(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089742
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】車両内部用のエンボス加工不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/485 20120101AFI20220609BHJP
D04H 1/46 20120101ALI20220609BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20220609BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
D04H1/485
D04H1/46
D04H1/541
B60R5/04 T
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021087760
(22)【出願日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】20 2020 107 011.8
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20 2021 102 212.4
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アルン プラサド ヴェヌゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ダシャ ウルバンツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレヤ ユルイェヴチッチ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ ヴァイク
【テーマコード(参考)】
3D022
4L047
【Fターム(参考)】
3D022BA02
3D022BC06
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB07
4L047BA03
4L047BA04
4L047BA09
4L047BA24
4L047BB06
4L047BB09
4L047CB01
4L047CC09
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】車両内部用、殊にトランクカバー用のエンボス加工不織布。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーとポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーとを含み、ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの割合は前記不織布の全質量を基準として5~50質量%であり、前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは芯/鞘ステープルファイバーとして形成されており、かつ前記芯/鞘ステープルファイバーの鞘が、80℃~230℃の範囲内の融点を有する低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーと、ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーとを含む、車両内部用、殊にトランクカバー用のエンボス加工不織布であって、ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの割合は、前記不織布の全質量を基準として5~50質量%であり、かつ前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは、芯/鞘ステープルファイバーとして形成されている不織布であり、前記芯/鞘ステープルファイバーの鞘が、DIN ISO 11357-3 (2013)に従って測定される80℃~230℃の範囲内の融点を有する低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートを有することを特徴とする、前記不織布。
【請求項2】
前記不織布が、DIN ISO 10534-1 (2001)に従って30mmの壁距離および800Hz~4000Hz、好ましくは800~2000Hzの周波数で、殊に2500Hzで測定される、45%超、例えば45%~100%、より好ましくは60%超、例えば60%~100%、より好ましくは70%超、例えば70%~100%、および殊に80%超、例えば80%~100%の吸音率を有することを特徴とする、請求項1に記載のエンボス加工不織布。
【請求項3】
DIN 9073-2 (1997)、試験装置1に従って測定される、0.3~1.2mm、好ましくは0.4~1mm、より好ましくは0.4~0.8mm、より好ましくは0.4~0.7mm、より好ましくは0.45~0.7mmおよび殊に0.45~0.6mmの厚さを特徴とする、請求項1または2に記載のエンボス加工不織布。
【請求項4】
