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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089673
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】アルミニウム合金を含む粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20220609BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20220609BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20220609BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20220609BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20220609BHJP
【FI】
B22F1/00 N
C22C21/00 M
C22C21/00 L
C22C21/00 N
C22C30/00
C22C38/00 304
B22F1/00 G
B22F1/02 A
B22F1/00 C
B22F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202262
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591104169
【氏名又は名称】日本カロライズ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰成
(72)【発明者】
【氏名】古田 和久
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB06
4K018BC01
4K018BC12
(57)【要約】
【課題】一次粒子の形態で、二種類のアルミニウム合金の混合相を有する粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム合金を含む粒子であって、一次粒子の状態で、略球状であり、組成MAlで表される相、およびMAlで表される相の混合相を有し、ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1であり、アルミニウムの含有量が8質量%~50質量%の範囲である、粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金を含む粒子であって、
一次粒子の状態で、
略球状であり、
組成MAlで表される相、およびMAlで表される相の混合相を有し、ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1であり、
アルミニウムの含有量が8質量%~50質量%の範囲である、粒子。
【請求項2】
前記Mは、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、白金(Pt)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、およびコバルト(Co)からなる群から選定された少なくとも一つを含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記Mは、Feであり、
前記一次粒子は、FeAl相およびFeAl相を有する、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
前記Mは、Crであり、
前記一次粒子は、CrAl相およびCrAl相を有する、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項5】
前記Mは、Niであり、
前記一次粒子は、NiAl相およびNiAl相を有する、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項6】
平均粒径が10μm~150μmの範囲である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金を含む粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム合金粉末は、比強度が高く、各種環境に対して良好な耐性を有するなどの特徴を有するため、各種用途に対して需要がある。
【0003】
通常、アルミニウム合金粉末は、アトマイズ法により製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-108305号公報
【特許文献2】国際公開第WO2018/116856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、MAl二元系合金(Mはアルミニウム以外の金属)において、組成の異なる二種類のアルミニウム合金相を含む粒子に対するニーズが高まっている。
【0006】
例えば、アルミニウム合金粒子に含まれるアルミニウム量を高めると、耐食性および高温耐酸化性などの化学的耐性は向上するものの、延性は低下する傾向にある。また、逆にアルミニウム合金粒子に含まれるアルミニウム量を低下させると、延性は向上するものの、耐食性および高温耐酸化性などの化学的耐性は低下してしまう。
【0007】
これに対して、アルミニウム濃度が低い合金相(第1のアルミニウム合金相)と、アルミニウム濃度が高い合金相(第2のアルミニウム合金相)とを組み合わせることができれば、延性を有し、化学的耐性にも優れる合金粒子を提供することができる。
【0008】
このような観点から、特許文献2には、FeAl相とFeAl相を含む粉末が提案されている。この場合、耐酸化性に優れるFeAl相と延性のあるFeAl相の両方の特徴を兼ね備えた合金粉末を得ることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の合金粉末は、アルミニウム合金粉末と鉄系粉末とを含む一次粒子の造粒粉同士を焼結させた、二次粒子の形態で提供される。
【0010】
