(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008969
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】引き込み針を有する自己注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20220106BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61M5/32 510H
A61M5/20 510
A61M5/20 550
A61M5/20 572
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165825
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2018530589の分割
【原出願日】2016-12-09
(31)【優先権主張番号】1521883.7
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511185690
【氏名又は名称】オーバル メディカル テクノロジーズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】PO Box 1386 Cambridge Cambridgeshire CB1 0JY United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】マッシュー ヤング
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動して針が針挿入位置にくると、針引き込みメカニズムが解除されるように、皮膚センサ要素に連結される針引き込みメカニズムを備える自動薬物送達装置を提供する。
【解決手段】装置が針挿入構成をとると外部筐体1の外部に伸張する針11を有する針アセンブリと、主駆動ばね4を内部筐体3内に有する薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素15が前部位置から後部位置へ移動すると解除され、主駆動ばね4は、針アセンブリの移動軸にオフセットした軸に沿って拡張するよう構成される。薬物送達後、解除されると針11を外部筐体1に引き込むよう構成され、皮膚センサ要素15が後部位置から前部位置へ移動して針11が針挿入位置にくると、針引き込みメカニズムが解除されるように皮膚センサ要素15に連結される針引き込みメカニズムを備える自動薬物送達装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動薬物送達装置であって、
筐体と、
前記筐体に連結され、前記筐体に対して移動可能な皮膚センサ要素であって、前記筐体に対して前部位置に付勢され、前記皮膚センサ要素が患者の注射位置に押し付けられると前記筐体に対して後部位置に移動可能となる皮膚センサ要素と、
前記装置が針挿入位置にくると前記筐体の外部に伸張する皮下注射針を有する針アセンブリと、
第一の蓄積エネルギー源を前記筐体内に有し、さらに蓄積エネルギー源を含む薬物送達メカニズムであって、動作中、前記第一の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針を初期位置から前記針挿入位置に移動するように構成され、さらに蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針を通して薬物を送達するために解除可能である、薬物送達メカニズムと、および、
解除されると、針引き込みメカニズムが、前記皮下注射針を前記筐体に引き込むよう構成される前記針引き込みメカニズムであって、
前記皮膚センサ要素が前記後部位置から前記前部位置へ移動して前記皮下注射針が前記針挿入位置にくると、前記針引き込みメカニズムが解除されるように、前記皮膚センサ要素に連結される前記針引き込みメカニズムと、を備える自動薬物送達装置。
【請求項2】
前記装置は、第二の蓄積エネルギー源を含み、
前記皮下注射針が前記針挿入位置にあり、前記皮膚センサ要素が前記後部位置から前記前部位置に向かって移動したとき、前記皮下注射針は、前記第一の蓄積エネルギー源に結合されたままであり、前記第二の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針を前記筐体内に引き込むために、前記第一の蓄積エネルギー源によって与えられる力を克服するために解除される、請求項1に記載の自動薬物送達装置。
【請求項3】
前記第二の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針が前記針挿入位置にあり、前記皮膚センサが前記後部位置から前記前部位置に向かって移動するまで圧縮状態でロックされるばねである、請求項2に記載の自動薬物送達装置。
【請求項4】
前記皮下注射針が前記針挿入位置にあり、前記皮膚センサ要素が前記後部位置から前記前部位置に向かって移動すると、前記皮下注射針は、前記薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源から外れる、請求項1に記載の自動薬物送達装置。
