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特開2022-89714生体試料処理システム、押圧装置および押圧機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089714
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】生体試料処理システム、押圧装置および押圧機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20220609BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020202337
(22)【出願日】2020-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】513124411
【氏名又は名称】アジアメディカルセンター,プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 美和子
(72)【発明者】
【氏名】市川 道教
(72)【発明者】
【氏名】国広 茂
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD29
2G052AD46
2G052CA03
2G052CA12
2G052EA03
2G052ED03
2G052ED11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易に生体試料を処理することができる生体試料処理システム、並びに、生体試料処理システムに適用される押圧装置および押圧機構を提供する。
【解決手段】生体試料処理システムは、核酸を抽出するための生体試料用処理具50と、生体試料用処理具を押圧するための押圧装置10とを含む。生体試料用処理具50は、複数の液収容部50Liを含む。押圧装置は、複数の押圧部20を含み、複数の押圧部20は、所定の方向に沿って並んで配置され、それぞれ対応する液収容部50Li内の液を所定のタイミングで押圧する。複数の押圧部20は、複数のカムが同じ回転軸に設けられ、複数のカムがそれぞれ対応する押圧部20に対して押圧力を付与し、押圧部20が対応する液収容部50Li内の液を所定のタイミングで押圧する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を抽出するための生体試料用処理具と、前記生体試料用処理具を押圧するための押圧装置とを含み、
前記生体試料用処理具は、複数の液収容部を含み、
前記押圧装置は、複数の押圧部を含み、
前記複数の押圧部は、それぞれ、前記複数の液収容部に対応する位置に設けられている生体試料処理システム。
【請求項2】
複数の液収容部を含む生体試料用処理具を複数の押圧部により押圧する押圧装置であり、
前記複数の押圧部は、所定の方向に沿って並んで配置され、それぞれ対応する前記液収容部内の液を所定のタイミングで押圧する押圧装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記押圧装置は、複数のカムが同じ回転軸に設けられ、
前記複数のカムがそれぞれ対応する押圧部に対して押圧力を付与し、前記押圧部が対応する前記液収容部内の液を所定のタイミングで押圧する押圧装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記押圧部は、プランジャーを含んで構成される押圧装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記押圧部は、袋に流体を封入することで押圧するものである押圧装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれかにおいて、
前記生体試料用処理具は、検体から核酸を抽出するためのものである押圧装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記生体試料用処理具は、前記検体の不要物を濾しとるフィルターを収容した検体受け入れ部が設けられている押圧装置。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記生体試料用処理具は、前記検体から抽出された核酸を吸着するガラスフィルターを収容するガラスフィルター収容部を含み、前記ガラスフィルターの厚さは、前記ガラスフィルター収容部の深さの1.05倍以上3倍以下である押圧装置。
【請求項9】
請求項2~8のいずれかにおいて、
前記生体試料用処理具は、核酸を含む抽出液を収容し取り出し可能な抽出液回収室と、不要な廃液を収容する廃液収容室とが設けられている押圧装置。
【請求項10】
請求項9のいずれかにおいて、
