(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089704
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】マウスピース
(51)【国際特許分類】
A63B 71/08 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
A63B71/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202315
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】509062147
【氏名又は名称】甲斐 拓也
(71)【出願人】
【識別番号】520480315
【氏名又は名称】内畑 寛崇
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【弁護士】
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 拓也
(57)【要約】
【課題】 使用者に対してより良い使用感を提供可能なマウスピースを提供する。
【解決手段】 上顎歯列に面する上顎歯列面、及び前記上顎歯列面と相対し下顎歯列に面する下顎歯列面を有し、前記上顎歯列面において前記上顎歯列を支持するためのマウスピースであって、前記マウスピースは、前記下顎歯列面が下顎歯列と直接又は間接的に少なくとも一部が接触し前記下顎歯列と互いに噛み合うように構成された接触領域と、前記下顎歯列面と前記下顎歯列との間で通気可能な開口を形成するように構成された非接触領域と、を含む、マウスピースが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎歯列に面する上顎歯列面、及び前記上顎歯列面と相対し下顎歯列に面する下顎歯列面を有し、前記上顎歯列面において前記上顎歯列を支持するためのマウスピースであって、前記マウスピースは、
前記下顎歯列面が前記下顎歯列と直接又は間接的に少なくとも一部が接触し前記下顎歯列と互いに噛み合うように構成された接触領域と、
前記下顎歯列面と前記下顎歯列との間で通気可能な開口を形成するように構成された非接触領域と、
を含む、
マウスピース。
【請求項2】
前記非接触領域は、前記上顎歯列の右犬歯から前記上顎歯列の左犬歯までの領域に対応するように構成された、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記接触領域は、前記非接触領域の一端に接続され前記上顎歯列の右臼歯方向に伸延するように構成された右接触領域と、前記非接触領域の他端に接続され前記上顎歯列の左臼歯方向に伸延するように構成された左接触領域と、を含む請求項2に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記非接触領域の前記下顎歯列面は前記下顎歯列とは非接触となるように構成された、請求項1~3のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記非接触領域において、前記上顎歯列方向に窪んだ凹部を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記上顎歯列の唇側面に形成される表壁部と、
前記上顎歯列の口腔側に形成される裏壁部と、
前記上顎歯列の下側に形成され、前記表壁部と前記裏壁部とを連結するように構成された底壁部と、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記底壁部は、前記表壁部に対して、前記非接触領域において、厚みが薄くなるように構成される、請求項6に記載のマウスピース。
【請求項8】
前記非接触領域の底壁部は、前記接触領域の底壁部に対して厚みが薄くなるように構成される、請求項6又は7に記載のマウスピース。
【請求項9】
前記底壁部は、前記非接触領域の少なくとも一部において、0.05~3.0mmの厚みを有する、請求項6~8のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項10】
前記底壁部は、前記接触領域において、0.05~5.0mmの厚みを有する、請求項6~9のいずれか一項に記載のマウスピース。
【請求項11】
