(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089748
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】変位検出装置および干渉計
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02 20220101AFI20220609BHJP
【FI】
G01B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111485
(22)【出願日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020201404
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】田宮 英明
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳代子
【テーマコード(参考)】
2F064
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064CC07
2F064EE05
2F064FF01
2F064FF03
2F064FF07
2F064GG13
2F064GG18
2F064GG22
2F064HH01
2F064HH05
(57)【要約】
【課題】光干渉計を用いる変位検出装置において干渉縞の変化を抑制し、高精度な変位計測を可能にする。
【解決手段】変位検出装置は、光源部からのビームを2分割する第1のPBSと、分割された第1と第2のビームを平行に出射し、その2つのビームをさらに2分割する第2のPBSと、第2のPBSに透過された側に配置された可動な第1の反射手段と、第2のPBSによって反射された側に配置され第1のビームと第2のビームとクロスさせて平行に出射させるビームクロス手段と、チルト可能な第2の反射手段と、第2の反射手段に対向配置される第3の反射手段と、第1のビームと第2のビームが再び第1のPBSによって重ね合わされ干渉信号として受光する光受光手段と、受光した干渉信号を変位情報に変換する変位検出手段と、第2の反射手段をチルトさせる可動部を有し、第1の反射手段のチルトの状態に追従して第2の反射手段のチルトを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と出射されたビームをコリメートするレンズを備えた光源部と、
前記光源部からのビームを2分割する第1のPBSと、
前記2分割された第1のビームと第2のビームとを平行に出射するビーム分割手段を備え、前記平行に出射された第1のビームと第2のビームをさらに2分割する第2のPBSと、
前記第2のPBSによって分割され、透過された第1のビーム側に配置された可動の第1の反射手段と、
前記第2のPBSによって反射された第2のビーム側に配置され、前記第1のビームと第2のビームとをクロスさせ第1のビームと第2のビームとを平行に出射させるビームクロス手段と、
チルト可能な第2の反射手段と、
前記第2のPBSに対し、前記第2の反射手段に対向して配置される第3の反射手段と、
前記第1のビームと前記第2のビームが再び前記第1のPBSによって重ね合わされ干渉信号として受光する光受光手段と、
前記受光した干渉信号を、変位情報に変換する変位検出手段と、
前記変位情報に基づき、前記第2の反射手段を所定の位置に維持するサーボ回路とサーボ―アンプと、
前記第2の反射手段をチルトさせる可動部と、
を備え、
前記第1の反射手段のチルトの状態に追従して前記第2の反射手段のチルトを制御する変位検出装置。
【請求項2】
XY平面上に配置した前記第1の反射手段のX軸方向を回転軸とする回転とY軸方向を回転軸とする回転の状態に合わせ、X軸方向を回転軸とする回転状態に追従して前記第2の反射手段を制御する第1の変位検出装置と、Y軸方向を回転軸とする回転状態に追従して前記第2の反射手段を制御する第2の変位検出装置の両方を備えた請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記第2のPBSと前記第1の反射手段と前記第2の反射手段が、他のマイケルソン干渉計のビーム分割手段及び反射手段と同一面を共有する、請求項1又は2に記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記第1のPBSによって分割された前記第1のビームと前記第2のビームの光路長は等しく、