前記生体試料用処理具において、一定の方向に沿って、押圧位置が移動されることによって、薬液が前記一定の方向の反対方向に移動する流路を通過して前記廃液収容室に導かれる状態から、薬液が前記反対方向に移動する流路を通過できず前記抽出液化回収室に導かれる状態への切り替えが可能となるパターンを有する押圧装置。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記生体試料用処理具において、前記抽出液回収室を当該生体試料用処理具から分離することができる分離部が設けられている押圧装置。
【請求項12】
請求項2~11のいずれかに記載の押圧装置に適用される押圧機構であり、
前記押圧機構は、
前記カムによる圧力を受けて前記液収容部内の液を押圧するものであり、
前記カムにより押圧力を付与される押圧受け部と、
前記押圧受け部と離間して設けられた押し当て部と、
前記押し当て部と前記押圧受け部とを接続し、前記カムから前記押圧受け部に加わった力を押し当て部に伝える接続部と、
前記押し当て部と前記押圧受け部との間に設けられ、前記押圧受け部の移動を規制するストッパーと、
前記ストッパーと前記押圧受け部との間に設けられ、前記押圧受け部を前記カムからの圧力方向と反対方向に付勢する作用を有する付勢部材と、を含む押圧機構。
【請求項13】
請求項12において、
前記付勢部材は、スプリングワイヤにより構成される押圧機構。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を処理するための生体試料処理システム、並びに、生体試料処理システムに適用される押圧装置および押圧機構に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質や核酸などの微量な生体試料の検査に当たって、マイクロ流路チップが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
生体試料を処理することができるようにするために、シート状の生体試料用処理具が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5986996号公報
【特許文献2】国際公開公報2019/189897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡易に生体試料を処理することができる生体試料処理システム、並びに、生体試料処理システムに適用される押圧装置および押圧機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.生体試料処理システム
本発明の生体試料処理システムは、
核酸を抽出するための生体試料用処理具と、前記生体試料用処理具を押圧するための押圧装置とを含み、
前記生体試料用処理具は、複数の液収容部を含み、
前記押圧装置は、複数の押圧部を含み、
前記複数の押圧部は、それぞれ、前記複数の液収容部に対応する位置に設けられている。
【0007】
本発明の生体試料処理システムによれば、生体試料用処理具の液収容部を個別に押圧装置で押圧することができ、簡易な構成で生体試料用処理具内での液移動を的確に行うことができる。
【0008】
2.押圧装置
本発明の押圧装置は、
複数の液収容部を含む生体試料用処理具を複数の押圧部により押圧する押圧装置であり、
前記複数の押圧部は、所定の方向に沿って並んで配置され、それぞれ対応する前記液収容部内の液を所定のタイミングで押圧するものである。
【0009】
本発明の押圧装置によれば、生体試料用処理具の液収容部を個別に押圧装置で押圧することができ、簡易な構成で生体試料用処理具内での液移動を的確に行うことができる。
【0010】
本発明において、
前記押圧装置は、複数のカムが同じ回転軸に設けられ、
前記複数のカムがそれぞれ対応する押圧部に対して押圧力を付与し、前記押圧部が対応する前記液収容部内の液を所定のタイミングで押圧するものであることができる。
【0011】
本発明によれば、複数のカムを同軸上で回転させることができるため、簡易な構成によりカムの制御を行うことができる。
【0012】
本発明において、前記押圧部は、プランジャーを含んで構成されるものであることができる。押圧部を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
本発明において、前記押圧部は、袋に流体を封入することで押圧するものであることができる。押圧部を簡易な構成で実現することができる。
【0014】
本発明において、前記生体試料用処理具は、検体から核酸を抽出するためのものであものであることができる。
【0015】
本発明において、前記生体試料用処理具は、前記検体の不要物を濾しとるフィルターを収容した検体受け入れ部が設けられていることができる。
【0016】
本発明において、前記生体試料用処理具は、前記検体から抽出された核酸を吸着するガラスフィルターを収容するガラスフィルター収容部を含み、前記ガラスフィルターの厚さは、前記ガラスフィルター収容部の深さの1.05倍以上3倍以下であることができる。
【0017】
本発明において、前記生体試料用処理具は、核酸を含む抽出液を収容し取り出し可能な抽出液回収室と、不要な廃液を収容する廃液収容室とが設けられていることができる。
【0018】
