる領域には誘電体多層反射膜や金属蒸着膜を設けない、あるいは基材上に誘電体多層反射防止膜を設けたものが利用できる。
【実施例0041】
[実施例1]
本発明の第1の実施例として、図3に示した光学モジュール(100)を示す。光学モジュール(100)は、筐体(図示せず)内に、複数の光源(10)を備えたサブモジュール(200)を有し、サブモジュール(200)が有する光源(10)から出射された光線(L)を、レンズやミラーで構成された光学系を通じて光ファイバ(70)に結合し、光ファイバ(70)中を伝送させた光線を対象物に照射するのものである。
【0042】
サブモジュール(200)は、サブモジュール底板(210)と、サブモジュール底板(210)上に設けられた光源、レンズ、ミラー類とで構成される。
【0043】
サブモジュール底板(210)には、第1階段部(221)と、第1階段部(221)に平行な第2階段部(222)が設けられる。
【0044】
第1階段部(221)には、上段から順に第1~第12光源設置面が設けられ、第1~第12光源(10-1~12)がそれぞれの光源設置面に設けられる。
【0045】
隣り合う光源設置面の高低差、各光源設置面の面積は均等になるよう形成されている。
【0046】
第1~第12光源(10-1~12)は、波長915nm、出力8.3Wの半導体レーザ(LD)であり、サブマウント上に半導体レーザ素子を配置した態様を有する。
【0047】
第1~第12光源(10-1~12)の出射面近傍には、第1~第12光線(L1~L12)の速軸方向をコリメートするFACレンズ(20-1~12)が設けられる。
【0048】
第1~第12光源(10-1~12)を直列接続するよう、各光源の間はリードフレーム(図示せず)で接続される。第1~第12光源(10-1~12)には、第1階段部(221)付近に設けられた電極(図示せず)を通じて電流が供給される。
【0049】
第2階段部(222)には、上段から順に第1~第12ミラー設置面が設けられ、第1~第12ミラー(40-1~12)がそれぞれのミラー設置面に設けられる。
【0050】
隣り合うミラー設置面の高低差、各ミラー設置面の面積は均等になるよう形成されている。また、第1~第12ミラー設置面の高さはそれぞれ、第1~第12光源設置面の高さよりも所定量低い高さに設定される。
【0051】
ミラー(40)は、基材上に誘電体多層反射膜を設けたものであり、光源(10)が出力する波長に対する高い反射率を有する。ミラー(40)の高さは、対応する光源設置面に設置された光源から出射された光線を所定の方向に反射しつつ、対応する光源設置面の上段に設置された光源から出射された光線に干渉しない高さに設定される。
【0052】
第1階段部(221)と第2階段部(222)との間には、第1~第12光線(L1~L12)の遅軸方向をコリメートするSACレンズ(30-1~12)が設けられる。SACレンズ(30)を透過した第1~12光線(L1~L12)は、図2に示した光線(L)の断面形状と同様、長軸と短軸を有した略楕円形状で第1~12ミラー(40-1~12)に照射される。
【0053】
第1~第12ミラー(40-1~12)で反射された第1~第12光線(L1~L12)は、平面視した際に中心軸が一致した状態の光線群(LG)として、サブモジュール(200)から出射される。光線群(LG)を中心軸に垂直な方向で断面視すると、図4(a)に示すように、コリメートされた第1~第12光線(L1~L12)が垂直方向に沿って並列した状態となっている。
【0054】
光線群(LG)は筐体内に設けられた反射体(50)に対して照射され、反射体(50)は光線群(LG)を集光レンズ(60)に向けて反射する。集光レンズ(60)によって光線群(LG)は光ファイバ(70)に集光・結合される。光ファイバ(70)は最大で約100Wのレーザ光線を伝送する。反射体(50)に照射される光線群(LG)は、幅4mm×高さ4.2mmの大きさを目標として光線サイズが調整される。
【0055】
反射体(50)は幅8mm×高さ8mm×厚さ1mmの石英ガラス基板を基材とし、高さ方向中心部の幅8mm×高さ4.4mmの範囲に誘電体多層反射膜による反射面(51)を設け、上端と下端にそれぞれ残った幅8mm×高さ1.8mmの範囲に誘電体多層反射防止膜を設け、光透過部(52)としたものを使用する。実施例1における反射体(50)の概略図を図4に示す
【0056】
実施例1における光透過部(52)は、光線群(LG)が照射される領域の外側に、各光線の断面の長軸に対して略平行に設けられた状態となっている。
【0057】
反射体(50)の背面には、光受光部(80)として、光ファイバ(70)からの戻り光(RL)を受光するフォトダイオードが設けられる。
【0058】
[反射体による出力ロスの評価]
以上のように構成した実施例の光学モジュール(100)において、反射体(50)に照射される光線群(LG)の強度と、反射体(50)によって反射されて集光レンズ(60)へと向かう光線群(LG-R)の強度を比較し、反射体(50)による出力ロスを評価する。
【0059】
評価は室温(20℃)で行う。