前記芯/鞘ステープルファイバーにおける芯と鞘との量比は、90:10~10:90の範囲内であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーが互いに独立して、1~10dtex、好ましくは2~8dtexおよび殊に2~7dtxの範囲内の繊度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーが互いに独立して、1~100mm、好ましくは10~70mm、より好ましくは20~60mmおよび殊に30~50mmの範囲内のステープル長さを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項7】
前記不織布が、ニードルパンチ不織布および/またはウォータージェットにより固定された不織布であり、ここで、前記ニードルパンチ不織布におけるニードル密度が、好ましくは25ニードル/cm2~700ニードル/cm2であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項8】
EN 29073-03 (1992)(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)に従って測定される、50N超、例えば50N~700N、より好ましくは200N超、例えば200N~500Nおよび殊に300N超、例えば300N~450Nのたて方向の引張強さおよび/またはEN 29073-03 (1992)(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)に従い測定される、50N超、例えば50N~600N、より好ましくは200N超、例えば200N~500Nおよび殊に250N超、例えば250N~400Nのよこ方向の引張強さを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項9】
EN 29073-03 (1992)(引張速度:200mm/min、試料の幅:50mm)に従ってたて方向および/またはよこ方向で互いに独立して測定される、5N超、例えば5N~100N、より好ましくは10N超、例えば10N~75Nおよび殊に20N超、例えば20N~60Nの引裂伝播力を特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項10】
ISO 9073-1 (1989)による50g/m2~1000g/m2の単位面積質量を特徴とする、エンボス加工不織布。
【請求項11】
EN 29073-03 (1992)(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)に従って測定される、5~50%、より好ましくは10~40%および殊に10~30%の互いに独立してたて方向および/またはよこ方向の伸び率を特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項12】
前記不織布が、10~40質量%のポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの割合を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項13】
前記不織布がコーティングを有し、ここで、前記コーティングが、バインダー、好ましくはアクリレート、有色顔料、増粘剤および/または防炎加工剤を含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項14】
前記不織布が、片面または両面に、エンボス模様を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項15】
前記不織布が少なくとも片面で、1.50未満、例えば0.05~1.50、より好ましくは0.05~1.40および殊に0.10~1.30のヘアリネス指数を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布。
【請求項16】
車両内部用のトランクカバーとしての請求項1から15までのいずれか1項に記載のエンボス加工不織布の使用。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の不織布を有する、車両用トランクカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内部用、殊にトランクカバー用のエンボス加工不織布、および前記不織布を有する車両用トランクカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両内部用、殊にトランクカバー用には、通常、ポリ塩化ビニル(PVC)でコーティングされた材料が使用される。PVCの使用は、高い表面平滑性を有する点で有利であり、これによって、特に省スペースの保管が可能になり、それに付随して車両において厚さを小さくできる。しかしながら、比較的高い単位面積質量を有することと、殊に太陽入射の際に、VOCを放出することが不利である。さらにまた、通常存在しているその複合構造に基づき、ほとんどリサイクルできない。
【0003】
この理由から、車両内部に使用することができる不織布への需要がある。つまり、不織布の使用は、それらを用いると、単位面積質量が低いことと、VOC排出量が少ないかもしくはそれどころかゼロであることを組み合わせることができる点で有利である。
【0004】
不織布は、あらゆる種類およびあらゆる起源の限定された長さの繊維、連続繊維(フィラメント)またはカットした糸からなり、何らかの方法でつなぎ合わされてフリース(繊維層、繊維ウェブ)となり、かつ何らかの方法で互いに結合されている構造物であり、不織布はISO 9092/2019規格に定義されている。上記で説明したように、不織布は、車両内部にとって利点を有する。しかしながら、車両内部における公知の不織布の使用は、これらの繊維構造に基づいて、しばしば高い必要空間を有する点で不利である。さらにまた、前記車両内部材料がテキスタイル特性をできるだけ有しておらず、かつ低い“ヘアリネス”を有することがかなりの顧客によって望まれる。なぜなら、これにより、公知の製品とのより大きな類似性および付加的により大きな耐摩耗性を得ることができるからである。