前記光源は、可干渉性の低い光源からなる、請求項1~3のいずれかに記載の変位検出装置。
【請求項5】
前記光源は、可干渉性の低い光源からなり、
前記第1のPBSによって分割された前記第1のビームと前記第2のビームの光路長は、両ビームが干渉する程度の長さに設定されている、請求項1~3のいずれかに記載の変位検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの変位検出装置を構成する前記第2のPBS、前記第1の反射手段および前記第2の反射手段を備える干渉計であって、
前記第1の反射手段を同一面に有する第1のミラーと、
前記第2の反射手段を同一面に有する第2のミラーと、
前記第2のPBSを同一面に有するビームスプリッタと、
を備える、干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計のための変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイケルソン干渉計の原理を用いた計測においては、ビーム分割手段で分割された2つのビーム、つまり固定鏡に照射する参照光と、移動鏡に照射する物体光とを再びビーム分割手段で重ね合わせる。その際に、移動鏡の姿勢変化(ピッチングやヨーイング)による干渉縞の変化により、変位検出に誤差を発生させることがあった。それを抑制させるために、移動鏡の可動部に高精度なステージを使用するほか、移動鏡にコーナーキューブミラーを配置するなどの工夫がなされていた。しかし、これらの工夫は、移動鏡の機構を大きくし、小型軽量化とは相反するものとなっていた。
【0003】
これを解決するために、物体光側の移動鏡の姿勢変化に合わせて参照光側の固定鏡にわずかな姿勢変化を与え、誤差を相殺させる方法が考えられる。しかし、それをオートコリメータ等で行う場合、オートコリメータのドリフトの問題や角度分解能、検出速度が低いなどの問題があり、固定鏡にフィードバックをかけることは難しかった。
【0004】
また、同マイケルソン干渉計内に第2のビームを飛ばし、4分割の検出器でビームの強度をとらえ、その強度の変化から移動鏡の傾きを検出することで、固定鏡にフィードバックをかける方法も提案されている(特許文献1参照)。しかし、ビーム径と角度検出分解能がトレードオフになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物体光の移動鏡をコンパクトかつ軽量化した構成で、移動鏡のチルトに高速かつ安定して追従するように、参照光の固定鏡を高速でチルトさせ、干渉縞の変化を抑制し、高精度な変位計測を可能にすることが望まれる。それがフィゾー干渉計であれば、干渉面内の干渉縞の変化を安定させ、形状計測の精度を上げられるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の変位検出装置は、光源と出射されたビームをコリメートするレンズを備えた光源部と、光源部からのビームを2分割する第1のPBSと、この2分割された第1と第2のビームを平行に出射するビーム分割手段を備え、平行に出射された第1と第2の2つの平行のビームをさらに2分割する第2のPBSと、第2のPBSによって分割された透過された第1のビーム側に配置する可動可能な第1の反射手段と、第2のPBSによって反射された第2のビーム側に配置する第1のビームと第2のビームとクロスさせ第1のビームと第2のビームと平行に出射させるビームクロス手段と、チルト可能な第2の反射手段と、第2のPBSに対し、第2の反射手段に対向して配置される第3の反射手段と、第1のビームと第2のビームが再び第1のPBSによって重ね合わされ干渉信号として受光する光受光手段と、受光した干渉信号を、変位情報に変換する変位検出手段と、変位情報に基づき、任意の変位量を維持するサーボ回路とサーボ―アンプと、第2の反射手段をチルトさせる可動部を有し、第1の反射手段のチルトの状態に追従して第2の反射手段のチルトを制御する構成を取る。なお、ここでいう「第1と第2のビームの平行」は、変位検出ができる程度に両ビームが並んで直進するものであればその「平行」の概念に含まれるとしてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光干渉計を用いる変位検出装置において干渉縞の変化を抑制でき、高精度な変位計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る変位検出装置の構成を表す図である。
