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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022089751
(43)【公開日】2022-06-16
(54)【発明の名称】樹脂部材及び空気調和機の室内機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20220609BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B29C45/37
F24F1/0007 401B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125800
(22)【出願日】2021-07-30
(62)【分割の表示】P 2020202277の分割
【原出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 恵理
(72)【発明者】
【氏名】阿武 広希
【テーマコード(参考)】
3L051
4F202
【Fターム(参考)】
3L051BJ10
4F202AB11
4F202AB25
4F202AF07
4F202AG05
4F202AR07
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CK12
(57)【要約】
【課題】ヒケが目立ちにくい樹脂部材及び空気調和機の室内機を得る。
【解決手段】空気調和機の室内機に用いられる樹脂部材は、樹脂材料で形成された基材部と、基材部の一方の面に並んで形成され、所定の方向に延伸する複数の凹部と、を有し、複数の凹部の幅がランダムになっている。隣接する凹部同士の境界には突出部が形成されており、断面視における突出部の先端は曲線形状となっていることが好ましい。また、断面視において、凹部は曲線形状となっていることが好ましく、楕円形の弧の形状となっていることがより好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で形成された基材部と、
前記基材部の一方の面に並んで形成され、所定の方向に延伸する複数の凹部と、
を有し、
複数の前記凹部の幅は、ランダムになっている
樹脂部材。
【請求項2】
隣接する前記凹部同士の境界には突出部が形成されており、
断面視における前記突出部の先端は曲線形状となっている
請求項1に記載の樹脂部材。
【請求項3】
断面視において、前記凹部は、曲線形状となっている
請求項1又は2に記載の樹脂部材。
【請求項4】
断面視における前記凹部の曲線形状は、楕円形の弧の形状となっている
請求項3に記載の樹脂部材。
【請求項5】
複数の前記凹部は、互いに同じ深さを有している
請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項6】
前記凹部は、前記凹部の延伸方向の端部に向かって深さが徐々に浅くなる形状となっており、
複数の前記凹部の端部の位置は、ランダムになっている
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項7】
複数の前記凹部のうち、前記凹部の延伸方向の最も外側まで延伸する凹部の端部と、最も内側に位置する凹部の端部との位置が、1.5mm以上離れている
請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項8】
前記凹部の幅は、3.0mm以上6.0mm以下である
請求項1から7のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項9】
前記樹脂材料は、フィラーを含み、
前記フィラーの明度と前記樹脂材料の明度との差が3以上である
請求項1から8のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項10】
前記フィラーは、円盤状であり、
前記フィラーの大きさは、0.1mm以上0.5mm以下である
請求項9に記載の樹脂部材。
【請求項11】
前記フィラーは、繊維状であり、
前記フィラーの長さは、0.1mm以上0.6mm以下である
請求項9に記載の樹脂部材。
【請求項12】
前記フィラーは、前記樹脂材料に対して1.8質量%以上2.0質量%以下混合されている
