(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008975
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】女性の骨盤機能障害の治療及び予防のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/42 20060101AFI20220106BHJP
A61M 29/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B17/42
A61M29/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165978
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2018521198の分割
【原出願日】2016-07-11
(31)【優先権主張番号】62/190,995
(32)【優先日】2015-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512095233
【氏名又は名称】マテルナ・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュラヴィック、マーク
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160HH20
4C267CC25
4C267GG03
4C267GG22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨盤機能障害の治療及び予防のためのシステムを提供する。
【解決手段】腟拡張デバイス100は、ハンドル部106とシャフト部109とを含む。シャフト部は、折り畳まれた形態から拡張形態に拡張するように構成される。シャフト部は、遠位先端領域と、スパイン領域と、遠位先端領域をスパイン領域に接続する遠位アーム領域とを含み得る。遠位アーム領域は、略円錐形状であってもよく、遠位先端領域からスパイン領域への直径が徐々に増加するように構成され得る。使用方法も提供される。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた形態から拡張形態へ拡張するように適合された膣拡張デバイスであって、
ハンドル部と、
遠位先端部と、
前記ハンドル部から前記遠位先端部まで遠位に延在するシャフト部とを含み、
前記シャフト部は、
前記ハンドル部から遠位に延在し、互いに平行に配置された複数のスパインを含むスパイン領域であって、前記スパイン領域は、略管状の形状であり、かつ前記シャフト部が前記折り畳まれた形態から前記拡張形態へ拡張するにつれて、直径が拡大するように構成された、該スパイン領域と、
前記スパイン領域から、前記膣拡張デバイスの前記遠位先端部まで遠位に延在し、前記膣拡張デバイスの前記遠位先端部を前記複数のスパインの各々の先端部へ接続する複数の遠位アームを含む遠位アーム領域であって、前記拡張形態において、前記遠位アーム領域は、略円錐形状であり、かつ前記遠位先端部から前記スパイン領域へ前記シャフト部に沿って徐々に増大する直径を提供するように構成された、該遠位アーム領域とを含み、
前記膣拡張デバイスの前記遠位先端部は、前記折り畳まれた形態及び前記拡張形態の両方において一定の直径外径を維持することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記スパイン領域の直径を測定するように構成された直径センサを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、
前記スパイン領域の前記直径を、前記デバイスのユーザに表示するように構成された直径ゲージを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記シャフト部の長さに沿って前記ハンドル部の中へ延在する中心ロッドを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、
前記中心ロッドに連結されたモータを更に含み、
前記モータの作動によって、前記シャフト部は、前記折り畳まれた形態から前記拡張形態へ拡張することを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイスであって、
第1ハブと第2ハブとを更に含み、
前記第1ハブは、前記モータに対して固定され、
