(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089677
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20220609BHJP
A61B 3/036 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61B3/028 300
A61B3/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202268
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】堀野 妙子
(72)【発明者】
【氏名】寺部 尋久
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316FA03
4C316FB01
4C316FB06
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】 被検眼に対するクロスシリンダ検査を容易に実施できる自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムを提供する。
【解決手段】 被検眼に検査視標を呈示する視標呈示部手段と、被検眼に検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズと、オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、検査視標がオートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する駆動制御手段と、を備え、被検眼の乱視特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、検査視標を視認した被検者の回答を入力するための回答入力手段と、回答入力手段によって回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、被検眼の乱視特性を取得する取得手段と、駆動制御手段による分離領域の境界の変更に基づいて、取得手段が乱視特性を取得するための回答入力方向の受付方向を変更する受付変更手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に検査視標を呈示する視標呈示部手段と、
前記被検眼に前記検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズと、
前記オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、前記検査視標が前記オートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する駆動制御手段と、
を備え、
前記被検眼の乱視特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、
前記検査視標を視認した被検者の回答を入力するための回答入力手段と、
前記回答入力手段によって前記回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、前記被検眼の前記乱視特性を取得する取得手段と、
前記駆動制御手段による前記分離領域の境界の変更に基づいて、前記取得手段が前記乱視特性を取得するための前記回答入力方向の受付方向を変更する受付変更手段と、
を備えることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記回答入力手段によって前記回答を入力することが可能な方向は、前記検査視標が分離された方向のうちの、少なくとも上下左右の4方向であって、
前記受付変更手段は、前記分離領域の境界に応じて、前記4方向の少なくともいずれかの方向に前記受付方向を対応付けることによって、前記受付方向を変更することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項2の自覚式検眼装置において、
前記回答入力手段は、さらに、右上、右下、左上、左下、を含む8方向であって、
前記受付変更手段は、前記分離領域の境界に応じて、前記8方向の少なくともいずれかの方向に前記受付方向を対応付けることによって、前記受付方向を変更することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記回答入力手段によって前記回答を入力することが可能な方向は、前記検査視標が分離された方向のうちの、全方向であって、
前記受付変更手段は、前記分離領域の境界に応じて、前記全方向に含まれる少なくともいずれかの方向に前記受付方向を対応付けることによって、前記受付方向を変更することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記回答入力手段による前記受付方向とは異なる方向からの前記回答の入力を無効化する入力制御手段を備えることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項6】
被検眼に検査視標を呈示する視標呈示部手段と、
前記被検眼に前記検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズと、
前記オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、前記検査視標が前記オートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する駆動制御手段と、
を備え、
前記被検眼の乱視特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、
前記検眼プログラムがプロセッサに実行されることで、
前記検査視標を視認した被検者の回答を入力するための回答入力ステップと、
前記回答入力手段によって前記回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、前記被検眼の前記乱視特性を取得する取得ステップと、
前記駆動制御手段による前記分離領域の境界の変更に基づいて、前記取得手段が前記乱視特性を取得するための前記回答入力方向の受付方向を変更する受付変更ステップと、
を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする自覚式検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の乱視特性を自覚的に測定するための自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の眼前に光学部材を配置し、被検眼に光学部材を介した検査視標を呈示することによって、被検眼の光学特性を測定する自覚式検眼装置が知られている(特許文献1参照)。例えば、このような自覚式検眼装置を用いて、被検眼に対してクロスシリンダ検査を行うことによって、被検眼の乱視特性を測定することができる。
【0003】