【請求項5】
前記針引き込みメカニズムは、前記皮下注射針を前記筐体に引き込むよう構成される第二の蓄積エネルギー源を含む、請求項4に記載の自動薬物送達装置。
【請求項6】
前記薬物送達メカニズムの前記第一の蓄積エネルギー源から前記皮下注射針が外されると、前記第二の蓄積エネルギー源が解除され、前記皮下注射針が前記筐体に引き込まれる、請求項5に記載の自動薬物送達装置。
【請求項7】
前記第二の蓄積エネルギー源による前記皮下注射針の引き込みは、前記第一の蓄積エネルギー源によって抑制される、請求項5または請求項6に記載の自動薬物送達装置。
【請求項8】
前記第一の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針が前記針挿入位置へ移動すると前記第二の蓄積エネルギー源にエネルギーを伝える、請求項2、請求項3、または請求項5~7のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項9】
前記第二の蓄積エネルギー源は、装置の使用前に保持機能によって圧縮状態に維持されたばねであり、前記第二の蓄積エネルギー源は、使用中の皮膚センサの移動によって、または使用中の針挿入メカニズムによって、または使用中の前記薬物送達メカニズムによって、保持機能から外される、請求項2、3、または請求項5~8のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項10】
前記薬物送達メカニズムは、前記第一の蓄積エネルギー源と前記針アセンブリとの間に位置する駆動部材を含み、前記駆動部材は、前記皮下注射針を前記針挿入位置に駆動するために前記針アセンブリと係合する弾性部を備える、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項11】
前記薬物送達メカニズムは、前記蓄積エネルギー源と前記針アセンブリとの間に位置する駆動部材を含み、前記駆動部材は、前記皮下注射針を前記針挿入位置に駆動するために前記針アセンブリと係合する弾性部を備え、前記皮下注射針が前記針挿入位置に到達し、皮膚センサ要素が前記後部位置から前記前部位置に移動すると、前記弾性部が前記針アセンブリとの係合から外れ、前記第一の蓄積エネルギー源が前記針アセンブリから外される、請求項1または請求項4~7のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項12】
前記駆動部材は、ばねシートと、前記針アセンブリに係合するよう構成される係合部とを含み、前記ばねシートと前記係合部とは前記弾性部により接続され、前記駆動部材は、前記針アセンブリの反対側に伸張する少なくとも2個の弾性アームと、前記弾性アームに接続されて前記薬物送達メカニズムの前記第一の蓄積エネルギー源に係合する少なくとも1個のばねシートとを含む、請求項10または請求項11に記載の自動薬物送達装置。
【請求項13】
前記第一の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針が前記筐体へ引き抜かれると、前記皮下注射針が、少なくとも前記第一の蓄積エネルギー源の一部の中を移動するように、前記筐体内に配置される、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項14】
前記第一の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針が前記筐体へ引き抜かれると、前記皮下注射針が、少なくとも前記第一の蓄積エネルギー源の一部の中を、またはこれを越えて、移動するように、前記筐体内に配置され、さらに、前記第一の蓄積エネルギー源は、前記皮下注射針が引き込み位置にあるときは前記針アセンブリの対向する両側に配置される第一および第二の駆動ばねを有する、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の自動薬物送達装置。
【請求項15】
前記針引き込みメカニズムは、前記第一および第二の駆動ばねの間の空間に拡張するよう配置されたばねである第二の蓄積エネルギー源を有する、請求項14に記載の自動薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器具の針安全メカニズムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジや自己注射器など、針を用いた薬物送達装置には、通常、薬物送達後の偶発的な針刺し損傷の危険性を低減するための針安全メカニズムが組み込まれている。
【0003】
こうしたメカニズムのほとんどは、薬物が送達された後で使用者がメカニズムを作動させるために余分な動作を行うことなく、自動的に展開されるという意味で、「受動的」である。受動的メカニズムは、使用済みの針が確実に保護されるという点において、「積極的」システム(薬物送達後、使用者が独立した動作によって針安全メカニズムを展開する必要がある)に対して明確な利点を持つ。
【0004】