前記第2ハブは、前記モータが作動して前記スパイン領域と前記遠位アーム領域とを拡張するときに、前記中心ロッドに沿って移動するように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスであって、
前記第1ハブを前記複数のスパインに接続する複数のアームと、
前記第2ハブを前記複数のスパインに接続する複数のアームとを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記折り畳まれた形態における前記スパイン領域の直径が、1.5cm未満であることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記拡張形態における前記スパイン領域の直径が、2~4cmであることを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記ハンドル部に配置された拡張ボタンを更に含み、
前記拡張ボタンは、前記デバイスのユーザによって作動させられたときに、前記スパイン領域の直径が段階的に増加するように構成されることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスであって、
前記直径は、前記拡張ボタンが作動する度に1mmずつ段階的に増加することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項10に記載のデバイスであって、
前記直径は、前記拡張ボタンが作動する度に1cm未満ずつ段階的に増加することを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記シャフト部の中に配置された振動要素を更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
折り畳まれた形態から拡張形態へ拡張するように適合された膣拡張デバイスであって、
ハンドル部と、
遠位先端部と、
前記ハンドル部内に配置されたモータと、
前記モータに連結され、前記ハンドル部から前記遠位先端部に向かって遠位に延在する中心ロッドと、
前記中心ロッドが通過するように構成され、かつ前記モータに対して固定された第1ハブと、
前記中心ロッドが通過するように構成され、かつ前記モータが作動したときに前記中心ロッドに沿って移動するように構成された第2ハブと、
前記第1ハブを複数のスパインに接続する複数の第1アームと、
前記第2ハブを複数の前記スパインに接続する複数の第2アームと、
前記膣拡張デバイスの前記遠位先端部を複数の前記スパインの各々の先端部に接続する複数の遠位アームとを含み、
前記モータの作動により、前記第2ハブは前記中心ロッドに沿って移動し、これにより前記中心ロッドに対する前記複数の第1アーム及び前記複数の第2アームの角度は増加し、これにより複数の前記スパインは、前記中心ロッドから径方向に離れて互いに実質的に平行のままになり、
前記膣拡張デバイスの前記遠位先端部は、前記折り畳まれた形態及び前記拡張形態の両方において一定の直径外径を維持し、
前記拡張形態において、前記遠位先端部と前記スパインの各々の先端部との間の前記複数の遠位アームが延在する領域は、略円錐形状であり、かつ前記遠位先端部から前記スパインの各々の先端部に向かって徐々に増大する直径を提供することを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のデバイスであって、
前記折り畳まれた形態における前記スパインの領域の直径が、1.5cm未満であることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項14に記載のデバイスであって、
前記拡張形態における前記スパインの領域の直径が、2~4cmであることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項14に記載のデバイスであって、
複数の前記スパインの直径は、ユーザによって段階的に調節可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項14に記載のデバイスであって、
前記スパインの領域の直径を測定するように構成された直径センサを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項18に記載のデバイスであって、