前記開口は、0.5~4.0mmの高さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の上顎歯列を支持するためのマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科矯正、生活習慣の改善など、様々な目的で使用者の歯列を被覆するためのマウスピースが広く用いられてきた。特に、ボクシングなどの格闘技、ラクビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいては、歯列及び/又はその周辺組織の保護、歯列の噛み合わせ改善による筋力、集中力、バランス感覚などの機能の向上、衝撃による脳震盪の発生の抑制などのために、マウスピースは非常に重要な装備品となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、使用時の咬合面に生じる使用感の悪化を改善し快適に使用可能なマウスピースが記載されている。しかし、このようなマウスピースは、下顎歯列のほぼ全体にわたって完全に噛み合わさるように形成されている。したがって、マウスピースと下顎歯列との間で通気が阻害され、円滑な呼吸などを阻害することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、使用者に対してより良い使用感を提供可能なマウスピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、「上顎歯列に面する上顎歯列面、及び前記上顎歯列面と相対し下顎歯列に面する下顎歯列面を有し、前記上顎歯列面において前記上顎歯列を支持するためのマウスピースであって、前記マウスピースは、前記下顎歯列面が下顎歯列と直接又は間接的に少なくとも一部が接触し前記下顎歯列と互いに噛み合うように構成された接触領域と、前記下顎歯列面と前記下顎歯列との間で通気可能な開口を形成するように構成された非接触領域と、を含む、マウスピース」が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、使用者に対してより良い使用感を提供可能なマウスピースを提供することができる。
【0008】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、または上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係るマウスピース20の使用状態を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示に係るマウスピース20の構成を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本開示に係るマウスピース20の構成を示す底面図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示に係るマウスピース20の構成を示す側面図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示に係るマウスピース20の構成を示す側面図である。
【
図5】
図5は、本開示に係るマウスピース20の構成のA-A’断面(
図3)の概略を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本開示に係るマウスピース20の構成のB-B’断面(
図3)の概略を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本開示に係るマウスピース20の構成のC-C’断面(
図3)の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0011】
1.マウスピース20の概要
本開示に係るマウスピース20は、主に使用者の上顎歯列を被覆するように装着される。
図1は、本開示に係るマウスピース20の使用状態を示す図である。
図1によると、使用者の上顎11に形成される上顎歯列を被覆するようにマウスピース20が装着されている。また、使用者の下顎12に形成される下顎歯列に対して、当該マウスピース20の少なくとも一部が接触し、互いに噛み合わさるになっている。
【0012】