本発明において、前記生体試料用処理具において、一定の方向に沿って、押圧位置が移動されることによって、薬液が前記一定の方向の反対方向に移動する流路を通過して前記廃液収容室に導かれる状態から、薬液が前記反対方向に移動する流路を通過できず前記抽出液化回収室に導かれる状態への切り替えが可能となるパターンを有するものであることができる。
【0019】
本発明において、前記生体試料用処理具において、前記抽出液回収室を当該生体試料用処理具から分離することができる分離部が設けられているものであることができる。
【0020】
3.押圧機構
本発明の押圧機構は、本発明の押圧装置に適用される押圧機構であり、
前記押圧機構は、
前記カムによる圧力を受けて前記液収容部内の液を押圧するものであり、
前記カムにより押圧力を付与される押圧受け部と、
前記押圧受け部と離間して設けられた押し当て部と、
前記押し当て部と前記押圧受け部とを接続し、前記カムから前記押圧受け部に加わった力を押し当て部に伝える接続部と、
前記押し当て部と前記押圧受け部との間に設けられ、前記押圧受け部の移動を規制するストッパーと、
前記ストッパーと前記押圧受け部との間に設けられ、前記押圧受け部を前記カムからの圧力方向と反対方向に付勢する作用を有する付勢部材と、を含むことができる。
【0021】
本発明によれば、付勢部材の取り付け態様を変えることで、押し当て部の傾きを制御することができる。
【0022】
本発明において、前記付勢部材は、スプリングワイヤにより構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態に係る押圧装置を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る押圧装置を模式的に示す上面図である。
図3】実施の形態に係る押圧装置を模式的に示す斜視図である。
図4】実施の形態に係る押圧装置の原理を説明するための図である。
図5】実施の形態に係る押圧装置の原理を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る押圧部の押圧制御を説明するための図である。図6(A)は、開放状態を示し、図6(B)は押込状態を示す。
図7】実施の形態に係る押圧部の押圧制御を説明するための図である。図7(A)は、開放状態を示し、図7(B)は押込状態を示す。
図8】実施の形態に係る押圧部の変形例を示す図である。
図9】実施の形態に係る生体試料用処理具を模式的に示す図である。
図10】実施の形態に係る生体試料用処理具の抽出液回収部の分離手法を説明するための図である。
図11】実施の形態に係る生体試料用処理具の抽出液回収部の分離手法を説明するための図である。
図12】実施の形態に係る押圧部の平面レイアウトを模式的に示す図である。
図13】実施の形態に係る生体試料用処理具と、押圧部の平面レイアウトとの対応関係を説明するための図である。
図14】実施の形態に係る生体試料用処理具の変形例を模式的に示す図である。
図15】実施の形態に係る押圧装置を用いて生体試料用処理の処理プロセスを説明するための図である。
図16】実施の形態に係る押圧装置を用いて生体試料用処理の処理プロセスを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
1.生体試料抽出システム
実施の形態に係る生体試料抽出システムは、核酸を抽出するための生体試料用処理具50と、前記生体試料用処理具50を押圧するための押圧装置10とを含む。生体試料用処理具50は、複数の液収容部50Liを含む。押圧装置10は、複数の押圧部20を含む。複数の押圧部20は、それぞれ、液収容部50Liの対応する位置に設けられている。
【0026】
2.押圧装置
図1図5を参照しながら、実施の形態に係る押圧装置10を説明する。図1図3は押圧装置10の全体概要を示し、図4および図5は、押圧部20の原理を説明するための図である。
【0027】
実施の形態に係る押圧装置10は、複数の液収容部50Liを含む生体試料用処理具50を複数の押圧部20により押圧する装置である。複数の押圧部20は、生体試料用処理具50の処理液の流れの方向に沿って並んで配置されている。複数の押圧部20は、それぞれ対応する前記液収容部50Li内の液を所定のタイミングで押圧するものである。
【0028】
押圧装置10は、複数のカム32が同じ回転軸30に設けられていることができる。複数のカム32がそれぞれ対応する押圧部20に対して押圧力を付与し、押圧部20が対応する液収容部50Li内の液を所定のタイミングで押圧する構成とすることができる。カム32はモーター34により駆動される回転軸30に取り付けられている。回転軸30は、複数設けることができ、複数のカム系列を構成することができる。第1回転軸30aと第2回転軸30bとを並列に設け、それぞれを第1モーター34aおよび第2モーター34bで駆動することができる。第1カム系列は、溶液を保持する区画を押圧するためのものとし、第2カム系列は、流路の流れの制御とバルブ制御などのためのものとすることができる。
【0029】
押圧装置10に適用され得る押圧機構を図4および図5を参照しながら説明する。