前記スパインの領域の前記直径を、前記デバイスのユーザに表示するように構成された直径ゲージを更に含むことを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項14~19のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記遠位先端部付近に配置された振動要素を更に含むことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年7月10日出願の米国仮出願第62/190,995号を基礎とする優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書において言及された特許、及び特許出願を含むすべての刊行物は、個々の刊行物それぞれが具体的かつ個別的に、参照によって組み込まれると示されているのと同様に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
デバイス及び方法は、一般的に、出産のための組織の準備に関連して説明される。デバイス及び方法は、一般的に、骨盤痛を患う患者を治療するために説明される。より具体的には、これらのデバイスは、骨盤痛の治療を受けている患者に拡張物理療法を提供することを目的としている。
【背景技術】
【0004】
慢性骨盤痛をもたらすいくつかの症状が存在する。1つの例は、腟痙(Vaginismus)と呼ばれる状態である。この状態は、骨盤筋が慢性的に収縮する物理的、及び/または生理学的状態であり、一定の痛み及び不快感をもたらし得る。この状態は、膣を取り囲む骨盤底筋の収縮によって、性交中の膣の無意識の緊張を引き起こす可能性がある。腟痙は痛みを伴い、それにより、性的挿入及びタンポンの挿入を含む、膣への侵入に関与する女性の能力に影響を及ぼす。緊張過度の骨盤筋収縮を最終的にもたらす骨盤痛を引き起こす可能性のある、いくつかの他の主要な状態が存在する。
【0005】
毎年、約数十万人の女性が米国での骨盤痛の治療を求めると推定されている。現在の膣の治療は、骨盤筋を引き伸ばして筋肉を弛緩させるための、サイズの増加する膣拡張器の使用を伴う。これらの膣拡張器キットは、一般的には、様々なサイズのいくつかの拡張器、一般的には5~8個の別々の拡張器を含む。ユーザは、膣内に拡張器を挿入し、一般的には最小直径の拡張器で始まり、各挿入に慣れると、より大きい直径の拡張器へ徐々に拡張する。現在、平均的な患者は、最大の目標直径に慣れる前に、6ヶ月以上にわたって拡張器を使用している。適切な運動と組み合わされた膣拡張器は、女性がこれらの不随意の筋肉収縮を克服することを助けてきた。しかし、従来の拡張器セットは、使用及び保管が煩わしく、かつ扱いにくく、異なるサイズの拡張器を必要としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
折り畳まれた形態から拡張形態へ拡張するように適合された膣拡張デバイスであって、ハンドル部と、ハンドル部から遠位先端まで遠位に延在するシャフト部とを含み、ハンドル部は、シャフト部の遠位先端に配置され、かつ折り畳まれた形態及び拡張形態の両方において一定の直径プロファイルを維持するように構成された遠位先端領域と、シャフト部の近位端から遠位に延在し、略管状の形状であり、かつシャフト部が折り畳まれた形態から拡張形態に拡張するときに直径が拡張するように構成されたスパイン領域と、遠位先端領域をスパイン領域に接続し、略円錐形状であり、かつ遠位先端領域からスパイン領域へのシャフト部に沿って徐々に増大する直径を提供するように構成された遠位アーム領域とを含む。
【0007】
一実施形態では、デバイスは、スパイン領域の直径を測定するように構成された直径センサを含む。別の実施形態では、デバイスは、スパイン領域の直径をデバイスのユーザに表示するように構成された直径ゲージを更に含む。
【0008】
一実施形態では、デバイスは、シャフト部の長さに沿ってハンドルの中へ延在する中心ロッドを含む。デバイスは、中心ロッドに連結されたモータを更に含み、モータの作動によって、前記シャフト部は、前記折り畳まれた形態から前記拡張形態へ拡張する。
【0009】
いくつかの実施形態では、デバイスは、第1ハブと第2ハブとを含み、第1ハブは、モータに対して固定され、第2ハブは、モータが作動してスパイン領域と遠位アーム領域とを拡張するときに、中心ロッドに沿って移動するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、スパイン領域は、互いに平行に配置された複数のスパインを含む。別の実施形態では、遠位アーム領域は、遠位先端部を複数のスパインに接続する複数の遠位アームを含む。
【0011】
一実施形態では、デバイスは、第1ハブを複数のスパインに接続する複数のアームと、第2ハブを複数のスパインに接続する複数のアームとを更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、折り畳まれた形態におけるスパイン領域の直径は、1.5cm未満である。他の実施形態では、拡張形態におけるスパイン領域の直径は、約2~4cmである。