こうした「受動的」メカニズムは、次の二つのタイプに分けられる傾向にある。「針引き込み」式メカニズムと、「カバー拡張」式メカニズムである。
【0005】
通常、針引き込み式メカニズムにおいては、内部薬物送達メカニズムによって指示された時点で、針が自動的に患者から薬物送達装置へと引き抜かれる。この手法において起こり得る問題の一つが、薬物送達の完了前に針が引き抜かれてしまうことであり、これによって薬物が患者の正確な部位に送達されないということになる。これは、複雑な「ロストモーション」メカニズムなしには、薬物送達の終了と針の引き抜きとの間に遅延を生じさせることが困難であるために生じる。製造公差があるため、薬物送達が完了するまさにその時点で針を引き抜くということができない。ロストモーションメカニズムは、どのようなものであれ、装置の大きさと複雑性を増すものである。
【0006】
針引き込み手法の問題の二つ目は、注射部位からの針の引き抜きが早すぎると、患者の皮膚に針で空いた穴から薬物が漏出するおそれがあることである。これは、患者の体内組織に薬物を吸収するための十分な時間がなく、未だボーラスとして患者の体内に存在するためにおこる。したがって、薬物送達の終了後、数秒の間、針を患者に刺したままにしておくことには、人体に薬物を吸収可能とし、この問題の危険性を低減するという潜在的なメリットがある。
【0007】
「カバー拡張」式メカニズムにおいて、薬物送達後、装置ひいては針が患者から引き抜かれるまで針が患者に残り、針が患者から引き抜かれると、ばね式針カバーが針および(使用者が保持する)装置本体に対して前方向に移動して定位置にロックされ、針が保護される。この手法は、コストがかかる複雑な遅延引き抜きメカニズムなしに、薬物送達が終了した後、十分な時間針を患者に残したままにすることができる可能性がある。
【0008】
しかしながら、カバー拡張式の手法には、長い針を小型の薬物送達装置と組み合わせて使用する際に、明確な不利益がある。拡張する針カバーは、装置が小型および/または十分なロバスト性がないという問題を抑えるために、拡張された後に展開後の取り扱いや曲げる力に耐えるだけの十分なロバスト性を備える必要があるからである。
【0009】
自己注射器など、装置によっては、携帯性を高め恐怖心を与えないようにするために、小型であることにメリットがある。これは特にアドレナリン自己注射器に効果があり、発表された研究では、大きな死亡原因は装置のサイズのせいで使用者が自己注射器を携帯していなかったことにあることが示されている。現行の筋肉内自己注射器の多くで用いられる針の長さが短すぎること、また25mmの挿入深度で10mm程度以上長くするべきであることを示唆する証拠もある。したがって、より小型かつ針の長い装置が求められている。
【0010】
「カバー拡張」式針安全メカニズムでは、カバー対象となる伸張した針がより長くなるため、装置のサイズに対してより大きな影響がある。これは、カバーが、屈曲および破壊力に対する高い機械抵抗を維持しつつ、装置本体よりもさらに拡張する必要があることによる。
【0011】
本発明の目的は、現在の針引き込み式メカニズムまたはカバー拡張式メカニズムの不利益を持たない、長い針を有する小型の薬物送達装置に適した針安全メカニズムを提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第一の局面において、筐体と、筐体に連結され、筐体に対して移動可能な皮膚センサ要素であって、筐体に対して前部位置に付勢され、皮膚センサ要素が患者の注射位置に押し付けられると筐体に対して後部位置に移動可能となる皮膚センサ要素と、装置が針挿入構成をとると筐体の外部に伸張する皮下注射針を有する針アセンブリと、第一の蓄積エネルギー源を筐体内に有する薬物送達メカニズムと、解除されると、皮下注射針を筐体に引き込むよう構成される針引き込みメカニズムであって、皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動して針が針挿入位置にくると、針引き込みメカニズムが解除されるように、皮膚センサ要素に連結される針引き込みメカニズムと、を備える自動薬物送達装置を提供する。
【0013】
この装置は、薬物送達メカニズムではなく皮膚センサ要素によって作動させられる針引き込みメカニズムを有する。これは、薬物が送達された後、使用者によって装置が注射位置から離されると、針が装置の本体に引き込まれることを意味する。このようにして、薬物送達メカニズムではなく使用者によって、針安全メカニズムのタイミングが制御されるが、使用者は針安全メカニズムを展開するための動作をさらに行う必要がない。
【0014】
好ましくは、薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素が前部位置から後部位置へ移動すると解除される。好都合には、蓄積エネルギー源は、使用の際、針アセンブリの移動軸にオフセットした軸に沿って拡張するよう構成される。蓄積エネルギー源が針アセンブリの移動軸にオフセットした軸に沿って拡張するよう構成されることにより、小型の装置が実現可能となる。1個または複数のばねを蓄積エネルギー源として用いる場合には、この構成には大型または強力なばねは必要ない。蓄積エネルギー源は、針アセンブリの移動軸に平行または非平行な軸に沿って拡張するよう構成されてもよい。