クロスシリンダ検査では、被検者の視界をオートクロスシリンダレンズによって分離し、2つの検査視標を同時に視認させる、オートクロスシリンダ法が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、検者が被検者に立ち会い、検者が被検者にはっきりと見える検査視標の方向を問うことによって、検査が進められていた。例えば、検者は、被検者に問いかけることで被検者の回答を誘導しており、被検者が回答に迷った場合でも、被検者が検査視標の方向を選択しやすいように、口頭で誘導することができた。
【0006】
しかし、最近では、被検眼の自覚式検査を容易に実施するための仕組みとして、被検者が自身で検眼を進める(すなわち、自身でコントローラを操作する)、いわゆるセルフ検眼についての検討がなされている。セルフ検眼にオートクロスシリンダ法を適用する場合、検査視標が分離した状態(一例として、検査視標が右上と左下に分離した状態、等)によっては、被検者がコントローラの操作に迷い、回答しづらくなることに気が付いた。
【0007】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼に対するクロスシリンダ検査を容易に実施できる自覚式検眼装置および自覚式検眼プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備えることを特徴とする。
(1)本開示に係る自覚式検眼装置は、被検眼に検査視標を呈示する視標呈示部手段と、前記被検眼に前記検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズと、前記オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、前記検査視標が前記オートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する駆動制御手段と、を備え、前記被検眼の乱視特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、前記検査視標を視認した被検者の回答を入力するための回答入力手段と、前記回答入力手段によって前記回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、前記被検眼の前記乱視特性を取得する取得手段と、前記駆動制御手段による前記分離領域の境界の変更に基づいて、前記取得手段が前記乱視特性を取得するための前記回答入力方向の受付方向を変更する受付変更手段と、を備えることを特徴とする。
(2)本開示に係る自覚式検眼プログラムは、被検眼に検査視標を呈示する視標呈示部手段と、前記被検眼に前記検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズと、前記オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、前記検査視標が前記オートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する駆動制御手段と、を備え、前記被検眼の乱視特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、前記検眼プログラムがプロセッサに実行されることで、前記検査視標を視認した被検者の回答を入力するための回答入力ステップと、前記回答入力手段によって前記回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、前記被検眼の前記乱視特性を取得する取得ステップと、前記駆動制御手段による前記分離領域の境界の変更に基づいて、前記取得手段が前記乱視特性を取得するための前記回答入力方向の受付方向を変更する受付変更ステップと、を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】自覚式検眼装置100の制御系の概略図である。
【
図5】回答入力方向の受付方向を説明する図である。
【
図6】回答入力方向の受付範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示に係る自覚式検眼装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0011】
本実施形態における自覚式検眼装置は、被検眼の乱視特性を自覚的に測定する装置である。例えば、被検眼の乱視特性は、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、自覚式検眼装置は、乱視特性の他、球面特性(例えば、球面度数、等)、両眼視機能(例えば、プリズム量、立体視機能、等)、コントラスト感度、等を測定することが可能であってもよい。
【0012】
自覚式検眼装置は、被検眼に向けて視標光束を投影し、視標光束の光学特性を変化させることで、被検眼の乱視特性を自覚的に測定することができてもよい。例えば、自覚式検眼装置は、視標呈示手段、オートクロスシリンダレンズ、等を有してもよい。なお、オートクロスシリンダレンズは、後述の矯正手段の一部として設けられてもよい。また、自覚式検眼装置は、回答入力手段を有してもよい。
【0013】
<視標呈示手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、視標呈示手段を備えてもよい。視標呈示手段は、被検眼に検査視標を呈示するために、被検眼に向けて視標光束を出射する。
【0014】
例えば、視標呈示手段は、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源およびDMD(Digital Micromirror Device)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源および視標板であってもよい。
【0015】
例えば、視標呈示手段からの視標光束は、被検眼に向けて直接的に出射されてもよい。また、例えば、視標呈示手段からの視標光束は、投光光学系(例えば、投光光学系30)を介し、被検眼に向けて間接的に導光されてもよい。例えば、投光光学系は、視標呈示手段から出射された視標光束を経由させるための光学部材を、少なくとも1つ有してもよい。一例として、レンズ、ミラー、等の少なくともいずれかを有してもよい。
【0016】
<矯正手段>
本実施形態における覚式検眼装置は、矯正手段を備えてもよい。例えば、矯正手段は、被検眼と視標呈示部の間に配置され、視標呈示部から出射する視標光束の光学特性を変化させる。
【0017】
矯正手段は、矯正光学系を備えてもよい。矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置されることによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。なお、矯正光学系は、視標光束の光学特性を変化させることができる構成であればよい。また、矯正光学系は、被検眼に検査視標を分離して呈示するためのオートクロスシリンダレンズを有していてもよい。
【0018】
一例として、矯正光学系は、光学素子を有し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。例えば、光学素子は、オートクロスシリンダレンズであってもよい。また、例えば、光学素子は、オートクロスシリンダレンズの他、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかを、さらに含んでいてもよい。もちろん、光学素子は、これらとは異なってもよい。
【0019】