請求項9から11のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項13】
前記凹部が形成された前記基材部の表面にシボが形成されており、
前記シボは、平面視で石目模様、梨地模様、砂目模様又は砂地模様である
請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂部材。
【請求項14】
前記シボの深さは、10μm以上200μm以下である
請求項13に記載の樹脂部材。
【請求項15】
熱交換器を収容する構造体と、
前記構造体に取り付けられて前方から前記構造体を覆うフロントパネルである請求項1から14のいずれか1項に記載の樹脂部材と、
を有する空気調和機の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、室内に配置する電化製品等の外装に用いられる樹脂部材及び空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内に配置する電化製品は、樹脂により形成された樹脂パネル等の樹脂部材により覆われている。このような樹脂部材では、樹脂材料の色や樹脂材料に混合される混合材料等により、所望の質感や色彩が表現されている。電化製品は、居住空間において電化製品の占める割合が大きく、樹脂パネルの色・柄及び形状によって居住者への印象が大きく変化する。また、近年、電化製品は、機能性のみでなくインテリアの一部として高いデザイン性が求められている。このため、例えば金属調を有する加飾シートを樹脂成形品の表面に積層させた加飾樹脂成形品を電化製品の外装として利用することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-199341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電化製品に用いられる樹脂部材は、樹脂部材の表面が滑らかな平坦形状であるほど樹脂部材の射出成形時に生じるヒケが目立ちやすく、電化製品の美観が損なわれるという問題が生じる。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、ヒケが目立ちにくい樹脂部材及び空気調和機の室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る樹脂部材は、樹脂材料で形成された基材部と、基材部の一方の面に並んで形成され、所定の方向に延伸する複数の凹部と、を有し、複数の凹部の幅は、ランダムになっていることを特徴とする。
また、本開示の一態様に係る空気調和機の室内機は、熱交換器を収容する構造体と、構造体に取り付けられて前方から構造体を覆うフロントパネルである上述した樹脂部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、ヒケが目立ちにくい樹脂部材及び空気調和機の室内機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の一構成例を示す外観斜視図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の基材部の断面形状の一構成例を説明するための断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の基材部の断面形状の一構成例を説明するための断面図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材に対して照明から光が当たった場合に樹脂部材に生じる陰影の一例を示す模式図である。
図5A】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の凹部の断面形状を示す模式図である。
図5B】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の凹部の断面形状を示す模式図である。
図5C】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の凹部の断面形状を示す模式図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る樹脂部材の凹部の端部の位置の一構成例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