【0015】
本明細書において、前および近位は、装置の同じ側の端部を指し、患者に薬物を送達する側の装置端部である。同様に、後および遠位は、装置の同じ側の端部を指し、装置の前端と反対側の装置端部である。本明細書において、「注射位置」という語句は、患者の腿、胴、または腕など、薬物を送達する患者の領域を意味する。
【0016】
薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素が前部位置から後部位置へ移動するまで解除されないようにすることができる。好ましくは、薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素の前部位置から後部位置への移動の結果、解除される。代替的に、皮膚センサの後部位置への移動により、ボタンなどの二次解除メカニズムのロックを解除するようにしてもよい。
【0017】
薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源は動作時に皮下注射針を初期位置から挿入位置へと移動させ、皮下注射針が挿入位置にきて皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動されると、皮下注射針が薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源から外れるようにしてもよい。代替的に、薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源は動作時に皮下注射針を初期位置から挿入位置へと移動させ、皮下注射針が挿入位置にきて皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動されると、皮下注射針は第一の蓄積エネルギー源に連結されたままで、第二の蓄積エネルギー源が解除されて第一の蓄積エネルギー源により与えられる力を克服し、筐体に針を引き抜くようにしてもよい。
【0018】
薬物送達メカニズムは、さらに、動作時に解除されて皮下注射針を経由して薬物を送達する蓄積エネルギー源を有してもよい。代替的に、第一の蓄積エネルギー源が、皮下注射針を初期位置から挿入位置へ移動させるためと、皮下注射針を経由して薬物を送達するための双方に用いられるよう構成されてもよい。
【0019】
針アセンブリは、好ましくは、注射する薬物を収容する薬物容器を有する。皮下注射針は、薬物容器に固定されてもよい。針アセンブリは、プランジャーロッドを有してもよい。薬物送達メカニズムは、針と薬物容器とを挿入位置に移動し、その後プランジャーロッドを薬物容器に対して移動させて薬物を送達するよう構成されてもよい。
【0020】
薬物送達メカニズムは、第一の蓄積エネルギー源と針アセンブリとの間に位置する駆動部材を有してもよい。駆動部材は、弾性部を含み、針と係合して針アセンブリを針挿入位置へと駆動してもよい。弾性部は、針が挿入位置に到達して皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動すると、針ハブまたは薬物容器との係合が外れ、第一の蓄積エネルギー源が針アセンブリから外れるようにしてもよい。
【0021】
薬物送達メカニズムは、針が針挿入位置にくるまで、針引き込みメカニズムの解除を防止してもよい。薬物送達メカニズムは、少なくとも多少の薬物が皮下注射針を経由して送達されるまで、針引き込みメカニズムが解除されないようにしてもよい。
【0022】
皮膚センサは、針引き込みメカニズムが作動された後は前方位置でロックされて、針先端とこれを覆う皮膚センサ前部との間にさらに距離が空くようにしてもよい。
【0023】
第一の蓄積エネルギー源は、1以上のばねを含んでもよい。代替的に、第一の蓄積エネルギー源は、異なる弾性要素または圧縮ガスを含んでもよい。第一の蓄積エネルギー源は、電気エネルギー格納部を含んでもよい。
【0024】
針引き込みメカニズムは、皮下注射針を筐体へ引き込むよう構成される第二の蓄積エネルギー源を含んでもよい。
【0025】
第二の蓄積エネルギー源による針の引き込みは、第一の蓄積エネルギー源によって抑制されてもよい。第一の蓄積エネルギー源は、針が針挿入位置へ移動すると第二の蓄積エネルギー源にエネルギーを伝えてもよい。一実施形態において、第二の蓄積エネルギー源は、本明細書では針安全ばねと呼ばれるばねである。針安全ばねは、針が挿入位置へ移動すると薬物送達メカニズムにより圧縮されてもよい。皮下注射針が挿入位置にきて皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動されると、皮下注射針が薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源から外れてもよい。薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源から外れると、針安全ばねが拡張して針を筐体に引き込むことができる。ばねの代替例として、第二の蓄積エネルギー源は、針が挿入位置に移動すると薬物送達メカニズムによって圧縮されるガスであってもよい。