また、一例として、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。この場合、視標呈示手段を光軸方向に移動させてもよいし、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させてもよい。
【0020】
また、一例として、矯正光学系は、投光光学系からの視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、視標呈示手段と、の間に光学素子を配置し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)であってもよい。
【0021】
また、一例として、矯正光学系は、被検眼の眼前に配置される光学素子を切り換えて配置することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。すなわち、矯正光学系は、検眼ユニット(例えば、眼屈折力測定ユニット40)であってもよい。例えば、検眼ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段と、を有し、駆動手段(例えば、モータ)の駆動により光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。
【0022】
<駆動制御手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、駆動制御手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。駆動制御手段は、オートクロスシリンダレンズの駆動を制御し、検査視標がオートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界を変更する。言い換えると、駆動制御手段は、検査視標の分離領域における境界の位置(境界の方向)を変更する。例えば、オートクロスシリンダレンズの駆動によって、オートクロスシリンダレンズがもつ複数のプリズム領域の配置が変化し、これに基づいて、検査視標の分離領域の境界の位置が変更される。
【0023】
駆動制御手段は、矯正手段(矯正光学系)が有するオートクロスシリンダレンズの駆動を制御してもよい。例えば、視標呈示手段から出射する視標光束の光軸周りに、オートクロスシリンダレンズを回転させてもよい。一例として、矯正手段が前述の検眼ユニットであれば、駆動制御手段はオートクロスシリンダレンズを光軸周りに回転させ、オートクロスシリンダレンズの軸が検査窓(例えば、検査窓43)にて配置される角度を変更する。これによって、検査視標が分離する分離領域の境界を変更することができる。
【0024】
<回答入力手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、回答入力手段を備える。回答入力手段は、検査視標を視認した被検者の回答を入力するための手段であってもよい。例えば、回答入力手段は、被検者が自身で回答を入力するための手段であってもよい。一例として、回答入力手段は、レバースイッチ、押しボタンスイッチ、等の操作手段(例えば、被検者用コントローラ20)であってもよい。
【0025】
回答入力手段は、検査視標を視認した回答の入力として、オートクロスシリンダレンズにより分離された複数の検査視標のうちの1つを選択できるように、構成されてもよい。例えば、回答入力手段は、複数の所定の方向の入力を可能とするように構成されてもよい。一例としては、上下左右の4方向の入力を可能としてもよい。言い換えると、0°(360°)、90°、180°、270°の角度の入力を可能としてもよい。もちろん、略上下左右の方向の入力が可能であってもよい。なお、複数の所定の方向は、上下左右方向とは異なる4方向(例えば、左上、左下、右上、右下、等の斜め方向)であってもよい。また、複数の所定の方向は、上下左右方向に、その他の方向(例えば、斜め方向)を加えた方向であってもよい。一例としては、上下左右とともに、右上、右下、左上、左下、を含む8方向であってもよい。回答入力手段がこのような構成である場合、被検者は回答入力手段を容易に操作することができる。
【0026】
また、例えば、回答入力手段は、全方向の入力を可能とするように構成されてもよい。言い換えると、0°~360°の各々の角度の入力を可能としてもよい。このような場合、被検者は、検査視標の分離状態にかかわらず、選択した検査視標に対応する方向への入力が可能となるため、回答入力手段を直感的に操作することができる。
【0027】
なお、回答入力手段は、自覚式検眼装置の筐体と一体的に設けられてもよい。また、回答入力手段は、自覚式検眼装置の筐体とは別に設けられてもよい。
【0028】
<取得手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、取得手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。取得手段は、回答入力手段によって回答が入力された方向を示す回答入力方向に基づいて、被検眼の乱視特性を取得する。例えば、取得手段は、回答入力手段からの回答入力方向を示す入力信号に基づいて、乱視特性を取得してもよい。一例としては、回答入力手段から、後述の受付変更手段によって変更された受付方向の入力信号を得て、この入力信号に基づき、乱視特性を取得してもよい。なお、被検眼の乱視特性は、このような回答入力方向と、矯正手段(矯正光学系)が有する光学素子の光学特性(すなわち、視標光束の光学特性)と、に基づいて、取得されてもよい。
【0029】
<受付変更手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、受付変更手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。受付変更手段は、駆動制御手段による検査視標の分離領域の境界の変更に基づいて、取得手段が乱視特性を取得するための回答入力方向の受付方向を変更する。これによって、セルフ検眼時のクロスシリンダ検査にて、被検者の回答の入力方向と選択された検査視標の方向を、適切に対応付けることができる。
【0030】
受付変更手段は、分離領域の境界の変更に基づき、回答入力方向を受け付ける受付方向を、所定の方向(すなわち、所定の角度)に変更してもよい。受付変更手段は、分離領域の境界の位置が変更される毎に、受付方向を変更してもよい。例えば、分離領域の境界の角度に応じて、受付方向が、都度、変化してもよい。また、受付変更手段は、分離領域の境界の位置が一定の領域で変更される毎に、受付方向を変更してもよい。例えば、分離領域の境界の角度が、第1領域内で変更された際には受付方向を変更せず、第1領域から第1領域とは異なる第2領域内へと変更された際には受付方向を変更してもよい。例えば、これらの場合、検査視標の分離領域の境界が変更されると、所定の方向が適宜変更され、回答入力手段から所定の方向に入力された入力信号が、回答入力手段による回答入力方向を表す入力信号として取得される。
【0031】