そのような二次粒子は、製造プロセスが煩雑な上、ハンドリングの際に破砕が生じるおそれがある。そのような破砕が生じると、各種組成の粒子が混在してしまい、粒子の均一性が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、一次粒子の形態で、二種類のアルミニウム合金の混合相を有する粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、アルミニウム合金を含む粒子であって、
一次粒子の状態で、
略球状であり、
組成MAlで表される相、およびMAlで表される相の混合相を有し、ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1であり、
アルミニウムの含有量が8質量%~50質量%の範囲である、粒子が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、一次粒子の形態で、二種類のアルミニウム合金の混合相を有する粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による粒子の断面を模式的に示した図である。
図2】本発明の別の実施形態による粒子の断面を模式的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による粒子の製造方法のフローの一例を模式的に示した図である。
図4】混合粒子が反応容器内に充填された様子を模式的に示した図である。
図5】本発明の一実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
図6】本発明の別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b))を示した図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
図8】本発明のさらに別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
図9】本発明のさらに別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
図11】本発明のさらに別の実施形態において得られた粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
前述のように、組成の異なる二種類のアルミニウム合金相を含む、MAl二元系合金(Mはアルミニウム以外の金属)の粒子に対してニーズがある。また、このニーズに対処するため、特許文献2には、二種類のアルミニウム合金相を含む二次粒子が記載されている。
【0017】
しかしながら、二次粒子は、製造プロセスが煩雑な上、ハンドリングの際に破砕が生じるおそれがある。そのような破砕が生じると、各種組成の粒子が混在してしまい、粒子の均一性が低下するという問題がある。
【0018】
これに対して、本発明の一実施形態では、アルミニウム合金を含む粒子であって、
一次粒子の状態で、
略球状であり、
組成MAlで表される相、およびMAlで表される相の混合相を有し、ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1であり、
アルミニウムの含有量が8質量%~50質量%の範囲である、粒子が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態による粒子は、組成がMAlで表される相(以下、「第1のアルミニウム合金相」と称する)と、組成がMAlで表される相(以下、「第2のアルミニウム合金相」と称する)と、を含む。ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1である。
【0020】
本発明の一実施形態による粒子は、アルミニウム含有量がより少ない「第1のアルミニウム合金相」と、アルミニウム含有量がより多い「第2のアルミニウム合金相」と、を有する。このため、本発明の一実施形態では、「第1のアルミニウム合金相」に由来する、良好な延性と、「第2のアルミニウム合金相」に由来する、良好な耐食性および高温耐酸化性と、を兼ね備えた粒子を提供することができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態による粒子は、一次粒子の形態で提供することができる。
【0022】
従って、本発明の一実施形態による粒子は、特許文献2に記載の二次粒子のような煩雑な製造プロセスを経ずに製造できる。また、本発明の一実施形態による粒子では、ハンドリングの際に破砕が生じ、粒子の均一性が低下するという問題を軽減、または解消することができる。
【0023】
本発明の一実施形態による粒子は、略球状である。
【0024】
なお、本願において、「略球形」または「略球状」とは、純粋な球に限定されず、例えば楕円のような、相互に直交するX軸方向とY軸方向における寸法差が±20%以内の形状を含むことを意味する。
【0025】
本発明の一実施形態による粒子は、5μm~600μmの範囲の平均粒径を有してもよい。平均粒径は、8μm~200μmの範囲であることが好ましく、10μm~150μmの範囲であることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明の一実施形態による粒子の平均粒径は、後述するように、JIS Z 8801に規定された方法で測定される。
【0027】
(本発明の一実施形態による粒子の具体例)
以下、前述のような特徴を有する本発明の一実施形態による粒子の具体例について、説明する。
【0028】
(鉄-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、鉄-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、FeAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、FeAlである。
【0029】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、32質量%~48質量%の範囲である。
【0030】
(クロム-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、クロム-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、CrAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、CrAlである。
