(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089729
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A45C 5/02 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
A45C5/02 W
A45C5/02 Q
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214411
(22)【出願日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】202011410557.4
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520501300
【氏名又は名称】永湖複合材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲廖▼ 元宏
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 樹春
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045CB01
3B045CB04
3B045CE02
3B045FC04
3B045HB04
3B045HB05
3B045IA06
(57)【要約】
【課題】複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法は下記のステップを含む。ステップA)は熱可塑性プラスチックシートでボディーを製作する。ステップB)はボディーの底部面を加熱用型の凹状成型部位に位置させ、ボディーの側部面を加熱用型のフレーム成型部位に位置させ、ボディーの外側面を加熱用型の内壁面に位置させる。ステップC)は熱硬化性炭素繊維プラスチック層の表面をボディーの内側面に対応させる。ステップD)は熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面に充填層を配置し、かつ充填層を加熱用型のフレーム成型部位に位置させる。ステップE)はエアバッグを膨張させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層に当接させ、続いて加熱用型によってボディー、熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層を加熱し、それらを相互に結合させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップA)からステップE)を含み、
前記ステップA)において、真空成型法(vacuum molding method)に基づいて熱可塑性プラスチックシートでボディーを製作し、前記ボディーは底部面と、前記底部面の外囲になる側部面と、前記底部面および前記側部面に囲まれて成る収納空間とを有し、
前記ステップB)において、凹状成型部位、前記凹状成型部位の外側辺縁部に位置するフレーム成型部位および内壁面を有する加熱用型を用意し、前記ボディーの前記底部面を前記凹状成型部位に位置させ、前記ボディーの前記側部面を前記フレーム成型部位に位置させ、前記ボディーの外側面を前記加熱用型の前記内壁面に対応させ、
前記ステップC)において、熱硬化性炭素繊維プラスチック層を用意し、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層の表面を前記ボディーの内側面に対応させ、
前記ステップD)において、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面に充填層を配置し、かつ前記充填層を前記フレーム成型部位に位置させ、
前記ステップE)において、前記ボディーの前記収納空間にエアバッグを置いて膨張させ、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面および前記充填層に当接させるまでエアバッグを膨張させ、続いて前記加熱用型によって前記凹状成型部位内に位置する前記ボディーの前記底部面および前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層と、前記フレーム成型部位内に位置する前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層および前記充填層とを加熱し、それらを相互に結合させることを特徴とする複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項2】
前記ステップB)、前記ステップC)および前記ステップDにおいて、
前記フレーム成型部位は内側溝および外側溝を有し、前記内側溝は前記加熱用型の前記内壁面に隣接し、前記外側溝に間隔を置くように配置され、
前記ボディーの前記側部面は前記フレーム成型部位の前記内側溝に配置され、
前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層および前記充填層は前記フレーム成型部位の前記内側溝および前記外側溝に配置されることを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項3】
前記ステップC)および前記ステップD)において、
前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層は前記フレーム成型部位の前記内側溝に配置され、