【0026】
針安全ばねは、使用前には薬物容器に衝撃を与えないようにする、または針挿入力もしくは薬物送達力を低減するよう、装置の使用前には保持機能によって圧縮状態に維持することができる。針安全ばねは、使用中の皮膚センサの移動、または使用中、針挿入メカニズムもしくは薬物送達メカニズムによって、保持機能から外すことができる。
【0027】
代替的に、薬物送達メカニズムの第一の蓄積エネルギー源は動作時に皮下注射針を初期位置から挿入位置へと移動させ、皮下注射針が挿入位置にきて皮膚センサ要素が後部位置から前部位置へ移動されると、皮下注射針は第一の蓄積エネルギー源に連結されたままで、第二の蓄積エネルギー源が解除されて第一の蓄積エネルギー源により与えられる力を克服し、筐体に針を引き抜くようにしてもよい。一実施形態において、第二の蓄積エネルギー源は、皮膚センサが後部位置から前部位置に移動されて針が針挿入位置にくるまで圧縮状態でロックされる針安全ばねである。針安全ばねが解除されると、ばねは拡張して第一の蓄積エネルギー源が与える力を克服し、針を筐体に引き込む。第一の蓄積エネルギー源は、針安全ばねよりもばね定数が小さい1個または複数のばねであってもよい。
【0028】
薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素が前部位置から後部位置へ移動するまで解除されないようにすることができる。好ましくは、薬物送達メカニズムは、皮膚センサ要素の前部位置から後部位置への移動の結果として解除される。薬物送達メカニズムは、薬物送達メカニズムと筐体との間の連結によって解除が抑制されてもよい。この連結は、皮膚センサ要素が後部位置にくると解除されてもよい。薬物送達メカニズムの駆動部材は、駆動部材の部分と係合するロック部材によって、筐体の部分に対して保持されてもよい。ロック部材は、筐体の一部であってもよいし、別要素であってもよい。ロック部材は、皮膚センサが後部位置に移動するまで、皮膚センサによって駆動部材との係合が外れないよう抑えられてもよい。後部位置では、皮膚センサの開口部または皮膚センサのロック面の不連続部がロック部材と揃い、ロック部材が駆動部材から外れることができるようにしてもよい。
【0029】
一実施形態において、ロック部材は、複数のボールを有する。各ボールが駆動部材の凹部および筐体の内側部分の開口部と係合して、筐体に対する薬物送達メカニズムの移動を抑制する。皮膚センサは、後部位置にくるまでボールが駆動部材の凹部から外れないようにする。皮膚センサが後部位置にくると、第一の蓄積エネルギー源がボールを付勢して凹部から外し、皮膚センサの開口部に入るようにする。代替例として、ロック部材は、筐体に複数のラッチを有してもよく、これら複数のラッチは、それぞれ、駆動部材の対応するラッチまたは凹部と係合する。ラッチは、駆動部材からラッチが外れないよう皮膚センサによって屈曲が防止されている弾性リムに設けられてもよい。皮膚センサが後部位置にある場合にのみ、ラッチが駆動部材から外れることができる。
【0030】
皮膚センサは、複数のロック面を有してもよい。皮膚センサは、複数の開口部を有してもよい。皮膚センサは、1以上の皮膚センサばねによって筐体に対して前方位置に付勢されてもよい。
【0031】
駆動部材は、針アセンブリが挿入位置にきて皮膚センサが後部位置から移動すると変形して針アセンブリから外れる弾性部を有してもよい。一実施形態において、駆動部材は、ばねシートと、針アセンブリに係合するよう構成される係合部とを含み、ばねシートと係合部とは弾性部により接続される。弾性部は、1以上の弾性アームを含んでもよい。駆動部材は、複数のばねシートと、複数の係合部とを有してもよく、各ばねシートは1以上の弾性アームによって係合部に接続される。係合部は、針ハブまたは薬物容器と係合してもよい。代替的に、第一の蓄積エネルギー源が薬物の送達にも用いられる場合、係合部はプランジャーロッドに係合してもよい。プランジャーロッドは、薬物容器内を移動して皮下注射針を経由して薬物を送達するよう構成されてもよい。
【0032】
弾性アームは、初期位置から針挿入位置への針アセンブリの移動軸に直交する方向に屈曲するよう構成されてもよい。弾性アームは、針アセンブリが針挿入位置へ移動すると、第一の蓄積エネルギー源によって張力下で保持されてもよい。
【0033】
駆動部材は、針アセンブリの反対側に伸張する少なくとも2個の弾性アームと、弾性アームに接続されて薬物送達メカニズムの蓄積エネルギー源に係合する少なくとも1個のばねシートとを含んでもよい。一実施形態において、駆動部材は、2対の弾性アームを有し、各対の弾性アームは、プランジャーロッドの後端部に係合する係合部によって互いに連結される。
【0034】
針アセンブリはカム面を含み、カム面は、駆動部材と係合して、1以上の弾性アームが屈曲可能となると針アセンブリを駆動部材から確実に外す。カム面は、針ハブ、薬物容器、またはプランジャーロッドに設けることができる。カム面は、駆動部材の係合部のそれぞれと係合するよう設けられてもよい。
【0035】
代替的に、または追加的に、カム面は、駆動部材の各係合部に設けられてもよい。
【0036】
