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  • 特開-ワイパー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089690
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ワイパー
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/00 20060101AFI20220609BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B08B1/00
B23Q11/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202296
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】特許業務法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 朋尚
(72)【発明者】
【氏名】宮城 佳宏
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA47
3B116AB53
3B116BA03
3B116BA11
(57)【要約】
【課題】取付部とリップ部との接着強度を向上させ、高い耐久性を有すると共に、工作機械への取付時のボルト締めによる取付部の歪みやたわみがなく、摺動面に対するリップ部先端のシール性が高いワイパーを提供する。
【解決手段】本発明のワイパー1は、金属板または樹脂板からなる帯状の取付部2と、弾性体からなり前記取付部の側面に取り付けられたリップ部3と、を備える。取付部2の側面21とリップ部3とは、金型内で加硫接着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板または樹脂板からなる帯状の取付部と、
弾性体からなり、前記取付部の短手方向の側面に取り付けられたリップ部と、を備え、
前記取付部の前記側面と前記リップ部とは、金型内で加硫接着されているワイパー。
【請求項2】
前記取付部の側面が、平坦面である、請求項1に記載のワイパー。
【請求項3】
前記取付部の側面が、前記取付部の厚さ方向に傾斜面、曲面または段差を有している、請求項1に記載のワイパー。
【請求項4】
前記取付部は、短手方向の側部が前記取付部の厚さ方向に直角ないし斜めに折曲されて前記側面が形成されている、請求項1~3のいずれかに記載のワイパー。
【請求項5】
前記リップ部は、少なくとも先端の摺動部に、金属板、樹脂板または繊維布が貼着されている、請求項1~4のいずれかに記載のワイパー。
【請求項6】
前記リップ部は、少なくとも先端の摺動部に、繊維または球状の樹脂粒子が含有されている、請求項1~5のいずれかに記載のワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等における摺動部材の表面(被清掃面)に付着した金属屑等の異物を除去するためのワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤、フライス盤などの工作機械の摺動面に切粉や水溶性切削液(クーラント)などの異物が噛みこむことを防止するために、ワイパーが用いられる(例えば特許文献1を参照)。この種のワイパーを図4(a)、(b)に示す。同図に示すように、ワイパー100は、工作機械に取り付けられる取付部101と、先端が工作機械の摺動面に接して異物を除去する弾性材料(ゴム材料)からなるリップ部102とから構成されている。取付部101は、帯状鋼板等からなる補強板101aと、その背面側に配置された弾性材料(ゴム材料)からなる背部101bとからなる。リップ部102および背部101bは、補強板101aを収容した金型内に弾性材料を充填し、一体成形することにより形成される。
このようにして形成されたワイパー100は、取付部101の長手方向に形成した取付用のボルト挿通孔(図示せず)にボルトを挿通させ、工作機械の取付面にボルトで固定される。
【0003】
ワイパー100において、補強板101aと弾性材料との接着は、ワイパー100の走行性能や耐久性のうえで重要であり、接着強度が低いと、補強板101aからリップ部102が容易に破断してしまうおそれがある。
また、補強板101aの背面には、接着強度を考慮して、弾性材料(ゴム材料)からなる背部101bが接着されているため、前記したボルトの締め付け時に背部101bに歪みやたわみが発生しやすかった。
【0004】
一方、特許文献2には、取付部およびリップ部が、合成樹脂により構成されており、剛性が求められる取付部の硬度を高くし、摺動面に対する追従性が求められるリップ部の硬度を低くし、両者を融着により一体化したワイパーが記載されている。特許文献2では、取付部の背面側に弾性材料は形成されていない。
しかし、合成樹脂からなる取付部とリップ部とを融着により一体化させるには、押出成形法が採用されるが、リップ部先端の仕上り精度に起因する、摺動面とこれに摺接するリップ部先端とのシール性が懸念され、切削油やクーラントなどをかきとるワイパーとしての機能を充分に達成できないおそれがある。