一例として、回答入力手段が上下左右の4方向への入力が可能な構成であれば、受付変更手段は、検査視標の分離領域の境界の位置に応じて、4方向の少なくとも1方向に対する受付方向を対応付ける。言い換えると、検査視標が分離した方向に応じて、4方向の少なくとも1方向に対する受付方向を対応付ける。例えば、境界の位置に応じて、検査視標に対し、1方向にのみ受付方向が対応付けられてもよいし、2方向に受付方向が対応付けられてもよい。これにより、受付方向が変更されてもよい。もちろん、回答入力手段が上下左右の4方向に加えて斜めの4方向への入力が可能な構成(つまり、8方向への入力が可能な構成)であれば、受付変更手段は、検査視標の分離領域の境界の位置に応じて、8方向の少なくとも1方向に対する受付方向を対応付けてもよい。これらの場合、特に、被検者の操作を限定し、回答入力を容易にしたコントローラ等を用いた場合であっても、被検者が選択した検査視標が適切に判定される。
【0032】
また、受付変更手段は、回答入力方向を受け付ける受付方向を、少なくとも所定の1方向を含む範囲(すなわち、所定の範囲をもつ角度)に変更してもよい。なお、受付変更手段は、分離領域の境界の位置が変更される毎に、受付方向の範囲を変更してもよいし、分離領域の境界の位置が一定の領域で変更される毎に、受付方向の範囲を変更してもよい。
【0033】
例えば、これらの場合、検査視標の分離領域の境界が変更されると、受付方向の範囲が適宜変更され、回答入力手段から受付方向の範囲内の方向に入力された入力信号が、回答入力手段による回答入力方向を表す入力信号として取得される。
【0034】
一例として、回答入力手段が全方向への入力が可能な構成であれば、受付変更手段は、検査視標の分離領域の境界の位置に応じて、全方向に含まれる少なくともいずれかの方向に対する受付方向を対応付ける。この場合、被検者の直感的な操作により入力が可能なコントローラ等を用いた場合であっても、被検者が選択した検査視標が適切に判定される。
【0035】
<入力制御手段>
本実施形態における自覚式検眼装置は、入力制御手段(例えば、制御部60)を備えてもよい。入力制御手段は、回答入力手段による受付方向とは異なる方向からの回答の入力を無効化する。これによって、被検者が操作を誤る等して検査視標の位置しない方向から回答が入力されても、検査の自動的な進行を抑制できる。
【0036】
入力制御手段は、回答入力手段からの回答の入力にともなって、取得手段による乱視特性を取得するための処理が行われないように、入力を無効化する。例えば、入力制御手段は、回答入力手段から入力された回答入力方向の受付を禁止することによって、受付方向とは異なる方向からの入力を無効化してもよい。また、例えば、入力制御手段は、回答入力手段から入力された回答入力方向に基づく動作の実行を禁止することによって、受付方向とは異なる方向からの入力を無効化してもよい。一例として、光学素子の制御(クロスシリンダレンズの回転、円柱レンズの切り換え、等)の動作の実行を禁止してもよい。
【0037】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0038】
<実施例>
本実施形態における自覚式検眼装置の一実施例について説明する。本実施例では、検眼装置の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0039】
図1は、自覚式検眼装置100の外観図である。
図1(a)は、眼屈折力測定ユニット40が待機位置に支持された状態である。
図1(b)は、眼屈折力測定ユニット40が測定位置に支持された状態である。
例えば、自覚式検眼装置100は、筐体1、呈示窓2、スピーカ3、保持ユニット4、検者用コントローラ10、被検者用コントローラ20、眼屈折力測定ユニット40、等を備える。
【0040】
筐体1は、投光光学系30を内部に有する。呈示窓2は、投光光学系30による視標光束を透過させる。被検眼Eには、呈示窓2を介して視標光束が投影される。なお、被検眼Eと呈示窓2の間に眼屈折力測定ユニット40が配置された場合(
図1(b)参照)、被検眼Eには、呈示窓2および後述の検査窓43を介して視標光束が投影される。これによって、被検眼Eに検査視標が呈示される。スピーカ3は、音声ガイド等を出力する。
【0041】
保持ユニット4は、眼屈折力測定ユニット40を保持する。例えば、保持ユニット4は、図示なき駆動部(モータ等)の駆動によりアームを移動させることで、アームに連結された眼屈折力測定ユニット40を移動させる。これによって、眼屈折力測定ユニット40の待機位置と測定位置が切り換えられる。
【0042】
検者用コントローラ10は、検者が自覚式検眼装置100を操作するために用いる。検者用コントローラ10は、スイッチ部11、モニタ12、等を備える。スイッチ部11は、各種の設定(例えば、眼屈折力測定ユニット40の移動、等)を行うための信号を入力する。モニタ12は、各種の情報(例えば、被検眼Eの測定結果、等)を表示する。なお、モニタ12は、スイッチ部11を兼ねたタッチパネルとして機能してもよい。検者用コントローラ10からの信号は、有線通信あるいは無線通信により、制御部60へ出力される。
【0043】
被検者用コントローラ20は、被検者の回答を入力するために用いる。被検者用コントローラ20は、回答レバー21、回答ボタン22、等を備える。回答レバー21は、被検者が検査視標に対する方向を入力する際に用いる。例えば、上下左右の4方向の信号を、傾倒操作によって入力することができる。回答ボタン22は、被検者が検査視標に対する方向を選択しない際に用いる。被検者用コントローラ8からの信号は、有線通信あるいは無線通信により、制御部60へ出力される。
【0044】
<投光光学系>
図2は、投光光学系30の概略図である。
図2(a)は、遠用検査時の光学配置を示す。
図2(b)は、近用検査時の光学配置を示す。投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、平面ミラー32、凹面ミラー33、遠近切換部34、等を備える。
【0045】
ディスプレイ31は、視標(例えば、固視標、検査視標、等)を表示する。被検眼Eの眼底にディスプレイ31から出射した視標光束が結像することで、被検眼Eに視標が呈示される。例えば、ディスプレイ31は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)、プラズマディスプレイ、等でもよい。
【0046】
平面ミラー32は、ディスプレイ31からの視標光束を反射し、凹面ミラー33へ導光する。また、平面ミラー32は、ディスプレイ31からの視標光束を反射し、被検眼Eへ導光する。例えば、平面ミラー32は、被検眼Eの近用検査時に、被検眼Eからディスプレイ31までの距離(呈示距離)が、光学的に40cmとなるように配置される。なお、平面ミラー32に代えて、プリズム、ビームスプリッタ、ハーフミラー、等の反射部材を用いることも可能である。
【0047】
凹面ミラー33は、ディスプレイ31からの視標光束を反射させ、平面ミラー32へ導光する。例えば、凹面ミラー33は、被検眼Eの遠用検査時に、被検眼Eからディスプレイ31までの距離(呈示距離)が、光学的に5mとなるように配置される。なお、凹面ミラー33に代えて、非球面ミラー、自由曲面ミラー、等の反射部材を用いることも可能である。また、凹面ミラー33に代えて、レンズ等を用いることも可能である。
【0048】
遠近切換部34は、被検眼Eの遠用検査時と近用検査時において、ディスプレイ31の配置を切り換える。例えば、遠近切換部34は、図示なき駆動部(モータ等)の駆動により保持部を移動させることで、保持部に保持されたディスプレイ31を移動させる。これによって、ディスプレイ31の遠用配置と近用配置が切り換えられる。
【0049】
例えば、被検眼Eの遠用検査時は、ディスプレイ31の表示画面が筐体1の背面に向けられる(