【0031】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、22質量%~42質量%の範囲である。
【0032】
(ニッケル-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、ニッケル-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、NiAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、NiAlである。
【0033】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、36質量%~39質量%の範囲である。
【0034】
(モリブデン-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、モリブデン-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、MoAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、MoAlである。
【0035】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、8質量%~42質量%の範囲である。
【0036】
(銅-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、銅-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、CuAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、CuAlである。
【0037】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、30質量%~45質量%の範囲である。
【0038】
(マンガン-アルミニウム合金粒子)
本発明の一実施形態による粒子は、マンガン-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、例えば、第1のアルミニウム合金相MAlは、MnAlであり、第2のアルミニウム合金相MAlは、MnAlである。
【0039】
一次粒子全体に含まれるアルミニウム濃度は、例えば、25質量%~34質量%の範囲である。
【0040】
以上、本発明の一実施形態による粒子の材料系の一例について説明した。しかしながら、上記材料系は、単なる一例であって、本発明の一実施形態による粒子は、その他の材料系を有してもよい。例えば、本発明の一実施形態による粒子は、タングステン-アルミニウム系、コバルト-アルミニウム系、白金-アルミニウム系、ハフニウム-アルミニウム系、またはジルコニウム-アルミニウム系であってもよい。
【0041】
また、上記材料系の複数が組み合わされて、本発明の一実施形態による粒子が構成されてもよい。
【0042】
例えば、本発明の一実施形態による粒子は、鉄-クロム-アルミニウム合金粒子であってもよい。この場合、本発明の一実施形態による粒子は、例えば、FeAlおよびFeAlに加えて、CrAlおよびCrAlを含んでもよい。
【0043】
(本発明の一実施形態による粒子)
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態による粒子の形態について説明する。
【0044】
なお、ここでは、一例として、粒子が鉄-アルミニウム合金粒子である場合について、説明する。
【0045】
図1には、本発明の一実施形態による粒子(以下、「第1の粒子」と称する)の断面を模式的に示す。
【0046】
なお、図1に示された第1の粒子の断面は、「最大断面」である。本願において、「最大断面」とは、粒子の中心を通る断面を意味する。例えば、粒子が球状の場合、「最大断面」は、粒子の直径と実質的に同じ寸法を有する。
【0047】
図1に示すように、第1の粒子100は、略球形の形状を有する。
【0048】
第1の粒子100の断面(最大断面。以下同じ)は、アルミニウム濃度が異なる2つの領域を有する。以下、アルミニウム濃度が相対的に低い領域を「第1の領域110」と称し、アルミニウム濃度が相対的に高い領域を「第2の領域120」と称する。
【0049】
図1に示すように、第1の粒子100は、コア部が第1の領域110を構成し、外層が第2の領域120を構成する。第2の領域120は、第1の領域110を取り囲むように配置される。
【0050】
なお、図1に示した例では、第1の領域110と第2の領域120の間の境界は、明確な線で描かれているが、両者の境界があいまいな場合も、しばしば認められる。
【0051】
第1の粒子100の断面全体に含まれるアルミニウムの濃度は、32wt%~48wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、35wt%~45wt%の範囲であってもよい。
【0052】
また、第1の粒子100の断面全体に含まれる鉄の濃度は、例えば、52wt%~68wt%の範囲であってもよい。ただし、鉄の濃度は、第1の粒子100がさらに後述する元素を含有する場合、この範囲よりも減少する。
【0053】
第1の粒子100の断面全体に含まれるアルミニウムおよび鉄の濃度は、エネルギー分散型X線(EDX)分析法または電子線マイクロアナライザ(EPMA)分析法により測定することができる。
【0054】
第1の粒子100は、鉄およびアルミニウム以外の元素(以下、「第3元素」と称する)を含んでもよい。第3元素は、例えば、リン、硫黄、および炭素の少なくとも一つを含む。
【0055】
第3元素は、合計0.05wt%~1wt%の範囲で含まれてもよい。なお、第1の粒子100に第3元素が含まれる場合、鉄の濃度は、前述の範囲(52wt%~68wt%)から、第3元素の濃度を減じた濃度となる。すなわち、第3元素は、鉄の代替元素または不可避不純物として存在する。
【0056】
第1の粒子100の第1の領域110は、主としてFeAl相を含む。第1の領域110に含まれるアルミニウムの濃度は、22wt%~37wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、25wt%~35wt%の範囲であってもよい。