【0005】
独国特許出願公開第102018105164号明細書(DE102018105164 (A1))からは、フェルトの熱圧着成形により製造されている、車両内部材料用の不織布が公知であり、ここで、前記フェルトは、ポリエチレンテレフタレート(PET)ステープルファイバーと、120~140℃および150~170℃の範囲内の融点を有する低融点PET(低融点ポリエチレンテレフタレート)ステープルファイバーとを混合することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018105164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、独国特許出願公開第102018105164号明細書(DE102018105164 (A1))から出発して、車両内部用におよび殊にトランクカバーとしての使用に適している不織布を提供することにある。前記不織布は、さらに小さい収納スペースでも使用でき、かつテキスタイル特性をわずかにのみ有するかまたはテキスタイル特性を有さずに製造することができるべきである。しかしながら、所望の場合には、前記不織布は、テキスタイル特性を有して製造することもできるべきである。さらにまた、前記不織布は、均一な繊維分布を良好な繊維結合と組み合わせるべきであり、これによって良好な機械的性質ならびに付加的に良好な音響的性質を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよびポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーを含む車両内部用、殊にトランクカバー用のエンボス加工不織布により解決され、ここで、ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの割合は、前記不織布の全質量を基準として、5~50質量%であり、かつ前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは、芯/鞘ステープルファイバーとして形成されており、ここで、前記芯/鞘ステープルファイバーの鞘は、DIN ISO 11357-3 (2013)に従って測定される80℃~230℃の範囲内の融点を有する低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートを有する。前記トランクカバーは、その際に、好ましくは車両用トランクカバーである。
【0009】
実際の実験において、鞘が80℃~230℃の範囲内の融点を有する低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートを有する芯/鞘ステープルファイバーの使用を、本発明による不織布において、良好な繊維結合およびこれによって良好な機械的性質および音響的性質を、良好で均一なエンボス加工性と組み合わせることを可能にすることが見出された。その際に、前記強さの値および厚さの極めて小さい変動係数を達成することができることも確かめられた。さらにまた、前記芯/鞘バインダーステープルファイバーが、前記不織布に小さい厚さでも良好な伸び率を付与することを可能にする。
【0010】
本発明によれば好ましくは、前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは、少なくとも部分的に熱により溶融して存在する。これによって、より良好な繊維結合および/またはより高い表面平滑性を得ることができる。
【0011】
機序に束縛されるものではないが、良好な繊維結合は、前記芯/鞘ステープルファイバーが、極めて均質な分布を可能にすることによって達成されることが推測される。その際に、殊に、単一成分バインダー繊維の特により高い量での使用の際にしばしば生じるような、前記バインダー成分の「団塊化」を回避することができる。これはおそらく、観察される前記強さの値の小さい変動係数ならびに良好で均一なエンボス加工性ももたらす。
【0012】
さらに、前記の良好な機械的性質は、前記芯/鞘ステープルファイバーの芯が結合過程の際に維持されており、ひいては前記不織布の強さおよび伸び率に寄与しうることによって達成されることが推測される。
【0013】
本発明によれば好ましくは、前記不織布は、ISO 9092/2019規格に従う不織布である。本発明の好ましい実施態様において、前記不織布は、DIN ISO 10534-1 (2001)に従って、30mmの壁距離および800Hz~4000Hz、好ましくは800~2000Hzの周波数で、殊に2500Hzで測定される、45%超、例えば45%~100%、より好ましくは60%超、例えば60%~100%、より好ましくは70%超、例えば70%~100%、および殊に80%超、例えば80%~100%の吸音係数を有する。
【0014】
45%超の測定された吸音率は、1000Hzを上回る周波数(壁距離30mm)で20%未満であるPVC系比較材料の吸音率よりも明らかに高い。800~4000Hzの周波数は、自動車内装品に特に関連している。
【0015】