1.第一実施形態
以下、第一実施形態に係る樹脂部材について、図1から図6を用いて説明する。本実施形態では、壁掛け型の空気調和機(エアーコンディショナー、以下エアコンと称する)の室内機100の正面に取り付けられる矩形状の樹脂パネル(フロントパネルの一例)である樹脂部材について説明する。
【0010】
(1.1)樹脂部材の全体構成
図1は、本実施形態に係る樹脂部材1と、樹脂部材が取り付けられたエアコンの室内機100の全体構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す樹脂部材1のA-A断面を示す断面図である。図3は、図1に示す樹脂部材1のB-B断面を示す断面図である。図1から図3に示すように、樹脂部材1は、基材部12と、基材部12の表面(一方の面の一例)に並んで形成され、所定の方向に延伸する複数の凹部11Bを有しており、複数の凹部11Bの幅がランダムになっている。また、樹脂部材1は、表面(凹部11Bが形成された基材部12の表面)に、後述するシボが形成されていてもよい。
以下、樹脂部材1について詳細に説明する。
【0011】
(凹部)
図2に示すように、凹部11Bは、樹脂材料で形成された基材部12の一方の面に並んで形成されている。隣接する凹部11B同士の境界には、突出部11Aが形成されている。凹部11Bが並ぶ方向における基材部12の断面視において、突出部11Aの先端は曲線形状となっている。また、凹部11Bが並ぶ方向における基材部12の断面視において、凹部11Bの曲線形状は、楕円形の弧の形状(より詳細には弧の一部の形状)となっていることが好ましい。
【0012】
凹部11Bの幅はランダムになっている。ここで、「凹部の幅がランダム」とは、凹部11Bが並ぶ方向(樹脂部材1の表面において凹部11Bの延伸方向と垂直な方向)において凹部11Bの幅の順番に規則性がないことをいう。例えば、凹部11Bが樹脂部材1の左右方向に延びて設けられている場合、樹脂部材1の上下方向に順に見て凹部11Bの幅の順番に規則性がない場合に、凹部11Bの幅がランダムになっているという。具体的には、凹部11Bの幅が複数種類(例えば3種類以上)の幅から選択されたいずれかの幅であれば良い。また、凹部11Bの幅が特定の幅のいずれかに限定されず、凹部11Bが任意の幅でランダムに並んでいてもよい。
【0013】
凹部11Bの幅は、例えば0.2mm以上0.3mm以下の範囲の幅差を有する複数種類(例えば3種類以上)の幅から選択されたいずれかの幅であることが好ましい。また、凹部11Bの幅は、1.8mm以上6.5mm以下の範囲内であることが好ましく、3.0mm以上6.0mm以下の範囲内であることがより好ましい。このような凹部11Bがランダムに並んで配置されることにより、ヒケが形成されていた場合であっても突出部11Aにより形成された陰影によって居住者等によってヒケが視認されにくくなる。
【0014】
ここで、一般的な樹脂部材においては、表面の平滑性が高いほどヒケが目立ちやすく、また、表面の光沢性が高いほどヒケが目立ちやすくなる。また、樹脂部材の色が単色である場合、樹脂部材の色が複数色である場合と比較してヒケが目立ちやすくなる。
本実施形態に係る樹脂部材1では、凹部11Bが設けられることで表面の平滑性が低下してヒケが目立ちにくくなる。また、樹脂部材1では、凹部11Bが設けられることで陰影が生じ、樹脂部材1を単色で形成しても複数色で形成したようにヒケが目立ちにくくなる。さらに、凹部11Bが基材部12の一方の面にランダムに並んで形成されることで、凹部11Bによって生じる陰影にグラデーションが生じたり、いわゆる偏心度効果が生じたりするため、よりヒケが目立ちにくくなる。
【0015】