【0013】
一実施形態では、デバイスは、ハンドル部に配置された拡張ボタンを含み、拡張ボタンは、デバイスのユーザによって作動されられたときに、スパイン領域の直径が漸増的に増加するように構成される。いくつのかの実施形態では、直径は、拡張ボタンが作動する度に1mmずつ漸増的に増加する。他の実施形態では、直径は、拡張ボタンが作動する度に1cm未満ずつ漸増的に増加する。
【0014】
別の実施形態では、デバイスは、シャフト部の中に配置された振動要素を更に含む。
【0015】
折り畳まれた形態から拡張形態へ拡張するように適合された膣拡張デバイスが提供され、膣拡張デバイスは、ハンドル部と、ハンドル部内に配置されたモータと、モータに連結されてハンドル部から遠位先端部に向かって遠位に延在する中心ロッドと、中心ロッドが通過するように構成され、モータに対して固定された第1ハブと、中心ロッドが通過するように構成され、モータが作動するときに中心ロッドに沿って移動するよう構成された第2ハブと、第1ハブを複数のスパインに接続する複数の第1アームと、第2ハブを複数のスパインに接続する複数の第2アームと、遠位先端部を複数のスパインに接続する複数の遠位アームとを含み、前記モータの作動によって第2ハブは中心ロッドに沿って移動し、これにより中心ロッドに対する複数の第1アーム及び複数の第2アームの角度が増加し、これにより複数のスパインは、中心ロッドから径方向に離れて互いに実質的に平行のままになる。
【0016】
一実施形態では、折り畳まれた形態における複数のスパインの直径は、1.5cm未満である。別の実施形態では、拡張形態における複数のスパインの直径は、約2~4cmである。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数のスパインの直径は、ユーザによって漸増的に調節可能である。
【0018】
一実施形態では、デバイスは、スパイン領域の直径を測定するように構成された直径センサを更に含む。デバイスは、スパイン領域の直径をデバイスのユーザに表示するように構成された直径ゲージを更に含む。
【0019】
別の実施形態では、デバイスは、遠位先端部付近に配置された振動要素を更に含む。
【0020】
女性の膣を拡張する方法は、女性の膣内に膣拡張デバイスを挿入するステップと、膣拡張デバイスの拡張機構で膣拡張デバイスを漸増的に拡張することにより、女性の膣を拡張させて治療するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】膣拡張デバイスの一実施形態を示す図の1つである。
【
図1B】膣拡張デバイスの一実施形態を示す図の1つである。
【
図1C】膣拡張デバイスの一実施形態を示す図の1つである。
【
図2A】膣拡張デバイスを覆うシースの一実施形態を示す図の1つである。
【
図2B】膣拡張デバイスを覆うシースの一実施形態を示す図の1つである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載のデバイス及び方法は、膣組織を準備及び拡張して骨盤底の筋肉を引き伸ばし、骨盤筋を弛緩させることを意図している。本明細書に記載のデバイス及び方法は、女性の膣痙、または骨盤筋の不随意の緊張すなわち収縮を引き起こす物理的及び/または生理学的状態を克服するために使用され得る。本明細書に記載のデバイスの拡張は、ユーザによって手動で、または自動拡張機構によって制御され得る。本明細書に記載のデバイスは、力及び/または直径センサ、振動機能、及びデバイスの使用量を追跡するためのデータログ機能を含む、更なる特徴を含んでいてもよい。
【0023】
本明細書に記載のデバイスは、膣痙を治療するよう構成された拡張可能な膣拡張器を含み得る。拡張可能な膣拡張器は、膣痙を治療するために一般的に使用される様々なサイズの拡張器のセットに取って代わる単一のデバイスである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のデバイスは、直径が増大する拡張部を有するシャフト部と、拡張可能部分が拡張されている間に一定の外形を維持し、拡張しない先端部とを含む。
【0024】
本明細書に記載のデバイスは、使用の容易さを高める特徴を含み、その特徴には、デバイスを密閉し、容易にクリーニング可能である拡張可能なカバーと、デバイスのバッテリを充電すべく構成された充電ドックまたはケースとが含まれる。
【0025】