【0030】
押圧機構は、カム32による圧力を受けて液収容部50Li内の液を押圧するものである。押圧機構に係る押圧部20は、押圧受け部22と、押し当て部24と、接続部26と、取り付け板12と、付勢部材28とを含む。
【0031】
押圧受け部22は、カム32により押圧力を付与されるものである。押し当て部24は、押圧受け部22と離間して設けられたもので液収容部50Liを押圧するものである。接続部26は、押し当て部24と押圧受け部22とを接続し、カム32から押圧受け部22に加わった力を押し当て部24に伝えるものである。取り付け板12は、押し当て部24と押圧受け部22との間に設けられ、押圧受け部22の移動を規制するストッパーとして機能するものである。
【0032】
付勢部材28は、図6に示すように、取り付け板12と押圧受け部22との間に設けられ、押圧受け部22をカム32からの圧力方向と反対方向に付勢する作用を有するものである。付勢部材28は、スプリングワイヤにより構成することができる。
【0033】
本願発明者は、カム32と押圧部20との関係を検討したところ、カム32の摩擦力により押し当て部24の押し当て面がカム32の回転方向下流側に比較してカム32の回転方向上流側が前に出てしまう現象を確認し、付勢部材28を入れることで、カム32との摩擦力と付勢部材28の反発力により、押し当て部24の押圧態様が変わることを見出した。すなわち、カム回転方向上流側に付勢部材28を設けることで、図6に示すように、押し当て部24のカム回転方向下流側がカム32の回転方向上流側と比較してカム32と離れるような態様で押圧される。つまり、押し当て部24のカム回転方向上流側が押圧方向前側に出た態様での傾斜押し込みが可能となる。図6(A)は開放状態、図6(B)は押込状体、図7(A)は傾斜押し込み途中の状態を示す。また、図7(B)に示すように、カム回転方向下流側に付勢部材28を設けることで、生体試料用処理具50と平行な態様で押し当て部24の直進押し込みが可能となる。
【0034】
押し当て部24は、プランジャーにて構成してもよいし、袋に流体を封入したもので構成してもよい。また、押圧部20は、流体を袋にポンプなどで圧力を加えて注入することにより、押圧力を担保してもよい。押圧部20のレイアウトは、生体試料用処理具50の液収容部50Liなどの構成により決めることができる。
【0035】
図8に示すように、押圧部20と土台40の間に生体試料用処理具50を設ける場合に、押圧部20に対応する土台40の位置に凹部42を設けることができる。押圧部20の押し当て部24の形状を土台40側にいくにしたがって細くなるテーパー形状とし、凹部42の形状を押し当て部24の形状と対応させるようにすることができる。これにより、生体試料用処理具50の押圧において、押圧のむらをより抑えることができる。
【0036】
3.生体試料用処理具の構成
図9図11を参照しながら、押圧装置10との関係において、生体試料用処理具50について説明する。
【0037】
生体試料用処理具50は、複数の液収容室が設けられている。生体試料用処理具50は、2つのシートを貼り合わせた態様で、かつ、液収容室の領域は2つのシートが分離する態様で構成することができる。複数の液収容室間を連結する連通路が設けられている。連通路は、液収容室に単に液を収容した状態では、液が通らないような閉塞部54が設けられている。液収容室の液に対して所定の力で押圧したときに、その液圧により連通路が開放されるような構成となっている。連通路は、たとえば、2つのシートを半融着させて構成することができる。生体使用用処理具の具体的技術については、本出願人が出願人となっている国際公開公報2019/189897に開示の技術を適用することができる。
【0038】
生体試料用処理具50は、たとえば、図9に示すように、サンプル入口50aと、サンプル室50bと、フィルタ室50cと、バッファー液室50dと、リシス液室50eと、第1洗浄液室50fと、第2洗浄液室50gと、第3洗浄液室50hと、抽出液室50iと、第1混合室50lと、第2混合室50mと、第1流路50jと、第2流路50kと、第3流路50nと、第4流路50oと、トラップ室50pと、抽出液室50iと、抽出液回収室50qとを含む。生体試料用処理具50は、廃液回収室50rを含んでもよい。廃液回収室50r内には、高分子吸収ゲル(顆粒状の高分子吸収ゲル)やスポンジを設けてもよい。生体試料用処理具50は、抽出液回収室50qから別の容器に抽出液を移すための抽出液吐出路50sを設けてもよい。
【0039】
サンプル入口50aは、液体試料を注入するための入口である。サンプル室50bは、液体試料液を収容するための収容室であり、サンプル入口50aに連続している。フィルタ室50cは、液体試料をフィルタリングする区画であり、サンプル室50bに連続している。
【0040】
バッファー室50dは、緩衝液を収容するための収容室であり、フィルタ室50cに連続している。バッファー室50dは、第2混合室50mにも連続している。
【0041】