次に、例えば樹脂部材1を室内の壁面に掛けられる壁掛けエアコン用樹脂パネルとして用いた際、室内の天井面に設けられた照明20から光が当たった場合に樹脂部材1の表面に生じる陰影について検討する。本実施形態の樹脂部材1は突出部11Aの先端が断面視で曲線形状となっていることにより、樹脂部材1の表面(具体的には突出部11Aの表面)に生じる陰影の濃さが徐々に変化して、自然で柔らかい印象の陰影となる。例えば比較例(不図示)として、突出部の先端が断面視で角状に(すなわち先端が尖った形状に)形成されている場合には、突出部11Aを境にして陰影の濃さが急激に変化してしまい、陰影の境界がはっきりとしてしまう。また、突出部11Aの先端で反射した反射光が拡散しにくく、線状の反射光(いわゆるハイライトライン)が形成される。この場合、基材部にヒケが形成されていると、陰影のラインが歪んだり、ハイライトラインが歪んだりしてヒケが見えやすくなる。一方、突出部11Aの先端を曲線上にすることにより、突出部11Aの表面で陰影の濃さが徐々に変化するため、陰影のラインの歪みが認識しにくくなる。また、突出部11Aの先端を曲線上にすることにより、反射光が拡散しやすくなり、ハイライトラインが不鮮明になり、ハイライトラインの歪みも視認しにくくなる。このようにして、ヒケが目立ちにくくなる。
【0016】
また、凹部11Bが並んで形成され、凹部11B同士の間に突出部11Aが形成されることにより、樹脂部材1の表面(具体的には凹部11Bの表面)に図4で示すような陰影が生じる。例えば図4は、エアコン用樹脂パネルとして用いた樹脂部材1に対して照明20から光が当たった場合に樹脂部材1に生じる陰影の一例を示す模式図であり、照明20が樹脂部材1の上方にある場合の一例である。図4に示すように、照明20の方向から当たる光が突出部11Aによって遮られ、樹脂部材1の表面にグラデーション状の陰影が生じる。
照明21が樹脂部材1の上部に位置する場合、突出部11Aの下部に位置する凹部11Bの第一領域22Aには、濃く、かつ上下方向に短い距離で変化するグラデーションの陰影が生じる。
また、第一領域22Aよりも下部に位置する凹部11Bの第二領域22Bには、第一領域22Aと比較して薄く、かつ上下方向になだらかに変化するグラデーションの陰影が生じる。これは、第二領域22Bは、第一領域22Aと比較して光が遮られにくい領域であるためである。
さらに、第二領域22Bよりも下部に位置する凹部11Bの第三領域22Cには、光が当たって陰影がほとんど生じない。これは、第三領域22Cが突出部11Aによって光がほとんど遮られない領域であるためである。
【0017】
このような、複数の凹部11Bがランダムな幅で形成された構成は、複数の凹部11Bの形状をそれぞれ変化させることにより形成される。例えば、図5A及び図5Bは、凹部11Bが互いに異なる長径及び短径を有する楕円の弧の一部で形成された場合の模式図であり、図5Cは、凹部11Bが図5A及び図5Bに示す楕円の長径及び短径より十分に大きい直径を有する正円の弧の一部で形成された場合の模式図である。これにより、図2に示すように、凹部11Bの幅の異なる樹脂部材1が得られる。図5Aから図5Cは、1つの凹部11Bの模式的な形状を示すものであり、凹部11Bが並んで形成された場合の形状は図5Aから図5Cで示す形状とは異なる場合がある。
【0018】
また、複数の凹部11Bは、互いに同じ深さdを有していることが好ましい。複数の凹部11Bの深さdを一定としつつ、凹部11Bの形状を、径の異なる正円又は楕円の弧の形状とすることにより、凹部11Bの幅、すなわち凹部11Bの幅が曲率に応じた異なる間隔となる。ここで、「径の異なる」とは、正円においては直径(又は半径)、楕円おいては短径又は長径をいう。断面視における凹部11Bの曲線形状が楕円の弧の形状である場合、突出部11Aに近づくほど凹部11Bの曲率は大きくなる。このため、凹部11Bの陰影がより強調され、樹脂部材1の表面に形成される陰影の濃さが位置によって変化する。このため、樹脂部材1の表面に光が反射する際に、ヒケにより光の反射に変化が生じても、その変化が目立ちにくく、かつ清潔感が高い樹脂部材1が得られる。
【0019】
凹部11Bの深さdは、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.25mm以上であることがより好ましい。凹部11Bの深さdが0.1mm以上である場合、陰影が生じやすくなりヒケが目立ちにくくなる。また、凹部11Bの深さが0.3mm以下であることにより、凹部11Bに汚れが付着しにくく、また汚れが付着しても拭き取りが容易となるため、樹脂部材1から得られる清潔感が向上する。ここで、凹部11Bの「深さd」とは、突出部11Aの頂部の位置を基準とした場合の凹部11Bの底部までの距離をいう。
【0020】