図1Aは、閉じた、すなわちコンパクトな形態における膣拡張デバイス100の断面図を示す。膣拡張デバイス100は特に、中心ロッド101と、スパイン102と、アーム104と、ハンドルすなわちフレーム106と、遠位アーム107と、遠位先端部108と、シャフト部109と、モータ110と、電子コントローラ111とを含む。シャフト部は一般に、中央ロッド、スパイン、遠位アーム、及び遠位先端部(例えば、ハンドルすなわちフレームに対して遠位のデバイスの部分)に沿って延在するデバイスの部分を含む。モータ110は、中心ロッド101に連結され、スパイン102及びアーム104を中心ロッドから径方向外側に拡張するように構成される。モータ110は、回転モータであってもよい。いくつかの実施形態では、中心ロッド101は、モータ110に直接接続され、他の実施形態では、中心ロッド101は、別個の連結デバイスを介してモータに機械的に連結され得る。例えば、
図1Aにおいて、中心ロッド101の近位端は、モータの回転シャフトに連結された連結デバイスに曲げ込まれていてもよい。いずれのアプローチにおいても、モータの完全な1回転が中心ロッド101の完全な1回転を生じさせる。デバイスへの電力は、ハンドル内のバッテリを介して、または電源コンセントに直接プラグで接続することによって供給することができる。
【0026】
図1Bは、
図1Aの膣拡張デバイス100の断面図を示すが、拡張形態である。ここで、スパイン102及びアーム104は、デバイスの中心ロッド191から径方向外側に拡張されていることがわかる。スパインは、互いに、及び中心ロッド101と略平行に拡張することもわかる。遠位アーム107はまた、中心ロッド101からわずかに外側に拡張し、遠位先端部108と拡張したスパイン102との間に剛性の傾斜を提供する。
【0027】
図1Aは、閉じた、すなわちコンパクトな形態における膣拡張デバイス100を示す。デバイスが
図1Aの閉じた形態にあるとき、スパイン102は、デバイスの外径を減少するようにして、各隣接するスパインの近くか、または各隣接するスパインに当接して留まるように構成され得る。いくつかの実施形態では、デバイスの直径(例えば、対向するスパイン間の距離)は、約1.5cmであり得る。他の実施形態では、スパインは、閉じた形態において隣接するスパインに当接して留まらないが、これによりスパインの最小外径がより大きくなるか、あるいは、より小さな表面積を有する個々のスパイン102が、組織の拡張中に患者へ不快感をもたらす可能性がある。
【0028】
図1Bは、開いた、すなわち拡張した形態における膣拡張デバイス100を示す。拡張形態では、スパインは、互いに平行に拡張し、かつ中心ロッドに平行に最大の拡張直径まで拡張する。いくつかの実施形態では、この最大の拡張直径(例えば、対向するスパイン間の距離)は、約4cmである。この拡張形態では、遠位先端部108におけるデバイスの直径は、一定のままである。一実施形態では、遠位先端部の直径は1.5cmであり、閉じた、すなわちコンパクトな形態におけるデバイスの直径と同一であり得る。遠位アームは、デバイスが拡張形態にあるとき、遠位先端部とスパインとの間に傾斜すなわち勾配を提供する。したがって、遠位アームが遠位先端部と接触する場所におけるデバイスの直径は、遠位先端部の直径と同じであり、遠位アームがスパインと接触する場所におけるデバイスの直径は、対向するスパイン間の距離と同じである。
【0029】
図1Bに示すように、デバイスが拡張形態まで拡張するにつれて、デバイスのスパイン102及びアーム104は、中心ロッドから径方向外側に移動し、それによりスパインは互いから離れる。いくつかの実施形態では、デバイスの最大直径は、拡張した、すなわち開いた形態での直径において約4cmであり得る。
図1A~
図1Cからわかるように、遠位先端部は、閉じた形態及び拡張形態の間で一定の外形すなわち直径を維持する。すなわち、シャフト部の遠位先端部の形状/外形、及び/または直径は、デバイスが拡張されるときに変化しない。更に、遠位アームは、遠位先端部と拡張スパインとの間に勾配すなわち傾斜を提供する。
【0030】
図1Cは、膣拡張デバイス100の斜視図であり、デバイスが閉じた形態から拡張形態にどのように拡張するかを更に示す。上述のように、膣拡張デバイス100は、中心ロッド101と、スパイン102と、アーム104と、ハンドルすなわちフレーム106と、遠位アーム107と、遠位先端部108と、中心ロッドを回転させてアーム及びスパインを拡張するモータ(図示せず)とを含み得る。
図1Cはまた、デバイスの拡張及び収縮を制御するために使用可能な第1ボタン116及び第2ボタン118を示す。直径ゲージ120は、デバイスの直径(例えば、対向するスパイン間の距離)を表示する。振動ボタン122は、デバイスの振動機能を作動させるために使用され得る。一実施形態では、デバイスは、遠位先端部108の上または近くに配置された振動要素123を含む。