【0057】
一方、第1の粒子100の第2の領域120は、主としてFeAl相とFeAl相の混相を含む。第2の領域120に含まれるアルミニウムの濃度は、40wt%~50wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、42wt%~48wt%の範囲であってもよい。
【0058】
なお、第1の粒子100における第1の領域110および第2の領域120におけるアルミニウムの濃度は、各部分を選定したEDX分析またはEPMA分析により測定できる。また、第1の領域110および第2の領域120のそれぞれに含まれる構成相は、X線回折分析法により同定できる。
【0059】
第1の粒子100の断面において、第2の領域120の占める面積の割合は、例えば、5%以上である。なお、係る面積割合は、断面のSEM反射電子像を用いて、Al濃度のコントラストを二値化して定義することにより評価することができる。
【0060】
第1の粒子100は、一次粒子でありながら、「第1のアルミニウム合金相」および「第2のアルミニウム合金相」を有する。このため、第1の粒子100は、「第1のアルミニウム合金相」に由来する良好な延性と、「第2のアルミニウム合金相」に由来する良好な耐食性および高温耐酸化性とを兼ね備えることができる。
【0061】
また、第1の粒子100は、一次粒子であるため、ハンドリングの際に破砕が生じ、粒子の均一性が低下するという問題を軽減、または解消することができる。
【0062】
(本発明の別の実施形態による粒子)
次に、図2を参照して、本発明の別の実施形態による粒子について説明する。
【0063】
図2には、本発明の別の実施形態による粒子(以下、「第2の粒子」と称する)の断面を模式的に示す。前述のように、図2に示した断面は、第2の粒子の「最大断面」である。
【0064】
図2に示すように、第2の粒子200は、略球形の形状を有する。また、第2の粒子200の断面は、アルミニウム濃度が異なる2つの領域を有する。
【0065】
ただし、第2の粒子200の場合、前述の第1の粒子100とは異なり、第2の領域は、全体にわたって「まだら状」に配置される。
【0066】
すなわち、第2の粒子200において、アルミニウム濃度が相対的に高い第2の領域220は、アルミニウム濃度が相対的に低い第1の領域210の「海」に対して、「アイランド状」に分布する。
【0067】
換言すれば、「海状」の第1の領域210と、「アイランド状」の第2の領域220とにより、第2の粒子200の断面全体が構成される。第2の粒子200の場合、最表面においても、第1の領域210と第2の領域220の双方が存在する。
【0068】
第2の粒子200は、鉄およびアルミニウムを含み、第2の粒子200の断面全体に含まれるアルミニウムの濃度は、32wt%~48wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、35wt%~45wt%の範囲であってもよい。
【0069】
また、第2の粒子200の断面全体に含まれる鉄の濃度は、例えば、52wt%~68wt%の範囲であってもよい。ただし、前述のように、鉄の濃度は、第2の粒子200が第3の元素を含有する場合、この範囲よりも減少する。
【0070】
第2の粒子200の第1の領域210は、主としてFeAl相を含む。第1の領域210に含まれるアルミニウムの濃度は、22wt%~37wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、25wt%~35wt%の範囲であってもよい。
【0071】
一方、第2の粒子200の第2の領域220は、主としてFeAl相とFeAl相の混相を含む。第2の領域220に含まれるアルミニウムの濃度は、40wt%~50wt%の範囲である。アルミニウムの濃度は、例えば、42wt%~48wt%の範囲であってもよい。
【0072】
第2の粒子200の断面において、第2の領域220の占める面積の割合は、例えば、5%以上である。
【0073】
第2の粒子200は、一次粒子でありながら、「第1のアルミニウム合金相」および「第2のアルミニウム合金相」を有する。このため、第2の粒子200は、「第1のアルミニウム合金相」に由来する良好な延性と、「第2のアルミニウム合金相」に由来する良好な耐食性および高温耐酸化性とを兼ね備えることができる。
【0074】
また、第2の粒子200は、一次粒子であるため、ハンドリングの際に破砕が生じ、粒子の均一性が低下するという問題を軽減、または解消することができる。
【0075】
以上、第1の粒子100および第2の粒子200を例に、本発明の一実施形態による粒子の特徴について説明した。
【0076】
しかしながら、第1の粒子100および第2の粒子200は、単なる一例であって、本発明の一実施形態による粒子は、これらとは異なる形態を有してもよい。
【0077】
例えば、本発明の一実施形態による粒子は、図1に示した粒子形態と、図2に示した粒子形態を組み合わせた形態を有してもよい。
【0078】
この場合、図1に示したコア-シェル状の粒子形態において、第1の領域の内部にも、第2の領域が分配されてもよい。あるいは逆に、第2の領域の内部に、第1の領域が分配されてもよい。
【0079】
また、図1および図2には示されていないが、第1の粒子100および第2の粒子200において、しばしば、棒状(または球状)の析出物が、粒子の中心を中心とするリング状に分布している形態が観測される。各析出物の寸法は、例えば、0.1μm~2μmの範囲である。
【0080】
本願発明者らの分析によれば、そのような析出物は、アルミニウムの酸化物、またはアルミニウムと金属Mの複合酸化物で構成される。また、本願発明者らの分析によれば、そのような析出物は、第1の粒子100および第2の粒子200が、鉄-アルミニウム合金粒子であって、以降に示すようなカロライズ処理方法によって製造された場合に、形成されやすいことが把握されている。
【0081】
また、このような析出物は、転位のすべりを抑制する方向に働くため、粒子の強度の向上につながると予想される。
【0082】
この他にも、各種形態が想定される。
【0083】
(本発明の一実施形態による粒子の製造方法)
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態による粒子の製造方法について説明する。
【0084】
図3には、本発明の一実施形態による粒子の製造方法のフローの一例を模式的に示す。