凹部11Bは、凹部11Bの延伸方向の端部Eに向かって深さが徐々に浅くなる(深さが0に近づく)形状となっていることが好ましい。これにより、樹脂部材1には、位置によって異なるサイズ、形状の陰影が生じる。このとき、図3に示すように、凹部11Bの延伸方向の断面視における凹部11Bの端部E側に位置し、深さが徐々に浅くなる底面の所定位置Pにおける傾きは、図6に示すように端部Eの位置が異なる凹部11Bごとに異なっていてもよい。これにより、より異なるサイズ、形状の陰影ができやすくなり、ヒケがさらに目立ちにくくなる。ここで、凹部11Bの「延伸方向」は、樹脂部材1を用いる電化製品の寸法や設置位置、又は単に電化製品のデザインとして適宜設定可能である。凹部11Bの「延伸方向」は、例えば横長の矩形状である壁掛け型のエアコン用樹脂パネルである樹脂部材1においては左右方向(設置時の水平方向)であることが好ましい。また、樹脂部材1が縦長形状の電化製品に用いられる樹脂パネルである場合、凹部11Bの「延伸方向」は上下方向(設置時の鉛直方向)であることが好ましい。
【0021】
図6は、樹脂部材1の右側端部を拡大して示す拡大斜視図である。図6に示すように、複数の凹部11Bの延伸方向の端部Eの位置は、ランダムになっていることがより好ましい。ここで、凹部11Bの「端部」とは、凹部11Bの延伸方向の断面視において、凹部11Bの深さが0になる部分(すなわち樹脂部材1表面と凹部11Bの深さが一致し、凹凸がなくなる部分)である。図1及び図6に示すように、樹脂部材1が壁掛け型のエアコン用樹脂パネルであり、凹部11Bが左右方向に延びて設けられている場合、樹脂部材1の左右の端部領域に位置する凹部11Bの終端部分が凹部11Bの端部Eとなる。ここで、図6では、3つの凹部11Bの端部E(E1,E2,E3)の位置を一例として示している。
【0022】
また、「端部の位置がランダム」とは、複数の凹部11Bの端部E(E1,E2,E3等)が、樹脂部材1の表面において凹部11Bの延伸方向の異なる位置で終端していることをいう。
複数の凹部11Bの端部E(E1,E2,E3等)は、樹脂部材1の表面において凹部11Bの延伸方向と交差する方向に伸びる直線上に並んでいないことが好ましい。例えば、図6に示すように、凹部11Bが左右方向に延びて設けられている場合、複数の凹部11Bの端部E(E1,E2,E3等)の全てが凹部11Bの延伸方向の異なる位置で終端していることが好ましいが、複数の凹部11Bの一部が延伸方向の同じ位置で終端していてもよい。この場合、端部Eが延伸方向の同じ位置で終端している凹部11B同士は隣接して形成されていないことが好ましい。複数の凹部11Bの端部Eの位置がランダムであれば、陰影の端部の位置もランダムとなり、ヒケが目立ちにくくなるためである。
【0023】
ここで、端部Eがランダムとなるように配置された複数の凹部11Bのうち、延伸方向の最も外側まで延伸する凹部11Bの端部E1と、最も内側に位置する凹部11Bの端部E3との位置が、凹部11Bの延伸方向において1.5mm以上離れていることが好ましい。すなわち、図65に示す、凹部11Bの延伸方向における端部E1と端部E3との間の距離LEが1.5mm以上であることが好ましい。これにより、陰影の端部位置がランダムであることを認識しやすくなり、よりヒケが目立ちにくくなる。
なお、凹部11Bの延伸方向の長さは、樹脂部材1のサイズによって適宜選択されれば良い。
【0024】
上述した凹部11Bの端部Eの位置や凹部11Bの幅、凹部11Bの深さ等は、空気調和機の室内機100の樹脂パネルとして用いる場合に適した値であり、電化製品ごとに好適な数値を設定すれば良い。
所望の陰影を生じさせるために、例えば樹脂部材1がA4サイズ(縦210mm、横297mm)の樹脂パネルである場合、凹部11Bの幅が5.0mmから6.0mmの範囲で0.25mm幅(例えば、5.0mm、5.25mm,5.5mm、5.75mm、6.0mm)の5種類に設定されることが好ましい。凹部11Bは、上述した5種類の幅からランダムに選択されて順に並べて配置されることが好ましい。
【0025】
また、例えば樹脂部材1がエアコン用の樹脂パネル(例えば横700mm以上)である場合、凹部11Bの幅が3.0mmから3.75mmの範囲で0.25mm幅(例えば、3.0mm、3.25mm、3.5mm及び3.75mm)の4種類に設定されることが好ましい。凹部11Bは、上述した4種類の幅からランダムに選択されて順に並べて配置されることが好ましい。
このように、凹部11Bは、樹脂部材1のサイズによって最も適した幅で形成されていれば良い。