【0060】
サブモジュール(200)への給電を行い、各光源(10)から8.3Wのレーザ光を出力させることで、サブモジュール(200)から約100Wのレーザ光を出力させる。
【0061】
反射体(50)の手前(図3のA地点)に、光線群(LG)を受光するのに十分な性能を有する光パワーメータを仮設し、光線群(LG)の強度を測定する。
【0062】
反射体(50)と集光レンズ(60)の間(図3のB地点)に、光線群(LG)の強度測定に使用したものと同じ光パワーメータを仮設して反射光線群(LG-R)の強度を測定し、光線群(LG)の強度と比較する。
【0063】
実施例1においてサブモジュール(200)から約100Wのレーザ光を出力させた際の、光線群(LG)の強度は97.5W、反射光線群(LG-R)の強度は96.7Wであった。実施例1のようなレーザ装置に使用される、光を反射するミラー等における出力ロスの許容値は一般的に1~2%程度と言われているところ、実施例1の反射体(50)による出力ロスは約0.8%であり、光学モジュール(100)を使用する上で許容できる範囲の出力ロスである。
【0064】
なお、光線群(LG)の強度が100Wから減少しているのは、FACレンズ(20)、SACレンズ(30)等を透過する際の減衰によるものである。
【0065】
[戻り光の評価]
実施例の光学モジュール(100)において、光受光部(80)で受光される戻り光(RL)の強度を評価する。
【0066】
評価は室温(20℃)で行う。
【0067】
光ファイバ(70)としてコア径200μm、クラッド径220μm、NA=0.22の石英ガラス製光ファイバを使用し、入射端と出射端は共に平面状に光学研磨され、光透過部(52)に使用したものと同じ誘電体多層反射防止膜を設ける。光ファイバ(70)の長さは50mmとする。
【0068】
光ファイバ(70)から出射された光を平行化するコリメートレンズと、平行化された光を対象物に集光する集光レンズとを有するレンズユニットを、光ファイバ(70)の出射端前方に配置し、光ファイバ(70)から出射された光をレンズユニットを介して対象物に照射・集光させる。
【0069】
レンズユニットは、その焦点が光ファイバ(70)の出射端、及び対象物が存在する位置と一致するよう配置する。また、対象物としてサブモジュール(200)に使用したミラー(40)を使用し、出射光に対して略100%の反射率を示す対象物とする。
【0070】
サブモジュール(200)への給電を行い、各光源(10)から8.3Wのレーザ光を出力させることで光学モジュール(100)から約100Wのレーザ光を出力させ、光ファイバ(70)を通じて、レーザ光を対象物へ照射する。
【0071】
対象物の表面で反射されたレーザ光の一部は、光ファイバ(70)への再入射によって戻り光(RL)として光学モジュール(100)内へと戻り、集光レンズ(60)によってコリメートされた後、反射体(50)に照射される。
【0072】
図4(b)に、実施例1における反射体(50)に対する戻り光(RL)の照射状態の概略図を示す。戻り光(RL)は光ファイバ(70)から出射された後、集光レンズ(60)によってコリメートされることで、反射体(50)に対して略円形の状態で照射される。
【0073】
戻り光(RL)のうち、反射面(51)に照射された光(RL-r)はサブモジュール(200)側への戻り光となり、反射体(50)の上端部・下端部に設けられた光透過部(52)に照射された光(RL-t)は光受光部(80)へと向かう戻り光(RL)となる。
【0074】
実施例1において光学モジュール(100)から100Wのレーザ光を出力させた際の、光受光部(80)で受光した戻り光(RL)の強度は1.6Wであった。光学モジュール(100)の動作状態を監視するために必要十分な強度である。
【0075】
実施例1の結果から、本発明によって対象物に照射する光の出力ロスを抑制しつつ、必要十分な戻り光(RL)を検出できることが確認できた。
【0076】
[実施例2]
反射体(50)として、幅8mm×高さ8mm×厚さ1mmの石英基板の高さ方向中心部の前面に、誘電体多層反射膜による反射面(51)を設け、そのうち中心部の幅8mm×高さ0.05mmの範囲は反射面(51)を除去し、誘電体多層反射防止膜を設けて光透過部(52)としたものを使用した以外は、実施例1と同様に構成した光学モジュール(100)を本発明の第2の実施例とする。実施例2における反射体(50)の概略図を図5に示す
【0077】
実施例2における光線群(LG)を中心軸に垂直な方向で断面視すると、実施例1と同様、図5(a)に示すように、コリメートされた第1~第12光線(L1~L12)が垂直方向に沿って並列した状態となっている。
【0078】
実施例2における光透過部(52)は、第6光線(L6)と第7光線(L7)が照射される領域の隙間に、各光線の断面の長軸に対して略平行に設けられた状態となっている。
【0079】
実施例2における戻り光(RL)は、図5(b)に示すように、反射体(50)の中心付近に照射された光(RL-t)が光受光部(80)へと向かう戻り光(RL)となり、その他の領域に照射された光(RL-r)がサブモジュール(200)側への戻り光となる。
