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▶ 丸山 由紀子の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089720
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】米粉パンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/36 20060101AFI20220609BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20220609BHJP
   A21D 2/26 20060101ALN20220609BHJP
   A21D 13/066 20170101ALN20220609BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D2/18
A21D2/26
A21D13/066
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020212954
(22)【出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】520506589
【氏名又は名称】丸山 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 由紀子
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG08
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK33
4B032DK42
4B032DK70
4B032DP08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼き立て状態のモチモチ感を長時間維持させることが可能な米粉パンを提供する。
【解決手段】米粉100重量部に対して、タピオカ澱粉、糖質、ベーキングパウダー、食用油、及び保湿機能材を用いて製造されたことを特徴とする米粉パン。保湿機能材が乾燥した状態に於いて米粉100重量部に対して12.7%から24.7%重量部とする米粉パン。保湿機能材が、豆腐、高野豆腐であることを特徴とする米粉パン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉100重量部に対して、タピオカ澱粉、糖質、ベーキングパウダー、食用油、及び保湿機能材を用いて製造されたことを特徴とする米粉パン。
【請求項2】
前記保湿機能材が乾燥した状態に於いて米粉100重量部に対して12.7%から24.7%重量部とする請求項1記載の米粉パン。
【請求項3】
前記保湿機能材が水分を含有した状態で米粉100重量部に対して90%から175%重量部であることを特徴とする請求項1記載の米粉パン。
【請求項4】
前記保湿機能材が、スポンジ構造、網目構造若しくは直鎖構造の分子が絡み合った構造であることを特徴とする請求項1記載の米粉パン。
【請求項5】
前記保湿機能材が、豆腐、高野豆腐であることを特徴とする請求項1記載の米粉パン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き立て状態のモチモチ感を長時間維持させることが可能な米粉パンに関する。
【背景技術】
【0002】
乳児期における三大アレルゲンとしては小麦、鶏卵および牛乳であるが、学童期以降になると甲殻類や果物類、小麦などが主原因となる食物と言われている。
【0003】
三大アレルゲンの一つである小麦粉については、小麦粉製品でアレルギー反応を生じる人とグルテン摂取により主に小腸への悪影響が大きいとされ自己免疫疾患セリアック病やグルテン不耐性症などが知られている。
【0004】
グルテンの性質を利用したパン、パスタなどの麺類食品は世界中に出回っている一方で、近年、小麦粉不使用の食品としてグルテンフリー食品が小麦アレルギー症状のある人や健康志向の高い人から支持を受けている。特に小麦粉の代用として米粉を使用した食品が多数提供されるようになり、パンに於いても米粉を主原料とする商品が増加している。しかしながら、米粉は小麦粉より澱粉含有量が多いために表面が固くなりやすいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】W/O2016-046867号公報
【特許文献2】特許第5951319号公報
【特許文献3】特許第6147688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、モチモチした食感及び柔らかい食感に優れ、しかもベーカリー製品加工時のスライス適性にも優れたベーカリー製品を提供するためにベーカリー製品の製造に用いる澱粉質原料において、該澱粉質原料100質量部のうち、もち種タピオカ澱粉及び/又は加工もち種タピオカ澱粉を1~20質量部、及び、非もち種リン酸架橋澱粉を1~20質量部配合した澱粉質原料を用いてベーカリー製品を製造するものである。
【0007】
特許文献2は、ベタツキがなく、機械耐性に優れていて製パン時の取り扱い性および作業性に優れるパン生地を形成することができ、更にパンの側面や上面が凹むケービングが生じず外観に優れ、きめが揃っていて食味に優れ、米粉パンらしいモチモチとした食感・食味を有し、しかも十分に膨らんでいて体積の大きな高品質の米粉パン類を製造することのできる米粉、および当該米粉を含有するパン用米粉組成物に関するものである。
【0008】
特許文献3は、モチモチとした食感に優れ、しかも柔らかい食感を有するパンにするために小麦粉を澱粉質原料として用いるベーカリー製品の製造に用いる澱粉質原料において、該澱粉質原料100質量部のうち、0.5~95質量部がもち種タピオカ澱粉及び/又は加工もち種タピオカ澱粉であるように配合された澱粉質原料を用いて製造されたベーカリー製品に関するものである。
【0009】
上述した特許文献の米粉パンに於いては、確かに焼き立て状態から数時間程度ではモチモチ感はあるものの時間経過と共に表面が固くなり始め翌日には表面に弾力感がなくなるほど固くなっている。更に、価格に於いても小麦粉を使用したパンよりも高価なため、結果的には日常品ではなく嗜好品となってしまう。また、個人で楽しむにもパンの製造技術の習得や高価なパンメーカーの購入となるとハードルが高い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般的な米粉パンの製造方法について、材料として米粉、水、卵、酵母、食塩、砂糖、および乳製品や乳製品などが使用される。バター以外の前記材料をボウルに入れ、混ぜ合わせながら塊になった段階でこね台に出して捏ねを繰り返すことでパン生地を作る。その後、ボウルに戻しバターを入れて混ぜ合わせ、再度こね板にて捏ねを行う。成形前のパン生地をイースト菌が活性化するように30℃位で30分から60分ほど一次発酵を行う。その後、パン生地の分割丸めを行い二次発酵させ、オーブンにて焼き上げる。