空気調和機の室内機100は、筐体のサイズが比較的大きく、かつ部屋の高い位置に配置される。上述した凹部11Bの寸法は、このような条件で用いるエアコン用の樹脂パネルにおいて特に好適である。
【0026】
上述した凹部11Bは、樹脂部材1の表面の一部のみに設けられていてもよく、全面に設けられていてもよい。また、基材部12の一部が湾曲して表面に曲面を有する場合、すなわち樹脂部材1が曲面を有する場合、凹部11Bは、少なくとも曲面の領域(図1中点線で示す領域C参照)にも設けられていることが好ましい。
【0027】
なお、樹脂部材1の表面の一部には、凹部11Bが形成されず、表面が平坦な平坦領域FAが設けられていてもよい。凹部11Bが形成された領域と比較して、平坦領域FAでは汚れが付着しにくく、また汚れの拭き取りが容易である。このため、樹脂部材1に人が触れる可能性のある家電製品では、このような平坦領域FAが設けられることが好ましい。
【0028】
例えば、樹脂部材1がエアコン用の樹脂パネルである場合、居住者等は樹脂部材1に触れて樹脂部材1を開閉し、エアコン内部に取り付けられたフィルター等の部品の取り外しを行う場合がある。このため、樹脂部材1がエアコン用の樹脂パネルである場合には、例えば居住者等の手が触れる位置に平坦領域が設けられることが好ましい。
【0029】
平坦領域FAは、例えば樹脂部材1における凹部11Bの延伸方向の端部の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。樹脂部材1が左右方向に延伸した凹部11Bを有するエアコン用の樹脂パネルである場合、平坦領域FAが樹脂部材1の左右の端部の少なくとも一方、すなわち左右の端部領域に設けられていることが好ましい。また、この場合、平坦領域FAは樹脂部材1の左右の端部の下方に設けられている場合、居住者等の手が届きやすいためより好ましい。
一方、例えば樹脂部材1が上下方向に延伸した凹部11Bを有する縦型エアコン用の樹脂パネルである場合、平坦領域FAは樹脂部材1の上下の端部に設けられていてもよい。
【0030】
また、平坦領域FAは、樹脂部材1における凹部11Bの延伸方向と垂直な方向の端部の少なくとも一方に設けられていても良い。樹脂部材1が左右方向に延伸した凹部11Bを有するエアコン用の樹脂パネルである場合、平坦領域FAが樹脂部材1の延伸方向である左右方向と垂直な上下方向の端部の少なくとも一方、すなわち樹脂部材1の上下の端部領域に設けられていてもよい。また、この場合、平坦領域FAは樹脂部材1の下端部に設けられている場合、居住者等の手が届きやすいためより好ましい。
【0031】
(シボ)
シボは、凹部11Bが設けられた基材部12(樹脂部材1)の表面の少なくとも一部に設けられており、突出部11A及び凹部11Bが設けられた樹脂部材1の表面全面に設けられることが好ましい。さらに、シボは、樹脂部材1の表面において、突出部11A及び凹部11Bが設けられた領域と、突出部11A及び凹部11Bが設けられていない領域とのすべてに設けられることが特に好ましい。
【0032】
シボは、ざらざらとした質感を与えるために樹脂部材1の表面に形成された細かい凹凸であり、例えば平面視で石目模様、梨地模様、砂目模様又は砂地模様に形成されることが好ましい。樹脂部材1の表面にシボが形成されている場合、樹脂部材1の表面に比較的深い陰影が生じる。このため、ヒケが形成された場合であってもシボの一部に見える。また、上述したように、シボにより樹脂部材1の表面の光沢性が低下するとともに、シボにより比較的深い陰影が生じる。このため樹脂部材1を複数色で形成したように、樹脂部材1の表面においてヒケを目立たなくすることができる。
【0033】
シボの深さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上40μm以下であることがより好ましい。シボの深さがこの範囲内である場合、シボの柄がはっきりと現れて、ヒケが形成された場合であってもシボの一部に見え、ヒケが目立たちにくくなる。
また、シボの深さは、すべて均一ではなく、位置によって上述した範囲で深さが異なることがより好ましい。これにより、樹脂部材1の表面形状がより自然になりより高級感が向上する。
【0034】
(表面凹凸)