さらにまた、前記不織布は、さらに好ましい実施態様において、インピーダンス測定の際の全部で19の3度音程のうち少なくとも6、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも8および殊に少なくとも9で、45%超の吸音係数(DIN ISO 10534-1 (2001)に従って30mmの壁距離で測定)を有する。
【0016】
それとは異なり、比較例において試験されたPVC系比較材料は、インピーダンス測定の際の全部で19の3度音程のうち4でのみ45%超の吸音係数(DIN ISO 10534-1 (2001)に従って30mmの壁距離で測定)を有する。
【0017】
そのうえ、前記不織布が、テキスタイル特性をわずかにのみ有するかまたはテキスタイル特性を有さずに製造することができることが見出された。これは有利でありうる。なぜなら、これにより、公知の製品への高い類似性、付加的により大きな耐摩耗性およびそのうえ低い汚れ挙動を得ることができるからである。さらに、芯/鞘繊維の形のポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの使用が、前記不織布の極めて高いエンボス加工性をもたらすことが付け加わる。同時に、前記繊維ならびに場合により存在している個々の層は良好に互いに結合することができる。
【0018】
前記不織布の高い安定性に基づき、さらにまた、小さい厚さで製造することができ、それにより、限られた設置空間を有する内装位置の場合でも組み込むことができる。好ましい実施態様において、前記不織布は、DIN 9073-2 (1997)、試験装置1に従って測定される、0.3~1.2mm、好ましくは0.4~1mm、より好ましくは0.4~0.8mm、より好ましくは0.4~0.7mmおよび殊に0.45~0.6mmの厚さを有する。同様に特に好ましくは、前記不織布は0.45~0.7mmの厚さを有する。厚さが小さいにもかかわらず、高い伸び率を有する不織布を製造することができる。このことは驚くべきことであった。なぜなら、殊にエンボス加工不織布の場合に、小さい厚さは通例、低い伸び率を伴い、このことは、紙のような特性をもたらすからである。
【0019】
さらに好ましい実施態様において、前記不織布は、15%未満、より好ましくは12%未満および殊に10%未満の厚さの変動係数を有する。
【0020】
本発明によれば、前記芯/鞘ステープルファイバーの鞘は、低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートを有する。前記共重合ポリエチレンテレフタレートは、通常、芯/鞘繊維に使用される共重合ポリエチレンテレフタレートであってよい。
【0021】
好ましくは、前記の低融点の共重合ポリエチレンテレフタレートの割合は、前記鞘の全質量を基準として、95質量%超、殊に98質量%超である。
【0022】
好ましい実施態様において、前記芯/鞘ステープルファイバーにおける芯および鞘の量比は、90:10~10:90、好ましくは80:20~20:80、より好ましくは70:30~30:70、および殊に60:40~40:60の範囲内である。
【0023】
前記芯/鞘ステープルファイバーは、多種多様な形を有していてよく、例えば円形、三葉形および/または多葉形であってよい。
【0024】
さらに好ましい実施態様において、前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは互いに独立して、1~10dtex、より好ましくは2~8dtexおよび殊に2~7dtexの範囲内の繊度を有する。
【0025】
さらに好ましい実施態様において、前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーは互いに独立して、1~100mm、好ましくは10~70mm、より好ましくは20~60mmおよび殊に30~50mmの範囲内のステープル長さを有する。
【0026】
好ましい不織布は、ニードルパンチ不織布および/またはウォータージェットにより固定された不織布である。特に好ましいのは、両面ニードルパンチ不織布および/または両面でウォータージェットにより固定された不織布である。なぜなら、これにより、両面の前記繊維を、特に良好に前記不織布へ結び付けることができるからである。本発明の好ましい実施態様において、前記不織布における25ニードル/cm2~700ニードル/cm2、より好ましくは100ニードル/cm2~600ニードル/cm2および殊に200ニードル/cm2~500ニードル/cm2のニードル密度である。前記ニードル密度の低下が、より大きな繊維柔軟性およびそれに付随して前記不織布のより良好な圧縮性をもたらし、このことがまた、より少ない必要空間を伴うことが見出された。前記ニードル密度を25ニードル/cm2未満に調節すると、前記不織布における前記繊維の不十分な結合をまねきうることも見出された。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、前記不織布は、片面または両面に、エンボス模様を有する。好ましいエンボス模様は、レザー模造物、菱形、角柱および/またはテキスタイル模造物である。さらに好ましくは、前記不織布は、超音波またはホットエンボス加工によって適用されたエンボス模様を有する。これは、例えば、エンボシングカレンダーにより適用することができる。前記エンボシングカレンダーは、例えば金属/シリコーンロールまたは金属/金属ロールを有していてよい。この際に有利であるのは、前記エンボス模様の設計の自由度の高さである。こうして、例えば、幾何学的な表面ならびに相応する触覚的性質および/または光学的性質を有するレザーに似た表面を製造することができる。