前記充填層は前記フレーム成型部位の前記内側溝および前記外側溝に配置されることを特徴とする請求項2に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項4】
前記フレーム成型部位の前記内側溝は平面、第一斜面および前記加熱用型の前記内壁面からなり、前記平面は一側が前記内壁面に連結され、別の一側が前記第一斜面に連結されることを特徴とする請求項2に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項5】
前記ステップB)、前記ステップC)および前記ステップDにおいて、
前記フレーム成型部位は内側突出部、外側突出部および凹状溝を有し、前記内側突出部は前記加熱用型の前記内壁面に突出し、前記凹状溝は前記内側突出部と前記外側突出部との間に位置し、
前記ボディーの前記側部面および前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層は前記フレーム成型部位の前記内側突出部および前記凹状溝に配置され、
前記充填層は前記フレーム成型部位の前記凹状溝および前記外側突出部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項6】
前記フレーム成型部位の前記凹状溝は連なる第二斜面および第三斜面からなることを特徴とする請求項5に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項7】
前記充填層の材料は熱硬化性炭素繊維プラスチック部材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項8】
前記ステップE)において、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層および前記充填層は前記加熱用型によって加熱され、前記ボディーの内側面に付着し、融合硬化することを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項9】
前記ステップA)において、前記熱可塑性プラスチックシートは透明であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項10】
前記ステップA)において、前記真空成型法は型を有する真空成型装置(vacuum molding device)を採用し、前記熱可塑性プラスチックシートを前記真空成型装置に入れて加熱し、軟化させ、続いて、前記真空成型装置によって負圧を生じて前記熱可塑性プラスチックシートを前記型の表面に付着させてボディーを成型することを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項11】
前記ステップE)の後、さらにステップF)を進め、
前記ステップF)において、前記ボディーの前記収納空間から前記エアバッグを取り出し、成型した複合材料製旅行かばんを冷却させることを特徴とする請求項1に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一つに記載の製造方法によって複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんであって、
第一シェル、第二シェル、第一フレームおよび第二フレームを備え、
前記第二シェルは前記第一シェルに開閉可能に合わさるように装着され、
前記第一フレームは前記第一シェルと一体成型され、前記第一シェルの外側辺縁に位置付けられ、
前記第二フレームは前記第二シェルと一体成型され、前記第二シェルの外側辺縁に位置付けられ、
前記第一シェルと前記第二シェルが合わさる際、前記第二フレームは前記第一フレームに嵌まり込むことを特徴とする複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん。
【請求項13】
前記第一シェルおよび前記第二シェルはそれぞれ前記ボディーおよび前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層を有し、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層は前記ボディーの内側面に配置されることを特徴とする請求項12に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん。
【請求項14】
前記第一フレームおよび前記第二フレームはそれぞれ前記ボディー、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層および前記充填層を有し、前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層は前記ボディーの内側面に配置され、前記充填層は前記熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面に配置されることを特徴とする請求項12に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん。
【請求項15】
前記充填層は熱硬化性炭素繊維プラスチック層であることを特徴とする請求項14に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん。
【請求項16】
前記第一フレームは凹状嵌合溝を有し、前記第二フレームは凸状嵌合部材を有し、