【0085】
図3に示すように、本発明の一実施形態による粒子の製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する)は、
被処理粒子、アルミニウム源、活性剤、および焼結防止剤を含む混合粒子を調製する工程(S110)と、
前記混合粒子を加熱して、被処理粒子をカロライズ処理する工程(S120)と、
焼結防止剤を除去する工程(S130)と、
を有する。
【0086】
以下、各工程についてより詳しく説明する。
【0087】
(工程S110)
まず、混合粒子が調製される。
【0088】
混合粒子は、被処理粒子、アルミニウム源、活性剤、および焼結防止剤を含む。以下、それぞれの粒子について説明する。
【0089】
(被処理粒子)
被処理粒子は、カロライズ処理の対象となる粒子である。
【0090】
被処理粒子は、例えば、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、白金(Pt)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、およびコバルト(Co)からなる群から選定された少なくとも一つの元素を含んでもよい。
【0091】
また、被処理粒子は、単金属に限られず、上記元素を含む合金であってもよい。例えば、被処理粒子は、ステンレス鋼粒子、または鉄-アルミニウム合金粒子などであってもよい。
【0092】
さらに、被処理粒子は、不可避不純物を含んでもよい。不可避不純物としては、例えば、リン、硫黄、および炭素等が挙げられる。
【0093】
なお、以降の説明では、明確化のため、一例として、被処理粒子が鉄である場合を例に、第1の製造方法について説明する。なお、被処理粒子は、不可避不純物を含んでもよく、不可避不純物としては、マンガン、リン、硫黄、および炭素が挙げられる。
【0094】
被処理粒子の平均粒径は、後述する焼結防止剤の平均粒径よりも小さくなるように選定される。例えば、被処理粒子の最大粒径は、焼結防止剤の平均粒径の0.29倍以下であってもよい。
【0095】
被処理粒子の粒径は、例えば、10μm~600μmの範囲であってもよい。
【0096】
なお、本願において、「平均粒径」とは、JIS Z 8801に規定された方法で測定される。
【0097】
すなわち、目開きの異なるふるいを、目開きの小さなものから順に数段重ね合わせ、測定対象粒子を一定時間、一定振幅で振動を与え、粒子をふるい分ける。次に、それぞれのふるい上に残った粒子の質量を計測し、粒子の質量の粒度分布をグラフ化する。得られた粒度分布の累積値が50%に相当する粒径を、「平均粒径」と定める。
【0098】
ただし、被処理粒子の粒径は、最小値と最大値の範囲で表記される。
【0099】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、アルミニウム金属粒子、またはアルミニウム合金粒子であってもよい。
【0100】
アルミニウム源の平均粒径は、焼結防止剤の平均粒径よりも小さくなるように選定される。例えば、アルミニウム源の平均粒径は、焼結防止剤の平均粒径の0.29倍以下であってもよい。
【0101】
アルミニウム源の平均粒径は、例えば、10μm~600μmの範囲であってもよい。
【0102】
なお、アルミニウム源の平均粒径は、被処理粒子の平均粒径よりも小さいことが好ましい。
【0103】
(活性剤)
活性剤は、被処理粒子のカロライズ処理の際に、金属ハロゲン化物の蒸気を形成し、カロライズ処理を促進させる役割を有する。
【0104】
活性剤は、例えば、塩化アンモニウム、塩化鉄、塩化アルミニウム、フッ化鉄およびフッ化アルミニウムの少なくとも一つを含む。活性剤は、例えば、混合粒子全体に対して、0.1質量%~2質量%の範囲で添加される。
【0105】
(焼結防止剤)
焼結防止剤は、アルミナ、カオリン、および酸化ケイ素の少なくとも一つを含んでもよい。
【0106】
焼結防止剤は、例えば、球状、三角錐状、三角柱状、四面体状、円錐状、および円柱状からなる群から選定された少なくとも一つの形状を有してもよい。
【0107】
なお、焼結防止剤は、被処理粒子およびアルミニウム源に比べて、十分に大きな平均粒径を有する。例えば、焼結防止剤の平均粒径は、被処理粒子の最大粒径およびアルミニウム源の平均粒径の3.4倍以上となるように選定される。
【0108】
焼結防止剤の平均粒径は、例えば、500μm~5000μmの範囲であってもよい。
【0109】
(混合粒子)
上記各成分を混合することにより、混合粒子が調製される。
【0110】
混合粒子全体に含まれる被処理粒子の量は、例えば、10質量%~40質量%の範囲である。また、混合粒子全体に含まれるアルミニウム源の量は、例えば、2質量%~20質量%の範囲である。また、混合粒子全体に含まれる焼結防止剤の量は、例えば、40質量%~80質量%の範囲である。
【0111】
(工程S120)
次に、工程S110で調製された混合粒子が加熱処理される。このため、混合粒子は、反応容器内に充填されてもよい。
【0112】
反応容器を加熱することにより、被処理粒子に対してカロライズ処理が行われる。すなわち、アルミニウム源から生じたアルミニウムが被処理粒子中に拡散浸透し、アルミニウム浸透粒子が形成される。
【0113】
ここで、混合粒子に含まれる被処理剤とアルミニウム源とのイオン化傾向の差が大きいほど、反応容器を加熱した際に、混合粒子の間でテルミット反応によって大量の熱が発生する。アルミニウムが被処理粒子に含まれる微量の酸素と反応して、被処理粒子を還元するためである。
【0114】
そのようなテルミット反応が生じると、反応容器内が極めて高温となり、処理後の混合物、すなわち「処理済混合物」は、全ての粒子同士が強固に固着した塊状の形態となる。また、いったん、そのような塊状の処理済混合物が生成されると、その後、処理済混合物から焼結防止剤を分離することができなくなるという問題が生じ得る。
【0115】
これに対して、第1の製造方法では、塊状の混合物が形成することを有意に抑制することができる。
【0116】
以下、図4を参照して、この特徴について説明する。
【0117】
図4には、混合粒子が反応容器内に充填された際の形態の例を模式的に示す。図4に示すように、反応容器内には、混合粒子の構成成分である、被処理粒子352、アルミニウム源354、活性剤、および焼結防止剤358が各々充填される。
【0118】