【0031】
直径ゲージ120は、直径センサなどの、デバイス上またはデバイス内の1以上のセンサに連結され得る。一実施形態では、直径センサは、シャフトの回転運動すなわち回転を、デバイスのシャフト部の直径を決定するために、コントローラに使用されるアナログまたはデジタルコードに変換するロータリエンコーダである。
図1Cの実施形態では、直径ゲージ120は、ハンドルすなわちフレーム106上に配置されるが、デバイス上の任意の位置に、またはディスプレイモニタなどのデバイスから離れた位置にさえ、配置され得る。いくつかの実施形態では、直径ゲージは、デバイスのシャフト部の直径を示すように構成され得る。ユーザは、その後、ゲージを参照して組織拡張の正確な量を知ることができる。直径ゲージ120は、単純なバイナリ読み出しを含むことができ、またはデバイスの実際の直径を示すスケールを有することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、デバイスのシャフト部の直径は、デバイスのコントローラによって記録され、保存され得る。この情報は、後に拡張の履歴と経過を明らかにするために再検討され得る。直径を記録することにより、得られた正確な直径、拡張間のタイミングなどをユーザが追跡することが可能になる。
【0033】
図1Cは、第1ハブである近位ハブ112及び第2ハブである中間ハブ114を更に示す。アーム104はそれぞれ、ピンを介してスパイン102に接続された一端と、中心ロッドに沿ったそれらの位置に応じて近位ハブまたは中間ハブのいずれかに接続された他端とを有することができる。近位ハブは、モータに対して固定されてもよく、フレーム106すなわちハンドルの遠位端に直接取り付けることができる。中間ハブの内部は、中心ロッド101の対応するねじ山に係合するようにねじ止めすることができる。モータが拡張方向に操作されると、中心ロッドが回転し、中央ハブの内側のねじ山に係合して中間ハブを近位ハブの方へ引き寄せる。中間ハブが近位ハブの方に引き寄せられると、中心ロッドに対するアームの角度が増大する。中間ハブが近位に移動するにつれてアームが「立ち上がる」ことにより、スパインはデバイスの中心ロッドから離れて持ち上がる。スパインの長さに沿って、一定の間隔をおいてスパインごとに複数のアームのセットが存在するため、スパイン102は、互いに平行、かつ中心ロッドにも平行のままである。遠位アーム107は、スパイン102を遠位先端部108に接続する。デバイスが拡張するにつれて、遠位アーム107と中心ロッドとの間の角度もまた拡大する。遠位アームは、剛性材料を含み、遠位先端部108とスパインとの間に勾配すなわち傾斜を提供する。
【0034】
図1A~
図1Cに示すように、膣拡張デバイスが折り畳まれたり、部分的に拡張されたり、または完全に拡張されたりする場合、デバイスのシャフト部は、1)遠位先端領域、2)スパイン領域、及び3)遠位アーム領域、の3つの別個のゾーンすなわち領域を含む。これらの領域はそれぞれ、異なる直径の外形を含み、腟痙の治療中に特有の目的を果たす。
【0035】
遠位先端領域は、遠位先端部108によって画定されるシャフト部に沿った長さを含む。遠位先端領域は、デバイスが折り畳まれているか、部分的に拡張しているか、または完全に拡張しているかに関わらず、一定の直径外形を維持する。デバイスが最小直径(折り畳まれた)形態、または完全な/部分的な拡張形態にあるかどうかに関わらず、遠位先端領域は、治療中にデバイスを膣内に挿入することを助ける幅の狭い一定の先端外形を提供する。
【0036】
スパイン領域は、スパイン102によって画定されるシャフト部に沿った長さと、デバイスの最大領域とを含む。上述のように、スパインは、互いに、及び中心ロッド101に実質的に平行に拡張する。スパイン領域(ハンドル付近)の近位端における直径は、スパイン領域(スパインが遠位アーム107と接合する場所付近)の遠位端における直径と実質的に同じである。上述のように、直径ゲージ120は、スパイン領域におけるデバイスの直径(例えば、対向するスパイン間の距離)を表示する。したがって、スパイン領域は、略管状の形状であり、所望の直径にしたがってユーザによって定義される円形の拡張可能な直径外形を提供する。膣拡張デバイスのスパイン領域は、膣管に拡張療法を提供し、ユーザが、膣の治療のために上述のような増大した直径に徐々に慣れることを可能にする。
【0037】