【0028】
前記エンボシングカレンダーは、前記不織布の所望の厚さの調節にも使用することができる。好ましいカレンダー温度は、80℃~350℃、より好ましくは125℃~250℃および殊に150℃~225℃の範囲内である。極めて特に好ましいカレンダー温度は、150℃~350℃、より好ましくは180℃~350℃、殊に180℃~300℃の範囲内である。これは、特に低いヘアリネス、PVCに似た特性および少ない汚れやすさを有する不織布を得ることができる点で有利である。好ましいカレンダー圧は、10bar~150bar、より好ましくは25bar~100barおよび殊に40bar~75barの範囲内である。好ましいカレンダー速度は、0.1m/min~50m/min、好ましくは0.5m/min~25m/minおよび殊に1m/min~20m/minの範囲内である。前記のカレンダー条件で、殊に上記のニードル密度との組合せで、小さい厚さを有する不織布が、良好な機械的性質、殊に良好な引張強さおよび引裂強さとの組合せで得ることができることが見出された。したがって、一実施態様において、本発明による不織布は、カレンダー加工不織布である。本発明によれば特に好ましい不織布は、150℃~350℃、より好ましくは180℃~350℃、殊に180℃~300℃の範囲内の温度でカレンダー加工された不織布である。同様に本発明によれば特に好ましい不織布は、10bar~150bar、より好ましくは25bar~100barおよび殊に40bar~75barの範囲内のカレンダー圧でカレンダー加工された不織布である。同様に本発明によれば特に好ましい不織布は、0.1m/min~50m/min、好ましくは0.5m/min~25m/minおよび殊に1m/min~20m/minの範囲内のカレンダー速度でカレンダー加工された不織布である。極めて特に好ましいのは、組合せでの前記のパラメーターでカレンダー加工された不織布である。
【0029】
さらに本発明によれば特に好ましい不織布は、少なくとも片面で、1.50未満、例えば0.05~1.50、より好ましくは0.05~1.40および殊に0.10~1.30のヘアリネス指数を有する不織布である。好ましくは、前記不織布は、前記のヘアリネス指数を、少なくとも片方のエンボス加工面に有する。同様に好ましくは、前記不織布は、前記のヘアリネス指数を、両方のエンボス加工面で有する。同様に好ましくは、前記不織布は、前記のヘアリネス指数を少なくともエンボス加工面およびエンボス加工されていない面で有する。
【0030】
好ましくは、前記不織布は、EN 29073-03 (1992)に従って測定される(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)、50N超、例えば50N~700N、より好ましくは200N超、例えば200N~500Nおよび殊に300N超、例えば300N~450Nのたて方向の引張強さを有する。同様に特に好ましくは、前記不織布は、250N~450Nのたて方向の引張強さを有する。
【0031】
さらに好ましくは、前記不織布は、EN 29073-03 (1992)に従って測定される(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)、50N超、例えば50N~600N、より好ましくは200N超、例えば200N~500Nおよび殊に250N超、例えば250N~400Nのよこ方向の引張強さを有する。同様に特に好ましくは、前記不織布は、250N~500Nのよこ方向の引張強さを有する。
【0032】
さらに好ましくは、前記不織布は、EN 29073-03 (1992)に従って測定される(引張速度:200mm/min、初荷重:0.5N、試料の幅50mm)、5~50%、より好ましくは10~40%および殊に10~30%のたて方向および/またはよこ方向の伸び率を互いに独立して有する。同様に特に好ましくは、前記不織布は、10~50%のよこ方向の伸び率を有する。
【0033】
さらに好ましくは、前記不織布は、5N超、例えば5N~100N、より好ましくは10N超、例えば10N~75Nおよび殊に20N超、例えば20N~60Nのたて方向および/またはよこ方向の引裂伝播力(引張速度:200mm/min、試料の幅:50mm)を互いに独立して有する。
【0034】
さらに好ましくは、前記不織布は、50g/m2~1000g/m2、より好ましくは100g/m2~500g/m2および殊に150g/m2~350g/m2の単位面積質量ISO 9073-1 (1989)を有する。同様に好ましくは、前記不織布は、50g/m2~1000g/m2、より好ましくは100g/m2~500g/m2および殊に150g/m2~350g/m2の単位面積質量(DIN EN 29073-1:1992-08)を有する。
【0035】
さらに好ましくは、前記不織布は、クロスレイド不織布である。これは、特に均一な機械的性質が両方向(よこおよびたて)において得ることができる点で有利である。上記のように、前記芯-鞘繊維の使用により、クロスレイイングの際に生じる多様な層を特に良好に互いに結合することができる。
【0036】