図2(a)参照)。ディスプレイ31からの視標光束は、平面ミラー32に光軸L1を通過して入射し、平面ミラー32によって光軸L2方向へ反射される。また、凹面ミラー33に光軸L2を通過して入射し、凹面ミラー33によって光軸L3方向へ反射される。また、平面ミラー32に光軸L3を通過して入射し、平面ミラー32によって光軸L4方向へ反射される。これによって、被検眼Eには、筐体1の内部にて各々の光学部材を経由し、筐体1の外部に出射された視標光束が投影される。
【0050】
例えば、被検眼Eの近用検査時は、ディスプレイ31の表示画面が筐体1の上面に向けられる(
図2(b)参照)。ディスプレイ31からの視標光束は、平面ミラー32に光軸L3を通過して入射し、平面ミラー32によって光軸L4方向へ反射される。これによって、被検眼Eには、筐体1の内部にて各々の光学部材を経由し、筐体1の外部に出射された視標光束が投影される。
【0051】
<眼屈折力測定ユニット(矯正光学系)>
図3は、眼屈折力測定ユニット40の概略図である。眼屈折力測定ユニット40は、被検眼Eの屈折力を自覚的に測定する。また、眼屈折力測定ユニット40は、矯正光学系として用いられる。矯正光学系は、投光光学系30の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる。例えば、眼屈折力測定ユニット40は、額当て41、レンズユニット42、検査窓43、移動ユニット44、等を備える。
【0052】
額当て41は、被検者の頭部を当接させることで、被検眼Eを所定の検査位置に固定し、被検眼Eから検査窓43までの距離を一定に保つ。レンズユニット42は、左右一対の左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rを有する。レンズユニット42は、検査窓43(左検査窓43Lおよび右検査窓43R)を有する。
【0053】
移動ユニット44は、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの間隔、および、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの輻輳角(内寄せ角)、を調整する。例えば、移動ユニット44は、駆動部45(左駆動部45Lおよび右駆動部45R)の駆動により、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの間隔を調整する。また、例えば、移動ユニット44は、駆動部46の駆動により、左レンズユニット42Lと右レンズユニット42Rの輻輳角を調整する。なお、移動ユニット44の詳細な構成は、例えば、特開2004-329345号公報を参考されたい。
【0054】
レンズユニット42は、レンズディスク50を内部に備える。レンズディスク50は、左右一対の左レンズディスク50Lと右レンズディスク50Rを有する。レンズディスク50は、駆動部51(左駆動部51Lおよび右駆動部51R)の駆動により、回転される。また、レンズディスク50は、開口(または、0Dのレンズ)と、複数の光学素子52(左光学素子52Lおよび右光学素子52R)と、を同一円周上に配置する。これらの光学素子は、駆動部53(左駆動部53Lおよび右駆動部53R)の駆動により、回転される。これによって、所望の光学素子52が、所望の角度で、検査窓43に切り換え配置される。
【0055】
レンズディスク50は、1枚のレンズディスク、または、複数枚のレンズディスクからなる。例えば、球面レンズディスク、円柱レンズディスク、補助レンズディスク、等が設けられてもよい。一例として、球面レンズディスクは、球面度数(球面屈折力)の異なる複数の球面レンズを有してもよい。また、一例として、円柱レンズディスクは、円柱度数(円柱屈折力)の異なる複数の円柱レンズを有してもよい。また、一例として、補助レンズディスクは、遮蔽板、偏光フィルタ、赤フィルタ/緑フィルタ、分散プリズム、マドックスレンズ、ロータリプリズム、クロスシリンダレンズ、オートクロスシリンダレンズ、位置合わせ用レンズ、等を有してもよい。駆動部51および駆動部53は、レンズディスク毎に設けられてもよい。
【0056】
なお、眼屈折力測定ユニット40は、視標光束の光学特性を変化させることが可能であればよい。例えば、本実施例のように、光学素子を制御する構成であってもよい。また、例えば、波面変調素子を制御する構成であってもよい。
【0057】
<制御部>
図4は自覚式検眼装置100の制御系の概略図である。例えば、制御部60は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。CPUは、自覚式検眼装置100における各部の駆動を制御する。RAMには、各種の情報が一時的に記憶される。ROMには、CPUが実行する各種のプログラム等が記憶される。一例としては、被検者によって入力された回答に基づいて、検眼を自動的に進行させるアプリケーション(セルフ検眼アプリケーション)を実現するためのプログラムが記憶される。なお、制御部60は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0058】
制御部60には、スピーカ3、ディスプレイ31、検者用コントローラ10、被検者用コントローラ20、不揮発性メモリ70(以下、メモリ70)、等が接続されている。また、制御部60には、保持ユニット4の駆動部、遠近切換部34の駆動部、眼屈折力測定ユニット40の駆動部(駆動部45、46、51、53)、等が接続されている。
【0059】
メモリ70は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ70としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を用いることができる。
【0060】
<制御動作>
自覚式検眼装置100の制御動作を説明する。
【0061】
セルフ検眼では、被検者の左眼における他覚式検査と自覚式検査が順に実施される。例えば、他覚式検査によって、左眼の他覚値が得られる。また、例えば、左眼の他覚値に基づき、左眼を所定の矯正度数で所定の眼屈折力(0D等)に矯正した状態(すなわち、初期状態)で、左眼の自覚式検査が実施され、左眼の自覚値が得られる。被検者の左眼における各検査を終えると、被検者の右眼における各検査が同様に実施され、右眼の他覚値および自覚値が得られる。
【0062】
例えば、自覚式検査には、複数の検査項目が含まれる。一例として、被検眼Eの初期状態における球面度数を、適切な度数に調整するためのレッドグリーン検査が含まれてもよい。また、一例として、被検眼Eの初期状態における円柱度数および乱視軸角度を、適切な度数および角度に調整するためのクロスシリンダ検査が含まれてもよい。また、一例として、被検眼Eの球面度数、円柱度数、および乱視軸角度を、適切な度数および角度で矯正した状態における最高視力値を測定するための視力検査が含まれてもよい。例えば、各々の検査項目での検眼は、セルフ検眼アプリケーションの実行によって、自動的に進行される。
【0063】
本実施例では、自覚式検査のうちのクロスシリンダ検査について、詳細に説明する。クロスシリンダ検査では、被検眼Eに2つの点群視標が呈示されるとともに、被検眼Eがもつ乱視軸角度と、被検眼Eを矯正する所望の乱視軸角度と、が一致しているかが判定される。例えば、2つの点群視標の見え方が同程度であれば、各々の角度が一致していると判定される。例えば、2つの点群視標の見え方に差異があれば、各々の角度は一致していないと判定される。また、クロスシリンダ検査では、被検眼Eに2つの点群視標が呈示されるとともに、被検眼Eを所望の円柱度数で矯正した状態が、適切であるかが判定される。例えば、2つの点群視標の見え方が同程度であれば、円柱度数が適切と判定される。例えば、2つの点群視標の見え方に差異があれば、円柱度数が適切でないと判定される。