前記凸状嵌合部材は前記凹状嵌合溝に嵌まり込むことを特徴とする請求項12に記載の複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維製品に関し、詳しくは複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市販の旅行かばんの多くは熱可塑性樹脂またはアルミニウム-マグネシウム合金から製作される。アルミニウム-マグネシウム合金製旅行かばんの場合、特許文献1により掲示された旅行かばんのフレーム構造は二つのフレームを有する。二つのフレームはリベットによって二つの相対的に合わさるシェルの周縁部に接合される。二つのシェルが閉じる際、二つのフレームは相互に嵌まり合う。アルミニウム-マグネシウム合金製旅行かばんを製造する際、製造工程が比較的複雑である。サイズが大きければ大きいほど、生産作業または組立作業(リベット打ち接合)の最中にアルミニウム製フレームを変形させることが起こりやすくなり、フレームの精度が一致できなくなるため、二つのシェルを閉める際、二つのフレームがずれてうまく結合できないという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法を提供することを主な目的とする。本発明の製造方法は金型成型加工即ち一次加工によってボディーとフレームを一体成型できる。本発明の製造方法で成型した旅行かばんは高強度、軽量および高精度が特性である。つまり、本発明の製造方法は旅行かばんの耐久性と、二つのシェルが合わさって二つのフレームを嵌め合わせる際の接合度とを向上させることができるだけでなく、接着工程、リベット打ち接合または縫製工程などの従来技術によってボディーとフレームを結合させる際、作業が複雑で結合作業の正確度が低いという問題を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法は下記のステップを含む。ステップA)は真空成型法(vacuum molding method)に基づいて熱可塑性プラスチックシートでボディーを製作する。ボディーは底部面と、底部面の外囲になる側部面と、底部面および側部面に囲まれて成る収納空間とを有する。ステップB)は凹状成型部位、凹状成型部位の外側辺縁部に位置するフレーム成型部位および内壁面を有する加熱用型を用意し、加熱用型の凹状成型部位にボディーの底部面を嵌めてボディーの側部面をフレーム成型部位に対応させ、ボディーの外側面を内壁面に対応させる。ステップC)は熱硬化性炭素繊維プラスチック層を用意し、熱硬化性炭素繊維プラスチック層の表面をボディーの内側面に対応させる。ステップD)は充填層を配置する。充填層は熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面に配置され、かつ加熱用型のフレーム成型部位に位置付けられる。ステップE)はボディーの収納空間にエアバッグを置いて膨張させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面および充填層に当接させるまでエアバッグを膨張させ、続いて加熱用型によって凹状成型部位内に位置するボディーの底部面および熱硬化性炭素繊維プラスチック層と、フレーム成型部位内に位置する熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層とを加熱し、それらを相互に結合させる。
【0006】
比較的好ましい場合、ステップB)、ステップC)およびステップDにおいて、フレーム成型部位は内側溝および外側溝を有する。内側溝は加熱用型の内壁面に隣接し、外側溝に間隔を置くように配置される。ボディーの側部面はフレーム成型部位の内側溝に配置される。熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層はフレーム成型部位の内側溝および外側溝に配置される。
【0007】
比較的好ましい場合、ステップC)およびステップD)において、熱硬化性炭素繊維プラスチック層はレーム成型部位の内側溝に配置される。充填層はフレーム成型部位の内側溝および外側溝に配置される。
【0008】
比較的好ましい場合、フレーム成型部位の内側溝は平面、第一斜面および加熱用型の内壁面からなる。平面は一側が内壁面に連結され、別の一側が第一斜面に連結される。
【0009】
比較的好ましい場合、ステップB)、ステップC)およびステップDにおいて、フレーム成型部位は内側突出部、外側突出部および凹状溝を有する。内側突出部は加熱用型の内壁面に突出する。凹状溝は内側突出部と外側突出部との間に位置する。ボディーの側部面および熱硬化性炭素繊維プラスチック層は内側突出部および凹状溝に配置される。充填層は凹状溝および外側突出部に配置される。
【0010】
比較的好ましい場合、フレーム成型部位の凹状溝は連なる第二斜面および第三斜面からなる。
【0011】
比較的好ましい場合、充填層の材質は熱硬化性炭素繊維プラスチック部材である。
【0012】
比較的好ましい場合、ステップE)において、熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層は加熱用型によって加熱され、ボディーの内側面に付着し、融合硬化する。
【0013】
比較的好ましい場合、ステップA)において、熱可塑性プラスチックシートは透明である。
【0014】
比較的好ましい場合、ステップA)において、真空成型法は型を有する真空成型装置(vacuum molding device)を採用する。熱可塑性プラスチックシートを真空成型装置に入れて加熱し、軟化させる。続いて、真空成型装置は負圧を生じて熱可塑性プラスチックシートを型の表面に付着させてボディーを成型する。