さらなる実施態様において、前記不織布は、エアレイド不織布である。これは、前記不織布を特に費用対効果が高く製造できる点で有利である。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの鞘は、DIN ISO 11357-3 (2013)に従って測定される、100~200℃、より好ましくは120~190℃、および殊に150~180℃の範囲内の融点を有する。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記不織布は、前記不織布の全質量を基準として、10~40質量%および殊に15~30質量%のポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーの割合を有する。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記不織布は、前記不織布の全質量を基準として、50~95質量%および殊に70~85質量%のポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーの割合を有する。
【0040】
さらに好ましい実施態様において、前記不織布は、コーティングされずに存在する。これは有利である。なぜなら、より良好なリサイクル性が存在し、そのうえVOCの蒸発のリスクが低下されるからである。付加的にその製造コストを低下させることができる。
【0041】
有利には、前記不織布は、低いVOC値を有する。好ましくは、前記不織布は、VDA 278 (2012)に従って測定される、100μg/g未満、より好ましくは50μg/g未満、より好ましくは20μg/g未満、より好ましくは10μg/g未満および殊に5μg/g未満のVOC値を有する。
【0042】
さらに好ましい実施態様において、前記不織布は、コーテッド不織布であり、かつVDA 278 (2012)に従って測定される、100μg/g未満、より好ましくは50μg/g未満、より好ましくは20μg/g未満、および殊に10μg/g未満のVOC値を有する。
【0043】
さらに有利には、前記不織布は、コーティングされていない不織布であり、かつVDA 278 (2012)に従って測定される、100μg/g未満、より好ましくは50μg/g未満、より好ましくは20μg/g未満、より好ましくは10μg/g未満、より好ましくは5μg/g未満、より好ましくは2μg/g未満および殊に1μg/g未満のVOC値を有する。
【0044】
有利には、前記不織布は、低いFog値を有する。好ましくは、前記不織布は、VDA 278 (2012)に従って測定される、400μg/g未満、より好ましくは350μg/g未満、より好ましくは300μg/g未満、より好ましくは275μg/g未満および殊に250μg/g未満のFog値を有する。
【0045】
さらに有利には、前記不織布は、コーテッド不織布であり、かつVDA 278 (2012)に従って測定される、400μg/g未満、より好ましくは300μg/g未満、より好ましくは275μg/g未満、および殊に250μg/g未満のFog値を有する。
【0046】
さらに好ましい実施態様において、前記不織布は、コーティングされていない不織布であり、かつVDA 278に従って測定される、100μg/g未満、より好ましくは50μg/g未満、より好ましくは20μg/g未満、より好ましくは10μg/g未満、より好ましくは5μg/g未満のFog値を有する。
【0047】
前記不織布は、コーティングを有していてよい。この実施態様において、前記コーティングは、好ましくはバインダー、好ましくはアクリレート、有色顔料、増粘剤および/または防炎加工剤を有する。前記コーティング上に、さらに、仕上げ加工、例えば防汚および/または撥水仕上げ加工が適用されていてよい。
【0048】
本発明の好ましい実施態様において、前記不織布は、DIN 75200 (1980)に従い、100mm/min未満、より好ましくは80mm/min未満および殊に50mm/min未満の燃焼性を有する。極めて特に好ましくは、前記不織布は燃焼性ではない。
【0049】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記不織布は、DIN 75 201 (2011)(反射率測定による)に従う、50%超、より好ましくは60%超、より好ましくは70%超およびより好ましくは85%超および殊に90%超のフォギングを有する。
【0050】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記不織布は、DIN 75 201 (2011)(重量測定による)に従う、2mg未満、より好ましくは1mg未満、より好ましくは0.75mg未満および殊に0.5mg未満のフォギングを有する。
【0051】
前記エンボス加工不織布は、車両内部用のトランクカバーとしての使用に卓越して適している。このためには、前記不織布は好ましくは仕立てられる。通常の仕立て工程は、次のものを含む:例えばパンチング、超音波カッティング、レーザーカッティング、ウォータージェットカッティングおよびゼラチンカッティングによる裁断、例えば超音波溶接または熱溶接による溶接、例えばダブルロックステッチ、ダブルチェーンステッチによる縫製および/またはさらなる部材、例えば補強要素、トリムおよび/または持ち手との結合。
【0052】
本発明のさらなる実施態様は、車両用トランクカバーを製造するための本発明によるエンボス加工不織布の使用を含む。
【0053】
本発明のさらなる実施態様は、本発明による不織布を有する車両用トランクカバーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【実施例0055】
試験方法:
1.引張強さ
引張強さは、次のとおり測定される:
DIN 51220 (2003)およびDIN EN ISO 7500 (2018)に従う引張試験機および打抜きダイ260×50mmを使用する。
【0056】
試料調製:
存在している試験試料から、測定試料を、その物の幅全体に均一に広げて、たて方向およびよこ方向でそれぞれ縁から10cm離して打ち抜く。
【0057】
実施:
前記測定試料を、均一に、中央でおよび垂直にはさみ込み、その後、前記試験を、機械に特有の操作説明書に従って実施し、かつ所定の引張速度=200mm/minおよび0.5Nの初荷重で引き伸ばした。
【0058】
2.引裂伝播力
引裂伝播力を次のとおり測定する:
DIN 51220 (2003)およびDIN EN ISO 7500 (2018)に従う引張試験機および打抜きダイ75×50mmを使用する。
【0059】
試料調製:
存在している試験試料から、測定試料を、その物の幅全体に均一に広げて、たて方向およびよこ方向でそれぞれ縁から10cm離して打ち抜く。
【0060】
実施:
前記測定試料の切れ込みにより生じた2つの辺を、180°ずらして前記引張試験機のつかみ具へはさみ込み(つかみ間隔50mm)、かつ所定の引張速度=200mm/minで引き伸ばした。不織布はしばしばその切断方向で引裂伝播しないので、側面で裂ける測定試料も考慮すべきではない。
【0061】
3.VOC値の測定
その排出量を、VDA 278 (2012)に従って測定する。
【0062】
4.Fog値の測定
その排出量を、VDA 278 (2012)に従って測定する。
【0063】
5.フォギング挙動の測定
フォギングを、DIN 75201 (2011)に従って測定する。
【0064】
6.融点の測定
融点を、DIN ISO 11357-3 (2013)に従って測定する。その加熱速度は10K/minである。
【0065】
7.ヘアリネス指数iHの測定
ヘアリネス指数iHは、テキスタイルの表面を説明するのに利用される。この際に、テキスタイル本体から飛び出た繊維末端の数ならびに長さを測定し、かつそれに基づいて、前記テキスタイルの平滑性もしくはそのヘアリネス、すなわち、むしろ多少の飛び出た繊維末端を有するか否かを評価する値を与える。
【0066】
前記ヘアリネス指数の測定は、前記テキスタイルの側面図を提供するカメラを備えた顕微鏡を用いて行う。例示的な側面図は、
図1に示されている。サイズ100mm×14mmを有する測定試料について、前記測定試料の3つの異なるゾーン、左、中央および右での3つの異なる測定を実施する。前記テキスタイルの切抜きの幅は、10mmである。その撮影のために、120sの露光時間で、前記顕微鏡は2.25倍の倍率に設定される。
【0067】
前記テキスタイル断面のヘアリネスの定量化のために、0.082mmの間隔で配置されている水平線をラスターで前記画像上へ付ける。前記ラスターの1番目の線は、前記テキスタイル本体の表面線から0.082mmの間隔で始まる。テキスタイル本体として、内部でひとつながりのテキスタイル構造物が認識されうる面が定義される。合理的には、テキスタイル本体として、上から1番目の線を下回る面が定義され、その際に光学評価において繊維によってより多く覆われた面が繊維のない面として認識されうる。
【0068】
それに続いて、前記の飛び出た繊維と前記水平線との間に生じる交点を数える。そして、前記直線を下回る面に基づき、前記テキスタイルのヘアリネスについての表現を得るために、回帰直線を用意することが重要である。前記面積、すなわち測定された積分値が大きければ大きいほど、前記テキスタイルのヘアリネスはますます大きくなる。なぜなら、測定された積分値のより高い数値は、繊維末端でのより高い数および長さに依存するからである。線上で得られた交点の数から、(少なくとも)この線の長さ(すなわち0.082mmおよびその倍数)が繊維長さとして割り当てられる繊維の数が求められる。
【0069】
そして、回帰直線を得るために、前記繊維の長さ[単位:mm](y軸)および前記繊維の数[単位:個](x軸)を点図に示す。前記繊維の数[単位:個]は自然対数化されるので、回帰直線を書くことができる。
F
(ln(n))=lnF
n
F
(ln(n)) 繊維の数n[ln]
F
n 繊維の数n[個]
引き続き、線形回帰を実施し、その際に、直線方程式y=ax+bのパラメーターaおよびbは、データx
i=ln n
iおよびy
i=L
iにより算出することができる。
【数1】
【0070】
前記回帰直線を計算し、かつ前記図中へ書き込んだ後に、測定された積分値を計算する。測定された積分値の下限は、前記繊維数の最小値から得られ、これは測定の際に1の数である。この最小数が対数化される場合には、0の数値が得られ、これはまた前記積分値の下限を定義する。前記積分の上限は、前記回帰直線の零位置x
0に基づき求められ、すなわちX軸のその位置で前記直線は0のY値を得る。これは、次の式によって計算される:
【数2】
【0071】
そして、前記積分の限界も決定されたので、そして、前記回帰曲線の下方の面積は、次の式に基づいて求めることができる。
【数3】
【0072】
3つの測定ゾーンの積分値を平均し、かつヘアリネス指数iHを得る。付加的にその標準偏差が決定される。
【0073】
以下において、本発明は、実施例に基づいてより詳しく説明される。
【0074】
例1:本発明による不織布の製造
不織布1の製造に使用される材料
- ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバー:
単一成分PETステープルファイバー80質量%
ステープル長さ:38mm
繊度:3.3dTex
- ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバー:
二成分PET/ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバー(CoPETステープルファイバー)20質量%