【0064】
<クロスシリンダ検査の流れ>
例えば、セルフ検眼時のクロスシリンダ検査には、オートクロスシリンダ法が用いられる。オートクロスシリンダ法は、オートクロスシリンダレンズの配置によって、被検者に2つの点群視標を同時に呈示および視認させ、比較させる方法である。ここでは、左眼を測定眼とし、右眼を非測定眼とする場合を例に挙げる。
【0065】
制御部60は、クロスシリンダ検査の開始時に、被検者用コントローラ20の操作方法を示す音声ガイドを、スピーカ3から発生させる。一例として、2つの点群視標のうち、はっきりと視認できた点群視標の方向に回答レバー21を傾倒させ、同程度であれば回答ボタン22を押圧する旨の、音声ガイドを発生させてもよい。
【0066】
続いて、制御部60は、左駆動部51Lを駆動させ、左検査窓43Lに、他覚値に基づく所定の円柱度数を有する円柱レンズと、オートクロスシリンダレンズと、を配置する。例えば、オートクロスシリンダレンズは、レンズ中心を軸に2分割され、かつ、乱視軸が互いに直交するように円柱度数が付与された、2つのプリズム領域をもつレンズである。また、制御部60は、右駆動部51Rを駆動させ、右検査窓43Rに遮蔽板を配置させる。さらに、制御部60は、ディスプレイ31を制御し、その画面に1つの点群視標を表示させる。
【0067】
被検者は、額を額当て41に当接させ、検査窓43および呈示窓2を介して、点群視標を観察する。例えば、左眼の視界は、オートクロスシリンダレンズがもつプリズム成分によって、2つに分離される。すなわち、ディスプレイ31に表示させた1つの点群視標は、2つのプリズム領域を介することで、2つの点群視標(後述する点群視標Aと点群視標B(
図5参照))に分離して呈示される。例えば、右眼(非測定眼)の視界は、遮蔽板によって遮蔽される。
【0068】
制御部60は、クロスシリンダ検査を進行させる。例えば、制御部60は、左駆動部53Lを駆動させ、左検査窓43Lのオートクロスシリンダレンズを、乱視軸角度を調整するための軸角度となるように、回転させる。また、例えば、被検者がはっきりと視認できる点群視標の方向を問う音声ガイドを、スピーカ3から発生させる。
【0069】
制御部60は、回答レバー21からの入力信号を得た場合(点群視標の方向が選択された場合)、回答レバー21の傾倒方向に応じてオートクロスシリンダレンズを回転させ、乱視軸角度を変更させる。また、制御部60は、乱視軸角度を変更させた後に、点群視標の方向を問う音声ガイドを、再び発生させる。制御部60は、このような制御を、回答ボタン22からの入力信号が得られるまで(2つの点群視標の見え方が同程度と回答されるまで)繰り返す。これによって、被検眼Eの乱視軸角度が調整される。
【0070】
制御部60は、回答ボタン22からの入力信号を得た場合、この時点で左眼を矯正していた乱視軸角度を、左眼を適切に矯正する乱視軸角度として取得する。また、乱視軸角度の調整から円柱度数の調整へと、自動的に切り換える。例えば、制御部60は、左駆動部53Lを駆動させ、左検査窓43Lのオートクロスシリンダレンズを、円柱度数を調整するための軸角度となるように、回転させる。また、例えば、被検者がはっきりと視認できる点群視標の方向を問う音声ガイドを、スピーカ3から発生させる。
【0071】
制御部60は、回答レバー21からの入力信号を得た場合、回答レバー21の傾倒方向に応じて円柱レンズを切り換える。例えば、円柱度数を1段階増加または減少させるように、円柱レンズを切り換える。また、制御部60は、円柱レンズを切り換えた後に、点群視標の方向を問う音声ガイドを、再び発生させる。制御部60は、このような制御を、回答ボタン22からの入力信号が得られるまで繰り返す。これによって、被検眼Eの円柱度数が調整される。
【0072】
制御部60は、回答ボタン22からの入力信号を得た場合、この時点で左眼を矯正していた円柱度数を、左眼を適切に矯正する円柱度数として取得する。また、円柱度数の調整を終了するとともに、クロスシリンダ検査を終了する。
【0073】
<回答の入力と受付方向の変更>
上記のクロスシリンダ検査(オートクロスシリンダ法)では、オートクロスシリンダレンズの回転によって、2つの点群視標が分離する分離領域の境界が変更され、2つの点群視標が光軸L4の軸周りに回転移動する(詳細は後述する)。
【0074】
検者が被検者に立ち会わないセルフ検眼では、2つの点群視標の位置関係によって、被検者が回答を入力しづらくなる場合がある。セルフ検眼に対応する被検者用コントローラ20は、被検者が自身で簡単に操作できるように、簡易的な構成とされることが好ましい。例えば、上下左右方向および斜め方向への8方向の入力が可能な構成、上下左右方向への4方向の入力が可能な構成、等とされることが好ましい。
【0075】
本実施例では、回答レバー21を上下左右へ傾倒させることで、上下左右に対応する4方向の入力を行う場合を例に挙げる。例えば、上下左右に対応する4方向とは、水平方向を基準として、0°、90°、180°、270°、に対応する方向である。回答レバー21を4方向の入力とする際は、点群視標が4方向とは異なる方向に配置され、回答し得る方向が混在するときに、被検者が回答レバー21の傾倒方向に迷いやすい。例えば、点群視標が60°方向に配置され、右方向(0°方向)または上方向(90°方向)の2方向での回答が在り得るときに、被検者は回答レバー21を右に傾倒させるか上に傾倒させるかを迷いやすい。特に、点群視標が水平方向および垂直方向からもっとも離れた45°方向に位置する場合は、このような問題が生じやすい。なお、点群視標が135°、225°、315°、等に位置する場合も、同様の問題が生じやすい。
【0076】
このため、制御部60は、オートクロスシリンダレンズの回転にともなう、点群視標の分離領域の境界の変更に基づいて、回答の入力方向を受け付ける受付方向を変更する。言い換えると、回答の入力方向を、所定の入力方向とみなすように、受付方向を変更する。以下、これについて、詳細に説明する。
【0077】
図5は、回答入力方向の受付方向を説明する図である。
図5(a)は、左眼の視界において、2つの点群視標が水平方向に位置する状態を示す。
図5(b)は、左眼の視界において、2つの点群視標が水平方向および垂直方向とは異なる斜め方向に位置する状態である。例えば、オートクロスシリンダレンズにおける2つのプリズム領域の境界を挟んで、2つの点群視標Aと点群視標Bは対称に分離する。つまり、2つのプリズム領域の境界は、点群視標Aの分離領域Paと点群視標Bの分離領域Pbの境界Sとなり、この境界Sを挟んで、各々の点群視標が対称に分離する。このため、例えば、
図5(a)では、被検眼Eの視界にて分離領域Paと分離領域Pbが右と左に分離するように、境界Sが垂直方向に位置し、点群視標Aは0°方向に、点群視標Bは180°方向に、それぞれ配置される。また、例えば、
図5(b)では、被検眼Eの視界にて分離領域Paと分離領域Pbが右上と左下に分離するように、境界Sが135°方向および315°方向に位置し、点群視標Aは45°方向に、点群視標Bは225°方向に、それぞれ配置される。
【0078】