なお、図4において、活性剤は省略されている。また、ここでは、混合粒子の各成分は、いずれも球形であると仮定している。
【0119】
ここで、焼結防止剤358の直径(φで表す)が、被処理粒子352の直径(φFeで表す)およびアルミニウム源354の直径(φAlで表す)に比べて十分に大きい場合、隣接する焼結防止剤358同士の間に、空隙365が生じる。また、被処理粒子352およびアルミニウム源354は、焼結防止剤358によって生じた空隙365に配置される。
【0120】
混合粒子がこのように配置された状態で、反応容器が加熱された場合、反応容器内でテルミット反応が生じても、被処理粒子352が焼結防止剤358および/または他の被処理粒子352と固着する可能性を大きく低減できる。空隙365が、カロライズ処理用の多数の反応用の「小区画」を提供する役割を果たすためである。
【0121】
その結果、熱処理後に生じる処理済混合物は、全体が塊状に凝集した形態ではなく、アルミニウム浸透粒子と、焼結防止剤358とが、相互に分離された状態となる。このため、その後の工程で、処理済混合物から、アルミニウム浸透粒子を回収することが可能となる。
【0122】
以下の表1には、上記の効果を発現させることが可能な混合粒子の充填の例を示す。
【0123】
ここでは、被処理粒子352を球状の鉄粒子(密度7.87g/cm)とし、アルミニウム源354を球状のアルミニウム粒子(密度2.70g/cm)とし、活性剤を球状の塩化アンモニウム粒子(密度1.527g/cm)とし、焼結防止剤358を球状のアルミナ(密度4.00g/cm)と仮定している。
【0124】
また、焼結防止剤358の平均粒径φを1000μmと仮定し、被処理粒子352の平均粒径φFeを10μm~600μmとし、アルミニウム源354の平均粒径φAlを50μmとし、活性剤の平均粒径を10μmと仮定している。
【0125】
【表1】
表1から、焼結防止剤358を10kg最密充填した場合、全空間体積の74%が焼結防止剤358で占められる。従って、空隙365は26%となる。
【0126】
この空隙365の全体(100%)を、被処理粒子352、アルミニウム源354、および活性剤で充填するとした場合、一例として、被処理粒子352の量は2.216kg、アルミニウム源354の量は1.491kg、活性剤の量は、0.067kgとなる。
【0127】
同様に、空隙365の85%を被処理粒子352、アルミニウム源354、および活性剤で充填する場合、被処理粒子352の量は1.879kg、アルミニウム源354の量は1.253kg、活性剤の量は、0.066kgと計算できる。
【0128】
なお、上記計算において、混合粒子におけるAl/Fe比は、40/60(質量比)と仮定している。また、活性剤の量は、全体の0.5wt%と仮定している。
【0129】
焼結防止剤358が最密充填以外の態様で充填される場合についても、各成分の量を同様に算定することができる。
【0130】
なお、焼結防止剤358が球状の場合、前述の効果を得るためには、焼結防止剤358の充填率は、55%~74%(最密充填時)の範囲であることが好ましい。
【0131】
また、焼結防止剤358によって生じる空隙365における、被処理粒子352、アルミニウム源354、および活性剤の充填率は、60%~100%の範囲であることが好ましい。
【0132】
ただし、実際には、焼結防止剤358が非球形の場合も想定されるため、焼結防止剤358の充填率の好適範囲として、50%~80%が想定される。
【0133】
このように、第1の製造方法では、焼結防止剤358同士の間に生じる空隙365を利用して、被処理粒子352のカロライズ処理を実施することができる。
【0134】
カロライズ処理の処理雰囲気は、酸素を含まない不活性な雰囲気であればよく、例えばアルゴンガス雰囲気である。
【0135】
処理温度は、被処理粒子に対してアルミニウムの拡散浸透が生じる限り、特に限られない。処理温度は、例えば、800℃~1100℃の範囲であってもよい。
【0136】
処理時間は、特に限られないが、例えば、1時間~10時間の範囲である。
【0137】
このように、第1の製造方法では、被処理粒子に対して、適正にカロライズ処理を実施することができる。従って、第1の製造方法では、前述のような特徴を有する本発明の一実施形態による粒子を、適正に製造することができる。
【0138】
(工程S130)
次に、工程S120において形成された粉末状の処理済混合物から、焼結防止剤が除去される。焼結防止剤は、例えば、平均粒径の小さな粒子のみを通すふるいを用いて、処理済混合物をふるい分けすることにより、除去されてもよい。
【0139】
前述のように、第1の製造方法では、テルミット反応で生じ得る過剰な熱の蓄熱による、反応系の高温化を有意に抑制できる。
【0140】
従って、第1の製造方法では、焼結防止剤とアルミニウム浸透粒子とを比較的容易に分離することができる。
【0141】
以上の工程により、第1の製造方法では、二種類のアルミニウム合金相を含む一次粒子を製造することができる。
【0142】
なお、上記記載では、主として、鉄-アルミニウム合金粒子を例に、その製造法について説明した。しかしながら、その他の系のアルミニウム合金粒子も、同様の方法により製造できることは、当業者には明らかである。
【実施例0143】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0144】
(例1)
以下の方法で、カロライズ処理された鉄粒子を作製した。
【0145】
まず、被処理粒子としての鉄粒子(13.20質量%)と、アルミニウム源としてのアルミニウム粒子(9.96質量%)と、活性剤としての塩化アンモニウム粒子(0.5質量%)と、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子(76.34質量%)を十分に混合して、混合粒子を調製した。
【0146】
鉄粒子は粒径が38μm~75μmであり、アルミニウム粒子は平均粒径が50μmであり、活性剤は粒径が10μmであり、アルミナ粒子は粒径が1000μmであった。
【0147】
この混合粒子を耐熱容器に充填した。計算上、アルミナ粒子の充填率は、74%であった。また、鉄粒子、アルミニウム粒子、および塩化アンモニウム粒子は、残り26%の空隙の85%を占めるように充填した。
【0148】
次に、耐熱容器内をアルゴン雰囲気に置換してから、耐熱容器を1000℃に加熱した。1000℃に10時間保持した後、耐熱容器を炉冷した。
【0149】