180℃の融点を有する低融点CoPET
ステープル長さ:51mm
繊度:4.4dTex。
【0075】
前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーを、80%:20%の比で混合し、引き続きカーディングし、クロスレイイングし、ニードルパンチし、かつエンボシングカレンダーでレザーに似た模様を設け、同時に0.6mmの厚さにサイジングする。
【0076】
例2:前記不織布の多様な性質の評価およびPVCコーテッドファブリックとの比較
以下の表には、例1において製造された不織布(不織布1)の多様な関連する性質が示されており、かつPVCコーテッドファブリックのものと比較される。
【表1】
* 次の排出物が見出された:アセテート、ジ-t-ブチル-シクロヘキサジエンジオン、スルフェートエステル、イソアルケン混合物、イソアルケン、ステアリルアルコール、ジブチルフタレート、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、DOP。
** 次の排出物が見出された:過フッ素化アルコール、ブタノンオキシム、ホスホン酸エステル、ホスホネート、アルコール、ノナン酸、DOA、カンフェン、カレンまたはピネン、エチルステアレート、脂肪アルコール、脂肪酸、DOP、アルケン混合物、ジイソノニルフタレート、TMDD、炭化水素(KW)混合物等。
【0077】
本発明による不織布は、小さい厚さおよびそれにもかかわらず満足すべき機械的性質、殊に高い伸び率で製造することができ、それにより、小さい収納スペースの場合でも車両内部における使用に適していることが分かる。これは驚くべきことであった。なぜなら、殊にエンボス加工不織布の場合に、小さい厚さは通例、低い伸び率を伴い、このことは紙のような特性をもたらすからである。さらにまた、テキスタイル特性を有するかまたは有していない本発明による不織布を製造することができる。そのうえ、前記不織布は、特に均一な繊維分布を、良好な繊維結合およびこれによって良好な機械的性質と共に示す。
【0078】
最後に、本発明による不織布は、PVCよりも明らかに高い、2500Hzで測定される極めて高い吸音率を示す。
【0079】
例3:本発明による不織布2の製造
不織布2の製造に使用される材料
- ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバー:
単一成分PETステープルファイバー80質量%
ステープル長さ:38mm
繊度:1.7dTex
- ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバー:
二成分PET/ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバー(CoPETステープルファイバー)20質量%
180℃の融点を有する低融点CoPET
ステープル長さ:51mm
繊度:4.4dTex。
【0080】
前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記ポリエチレンテレフタレートバインダーステープルファイバーを、80%:20%の比で混合し、引き続きカーディングし、クロスレイイングし、ニードルパンチし、かつエンボシングカレンダーでレザーに似た模様を設け、同時に0.7mmの厚さにサイジングする。
【0081】
例4:単一成分ステープルファイバーを用いる2つの比較不織布の製造
比較不織布3および4の製造に使用される材料
- ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバー:
単一成分PETステープルファイバー80質量%
ステープル長さ:38mm
繊度:1.7dTex
単一成分ステープルファイバー:
20質量%(比較不織布3について)
10質量%(比較不織布4について)
170℃の融点を有する低融点CoPET
ステープル長さ:60mm
繊度:5.5dTex。
【0082】
前記ポリエチレンテレフタレート骨格ステープルファイバーおよび前記単一成分ステープルファイバーを、80%:20%の比で(比較不織布3について)および90%:10%の比で(比較不織布4について)混合し、引き続きカーディングし、クロスレイイングし、ニードルパンチし、かつエンボシングカレンダーでレザーに似た模様を設け、同時に0.7mmの厚さにサイジングする。
【0083】
例5:不織布2の多様な機械的性質の評価および比較不織布3および4との比較
【表2】
【0084】
本発明による不織布2が、比較不織布3および4よりも、引張強さ、伸び率および引裂伝播力に関して総じてより良好な機械的性質を有することが分かる。さらにまた、引張強さ、引裂伝播力および厚さについての変動係数はより小さい。比較不織布3および4に比べて、本発明による不織布の厚さのより小さい変動係数は、前記単一成分ステープルファイバーがより不均一に不織布中に分布しており、かつ前記不織布の表面に濃縮するより高い傾向を有することに起因されうることが推測される。これは、カレンダーへの部分的により強い付着をまねき、このことはまた、より不揃いな厚さをまねく。それに対して、前記芯/鞘ステープルファイバーは、極めて均質な分布を可能にする。その際に、単一成分バインダー繊維の特により高い量での使用の際にしばしば生じるような、殊に前記バインダー成分の「団塊化」を回避することができ、かつ前記厚さの高い均一性を達成することができる。最後に、本発明による不織布は、明らかにより低いヘアリネスを示す。