【0005】
上記のような押出成形法に代えて、ゴム系接着剤やシアノアクリレート系瞬間接着剤により取付部とリップ部とを接合することも考えられるが、取付部およびリップ部との接合強度が十分でないと、耐久性が劣り、使用時に前記したように破断するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-32336号公報
【特許文献2】特開2005-66376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、取付部とリップ部との接着強度を向上させ、高い耐久性を有すると共に、工作機械への取付時のボルト締めによる取付部の歪みやたわみがなく、摺動面に対するリップ部先端のシール性が高いワイパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパーは、金属板または樹脂板からなる帯状の取付部と、弾性体からなり取付部の短手方向の側面に取り付けられたリップ部と、を備える。取付部の側面とリップ部とは、金型内で加硫接着されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付部の側面とリップ部とを金型内で加硫接着して得られるワイパーは、取付部とリップ部との接着強度が向上し、高い耐久性を有すると共に、取付部の背部には弾性材料が存在しないので、工作機械への取付時のボルト締めによる取付部の歪みやたわみがなく、しかも金型で加硫接着するため、リップ部先端の仕上り精度が高くなり、摺動面に対するシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るワイパーの正面図、(b)はそのX-X線断面図である。
図2】(a)~(f)はそれぞれ本発明の実施形態における取付部の形状の例を示す断面図である。
図3】(a)~(c)はそれぞれ本発明の実施形態における取付部の他の例を示す断面図である。
図4】(a)は従来のワイパーの正面図、(b)はそのY-Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るワイパーを説明する。図1(a)、(b)は、本実施形態のワイパー1を示す正面図およびそのX-X線断面図である。このワイパー1は、金属板または樹脂板からなる帯状の取付部2と、ゴム弾性体からなり取付部の短手方向の側面に取り付けられたリップ部3と、を備える。
【0012】
補強板となる取付部2は、帯状の金属板または樹脂板から構成される。金属板としては、例えば、鋼板、アルミニウム板、真鍮板、タングステン板等が挙げられる。
樹脂板としては、切削加工による150℃以上の温度に耐えられるものが好ましく、例えば、フッ素樹脂や、ポリエーテルエーテルケトン等のスーパーエンジニアリングプラスチック、さらにガラス短繊維、無機フィラー等を充填し複合化したポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0013】
取付部2の厚さは、任意に設定することが可能であるが、リップ部3との接着強度を高めるうえで、1.0mm以上、好ましくは1.2mm以上、より好ましくは1.6mm以上であるのが適当である。取付部2の厚みは大きいほど、リップ部3との接着強度は向上するが、通常、7.0mm以下であるのがよい。また、取付部2の短手方向(図1(a)に示すS方向)の長さは、通常、5mm以上、望ましくは5~50mm程度である。図1(a)では、取付部2の一部を切り欠いて示している。
【0014】
リップ部3が取り付けられる取付部2の短手方向(図1(a)に示すS方向)にある側面21は、長手方向(同図に示すL方向)に沿って平坦面である(図1(b)を参照)。このような平坦面であっても、取付部2の側面21とリップ部3とが金型内で加硫接着されているため、取付部2の側面21にリップ部3を高い接合強度で接合することができる。
【0015】
リップ部3は、図1(b)に示すように、ワイパー1が被摺動面(すなわち被清掃面)に押し付けられたときに、先端の摺動部3aが被摺動面に密着するように屈曲部3bが変形するように切り欠き部3cが形成されている。
リップ部3の厚さは、取付部2の厚さとほぼ同じであるのがよいが、それよりも小さくてもよい。さらに、ワイパー1の性能に影響しない限りにおいて、リップ部3の厚さが取付部2の厚さよりも大きくてもよい。
【0016】