リシス液室50eは、リシス液を収容するための収容室であり、第2混合室50mに連続している。第2混合室50mは、第1混合室50lに連続している。第1混合室50lおよび第2混合室50mは、区画せずに一つの空間を構成してよい。
【0042】
第1洗浄液室50fは、第1洗浄液を収容するための収容室であり、第3流路50nに連続している。第3流路50nは、第1混合室50mに連続している。第2洗浄液室50gは、第2洗浄液を収容するための収容室であり、第3流路50nまたは第4流路50oに連続している。第4流路50oは、第3流路50nに連続している。第3洗浄液室50hは、第3洗浄液を収容するための収容室であり、第4流路50oに連続している。第3流路50nおよび第4流路50oは、区画せずに一つの空間を構成してよい。
【0043】
抽出液室50iは、抽出液を収容するための収容室であり、トラップ室50pに連続している。トラップ室50pは、第1流路50jおよび第4流路50oに連続している。第1流路50jは、抽出液回収室50qに連続している。第1流路50jの途中から、第2流路50kが分岐し、第2流路50kは廃液回収室50rに連続している。
【0044】
バッファー液室50d、リシス液室50e、第1洗浄液室50f、第2洗浄液室50g、第3洗浄液室50hおよび抽出液室50iには液を注入するための副室としてプリセット室52を設けることができる。プリセット室52から対応する液収容室に液を移した後に、プリセット室52と対応する液収容室との間を熱融着などにより封鎖することができる。
【0045】
図14に示すようにプリセット室52を設けない態様であってもよい。すなわち、直接に液注入口56から液収容室に液を注入し、入口を熱融着にて封鎖してもよい。
【0046】
生体試料用処理具は、連続生産することができる。すなわち、2つのシートを合せた状態で、一回の熱融着工程で一つの生体試料用処理具を生産し分離し、次の融着工程で次の生体試料用処理具を連続製造することができる。
【0047】
サンプル室50b、フィルタ室50c、バッファー液室50d、リシス液室50e、第1洗浄液室50f、第2洗浄液室50g、第3洗浄液室50hおよび抽出液室50iは、一定方向(たとえば生体試料用処理具50の長手方向)に沿って並んで配置されることができる。第1混合室50l、第2混合室50m、第1流路50j、第2流路50kおよびトラップ室50pは、一定方向(たとえば生体試料用処理具50の長手方向)に沿って並んで配置されることができる。
【0048】
生体試料用処理具50は、たとえば、検体から核酸を抽出するためのものとしての用途に適用することができる。この場合に、フィルタ室50cは、検体の不要物を濾しとるフィルターとして機能する。トラップ室50pは、検体から抽出された核酸を吸着するガラスフィルターを収容するガラスフィルター収容部とし、ガラスフィルターの厚さは、ガラスフィルター収容部の深さの1.05倍以上3倍以下とすることができる。
【0049】
生体試料用処理具50は、図9に示すように、抽出液回収室50qおよび抽出液吐出路50sを生体試料用処理具50の本体から分離しやすくするための分離部58を設けることができる。分離部58は、たとえば、切込みなどにより構成することができる。分離部58により抽出液回収室50qを生体試料用処理具50から分離する態様としては、抽出液吐出路50sを設けていない態様の生体試料処理具50にも適用することができる。たとえば、抽出液回収室50qを設けた部分を突き出したかたちで構成し、その突き出された部分を抽出液回収室50qへの流路50tに対して垂直に切り取る態様(図10参照)で分離部58を構成してもよいし、その流路50tに対して斜め方向に切り取る態様(図11参照)で分離部58を構成してもよい。
【0050】
図12は押圧装置10の押圧部20の平面レイアウトを示し、図13は押圧部20の平面レイアウトと生体試料用処理具50の関係を示す。
【0051】
図9に示す生体試料用処理具50に適用される押圧装置10を説明する。押圧装置10は、押圧部In、押圧部Sp、押圧部FI、押圧部BF、押圧部Ly、押圧部W1、押圧部W2、押圧部W3、押圧部E、押圧部V1、押圧部V2、押圧部P1、押圧部P2、押圧部P3、押圧部P4、および、押圧部Tを含む。
【0052】
押圧部Inは、サンプル入口50aを押圧するものである。押圧部Spは、サンプル室50bを押圧するものである。押圧部FIは、フィルタ室50cを押圧するものである。押圧部BFは、バッファー液室50dを押圧するものである。押圧部Lyは、リシス液室50eを押圧するものである。押圧部W1は、第1洗浄液室50fを押圧するものである。押圧部W2は、第2洗浄液室50g押圧するものである。押圧部W3は、第3洗浄液室50hを押圧するものである。押圧部Eは、抽出液室50iを押圧するものである。押圧部V1は、液回収室50qへの第1流路50jを押圧するものである。押圧部V2は、廃液回収室50rへの第2流路50kを押圧するものである。押圧部P1は、第1混合室50lを押圧するものである。押圧部P2は、第2混合室50mを押圧するものである。押圧部P3は、第3流路50nを押圧するものである。押圧部P4は、第4流路50oを押圧するものである。押圧部Tは、トラップ室50pを押圧するものである。押圧部20のパターンは、生体試料用処理具50の液収容部50Li、トラップ室50qや流路のパターンにより決めることができる。