【0011】
上述したように、公知技術での米粉パン製造の課題として、パン作りの経験をしていない者にとっては酵母を使用すると発酵時間の調整が難しく、また使用する米粉の粒形サイズが大きいと十分に膨張しないこともあるため本来のモチモチ感のある米粉パンを製造できない。従い、酵母を使用せずに簡単に膨張させるベーキングパウダーを使用し、モチモチ感を維持するためにパン生地に十分な保湿材料を加えることで解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の米粉パンは、米粉100重量部に対して、タピオカ澱粉、糖質、ベーキングパウダー、油、及び保湿機能を有する材料を添加することを特徴とする米粉パンの製造方法を提供する。
【0013】
前記保湿機能材は、スポンジ構造、網目構造若しくは直鎖構造の分子が絡み合った構造であり、当該保湿機能材に所定量の水分を含有した状態で使用し、具体的には豆腐、高野豆腐などである。
【0014】
前記保湿機能材が、米粉100重量部に対して90%から175%重量部とする米粉パンであり、逆に言うと豆腐の場合には水分含有量は約85.9%(日本食品標準成分表2015参照)と言われているため米粉100重量部に対して前記保湿機能材は12.7%から24.7%であり、水分量は78.6%から150.3%の範囲が必要となる。
【0015】
通常であれば、所定の米粉に対して適切な水の量も決まるわけであるがモチモチ感を出すために過剰の水を加えることでパン生地を捏ねる際にべた付きが生じ作業性の低下を引き起こすだけでなく、品質の良い米粉パンを焼き上げることはできない。しかし、本発明の保湿機能材を使用することにより、米粉等を捏ねる際に於いても該保湿機能材に水分を維持するため作業性低下を引き起こすこともなく、当該保湿機能材にも水分を含有しているため焼きあがった状態でも当該保湿剤に残留する水分によりモチモチ感を長時間維持するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の米粉パンは、長時間モチモチ感を維持させることが可能だけでなく、日本では馴染みのある簡単・短時間で調理が可能なホットケーキミックスのような手軽で技術を問わないミックス粉があれば、米粉パンの視野が広がり、国産米消費量の拡大にもつながる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例0018】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び牛乳90g(水分率は88.5%のため水分量は79.7g)の材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例1とした。
【0019】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び実施例1で使用した牛乳の水分量より少なくなるように豆腐60gの材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例2とした。
【0020】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び実施例1で使用した牛乳の水分量より少なくなるようにより豆腐75gの材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例3とした。
【0021】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び実施例1に使用した牛乳の水分量と略同等になるように豆腐90gの材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例4とした。
【0022】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び実施例1に使用した牛乳の水分量より多くなるように豆腐110g、豆腐140g、豆腐157、5gの3条件での材料を使用した。それぞれの条件にて全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したもので豆腐110gのものを実施例5、豆腐140gのものを実施例6、及び豆腐157.5gのものを実施例7とした。
【0023】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び豆腐170gの材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例8とした。
【0024】
米粉90gに対してタピオカ粉10g、塩1g、ベーキングパウダー5g、砂糖4g、油11g及び粉末の高野豆腐11.4gに対して水163.6gの材料を使用した。全ての材料をボウルに入れ、粉気がなくなるまで混ぜ込む。その後、二等分したものを予熱していないオーブンに入れてから165度に設定し、35分間加熱したものを実施例9とした。
【0025】
実施例1は、表面が固くヒビ割れたモチのような触感になった。出来立ては弾力を感じる触感であったが焼成後2時間程でモチのような固さとなった。
【0026】
実施例2について、焼成前、見た目は粘土を丸めたような感じであり、触感も同様であった。焼成後は見た目がスコーンのように表面が割れており、皮は厚めであった。中を割ってみると目が詰まっており生地は伸びた感じがなく、弾力もなく硬かった。
【0027】
実施例3から実施例7では、表面はヒビ割れたモチのような触感になった。出来立ては弾力を感じる触感であったが、このまま2日間は同じ弾力を感じさせ固くならなかった。3日目に表面と端部の方から固くなってきたが水分量の増加と共に固くなり始める時間は遅くなっていた。
【0028】
一方、実施例8に於いては、焼成前に纏めようとするが形状を維持できない。焼成後には半生のガンモドキのような見た目であった。表面の皮は薄く、焼成後に少しだけ膨らむがオーブンから出して5分後には萎んでいた。
【0029】
実施例9は、実施例3から実施例7同様に、表面はヒビ割れたモチのような触感になった。出来立ては弾力を感じる触感であったが、このまま2日間は同じ弾力を感じさせ固くならなかった。3日目に表面と端部の方から固くなってきたが水分量の増加と共に固くなり始める時間は遅くなっていた。
【0030】
以上の結果から、長時間モチモチ感を維持させるためには米粉100重量部に対して保湿機能材が米粉100重量部に対して12.7%から24.7%重量部であり、前記保湿機能材が水分を含有した状態で米粉100重量部に対して90%から175%重量部であることが分かった。