針アセンブリのカム面は、それぞれ、1以上の弾性アームが屈曲可能となると、第一の蓄積エネルギー源、または第二の蓄積エネルギー源、または第一の蓄積エネルギー源および第二の蓄積エネルギー源双方の作用により、針アセンブリが駆動部材から強制的に外れるように、筐体に対する針アセンブリの移動方向に斜めの角度で駆動部材の係合部に当接してもよい。
【0037】
第一の蓄積エネルギー源は、針が筐体へ引き抜かれると、少なくとも第一の蓄積エネルギー源の一部の中を、またはこれを越えて、針が移動するように、筐体内に配置することができる。これにより、小型の装置が可能となる。一実施形態において、第一の蓄積エネルギー源は、針が引き込み位置にあるときは針アセンブリの対向する両側に配置される第一および第二の駆動ばねを有する。第二の蓄積エネルギー源は、駆動ばねの間の空間に拡張するよう配置されたばねであってもよい。
【0038】
薬物送達装置は、自己注射器であってもよい。自己注射器は、動作時に手で持つように構成されてもよい。
【0039】
装置は、患者に送達する薬物を含んでもよい。この薬物は、液体であってもよい。一実施形態において、薬物はエピネフリンである。
【0040】
針は、その伸張時の長さ、すなわち針が注射位置に延びる際の長さが、5mm~50mmの間、好ましくは10mm~25mmの間であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例として詳細に説明する。
【0042】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる薬物送達装置の使用前の模式的横断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の装置の別の横断面図であり、キャップが外れた状態の、主駆動ばねを抑えるロックメカニズムを示す。
【
図5】
図5は、
図1の装置のさらに別の横断面図であり、主駆動ばねを抑えるロックメカニズムを示す。
【
図7】
図7は、皮膚センサが「作動」位置に移動した状態の
図6の装置の横断面図である。
【
図8】
図8は、ロックメカニズムがアンロック位置にある
図7の装置の別の横断面図である。
【
図13】
図13は、駆動ばね抑制メカニズムがアンロック位置にある
図12の装置の別の横断面図である。
【
図14】
図14は、薬物シールが破れて薬物と針との間の流体路が開いた後の
図13の装置の横断面図である。
【
図16b】
図16bは、わかりやすくするために外ケースを図示しない状態の
図16aの詳細を示す図である。
【
図17】
図17は、
図16bと同様の、わかりやすくするために外ケースを図示しない状態の、皮膚センサが前方に移動可能となった後の時点における自己注射器の詳細断面図である。
【
図18】
図18は、カートリッジ、針、およびプランジャーロッドが針安全ばねによって押し戻された後の自己注射器の断面図である。
【
図19a】
図19aは、針が本体内部に引き込まれた状態の
図1の自己注射器の使用後の断面図である。
【
図20a】
図20aは、本発明にかかる他の実施形態の使用前の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に、本発明にかかる自己注射器の一例の断面図を示す。
図2は、
図1の自己注射器の別の断面図である。
図3は、
図1の自己注射器の分解図である。
【0044】
自己注射器は、薬物6を収容するカートリッジ8を備える。このカートリッジは、針ハブ9に取り付けられている。針11が、針ハブ9に固定されている。カートリッジ8は、薬物シール10により針11から遮断されている。カートリッジ8の他端は、プランジャー5により閉鎖されている。
【0045】
自己注射器は、上部筐体1と下部外部筐体24とを有する外部筐体を備える。外部筐体は、カートリッジ8を収容する。使用の際、以下で説明するように、カートリッジが外部筐体に対して移動して、針11を注射位置に挿入する。2個の主駆動ばね4が、カートリッジを前方に駆動して針を注射位置に挿入し、次にカートリッジ内でプランジャー5を移動させて薬物6を排出するよう、設けられる。主駆動ばね4は、外部筐体1とヨーク7との間に位置する。
図1に示すように、自己注射器を使用する前の主駆動ばねは圧縮状態にある。使用前に圧縮状態で保持されるのは、ヨークが外部筐体に対して移動することを抑えるためである。ヨーク7の後部は、プランジャーロッド2に圧力をかける。プランジャーロッド2は、プランジャー5に圧力をかける。
【0046】
内部筐体3は、上部外部筐体1と下部外部筐体24の双方に固定される。
【0047】
皮膚センサ15は、自己注射器の前端に設けられ、内部筐体3に摺動可能に連結されて、外部筐体1内に伸張する。皮膚センサ15は、皮膚センサと内部筐体3との間に設けられた2個の皮膚センサばね14によって前方に付勢されるが、皮膚センサブレーシングアーム26が内部筐体の凹部に係合することによって内部筐体3に保持される。
【0048】
針安全ばね13は、針ハブ9と内部筐体3の前端との間に設けられる。針安全ばねは、主駆動ばねに比べるとかなり弱く、当初は非圧縮状態にある。
【0049】
キャップ16は、外部筐体1に連結され、自己注射器の前部を覆う。このキャップは、針安全ばね内に位置する針保護部12を有する。