【0015】
比較的好ましい場合、製造方法はステップE)の後、さらにステップF)を進める。ステップF)はボディーの収納空間からエアバッグを取り出し、成型した複合材料製旅行かばんを冷却させる。
【0016】
比較的好ましい場合、本発明は複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんを提供する。複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんは第一シェル、第二シェル、第一フレームおよび第二フレームを備える。第二シェルは第一シェルに開閉可能に合わさるように装着される。第一フレームは第一シェルと一体成型され、第一シェルの外側辺縁に位置付けられる。第二フレームは第二シェルと一体成型され、第二シェルの外側辺縁に位置付けられる。第一シェルと第二シェルが合わさる際、第二フレームは第一フレームに嵌まり込む。
【0017】
比較的好ましい場合、第一シェルおよび第二シェルはそれぞれボディーおよび熱硬化性炭素繊維プラスチック層を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層はボディーの内側面に配置される。
【0018】
比較的好ましい場合、第一フレームおよび第二フレームはそれぞれボディー、熱硬化性炭素繊維プラスチック層および充填層を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層はボディーの内側面に配置される。充填層は熱硬化性炭素繊維プラスチック層の裏面に配置される。
【0019】
比較的好ましい場合、第一フレームは凹状嵌合溝を有する。第二フレームは凸状嵌合部材を有する。嵌合部材は嵌合溝に嵌まり込む。
【0020】
上述をまとめてみると、複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法は金型成型加工即ち一次加工によってボディーとフレームを一体成型できる。前記製造方法で製作した旅行かばんは高強度、軽量および高精度が特性である。つまり、本発明の製造方法は旅行かばんの耐久性と、二つのシェルが合わさって二つのフレームを嵌め合わせる際の接合度とを向上させることができる。
【0021】
本発明に関わる詳細な構造、特徴、組み立てまたは使用方法は、以下の実施形態の詳細な説明を通して明確にする。また、以下の詳細な説明および本発明により提示された実施形態は本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の請求範囲を限定できないことは、本発明にかかわる領域において常識がある人ならば理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんを示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんを示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第一シェルと第一フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第一シェルと第一フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第一シェルと第一フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第一シェルと第一フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第一シェルと第一フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第二シェルと第二フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第二シェルと第二フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第二シェルと第二フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第二シェルと第二フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【
図12】本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法に基づいて第二シェルと第二フレームを一体成型するステップを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明によるフレームを有する複合材料製旅行かばんおよびその製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において、方向性用語は図面に基づいて表現される。図中の同じ符号は同じ部品または類似した部品のまたはその構造特徴を示す。
【0024】
(一実施形態)
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん10は、第一シェル20、第二シェル30、第一フレーム40および第二フレーム50を備える。
【0025】
第一シェル20はボディー21および熱硬化性炭素繊維プラスチック層23を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層23はボディー21の内側面に配置される。
【0026】