さらに、樹脂部材1は、表面にシボよりも細かい表面凹凸が形成されていても良い。このような凹凸は、例えば樹脂材料にフィラーを混合して樹脂部材1を形成することにより得られる。フィラーにより、樹脂部材1の表面がざらついた質感となることにより、樹脂部材1の表面の光沢性が低下する。また、樹脂部材1は、フィラーが混在することで複数色で形成されることとなり、また、表面凹凸によって表面により複雑な陰影が形成されて樹脂部材1がより複数色で形成したように見えやすくなる。このため、樹脂部材1の表面においてヒケがさらに目立ちにくくなる。
【0035】
(1.2)樹脂部材の構成材料
以上のような樹脂部材1は、以下のような樹脂材料により形成されている。また、樹脂部材1は、樹脂材料とともにフィラーを含んでいてもよい。また、樹脂部材1は、樹脂材料及びフィラー以外の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
(樹脂材料)
樹脂材料は、一般的な電化製品の筐体の一部となる樹脂部材に用いられる材料であればよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が挙げられる。樹脂材料は、これら材料の一種を用いてもよく、二種以上の混合物又は共重合体を用いても良いが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の少なくとも一方を用いることが好ましい。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、収縮が少なく突出部11Aの直線性が出やすい等成形加工性が良く、着色性が良好であり、さらに安価である点で好ましい。
【0037】
樹脂材料は、所望の色彩を与えるための着色剤を含んでいてもよい。また、樹脂材料は、必要に応じて、例えば、マット剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤及び光散乱剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。
【0038】
(フィラー)
フィラーは、樹脂部材1の加飾のために樹脂材料に混入する添加材である。フィラーは、樹脂材料に混合される際に樹脂材料に対する分散性が良い材料であればよく、有機フィラー又は無機フィラーのいずれも用いることができる。有機フィラーは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル又はナイロン等の樹脂フィラーであることが好ましい。また、無機フィラーは、アルミニウム等の金属材料や石等であることが好ましい。なかでも、フィラーとしてポリエステルを用いることが好ましい。樹脂材料にフィラーを混合することにより、樹脂部材1の表面が光沢感のある平坦面ではなく、表面の粗さが向上して陶土を焼いて形成したような質感となり、高級感が向上する。
【0039】
フィラーの明度と樹脂材料の明度との差は3以上であることが好ましく、フィラーが樹脂部材1を形成する樹脂材料よりも暗い色であることが好ましい。フィラーが樹脂材料又は樹脂材料に添加された着色剤と同系色である場合、樹脂部材1は単色で、表面がざらついた質感となり、陰影が生じやすくなる。また、フィラーが暗色であることにより、樹脂部材1に陰影が生じるだけでなく、樹脂部材1の表面にフィラーの色が反映されて、ヒケが目立ちにくくなる。ここで、暗色とは、例えば明度3以下かつ彩度3以下又は彩度がない色をいう。
【0040】
フィラーは、円盤状であってもよく、繊維状であってもよいが、繊維状であることがより好ましい。フィラーが繊維状であることにより、フィラーがカビや汚れのような付着物に見えにくくなり、樹脂部材1の外観の清潔感の低下を抑制できる。
【0041】
フィラーが円盤状である場合、フィラーの大きさは、0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。ここで、フィラーの「大きさ」とは、円盤状のフィラーの直径部分の寸法をいう。
また、フィラーが繊維状である場合、フィラーの長さは、0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましい。ここで、フィラーの「長さ」とは、短径と長径を有する繊維形状のフィラーの長径の寸法をいう。
フィラーの大きさ又は長さがこの範囲内である場合、フィラーがカビや汚れのような付着物に見えにくくなる。