リップ部3は、弾性材料から形成される弾性体で構成される。弾性材料としては、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ハイパロン、ポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、ミラブルウレタン、熱硬化性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリエステルなどのエラストマーが挙げられ、これら一種以上が使用される。また、弾性材料には、加硫剤、加硫促進助剤および補強剤を配合してもよい。加硫剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、有機硫黄化合物、金属酸化物などが挙げられる。加硫促進助剤としては、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、金属酸化物などが挙げられる。補強剤としては、例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボンなどが挙げられる。さらに、例えば、老化防止剤、充填剤、可塑剤、粘着剤などもまた配合され得る。これら以外に、摺動抵抗を小さくするために、グラファイト、シリコンオイル、フッ素パウダー、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤がエラストマーに含まれていてもよい。
【0017】
リップ部3先端の摺動部3aには、被摺動面と接する金属板や樹脂板、繊維布等を貼付したり、摺動部3aの一部または全部にナイロン等の繊維材料や球状の樹脂材料などを含有させたりして、ワイパー1の摺動性を向上させるようにしてもよい。
【0018】
本実施形態において、リップ部3を取付部2の側面21に接合させるには、取付部2の側面21とリップ部3とを金型内で加硫接着させる。金型は、上型と下型とを備え、あらかじめ下型内に取付部2を載置する。ついで、弾性材料を充填し、上型と下型とで加熱加圧してリップ部3を加硫成形し、同時にリップ部3が取付部2の側面21に加硫接着されたワイパー1を得る。
このように、金型内でリップ部3を加硫成形するので、リップ部3の摺動部3aは、仕上り精度が良好であるので、摺動面とのシール性が向上し、油やクーラント等のかきとり機能に優れたものになる。
【0019】
取付部2を構成する帯状の金属板または樹脂板の側面には、あらかじめブラスト処理および/または脱脂処理を行うのが、接合強度をより高めるうえで好ましい。
帯状の金属板または樹脂板の側面には、接着剤を塗布し、金型内の所定位置に載置するのがよい。
【0020】
上記接着剤としては、例えば、プライマー液と上塗り液とからなる2液型の接着剤が挙げられる。プライマー液および上塗り液は、例えば塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、臭素化塩素化ポリブタジエン等のハロゲン化ポリマー、フェノール樹脂、エポキシ樹脂を主成分とするものである。
【0021】
また、接着面積を増大させるために、取付部2の平坦な側面21に代えて、図2(a)~(f)に示すような、厚さ方向に傾斜面、曲面または段差を有する側面21a~21fであってもよい。すなわち、図2(a)、(b)は傾斜面で構成された側面21a、21bを示している。図2(c)は、2つの傾斜面を組み合わせたV字形の側面21cを示している。側面21cは逆V字形であってもよい。
図2(d)は、曲面(円弧状)で構成された側面21dを示している。曲面は同図に示すような凸条曲面の他に、凹状曲面であってもよい。
図2(e)、(f)は、段差を有する側面21e、21fを示している。段差は1つまたは2つ以上(例えば凸形、階段状等)であってもよい。
その他は、図1に示すワイパー1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
また、帯状の金属板または樹脂板から構成する取付部2の曲げ強度を向上させるために、図3(a)~(c)に示すように、取付部2の取付部2を厚さ方向に折曲して、リップ部3と接合する側面を形成してもよい。すなわち、図3(a)、(b)は、直角に折曲した取付部22、23を示しており、折曲した部位に側面221、231が形成されている。図3(c)は、斜めに折曲した取付部24を示しており、折曲した部位に側面241が形成されている。取付部24の側部の傾斜は下向き、上向きのいずれであっても構わない。
この態様では、取付部22,23,24の厚さに係わらず、側面221、231、241の面積を大きくすることが可能であるので、高い接合強度を得ることができる。その他は、図1に示すワイパー1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
取付部の側面とリップ部とを、金型内で加硫接着しているので、それらの接合強度が向上し、耐久性に優れる。そのため、取付部の背部に弾性材料を設ける必要がなくなるので、工作機械への取付時のボルト締めによる取付部の歪みやたわみがなくなる。
しかも、金型内で加硫接着するため、リップ部先端の仕上り精度が高くなり、摺動面に対するシール性が向上する。
【0024】
以上、本発明の実施形態を種々説明したが、これらの説明は一つの例示のために提示したものであり、実施形態に提示された形態に本発明は限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて多くの修正および変形が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1、100 ワイパー
2、22,23、24、101 取付部
21、21a~21f、221、231、241 側面
101a 補強板
101b 背部
3、102 リップ部
3a 摺動部
3b 屈曲部
3c 切り欠き部
図1
図2
図3
図4