第二シェル30は、第一シェル20に開閉可能に合わさるように装着され、ボディー31および熱硬化性炭素繊維プラスチック層33を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層33はボディー31の内側面に配置される。
【0027】
第一フレーム40は第一シェル20と一体成型され、第一シェル20の外側辺縁に位置付けられる。第一フレーム40はボディー41、熱硬化性炭素繊維プラスチック層43、充填層45および凹状嵌合溝47を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層43はボディー41の内側面に配置される。充填層45は熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の裏面に配置される。
【0028】
第二フレーム50は第二シェル30と一体成型され、第二シェル30の外側辺縁に位置付けられる。第二フレーム50はボディー51、熱硬化性炭素繊維プラスチック層53、充填層55および凸状嵌合部材57を有する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層53はボディー51の内側面に配置される。充填層55は熱硬化性炭素繊維プラスチック層53の裏面に配置される。第一シェル20と第二シェル30が合わさる際、第二フレーム50の凸状嵌合部材57は第一フレーム40の凹状嵌合溝47に嵌まり込む。
【0029】
本発明の一実施形態による複合材料でフレームと一体成型された旅行かばん10の製造方法は第一シェル20と第一フレーム40を一体成型するステップおよび第二シェル30と第二フレーム50を一体成型するステップを含む。
図2から
図7に示すように、第一シェル20と第一フレーム40を一体成型するステップ、即ちステップS1-1からステップS1―7は下記のとおりである。
【0030】
図3に示すように、ステップS1-1は真空成型法(vacuum molding method)に基づいて熱可塑性プラスチックシートで第一シェル20のボディー21および第一フレーム40の41を一体成型する。ボディー21、41は底部面211、底部面211の外囲になる側部面213と、底部面211および側部面213に囲まれて成る収納空間215とを有する。熱可塑性プラスチックシートはPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PC(ポリカーボネート)またはそれらの組成物であるが、これに限らず、別の熱可塑性プラスチック部材または熱可塑性プラスチック部材の組成物を採用してもよい。本実施形態において、真空成型法(即ちプラスチックシート吸引法)は型(図中未表示)を有する真空成型装置を採用する。型はオス型である。オス型に別の補助用型(例えば凸状模様)を装着すれば形が異なるボディー21、41を製造することができる。詳しく言えば、熱可塑性プラスチックシートを真空成型装置に入れて加熱し、軟化させれば、真空成型装置は負圧を生じて熱可塑性プラスチックシートを型の表面に付着させてボディー21、41を成型する。真空成型装置によって熱可塑性プラスチックシートを加熱し、軟化させることや真空成型装置の負圧によって熱可塑性プラスチックシートを型の表面に付着させてボディーを成型することは周知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、ステップS1-2は加熱用型60を用意する。加熱用型60は凹状成型部位61、フレーム成型部位63および内壁面を有する。フレーム成型部位63は凹状成型部位61の外側辺縁部に位置し、内側溝631および外側溝632を有する。内側溝631は加熱用型60の内壁面に隣接し、外側溝632に間隔を置くように配置される。内側溝631は凹状嵌合溝47の製作に対応するために平面634、第一斜面635および加熱用型60の内壁面からなる。平面634は一側が内壁面に連結され、別の一側が第一斜面635に連結される。ボディー21、41は底部面211が凹状成型部位61に配置され、側部面213がフレーム成型部位63の内側溝631に配置され、外側面が加熱用型60の内壁面に対応する。ボディー21にパータン(商標または創作図形)を増設する場合、ステップS1-1において透明の熱可塑性プラスチックシートを使用すればよい。まず透明の熱可塑性プラスチックシートでボディー21を製作する。続いてステップS1-1またはステップS1-2おいてスプレー塗装、プリントまたはシールなどによってボディー21の内側面にパータンを形成すればよい。
【0032】
図4に示すように、ステップS1-3は表面および裏面を有する熱硬化性炭素繊維プラスチック層43を用意する。続いて熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の表面をボディー21、41の内側面に対応させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の一部分を凹状成型部位61に配置し、別の一部分をフレーム成型部位63の内側溝631(または内側溝631と外側溝632との間)に配置する。熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の熱硬化性プラスチック部材はエポキシ樹脂(Epoxy resin)またはポリエステル(Polyester)であるが、これに限らず、別の熱硬化性プラスチック部材または熱硬化性プラスチック部材の組成物を採用してもよい。
【0033】