【0042】
フィラーは、樹脂材料に対して0.05質量%以上2.7質量%以下混合されていることが好ましく、1.8質量%以上2.0質量%以下混合されていることがより好ましい。これにより、陶土を用いて形成したような印象を与えることができ、樹脂部材1の陶器感が顕著に向上するとともに、フィラーが汚れ等の付着物として感じられにくくなり、清潔感が向上するためである。
【0043】
以上説明したように、樹脂部材1は、凹部11Bとシボとを有することにより居住者等に陶器感を感じさせやすくなり、さらにフィラーを含むことでより陶器感を感じさせやすくなる。このように、表面にシボが形成された樹脂部材1は、表面の光沢が無くなり、樹脂で形成された印象が弱くなり、居住者等に自然な印象を感じさせる。
また、樹脂部材1は、表面にシボが形成され、かつフィラーを含むことで、居住者等に対して一般的な樹脂製品と比較して高級な印象(高級感)を感じさせやすくなるとともに、陶土で形成した印象をより感じさせやすくなり、自然の素材で作ったような自然な印象を感じさせやすくなる。
また、樹脂部材1は、互いの幅がランダムとなるように複数の凹部11Bを配置することにより、居住者等に大量生産的でない手作り感を感じさせやすくなり、人の温もりを感じさせるような自然な印象を与えることができる。なお本開示の実施形態では、所定の方向に延伸する凹部11Bは、延伸方向に沿って均一の幅を持つ凹部としたが、本発明はこれに限られず、凹部11Bの幅は必ずしも延伸方向に沿って均一でなくても良く、幅が変化する、すなわち隣接する突出部11Aが平行にならなくてもよい。
【0044】
(1.3)樹脂部材の製造方法
以上説明した樹脂部材1は、例えば射出成形により形成することができる。以下、樹脂部材1の製造方法について説明する。
【0045】
射出成形に用いる金型は図示しないが、例えば樹脂部材1の裏面側に配置される下金型と、樹脂部材1の表面側に配置される上金型とを有しており、下金型と上金型とが合わさることで間に空洞部が形成される。この時、金型の一方はキャビティ(凹金型)であり、他方はコア(凸金型)となっている。凹金型の空洞部側面には、樹脂部材1の表面形状、すなわち突出部11A及び凹部11Bに対応する凹凸形状、又は凹凸形状及びシボに対応する微細な凹凸があらかじめ形成されている。また、凸金型の空洞部側面は、樹脂部材1の裏面形状に応じた表面形状であればよく、樹脂部材1にヒケが生じないようにするための肉盗み(肉抜き)が設けられていてもよい。凹金型及び凸金型の少なくとも一方には、樹脂を注入するための注入口が形成されている。また、凹金型及び凸金型の一方は固定金型であり、他方は可動金型である。
【0046】
続いて、溶融させた樹脂材料とフィラーとを所定の割合で混合させて形成したペレットを成形機に入れる。また、可動金型(凹金型及び凸金型のいずれか一方)を移動させて凹金型及び凸金型によって空洞部を形成する。この後、ペレットを溶融させた溶融樹脂を注入口から注入して空洞部内を溶融樹脂で充填し、冷やして硬化させることにより、樹脂部材1を形成する。
このようにして、凹金型側に所望の突出部11A及び凹部11B、並びにシボが形成された樹脂部材1が得られる。このため、ヒケが目立ちにくい樹脂部材1が1つの工程で形成できるため、樹脂部材の製造工程が簡易となり製造コストも低減する。
なお、樹脂部材1は、射出成形以外の方法、例えば注型成形、圧縮成形又はプレス成形またはブロー成型のいずれかによって形成することもできる。
【0047】
2.第二実施形態
以下、第二実施形態に係る空気調和機の室内機100について説明する。
図1に全体構造を示す空気調和機の室内機100は、熱交換器を収容する構造体と、室内機100のフロントパネルとして用いられる樹脂部材1とを備えている。フロントパネルである樹脂部材1は、この構造体に取り付けられて前方から構造体を覆っている。
空気調和機の室内機100が取り付けられた室内にいる居住者等は、室内機の前面に取り付けられた樹脂部材1にヒケが生じていてもヒケを視認しにくくなる。このため、室内機の高級感が向上する。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
1 樹脂部材
11 線状突出部
11A 突出部
11B 凹部
100 室内機
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6