本実施例において、制御部60は、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sの位置に基づき、回答レバー21の傾倒による回答の入力方向を受け付ける受付方向を変更する。例えば、境界Sの位置に応じた点群視標Aおよび点群視標Bの方向に対する所定の方向を受付方向とし、これを適宜変更する。例えば、
図5(a)のように、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sが垂直方向に位置する場合、点群視標Aに対しては、0°(360°)方向が、受付方向Kaとされる。点群視標Bに対しては、180°方向が、受付方向Kbとされる。また、例えば、
図5(b)のように、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sが135°方向および225°方向に位置する場合、点群視標Aに対しては、0°(360°)方向と90°方向が、受付方向Kaとされる。点群視標Bに対しては、180°方向と270°方向が、受付方向Kbとされる。
【0079】
制御部60は、回答レバー21から受付方向Kaまたは受付方向Kbに該当する1方向からの入力信号を得ると、この入力信号を点群視標の方向に変換した変換信号を生成する。
図5(a)においては、2つの点群視標の位置(方向)と、回答レバー21の傾倒可能な方向と、が同じであるため、被検者によって回答レバー21が迷うことなく傾倒される。例えば、被検者が点群視標Aをはっきりと視認した場合、回答レバー21は右方向に傾倒される。制御部60は、右方向(0°方向)の入力信号を、点群視標Aの方向である0°方向の変換信号に変換する。また、例えば、被検者が点群視標Bをはっきりと視認した場合、回答レバー21は左方向に傾倒される。制御部60は、左方向(180°方向)の入力信号を、点群視標Bの方向である180°方向の変換信号に変換する。
【0080】
なお、回答レバー21における上方向および下方向の入力信号は、受付方向Kaまたは受付方向Kbのいずれにも該当しない方向であるため、この入力信号を無効化する処理がなされてもよい。一例としては、入力信号の受付を拒否する、入力信号に基づく変換信号を生成しない、等の処理がなされてもよい。
【0081】
図5(b)においては、2つの点群視標の位置(方向)と、回答レバー21の傾倒可能な方向と、がずれているため、被検者は回答レバー21の傾倒方向に迷う可能性がある。例えば、検者が点群視標Aをはっきりと視認した場合、被検者によって、回答レバー21を右方向に傾倒する場合と、上方向に傾倒する場合と、が生じ得る。しかし、制御部60は、分離領域の境界Sに合わせて受付方向を変更しているため、右方向(0°方向)の入力信号と上方向(90°方向)の入力信号は、いずれも受付方向Kaに該当する状態となる。このため、制御部60は、右方向の入力信号を取得しても、上方向の入力信号を取得しても、これらを点群視標Aの方向である45°方向の変換信号に変換することができる。また、例えば、被検者が点群視標Bをはっきりと視認した場合、被検者によって、回答レバー21を左方向に傾倒する場合と、下方向に傾倒する場合と、が生じ得る。しかし、制御部60は、左方向の入力信号および下方向の入力信号がいずれも受付方向Kbに該当する状態であるために、これらを点群視標Bの方向である225°方向の変換信号に変換することができる。
【0082】
制御部60は、回答レバー21からの入力信号に基づき、点群視標の方向に対応した変換信号を取得すると、オートクロスシリンダレンズを回転させるか、または、円柱レンズを切り換える。これによって、被検眼Eの乱視軸角度と円柱度数の少なくともいずれかが、適宜、調整される。
【0083】
以上、説明したように、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、検査視標がオートクロスシリンダレンズを介して分離する分離領域の境界の変更に基づいて、検査視標を視認した被検者が回答を入力した方向を示す回答入力方向の受付方向を変更する。これにより、セルフ検眼時のクロスシリンダ検査にて、複数に分離した検査視標の配置が変わり、被検者が回答の入力に迷う場合や、被検者が回答を入力しづらい場合(例えば、特定の方向にのみコントローラからの入力が可能な場合、等)であっても、被検者の回答の入力方向と選択された検査視標の方向を、適切に対応付けることができる。
【0084】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検者の回答を上下左右の4方向に入力することが可能であって、検査視標を分離する分離領域の境界に応じて、4方向の少なくともいずれかの方向に受付方向を対応付けることによって、受付方向が変更される。これによって、特に、被検者の操作を限定し、回答入力を容易にしたコントローラ等を用いた場合であっても、被検者が選択した検査視標を適切に判定することができる。
【0085】
なお、被検者に対する音声ガイドの内容を変更し、被検者の回答レバー21の操作を誘導することも考えられるが、セルフ検眼では検者と被検者のコミュニケーションが取りづらいため、回答の入力が難しい。例えば、詳細には、点群視標が45°方向および225°方向に位置する際には、音声ガイドの内容を、回答レバー21を右方向か左方向のいずれかに傾倒させる等、2択の形式にしてもよい。しかし、被検者が高齢者である場合や、被検者が音声ガイドを聞き逃した場合には、被検者による直感的な操作が行われる可能性がある。例えば、音声ガイドの内容に沿わず、回答レバー21ーを上方向または下方向に傾倒させる可能性がある。例えば、このような場合であっても、検査視標の分離領域の境界毎に、被検者が回答できる4方向への受付方向を対応付けることで、検査を効率よく進めることができる。
【0086】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検者の回答入力方向が、受付方向とは異なる方向である場合に、被検者の回答の入力を無効化する。これによって、被検者が操作を誤る等して検査視標の位置しない方向から回答が入力されても、クロスシリンダ検査の検眼プログラムが自動的に進行することを抑制でき、検査精度を向上させることができる。また、誤操作による検眼プログラムの自動的な進行を抑制することで、検査の手戻りが発生しづらくなり、検査時間を短縮することができる。
【0087】
<変容例>
なお、本実施例では、回答レバー21が、上下左右の4方向にのみ傾倒可能である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。回答レバー21は、2つの点群視標が回転移動しても、いずれか一方を選択できるような構成であればよい。例えば、回答レバー21は4方向以上に傾倒可能でもよい。一例としては、上下左右の4方向に加えて、右上、右下、左上、左下の4方向をさらに含む8方向、等に傾倒可能でもよい。また、例えば、回答レバー21は全方向(換言すると、全角度)に傾倒可能でもよい。このような場合であっても、2つの点群視標を分離する分離領域(分離領域Paと分離領域Pb)の境界Sに合わせて、回答レバー21からの入力信号を受け付ける受付方向(受付方向Kaと受付方向Kb)を変更することにより、被検者は2つの点群視標の位置関係にかかわらず、容易に回答を入力できる。
【0088】