【
図6】第2実施形態に係る変位検出装置の構成を表す図である。
【
図7】第2実施形態に係る変位検出装置の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る変位検出装置の構成を表す図である。
図2は、光源部の具体例を表す図である。
図1に示すように、光源部1は、その光源にレーザを用いることを前提にするが、可干渉性の低いマルチモードレーザやスーパールミネッセンスダイオード、LED等でもよい。
図2に示すように、光源部1は、光源2およびレンズ3を含む。光源2から出射したビームは、レンズ3を経ることでコリメート光にすることが望ましい。
【0011】
図1に戻り、光源部1から出射されたビームは、「第1のPBS(Polarizing Beam Splitter)」であるPBS1によって、2つのビームL1とL2に分割される。ビームL1とL2は、互いに平行に進むビームとして出射され、「第2のPBS(Polarizing Beam Splitter)」であるPBS3に入射される。PBS3は、ビームL1とL2のそれぞれの光路を分割する。
【0012】
ここでビームL1の光路について説明する。PBS1を経たビームL1は、その偏光状態がP波成分であるため、PBS3を透過し、位相板11に入射される。ここで位相板11としては、λ/4位相板を想定する。ビームL1の偏光状態は、位相板11を通過することでP波成分から円偏光になり、移動可能な「第1の反射手段」であるミラー21によって垂直に戻される。ミラー21は、PBS3を透過するビームL1の透過先に配置され、可動部32により変位可能とされている。
【0013】
このビームL1は、ミラー21により反射された後に再び位相板11を通過することで、S波成分の偏光になる。S波成分になったビームL1は、PBS3によって反射され、「第3の反射手段」であるミラー付位相板23によってPBS3に戻される。ミラー付位相板23は、PBS3に対して後述するミラー22とは反対側に配置されている。このミラー付位相板23としては、λ/4位相板にミラーが付けられたものを想定する。S波成分だったビームL1は、ミラー付位相板23を経ることでP波成分になるため、PBS3の再入射で透過する。
【0014】
透過したビームL1は、ビームクロス手段30によって平行にオフセットさせたビームとして出射され位相板13に入射される。ビームクロス手段30は、例えば4枚の板ミラー(後述の第1~第4ミラー)により構成できる。位相板13としては、λ/4位相板を想定しており、ビームL1はP波成分から円偏光になる。このビームL1は、「第2の反射手段」であるミラー22によって垂直に反射され、再び位相板13を通過することで、S波成分となる。S波成分となったビームL1は、PBS3によって反射され、PBS1に再び入射される。
【0015】
次にビームL2の光路について説明する。PBS1を経たビームL2の偏光状態は、S波成分であるため、PBS3で反射し、ビームクロス手段30によって平行にオフセットさせたビームとして出射され位相板14に入射される。ビームクロス手段30は、PBS3に反射されるビームL2の反射先に配置されている。このとき、ビームL1の光路とビームL2の光路は、クロスし、互いにZ方向に入れ替わった平行なビームとして出射されるようにビームクロス手段30のミラーが構成される。
【0016】
すなわち、ビームクロス手段30は、第1ビーム反射手段301および第2ビーム反射手段302を備える。第1ビーム反射手段301は、L字状の板金に第1ミラー311を構成する反射面(第1反射面)と、第2ミラー312を構成する反射面(第2反射面)を設けて構成される。第2ビーム反射手段302は、L字状の板金に第3ミラー313を構成する反射面(第3反射面)と、第4ミラー314を構成する反射面(第4反射面)を設けて構成される。各反射面は、板金の表面にアルミニウムなどの合金を蒸着するなどして得られる。
【0017】