【0080】
実施例2の光学モジュール(100)に対して、実施例1と同様に反射体(50)による出力ロス、及び戻り光の評価を行った。
【0081】
実施例2における光線群(LG)の強度は97.5W、反射光線群(LG-R)の強度は96.5Wであった。反射体(50)による出力ロスは約1%であり、光学モジュール(100)を使用する上で許容できる範囲の出力ロスである。
【0082】
実施例2における光受光部(80)で受光した戻り光(RL)の強度は1.5Wであった。光学モジュール(100)の動作状態を監視するために必要十分な強度である。
【0083】
実施例1、2における、反射体(50)による出力ロス、及び戻り光(RL)の強度は同等であるが、反射体(50)上で光透過部(52)が占める面積は実施例2の方が小さい。このことより、実施例2の態様は、戻り光(RL)の強度が高い中心部分が光透過部(52)を透過する構成により、効率良く戻り光(RL)を検出できる態様と評価できる。
【0084】
[実施例3]
反射体(50)として、幅8mm×高さ8mm×厚さ1mmの石英ガラス基板を基材とし、高さ方向中心部の幅8mm×高さ4.6mmの範囲に誘電体多層反射膜による反射面(51)を設け、上端と下端にそれぞれ残った幅8mm×高さ1.7mmの範囲に誘電体多層反射防止膜を設けた光透過部(52)に加え、反射面(51)中心部の幅2mm×高さ0.1mmの範囲の反射面(51)を除去し、誘電体多層反射防止膜を設けた光透過部(52)も形成したものを使用した以外は、、実施例1と同様に構成した光学モジュール(100)を本発明の第3の実施例とする。実施例3における反射体(50)の概略図を図6に示す
【0085】
実施例3における光線群(LG)を中心軸に垂直な方向で断面視すると、実施例1、2と同様、図6(a)に示すように、コリメートされた第1~第12光線(L1~L12)が垂直方向に沿って並列した状態となっている。
【0086】
実施例3における光透過部(52)は、光線群(LG)が照射される領域の外側と、第6光線(L6)と第7光線(L7)が照射される領域の隙間のそれぞれに、各光線の断面の長軸に対して略平行に設けられた状態となっており、第6光線(L6)と第7光線(L7)が照射される領域の隙間に形成された光透過部(52)については、反射体(50)の中心付近のみに設けられた状態となっている。
【0087】
実施例3における戻り光(RL)は、図6(b)に示すように、反射体(50)の上端部・下端部、及び中心付近に照射された光(RL-t)が光受光部(80)へと向かう戻り光(RL)となり、その他の領域に照射された光(RL-r)がサブモジュール(200)側への戻り光となる。
【0088】
実施例3の光学モジュール(100)に対して、実施例1、2と同様に反射体(50)による出力ロス、及び戻り光(RL)の評価を行った。
【0089】
実施例3における光線群(LG)の強度は97.5W、反射光線群(LG-R)の強度は95.6Wであった。反射体(50)による出力ロスは約1.9%であり、実施例1、2よりも増加したが、光学モジュール(100)を使用する上で許容できる範囲に留まっている。
【0090】
実施例3における光受光部(80)で受光した戻り光(RL)の強度は2.6Wであり、実施例1、2と比べて50%以上増加した。
【0091】
以上の結果から、実施例3の態様は、より多くの戻り光(RL)を検出する必要がある場合に利用できる態様と評価できる。
【0092】
以上の通り、本発明の採用により、反射体(50)による出力ロスを抑制しつつ、光受光部(80)で必要十分な戻り光(RL)を検出できることが確認できた。
【0093】
以上述べた実施例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であり、適宜変更されて供されることは言うまでもない。例えば、実施例における光線群(LG)の大きさを調整するために、光路中のSACレンズ(30)を傾斜して配置するなど、光学モジュール(100)の構成要素を適宜変更・調整することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の光学モジュールは材料加工用のレーザ装置の光源として使用される、複数の半導体レーザを使用したレーザモジュールの他、対象物に投光し、対象物からの反射光を受光・判定することで対象物の状態を評価するための光源装置などにも利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 光学モジュール
10 光源
20 FACレンズ
30 SACレンズ
40 ミラー
50 反射体
51 反射面
52 光透過部
60 集光レンズ
70 光ファイバ
80 光受光部
100 光学モジュール
200 サブモジュール
210 サブモジュール底板
221 第1階段部
222 第2階段部
300 筐体
301 蓋
302 底板
303 嵩上部
L 光線
RL 戻り光
LG、LG-R 光線群
図1
図2
図3
図4
図5
図6