ここで、本開示に係るマウスピース20は、上顎歯列のうち右犬歯から左犬歯に至る歯列を収容する領域は、他の領域に比べて上顎方向に窪みが形成されている。したがって、当該窪みによって、下顎歯列とマウスピース20の底壁との間に空間が形成され、当該空間から空気の流通を可能にしている。したがって、使用者が呼吸したときに、当該空間を介して、口腔外から口腔内に空気が円滑に吸気され、また口腔内から口腔外へ空気が円滑に排気される。つまり、使用者の呼吸がマウスピース20によって阻害されることがなく、使用者の使用感を向上させることができる。
【0013】
このようなマウスピース20は、歯科矯正、生活習慣の改善、格闘技やコンタクトスポーツを含む各種スポーツのいずれであっても好適に適用しうる。しかひ、本開示においては、上顎歯列及び下顎歯列のいわゆる奥歯部分の噛み合わせがパフォーマンスに大きく影響され、かつ円滑に呼吸できることが特に重要なコンタクトスポーツに対して特に好適に適用しうる。
【0014】
なお、本開示においては、マウスピース20には、いわゆるマウスガードやガムシールドと呼ばれる装具など、使用者の歯列に装着されその少なくとも一部を被覆するものであれば、いずれをも含む。また、本開示においては、上顎歯列に装着されるマウスピース20について説明するが、当然、マウスピース20は同様に下顎歯列に装着することも可能である。その場合は、下顎歯列に装着されたマウスピース20の上顎歯列側の面と上顎歯列との間で通気可能な開口が形成される。また、本開示に係るマウスピース20を下顎歯列及び上顎歯列の両方に装着するか、いずれか一方に装着し残りの一方は通常のマウスピースを装着し、これらによって通気可能な開口を形成することも可能である。
【0015】
マウスピース20は、一例としては、熱可塑性樹脂製のシートを加熱加圧して形成される。用いられる熱可塑性樹脂としては、加熱加圧成形できるものであればいずれでもよいが、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酢酸ビニル樹脂及びそれらの組み合わせが好ましく、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン、ポリビニルアセテート及びそれらの組み合わせが特に好ましい。また、このような熱可塑性樹脂製のシートを単層で用いてもよいし、同じ素材又は異なる素材のシートを複数積層させて用いてもよい。さらに、マウスピース20を構成するシートには、熱可塑性樹脂に加えて、ガラス繊維、炭素繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエチレンなどの有機系繊維、天然繊維、各種添加剤、各種機能性材料などを適宜含んでもよい。
【0016】
2.マウスピース20の外観形状
図2は、本開示に係るマウスピース20の構成を示す正面図である。
図2によると、マウスピース20は、上顎歯列に面する側の上顎歯列面34、及び上顎歯列面と相対し少なくとも一部は下顎歯列に面する側の下顎歯列面35とを有するシート状の樹脂材料により形成される。そして、マウスピース20には、当該シート状材料により、上顎歯列の唇側面に形成される表壁部24と、上顎歯列の口腔側に形成される裏壁部25と、上顎歯列の下側に形成され表壁部24と裏壁部25とを連結するように構成される底壁部31、32、33と、上顎歯列の右奥歯付近に相当する位置で表壁部24の一端と裏壁部25の一端同士を連結するように構成される右側壁部26-1と、上顎歯列の左奥歯付近に相当する位置で表壁部24の他端と裏壁部25の他端同士を連結するように構成される左側壁部26-2とによって、上顎歯列の少なくとも一部を収容するための収容部27が形成される。本開示においては、収容部27に上顎歯列が挿入されることによって挿入された上顎歯列をマウスピース20によって支持することが可能となる。
【0017】
ここで、本開示に係るマウスピース20は、
図1に示す通り、その略中央部分に形成された非接触領域21と、その非接触領域21の両端に接続された右接触領域22と左接触領域23とに大別することが可能である。
【0018】
右接触領域22は、非接触領域21の一端に接続され、上顎歯列の右臼歯方向に伸延するように構成される。そして、当該右接触領域22においては、
図1に示す通り、底壁部31の下顎歯列面35が右奥の下顎歯列と接触し、当該下顎歯列と互いに噛み合うように構成される。
【0019】
また、左接触領域23は、非接触領域21の他端に接続され、上顎歯列の左臼歯方向に伸延するように構成される。そして、当該左接触領域23においては、
図1に示す通り、底壁部32の下顎歯列面35が左奥の下顎歯列と接触し、当該下顎歯列と互いに噛み合うように構成される。