最後に、遠位アーム領域は、遠位アーム107によって画定されたシャフト部に沿った長さを含み、遠位先端部108とスパイン102との間に存在する。膣拡張デバイスが折り畳まれた状態にあるとき、遠位アームは、デバイス内で平らになることができ、中心ロッドに平行であり(
図1Aに見られるように)、デバイスが拡張するにつれて、遠位アームは徐々に「勾配が上昇」して、遠位先端部とスパインとの間に角度を有する支持を形成する。遠位アーム領域は、略円錐形状であり、遠位先端部108の直径(遠位アームの遠位端で)から対向するスパインの間の直径(遠位アームの近位端で)まで勾配が上昇するような円形の直径外形を提供する。遠位先端部からスパインへの遠位アームに沿った直径の漸増により、患者が快適に感じるため、治療中にユーザがデバイスを容易に操作し、再挿入することを可能にする。
【0038】
図1A~
図1Cの実施形態では、膣拡張デバイス100は、4つのスパイン102と、合計16本のアームである4組の4つのアーム104とを含む。
図1Cからわかるように、2組のアームが近位ハブをスパインに接続し、2組のアームが中間ハブを各スパインに接続する。他の実施形態では、任意の数のスパイン及びアームが使用され得る。例えば、一実施形態は、わずか2~3組のスパイン及びアームを含み、他の実施形態は、5、6、7、または8組以上のスパイン及びアームなどの、4組以上のスパイン及びアームを含み得る。スパイン及びアームのセットは、デバイスの中心ロッドのまわりに対称または非対称に配置され得る。
【0039】
スパイン102及び遠位アーム107に接触する組織は、すべての拡張直径を通して安定性を維持するように設計され得る。スパイン、遠位アーム、及びアームは、ステンレススチール、アルミニウム、硬質成型プラスチックなどの剛性材料を含み得る。スパイン及び遠位アームは、非常に適合性の高い生体適合性エラストマ材料でオーバーモールドされ、力を組織に均一に分散させ、かつ外傷を防ぐのに役立つことができる。
【0040】
図1A~
図1Cを更に参照すると、膣拡張デバイス100は、デバイス内のモータに結合されて、デバイスのスパイン及びアームを手動または自動で広げ、拡張し、収縮するように構成された電子コントローラ111を含み得る。電子コントローラは、プリント回路基板(PCB)であってもよく、デバイスのハンドルすなわちフレーム106の内部に配置されていてもよい。デバイスの拡張及び収縮は、入力デバイスであるモータ110を操作すること(例えば、第1ボタン116及び第2ボタン118を押すこと)により、ユーザによって手動または自動のいずれかで制御され得る。いくつかの実施形態では、デバイスの拡張は、ボタンを操作することによって漸増的に制御可能である。例えば、
図1Cを参照すると、第1ボタン116を使用して第2ボタン118の直径を増加させ、デバイスの直径を減少させることができる。いくつかの実施形態では、デバイスの直径は、漸増的(例えば、ボタンを押すごとに1mm漸増)に調整することができる。
【0041】
本明細書に記載されるほとんどの実施形態は、鋏様のアセンブリとしてアームを示しているが、スパインを拡張するための他の方法及びデバイスが使用され得ることを理解されたい。例えば、アームは、スパインに取り付けられた特異なアーム(例えば、膣鏡に類似している)であってもよい。
【0042】
膣拡張デバイス100は、膣の約3分の1、すなわち10~12cmを貫通し、膣入口を約1.5cmの安静直径から約4cmの拡張直径まで徐々に拡張させるようなサイズ、形状、及び構成であってもよい。いくつかの実施形態では、膣拡張デバイスのシャフト部は、デバイスが解剖学的構造にどのくらいまで挿入されているかを見るためのガイドマーカーを含み得る。膣拡張デバイス100は、
図1Aに示すようなコンパクトな閉じた形態から、
図1Bに示すような拡張形態に拡張するように構成することができる。デバイスが閉じた形態にあるとき、スパインは、隣接した各スパインに対してシームレスに閉じることにより、立体形状(例えば、円形、楕円形など)を形成することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、膣拡張デバイスの電子コントローラは、デバイスの使用頻度と、デバイスが拡張する量及び持続時間とに関する情報を追跡し、記憶することができる。膣拡張デバイスは、このデータを収集し、ユーザがデバイスをどのように使用しているかのレポートを提供することができ、特定のユーザのための最適な治療プロトコルを決定するために、ユーザ、すなわち医師によって更に使用され得る。
【0044】
図2A及び