第1ミラー311は、PBS3からのビームL1(第1光)を反射し、第2ビーム反射手段302に向けて光を伝搬させる。第4ミラー314は、その光を位相板13ひいてはミラー22に向けて伝搬させる。第4ミラー314は、また、ミラー22で反射されて戻ってきた光を反射し、第1ビーム反射手段301に向けて光を伝搬させる。第1ミラー311は、その光を反射し、PBS3に向けて伝搬させる。
【0018】
第3ミラー313は、PBS3からのビームL2(第2光)を反射し、第1ビーム反射手段301に向けて光を伝搬させる。第2ミラー312は、その光を反射し、位相板14ひいてはミラー22に向けて伝搬させる。第2ミラー312は、また、ミラー22で反射されて戻ってきた光を反射し、第2ビーム反射手段302に向けて光を伝搬させる。第3ミラー313は、その光を反射し、PBS3に向けて伝搬させる。
【0019】
位相板14としては、λ/4位相板を想定する。S波成分であるビームL2は、円偏光となり、ミラー22によって垂直に反射され、再び位相板14を通過することで、P波成分となる。P波成分となったビームL2は、PBS3を透過し、ミラー付位相板24で垂直に反射されることで、S波成分となる。このミラー付位相板24の構成は、ミラー付位相板23と同じでよい。S波成分となったビームL2は、PBS3により反射され、位相板12に入射される。この位相板12としては、λ/4位相板を想定しており、ビームL2は、S波成分から円偏光になり、ミラー21によって反射された再び位相板12を通過することで、P波成分になりPBS3を透過し、PBS1によってビームL1と重ねあわされる。
【0020】
この光路において、ビームL1とL2の光路長は、極めて等しくなるよう、ミラー付位相板23もしくはミラー付位相板24で調整されることが望ましい。本実施形態では、ミラー付位相板23を固定した状態でミラー付位相板24を動かし、ビームL1の光路長とビームL2の光路長との関係を適切に調整する。ビームL1とL2の光路長は、両ビームが干渉する程度の長さに設定されている。
【0021】
また、ミラー21がZ方向に大きく動いたとしても、ビームL1の光路長とビームL2の光路長は、常に一定に保たれている。これによって、可干渉性の低い光源が使用できるだけではなく、光源の温度変化による波長変化や、大気の気圧変化、湿度変化などの影響をキャンセルし、常に安定したミラーの変位計測が可能となる。さらに光源に安価な半導体レーザやLED等の利用も可能となる。
【0022】
本実施形態の変位検出装置は、PBS3からPBS1へ戻ってきたビームL1とL2の干渉光を受光する受光手段4、その干渉光に基づく信号(干渉信号)に基づいてミラー21の変位を検出する変位検出手段6、ミラー21の変位に基づいてミラー22を駆動するためのサーボ回路8およびサーボアンプ10を備える。
【0023】
図3は、光受光手段の具体例を表す図である。
ビームL1とL2は、PBS1にて重ねあわされた後に受光手段4に入射されるが、一方がP波成分であり他方がS波成分であるため、干渉は起こらない。そこで、
図3に示すように無偏光ビームスプリッタBS400によって2つに分配させ、その一方を反射させ、もう一方を透過させる。このとき、反射させた一方のビームについて、PBS410を45°回転させることで、S波成分とP波成分の45°方向の干渉成分を取り出す。受光素子43と受光素子44は、干渉光を受光するが、互いに明暗が反転した干渉光を受光し、光電変換する。
【0024】
一方、無偏光ビームスプリッタBS400によって透過したもう一方のビームは、位相板25を通過することによって、ビームL1とL2の位相状態によって、回転する直線偏光となり、PBS420に入射され、受光素子41、受光素子42によって干渉光が光電変換される。このとき、受光素子41と受光素子42は、互いに明暗が反転した干渉光を受光し、かつ受光素子43と受光素子44で受光される干渉光の位相に対し、90°ずらすようにPBS420の回転が微調整される。これによって干渉信号の位相は、受光素子41が0°の場合、受光素子42が180°、受光素子43が90°、受光素子44が270°となる。
【0025】
次に変位検出手段6の仕組みを説明する。
図4は、変位検出手段6の具体例を表す図である。