【0020】
他方、右接触領域22及び左接触領域23に挟まれる非接触領域21は、例えば、上顎歯列の右犬歯から左犬歯に対応する位置に形成される。そして、非接触領域21には、その底壁部33が上顎歯列方向(すなわち、
図2において上方)に窪んだ凹部が形成されている。このような凹部が形成された底壁部33においては、右接触領域22及び左接触領域23とは異なり、当該凹部によって下顎歯列とは接触しないように構成されている。これによって、マウスピース20を上顎歯列に装着し両顎を噛み合わせた状態において、非接触領域21の底壁部33の下顎歯列面に形成された凹部と下顎歯列との間で開口30が形成される。使用者は、形成された開口30を通じて呼吸を円滑に行うことが可能となる。
【0021】
ここで、凹部が形成される非接触領域21の底壁部33の両端には、右連結部29-1及び左連結部29-2を介して、右接触領域22の底壁部31及び左接触領域23の底壁部32が連結される。この右連結部29-1は、右接触領域22の底壁部31から非接触領域21の底壁部33に向かって斜面状に形成されている。また、同様に、左連結部29-2は、左接触領域23の底壁部32から非接触領域21の底壁部33に向かって斜面状に形成されている。このように、斜面状の右連結部29-1及び左連結部29-2によって、なだらかに凹部を形成することによって、唇や舌が接触した場合の不快感や違和感を軽減することが可能となる。
【0022】
なお、本開示において、下顎歯列と接触する領域を右接触領域22及び左接触領域23とし、下顎歯列と接触しない領域を非接触領域21とした。しかし、これは、完全に接触すること、及び完全に非接触であることを意図するものではない。右接触領域22及び左接触領域23は、非接触領域21に対して「相対的に」下顎歯列と接触する面積が多いことを意味し、非接触領域21は、右接触領域22及び左接触領域23に対して「相対的に」下顎歯列と接触する面積が少ないことを意味するにすぎない。すなわち、右接触領域22及び左接触領域23には下顎歯列と接触していない領域をも含みうるし、非接触領域21には下顎歯列と接触している領域をも含みうる。
【0023】
図3は、本開示に係るマウスピース20の構成を示す底面図である。
図3によると、非接触領域21の両端に右接触領域22及び左接触領域23がそれぞれ形成され、各領域の下顎歯列面35側が示されている。そして、非接触領域21の底壁部33は、斜面状に形成された右連結部29-1を介して右接触領域22の底壁部31と連結され、なだらかな凹状面を形成する。また、同様に、非接触領域21の底壁部33は、斜面状に形成された左連結部29-2を介して左接触領域23の底壁部32と連結され、なだらかな凹状面を形成する。
【0024】
図4Aは、本開示に係るマウスピース20の構成を示す側面図である。具体的には、
図4Aは、マウスピース20を上顎歯列に装着した状態の右側面図を示す。
図4Aによると、右接触領域22の底壁部31は、その下顎歯列面35側において、下顎歯列と接触する(
図4Aの符号36付近)。つまり、この右接触領域22の底壁部31が下顎歯列と接触することで、上顎と下顎が噛み合わされることによる荷重を支持する。
【0025】
他方、傾斜状に形成された右連結部29-1を介して、右接触領域22の底壁部31と非接触領域21の底壁部33とが連結されることによって、非接触領域21には上顎歯列方向に窪んだ凹部が形成される。そして、非接触領域21の底壁部31は、下顎歯列面35において、下顎歯列とは接触しないように構成されている。これによって、上顎と下顎が噛み合わされた時に、下顎歯列と底壁部31の下顎歯列面との間に開口30が形成される。
【0026】
ここで、
図4に示す通り、上顎歯列の右犬歯15が装着される位置に右連結部29-1が形成され、非接触領域21は右犬歯15が装着される位置から反対側の左犬歯方向に向かって形成される。
【0027】
図4Bは、本開示に係るマウスピース20の構成を示す側面図である。具体的には、
図4Bは、マウスピース20を上顎歯列に装着した状態の左側面図を示す。
図4Bによると、左接触領域23の底壁部32は、その下顎歯列面35側において、下顎歯列と接触する(
図4Bの符号37付近)。つまり、この左接触領域23の底壁部32が下顎歯列と接触することで、上顎と下顎が噛み合わされることによる荷重を支持する。
【0028】