【0050】
また、自己注射器は、駆動ばね4の解除を防止するロックメカニズムを有する。このメカニズムの要素を、
図3に示す。4個のロックボール17が、ヨーク7の凹部18と内部筐体3の穴部28に対応して保持され、ヨークと内部筐体の相対移動を防止する。
【0051】
図4は、キャップ16を外してロックボール17が見える状態の
図1の自己注射器の断面図である。ロックボール17は、ヨーク7を内部筐体3にロックすることにより、ヨーク7が主駆動ばね4によって前方移動することを防止する。ロックボール17は、皮膚センサ15によって、適切な位置に保持される。
【0052】
図5は、キャップが定位置にある状態の
図4の自己注射器の別の断面図である。
【0053】
図3に示す各種の要素は、プラスチック材料や金属、または薬物送達装置において通常用いられる材料から成形もしくは形成することができる。
【0054】
図1~
図5に示す自己注射器の動作を、以下に説明する。
【0055】
図6は、キャップを外して使用準備ができた状態の
図1の自己注射器の断面図である。
【0056】
自己注射器を作動させるために、患者の注射位置に皮膚センサ15が押し付けられる。
図7は、皮膚センサ15が後方に移動して皮膚センサばね14を圧縮した状態の
図6の自己注射器の断面図である。
【0057】
図8は、ロックボール17がヨーク7の凹部18のロック位置から外れ、内部筐体に対するヨークの相対移動が可能となるアンロック位置に移動した状態の
図7の自己注射器の断面図である。これは、皮膚センサ15が後方に移動すると、皮膚センサ15の穴部19がロックボール17と並ぶことによって可能となる。
図8aは、
図8の詳細図であり、穴部19をよりはっきりと示す。
【0058】
ロックボールがヨークの凹部18から外れると、主駆動ばね4によってヨークが内部筐体3に対して前方に駆動される。主駆動ばね4は、カートリッジ8の反対側に位置している。駆動ばね4が針の軸からオフセットした軸に沿って拡張することがわかる。ヨーク20の後部は、プランジャーロッド2と係合してプランジャーロッド2を前方に移動させ、合せてカートリッジ、針、ハブを移動させる、ヨーク推進アーム22を有する。薬物シール10は、この段階でプランジャーがカートリッジ内で移動して薬物6が針11を経由して投与されることを防止する。
【0059】
図9は、ヨーク7の要素の斜視図である。2個の主駆動ばね4の負荷を軽減する2個の推進面21と、プランジャーロッド2に負荷を与えヨーク7の後部の一部を形成する2個のヨーク推進アーム22とを備える。
図8に示すように、薬物送達前および薬物送達中、これらのヨーク推進アーム22は、内部筐体3の対応するベアリング面23にかかるベアリング面27によって閉鎖状態で保持される。
【0060】
図10は、内部筐体3の斜視図である。既に述べたように、内部筐体3のベアリング面23は、ヨーク推進アーム22を保持する。穴部28は、ロックボール17と共同して、自己注射器が作動させられるまでヨーク7を適切な位置にロックする。内部筐体は、突起29を用いて上部外部筐体1にロックされる。内部筐体は、突起30を用いて下部外部筐体24にロックされる。
図11は、
図10の内部筐体3の断面図である。
【0061】
図12は、針11が患者に挿入された後の
図1の自己注射器の断面図である。針安全ばね13は、ヨーク7の後部に作用して、次にプランジャーロッド2、合せてカートリッジ、針、およびハブを前方に移動させる主駆動ばね4によって圧縮されている。既に述べたように、薬物シール10は、この段階で薬物6が針11を経由して投与されることを防止する。
【0062】
【0063】
カートリッジは、
図12および
図13に示す前方位置に到達すると、それ以上前方に移動することはできない。ヨークおよびプランジャーロッドを介して主駆動ばね4がプランジャー5に加える圧力は、その後、針11の後端で薬物シール10を変形させて破る。薬物シール10が破れると、針を経由して注射位置に薬物を送達することができる。プランジャーロッドは、プランジャーロッドの後部リップがカートリッジ8の後端部に当接するまでカートリッジに対して移動し、薬物を投与する。
【0064】
図14は、薬物6が投与された後の
図1の自己注射器の断面図である。カートリッジ8は完全に前方に移動しており、ヨーク7の後部に作用する主駆動ばね4による薬物6への圧力により、薬物シール10が広がって針11の後端で貫通され、針11を経由して薬物6を患者に投与することが可能となる。
【0065】
図15は、
図14の自己注射器の別の断面図である。カートリッジが完全に前方位置にくると、ヨークのベアリング面27は、内部筐体のベアリング面23ではなく、皮膚センサベアリング面25に支持されることになることがわかる。
【0066】
薬物の送達後、自己注射器が注射位置から取り外される。自己注射器は、自己注射器が注射位置から取り外されて皮膚センサばね14により皮膚センサ15が再び前方に移動すると、針11が内部筐体3に引きもどされるよう構成される。
【0067】
図16aは、
図14の自己注射器の別の断面図である。
図16bは、わかりやすくするために外ケースを図示しない状態の