受光素子41と受光素子42は、差動増幅器45によってDCキャンセルされる。これにより干渉強度の増減による電気信号のDCオフセットがキャンセルされる。同様に受光素子43と受光素子44も差動増幅器46によってDCキャンセルされる。つまり差動増幅器45と差動増幅器46の出力は、互いに90°位相差があるため、干渉信号は、SINとCOSの正弦波として検出できるため、位相の進行の向きが判別できる。次に各々の干渉信号は、A/D変換器47とA/D変換器48によりデジタル変換され、波形補正処理回路49でSINとCOSのそれぞれの振幅やオフセットのずれを補正し、インクリメンタル信号発生器50で内挿され変位情報として出力される。
【0026】
この変位情報は、可動部32が正確にZ方向に平行移動する分には、ビームL1とL2の光路長差が生じないため変位として検出されない。しかし、実際はわずかにY軸方向を回転軸とする回転がミラー21に加わると、ビームL1とL2の光路長に差を生じる。光源の波長をλとした場合、ミラー21がビームL1とL2の入射位置で、ΔZだけ傾いてしまうと、ビームL1とL2の光路長差は、2ΔZになる。つまり干渉信号は、2ΔZ/λで検出されることになる。
【0027】
例えば、λ=655nmである場合、ΔZは、327.5nmの干渉周期の変位量をして計測でき、これをインクリメンタル信号発生器41で65000分割程度に内挿することで、5pmの分解能の非常に細かな変位情報となる。これは互いに平行に進むビームL1とL2の間隔が、わずか5mmだったとしても、角度換算で0.0002秒の分解能でミラー21の傾きを検出していることになる。
【0028】
この変位情報が常に一定値になるよう、サーボ回路8とサーボアンプ10によって可動部31を動かし、ミラー22の角度を制御する。すなわち、ミラー21のチルトの状態に追従してミラー22のチルトを制御する。それにより、ミラー21の傾き変化を相殺するミラー22の傾き制御が高分解能で可能になる。
【0029】
この可動部31の変位量はごくわずかでよく、ピエゾ素子等を用いて構成してもよい。本実施形態では、可動部32によるミラー21の移動量が1m程度であるのに対し、可動部31によるミラー22の移動量は5mm程度である。すなわち、ミラー21の移動量をミラー22の移動量よりも大きくできる。可動部32は、磁石とコイルを用いたアクチュエータ等により構成してもよい。
【0030】
図5は、第2の反射手段の動作を表す図である。
本実施形態では、ミラー22に支点15(固定部)を設けてその位置を固定することで、可動部31の駆動によりミラー22(第2の反射手段)をチルトさせることができる。例えば、
図5に示すようにミラー22をビームL1とL2の入射位置でΔXだけ傾けることで、ビームL1とL2の光路長差を2ΔX変化させることができる。なお、本実施形態では、支点15と可動部31との位置関係からミラー22を片持ち状に支持する構成を例示しているが、ミラー22の支持形態は片持ち状に限定されない。
【0031】
例えば、PBS3と同一面にビームスプリッタBS(ビーム分割手段)を構成し、ミラー21を物体光のミラーとし、ミラー22を参照光のミラーとして、他の干渉計(マイケルソン干渉計やフィゾー干渉計等)と併用する場合、本発明の変位検出装置によってミラー22を制御することで、常に安定した干渉光の波面が得られることになる。
【0032】
その場合、
図1に示したように、ビームスプリッタBSが設けられる基板の一部の領域にPBS3を設けてよい。すなわち、その基板にPBS3を蒸着などにより積層することができる。PBS3の面積(長さ)は、ビームスプリッタBSのそれよりも小さい。この積層構造において、変位検出装置のビームL1とL2は、PBS3の領域(「PBS領域」ともいう)を透過するか又はそのPBS領域にて反射される。干渉計の物体光および参照光は、PBS領域外のビームスプリッタBSの領域(「BS領域」ともいう)を透過するか又はそのBS領域にて反射される。
【0033】
[第2実施形態]
図6および
図7は、第2実施形態に係る変位検出装置の構成を表す図である。
図1に示した第1実施形態では、「第1の反射手段」であるミラー21が、Y軸方向を回転軸とする回転をした場合に、ミラー22にY軸方向を回転軸とする回転を与え光軸の角度のずれを相殺させたが、実際は、X方向を回転軸とする回転も加わることは、十分に考えられる。
【0034】
そこで、
図6および
図7に示す第2実施形態では、第1の反射手段(ミラー21)のX軸方向を回転軸とする回転とY軸方向を回転軸とする回転の状態に合わせ、Y軸方向を回転軸とする回転状態に追従して第2の反射手段を制御する第1の変位検出装置と、X軸方向を回転軸とするチルト状態に追従して第2の反射手段を制御する第2の変位検出装置の両方を備えることを特徴とした構成を取る。