他方、傾斜状に形成された左連結部29-2を介して、左接触領域23の底壁部32と非接触領域21の底壁部33とが連結されることによって、非接触領域21には上顎歯列方向に窪んだ凹部が形成される。そして、非接触領域21の底壁部31は、下顎歯列面35において、下顎歯列とは接触しないように構成されている。これによって、上顎と下顎が噛み合わされた時に、下顎歯列と底壁部31の下顎歯列面との間に開口30が形成される。
【0029】
ここで、
図4に示す通り、上顎歯列の左犬歯16が装着される位置に左連結部29-2が形成され、非接触領域21は左犬歯16が装着される位置から反対側の右犬歯方向に向かって形成される。
【0030】
3.マウスピース20の断面形状
図5は、本開示に係るマウスピース20の構成のA-A’断面(
図3)の概略を示す断面図である。具体的には、
図5は、マウスピース20の非接触領域21における断面形状を概略的に示す断面図である。
図5によると、マウスピース20は、その非接触領域21において、上顎歯列17に面する上顎歯列面34と、当該上顎歯列面34に相対し下顎歯列に面する側の下顎歯列面35を有する。また、マウスピース20は、上顎歯列17の唇面側に形成される表壁部24と、上顎歯列17の口腔側に形成される裏壁部25と、上顎歯列17の下方に形成され表壁部24と裏壁部25とを連結する底壁部33とを有する。そして、表壁部24、裏壁部25及び底壁部33の各壁部の両面は、上記のとおり上顎歯列面34と下顎歯列面35によって構成される。
【0031】
ここで、非接触領域21の表壁部24は、一例として、0.05~5.0mm、好ましくは0.2~4.0mm、より好ましくは0.5~3.0mmの厚さW1-1を有する。このように、表壁部24は、前方(唇方向)から与えられる荷重・衝撃から保護するために一定の厚みを有する。他方、あまり厚くしすぎると使用者にとって不快感が増す。したがって、上記数値範囲においては、前方からの荷重・衝撃に対して適切に保護することができ、かつ不快感を抑えることが可能となる。
【0032】
非接触領域21の裏壁部25は、一例として、0.05~3.0mm、好ましくは0.2~2.5mm、より好ましくは0.5~2.0mmの厚さW2-1を有する。このように、裏壁部25は、荷重・衝撃を受けるリスクは相対的に低い。したがって、その分表壁部24に比べて薄く形成することが可能である。また、当該領域の厚さを薄くすることで呼吸を阻害することなく、円滑な呼吸が可能になる。
【0033】
非接触領域21の底壁部33は、一例として、0.05~3.0mm、好ましくは0.2~2.5mm、より好ましくは0.5~2.0mmの厚さW3-1を有する。ここで、上顎と下顎のかみ合わせ等による上下方向の荷重や衝撃は、本開示においては、主に右接触領域22及び左接触領域23で吸収するため、右接触領域22又は左接触領域23の底壁部33に比べて、厚みを薄くすることが可能である。また、このように厚みを薄くすることにより、非接触領域21において凹部を形成し、下顎歯列との間で開口30を形成することが可能となる。
【0034】
なお、本開示において、非接触領域21の裏壁部25と底壁部33を同じ厚さで形成しているが、必ずしも同じにする必要はなく、当然いずれか一方が厚くてもよい。また、
図5において、非接触領域21の表壁部24、裏壁部25及び底壁部33は、それぞれ均等な厚さで形成されているが、必ずしも均等である必要はなく、主要部において上記既定の厚さであればよく、それよりも厚い部分や薄い部分があってもよい。
【0035】
図6は、本開示に係るマウスピース20の構成のB-B’断面(
図3)の概略を示す断面図である。具体的には、
図6は、マウスピース20の右接触領域22又は左接触領域23における断面形状を概略的に示す断面図である。
図6によると、マウスピース20は、その右接触領域22又は左接触領域23において、上顎歯列18に面する上顎歯列面34と、当該上顎歯列面34に相対し下顎歯列に面する側の下顎歯列面35を有する。また、マウスピース20は、上顎歯列18の唇面側に形成される表壁部24と、上顎歯列18の口腔側に形成される裏壁部25と、上顎歯列18の下方に形成され表壁部24と裏壁部25とを連結する底壁部31又は32とを有する。そして、表壁部24、裏壁部25、及び底壁部31又は32の各壁部の両面は、上記のとおり上顎歯列面34と下顎歯列面35によって構成される。
【0036】