図16aの詳細を示す図である。皮膚センサブレーシングアーム26は、本体内のベアリング面23によって定位置に保持されていなくてもブレーシングアームがプランジャーロッド2にかかるように、ヨーク推進アーム22を抑える。これは、ヨーク7の後部が皮膚センサベアリング面25に接触しているためである。外ケース1(不図示)は、皮膚センサブレーシングアーム26を支持する。
【0068】
図17は、
図16bと同様にわかりやすくするために外ケースを図示しない状態の自己注射器の詳細断面図であり、薬物送達後、患者の注射面から自己注射器を外すことで、皮膚センサ15が皮膚センサばね14によって前方に移動可能になった時点の図である。皮膚センサブレーシングアーム26が皮膚センサの残りの部分とともに前方に移動して、ヨーク推進アーム22が分離することが可能となり、プランジャーロッド2がヨークと主駆動ばね4との係合から解除されることがわかる。カートリッジがもはや主駆動ばねと係合していないため、針安全ばねは、針ハブ9と、これに合せて針11、カートリッジ8、およびプランジャーロッド2を、内部筐体3内部で後方に付勢する。
【0069】
図18は、カートリッジ8、針11、およびプランジャーロッド2が、ヨーク推進アーム22の移動により主駆動ばねから解除され、針安全ばね13によって押し戻された後の、自己注射器の断面図である。針は、主駆動ばね4を越えて、プランジャーロッド2が外部筐体1に当接するまで押し戻される。この位置で、針11は外部筐体内部に引き込まれる。
【0070】
図19aは、使用後の針が本体内部に引き込まれた状態の
図1の自己注射器の断面図である。ヨーク推進アーム22は、ヨーク材料の弾力性により元の位置に戻り、ヨーク20の後部でカートリッジ8および針11の前方移動をブロックする。これにより、針安全ばね13に対する針の前方への移動、例えば使用済み自己注射器の取り扱い中の慣性による、針刺し損傷のリスクが防止される。
図19bは、
図19aの詳細図である。
【0071】
上記の実施形態は、操作中の針アセンブリの移動軸にオフセットかつ平行な軸に沿って拡張する主駆動ばねを有する。ただし、1個もしくは複数の主駆動ばねまたはその他の蓄積エネルギー源は、針の移動方向に平行ではない軸に沿って拡張してもよい。
図20a~
図20eは、かかる装置の模式的図である。
【0072】
図20aは、本発明にかかる他の実施形態の使用前の図である。
図20に示す装置は、送達対象の薬物を収容するカートリッジ42を備える筐体40を有する自己注射器である。皮下注射針44が、カートリッジに固定されている。カートリッジの後端部は、プランジャー46によって閉鎖されている。カートリッジ42内でプランジャー46を駆動し、皮下注射針44を経由して薬物を排出するよう、駆動ばね48が設けられる。使用前には、駆動ばねは、筐体の突出部50が駆動ばねとプランジャーとの間の駆動要素49と係合することによって、プランジャー46への作用が抑えられている。皮膚センサ要素52は、筐体40に枢動可能に接続されている。皮膚センサ要素52は開口部53を有し、この開口部は、以下で説明するように、筐体の開口部43と揃って、使用の際に針が通過することができる。
【0073】
図20bに、注射位置に装置が置かれて皮膚センサ要素52が筐体40に押し付けられた状態の
図20aの装置を示す。
図20cに、続いて針が針挿入位置に移動した状態の
図20bの装置を示す。カートリッジおよび駆動メカニズムは、針が開口部43および53を通って注射位置へと伸びるように、筐体内で枢動する。針挿入メカニズム(不図示)を用いて針を
図20cに示す針挿入位置へ駆動してもよい。針挿入メカニズム、皮膚センサの移動または使用者がボタンを押すなどその他の手段によって解除されてもよい。代替的に、針挿入は手動で行われてもよい。
【0074】
カートリッジが針挿入位置へ移動すると、突出部50が駆動要素49から解除される。これにより、駆動ばね48が解除されて、筐体内でプランジャー46を押し出し、針を経由して薬物を注射位置へ排出する。
図20dに、薬物が排出された後の
図20cの装置を示す。
【0075】
薬物の排出後、装置が注射位置から持ち上げられる。そして、付勢ばね(不図示)により、皮膚センサ要素52が注射位置から離される。
図20eに、装置を注射位置から引き抜いた後の皮膚センサ要素が筐体から伸張した状態の
図20dの装置を示す。皮膚センサの伸張により、カートリッジを筐体内の初期位置に引き戻す針引き込みメカニズム(不図示)が解除され、針が筐体の中に引き戻される。
図20fに、針が筐体内に引き込まれた状態の
図20eの装置を示す。
【0076】
言うまでもなく、上記の各実施形態は、本発明にかかる装置の例に過ぎない。各種の変更が可能であり、代替的な具体的メカニズムを使用中の装置の要素のロックおよび解除に用いることもできる。例えば、ロックボール17は、内部筐体のロックラッチに置き換えてもよい。針安全ばねは、使用前には圧縮状態で保持され、カートリッジが内部筐体内を前方に移動するときにロックラッチが移動することで解除されてもよい。針の移動および蓄積エネルギー源の拡張の相対的方向についての異なる配置も想定可能である。これらおよびそのほかの変更も、当業者には容易に考えつくことができるものである。