図2Bは、保護シース124で覆われた膣拡張デバイス100の一実施形態を示し、保護シース124は、拡張可能な無菌バリアを生成して感染を防止し、体液からデバイスの可動部を保護する。保護シースは、ラテックス、シリコンなどの弾性材料であってもよい。いくつかの実施形態では、シースはまた、デバイスの中及び周囲に折り畳まれ、デバイスが拡張されるときに広げられる非弾性材料から製造されていてもよい。
図2Aは、閉じた、すなわちコンパクトな形態における膣拡張デバイスを示し、
図2Bは、拡張形態における膣拡張デバイスを示す。
【0045】
次に、膣拡張デバイスの使用方法を説明する。膣拡張デバイスは、患者の膣内に挿入可能である。デバイスは、デバイスの直径を測定するためのセンサを含む。挿入後、ユーザはデバイスを拡張することができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、デバイスを段階的に(例えば、ボタンを押すごとに1mm、ボタンを押すごとに10mm、ボタンを押すごとに0.5cm、ボタンを押すごとに1cmなど)拡張することによってデバイスの拡張を制御することができる。いくつかの実施形態では、拡張の漸増は、1mmから1cmの間の任意の漸増であるように、ユーザによってカスタマイズされてもよい。デバイスが膣内で拡張されると、デバイスの直径ゲージは、デバイスの直径(例えば、対向するスパイン間の距離)を表示して、膣組織がどれくらい拡張したかを示すことができる。デバイスは、患者によって頻繁に使用され、骨盤筋を引き伸ばし、弛緩させて膣痙を治療する。
【0046】
本発明の膣拡張デバイスは、膣管内へ既に挿入されている際に、ユーザがデバイスを拡張することを有利に可能にし、従来の拡張器キットの拡張器サイズ間の直径の威圧的かつ痛みを伴う大きな増加を回避する。ユーザは、自らの制御下で、快適に感じるように、小さな漸増でデバイスを拡張することができ、制御を徐々に行うと同時に、デバイスをより大きな直径により迅速に拡張することによって、治療をより迅速に進めることに繋がる可能性がある。
【0047】
ユーザが直径に慣れると、膣管内、並びに解剖学的構造の中及び外でデバイスを操作することもできる。解剖学的構造内でのデバイスのこの操作により、ユーザは、デバイスのサイズにより慣れることが可能になる。操作後、デバイスの直径の増大にユーザがより慣れることもできる。遠位先端部とスパインとの間で「勾配が上昇」する遠位アームにより、患者が快適に感じるように、ユーザがデバイスを容易に出し、再挿入することができる。更に、直径の読み取りは、治療経過の明確なフィードバックと、治療のための非常に明確な目標とを患者に提供する。
【0048】
治療に対するすべての女性の体及び組織の反応が異なるため、これらの値は単に説明的なものであることを理解されたい。しかし一般に、膣組織を拡張する方法は、膣拡張デバイスを膣に挿入するステップと、膣拡張デバイスによって膣に適用される力を測定するステップすなわちデバイスの直径を測定するステップと、膣を膣拡張デバイスで拡張するステップとを含み得る。いくつかの実施形態では、デバイスは、最適な治療プログラムで予めプログラム可能であり、このデバイスは、ユーザの特定の膣痙を治療するために、力または直径に基づいて患者のために自動的に拡張される。他の実施形態では、ユーザは、自らの最適な拡張プログラムを手動で決定することができる。
【0049】
本発明に関連する更なる詳細について、関連分野の当業者のレベル内で材料及び製造技術を用いてもよい。一般的または論理的に使用される更なる行為の観点から、本発明の方法に基づく態様に関しても同様である。また、記載された本発明の変形形態の任意の特徴は、単独で、または本明細書に記載の1以上の特徴と組み合わせて明らかにされ、特許請求される。同様に、単一のアイテムへの言及は、複数の同一のアイテムが存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「及び(and)」、「前記(said)」及び「その(the)」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、任意の要素を排除するように起草されてもよいことに更に留意されたい。したがって、この記述は、クレーム要素の列挙、または「否定的」制限の使用に関連して、「単独の(solely)」、「唯一の(only)」などの排他的用語を使用するための先行詞として役立つことを意図している。本明細書において他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本発明の範囲は、本明細書によって限定されるものではなく、使用されるクレーム用語の明白な意味によってのみ限定される。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。