ここで、右接触領域22又は左接触領域23の表壁部24は、一例として、1.5~5.0mm、好ましくは2.0~4.0mm、より好ましくは2.5~3.0mmの厚さW1-1を有する。このように、表壁部24は、前方(唇方向)から与えられる荷重・衝撃から保護するために一定の厚みを有する。他方、あまり厚くしすぎると使用者にとって不快感が増す。したがって、上記数値範囲においては、前方からの荷重・衝撃に対して適切に保護することができ、かつ不快感を抑えることが可能となる。
【0037】
右接触領域22又は左接触領域23の裏壁部25は、一例として、0.1~2.0mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.5~1.2mmの厚さW2-1を有する。このように、裏壁部25は、荷重・衝撃を受けるリスクは相対的に低い。したがって、その分表壁部24に比べて薄く形成することが可能である。
【0038】
右接触領域22又は左接触領域23の底壁部33は、一例として、0.05~5.0mm、好ましくは0.2~4.0mm、より好ましくは0.5~3.0mmの厚さW1-1を有する。右接触領域22及び左接触領域23は、上顎と下顎の噛み合わせ等による上下方向の荷重や衝撃を吸収し、歯列を保護する必要がある。したがって、裏壁部25や、非接触領域21の底壁部33と比べて、相対的に厚みを有する。
【0039】
なお、本開示において、右接触領域22又は左接触領域23の裏壁部25と底壁部33を同じ厚さで形成しているが、必ずしも同じにする必要はなく、当然いずれか一方が厚くてもよい。また、
図5において、右接触領域22又は左接触領域23の表壁部24、裏壁部25及び底壁部33は、それぞれ均等な厚さで形成されているが、必ずしも均等である必要はなく、主要部において上記既定の厚さであればよく、それよりも厚い部分や薄い部分があってもよい。
【0040】
図7は、本開示に係るマウスピース20の構成のC-C’断面(
図3)の概略を示す断面図である。具体的には、
図7は、右接触領域22から非接触領域21の右側における断面を概略的に示した断面図である。なお、特に左接触領域23から非接触領域21の左側における断面については図示していないが、おおむね
図7の断面図と同様である。
【0041】
図7によると、非接触領域21及び右接触領域22を含むマウスピース20は、上顎歯列18に面する上顎歯列面34と、当該上顎歯列面34に相対し下顎歯列に面する側の下顎歯列面35によって構成される。また、右接触領域22の底壁部31の一端は、非接触領域21の底壁部33の一端と右連結部29-1を介して接続される。当該右連結部29-1は、右接触領域22の一端から非接触領域21の一端にかけて、上方すなわち上顎歯列方向に傾斜する。これによって非接触領域21には窪み状の凹部が構成され、下顎歯列との間で開口30が形成される。
【0042】
ここで、開口30の高さ、すなわち右接触領域22の底壁部31の下顎歯列面35から非接触領域21の底壁部33の下顎歯列面35までの距離は、高さT1で形成される。この高さT1は、一例として、0.5~4.0mm、好ましくは1.0~3.0mm、より好ましくは1.5~2.5mmに形成される。高さが高いほど開口30の面積が広くなりより円滑な呼吸が可能になる。他方、高さが低いほど右接触領域22と非接触領域21との高さの差が小さくなり使用時の違和感を軽減することができる。
【0043】
以上、本開示に係るマウスピース20は、上顎歯列のうち右犬歯から左犬歯に至る歯列を収容する領域において、他の領域に比べて上顎方向に窪んだ凹部が形成されている。そして、当該凹部によって、下顎歯列とマウスピース20の底壁部33との間に開口30が形成され、当該開口30から空気の流通を可能にしている。したがって、使用者が呼吸したときに、当該開口30を介して、口腔外から口腔内に空気が円滑に吸気され、また口腔内から口腔外へ空気が円滑に排気される。つまり、使用者の呼吸がマウスピース20によって阻害されることがなく、使用者の使用感を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
11 :上顎
12 :下顎
15 :右犬歯
16 :左犬歯
17 :上顎歯列
18 :上顎歯列
20 :マウスピース
21 :非接触領域
22 :右接触領域
23 :左接触領域
24 :表壁部
25 :裏壁部
26-1 :右側壁部
26-2 :左側壁部
27 :収容部
29-1 :右連結部
29-2 :左連結部
30 :開口
31 :底壁部
32 :底壁部
33 :底壁部
34 :上顎歯列面
35 :下顎歯列面