ここで、クロスシリンダ検査は、検者が2つの点群視標のいずれを選択したかを把握できればよく、点群視標の方向と、回答レバー21の傾倒方向と、を必ずしも同じにする必要がない。つまり、点群視標の方向に対し、回答レバー21の傾倒方向は、おおよそ合っていればよい。このため、例えば、回答レバー21を全方向に傾倒可能な構成とする場合には、回答レバー21の傾倒による入力信号を受け付ける受付方向に、所定の範囲が設けられてもよい。つまり、点群視標の方向に対して、所定の角度をもった範囲が、受付方向(受付範囲)とされてもよい。一例として、所定の範囲は±45°であってもよい。
【0089】
図6は、回答入力方向の受付範囲を説明する図である。なお、
図6における、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sの位置、および、2つの点群視標が位置する状態は、
図5と同様である。例えば、
図6(a)のように、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sが垂直方向に位置する場合、点群視標Aに対しては、0°~45°および315°~360°の範囲が、受付範囲Kcとされてもよい。点群視標Bに対しては、135°~225°の範囲が、受付範囲Kdとされてもよい。また、例えば、
図6(b)のように、分離領域Paと分離領域Pbの境界Sが135°方向および225°方向に位置する場合、点群視標Aに対しては、0°~90°の範囲が、受付範囲Kcとされてもよい。点群視標Bに対しては、180°~270°の範囲が、受付範囲Kdとされてもよい。
【0090】
制御部60は、回答レバー21から受付範囲Kcまたは受付範囲Kdに含まれるいずれか1方向からの入力信号を得ると、この入力信号を点群視標の方向に変換した変換信号を生成する。
図6(a)では、例えば、検者が点群視標Aをはっきりと視認した場合、回答レバー21が、おおよそ右方向に傾倒される。制御部60は、0°~45°方向および315°~360°方向のいずれかの方向の入力信号を得ると、これを点群視標Aの方向である0°方向の変換信号に変換する。また、例えば、検者が点群視標Bをはっきりと視認した場合、回答レバー21はおおよそ左方向に傾倒される。制御部60は、135°~225°方向のいずれかの方向の入力信号を得ると、これを点群視標Bの方向である180°方向の変換信号に変換する。
【0091】
図6(b)では、例えば、検者が点群視標Aをはっきりと視認した場合、回答レバー21が、おおよそ右上方向に傾倒される。制御部60は、0°~90°方向のいずれかの方向の入力信号を得ると、これを点群視標Aの方向である45°方向の変換信号に変換する。また、例えば、検者が点群視標Bをはっきりと視認した場合、回答レバー21はおおよそ左下方向に傾倒される。制御部60は、180°~270°方向のいずれかの方向の入力信号を得ると、これを点群視標Bの方向である225°方向の変換信号に変換する。
【0092】
もちろん、
図6(a)および
図6(b)において、制御部60は、受付範囲Kcまたは受付範囲Kdに含まれない方向の入力信号に対して、この入力信号を無効化する処理を行ってもよい。
【0093】
例えば、本実施例の自覚式検眼装置は、このように、被検者の回答を全方向に入力することが可能であって、検査視標が分離する分離領域の境界に応じて、全方向に含まれる少なくともいずれかの方向に受付方向を対応付けることによって、受付方向が変更される構成とされてもよい。これによって、被検者の直感的な操作により入力が可能なコントローラ等を用いた場合であっても、被検者が選択した検査視標を適切に判定することができる。
【0094】
なお、本実施例では、回答レバー21からの入力信号を受け付ける受付範囲を、±45°の角度としたが、これに限定されない。前述のように、クロスシリンダ検査では、検者が2つの点群視標のいずれを選択したかを把握できればよいため、受付範囲は、点群視標の位置を基準に、±45°とは異なる角度をもつ範囲とされてもよい。また、受付範囲は、点群視標を挟んで非対称な角度をもつ範囲とされてもよい。
【0095】
なお、本実施例では、点群視標毎の受付範囲の大きさが、点群視標を分離する分離領域の境界Sの位置に関わらず、一定である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。点群視標毎の受付範囲の大きさは、境界Sの位置に応じて、変更されてもよい。例えば、
図6(a)のように分離領域の境界Sが水平方向または垂直方向である場合は、点群視標の方向に対する受付範囲を狭く設定してもよく、
図6(b)のように分離領域の境界Sが斜め方向である場合は、点群視標の方向に対する受付範囲を広く設定してもよい。一例としては、分離領域の境界Sが水平方向または垂直方向である場合は、受付範囲を±45°とし、分離領域の境界Sが斜め方向である場合は、受付範囲を±90°としてもよい。
【0096】
なお、本実施例では、2つの点群視標を分離する分離領域の境界Sが変更される毎に、回答レバー21からの入力信号を受け付ける受付方向(受付範囲)を変更する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、点群視標の分離領域の境界Sが、一定の領域(一定の角度)で変更される毎に、受付方向を変更する構成としてもよい。例えば、この場合、回答レバー21は、全方向に傾倒可能であるが、上下左右の4方向の入力信号を入力可能であってもよい。一例としては、水平方向および垂直方向を基準とした±45°方向の範囲に、4方向の入力信号が割り当てられていてもよい。
【0097】
例えば、点群視標Aが91°~179°方向のいずれかの方向に配置される場合、点群視標の分離領域の境界Sは1°~89°方向(181°~269°方向)のいずれかの方向に位置する。このとき、被検者が点群視標Aを選択したとの判断は、回答レバー21からの上方向または左方向のいずれかの入力信号の取得によってなされてもよい。このため、制御部60は、点群視標の分離領域の境界Sが1°~89°方向の領域に位置する間は、回答レバー21の傾倒による受付方向を、上方向と左方向に対応する45°~225°方向の範囲としてもよい。
【0098】
なお、例えば、点群視標Aが180°方向に配置される場合(境界Sが90°方向に位置する場合)、点群視標Aの選択は、左方向の入力信号の取得によって判断されてもよい。このため、制御部60は、境界Sが90°方向に位置するときは、受付方向を左方向に対応する135°~225°方向の範囲としてもよい。また、例えば、点群視標Aが181°~269°方向に配置される場合(境界Sが91°~179°方向に位置する場合)、点群視標Aの選択は、左方向または下方向のいずれかの入力信号の取得によって判断されてもよい。このため、制御部60は、境界Sが91°~179°方向に位置するときは、受付方向を左方向と下方向に対応する135°~315°方向の範囲としてもよい。例えば、制御部60は、境界Sの位置に応じて、このように、受付範囲を変化させてもよい。
【0099】
上記では、回答レバー21における上下左右の4方向の入力信号の割り当てを±45°方向の範囲としたが、これに限定されない。例えば、上下左右の割り当ては±60°の範囲等であってもよい。この場合、特定の角度では隣り合う2つの入力信号が重複して入力されるが、いずれかを優先的に取得することによって、被検眼Eの乱視軸角度および円柱度数を調整するための制御が行われてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 筐体
2 呈示窓
3 スピーカ
10 検者用コントローラ
20 被検者用コントローラ
30 投光光学系
40 眼屈折力測定ユニット
43 検査窓
60 制御部
100 自覚式検眼装置