【0035】
つまり、第1の変位検出装置と第2の変位検出装置は、チルトを考慮する回転軸が互いにZ軸に対し直交しており、4本のビームL1、L2、L3、L4が平行になるようPBS1とPBS2から出射される。ビームL3とL4の光路については、原理がビームL1とL2の光路と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0036】
第1の変位検出装置は、第1実施形態の変位検出装置と同様の構成を有する。第2の変位検出装置は、光源部201、受光手段204、ミラー付位相板25、ミラー付位相板26を備える。第2の変位検出装置は、また、位相板11に対応する位相板211、位相板12に対応する位相板212、位相板13に対応する位相板213、および位相板14に対応する位相板214を備える。また、本実施形態の変位検出装置は、さらにビームクロス手段230、変位検出手段206、サーボ回路208、サーボアンプ210を備える。
【0037】
ビームクロス手段230の部分は、ビームL1とL2がXZ平面上でクロスし入れ替わり、ビームL3とL4がYX平面上で、クロスし入れ替わり、平行に出射するようなミラーの構成となっている。ビームクロス手段230は、第1ビームクロス手段および第2ビームクロス手段を有してよい。第1ビームクロス手段は、第1実施形態のビームクロス手段30と同様の構成を有してよい。第2ビームクロス手段は、第1ビームクロス手段とは配置角度が異なるものの、ビームクロス手段30と同様の構成を有してよい。
【0038】
また第1の変位検出装置と同様に第2の変位検出装置のビームL3とL4の光路長は極めて等しくなるよう、ミラー付位相板25もしくはミラー付位相板26で調整されることが望ましい。ミラー22には可動部33が追加され、ミラー22のZ軸方向を回転軸とする回転の制御を加えることで、ミラー21のX方向を回転軸とする回転を相殺できる。
【0039】
なお、マイケルソン干渉計やフィゾー干渉計等の光干渉計(干渉分析装置)に、第1実施形態又は第2実施形態の変位検出装置を備え付けてもよい。この干渉計は、第1の反射手段を同一面に有する第1のミラーと、第2の反射手段を同一面に有する第2のミラーと、第2のPBSを同一面に有するビームスプリッタと、を備える。
【0040】
具体的に
図1を参照しつつ説明すると、この干渉計は、光源部1とは別の光源部と、「第1のミラー」としてのミラー21と、「第2のミラー」としてのミラー22と、ビームスプリッタBSと、光検出装置とを備える。この干渉計において、光源部から出射された光は、ビームスプリッタBSを透過する物体光と、ビームスプリッタBSにて反射する参照光に分かれる。物体光は、ミラー21に配置された計測対象にて反射してビームスプリッタBSに戻る。参照光は、ミラー22にて反射してビームスプリッタBSに戻る。これら物体光と参照光とがビームスプリッタBSにて合波(重畳)され、その干渉光が光検出装置により検出される。この干渉計において、ミラー21はオブジェクトアームを構成し、ミラー22はリファレンスアームを構成する。
【0041】
すなわち、このような干渉計では、変位検出装置によって第1のミラーのチルトの影響を抑制した状態で干渉光による計測が可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 光源部、2 光源、3 レンズ、4 受光手段、6 変位検出手段、8 サーボ回路、10 サーボアンプ、11 位相板、12 位相板、13 位相板、14 位相板、15 支点、21 ミラー、22 ミラー、23 ミラー付位相板、24 ミラー付位相板、25 位相板、25 ミラー付位相板、26 ミラー付位相板、30 ビームクロス手段、31 可動部、32 可動部、33 可動部、41 受光素子、42 受光素子、43 受光素子、44 受光素子、45 差動増幅器、46 差動増幅器、201 光源部、204 受光手段、206 変位検出手段、208 サーボ回路、210 サーボアンプ、211 位相板、212 位相板、213 位相板、214 位相板、230 ビームクロス手段、301 第1ビーム反射手段、302 第2ビーム反射手段、311 第1ミラー、312 第2ミラー、313 第3ミラー、314 第4ミラー、BS ビームスプリッタ、L1 ビーム、L2 ビーム、L3 ビーム、L4 ビーム。