図5に示すように、ステップS1-4は充填層45を配置する。本実施形態において、充填層45の材料は熱硬化性炭素繊維プラスチック部材である。充填層45は熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の裏面に配置され、かつ加熱用型60のフレーム成型部位63の内側溝631と外側溝632との間(または外側溝632のみ)に分布するため、フレームのあたりの材料を増大させる。
【0034】
図6に示すように、ステップS1-5はボディー21、41の収納空間215にエアバッグ70を置いて膨張させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層43の裏面および充填層45に当接させる。続いて加熱用型60によって凹状成型部位61内に位置するボディーの底部面211および熱硬化性炭素繊維プラスチック層43と、フレーム成型部位63内に位置する熱硬化性炭素繊維プラスチック層43および充填層45とを加熱し、それらを相互に結合させてフレーム成型部位63の内側溝631および外側溝632に分布させる。加熱温度が140度から150度の間であれば好ましい。熱硬化性炭素繊維プラスチック層43および充填層45をボディー21、41の内側面に付着および硬化させ、ボディー21、41、熱硬化性炭素繊維プラスチック層43および充填層45を相互に結合させれば、第一シェル20と第一フレーム40が一体になる。
【0035】
図7に示すように、ステップS1-6はボディーの収納空間215からエアバッグ70を取り出し、一体になる第一シェル20および第一フレーム40を冷却させれば、第一シェル20と第一フレーム40の製作工程が完了する。
【0036】
図2、
図8から
図12は第二シェル30と第二フレーム50を一体成型するステップ、即ちステップS2-1からステップS2-7を示す模式図である。第一シェル20と第一フレーム40を一体成型するステップ(即ち、ステップS1-1からステップS1-7)との違いは下記のとおりである。
【0037】
図2および
図8に示すように、ステップS2-2において、フレーム成型部位63は凸状嵌合部材57の製作に対応するために内側突出部636、外側突出部637および凹状溝638を有する。内側突出部636は加熱用型60の内壁面に突出する。凹状溝638は内側突出部636と外側突出部637との間に位置し、連なる第二斜面639および第三斜面640からなる。ボディー31、51の側部面はフレーム成型部位63の内側突出部636および凹状溝638に配置されるが、これに限らず、状況に応じて加熱用型60の内壁面かつフレーム成型部位63の外側突出部637に近い一側に配置されてもよい。
【0038】
図9に示すように、ステップS2-3は熱硬化性炭素繊維プラスチック層53の表面をボディー31、51の内側面に対応させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層53の一部分を凹状成型部位61に配置し、別の一部分をフレーム成型部位63の内側突出部636および凹状溝638に配置する。
【0039】
図10に示すように、ステップS2-4はフレーム成型部位63の凹状溝638かつ外側突出部637の近くに充填層55を配置する。
【0040】
図11に示すように、ステップS2-5はボディー31、51の収納空間にエアバッグ70を置いて膨張させ、熱硬化性炭素繊維プラスチック層53の裏面および充填層55に当接させる。続いて加熱用型60によって凹状成型部位61内に位置するボディーの底部面および熱硬化性炭素繊維プラスチック層53と、フレーム成型部位63内に位置する熱硬化性炭素繊維プラスチック層53および充填層55とを加熱し、それらを相互に結合させてフレーム成型部位63の凹状溝638に分布させる。続いて、熱硬化性炭素繊維プラスチック層53および充填層55をボディー31、51の内側面に付着および硬化させる、即ちボディー31、51、熱硬化性炭素繊維プラスチック層53および充填層55を相互に結合させれば、第二シェル30と第二フレーム50が一体になる。
【0041】
図12に示すように、ステップS2-6はボディー31、51の収納空間からエアバッグ70を取り出し、一体になる第二シェル30および第二フレーム50を冷却させれば、第二シェル30と第二フレーム50の製作工程が完了する。
【0042】
上述をまとめてみると、複合材料でフレームと一体成型された旅行かばんの製造方法は金型成型加工即ち一次加工によってボディーとフレームを一体成型できる。前記製造方法で製作した旅行かばんは高強度、軽量および高精度が特性である。つまり、本発明の製造方法は旅行かばんの耐久性と、二つのシェルが合わさって二つのフレームを嵌め合わせる際の接合度とを向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
10:旅行かばん、
20:第一シェル、
21:ボディー、
211:底部面、
213:側部面、
215:収納空間、
23:熱硬化性炭素繊維プラスチック層、
30:第二シェル、
31:ボディー、
33:熱硬化性炭素繊維プラスチック層、
40:第一フレーム、
41:ボディー、
43:熱硬化性炭素繊維プラスチック層、
45:充填層、
47:嵌合溝、
50:第二フレーム、
51:ボディー、
53:熱硬化性炭素繊維プラスチック層、
55:充填層、
57:嵌合部材、
60:加熱用型、
61:凹状成型部位、
63:フレーム成型部位、
631:内側溝、
632:外側溝、
634:平面、
635:第一斜面、
636:内側突出部、
637:外側突出部、
638:凹状溝、
639:第二斜面、
640:第三斜面、
70:エアバッグ、
S1-1、S1-2、S1-3、S1-4、S1-5、S1-6:ステップ、
S2-1、S2-2、S2―3、S2―4、S2―5、S2―6:ステップ