その後、耐熱容器から処理済混合物を取り出し、#32メッシュのふるいにかけ、アルミナ粉末を除去した。これにより、球状の粒子(以下、「例1に係る粒子」と称する)が得られた。
【0150】
(例2)
例1と同様の方法により、カロライズ処理された鉄粒子(以下、「例2に係る粒子」と称する)を作製した。
【0151】
ただし、この例2では、混合粒子に含まれる鉄粒子の含有量を14.24質量%とし、アルミニウム粒子の含有量を9.49質量%とし、活性剤としての塩化アンモニウム粒子を0.5質量%とし、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子を75.77質量%とした。
【0152】
アルミナ粒子の充填率等、その他の条件は、例1と同様である。
【0153】
(例3)
例1と同様の方法により、カロライズ処理された鉄粒子(以下、「例3に係る粒子」と称する)を作製した。
【0154】
ただし、この例3では、混合粒子に含まれる鉄粒子の含有量を15.71質量%とし、アルミニウム粒子の含有量を8.83質量%とし、活性剤としての塩化アンモニウム粒子を0.5質量%とし、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子を74.96質量%とした。
【0155】
アルミナ粒子の充填率等、その他の条件は、例1と同様である。
【0156】
(例4)
例1と同様の方法により、カロライズ処理された鉄粒子(以下、「例4に係る粒子」と称する)を作製した。
【0157】
ただし、この例4では、混合粒子に含まれる鉄粒子の含有量を16.87質量%とし、アルミニウム粒子の含有量を8.31質量%とし、活性剤としての塩化アンモニウム粒子を0.5質量%とし、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子を74.32質量%とした。
【0158】
アルミナ粒子の充填率等、その他の条件は、例1と同様である。
【0159】
(例11)
以下の方法で、カロライズ処理されたクロム粒子を作製した。
【0160】
まず、被処理粒子としてのクロム粒子(27.3質量%)と、アルミニウム源としてのアルミニウム粒子(18.2質量%)と、活性剤としての塩化アンモニウム粒子(0.5質量%)と、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子(54.0質量%)を十分に混合して、混合粒子を調製した。
【0161】
クロム粒子は粒径が75μm~180μmであり、アルミニウム粒子は平均粒径が50μmであり、活性剤は粒径が10μmであり、アルミナ粒子は粒径が1000μmであった。
【0162】
この混合粒子を耐熱容器に充填した。計算上、アルミナ粒子の充填率は、52%であった。また、クロム粒子、アルミニウム粒子、および塩化アンモニウム粒子は、残り48%の空隙の86%を占めるように充填した。
【0163】
次に、耐熱容器内をアルゴン雰囲気に置換してから、耐熱容器を1000℃に加熱した。1000℃に10時間保持した後、耐熱容器を炉冷した。
【0164】
その後、耐熱容器から処理済混合物を取り出し、#32メッシュのふるいにかけ、アルミナ粉末を除去した。これにより、球状の粒子(以下、「例11に係る粒子」と称する)が得られた。
【0165】
(例12)
例11と同様の方法により、カロライズ処理されたクロム粒子(以下、「例12に係る粒子」と称する)を作製した。
【0166】
ただし、この例12では、混合粒子に含まれるクロム粒子の含有量を30.3質量%とし、アルミニウム粒子の含有量を15.1質量%とし、活性剤としての塩化アンモニウム粒子を0.5質量%とし、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子を54.1質量%とした。
【0167】
この混合粒子を耐熱容器に充填した。計算上、アルミナ粒子の充填率は、53%であった。また、クロム粒子、アルミニウム粒子、および塩化アンモニウム粒子は、残り47%の空隙の84%を占めるように充填した。
【0168】
(例21)
以下の方法で、カロライズ処理されたニッケル粒子を作製した。
【0169】
まず、被処理粒子としてのニッケル粒子(28.2質量%)と、アルミニウム源としてのアルミニウム粒子(17.3質量%)と、活性剤としての塩化アンモニウム粒子(0.5質量%)と、焼結防止剤としての球形アルミナ粒子(54.0質量%)を十分に混合して、混合粒子を調製した。
【0170】
ニッケル粒子は粒径が10μm~45μmであり、アルミニウム粒子は平均粒径が50μmであり、活性剤は粒径が10μmであり、アルミナ粒子は粒径が1000μmであった。
【0171】
この混合粒子を耐熱容器に充填した。計算上、アルミナ粒子の充填率は、54%であった。また、ニッケル粒子、アルミニウム粒子、および塩化アンモニウム粒子は、残り46%の空隙の85%を占めるように充填した。
【0172】
次に、耐熱容器内をアルゴン雰囲気に置換してから、耐熱容器を1000℃に加熱した。1000℃に10時間保持した後、耐熱容器を炉冷した。
【0173】
その後、耐熱容器から処理済混合物を取り出し、#32メッシュのふるいにかけ、アルミナ粉末を除去した。これにより、球状の粒子(以下、「例21に係る粒子」と称する)が得られた。
【0174】
以下の表2には、各例において使用した混合粒子に含まれる各成分の含有量および粒径をまとめて示した。
【0175】
【表2】
(評価1)
例1~例4に係る粒子を用いて、粒子の形態観察を行った。
【0176】
(断面分析)
例1~例4に係る粒子を用いて、以下の方法で、断面観察用試料を調製した。
【0177】
まず、複数の粒子を樹脂に埋め込み、樹脂を硬化させた。次に、研磨紙およびバフ研磨装置により樹脂を研磨し、粒子の断面を出現させた。
【0178】
なお、観察対象は、「最大断面」を有する粒子とした。ここで、「最大断面」とは、球状粒子の中心を通る断面を意味する。従って、粒子の「最大断面」は、球状粒子の直径と実質的に同じ寸法を有する。
【0179】
以下、例1~例4に係る粒子において、観察対象となる球状粒子を、それぞれ、「サンプル1」~「サンプル4」と称する。
【0180】
各サンプルにおいて、球状粒子の断面をSEMで観察した。また、球状粒子の断面に含まれるアルミニウムおよび鉄の量を、EDX分析により評価した。
【0181】