【0053】
4.生体試料処理プロセス
図9に係る生体試料用処理具50の処理プロセスを図15および図16を参照しながら説明する。
【0054】
液状の生体試料をサンプル入口50aからサンプル室50bに注入する(S1)。生体試料の注入後、サンプル室50bを密閉する。サンプル室50bを押圧し、生体試料をフィルタ室50cに導き、生体試料をろ過する(S2)。
【0055】
フィルタ室50cを押圧し、ろ過された液をバッファー室50dに導く(S3)。バッファー液室50dの液を第1混合室50lおよび第2混合室50mからなる混合室に移す(S4)。リシス液室50eを押圧し、リシス液を混合室に移す(S5)。
【0056】
第2混合室50mを半押圧し、第1混合室50l側に液を移動させて、混合する(S6)。この際、リシス液室50eを半押圧してもよい。第1混合室50lを半押圧し、第2混合室50m側に液を移動させて、混合する(S7)。この際、バッファー液室50dを半押圧してもよい。第2混合室50mを半押圧し、第1混合室50l側に液を移動させて、混合する(S8)。この際、リシス液室50eを半押圧してもよい。第1混合室50lを半押圧し、第2混合室50m側に液を移動させて、混合する(S9)。この際、バッファー液室50dを半押圧してもよい。
【0057】
第1混合室50l、第2混合室50m、第3流路50n、第4流路50oを順次押圧し、混合液をトラップ室50pに導き、トラップ室50pを通過した混合液は廃液回収室50rに流れる。ここで、トラップ室50pに核酸が吸着される(S10~S13)。
【0058】
第1洗浄液室50fを押圧し第1洗浄液を第3流路50nに導き、第1混合室50lおよび第2混合室50mを押圧した状態で、第3流路50nおよび第4流路50oを押圧し、第1洗浄液をトラップ室50pに移し、トラップ室50pを押圧し、廃液回収室50rに移す(S15~S17)。
【0059】
第2洗浄液室50gを押圧し第2洗浄液を第3流路50nまたは第4流路50oに導き、第1混合室50lおよび第2混合室50mを押圧した状態で、第3流路50nおよび第4流路50oを押圧し、第2洗浄液をトラップ室50pに移し、トラップ室50pを押圧し、廃液回収室50rに移す(S18~S20)。
【0060】
第3洗浄液室50hを押圧し第3洗浄液を第4流路50oに導き、第1混合室50lおよび第2混合室50mを押圧した状態で、第3流路50nおよび第4流路50oを押圧し、第3洗浄液をトラップ室50pに移し、トラップ室50pを押圧し、廃液回収室50rに移す(S21~S23)。
【0061】
抽出液室50iを押圧し、抽出液をトラップ室50pに移し、トラップ室50pの核酸を抽出し、トラップ室50pを押圧、第1流路を開放、第2流路を押圧し、抽出液回収室50qに移動させる(S24)。これにより抽出が完了する(S25)。
【0062】
生体試料用処理具50が図9に示すような構成であることにより、一定の方向に沿って、押圧位置が移動されることによって、処理液が前記一定の方向の反対方向に移動する流路を通過して廃液収容室に導かれる状態から、処理液が反対方向に移動する流路を通過できず抽出液回収室に導かれる状態への切り替えが可能となるパターンとすることができる。
【0063】
5.効果
本実施の形態によれば、簡易な構成で生体試料用処理具50に適用される押圧装置10を実現することができる。本実施の形態によれば、生体試料用処理具50の液移動が容易であり、より確実に生体試料の処理を行うことができる。
【0064】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の生体試料用処理具は、たとえば、生体試料を抽出処理したり、生体試料に対して化学的処理または分子生物学的処理を施す際に有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 押圧装置
12 取り付け板
20 押圧部
22 押圧受け部
24 押し当て部
26 接続部
28 付勢部材
30 回転軸
30a 第1回転軸
30b 第2回転軸
32 カム
34 モーター
34a 第1モーター
34b 第2モーター
40 土台
42 凹部
50 生体試料用処理具
50a サンプル入口
50b サンプル室
50c フィルタ室
50d バッファー液室
50e リシス液室
50f 第1洗浄液室
50g 第2洗浄液室
50h 第3洗浄液室
50i 抽出液室
50j 第1流路
50k 第2流路
50l 第1混合室
50m 第2混合室
50n 第3流路
50o 第4流路
50p トラップ室
50q 抽出液回収室
50r 廃液回収室
50s 抽出液吐出路
52 プリセット室
54 閉塞部
56 液注入口
58 分離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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