図5図8には、それぞれ、サンプル1~4において得られた球状粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示す。
【0182】
例えば、図5には、サンプル1において得られた球状粒子の断面(図5(a))、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(図5(b))を示す。また、図6には、サンプル2において得られた球状粒子の断面(図6(a))、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(図6(b))を示し、以下同様である。
【0183】
なお、各サンプルにおいて、断面に含まれる鉄の分布は、アルミニウムの分布を反転したような形態であった。
【0184】
図5図8から、サンプル1~サンプル4のいずれにおいても、粒子中には、アルミニウムの含有量が低い領域(第1の領域)と、高い領域(第2の領域)が混在していることが確認された。
【0185】
例えば、図5から、サンプル1は、前述の図1に示したような、アルミニウム濃度がより低いコア部(第1の領域)と、アルミニウム濃度がより高い外層部(第2の領域)とを有することがわかる。また、図7図8から、サンプル3~サンプル4は、前述の図2に示したような、アルミニウム濃度の低い領域と高い領域が、「まだら状」に配置された形態を有することがわかる。なお、図6に示すように、サンプル2は、基本的に、アルミニウム濃度の高い領域がアルミニウム濃度の低い領域を取り囲むコアーシェル構造を有するものの、コア部においても、アルミニウム濃度が高い領域がアイランド状に分散する形態を有することがわかった。
【0186】
また、サンプル4(図8(b))において最もよく視認されるように、粒子の断面には、リング状に白っぽい析出物が生じていることがわかる。分析の結果、このリング状の析出物は、アルミニウムの酸化物、またはアルミニウムと鉄の複合酸化物であることが確認された。
【0187】
EDX分析により、サンプル1~サンプル4において、第1の領域および第2の領域のそれぞれに含まれる鉄とアルミニウムの量を分析した。
【0188】
以下の表3には、サンプル1~サンプル4において得られた結果をまとめて示す。
【0189】
【表3】
この結果、および前述のEDX分析の結果から、サンプル1~サンプル4において、第1の領域は、FeAlを主体とする相で構成され、第2の領域は、FeAlを主体とする相で構成されていることがわかった。
【0190】
次に、各サンプル1~4において得られた断面において、エネルギー分散型X線(EDX)分析を実施し、粒子の断面全体に含まれるアルミニウムおよび鉄の濃度を評価した。
【0191】
以下の表4には、各サンプルにおいて得られた分析結果をまとめて示す。
【0192】
【表4】
この結果から、サンプル1~4において、アルミニウムの総量は、8質量%~50質量%の範囲に含まれることが確認された。
【0193】
(評価2)
次に、例11~例12、および例21に係る粒子においても、同様の評価を行った。以下、例11、例12、および例21に係る粒子において、観察対象となる球状粒子を、それぞれ、「サンプル11」、「サンプル12」および「サンプル21」と称する。
【0194】
サンプル11、サンプル12およびサンプル21の断面をSEMで観察した。また、各断面に含まれるアルミニウムおよび他の金属の量を、EDX分析により評価した。
【0195】
図9図11には、それぞれ、各サンプル11、12および21において得られた球状粒子の断面(a)、および該断面に含まれるアルミニウムの分布(b)を示す。
【0196】
なお、サンプル11およびサンプル12において、断面に含まれるクロムの分布は、アルミニウムの分布を反転したような形態であった。同様に、サンプル21において、断面に含まれるニッケルの分布は、アルミニウムの分布を反転したような形態であった。
【0197】
図9図11から、サンプル11、サンプル12およびサンプル21においても、粒子中には、アルミニウムの含有量が低い領域(第1の領域)と、高い領域(第2の領域)が混在していることが確認された。
【0198】
EDX分析により、サンプル11およびサンプル12において、第1の領域および第2の領域のそれぞれに含まれるクロムとアルミニウムの量を分析した。
【0199】
以下の表5には、サンプル11およびサンプル12において得られた結果をまとめて示す。
【0200】
【表5】
この結果、および前述のEDX分析の結果から、サンプル11およびサンプル12において、第1の領域は、CrAlを主体とする相で構成され、第2の領域は、CrAlを主体とする相で構成されていることがわかった。
【0201】
次に、サンプル11およびサンプル12において得られた断面において、エネルギー分散型X線(EDX)分析を実施し、粒子の断面全体に含まれるアルミニウムおよびクロムの濃度を評価した。
【0202】
以下の表6には、各サンプルにおいて得られた分析結果をまとめて示す。
【0203】
【表6】
この結果から、サンプル11およびサンプル12において、アルミニウムの総量は、8質量%~50質量%の範囲に含まれることが確認された。
【0204】
さらに、EDX分析により、サンプル21において、第1の領域および第2の領域のそれぞれに含まれるニッケルとアルミニウムの量を分析した。
【0205】
以下の表7には、サンプル21において得られた結果をまとめて示す。
【0206】
【表7】
この結果、および前述のEDX分析の結果から、サンプル21において、第1の領域は、NiAlを主体とする相で構成され、第2の領域は、NiAlを主体とする相で構成されていることがわかった。
【0207】
次に、サンプル21において得られた断面において、エネルギー分散型X線(EDX)分析を実施し、粒子の断面全体に含まれるアルミニウムおよびニッケルの濃度を評価した。
【0208】
以下の表8には、サンプル21において得られた分析結果を示す。
【0209】
【表8】
この結果から、サンプル21において、アルミニウムの総量は、8質量%~50質量%の範囲に含まれることが確認された。
【符号の説明】
【0210】
100 粒子(第1の粒子)
110 第1の領域
120 第2の領域
200 粒子(第2の粒子)
210 第1の領域
220 第2の領域
352 被処理粒子
354 アルミニウム源
358 焼結防止剤
365 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11